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血栓症を生じる基礎疾患を持ち, 神経徴候を示した犬の一例

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Academic year: 2021

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91回麻布獣医学会講演要旨 67

【はじめに】

 犬や猫の脳血管障害は,甚急性に発症 し,短期間の悪化傾向を示すこともあるが,通常は自 然経過にて何らかの改善を認めることが多く,これは 本症の特徴とされる。本症が疑われた場合,原因とな る基礎疾患の特定と治療が重要となるが,原因が特定 されずに特発性とされることが多い。今回,急性の神 経徴候を認め,MRI の実施前に,その原因となりう る基礎疾患を特定し,脳梗塞と臨床診断した犬の一例 に遭遇したのでその概要を報告する。

症例と経過

 9 歳

7

カ月齢,避妊済みのビーグル が,急発症の起立不能と左半身麻痺を主訴に,発症か ら

1

週間後に麻布大学附属動物病院神経科に来院し た。本学初診時では,不全麻痺はあるが歩行は可能と なっていた。神経学的検査では,左前後肢姿勢反応の 低下,左側捻転斜頸,左眼の腹外方斜視を認め,脊髄 反射は正常であった。以上の結果から,左側脳幹の病 変を疑い,急発症から改善傾向という経過から,脳梗 塞といった血管障害を第一に疑った。身体検査にて,

左側心尖部に

Levine2/6

の収縮期性雑音を認め,また 収縮期血圧

180 mmHg

と 高値であった。血液検査で は,CRP3.65 mg/dl,TP

4.8 g/dl,ALT 10 IU/L,ALP 1088 IU/L,BUN 41.9 mg/dl,P 6.4 mg/dl

と異常値を認 めた。凝固系検査は

Fbg 360 mg/dl

以外は正常であっ た。眼底検査,胸,腹部

X

線検査及び腹部超音波検 査に異常は認めなかった。以上より,MRI よりも優 先されるとして,まず本学循環器科を紹介した。約

1

週間後の本学神経科と循環器科の受診時には,神経徴 候はさらに改善していた。心エコー検査で,左室自由

壁から僧帽弁にかけて,約

1.7 cm×1.7 cm

の疣贅性 構造物が付着している様子が認められた。尿蛋白

/

ク レアチニン比

13.7,D-

ダイマー

6.06 µg/mL

と顕著な

高値, また

AT

Ⅲ活性が

92%と低値であったことから,

この疣贅性構造物は蛋白漏出性腎症に起因する血栓で ある事が疑診された。以上の結果より本症例の神経 徴候は,血栓による脳梗塞によるものと臨床診断され た。D- ダイマー,AT Ⅲ活性の検査結果の報告のあっ た翌日に本症例は急死した。新たな血栓を予防する治 療は行っていたが,基礎疾患の治療は残念ながら間に 合わなかった。

【考察】

 本症例は

CRP

の高値を認めたが,中枢神経 疾患では本値の上昇をきたすものは多くないため,神 経徴候を認めたときに

CRP

が異常値であった場合は,

併発疾患がないかを意識する必要があると考えられ た。また,初診時の身体検査にてかすかに心雑音が聴 取され,さらに高血圧を認めたことが基礎疾患の特定 のきっかけとなったため,身体検査の重要性を再認識 させられた。本症例では大変危険であった麻酔を避 けることができ,MRI を実施せずとも,詳細な経過 の聴取と各種検査によって,脳梗塞という臨床診断に 到達することができた。中枢神経疾患において,MRI 検査は非常に有用であるが,獣医療では全身麻酔が必 要というデメリットがある。そのため,全身状態の把 握,MRI 検査の適応性,そして検査時期を判断する ことが大切であり,本例での経験から,中枢神経の徴 候を呈するとしても,全ての症例で

MRI

検査を行わ なくてもよいと考えられた。

第 91 回麻布獣医学会 一般学術演題 5

血栓症を生じる基礎疾患を持ち,

神経徴候を示した犬の一例

○平嶋 洵也

1

,齋藤 弥代子

1

,十川  剛

1

,小嶋 大亮

1

,青木 卓磨

2

1

麻布大学附属動物病院神経科,

2

麻布大学附属動物病院循環器科

参照

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