長野工業高等専門学校紀要 ・第
2 0
号( 1 9 8 9 ) 1 0 5
電 子 複 写 機 用 マ グ ネ ッ ト ロ ー ラ の 着 磁 過 程 の 有 限 要 素 法 解 析
山 本 行 雄 石 井 清 次 荒 木 健 郎
Finite Element Analysis of Magnetizing Process o
n M a g n e t R o l l e r i n E l e c t r o p h o t o g r a p h y .
Yukio YAMAMOTO Seiji ISHII and Takeo ARAKI
Tl l emagnet i c br us h de vo l o pi ng met hodi swi de l y empl oye d i ne l e c t r ophot ogr・
aphi cr e c or di ngc opi e r .Thede ve l ope ri nt hee l e c t r o pbo t ogr a phyc ons i s t sofamagne t r o l l e ra ndas l e e vema i nl y.The ma gne tr o l l e r t r a ns l a t e sc a r r i e ra nd t oneron t he s l e eves ur f a c e .
Whent hema gne tr o l l e ri sma gne t i z e dbyl a r gei mpul s ecur r e nt ,ma gne t i c爪ux . i nma gnet i cma t e r i a l sc a nbede l a ye dbyi nduc e de ddyc ur r e nt .
I nt hi ss t udy,ma gne t i z a t i o npr o bl e mso nt hemagne tr o l l e rwe r es o l ve dbyt he 五mi t ee l eme ntme t hodt ha ti sc ons i der dt hee ddyc ur r ent
l . ま え が き
電子複写機の現像は,現像 ローラによって運ばれた現像剤 と感光 ドラム上の電荷 との相互 作用によって行われる.現像 ローラは現像剤を磁気力によって吸引するためのマグネ ッ トロ ーラとその周囲に配置 される現像ス リーブとか ら成 ってお り, この動作は現像結果に大 きな 影響を与える.現像剤の搬送状況は主 として,マグネ ;トローラの磁界分布 と現像ス リープ の回転数によって定まる.
マグネッ トローラは,各極毎にブロック状に切 り出した永久磁石を芯金の周囲に適当な間 隔 と形状で組み合わせて作るブロックタイプと,芯金の周囲に円筒形の永久磁石でつ くる‑
体形 とがある. ブロックタイプの場合,永久磁石は各極毎に磁化の状態は一定 してお り,磁 界分布は比較的解析 しやす く,磁石寸法を適切に設定するための検討 もなされている
( 1 ) .
それに対 し‑体形は着磁方向も一様ではな く,また着磁間隔 も不規則なため,解析が困難 であ り,所定の特性を得るためには磁化過程の試行錯誤を繰 り返さざるを得なかった.
筆者等はこれまでに,‑体形マグネ ッ トローラについて種種の検討を行い,着磁によって 形成 される磁界を的確に把担できるようになった
( 2 ) ( 3 ) .
* 昭和
62
年4
月 電気学会全国大会で発表** 屯子情報工学科教授
+ 〜
(樵)リコー原稿受付 平成元年
9
月3 0
日1 0 6
E g l l
電子投写桟の現像部枕要本報告では,マグネ ッ トローラを着磁する場合,着磁に伴 って発生する渦電流を考慮 した 有限要素法解析を用いて着磁の様子を解析す る方法について述べている.着磁に使用する磁 極を構成する磁性材料は複数種あるため, この場合の基本式を導 き,次に着磁及びその結果 か らマグネ ッ ト。‑ラの磁化状態を明かに している.
2 .
電 子 複 写 機 の 概 要2 ‑1
現像方法電子複写機の現像部分は図
1
のように構成 され,感光 ドラム上において,帯電 ・現像 ・転 写 ・定着の順に動作す る.現像に必要な現像剤 (トナー)は2
成分現像の場合は,現像 ローラによって搬送 されるキャ リアによって運ばれる.現像 ローラは固定 されたマグネ ット。‑
ラと,その周囲に同心円状に固定 され,適当な速度で回転す る現像ス リープとか ら形成 され ている・ トナーと苧ヤ リアは,両者の混合の際発生する摩擦電気に よって静電的に吸着
L L
合 っている. またキャ リアはマグネ ッ トローラの磁気力に よって,現像 ローラ表面を放送 され る.現像部では,帯電 ・露光に よって生 じた静電力に よって トナーが感光 ドラムへ吸引され現 像が行われ る.
2 ‑2
マグネ ッ トローラの着磁過程マグ声 ッ トローラはキャ リアの搬送に適 した大 きさと極性に着磁す る必要がある・着磁に 当たって,先ず一定磁界を加 えて磁化容易方向を∵定方向に揃えるための配向を行 う.
次にパルス磁界を加 えで着磁をする.パルス磁界が発生するIt,着磁磁極に渦電流が発生 し,着磁効果が低減す る.着磁 されたマグネ ッ トローラの磁化は一様ではな く,着磁磁界 の 分布に従 って不均一分布 となる. この不均一分布が‑体形マグネ ッ トローラの特散であ り, 現像剤の搬送に大 きな影響を与える.
電子投写横用マグネットローラの着磁過程の有限要素法解析
1 0 7
弟 1導 体 系第 i 導 体 系
図
2
複数導体を組み合わせた導体系 図3
一次三角形要素3 .
着 滋 解 析 の 基 本 方 程 式マグネ ッ トローラの着滋は,渦電流の流れ る非線形磁界問題を解 くことになる.
電磁界の基本式 は次式で表 され る
( 4 )
r o t H=J
B‑r o tA , B ‑ F L H+M
Je ‑ o ・ E e , J‑Jo +Je r o t E
e・% ‑0
)l/)
)
1234
■HlいrHuJl■HHlHrHHl u
ここに
,A :
ベ ク トルポテンシャル,B :
磁束密度,E c:
渦電流を流すための電界,J:
全電流密度, J
C:
渦電流密度, Jo:
強制電流密度,a :
磁界,M :
磁化,o:
導 電率,〟:透磁率.上式において,軟磁性材料では
〟‑
0,永久磁石では〝‑〝o(
真空 の透磁率) とす る.式( 2 ) ,( 4 )
か らr o t ( E C ・% )‑0
とな るか ら,読(
3 )
に代入 して渦電流は次式で表 され る.∂ A
J C =‑ q 甘 ‑0gr a d Q
(5)
(6)
ここに,gr a d
卓 は渦電流に よって形成 される電界を決定す るに必要な補正項 であ る.マグネ ッ トローラは軸方向に十分長いので,二 次元解析で十分 と考 え られ る.式(1)〜(6)を 二次元場について整理す る と次 の基本式が得 られ る.
L. 1 +Jo +Jm+ I C =0
(7)1 0 8
ここ に,
山本行雄 ・石井清次 ・荒木健郎
LA
‑意 (yy意 )・% (yx%)J
e‑‑q (
%・ % )
J‑
‑v o
(警 一
驚 )ただ し,電流 Joの方向は Z方向 としている.
二次元場では渦電流は Z方向にのみ流れるか ら,独立 した導体の x・y断面での電位 卓は 一定 となる. すなわち, 渦電流は Z方向に一定であ り少は
x ,y
方向に一定であるか ら,∂ ≠ / ∂
Z は一つの導体上では一定 となる.渦電流を含んでいる場合の定式化に当たって,図
2
のように〃i
種の導体を連結 した導体 系がN
組存在 しているしている場合について考える.第 i導体系の第j導体の断面積をS, ・ j
とすると,第i導体系の断面積
S
はM i
S. ・ ‑ ) ∑ S I ‑ I
,・,・(i‑1 ,2,3 ,‑・ ・ ・ )
(8)各導体系毎に渦電流は往復 して流れているか ら,導体系毎の渦電流の総和は 0である.
J s / e d s ‑ 丁 凱 q ・ ・ , . ( 昔・ % ) ‑o
(9,x , y
方向に渦電流は流れないとしているか ら,異種の導体が連結されていても一つの導 体系ではdd/ d
Zは一定である.第 f導体系のdd/ d
Zをd z
.・と書 くと, % q ・ ・ j S ・ ・ , ・ @妄 華 ・ ・ j l s , , ( 一意)ds
‑薫q・.j垂
l i
AC謹
上3
・ Eq J
M・ =
f1 ・ . , ・ S ・ , , ・ Q z E ・ B l q ・ ・ 填磐
A3
=0 ( 1 0 )
ここに
,A㌫ :
時刻A
iだけ過去のAm
の値数値計算では非線形計算を単純にするために,三角形一次要素を採用する.
図
3
のように,一つの要素の節点をi ,
i,k
とし,各節点の座標 とベク トルポテンシャル をそれぞれ,( x m,ym) ,Am
とする.ただ しm‑i
,i,k
である.ガラ‑キン法により,各要素の第
i
節点に関する残差G
子を求める.電子投写横用マグネット着磁p‑ラの過程の有限要素法解析
Gf ‑I A N・ ・ ( L^ ・Jm・
Jc)ds ここで,N
LはA
‑ F
刀L h k
ーF.・NmAm
で定義 され る補間関数である.
解析領域全体での残差は
G
iは次式で表 され る.n e G. I ‑ 2 ) l E = ]G7 1 ‑0
ここに,N
c :
全要素数 式(
18において,G7‑‑l s . N. I ( L^ .J J J e )d xd y A
‑
y ∑
m=I l R, ・ m Am
一与 A‑チ (Mxc, ・
‑M , b i)・
填意 ( 1 ・6
・・ m, 8
%・q
÷卓z E
ここに
,M
.,My:
永久磁石の磁化 のX ,
y 方向成分,A:要素 の面稔,8 , ・ m‑1( i ‑m)
または0( i ≠m)
RE m ‑ 拠 4 4 ‑ ,N‑‑
去( a m.b mx・C ‑y )
ただ し形式的に,i +1 ‑
)' ,i +1‑k,A+1‑i
としている.非線形磁界の解法に
Ne wt o n‑ Ra phs o n
法を用 いると驚 ‑
y
R・・,.・÷芸
Ui
Uj一意g ;a( C ・ ・ c o so‑b l s i ne ,
・q
A( 1 ・8 ・ . , I )
(ll)
( 1 2 )
( 1 3 )
( 1 4 )
( 1 5 )
ここに, 0 :磁化Mの方向,M d:
磁化の大 きさ,Bd:
磁束密度 の e方向成分A
UE ‑刀 R, m=l ・ mAm
% ‑与
% ‑ 11 0 9
11 0
山本行雄 ・石井清次 ・荒木健郎F
1‑QzL ・ & i , ・ 畠
饗÷ / S C E , ・ SL , ・
如( 1 8 ,
豊
‑ , 4意 偵 Q・ . , ・ S・ ・ , ・ Qi , ・
式個か ら89を用いてつ ぎのマ トリクスを作成す る.
〔
葦]Nb ,Nb 農
〕ML
,ML〔 畏〕 M I .Nb
農 〕ML,ML〔S
G , ・ ] N b ,1
〔842 7
〕 M L ,1
[‑Gz・]N
b ,1
l ‑ F L ]
ML,1( 1 9 )
(20)
ここに,各行列の脚字はそれぞれのマ トリクスの行数 と列数を表 している・
4. マグネ t ・ Jトローラの着滋過程 と着磁結果
4 ‑1
着位過程所定の着磁磁界を発生 させ るために,図
4
のような磁気回路をマグネ ッ トローラの周囲に 配置す る. ここでは5
極の非対称配置の場合について検討す る.磁気回路の材質の磁化特性 を,次式で近似す る.H‑a.
l l B+aL 3 B3 +a. 1 5 B5 ( 21 )
ここに,H :
磁界,B :
磁束密度,i:
材 料番号,a
.・1,a
,・3 ,ai 5:
材質によって定まる定数.
マグネ ッ トローラが配向されていて,磁 化特性が均一でない場合は,次の係数 ∂を 用いて要素毎に次の補正をす る.
H‑al ( B/ b ) +a2 ( B/ b ) 3 +aS ( B/ b ) 5 ( 2 2
)b ‑ ‑ B B C ‑ k k l α
lα
。2
2+k +k
22aα
O (23)図
4 5
極着磁用磁路の構成ここに,k
l ,k
2:定数,B s ,B ,:
それぞれ配向を受けた場合の飽和磁束密度 と残留磁気,α:
角型比( B, / Bs )
,脚字 0 :配向を受けていない ことを示す.電子投写横用マ グネ ット。‑ラの着磁過程の有限要素法解析
飽 如 / /
0 4 0 0
磁 界 【k A / m 】
図
5
マ グネ ッ ト.I‑ラの着磁特性 図6
着磁 されたマ■グネ ッ ト.,‑ラの磁束線図0
(撃東野)
喝蜘僻村1 5
0
5
1・ . , :
爪 ‑○ :
'.突̀計 算 値測 値 p・も o+1 8 0 十 棉
f70才 ‑.‑I.. ‑Ji 7.=,7?.描
図
7
着磁 されたマグネッ トローラの発生磁界1 1 1
112 山本行雄 ・石井清次 ・荒木健郎
また,上式において実測か ら,残留磁気 と角形比 との問には
B, ‑k l α +k
2( 24 )
の関係があるものとしている.
着磁電流を流 し,各時刻毎に式 (20)を適用 し要素毎の着磁磁界を算出す る.全時刻につい て計算終了後,各要素の最大磁界に よって着磁がなされたもの として,磁化を決定す る.図
5
のように飽和磁束密度以上に磁化 された場合は,残留滋気B
,に着磁 されるもの とし,そ れ以下の場合はB, a ‑( B/ Bs ) B, ( 25 )
に着磁 される.
4 ‑2
着位結果以上の過程で着磁 されたマグネ ッ トローラの発生磁界を再び有限要素法によって計算す る と,図6のよ うな磁束線図が得 られ る.着磁によって形成 された残留滋気の発生す る磁界が 複写機のキャ リアの搬送を可能にす る.マグネ ッ トローラの残留磁気の形成す る磁界を再び 有限要素法によって求める. この場合は着磁計算をした場合の式か ら渦電流に関す る項をな くす ととに よって,計算 される.現像ス リーブ上の形成 され る磁界を図
7
に示す.本計算結 果 と実測値 とは良 く一致 してお り複雑な着磁結果について有効 な解析がなされていると言える.
5. あ と が き
マグネ ッ トローラの発生磁界を着磁過程か ら解析す ることに より,明確に計算す ることが 可能になった.従来 この種の着磁磁路の構成は試行錯誤を繰 り返 して決定 していたが,あ ら か じめ精度の良いシ ミュレーションを行 うことが可能 となった.解析において有限要素法に よる計算を何回か繰 り返すため累積誤差が大 きくなることも予想 されたが,結果は実測値 と 良い一致を示 していると言える.
本研究は,(秩)リコー第
2
技術都 立神汎部長の御指導によることを記 し感謝 の意を表す る.参 考 文 献
( 1 )
中田 ・高橋 ・波多野 :有限要素法による永久磁石寸法 の 決 定 法, 日本応用磁気学会誌, γol
.6
,No.2,pp.1 51 ‑1 5 4( 1 9 8 2 )
( 2 )
山本 ・石井 ・荒木 :電子投写校用マグネットt,‑ラの磁界解析,昭和61年電気学会全国大会No . 7 3 2( 1 98 6 )
( 3 )
荒木 ・石井 ・山本 :電子複写機用一体形マグネットp‑ラの配向度を考慮 した特性解札 昭和62年 電気学会全国大会No.7 6 9( 1 9 8 7 )
(4)中田 ・高橋̲̲:電気工学の有限要素韓 (第