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取消 訴訟 にお ける行 政機 関 の出訴 資格

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取消 訴訟 にお ける行 政機 関 の出訴 資格

秋 山 義 昭

1.は じめ に

2.取 消 訴 訟 の 当 事 者 能 力 3.行 政 機 関 の 当 事 者 能 力 4.問 題 と な る 場 面 5.従 来 の 判 例

6.検

7.ま と め

1.は じ め に

本 稿 は,行 政 機 関が 取 消 訴 訟 を提 起 す る こ とが で き る か,で き る とす れ ば, どの よ う な場 合 に,何 を根 拠 に で きる か の 問 題 を検 討 す る もの で あ る 。

近 年,社 会 関係 が 高 度 に 複 雑 化 し,科 学 技 術 が 著 し く発 展 す る に及 ん で,行 政 の 規 制 手 段,行 政 と私 人 の 関 係,行 政 を め ぐる 利 益 状 況,私 人 相 互 の 利 害 対 立 も一段 と複 雑 多 様 化 して きた 。 か か る状 況 を 反 映 して,行 政 訴 訟 に も大 き な 変 化 が 見 られ,立 法 当 時 予 想 し得 な か った 訴 訟 類 型 や 訴 え提 起 の 手 法 が採 られ る よ う に な っ て き た。 な か で も,近 年 の 原 告 適 格 拡 大 論 と も呼 応 して,出 訴 権 者 が 一段 と多 様 化 し,典 型 的 な取 消 訴 訟 提 起 者 で あ る処 分 の 相 手 方 の み な らず, 相 手 方 以 外 の 第 三 者 は も と よ り,地 域 住 民,消 費 者,自 然 保 護 団 体,公 害 被 害 者 を 守 る会 な どが 原 告 とな って,共 通 の 利 益 を 主 張 し て訴 訟 を起 こす こ と も増 え て きて い る。 ま た,地 方 公 共 団体 や 公 団 等 の特 殊 法 人 が行 政 庁 の処 分 を裁 判 で争 う よ うな例 も見 られ る。

〔1〕

(2)

2 第58巻 第1号

行 政 機 関 が 取 消 訴 訟 を提 起 す る こ と も稀 で は な い 。 訴 訟 理 論 か らす れ ば,行 政 機 関 が 属 す る行 政 主 体 が 訴 え を提 起 す べ きな の で あ ろ うが,当 該 行 政 機 関 が 処 分 の 相 手 方 で あ っ た り,当 該 行 政 機 関 が な した 処 分 に審 査 機 関 が 裁 定 を下 し た よ う な場 合 に,行 政 機 関が 処 分 や 裁 定 の取 消 訴 訟 を提 起 す る こ とは,今 で も よ くあ る こ とで あ る 。

行 政 機 関 は,権 限 を 行 使 す る 地位 に は あ る が,権 利 義 務 の 帰 属 主体 で もな け れ ば,権 利 能 力 な き社 団 で もな い 。 した が っ て,判 例 は,多 くの場 合,行 政 機 関 に よ る取 消 訴 訟 の提 起 を不 適 法 とす るが,中 に は積 極 的 に 出訴 を 適 法 と し, あ る い は労 働 委 員 会 に よ っ て発 せ られ た救 済命 令 の 取 消 訴 訟 の よ うに,行 政 機 関 に よ る 出 訴 の 適 否 を 全 く問題 に せ ず(な い し は,出 訴 の 適 法 性 を 前 提 に した うえ で),本 案 判 断 に入 る実 務 が 定 着 して い る と思 わ れ る例 も見 られ る。

本 稿 で は,こ の点 に 関 す る従 来 の 判 決 例 を概 観 し,こ の う ち の特 に 出 訴 を肯 定 す る判 決 を参 考 に しな が ら,行 政 機 関 の取 消 訴 訟 提 起 の 可 能 性 に つ い て,理 論 的 な整 理 を試 み よ う とす る もの で あ る。

2.取 消 訴 訟 の 当事 者 能 力

取 消 訴 訟 の 原 告 た り得 る当 事 者 と して の 資格,当 事 者 能 力 につ い て は,行 政 事 件 訴 訟 法(以 下 「行 訴 法 」)上 特 段 の 規 定 が な い の で,民 事 訴 訟 の 例 に よ る

こ と に な る(行 訴 法 第7条)1)。

1)こ の意 味 での被 告 適格 につ いて は,行 訴法 上特 別 の定 めが あ る。 平成16年 改正 前 の行訴 法 第11条 は,取 消 訴 訟が行 政庁 の権 限行 使 の適法 違法 を争 うとい う特殊 な 構 造 を反 映 して,取 消 訴訟 の被告 を,権 利 能力 の 主体 であ る国や 公共 団体 で はな く,処 分 を した行政 庁 と してい た。 これ は,「 多分 に政策 的 考慮 に基 づ くもの」

であ った が,実 際 に は被 告行 政庁 を特 定す るこ とが 困難 な場合 が 少 な くな く,被 告 を誤 り被 告変 更 が許 され ない場 合,出 訴 期 間 を徒 過 し,司 法救 済 の道が 閉 ざ さ れて しま うこ ともあ った。 そ こで,平 成16年 に改正 された現 行行 訴法 は,被 告 行 政庁 を特 定す る原 告の負 担 を軽減 し,抗 告 訴訟 か ら当事 者訴 訟へ の訴 えの変更 の 手 続 を行 いやす くす るため に,取 消訴 訟 の被告 適格 を処 分 を行 った行 政庁 か ら当 該 行政 庁 が所属 す る国 や公共 団体 等 の行政 主体 に変 更 した。 これにつ い ては,橋 本 博之 『解 説改 正行 政事 件 訴訟法 』(弘 文 堂,2004年)105頁 以下,宇 賀克 也 『

(3)

取消 訴訟 にお け る行政 機 関の 出訴資格 3 す な わ ち,実 体 法 上 の 権 利 能 力 者,法 人 は も と よ り,権 利 能 力 が な くて も, 独 自 の社 会 的 活 動 を な す 実 体 を有 す る社 団 また は財 団 で 代 表 者 ま た は管 理 人 の 定 め が あ る も の は,実 体 法 上 法 人 と擬 制 され て い る場 合(所 得 税 法 第4条,法 人 税 法 第3条)に 限 らず,当 事 者 能 力 を有 す る(民 事 訴 訟 法 第28条,第29条)2)。

これ らの 者 が 処 分 の 取 消 しを 求 め る につ き 「法 律 上 の利 益 」 を有 す る 限 り,取 消 訴 訟 を提 起 し得 る こ と は言 う まで もな い 。

3.行 政 機 関 の 当 事者 能 力

国や地 方公共 団体 等の行政主体 は,法 人格 を有す る権 利義務 の帰属 主体 であ る か ら,当 事 者 能 力 を否 定 す る 理 由 は な く,自 己 に対 す る処 分 の取 消 しを 求 め る につ き 「法 律 上 の 利 益 」 が あ る と い うの で あ れ ば,行 政 機 関 に原 告 適 格 を 認 め るべ きで は な い か と思 わ れ る3)。 そ れ は 「法 律 上 の 争 訟 」 で あ っ て,行 政 主

正 行 政事件 訴 訟法』(青 林書 院,2004年)56頁 以下 。

2)南 博 方編 『注釈 行 政事件 訴 訟法』(有 斐 閣,1972年)77頁(高 林 克 己執筆),園 部 逸夫 編 『注 解 行政 事件 訴訟 法』(有 斐 閣,1989年)78頁(春 日偉 知郎 執筆)。

3)行 政 主体 問の紛 争 に 関す る最近 の研 究 と して は,村 上裕 章 『行 政 訴訟 の基礎 理 論』

(有斐 閣,2007年)52頁 。 学説 に は,制 限的 にせ よ,行 政 主体 の原告 適格 を肯 定 す る もの が多 い。 これにつ い ては,村 上 ・同書59頁 以下 を参 照。

しか し,最 高裁 は,国 民 健康保 険 の保 険者 であ る市 町村等 が 国民健 康保 険 審査 会 の裁 決 を不服 と して,そ の取消 しを求 め る原 告適格 を有す るか とい う点 に 関 し, 保 険者 で あ る市の した保 険 給付 等 に関す る処分 の審 査 に関 す る限 り,審 査 会 と保 険者 た る市 は一般 的 な上 級行 政庁 とその指 揮監 督 に服す る下 級行 政庁 の場 合 と同 様 の 関係 に立 ち,該 処分 の適 否 につ いて は審査 会 の裁決 に優越 的効 力 が認 め られ, 保 険者 はこれ に拘 束 され るべ き ことが予 定 されて い る として,保 険者 た る市 町村 等 の 原告適 格 を否 定 した(最 判 昭和49・5・30民 集28巻4号594頁)。 た だ し,学 説 には,こ の最 高 裁判 決の 見解 を疑 問視す る ものが 多 い。 これ につ いて は,石 森 久 広 「国民健 康保 険事 業 の保 険者 の地位」行政判 例 百選1[第5版]4頁 を参照 。

さ らに,土 地改 良 区が 自己の総 代選 挙 を管理 した選挙 管理 委員 会 の決定 な い し 裁 決 の取消 しを求 め た事 案 につ き,最 高裁 は,県 選 挙管 理委 員会 は土 地改 良 区の 機 関 で あるか ら,土 地改 良 区 は被 告選 管 の裁決 に拘 束 され,ま た,土 地改 良 区 は 本 件裁 決 の取消 しを訴 求す る につ き法律上 の利 益が ない と して,土 地 改 良区 の原 告 適格 を否 定 した(最 判昭和42・5・20民 集21巻4号1030頁)。

なお,本 稿 で は,国,地 方公共 団体 等 の行政 主体 の 出訴 資格 の問題 には立 ち入 らな い。

(4)

4 第58巻 第1号

体 間 の 紛 争 は 「機 関 訴 訟 」 で は な い 。 た だ,い か な る場 合 に,こ れ らの 行 政 主 体 が 行 政 庁 の 処 分 に よ り権 利 を侵 害 さ れ た と して 取 消 訴 訟 を提 起 し得 るか,こ

と に,行 政 主 体 が そ の 事 業 の執 行 上 影 響 を 受 け る場 合 に,こ れ を もっ て 権 利 侵 害 と言 い得 るか,取 消 し を求 め る 「法 律 上 の 利 益 」 あ りと言 え る か は,問 題 と な る と こ ろ で は あ ろ う。

しか し,各 省 大 臣,都 道 府 県 知 事,市 町村 長 等 の 行 政 機 関 は,一 般 的 に,法 人 た る 国 や 地 方 公 共 団体 等 の行 政 主 体 の た め に,法 令 に よ って 与 え られ た権 限 を行 使 す る機 関 で あ っ て,行 政 機 関 が そ の権 限 の 範 囲 内 に お い て行 う行 為 の効 果 は,も っ ぱ ら行 政 主体 に帰 属 す る。 す な わ ち,行 政 機 関 そ れ 自体 に は法 人 格 が な く,法 的 に は権 利 義 務 の 帰 属 主 体 で は な い 。

行 政 機 関 は,通 常 独 任 制 で あ る が,政 治 的 に 中 立 公 正 な 行 政 を営 む 必 要 の あ る 領 域,専 門技 術 的 な 知 見 に基 づ く判 断 を必 要 とす る行 政 分 野 等 に お い て は, 他 の 政 治 的影 響 か ら独 立 して行 政 を公 正 に進 め,あ る い は 専 門家 を加 え た合 議 体 の 慎 重 な 決 定 手 続 が 必 要 な場 合 が あ る の で,こ う した 分 野 で は合 議 制 の行 政 機 関,い わ ゆ る行 政 委 員 会 が 置 か れ る。 国 で は,公 正 取 引 委 員 会,国 家 公 安 委 員 会,中 央 労 働 委 員 会 等,地 方 公 共 団 体 で は,教 育 委 員 会,人 事 委 員 会,選 挙 管 理 委 員 会,労 働 委 員 会 等 が これ にあ た る が,行 政 委 員 会 に は多 か れ 少 な か れ 独 立 した 職 権 行 使 が 認 め られ て い る ほか,当 該 分 野 につ き,規 則 制 定 の よ う な 準 立 法 的 権 限,審 決,裁 決 の よ うな 準 司 法 的権 限 が 付 与 され て い る の が 通 例 で あ る 。 しか し,行 政 委 員 会 も行 政機 関 の1種 で あ る こ とに は変 わ りが な く,権 利 能 力 を有 さず,独 自の社 会 的活 動 を なす 実 体 を有 す る社 団 ま た は財 団 で もな い 。

い ず れ にせ よ,訴 訟 法 上 は,行 政 機 関 は 実体 法 上 権 利 能 力 を有 せ ず,そ もそ も訴 訟 に よっ て 保 護 さ れ るべ き権 利 を観 念 す る こ と は で きな い か ら,訴 訟 当事 者 能 力 を有 す る も の とは 言 え な い4)。

4)雄 川 一 郎 行 政 争 訟 法 』 有 斐 閣法 律 学 全 集(有 斐 閣,1962年)168頁

(5)

取消 訴訟 にお ける行政 機 関の 出訴資格 5

4.問 題 と な る 場 面

訴 訟 当事 者 能 力 の 有 しな い行 政 機 関 が提 起 した取 消 訴 訟 が 問 題 と な る局 面 と して は,次 の3つ が 考 え られ る。

第1は,原 告 適 格 の 有 無 で あ る。

行 訴 法 に 定 め る取 消 訴 訟 も,通 常 の裁 判 所 が 正 式 な 訴 訟 手 続 に よ っ て違 法 な 行 政 処 分 の取 消 しを行 う裁 判 の作 用 で あ る 以 上,訴 え が 適 法 な もの と して取 り 上 げ られ,本 案 判 決 を得 る た め に は,出 訴 の 要 件,す な わ ち訴 訟 要 件 を満 た さ な くて は な ら な い。

この 訴 訟 要 件 の うち,裁 判 所 の権 限,訴 訟 手 続 の形 態 上 の 要 件 とい っ た形 式 的,手 続 き的 事 項 を 除 い た,原 告 の 請 求 に 対 す る 関係 か ら生 ず る 要 件(い わ ゆ る 訴 権 の要 件)と して は,① 権 利 保 護 の 資格 と して 当該 行 政 庁 の行 為 が 訴 え の 対 象 た る 資 格 を有 す る こ と(行 政 処 分 性),② 権 利 保 護 の 利 益 と し て 具 体 的 な 四 囲 の 状 況 か ら して本 案 判 決 を な す 具 体 的 な 利 益 が 存 す る こ と(狭 義 の 訴 え の 利 益),③ 当 事 者 適 格 と して 当 該 処 分 につ き原 告 が 訴 え を 提 起 す る適 格 を有 す る こ と(原 告 適 格)が 挙 げ られ る5)。 行 訴 法 第9条 は,上 の② と③ の 要 件 に つ い て,取 消 訴 訟 は,当 該 処 分 の取 消 しを 求 め る につ き,「 法 律 上 の 利 益 を有 す る 者(処 分 又 は裁 決 の 効 果 が 期 問 の 経 過 そ の 他 の 理 由 に よ りな くな った 後 に お い て も なお 処 分 又 は裁 決 の 取 消 し に よ っ て 回復 す べ き法 律 上 の利 益 を有 す る者 を含 む 。)に 限 り,提 起 す る こ とが で き る。」 と定 め て い る6)。

5)南 博 方 編 条 解 行 政 事 件 訴 訟 法 』(弘 文 堂,1987年)328頁(前 田 順 司 執 筆)。

6)も っ と も,行 訴 法9条 に い う 「法 律 上 の 利 益 」 と は 何 か に 関 し て は,特 に 行 政 処 分 の 相 手 方 以 外 の 第 三 者 に つ い て,学 説 は,大 き く 「法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 説 」 と 「法 律 上 保 護 に値 す る 利 益 説 」 に 分 か れ て い る こ と は 周 知 の とお りで あ る。 判 例 は,古 くか ら比 較 的 厳 格 な 「法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 説 」 に 立 っ て きた と言 え る が,近 年 は,判 例 理 論 に や や 緩 和 傾 向 が 見 ら れ,基 本 的 に は 「法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 説 」 を 維 持 し つ つ も,解 釈 原 理 と し て は,処 分 の 根 拠 と な っ た 条 文 の 文 言 の み で な く,「 直 接 明 文 の 規 定 は な く て も,法 律 の 合 理 的 解 釈 に よ り当 然 に 導 か れ る 制 約 を行 政 権 に 課 して い る か 」 と い っ た 柔 軟 な基 準 を 採 用 し て き て い る 。 判 例 で 示 さ れ た こ の 解 釈 基 準 は,平 成16年 の 改 正 行 訴 法 第9条 第2項 で 考 慮 事 項 と し て 明 文 化 さ れ る に至 っ た 。 こ れ に つ い て は,橋 本 ・前 掲 書 注(1)30頁 以 下 。

(6)

6 第58巻 第1号

厳 密 に言 え ば,訴 え を提 起 す る 適 格 性 に は,概 念 的 に,原 告 が 訴 訟 上 の 当事 者 能 力 を有 す る こ と と救 済 を求 め る に足 る主 観 的 な利 益 が存 す る こ と との 両 者 が 含 まれ る 。 そ して,取 消 訴 訟 を提 起 す る こ との で きる 一 般 的 ・抽 象 的 な資 格 の 問 題 と,訴 え を提 起 した 原 告 に 具 体 的 な権 利 関 係 か ら 「法律 上 の利 益 」 が あ る か 否 か の 問 題 は元 来 別 の も の で あ っ て,両 者 は 区 別 して 考 え な くて は な らな い。 しか し,従 来,原 告 適 格 の 問題 は,学 説 上,主 と して前 者 の 「法 律 上 の 利 益 」 の 解 釈 を め ぐっ て争 わ れ,後 者 の 訴 訟 当事 者 能 力 に 関 して は ほ とん ど関 心 が 向 け ら れ て こな か っ た か,両 者 を 区 別 せ ず,主 観 的 な訴 え の 利 益 の 問 題 と渾 然 一 体 と して 論 じ られ て きた と言 え る 。 した が っ て,訴 訟 上 の 当 事 者 能 力 の な い者 が 取 消 訴 訟 を提 起 した 場 合,多 く は被 侵 害 利 益 の 不 存 在 の 問 題 と して 扱 わ れ,「 訴 え の 利 益 」 な し と して,訴 え提 起 は 不 適 法 と され て きた 。

第2は,「 機 関訴 訟 」 該 当性 で あ る。

行 政 機 関 に は 訴 訟 当事 者 能 力 が な い と して も,制 度 上,行 政 機 関 に よ る出 訴 の 途 が ま っ た く閉 ざ さ れ て い る わ け で は な い。 わ が 国 の 行 政 訴 訟 制 度 は,裁 判 所 が 「法 律 上 の 争 訟 」,すな わ ち権 利 主 体 間 の 具 体 的 な権 利 義 務 に 関 す る紛 争 を, 法 律 を適 用 して解 決 す る作 用 で あ る こ と をそ の基 本構 造 と して い る。 行 政 機 関 と行 政 機 関 の 間 の 権 限 の存 否 ま た は行 使 に 関す る紛 争,い わ ゆ る 「権 限 争 議 」 は,例 外 的 に,立 法 政 策 的 配 慮 に基 づ い て 「機潤 訴 訟 」 と して特 に法 律 に 定 め る場 合 にお い て,法 律 に 定 め る者 に 限 り認 め られ る(行 訴 法 第6条,第42条)7)。

した が っ て,こ の 種 の 訴 え は,機 関 訴 訟 を 認 め る特 別 な 規 定 の な い 限 り,「 法 律 上 の 争 訟 」 に あ た らず,司 法 審 査 の 対 象 外 とさ れ て きた。

第3は,不 服 審 査 制 度 との 関 係 で あ る 。

行 政 機 関 に よる 処 分 に対 し審 査 請 求 等 の 不 服 申 立 て が な され,上 級 審査 機 関

7)昭 和23年 の 行 政 事 件 訴 訟 特 例 法 に は 特 段 の 規 定 は な か っ た が,い わ ゆ る 「機 関 争 議 」 は法 律 上 の 争 訟 の 性 質 を 有 せ ず,し た が っ て,そ の 解 決 は,法 律 に 特 別 の 定 め の な い 限 り,裁 判 所 の 権 限 に 属 さ な い とす る の が 当 時 の 通 説 ・判 例 で あ っ た(雄 川 ・前 掲 書 注(4)117頁)。 昭 和37年 の 行 政 事 件 訴 訟 法 は,こ れ を 明 文 化 した が,平 成16年 に 改 正 さ れ た 現 行 行 訴 法 は,そ の ま ま こ の 規 定 を踏 襲 して い る。

(7)

取 消訴 訟 にお ける行 政機 関 の出訴 資格 7 や 第 三 者 審 査 機 関 が 裁 決 等 を下 した場 合,行 政 機 関 が こ の裁 決 の 取 消 し を求 め て訴 訟 を提 起 で き る か は,不 服 審 査 制 度 の基 本 構 造 との 関係 で 論 じ られ る。 行 政 機 関 に よ る この 種 の 出 訴 が 許 さ れ な い こ とは,審 査 機 関 の 下 した裁 決 の 拘 束 力 に 関 す る定 め が あ る(行 政 不 服 審…査 法 第43条 第1項,2項)こ とか ら して も

当然 で8),ま た,同 一 行 政 組 織 内 部 の 機 関 相 互 の 争 い と い う の で あ れ ば,「 機 関訴 訟 」 と して,特 に法 律 の 規 定 あ る 場 合 以 外 は 認 め られ な い と い う見 方 もで きる で あ ろ う9)。

従 来 の 裁 判 実 務 は,行 政 機 関 に よっ て 取 消 訴 訟 が 提 起 され た 場 合,争 い の 態 様 に よ っ て,上 の3局 面 の い ず れ か に 当 て は め,あ るい は そ れ ぞ れ の 局 面 で 問 題 に な る却 下 理 由 を複 合 的 に挙 げ て,出 訴 を認 め な い のが 通 例 で あ っ た 。

5.従 来 の 判 例

従 来 の 判 例 は,行 政 機 関 に よ る取 消 訴 訟 の提 起 に は一 般 に 否 定 的 で あ った と 言 え る が,こ の こ と を,行 政 機 関 の種 別 や 処 分 の 態 様 に よっ て 以 下 に概 観 す る

こ と とす る。

〔1〕 地 方 議 会 ・議 会 の 議 員

地 方 議 会 は,一 般 的 に は 条 例 の制 定 ・改 廃 の よ うな 立 法 的権 限 を有 す る 議 決 機 関 で あ っ て,上 述 の 意 味 で の 純 然 た る 行 政 機 関 で は な いが,予 算 ・決 算 の 決 定,契 約 の 締 結,財 産 の取 得 ・処 分 の 決 定 等,多 くの 行 政 的権 限 を有 す る(地 方 自治 法 第96条)。 行 政 的権 限 を行 使 す る 限 り,合 議 制 の 行 政 機 関 と同 視 して

よ いが,い ず れ に せ よ,地 方 公 共 団体 の 機 関 で あ る こ と に は 変 わ りは な く,訴 訟 を提 起 す る 当事 者 能 力 が 問 題 と な り得 る。

8)芝 池 義 一 『行 政 救 済 法 講 義 ・第3版 』(有i斐 閣,2006年)189頁 。大 阪 高 判 昭 和46・

11・11判 時654号25頁

9)塩 野 宏 地 方 公 共 団 体 に 対 す る 国 家 関 与 の 法 律 問 題(二 ・完)」 国 家 学 会 雑 誌79 巻9=10号105頁

(8)

8 第58巻 第1号

この 点 に つ い て,下 級 審 の 判 例 は 分 か れ て い た 。 す な わ ち,長 に よる 議 会 の 解 散 を議 会 が 争 っ た事 案 につ い て,松 山地 判 昭和25・3・16行 集1巻1号76頁

は,機 関 訴 訟 は これ を争 い 得 る とす る特 別 の規 定 あ る場 合 にの み 許 され る とこ ろ,か か る規 定 が な い の で 議 会 が解 散 処 分 の取 消 しを 求 め る こ と は 許 され な い と し た が,岡 山 地 判 昭 和25・5・29行 集1巻2号248頁 は,同 じ く議 会 が 長 に よる 議 会 解 散 の 無 効 確 認 を求 め た事 案 につ き,裁 判 所 は あ ら ゆ る法 律 上 の 争 訟 を裁 判 す る とす る新 憲 法 の 精 神 か ら裁 判 所 に 審 理 権 が あ る と解 し,議 会 の 訴 え を 適 法 と して い た。 しか し,最 判 昭 和29・2・26民 集8巻2号607頁 は,地 方 議 会 の 当 事 者 能 力 を否 定 し て い る 。 村 議 会 解 散 請 求 の代 表 者 お よ び村 議 会 代 表 者 が,解 散 請 求 者 署 名 簿 の 署 名 に つ い て 村 選 挙 管 理 委 員 会 に対 し異 議 の 申立 て を した が,こ れ に対 す る選 挙 管 理 委 員 会 の 決 定 に不 服 が あ る と して,解 散 請 求 の代 表 者 が 決 定 の 一 部 取 消 しの 訴 え を提 起 し,議 会 の代 表 者 が こ れ に当 事 者 と して 参 加 す る こ と を 申 し出 た事 案 に つ き,最 高 裁 は,議 会 に は訴 訟 上 当 事 者 能 力 が な い と して 参 加 の 申 し出 を却 下 した 原 審 の 判 断 を支 持 し て,「 議 会 は普 通 地 方 公 共 団体 の 機 関 で あ っ て,法 律 関 係 の 主体 で は な い か ら,法 律 に特 別 の規 定 あ る 場 合10)の ほ か 裁 判 上 自 己 の 名 に お い て 訴 え 又 は 訴 え られ る 権 能 を有 し

な い 」 と判 示 した。

また,地 方 議 会 の構 成 員 で あ る 議 員 の 出 訴 資 格 に つ い て も,判 例 は 同様 に機 関 訴 訟 の論 理 で こ れ を否 定 す る 。

まず,議 員 が 議 員 と して の 身分 に関 係 な く,議 会 の議 決 を争 う よ う な場 合 は, 判 例 は一 貫 して こ れ を認 め な い 。 例 え ば,議 員 が 長 を 被 告 と して 議 会 を召 集 す べ き 旨 の判 決 を求 め る訴 え(最 判 昭 和28・5・28民 集7巻5号601頁),議 員 が 市 議 会 の議 決 の 不 存 在 や 無 効 確 認 を求 め る 訴 え(最 判 昭 和28・6・12民 集7巻

10)こ の最 高裁 判 決 中 には,昭 和25年 政 令113号 に よる改正 前 の地 方 自治 法施 行令 第 108条 は,同 法 第66条 第1項 の選挙 又 は当選 の効 力 に関す る争 訟 の規 定 を解散 賛 否投 票 に準用 す る に際 し,同 法 第66条 第1項 中 の 「候 補者 」 とあ る を 「普通 地方 公共 団体 の議 会及 びその解 散請 求代 表者 」 と読み 替 えて いた ので,地 方 自治 法施 行令 の改 正前 は,議 会 も争 訟 を提起 す る こ とが で きる もの と解 されて いた 旨指摘

されて い る。

(9)

取消 訴訟 にお ける行政 機 関の 出訴 資格 9 6号663頁),予 算 議 決 の無 効 確 認 を求 め る訴 え(最 判 昭 和29・2・11民 集8巻 2号419頁)は,い ず れ も,自 治 体 内 部 の 機 関相 互 間 の 紛 争 で あ る こ と を強 調 し, か か る紛 争 は 自治 体 内 部 で解 決 す べ く,特 別 な規 定 の な い 限 り,裁 判 所 に 出 訴 す る こ と は許 さ れ ない と して 却 下 して い る11)。

〔2〕 行 政 機 関

行 政 機 関 が 提 起 す る取 消 訴 訟 等 につ い て は,後 述 す る よ う に,教 育 委 員 会 等 の 行 政 委 員 会 が 不 当 労 働 行 為 救 済 命 令 の 名 宛 人 に な って い る場 合 を除 き,判 例 は 訴 え の提 起 を認 め ない 。

例 え ば,教 育 委 員 会 の行 っ た 高 等 学 校 入 学 者 選 抜 要 項 の決 定 お よ び そ の 公 示 の 執 行 停 止 を高 等 学 校 長 が 申 し立 て た事 案 につ き,札 幌 地 決 昭和31・1・28行 集7巻1号129頁 は,行 政 組 織 内 部 の 上 下 系 統 に お け る 上 下 両 庁 間 の 行 政 権 の 運 用 に 関 す る紛 議 は,法 律 に特 別 の 定 め あ る場 合 を 除 き,行 政 庁 自 らが 行 政 の 自律 作 用 と し て解 決 す べ きで あ っ て,裁 判 所 に 出 訴 して そ の救 済 を求 め る こ と は で き な い と して,申 立 て を却 下 した。

また,市 教 育 委 員 会 の監 査 拒 否 処 分 に つ き,監 査 委 員 が そ の 無 効 確 認 を求 め て 出訴 し た事 案 に つ き,福 岡地 判 昭 和30・3・14行 集3巻6号188頁 は,行 権 の 内 部 に お け る機 関 相 互 間 の 紛 争 の裁 判 は,裁 判 所 の 権 限 に属 さな い こ と, 機 関 相 互 の 間 の 紛 争 は,原 則 と して 行 政 権 の 内 部 に お い て 解 決 調 整 され るべ き

11)た だ,同 じ く議 員 に よ る 訴 え の提 起 で あ っ て も,長 に よ る 議 会 の 解 散(鹿 児 島 地 判 昭 和25・11・21行 集1巻10号1423頁,和 歌 山 地 判 昭 和27・3・31行 集3巻2号 351頁),議 会 に よ る議 員 の 懲 罰 決 議(岡 山 知 判 昭 和28・8・4行 集4巻8号1849 頁,青 森 地 判 昭 和29.10.6行 集5巻10号2383頁)等,議 員 と し て の 身 分 の 変 更 や 得 喪 に 関 わ る 問 題 に つ い て は,初 期 の 裁 判 例 は概 ね 訴 え の 提 起 を適 法 と し て い た 。 しか し,最 判 昭 和35・10・19民 集14巻12号2633頁 は,議 員 の 身分 の 喪 失 に 関 す る重 大 事 項 で あ る除 名 処 分 の 取 消 し を 求 め る こ と は 適 法 で あ る が,出 席 停 止 の よ う な 議 員 の 権 利 行 使 の 一 時 的 制 限 に 過 ぎ な い 処 分 は,自 律 的 な 法 規 範 を 持 つ 社 会 ・団 体 の 「単 な る 内 部 規 律 の 問 題 」 と し て,司 法 権 が 及 ば な い と判 示 し,除 名 処 分 とそ れ 以 外 の処 分 を 区 別 して い る。 こ れ に つ い て は,常 岡孝 好 「地 方 議 会 議 員 の 懲 罰 と司 法 権 」 地 方 自 治 判 例 百 選[第3版]120頁

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ヱ0 第58巻 第1号

こ と,本 来 人 格 を有 しな い 行 政 庁 は,行 政 庁 ない し行 政 機 関 が 独 立 して 原 告 と して 適 法 に 訴 え を提 起 し,訴 訟 を 遂 行 す る こ と は,特 に これ を認 め る 規 定 の な い 限 り許 さ れ な い こ と を理 由 に,訴 えの 提 起 を不 適 法 と した 。

地 方 公 共 団体 の機 関 が,自 己 の な した 処 分 につ い て の 審 査 請 求 の 裁 決 を不 服 と して 出 訴 す る場 合 は,争 訟 審 判 制 度 の 特 殊 な構 造 もあ る が,判 例 は や は りこ れ を 認 め な い 。

例 え ば,村 議 会 議 員 の 選 挙 に 関 して 申 し立 て られ た異 議 につ い て 決 定 を した 村 選挙 管 理 委 員 会 が,当 該 決 定 に 関 す る訴 願 の 裁 決 を した 県 選 挙 管 理 委 員 会 を 被 告 と して 出 訴 し た事 案 に つ き,最 判 昭和24・5・17民 集3巻6号188頁 は, 出 訴 で き る者 は,選 挙 又 は 当 選 の効 力 に関 して 異 議 が あ る 選 挙 人 又 は候 補 者 に 限 られ る(地 方 自治 法 第66条4項)こ と,争 訟 の 審 判 に 関 す る審 級 制 度 にお い て は,下 級 審 は 同 事 件 に 関 す る上 級 審 の 判 断 に拘 束 さ れ る こ と を理 由 に,訴 の提 起 を不 適 法 と した 。

〔3〕 不 当 労 働 行 為 救 済 命 令 の 取 消 訴 訟

行 政 機 関 に 限 らず,あ る 法 人 組 織 の構 成 部 分 に 過 ぎ な い機 関 は取 消 訴 訟 を提 起 し得 ない とい う訴 訟 法 上 の 原 則 は,労 働 委 員 会 に よ っ て 下 され た不 当 労 働 行 為 救 済 命 令 の取 消 訴 訟 に お い て,判 例 が 採 る一 貫 した 見 解 で あ る。

労 働 組 合 法 第7条 に定 め る不 当労 働 行 為 が あ っ た と して,労 働 組 合 が 労 働 委 員 会 に 救 済 の 申 立 て をす る 場 合,相 手 方 を法 人 の 支 店 や 工 場 また は機 関 と して の 代 表 者 や 支 店 長 等 の 下 部組 織 とす る もの が あ り,労 働 委 員 会 で は,こ れ をそ の ま ま 相 手 方 と して 取 り扱 い,救 済 命 令 を発 す る場 合 に も,こ れ らの者 を名 宛 人 と して 表 示 す る例 が か な り見 受 け られ る12)。 こ の場 合,法 人 の構 成 部 分 が, 自己 を名 宛 人 とす る救 済 命 令 の 取 消 しを求 め る こ とが で きる か が 問 題 と な るが, 下 級 審 裁 判 例 の ほ と ん どは,法 人 組 織 の構 成 部 分 は 民 法 上 の権 利 能 力 が な く,

12)司 法 研 修 所 編 『救 済 命 令 等 の 取 消 訴 訟 の 処 理 に 関 す る研 究 』(法 曹 会,1987年)35 頁 。

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取 消訴 訟 にお け る行 政機 関 の出訴 資格 ヱヱ か か る場 合 は 法 人 格 を有 す る法 人 自体 が取 消 訴 訟 を提 起 し得 る と して い た13)。

と こ ろが,そ の 中 に あ って,国 の 行 政 機 関 に つ い て救 済 命 令 取 消 訴 訟 の 原 告 適 格 を明 確 に 認 め た下 級 審 判 決 が あ り,注 目 され る。

政 府 管 掌 の 国 家 企 業 で,労 働 関係 につ い て 公 共 企 業 体 等 労 働 関係 法 が 適 用 さ れ て い た 当時 の 郵 便 事 業 に つ き,郵 便 局 で起 きた 不 当労 働 行 為 に 関 し,公 共 企 業 体 等 労 働 委 員 会 が 発 した 救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 で そ の原 告 適 格 が 争 わ れ た 事 例 に つ い て,東 京 地 判 昭和43・9・9判 時554号82頁 は,救 済 命 令 の 名 宛 人 で あ る 郵便 局 長 で は な く,国 が 提 起 した 救 済 命 令 取 消 訴 訟 を 適 法 と した が,控 訴 審 東 京 高 判 昭 和45・2・28労 民 集21巻1号247頁 は,国 の 機 関 で あ る 郵 便 局 長 の 原 告 適 格 を認 め た 。 こ の 判 決 は,郵 政 事 業 等 の 五 現 業 は 国 の 企 業 で あ って も, 少 な くと も労 働 関 係 の 面 で は独 立 の 法 人 格 を付 与 され た 三 公 社 に準 じて独 立 の 企 業 体 と して扱 わ れ て い る こ と,公 労 法 は,労 使 間 の紛 争 の 処 理 に つ き,い わ ゆ る現 場 主 義 を と る こ と を許 容 して い る等 の こ とか ら,救 済 命 令 も郵 便 局 長 を 相 手 方 とす べ きで あ っ て,当 該 郵 便 局 長 は 当 然 当 該 救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 を提 起 し得 る と判 示 した14)。 この考 え 方 は,郵 政 事 業 の特 殊 性 を 強調 す る こ とに よ り, 行 政 機 関 に原 告 適 格 を認 め る 「特 段 の 規 定 」が あ る と理 解 した もの で あ ろ うか15)。

そ の 後,最 高 裁 は,法 人 の 構 成 部 分 を名 宛 人 とす る救 済 命 令 に蝦 疵 あ る こ と

13)中 央 労 働 委 員 会 事 務 局 審 査 第1課 工 場(長),支 社(長),支 店(長)等 の 被 申 立 人 適 格 と訴 訟 当 事 者 能 力(上)(下)」 中 央 労 働 時 報697号30頁 以 下,699号37頁 以 下 。 裁 判 例 と し て は,福 島 地 判 昭 和30・11・11労 民 集6巻6号887頁,秋 田 地 判 昭 和32・6・5労 民 集8巻5号704頁,東 京 地 判 昭 和55・8・8労 民 集31巻4 号870頁(た だ し,控 訴 審 東 京 高 判 昭 和56・9・28労 民 集32巻5号224頁 は,法

に も救 済 命 令 の 取 消 し を 求 め る法 律 上 の 利 益 が な い と す る),神 戸 地 判 昭 和58・

6・17労 働 判 例419号 等 。

14)も っ と も,本 件 原 審 判 決 は,「 国 も又,郵 便 局 長 を 名 宛 入 と し た 救 済 命 令 を 取 り 消 す に つ い て 法 律 上 の 利 益 を 有 す る もの とい わ な け れ ば な ら な い 」と述 べ て お り, 行 政 機 関 た る郵 便 局 長 の 原 告 適 格 を必 ず し も否 定 して い な い 。 ま た,本 件 控 訴 審 判 決 も,「 郵 便 局 長 を 相 手 方 と す る 救 済 命 令 に 対 し 当 該 郵 便 局 長 が 訴 を 提 起 し う る こ と は 当 然 と し て も,(中 略)右 の 命 令 に 対 し て は 国 自 ら も訴 を提 起 し う る も の と解 す る べ きで は な い か と考 え る」 と付 言 し,国 の 原 告 適 格 を も認 め て い る 。 15)司 法 研 修 所 編 ・前 掲 書 注 ⑫37頁 は,「 た だ,そ の 場 合 で も,救 済 命 令 の 名 宛 人 は

郵 便 局 長 で は な く郵 政 大 臣 に す べ き で は な い か と の 疑 問 が 残 る」 と して い る 。

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ヱ2 第58巻 第1号

は 認 め つ つ も,事 実 行 為 と して の 不 当 労 働 行 為 か らの救 済 を 図 る とい う不 当労 働 行 為 救 済 制 度 の 趣 旨 を合 理 的 に 解 釈 し,こ れ を無 効 とせ ず,救 済 命 令 の法 的 効 果 帰 属 主 体 と して の 名 宛 人 は 法 人 自体 に ほ か な らな い と解 して,法 人 自体 に そ の 取 消 し を求 め る法 律 上 の 利 益 が あ る と判 示 し16),こ れ が,救 済 命 令 取 消 訴 訟 にお け る 判 例 とな っ て い る17)。

一 方,不 当 労 働 行 為 救 済 手 続 の 実 務 にお い て は,行 政 委 員 会 た る教 育 委 員 会 を名 宛 人 と して 救 済 命 令 が 発 せ られ,教 育 委 員 会 が 労 働 委 員 会 を相 手 にそ の取 消 し を求 め る こ と は珍 し くは な い 。

この 場 合 に,教 育 委 員 会 の 当 事 者 能 力 が 問 題 とな るが,大 阪 地 判 昭和62・12・

3労 働 判 例508号17頁 は,「 教 育 委 員 会 は,い わ ゆ る独 立 行 政 委 員 会 で あ っ て, そ の所 掌 事 務 に 関 して は,地 方 公 共 団 体 の長 か ら独 立 して 権 限 を行 使 す る もの で は あ るが,そ れ は あ く まで も右 事 務 等 の処 理 の 主 体 た る 地 方 公 共 団 体 の 内部 に お け る具 体 的 管 理 及 び 執 行 の権 限 が 長 か ら独 立 して い る こ と を意 味 す る にす ぎず,私 法 上 の 権 利 義 務 の 主 体 とな る こ との で き る能 力,す な わ ち権 利 能 力 を 有 す る も の とは 解 さ れ な い し,教 育 委 員 会 に つ い て原 告 と し て の訴 訟 当 事 者 能 力 な い し 当事 者 適 格 を認 め る法 令 の 規 定 もな い の で あ る か ら,原 告 教 委 は本 訴 につ き訴 訟 当事 者 能 力 な い し 当事 者 適 格 を有 し ない 」 と して,教 育 委 員 会 の原 告 適 格 を否 定 した 。

しか し,こ の 判 決 以 外,教 育 委 員 会 の 原 告 適 格 の 有 無 が 争 わ れ た事 例 は な く, 単 純 労 務 職 員 に 対 す る教 育 委 員 会 の 処 分 が 不 当 労 働 行 為 に あ た る と して 救 済 が 申 した て られ た 事 例 に つ い て,労 働 委 員 会 は教 育 委 員 会 を名 宛 人 と し,教 育 委 員 会 に よ っ て提 起 され た取 消 訴 訟 に お い て も,原 告 適 格 は 全 く問題 に され ず に 本 案 判 決 が 下 さ れ て い る よ うで あ る18)。 こ れ は,当 事 者 か らの 主 張 が な さ れ

16)最 判 昭 和60・7・19民 集39巻5号1266頁(済 生 会 中 央 病 院 事 件)。

17)司 法 研 修 所 編 ・前 掲 書 注 ⑫36頁,菅 野 和 夫 『労 働 法 〈第4版 〉』(弘 文 堂,1996年) 655頁 。

18)因 み に,北 海 道 で は,道 教 育 委 員 会 が,ス ト参 加 の た め に職 場 離 脱 した 学 校 の 事 務 生 と介 護 員 を 戒 告 に付 し た こ とが 不 当 労 働 行 為 に 当 た る と して 救 済 申立 て が な さ れ,道 教 委 が,道 地 方 労 働 委 員 会(当 時:現 在 は 「道 労 働 委 員 会 」)に よ っ て

(13)

取 消訴 訟 にお ける行 政機 関の 出訴 資格 13 な い こ と に も よ るの で あ ろ うが,教 育 委 員 会 に 当 事 者 能 力 が あ る こ と を前 提 に

した行 政 実 務,裁 判 実 務 が 定 着 した もの と言 え よ う。

6.検

上 に 見 て きた よ う に,裁 判 例 は,行 政 機 関 に よ る 出訴 の 適 否 につ い て は,取 消 訴 訟 を提 起 す る資 格 が な い こ と,あ る い は機 関 訴 訟 を認 め る特 別 な 定 め が な い こ と,争 訟 審 判 制 度 に お い て は,審 査 機 関 の 裁 決 に は拘 束 力 が あ る こ と等 を 理 由 と して,概 ね 消 極 的 で あ る と言 え る。

こ の 点 に 関す る学 説 の状 況 につ き,そ の一 般 的 な傾 向 と,特 殊 な 問 題 を は ら ん で い る労 働 委 員 会 に よる 救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 の 場 合 に つ い て,以 下 で 検 討 す

る 。

〔1〕 学 説 の 一 般 的 な傾 向

学 説 は,市 町村 等 の行 政 主 体 の提 起 す る取 消 訴 訟 につ い て,制 限 的 に出 訴 を 認 め る見 解 は 存 す る19)も の の,行 政 機 関 に よ る取 消 訴 訟 提 起 の 適 否 に 踏 み 込 ん で論 じた 研 究 は ほ とん ど ない 。 注 釈 書,概 説 書 等 で は,行 訴 法 第9条 の 原 告 適 格 の 説 明 の1部 と して20),あ る い は,行 訴 法 に 定 め の な い 事 項 につ い て は 民 事 訴 訟 の 例 に よ っ て処 理 す べ き旨 を定 め た 第7条 の適 用 と して触 れ られ て い る21)に 止 ま る が,一 般 的 に行 政 機 関 の 訴 訟 当 事 者 能 力 に は否 定 的 で あ る と言 え る 。

発 せ られ た 救 済 命 令 の 取 消 し を求 め た 事 件 で,1審 札 幌 地 判 平 成7・11・13労 判 例691号87頁,控 訴 審 札 幌 高 判 平 成11・5・12中 央 労 働 時 報956号38頁 は,い れ も 当 事 者 能 力 の 問 題 に は触 れ ず に本 案 判 断 に 入 っ て い る(最 高 裁 平 成15・4・

15中 央 労 働 時 報1019号36頁 は 上 告 不 受 理)。

19)村 上 ・前 掲 書 注(3)59頁 以 下 お よ び そ こ に引 用 の 学 説 。 20)南 編 ・前 掲 書 注(5)398頁 。

21)南 編 ・前 掲 書 注(2)77頁 。室 井 ・芝 池 ・浜 川 編 著 『行 政 事 件 訴 訟 法 ・国 家 賠 償 法(第 2版)』(日 本 評 論 社,2006年)102頁(曽 和 俊 文 執 筆)。

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ヱ4 第58巻 第1号

しか し,制 限 的 に せ よ,行 政機 関 の 出 訴 資 格 を肯 定 す る見 解 も一 部 に存 す る 。 例 え ば,「 形 式 上,法 人 格 を もつ か い な か に よっ て の み 裁 判 的 保 護 の 有 無 に 相 違 が 生 ず る の は 合 理 的 で な い 」 と して,「 相 争 う機 関 が,本 来 い ず れ も一 体 と して の 行 政 に帰 属 す べ き利 益 を争 っ て い る場 合 に は,そ の紛 争 はい わ ば 表 見 的 な紛 争 で あ っ て,そ こ で提 起 され る訴 訟 は 『自己 訴 訟 』 とな ろ うが,そ の よ う な利 益 と区 別 され た 機 関 に 固 有 す る利 益 を主 張 す る よ う な場 合 は,実 質 的 な 意 味 で の 紛 争 の存 在 を否 定 で き ない し,そ の 限 りに お い て 当事 者 に法 主 体 性 を 認 め得 る こ とが 考 え られ る」 とす る見 解22),あ る い は,「 あ る行 政 庁 の 違 法 行 為 に よ っ て,そ の処 分 庁 との 間 に意 思 形 成 の 独 立 が 保 障 さ れ て い る行 政 組 織 の 固 有 の利 益 が 侵 され た 場 合 に は,そ こ に行 為 の 違 法 性 を め ぐっ て 紛 争 が 惹 起 す る。 か か る 場 合,固 有 の 利 益 を侵 害 さ れ た 側 に,違 法 行 為 を是 正 す る原 告 適格 を認 め て よ い で あ ろ う」 とす る 見 解23)が こ れ に あ た る。 そ して,両 者 と も, 地 方 公 共 団 体 の長 に よ る議 会 の 解 散 処 分 が 法 律 の規 定 に基 づ か ず に な さ れ た場 合 等 に,議 会 に よ る 出訴 の可 能 性 を認 め て い る。

こ れ らの 見 解 は,一 定 の 場 合 に 「権 利 主 体 性 の推 定 」 を与 え24),ま た は, 司 法 機 関 に よ る違 法 行 為 是 正 の 観 点 か ら,行 政 機 関 に 「狭 義 の 原 告 適 格 」 を認 め よ う とす る25)も の で 示 唆 に 富 む が,裁 判 上 保 護 す べ き 「機 関 に 固有 の 利 益 」 とい い,「 意 思 形 成 の独 立 性 が保 障 さ れ て い る行 政 組 織 の 固 有 の 利益 」 とい い, そ の 内容 お よ び機 関 訴 訟 との 区 別 は必 ず し も明 確 で は ない 。 長 に よ る議 会 の 解 散 は,議 員 と して の 資 格 を剥 奪 す る もの で あ るか ら,議 員 か らの 出 訴 を認 め れ ば足 りる こ とで あ る26)。

〔2〕 行 政 機 関 の 「使 用 者 」 性

判 例 は,先 に も述 べ た よ うに,労 働 委 員 会 の 発 す る救 済 命 令 に 関 し,そ の 名 22)雄 川 一 郎 機i関訴 訟 の 法 理 」 法 学 協 会 雑 誌91巻8号1207頁 以 下 。

23)寺 田 友 子 行 政 組 織 の 原 告 適 格 」 民 商 法 雑 誌83巻2号266頁 24)雄 川 ・前 掲 論 文 注 ㈲1207頁 。

25)寺 田 ・前 掲 論 文 注 ㈱266頁 。 26)注 ⑪ に掲 載 の 下 級 審 裁 判 例 。

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取 消訴 訟 にお け る行 政機 関の 出訴 資格 ヱ5 宛 人 は 法 律 上 独 立 した権 利 義 務 の帰 属 主 体 で あ る 「使 用 者 」 た る こ と を要 し, 支 店 や 支 店 長 等,法 人 の構 成 部 分 は そ の 名 宛 人 た り得 ず,訴 訟 当 事 者 能 力 も有

しな い が,か か る救 済 命 令 は実 質 的 に は使 用 者 た る法 人 を 名 宛 人 と し,こ れ に 対 し命 令 の 内容 を実 現 す る こ と を義 務 づ け る趣 旨 と解 して,当 該 法 人 に の み 取 消 訴 訟 提 起 の原 告 適 格 を 認 め る。

労 働 法 学 界 で は,法 人 の構 成 部 分 を 名 宛 人 とす る救 済 命 令 につ い て,① そ れ が 許 され るか,② 許 さ れ な い とす れ ば,こ れ を名 宛 人 とす る救 済 命 令 の効 力 は ど うな るか,③ 法 人 の 構 成 部 分 を名 宛 人 とす る救 済 命 令 の取 消 訴 訟 を提 起 し得 る の は 誰 か,が 論 じ られ て い るが,概 ね 判 例 に沿 った 解 釈 が な され て い る よ う で あ る27)。

そ れ で は,教 育 現 場 にあ る単 純 労 務 職 員 に対 し不 当労 働 行 為 が あ っ た と して, 都 道 府 県 労 働 委 員 会 が 教 育 委 員 会 を名 宛 人 と して救 済 命 令 を発 し,教 育 委 員 会 が こ の救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 を提 起 す る こ とが 常 態 化 し て い る 現 状 を ど う考 え れ ば よ い の で あ ろ うか 。

労 働 法 の 学 説 の 中 に は,極 少 数 で は あ るが,会 社 の 支 店 や 工 場 等,法 人 の 構1 成 部 分 を名 宛 人 とす る救 済 命 令 を適 法 と し,こ れ らの 者 に もそ の 取 消 訴 訟 を提 起 す る 原 告 適 格 を認 め る べ き とす る 見 解 が あ る 。 す な わ ち,こ の 説 は,「 支 店 や 工 場 だ け の 裁 量 で 労 働 者 を現 地 採 用 す る こ とが あ り,そ の よ う な労 働 者 を組 合 活 動 の 故 に支 店 や 工 場 限 りの 裁 量 で解 雇 そ の他 の不 利 益 な取 扱 い を した 場 合 の よ うに,自 己 の所 管 に ゆ だ ね ら れ た事 項 を 自 己 の 裁 量 で処 置 した 場 合,支 や 工 場 を被 申立 人 とす る こ とが で きる 。 さ らに,不 当 労 働 行 為 と な る不 利 益 は 法 律 上 の不 利 益 に 限 られ ず,事 実 上 の行 為 を も含 ん で お り,不 当 労 働 行 為 の 救 済 手 続 も また 司 法 上 の 権 利 関係 を確 定 す る こ とで は な く,申 立 人 の 受 け た 不 利 益 を事 実 上排 除 す る こ と を 目的 とす る もの で あ る か ら,法 律 上 の 権 利 義 務 の 主 体 と は な ら な い視 点 や 工 場 を被 申立 人 とす る こ とは差 支 えが な く,救 済 命 令 の

27)三 好 達 「救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 」 実 務 民 事 訴 訟 講 座(9)191頁,新 村 正 人 救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 」 新 実 務 民 事 訴 訟 講 座 ⑪373頁,東 京 大 学 労 働 法 研 究 会 『注 釈 労 働 組 合 法 下 巻 』(有 斐 閣,1982年)1055頁 以 下 。

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ヱ6 第58巻 第1号

実 効 性 を確 保 す る面 か らむ し ろ 望 ま しい と こ ろ で あ る。」28)とし,救 済 命 令 の 取 消 訴 訟 に つ い て も,支 店 や 工 場 等 が 「救 済命 令 の 名 宛 人 と さ れ,自 己 に不 利 益 な 命 令 を 受 け た に か か わ らず,そ の 取 消 し を求 め る 『法律 上 の利 益 』 が な い

と解 す る こ とは 不 当」29)であ る と して,そ の 原 告 適 格 を認 め る 。

確 か に,労 働 委 員 会 は,裁 判 所 と は異 な り,私 法 的権 利 義 務 の存 否 の 確 定 を 行 うの で は な く,不 当労 働 行 為 の 除 去 を 目的 と して 判 定 的権 限 を行 使 す る の で あ る か ら,労 使 関 係 の実 態 や 救 済 の現 実 的 な効 果,将 来 の 労 使 関係 の 正 常 化 等 を総 合 考 慮 して,不 当労 働 行 為 の 主体 に一 定 の作 為,不 作 為 を命 ず る もの で あ る30)。 した が っ て,不 当 労 働 行 為 の 主 体 は労 働 契 約 関係 の 主 体 だ け で な く, 当該 労働 関係 に 重 大 な影 響 力 な い し支 配 力 を及 ぼ し得 る もの を含 む と解 す べ き で あ り,ま た,そ う して こそ 不 当労 働 行 為 救 済 制 度 の 目的 が 効 果 的 に 達 成 さ れ る もの と言 え よ う。 労 働 委 員 会 の実 務 で は,法 人 の 下 部 組 織 の 被 申立 人 適 格 を 認 め,こ れ を救 済 命 令 の名 宛 人 とす る 例 が か な り見 られ る の も,こ の よ う な労 使 関係 の 実 態 と救 済 の実 効 性 を踏 ま えて い る か ら に他 な ら ない 。

不 当 労 働 行 為 が,労 働 基 本 権 の侵 害 に対 して 簡 易 迅 速 に救 済 を与 え よ う と し て い る趣 旨 か ら,「 使 用 者 」 の概 念 は次 第 に拡 張 され て い る とみ る31)べ きで, 労 使 関 係 に重 大 な 影 響 力 な い し支 配力 を及 ぼ し得 る下 部 組 織 を 「使 用 者 」 と同 視 し,こ れ に取 消 訴 訟 提 起 の 出 訴 資格 を認 め る こ とが 相 当 で は な か ろ うか 。

そ して,こ の こ と は,不 当 労 働 行 為 の 主 体 が 行 政 機 関 で あ る場 合 に もあ て は ま り得 る。

28)塚 本 重 頼 労 働 委 員 会 一制 度 と手 続 一』(日 本 労 働 協 会,1977年)53頁 。 た だ, こ の 説 は,本 社 以 外 の 機 関 が 被 申 立 人 と な り う る 場 合 を,(イ)支 店 の よ う に 商 業 登 記 な どに よ っ て独 立 の 機 関 と し て 公 認 さ れ て い る 場 合,お よ び(ロに れ に 準 ず る程 度 に 独 立 性 が 強 く,そ の 責 任 者 が 労 務 管 理 の 面 で 固有 の 権 限 を有 し て い る場 合 に 限 定 して い る(同 書54頁)。

29)塚 本 ・前 掲 書 注 ㈱333頁 。

30)不 当 労 働 行 為 に 対 す る行 政 救 済 制 度 の独 自性 を 強 調 し,こ の観 点 か ら労 働 委 員 会 の救 済 命 令 に 対 す る 司 法 審 査 の あ り方 を論 じ た も の と して,道 幸 哲 也 不 当 労 働 行 為 の 行 政 救 済 法 理 』(信 山社,1998年)が あ る 。

31)塚 本 ・前 掲 書 注 ㈱51頁 。

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取 消 訴訟 にお け る行 政機 関の出 訴資格 ヱ7 行 政 機 関 は,行 政 主 体 が 現 実 に行 政 を遂 行 す る に 際 して,具 体 的 な 行 政 上 の 権 限 を行 使 す る組 織 構 成 体 で あ るが,労 使 関 係 の 中 で,そ れ が 実 態 と して事 実 上 の 「使 用 者 」 と して の 役 割 を 果 た し,重 大 な影 響 力 な い し支 配力 を及 ぼす こ

とが あ る 。

例 え ば,地 方 公 務 員 の 場 合,抽 象 的 に は 地 方 公 共 団体 が 労 使 関係 にお け る 「使 用 者 」 だ と言 い 得 て も,地 方 公 務 員 法(以 下 「地 公 法 」)上,公 務 に従 事 す る 公 務 員 と して の 職 務 の特 殊 性,勤 務 条 件 ・身 分 保 障 の 観 点 か ら勤 務 条 件 法 定(条 例)主 義 が と ら れ(同 法 第24条 第6項),公 務 員 の 勤 務 関 係,権 利 義 務 の 内 容

が 法 令(条 例)に よっ て 大 幅 に 定 め られ て い る。 しか し,地 方 公 共 団 体 に勤 務 す る職 員 で あ っ て も,職 務 と責 任 の 特 殊 性 に基 づ い て,「 単 純 な 労 務 に 雇 用 さ

れ る者 」(単 純 労 務 職 員)の 労 働 関係 につ い て は 「地 方 公 営 企 業 等 の 労 働 関 係 に 関 す る 法律 」(以 下 「地 公 労 法 」)が 適 用 され る こ と に な っ て い る(地 公 法 第 第57条,地 公 労 法 附 則 第5項)。 す な わ ち,単 純 労 務 職 員 の 労 働 関係 は,地 公 営 企 業 職 員(地 方 自治 法 第263条)と 同様,一 般 企 業 に雇 用 され た 労 働 者 に 準 じた扱 い をす る もの と し,労 働 組 合 法 の適 用 を 定 め(地 公 労 法 第4条),団 結 権,団 体 交 渉 権,労 働 協 約 締 結 権 を認 め る と 同 時 に,労 使 間 の 紛 争 につ い て

は 一 般 企 業 の 労 使 紛 争 の場 合 と同 じ く労 働 委 員 会 の 管 轄 に属 す る 。

これ を 地 方 公 共 団体 に置 か れ る教 育 委 員 会 につ い て 見 て み る と,教 育 委 員 会 は 長 か ら独 立 して地 方 公 共 団体 の 教 育 に 関 す る事 務 を広 く管 理 執 行 す るが,な か で も教 育 委 員 会 お よ び学 校 そ の 他 の教 育 機 関 の 職 員 の 任 免 そ の 他 の人 事 に関 す る こ とが そ の 職 務 権 限 の 一 つ と して掲 げ られ て い る(地 方 教 育 行 政 の組 織 お よ び運 営 に 関 す る法 律 第23条 第3項,地 方 自治 法 第180条 の8)。 す な わ ち,教 育 委 員 会 は,教 育 長 そ の他 教 育 委 員 会 の 事 務 局 職 員,学 校,公 民 館,図 書 館, 博 物 館 等 の 教 育 機 関 の 職 員 の任 命 権 者 で あ り,こ れ らの 職 員 の任 命,給 与 の 決

定,休 職,免 職,お よ び懲 戒 等 を行 う権 限 を有 し,こ れ らの職 員 の 人 事 に 関 す る事 務 を 処 理 す る 。 た だ,人 事 に 関す る事 務 とは 言 って も,上 述 の よ う に,用 務 員,調 理 員 等 の 単 純 労 務 職 員 の 労 働 関 係 に 関 して は,給 与 に つ い て は 条 例 で 定 め る種 類 と基 準 の 範 囲 内 で,団 体 交 渉 で 決 め る とい っ た 当事 者 自治 の 原 則 が

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ヱ8 第58巻 第1号

導 入 さ れ た り(地 方 公 営 企 業 法 第38条 第4項,第39条,地 公 労 法 第7条),地 方 公 務 員 法 上 の 勤 務 条 件 措 置 要 求 や 不 服 申 立 て の 制 度 の 適 用 を除 外 す る な ど

(地 方 公 営 企 業 法 第39条 第1項),民 間 企 業 に勤 務 す る労 働 者 に 準 じた 扱 い を す る こ と と して い る。

この よ うに,地 方 公 務 員 法 制 度 は,一 般 職 の 公 務 員 で あ っ て も,行 政 の 担 い 手 た る 全 体 の 奉 仕 者 と して の 特 殊 性 を 考 慮 して,民 問 企 業 の 労 働 関 係 と は異 な っ た 特 別 な 規 律 の 下 に 置 く職 員(仮 に,か か る職 員 を 「一 般 行 政 職 員 」 とい う。)と,民 間 企 業 の 労 働 者 に近 い 業 務 を担 当 す る た め に 必 ず し も特 殊 な 考 慮 を必 要 とせ ず,む しろ 原則 的 に民 間 労 働 者 と同 様 の 扱 い をす る職 員 と を 区別 し て い るの で あ る 。 そ して,労 働 委 員 会 が,後 者 の 職 員 に つ い て 不 当 労 働 行 為 が あ っ た と して,人 事 権 を含 め,長 に 対 し独 立 した 職 務 権 限 を行 使 し,民 間企 業 に お け る と 同様,労 働 関係 につ い て 事 実 上 の 「使 用 者 」 と して 重 大 な 影 響 力 な い し強 い 支 配 力 を及 ぼ し得 る立 場 に あ る教 育 委 員 会 を名 宛 人 とす る救 済 命 令 を 発 す る の は無 理 か らぬ こ とで あ る し,ま た そ うす る方 が 実 効 性 が 期 待 で きる と

も言 え よ う。

確 か に,教 育 委 員 会 自体 は行 政 機 関 に過 ぎな い が,行 政 主 体 の た め に行 政 上 の 権 限 を行 使 す る 地 位 と して で は な く,上 述 の よ う な あ る 限 られ た 関 係 にお い て は,実 態 的 に機 関 を 「使 用 者 」 と同 視 し,そ れ に 「法 主体 」性 を擬 制 して32), 取 消 訴 訟 の 出訴 資 格 を認 め て よ い よ う に思 わ れ る33)。

32)雄 川 ・前 掲 論 文 注 ㈲ が,「 自 己 訴 訟 」(lnsichprozess)と して 論 じ られ て い る ド イ ツ の 機 関 訴 訟 に 関 す る 学 説 を紹 介 し,そ の 中 で,官 庁 が 実 体 法 上 権 利 の担 い 手 た り得 る か を論 じ た ロ レ ン ツ(D.Lorenz)の 説 に 依 拠 しつ つ,「 機 関 訴 訟 に つ い て,期 間 の 概 念 や 権 限 の概 念 を実 質 的 ・相 対 的 に 考 え る とす る と,逆 に 形 式 的 に は機 関 で あ っ て も,裁 判 的 保 護 を 受 け 得 べ き場 合 が 理 論 的 に は あ り う る と い う こ と に な る 。」 と述 べ て い る(同 論 文1207頁)の は 示 唆 に富 む 。

33)一 般 行 政 職 員 は,行 政 の担 い 手 と し て の 職 務 の 特 殊 性 か ら 当 事 者 自治 の 余 地 を 認 め ず,勤 務 条 件 法 定(条 例)主 義,給 与 勧 告 制 度,勤 務 条 件 措 置 要 求,人 事 委 員 会 ・公 平 委 員 会 へ の 不 服 申立 制 度 等,特 別 な 規 律 に服 して お り,こ れ に 民 間 企 業 に準 じた 「使 用 者 」 と して の性 格 を付 与 す る こ と は で き な い 。 一 般 行 政 職 員 が 不 利 益 処 分 を 受 け た 場 合,人 事 委 員 会 に 行 政 不 服 審 査 法 に基 づ く審 査 請 求 を す る こ と が で き る が(地 公 法49条 の2),北 海 道 人 事 委 員 会 規 則11‑17(不 利 益 処 分 に

参照

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