マイクロバイオアッセイによるビオチン定量法の 確立とビオチンの栄養状態について
小山田絵美1)・安部恵1)・曽根英行2)
いまからおよそ70年強、ビオチンはBoasによって「卵 白障害」の予防因子Xとして肝臓から発見された。ビオ チンは水溶性ビタミンの玉つで、アセチルCoAカルボキ シラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、プロピオニル CoAカルボキシラーゼ、β・メチルクロトニルCoAカル ボキシラーゼの補酵素として糖新生、アミノ酸代謝およ び脂肪酸合成に関与している。これらの酵素は、カルボ キシル化反応によって有機酸への重炭酸塩の共有結合を 触媒している。
ビオチン欠乏の明確な臨床所見としては、顔面周囲の 皮綱炎、結膜炎、脱毛、運動失調、ケト乳酸アシドーシ ス、有機酸尿、痩れん、皮膚の感染、幼児や小児の発育 遅延が観察される。ビオチンは、レバー一や大豆、卵黄な ど数多くの食品に含まれており、腸内継薄によっても供 給されることから、極端な傭食がない限り欠乏症は起き ないものと考えられてきた。しかし、生体を取りまく種々 の環境因子による腸内細擁叢の変化やビオチンの生体内 利用の異常増加が引き金となり、不顕在性ビオチン欠乏 に陥る可能性が指摘されている1・ 2)e実際、血清ビオチ ン濃度の低下が2型糖尿病患者やアトピー性皮膚炎患者 などで観察され、ビオチン消費量の増加が示唆されてい るeまた、抗生物質の撮用によって腸内細菌叢のバラン スが崩れ、生体へのビオチンの僕給が低下することが報 皆されている31。
最近では、健常者においても腸内織蓬叢由来のビオチ ンだけでは生体必要量を維持できないことが示唆されて おり、食事憲来のビオチンの重要牲が再認識されてい
る4)。食事性ビオチン欠乏の凍覆としては、食品中のビ オチン含量が非常に少ない場合や、生卵白中のアビジン のようにビオチンと強く詰合する食品を大量且つ長期間 1・1 h, f:って摂取した場合がある。食品申のビオチン含量 が少ない一鰐として、粉ミルクがあげられる。わが国に 嘉いて一毅に流通している粉ミルクは、米国製品と比較
してビ才チン含量が非常に少なく、ほとんど含まれてい ない製品もある。ビオチンは食品添加物として2003年に 栄養機能食品に使用できるようになったが、調製粉乳へ の添加は認可されておらず、乳幼児でのビオチン欠乏症 が潜在的に存在する可能性が指摘されている2)。食品中 のビオチン含有量は、平成17年に改訂された「五訂増補
日本食品標準成分表」には収載されておらず、ビオチン の摂取基準についても「日本人の食事摂取基準(2005年 版)」で目安量45μg/日(12歳以上)と公表されているが、
科学的データの不足から推奨量を設定できずにいるのが 現状である。その原因として、ビオチン含量に関する報 告データの差異が挙げられ、これは繁雑なビオチンの定 量法に起因すると考えられる。本研究では、96穴プレー トを用いたマイクロバイオァッセイによる簡便なビオチ ン定量法の確立を目指し、さらに、健廉な女子大学生の ビオチンの血清濃度と摂取量からビオチンの栄養状態に ついて検討した。
ビオチンは、ビオチン要求株である乳酸菌
(Lactobaciliusρla刀tarum ATCC8014)により96穴プレー トを用いたマイクロバイオァッセイ法で測定した。ビオ チンは、遊離型の状態もしくはたんぱく質のリジン残基
とアミド結合した結合型の状態で存在している。乳酸薩 は結合型ビオチンを利用することができないため、測定 の際は、加熱酸加水分解等の前処理によりたんぱく質か らビオチンを遊離させる必要がある。しかし、微生物定 量法では、ビオチンの酸や熱に対する安定性から、これ
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ピチオン濃度〔ng/mO
図 乳酸菌の生育に及ぼす酸加水分解 一中和を含めた蕾処理の影響
ら一連の前処理を標準液には施さないことが一般的であ る。そこでビオテン標準液への一連の前処理の影響を検 討するため、加熱酸加水分解一中和処理後、L5,10倍 に希釈したビオチン標準液を訓製し、乳酸菌の生育度を 測定した。次いで、健康な女子大学生を対象とし、3日 間連続の食事調査をもとに算出したビオチン摂取旦と4 週間のビオチン内服前後での血清ビオチン濃度からビオ チンの栄養状態について検討した。
乳酸19」の生育は、前処理により悪化する傾向にあり、
希釈の程度により差が認められた。つまり、バイオァッ セイによるビオチン定量法において正確なビオチン濃度 を検出するためには、標準液は試料と同様の前処理が必 要と言える。
食事調査の結果、ビオチン摂取量は48.3±17.4μg/day であり、食事摂取基準の目安量を満たしていた。血清 ビオチン濃度は1.94±1.41ng/mlであり、境界域である 1.Ong/miを大きく上回っていた。これらの結果から、本 被験者は、ビオチンの栄養状態に関して健常な集団であ り、食事摂取基準の目安量45μg/dayは妥当な数値であ ることが推察される。また、ビオチン投与による血浩ビ オチン濃度への効果は観察されなかった。しかし、ビオ チン内服前後での血清ビオチン濃度のヒストグラムを比 較すると、その平均値に有意差はみられないものの、低 値の方向に不均衡であったヒストグラムのパターンは正
規分布を示すようになり、ビオチン内服が、生体内ビ オチン量の不足予防に一定の効果を示すことが示唆さ
れた。
参考文献
1)木村修一.小林修平(2002)最新栄養学[第8 版]一専門領域の最新情報一 株式会社建白社:
p249冒260
2)福井 徹,石盛嘉浩,榎原嗣平,木村幸子.渡辺 敏明(2006)母乳および人口栄養乳児におけるビオ チンの体内動態の検討Trance Nutrients Research 23:p5−12
3)前橋 賢,牧野好夫,古川勇次,大日向耕作.木 村修一,佐藤隆夫,斉藤英一(1992)掌蹴膿庖症 性 関節炎とビオチン 診断と治療 80(8):p1397−1402 4)古川勇次,大杉匡弘,福井 徹,鈴木洋一,渡逡敏明,
邨次 誠(2002)ビオチン:ビタミン研究のブレー クスルー一発見から最新の研究まで一 学進出版:
p231・50
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After 60pg/day biotin
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DS 1、015202530354.04S 5055 血満ビチオン湿度(ng!ml}
図 ビチオン負荷(60μg/日)前後での血清ビチオン 濃度のヒストグラム
一37一