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令和2年度 妊婦の診療に係る医療研修会

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(1)

令和2年度

妊婦の診療に係る医療研修会

2021年3月26日 北海道大学 産科 能代 究

(2)

妊婦を診察する事はありますか?

どういう点に気を付けていますか?

→検査や薬が胎児に影響があるか

困る事はありませんか?

→薬の添付文書で「慎重投与」が多い

診察を敬遠する事はありませんか?

→受診したけれど、検査も処方もしない

(3)

妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会

妊産婦の診療は、通常よりも慎重な対応や胎児や乳児への配慮が必要で

あり、診療に積極的でない医療機関が存在するとの指摘がある。このため、妊産

婦自身の負担にも配慮しつつ、妊産婦が安心できる医療体制の充実が必要。

◆ 出産年齢が上昇傾向にあり、一般に、高齢出産の場合には、特に健康管理

に留意が必要とされるなど、妊産婦のニーズに応じた細やかな支援が重要。

◆ 妊産婦が安心できる医療体制の充実や健康管理の推進を含めた妊産婦に

対する保健・医療体制の在り方について検討するため

「妊産婦に対する保健・医

療体制の在り方に関する検討会」

を2019年2月より開催。

(4)

[妊産婦の診療の現状] 産婦人科以外の診療科から診療を断られることがある 妊婦が産婦人科以外の診療科を受診する際に求める気配り ・診療・薬の内容について文書を用いて説明 ・経験が十分にある医師の診療 ・母子健康手帳の確認 [産婦人科の現状] コモンディジーズ(風邪や花粉症等) について、 他科からの診療情報の提供が少ない 医師の労働時間が長い、分娩取扱施設が減少 [産婦人科以外の診療科の現状] 診療の際に様々な配慮が必要であり、診療を敬遠しがち 妊産婦の診療に関する研修機会が少ないので不安 妊産婦に処方できる薬剤かどうか情報が少ない [産婦人科以外の診療科] 連携 研修 サポート体制 ●産婦人科以外の診療科と産婦人科の医療機関の連携 妊産婦の診療に積極的な医療機関の把握・周知 都道府県が主体的に地域の医療機関間の連携体制の検討・構築 母子健康手帳等を活用した診療科間の情報連携 等 ●診療の質の向上に向けた取組 医師に対する妊産婦の診療に関する研修の推進 診療や薬に関する説明文書の例を作成 妊娠と薬に関する情報を医師へ提供する体制の整備・周知 等 [産婦人科] 説明 文書 ●不安を感じる妊産婦が相談できる仕組み 妊娠届出時に妊婦の身体的・精神的・社会的状況について把握 妊産婦のための食生活指針の改定に向けた調査研究の実施 「授乳・離乳の支援ガイド(平成31年3月改定)」の周知 「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」を用いた支援者の育成 産後ケア事業の推進 妊娠中から出産後や子育ての イメージを持てるようなパンフレット 妊娠届出時の妊婦の状況把握 妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 議論の取りまとめ(概要) 母子健康 手帳 [妊産婦の不安] 妊産婦の不安や負担は時期によって異なる  妊娠中の健康管理で困ったこと ⇒ 栄養・食事に関すること  産後の健康管理で困ったこと ⇒ 授乳に関すること 産後は子どもを抱えながら外出することが困難 産後は産婦の健康管理が困難になりがち 産婦の不安解消には産後ケアが有効 ○ 妊産婦が安心できる医療体制の充実や健康管理の推進を含めた妊産婦に対する保健・医療体制の在り方について検討を行った。 ○ 中央社会保険医療協議会においては、妊産婦に対する診療の評価の在り方について、更なる検討を進めることを期待する。 ○ 国においては、妊産婦に対する保健・医療体制を構築するため、関係機関と協力・連携の上、引き続き取り組んでいくべきである。 4

(5)

妊婦の診療に係る医療提供体制整備事業

事業内容

〇 妊婦が安心安全に受診できるよう産科及び産婦人科以外の診療科医師に対する研修を実施する。 〇 医師が妊婦の診療について必要な情報を得られるよう相談窓口を設置する。 これまで妊婦に対する医療の提供については、周産期医療体制の整備を通じてハイリスク妊婦に 対する診療の充実などが図られてきた。 一方、妊婦の診療については、通常よりも慎重な対応や胎児への配慮が必要であるため、診療に 積極的でない医療機関が存在するとの指摘がある。 このため、妊婦自身の負担にも配慮しつつ、妊婦が安心安全に受診できる医療提供体制を充実し ていくことが必要である。 電話相談 研修の実施 相談窓口の設置

(6)

本日の目標は

産科医として妊婦さんを診るときの考え方、注意点などをお伝えします。

妊娠の流れを理解する

妊娠中に起こる合併症について理解する

(7)

本日の流れ

妊娠とは

妊娠と薬の基本的な考え方

(8)

妊娠とは

妊娠の始まりを

着床

からと規定

妊娠とは受精卵の着床から始ま

り、胎芽または胎児付属物の排

出をもって終了するまでの状態

をいう。

日本産科婦人科学会編 産科婦人科用語集より

(9)

出典:株式会社法研

「からだと病気のしくみ図鑑」

(10)

妊娠週数の数え方

最終月経開始日 :0週0日

受精

:2週0日

着床

:2週5日~3週0日頃

分娩予定日

:40週0日

分娩予定日通りに生まれる確率は?

6~7%くらい

妊娠39週~40週で生まれる確率は?

60-65%くらい

(仮に12月25日とすると・・・)

(予定日は翌年9月17日になる)

(11)

日本における月別出生数(2016年)

72000 74000 76000 78000 80000 82000 84000 86000 1 月 234月 月5 6789月 10 月 11 月 12 月 出生数

2016年の日本の月別出生数

(12)

分娩予定日の決定方法

①自然妊娠の場合…最終月経もしくは胎児頭殿長から

②不妊治療の場合…排卵日や胚移植日など

③超音波検査…最終月経不明、月経不順の場合など

GS(

胎嚢)

妊娠5週頃からみられる

FHB

(胎児心拍) 妊娠6週頃から

CRL

(頭殿長)

妊娠10週頃で約3cm

BPD

(児頭大横径) 妊娠15週で約3cm

CRL

BPD

(13)

妊娠週数の数え方①

・月数は「数え」を使う(おおざっぱなので産婦人科医はあまり使わない)

たとえば 妊娠2ヶ月とは 妊娠4週0日〜7週6日

妊娠3ヶ月とは 妊娠8週0日〜11週6日

(14)

妊娠42週を3分割して、14週ごとに三半期とする

1

st

trimester(妊娠初期):妊娠14週未満

2

nd

trimester(妊娠中期):妊娠14〜28週未満

3

rd

trimester(妊娠後期):妊娠28週以降

村島温子 Rp.+ 妊娠期のマイナートラブルとくすり 南山堂 より

妊娠週数の数え方②

(15)

〇週〇日で妊娠時期を表す方法。一般的な方法。

流産期 妊娠成立~妊娠21週6日まで

早産期 妊娠22週0日〜妊娠36週6日

正期産期 妊娠37週0日〜妊娠41週6日

過期産期 妊娠42週0日以降

※胎外生活が不可能とされる時期(人工妊娠中絶可能な時期)は変化している 昭和28年からは妊娠28週未満が流産期 昭和51年からは妊娠24週未満が流産期 平成3年からは妊娠22週未満が流産期 胎外生活が不可能とされる。人工妊娠中絶が可能な時期(母体保護法) 妊娠12週以降の流産は「死産証書」の発行、「埋葬」が必要。

妊娠週数の数え方③

(16)

妊娠・出産回数の数え方

流産 妊娠成立した時点で1妊となる。妊娠とは考えるが、出産(分娩)と

は考えない。人工妊娠中絶は流産になる。

早産、正期産、過期産 妊娠22週0日以降の分娩は全て「1産」と考えま

す。

<2018年1月1日から数え方が変わりました> 例① 1人出産した事がある人は今までは「1経妊1経産」→「1妊1産」と言う様になった。 例② 妊娠24週で死産を経験した場合も「1妊1産」となります。 例③ 8週の流産を1回経験した事がある人は「1妊0産」となります。 例④ 「3妊2産」の場合は2回出産している事がわかる。「妊」は妊娠中の場合も含むので、流産1回経 験している場合と妊娠中の場合があります。 例⑤ 双胎(多胎)分娩後の場合も「1妊1産」と考えます。

(17)

本日の流れ

妊娠とは

妊娠と薬の基本的な考え方

(18)

こんな質問ありませんか?

この薬は妊娠中に使って大丈夫ですか?

妊娠に気が付かず薬を使ってしまったけれど大

丈夫ですか?

(19)

妊娠と薬の基本的な考え方

メリット>デメリットなら使用する 使用するリスク

催奇形性

胎児毒性

使用しないリスク

母体疾患の増悪

胎児環境の悪化

例:てんかん無治療による頻回のてんかん 発作やそれによる胎児低酸素状態 VS 薬剤(バルプロ酸)の催奇形性

(20)

胎児への影響は?

催奇形性

・・・胎児に形態異常を起こ

す。妊娠成立~妊娠12週頃まで。

胎児毒性

・・・胎児に機能的な異常を

(21)

妊娠と薬の基本的な考え方

ベースラインリスク(薬剤の使用がない場合のリスク)

自然流産:全妊娠の約

15%

先天異常:全新生児のうち出生時に判明するもので約

3%

Connor&FergusonSmith(1987),Persaud(1990), Thompson (1991) 出生するのは85%

(22)

妊娠と薬の基本的な考え方

染色体不均衡 25% コピー数バリアント 10% 単一遺伝子バリアント 20% 多因子形質 40% 催奇形因子 5%

先天異常の原因内訳(%)

薬剤

薬剤が先天異常の原因とされるのは約1%

(23)

薬剤の使用時期による胎児への影響

 all or none(全か無か) の時期(妊娠3週末頃まで)  影響大・・・流産  影響小・・・完全に修復されて正常妊娠が継続  胎芽期(妊娠4週〜妊娠8週)  器官形成期  影響を最も受けやすい時期。大奇形を起こす可能性あり。  胎児期(妊娠8-12週)  催奇形性物質による先天異常の発生リスクは低下  一部の器官では注意が必要。小奇形を起こす可能性あり。  胎児期(妊娠12週以降)  催奇形性物質による先天異常の発生リスクはほぼない  胎児毒性が問題となる場合がある。

(24)

薬剤の使用時期による胎児への影響

(25)

出現率(%)

異常の内容

サリドマイド

20-50

アザラシ肢症、心疾患、消化管閉塞など

Vit-A誘導体

20

レチノイド症候群:CNS

、心奇形、耳の奇

形を中心とする顔面の形成異常

バルプロ酸Na

<10

神経管欠損症、口唇口蓋裂、骨奇形など

ミソプロストール

<10

末端四肢欠損など

メトトレキセート

<10

頭蓋骨早期癒合、四肢異常

メチマゾール

<10

頭皮欠損など

ワルファリン

6-25

鼻奇形、骨形成不全

リチウム

0.05

エブスタイン奇形

*CNS:central nervous system

催奇形性が示されている

主な薬剤とその頻度

(26)

薬剤の種類

症候

NSAIDs

動脈管早期閉鎖による肺高血圧症、

羊水減少、分娩遷延

ACE阻害薬/ARB

胎児の低血圧と腎血流低下による胎児

腎機能障害、羊水過少、頭蓋冠低形成

ワルファリン

頭蓋内出血

アルコール

胎児性アルコール性スペクトラム障害

タバコ

子宮内胎児発育不全

ヨード

過剰摂取により、可逆的な甲状腺機能低下

渡辺央美:胎児毒性、妊娠と授乳(南山堂)2)P15,2014から

胎児毒性が示されている

主な薬剤と症状

(27)

妊娠中の薬物治療の考え方

リスクとベネフィットを考え、投与の可否を決定する

禁忌であるが必須な薬剤、禁忌薬をうっかり服用した場合

・服薬時期によっては「all or noneの理論」を活用し説明する

・リスクのある薬剤に曝露した場合は、妊娠中期の精密な胎児エコーを勧

める

・妊娠と薬情報センター | 国立成育医療研究センター

(

https://www.ncchd.go.jp/kusuri/

)の情報を参照する

(28)

本日の流れ

妊娠とは

妊娠と薬の基本的な考え方

(29)

妊娠中によく使用する薬剤

妊娠は病気ではありません。

生理的な変化であっても薬物治療を要する事があります。

「生理的なもの」 or 「病的もの」 に分けて説明しま

(30)

妊娠中に

妊婦健診以外で、産婦人科

かかった理由

20 1.5 6.2 3.8 0.8 13.5 1.5 1.5 1.5 1.5 0.8 0 27.3 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 熱、咳、たん、鼻つまりなどの感染症状 歯が痛い、歯ぐきのはれ、出血など口の中の症状 妊娠前からの持病(ぜんそく、花粉症、甲状腺の病気など) 発疹、かゆみなどの皮膚の症状 目の充血、かゆみなどの目の症状(コンタクトレンズ処方含) 腹痛、下痢、便秘などの胃腸症状 妊娠中に新たに診断された高血圧や糖尿病など 打撲、ねんざ、骨折、切り傷などのケガ 眠れない、いらいらしやすい、不安などの症状 腰痛 尿が出にくい、排尿時の痛み、頻尿、尿失禁 手足のむくみ、しびれ その他 頻度(%) 直近の妊娠中に妊婦健診以外で、産婦人科にかかった理由(重複あり、N=260) 「妊産婦の医療や健康管理等に関する調査」(厚生労働省 2019年)

(31)

妊娠中に

産婦人科以外の診療科

かかった理由

42 24 20.9 15.6 13.9 7.5 4.3 1.6 1.6 1.5 0.4 0.4 19.7 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 熱、咳、たん、鼻つまりなどの感染症状 歯が痛い、歯ぐきのはれ、出血など口の中の症状 妊娠前からの持病(ぜんそく、花粉症、甲状腺の病気など) 発疹、かゆみなどの皮膚の症状 目の充血、かゆみなどの目の症状(コンタクトレンズ処方含) 腹痛、下痢、便秘などの胃腸症状 妊娠中に新たに診断された高血圧や糖尿病など 打撲、ねんざ、骨折、切り傷などのケガ 眠れない、いらいらしやすい、不安などの症状 腰痛 尿が出にくい、排尿時の痛み、頻尿、尿失禁 手足のむくみ、しびれ その他 頻度(%) 直近の妊娠中に妊婦健診以外で、産婦人科以外の診療科にかかった理由(重複あり、N=736) 「妊産婦の医療や健康管理等に関する調査」(厚生労働省 2019年) 想定される疾患 ・・・・・・・・・・上気道炎・インフルエンザ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・歯科受診 ・・・・・・・・・・・喘息・花粉症・甲状腺疾患 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妊娠性痒疹 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・眼科受診 ・・・・・・・虫垂炎、便秘、逆流性食道炎 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高血圧・糖尿病 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・けが ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うつ病 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・腰痛 ・・・・・・・・・・・・・・急性膀胱炎・腎盂腎炎 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下肢静脈血栓症 (妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病) ( 高血圧・糖尿病)

(32)

妊婦を診察する時に

採血は必要?

画像検査は必要?

(33)

妊娠中に必要となる画像診断

レントゲン

CT

消化管造影検査

超音波検査

MRI

(34)

妊娠中の放射線被曝

レントゲン, CT, 消化管造影検査

胎児に対する放射線の影響は、被曝時期と被曝線量に依存する

最大胎児被曝線量を基に胎児への影響につき情報提供する

診断用放射線

は、通常50mGy未満の線量であ

り、

誤って放射線治療を受けた場合や原発事故など

特殊な場合を除き、胎児への影響は小さい

(35)

妊娠中の放射線被曝

受精後10日まで

受精後10日までの被曝では奇形発症率の上昇はない

“all or none” の法則(受精後10日まで)

大量の放射線は受精卵を死亡させ流産を起こす可能性があるが、

流産せずに生き残った胎芽は完全に修復されて

奇形(形態異常)を残すことはない

(36)

妊娠中の放射線被曝

受精後11日目〜妊娠10週

受精後11日〜妊娠10週での胎児被曝は奇形を誘発する可能性が

あるが、50mGy未満では奇形発生率を上昇させない

100mGy以上の被曝を受けた場合、奇形発生率は上昇する

Streffer C, et al. Ann ICRP 2003

一方、100〜500mGyの被曝でも奇形発生率は上昇しないとも報告されている

De Santis M, et al. Reprod Toxicol 2005. Brent RL. Teratology 1999

「100mGy未満の胎児被曝は、妊娠中絶の理由と考えるべきではない」

Pregnancy and medical radiation. Publication 84, Ann ICRP 2000: 30 ICRP:国際放射線防護委員会

(37)

妊娠中の放射線被曝

妊娠9〜26週

妊娠9〜26週では中枢神経障害を起こす可能性はあるが、

100mGy未満では影響しない

37

妊娠9〜16週:中枢神経系での細胞分裂活発であり、被曝の影響を受けやすい

妊娠17〜26週:中枢神経系の放射線感受性は低下するが、多少影響する

Schull WJ. Stem Cells 1997, Yamazaki J, et al. JAMA 1990

⇒線量依存

500mGy以上 重症精神発育遅滞の可能性(発症率 1Gy:40%, 1.5Gy:60%)

Miller RW. Teratology 1999

妊娠のいずれの時期においても、100mGy以下の低い線量被曝による

IQ低下は確認されていない

Streffer C, et al. Ann ICRP 2003

(38)

妊娠中の放射線被曝

レントゲン

検査部位

平均胎児被曝線量

(mGy)

最大胎児被曝線量

(mGy)

頭部

0.01以下

0.01以下

胸部

0.01以下

0.01以下

腹部

1.4

4.2

腰椎

1.7

10

骨盤部

1.1

4

排泄性尿路造影

1.7

10

Pregnancy and medical radiation. Publication 84, Ann ICRP 2000: 30 産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

(39)

検査部位

平均胎児被曝線量

(mGy)

最大胎児被曝線量

(mGy)

CT 頭部

0.005以下

0.005以下

胸部

0.06

0.96

腹部

8.0

49

腰椎

2.4

8.6

骨盤部

25

79

上部消化管造影

1.1

5.8

下部消化管造影

6.8

24

Pregnancy and medical radiation. Publication 84, Ann ICRP 2000: 30 産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

妊娠中の放射線被曝

CT, 消化管造影検査

各検査部位の最大被曝線量は100mGy未満

肺動脈血栓症、大動脈解離など

母体が生命の危機にある場合は、

母体優先で直ちに画像検査を行う

(造影剤使用も可)

(40)

超音波検査

妊娠中の超音波検査は、母児の周産期予後、出生児の身体的・

(41)

MRI

産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

「National Radiation Board of Great Britain等の勧告では

妊娠14週以降が望ましいとされる」

2016

妊娠第1三半期のMRI撮影は、胎児や小児発育に悪影響を与えない

卵巣腫瘍合併妊娠など、母体治療が必要な場合には

(42)

MRI造影剤(ガドリニウム)

悪性腫瘍(卵巣癌、子宮頸癌)など母体の生命に関わる合併症の診断に造影剤が

不可欠である場合は、使用することも考慮される

Joel G. Ray, et al. JAMA 2016

胎児毒性は不明であるが、胎児・新生児死亡や、

出生児の免疫性疾患発症に関連するとの報告もある

造影剤使用群 (n=397) 造影剤非使用群 (n=1418451) 調整ハザード比 (95% 信頼区間) 調整リスク差 (95% 信頼区間) 発生率(/1000人年) (95% 信頼区間) 発生率(/1000人年) (95% 信頼区間) 死産・新生児死亡 17.6 (7.1-36.0) 6.9 (6.8-7.1) 3.70 (1.55-8.55) 47.5 (9.7-138.2) 結合織皮膚疾患 3.3 (1.3-8.9) 1.8 (1.8-1.8) 1.00 (0.33-3.02) 0.0 (-2.2-6.7) 炎症性皮膚疾患 浸潤性皮膚疾患 広義のリウマチ性疾患 125.8 (105.3-149.9) 93.7 (93.4-94.0) 1.36 (1.09-1.69) 45.3 (11.3-86.8) 先天性奇形 34.8 (25.4-47.6) 24.0 (23.9-24.2) 1.25 (0.84-1.86) 8.7 (-5.6-29.9) 【MRIと妊娠中すべての時期のガドリニウム造影剤の曝露後の長期予後(4歳まで)】

(43)

画像診断のまとめ

妊娠中に放射線被曝を伴う検査(レントゲン、CT、消化管造影)

を行う場合、または、妊娠に気が付かずに患者が検査を受けた場合

には、胎児への影響を被曝時期と被曝線量に基づき適切に説明する

超音波検査とMRIは妊娠期間中を通じ、胎児に安全に施行すること

ができる

(44)

妊婦が仰臥位になったとき、

増大した妊娠子宮による下大静

脈の圧迫により静脈還流が阻害

された結果、心拍出量が減少し

血圧低下をきたす病態。血圧の

低下に伴って悪心、嘔吐、めま

い、発汗、不安感、呼吸困難な

どの症状を示すが、左側臥位を

とらせるなどして子宮による下

大静脈の圧迫を解除すれば、症

状は速やかに消失する。妊娠末

期に生じやすい。

妊婦を診察する際の注意点

(CT撮像時にも注意)

(45)

妊娠による母体の変化と検査値異常

参考:妊娠期における検査値の正常値

非妊時 妊娠中 非妊時からの変化 白血球数 (103/mm3) 3.3-8.6 5.7-16.9 赤血球数 (106/mm3) 3.9-5.0 2.71-4.55 ヘモグロビン (g/dL) 11.6-14.8 9.5-14.0 ↓ ヘマトクリット (%) 35.1-44.4 28.0-41.0 ↓ 血小板数 (109/L) 158-348 140-400 ほぼ→〜↓ アンチトロンビン (%) 70-130 90-114 ほぼ→ Dダイマー (μg/mL) <1.0 0.3-5.0* ↑ フィブリノゲン (mg/dL) 184-378 244-696 ↑(特に妊娠後期) PT (秒) 9.3-12.3 9.5-13.5 → APTT (秒) 24.5-38.7 22.6-38.9 → *妊娠中のDダイマーは高値を示すことが多く、深部静脈血栓塞栓症の 可能性を評価するための感度特異度は低く、有用性を欠く

(46)

妊娠による母体の変化と検査値異常

参考:妊娠期における検査値の正常値

非妊時 妊娠中 非妊時からの変化 アルブミン (g/dL) 4.1-5.1 2.3-5.1 ↓ 総タンパク (g/dL) 6.6-8.1 5.6-7.6 ↓ クレアチニン (mg/dL) 0.46-0.79 0.4-0.9 ↓〜ほぼ→ 尿素窒素 (mg/dL) 8-20 3-13 ↓ 糸球体濾過量 (ml/分) 106-132 117-182 ↑ 総コレステロール (mg/dL) <200 141-349 ↑ HDLコレステロール (mg/dL) 40-60 40-87 ほぼ→〜↑ LDLコレステロール (mg/dL) <100 60-224 ↑↑ トリグリセリド (mg/dL) <150 40-453 ↑↑ TSH (μIU/mL) 0.34-4.25 0.38-4.04 初期に一過性に低下 循環血漿量が増えるため、希釈性に傾く事が多い。

(47)

生理的なもの or 病的なもの

感冒(風邪)

膀胱炎、腎盂腎炎

性感染症

つわり(悪阻)

便秘(痔)

貧血

腰痛

胃部圧迫感

妊娠線(掻痒感)

(48)

つわり(妊娠悪阻)

つわりは全妊婦の50-80%の人が経験する

嘔気、嘔吐が主な症状

重症化し、入院・補液治療など必要になる場合を妊娠悪阻

と言い、全妊婦の1-2%に発症する。

制吐剤(メトクロプラミド 商品名プリンペランなど)

ビタミンB6(商品名:ビタメジン)

など使用

(49)

サプリメントについて聞かれたら

ビタミンB群(B1、B6、B12)

→つわりの治療にもなる

葉酸

→二分脊椎、無脳症の予防になる

鉄分

→貧血は胎児発育不全、早産の原因となる

葉酸はいつまで飲ん だら良いですか? 妊娠を考える2か月 前くらいから、妊 娠12週までです。 ビタミンB群と鉄 分が入っている方 が良いです。

(50)

便秘(痔)

消化管運動の低下や増大した子宮のS状結腸の圧迫による

妊娠中は便秘になりやすい!

約半数の妊婦が便秘

(51)

妊娠中の便秘-対処法

適度な運動の励行

生活習慣・食生活の見直し

水分摂取をふやす・食物繊維・水溶性食物繊維(こんにゃく・海藻)

便秘薬の使用

痔が出現した場合には痔の薬を使用

(52)

妊娠中よく使用する便秘薬

村島温子 Rp.+ 妊娠期のマイナートラブルとくすり 南山堂 より 種類 成分名 (商品名) 作用 腹痛 添付文書の妊婦への注意記載 整腸剤 ビフィズス菌 酪酸菌(ミヤBM)など 腸内環境を整 える ー ー 塩類下剤 酸化マグネシウム (マグミット)など 腸内での水分 の調整 ー ー 大腸刺激性下剤 ピコスルファート (ラキソベロン)など 大腸刺激、腸 蠕動亢進 + 有益性投与 痔治療薬 ネリプロクト軟膏 強力ポステリザン軟膏 抗炎症作用 ー 有益性投与 ※便秘自体でも子宮収縮が起こりやすくなったり、切迫早産の原因とな ることもあるためコントロールが必要。

(53)

妊婦と貧血

妊娠中の鉄の推奨摂取量と消費量

理由は。。 ①胎児への栄養供給 ②臍帯・胎盤への蓄積 ③循環血液量増加による希釈 妊娠中は貧血に なりやすい! 村島温子 Rp.+ 妊娠期のマイナートラブルとくすり 南山堂 より改編

(54)

妊婦と貧血

 貧血の診断基準: Hb(ヘモグロビン)11.0 g/dl未満  貧血治療の目的 ①鉄は胎児の成長に必要 ②分娩時の出血に備える ③母体貧血症状の緩和 妊婦健診では、妊娠初期・中期・後期と3回の採血でHbをチェック 貧血がある場合には、子宮内胎児発育不全になる事や早産の原因となる 事も示唆されているので、積極的に治療をする。 (10週頃、24週頃、36週頃)

(55)

主な経口鉄剤の種類

一般名 主な商品名 乾燥硫酸鉄 フェロ・グラフュメット 溶性ピロリン酸第二鉄 インクレミンシロップ フマル酸第1鉄 フェルム クエン酸第1鉄ナトリウム フェロミア

ビタミンC(アスコルビン酸)

の併用は、鉄の吸収を促進する

・巨赤芽球性貧血の場合は、

葉酸(フォリアミン)、B12

の追加する

(56)

妊娠期の見た目の変化

(57)

妊娠期の体の変化

腰痛

村島温子 Rp.+ 妊娠期のマイナートラブルとくすり 南山堂 より 改編 腰椎の前彎が亢進 腰が痛い!! エストロゲン プロゲステロン リラキシン

(58)

妊娠期の腰痛

妊婦の70%近くで、ある程度の腰痛を経験する

Williams 24版 

肥満妊婦や腰痛の既往がある妊婦に多い

重症の腰痛は、椎間板疾患・妊娠関連の骨粗鬆症・化膿性

脊椎炎などの原因もありうるので、整形外科へ相談を

Smith 2008

(59)

妊娠期の腰痛-対処法

 適度な運動が妊娠中の腰痛を改善する可能性がある(水中での歩行、フィット ネスバイクなど) Liddle SD. Cochrane 2015;9:CD001139  適度な体重増加(過度な増加に注意)  骨盤ベルト(トコちゃんベルト) 骨盤の関節のゆるみを締め、脊柱と股関節部の安定性を改善させる  湿布薬の使用(NSAIDsを含有してないもの) 主に「MS温シップ」を処方します。「MS冷シップ」も可。 NSAIDsには胎児毒性があるので使用禁忌。

(60)

胃部圧迫感

およそ妊娠30週以降で、子宮底による胃の圧迫

でつわりの様な症状が出現する。嘔気、嘔吐や

逆流性食道炎の様な症状が出現する。

胃酸分泌抑制剤

など使用する

H2受容体拮抗薬(ガスターなど)・・・胃酸分泌抑制する

PPI(タケプロン、ネキシウムなど)・・・胃酸分泌抑制する

PG産生促進(レバミピドなど)・・・胃粘膜保護作用あり

(61)

妊娠性痒疹

妊娠8−15週に四肢の近位伸側を中心に

一部体幹にも、かゆみの強い丘疹を生じる。

分娩に伴い皮疹・掻痒は消退

発症時期 臨床症状 皮疹の消退時期 特徴 妊娠性痒疹 妊娠8−15週 かゆみの強い丘疹・ 掻破痕、小潰瘍、血 痂、色素沈着 いずれも一般的に は分娩とともに皮 疹は消退する 主に2回目以降の 妊娠時に生じる PUPPP※ 妊娠後期 (25週以降) かゆみの強い後半を 伴う蕁麻疹様丘疹 主に初産婦に生じ る 皮膚伸展線条 (妊娠線) 妊娠中期〜 後期以降 かゆみを伴い、細か なシワになる。 50%以上の妊婦に発症する

(62)

治療

外用剤

ステロイド(ロコイド、リンデロン、マイザーなど

medium〜very strong

ジフェンヒドラミン塩酸塩

軟膏(レスタミン)など

保湿剤

ヘパリン類似物質(ヒルドイド)

軟膏、クリーム、スプレーなど

内服薬

抗ヒスタミン薬(アレグラ、ポララミン)

など

(63)

生理的なもの or 病的なもの

感冒(風邪)

膀胱炎、腎盂腎炎

性感染症

つわり(悪阻)

便秘(痔)

貧血

腰痛

胃部圧迫感

妊娠線(掻痒感)

(64)

感冒(風邪)

咳嗽・・・鎮咳薬(アストミンなど)、麦門冬湯など

発熱・・・アセトアミノフェン

咽頭痛・・・トローチ、うがい薬(アズノール)など

痰・・・去痰薬(カルボシステインなど)

鼻汁・・・点鼻薬(スカイロンなど)、第二世代抗ヒスタミン薬

(ロタラジン、セチリジン)など

総合感冒薬の

PL顆粒、葛根湯

なども良く使われる。インフルエンザ

の場合には

抗ウイルス薬(タミフル、リレンザなど)

も使用可能。イ

ンフルエンザのワクチン接種は全妊娠期間で可能。

(65)

膀胱炎、腎盂腎炎

~

・妊娠子宮によ る尿管の圧迫 ・妊娠20週以降

(66)

膀胱炎、腎盂腎炎

治療は

抗菌薬投与(アンピシリン、フロモックスなど)

補液、飲水など。

解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)

も使用する

改善しなければ泌尿器科での治療(腎瘻など)

再発しやすい 特に妊娠後期

(67)
(68)

性感染症

基本的に産婦人科医へ受診する患者さんが多いと思いますが、いつも通りの処 方であれば行って頂いても良いかと思います。  性器ヘルペス・・・妊娠中に再発、悪化する事あり。産道感染を起こす。 →抗ウイルス薬(バラシクロビル)を内服・塗布する。  カンジダ腟症・・・腟・外陰部掻痒感、帯下増加を訴える事が多い。 抗真菌薬(マイコスポール、ラミシールなど)+ステロイド軟膏(リンデロンな ど)を併用する事が多い

(69)

出産後によくある事

便秘(痔)

乳腺炎

胎盤遺残

→処方薬は妊娠中と同様なので省略します。分娩

後子宮の物理的圧迫はなくなりますが、授乳によ

り水分喪失が多くなるため、便が固くなり便秘に

なると考えられています。

(70)

乳腺炎

乳腺炎とは?

→乳房に発赤、腫脹、発熱、疼痛などがあり

授乳機能に支障をきたす事。乳汁のうっ滞が

原因。

乳製品、糖質や脂質

を取りすぎるとな

りやすいと言われている。

乳腺炎の治療は?

→乳房マッサージ(授乳)、飲水、

抗菌薬

与など。乳汁分泌を促すために、

漢方(葛根

湯)

を処方する事も。発熱、疼痛コントロー

ルには

NSAIDs

アセトアミノフェン

を使用す

る。

授乳中は使用可

(71)

まとめ

妊娠初期は

催奇形性

により流産や大奇形を引き起こす可能

性が高く、妊娠中期以降は

胎児毒性

が問題となる。

リスク

ベネフィット

を考え、投与の可否を決定する。

医薬品使用・外科治療による

胎児へのリスク

を過度に恐れず、

母体へのメリットとのバランス

を適切に評価して診療して下さい

(72)

おまけ

北海道における遠隔妊婦健診に関して

遠隔地に住む妊婦さんの妊婦健診の負担を減らすことはで

きないか?

(73)

道内三大学の連携研究 : 北海道全域での社会実装

73 課題1(北海道大学) 「超長距離遠隔地での遠隔妊婦健診・診療の社会実 装研究」 課題2(旭川医科大学) 「離島での遠隔妊婦健診・診療の社会実装研究」 課題3(札幌医科大学) 「本州を想定した近距離医療圏での遠隔妊婦健診・ 診療の社会実装研究」 礼文島⇔稚内 余市⇔小樽 奥尻島⇔函館 網走⇔摩周⇔釧路 コロナ対応:札幌

(74)

旭川医科大学:

離島での遠隔妊婦健診・診療の社会実装

目標:市立稚内病院と礼文町国保船泊診療所を結ぶ周産期遠隔医療シ

ステムを構築し、離島の周産期遠隔医療システムの安全性を検討する。

2020年8月に機材を市立稚内病院と礼文船泊診療所に設置した。

2020年9月に2病院間で診療スケジュールなど調整。

2020年10月から礼文在住妊婦を対象に、遠隔妊婦健診の説明・同

意書の説明を開始した。

現在、月1回〜2回の頻度で遠隔妊婦健診を行っている。

礼文(拠点病院)の機材 稚内(センター病院)の機材

(75)

目標:小樽協会病院と余市協会病院を結ぶ周産期

遠隔医療システムを構築し、近距離の周産期遠隔

医療システムの有用性を検討する。

余市協会病院は従来より小樽協会病院より助産師

が訪問し、助産師外来を開設していたがより安心

な医療を提供するため 遠隔医療用胎児心拍モニタ

を用いた遠隔健診システムを構築した。

札幌医科大学:

「本州を想定した近距離医療圏での遠隔妊婦健診・診療の社会実装研究」

(76)

北海道大学:

「超長距離遠隔地での遠隔妊婦健診・診療の社会実装研究」

【通常タイプ】

遠隔医療用の胎児心拍モニタを利用

【費用節約タイプ】

一般の胎児心拍モニタと市販のスキャナ

とクラウドシステムを利用

目標:超長距離の周産期遠隔医療システムの安全性を検討する。

(77)

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