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教科書の分析による小』中学校理科

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(1)

65

教科書の分析による小』中学校理科 カリキュラムの検討

自然科学教育研究室  高

野 恒 雄

§1.研究の目的及び理由

§2.教科露の分祈方法

§3,分 析・,結 果

§4.理科カリキユラムの検討

 §1.研究の目的及び理由

 この論文で検討するものは,小・中学校理科カリキュラム問題の内,主としてスコープ におりる自然科学体系の各分野からみた比重のバランスの問題と,それに関連せる学習指 導法の問題とである。すなわち,自然科学の各分野である物理学,化学,生物学,地学と 保健衛生の5分野を考え,これらが小・中学校理科カリキュラムにおいて,換云すれば現 行の義務教育課程における理科教育において,どのような比重をもつているかということ

を明らかにし,それら,特に化掌的教材の比重について検討し,それに関連して然らば単 習指導法はどのようにあらねばならないかを論ずるわけである。そこでこのような問題を できるだけ実証的に論ずうためには,まず研究材料として具体的な{票準の小・中学校理科 カリキ」ラムが必要である。然るに学習指導要領によれば「教育課程はそれぞれの学校で,

その地域の社会.生活に即して教育の目標を考え,その地域の児壷や生徒の生活を考えて,

これを定めるぺきである。」と規定してある。すなわちカリキュラムは学較が主体的に独自 に決定するものであって,一定の固定的な理科カリキュラムというものは存在しない。と ころが現実においては大部分の小,・申単校が理科カリキュラムte・& 1成すゐ蜴合・その最大 のよりどころを学習指導要領と理科教科書においている。これは手数の節約の外に・学習 指導要領と理科教科書はわが国社会からあ要求,児童の心理からの要求及び自然科学体系 からの要求等を考慮した上で作られているという理由にもよる。そこで筆者は研究材料と しで各種小三中学校理科i教科書を利角することにしたわけである。        こ

 :1 2..激科書の分析方法・

 普通行ibれている教科書の分析(理科教科書についてはあまりなされていないが)にお

(2)

66 ・茨城大鰺敏育學部紀要 第四號

.いては,単元別,項目別のいわゆる質的分析がなされている。しかし理科カリキュラムに おける者分野の比重を問題にする揚合,このような質的分析を行つたのでほ結果がかなり 漠然としたものになつてしまうことは明らかである。そこで箪者はこの揚合量的分析を行 うことにした。すなわち具体的には,物理的教材,化学的教材,生物的教材,地学的教材 及び保健衛生的教材の5分野を理科教科書の頁数を以て細かに分析する方法を採用した.

この揚合,頁数の数え方はこの単元は大体物理的教材だから物理何頁といつた数え方を避 けて,1頁粧にどの分野に入れたらよいかを吟味しながら分析していつた。分析に使った 教科嵜は昭和28年度より30年度までの変化をもみるため,昭和28度年用使用教科智:は小学 校10種,中学校9秘29年度用は小学校11種,中学校1噛,3。年度用は・」・学校12穂中学 校16鍾である。これらの多数の教科書以外にも若干の教科書があるが,それらは実際上現 蝪の小・中学校における使用部数が少ないか,あるいは全羊年揃っていない教科書かであ

るものが多く,使用数の多い教科書はほとんど全部含まれそいる。

 §3.分 析 結 果

 A。 小学校用理科教科害の分析結果

 まず分析例をのぺると・ある昭和28年度用小学校用教科書(これを教科書Aとよぶ)を 学年毎に前にのぺたように頁数を数        .窮  1 表

えていき分野別に総計する。そうす ると各分野の頁数が学年によりどの ように移り変つていくかがわかる。

これが舞1表である。…

 者分野毎にいろいろな特色をもつ ているが,頁数からいうと大体にお いて各分野共学年の進むに従つて増 加するが,増加の程度は異なる。そ

1試年い

物  理 化  学 生  物 地  学

保脚姓 総頁難

21 0 52 12 6 91

・3

P 4

18 2 50 18 6 94

2一ΩU一〇

31

26 10

53 15 82

黷V4一22

951 246

156

78  48

2 53 0 6 41

234 32 46 43 66 235

れで頁数で各分野の比璽をみるのは,各学年の総頁数が異なる以上真の比重はみにくいの で,次に学年毎に各分野の頁数の理科総頁数に対する百分率で求めてみたcこれが第2表

である。

 この表から各分野の特色をあげてみると,生物的教材は低学年に異常に多く,高学年に

なるに従い比重は小さくなる。地学的教材は低学年及び高輪年より中学年において高い比

重を示す。物理的教材はさほどめ変化をみせない。保健衛生的教材と化学的教材は大体高

学無になるに従つて比重が大きくなる。こ・で注意すぺきは化学的教材の比重であつて・

(3)

高es :教科轡の分析による小・中学校理科かリキユラ2・の橡討

2

高学年になるに従つて大

きくなるとはいえどの学 年も最低位を保つている

のである。

 以上は1つの教科轡に ついてであるが,次に各 教科害について以上のよ

うなことを行い,そ.して

67

1試

物  理 化  学 生  物 地  学 保健衛生

1.i23

23、1.

0 57.1

132

6.6 19.2

2.1

53. 1

19.2 6.4

129・5 o 32.6 2フ、4

10.5

4  5  6

21. 6

6.1 33.3

o, 9

20.4

全学年

雫均

33.3 30.1

8. 9 22. 7

25.6 17.5

24、5

13.6 3.8

墨Li盤

18.31・2.・3 28.1  13,0

高学

25. 1

6.9

25.2 24.6 18、2

各分野毎に1〜6年の百分率を平均すると,その教科害においては小学校1〜6年全体として 各分野がどういう比重をもつているかがわかる。これを昭和28年度から30年度までの3ケ 年について行つたの⇒ 第3表(28年度)及び第4表(29年度及び30年度)である。但し29 及び30年度の値は前年に比ぺ新たに増加した所謂新版教科書のみについての平均である・

この方が各年度の差をみるにはより明瞭であると考えたからである。

第 3 表 2 8 年  度

忌予物理

㌔年至学年1勝

.A

B

24. 5

23. 8

c i 21.6

D E F G

25.1

26.7 23.8 26.9 24.4 1

J ki21・8

1

25.4

1_______

平  均 亭塩偏差

24.4 5.4

25.1

26.0 25,9 24. 7

23. 3

24,1

29.5 27.3 25、2

21. 8

25.3

化  学

全学年

生  物

地  学

保健衛隼、

3.s 4.3 4.1 4.3 6、1 3.4 4.3 4.4

4.3 5.9 4.5 13.6

     t

高学年P全学年i筒学年」全学年

6. 9

7.8 6.4 7.5 9.3 4.9 7.7 7.4 6.9 9.2

7. 4 3.6..4

31.3 37.4 33, 2

36.7 31.B 31,9 36.3

36.6 41.2

35. 3

7.3 25.2 24、8 26、9 27. 2

29.4 24,2 20.5 24. o

30.2 31.0 26,3

22.3

25、 3

24. 9

21. 6

19.5 25,1

24, 6

19、9 19.O 18.0

22. 0

11.0

酵年1蝉庸学年

  l l

24.6 24.4 25. 1

24. 3

23.2 31・6 P

27.8【

23.6 20、5 19.o 24.4

13.0 15.3 12,0

15. 8

ll.o 15.9 12.3 15.0 14.7

13. 1

13.8 11.1

18.2 17.O 15.7 16.3 14.8 15.2 14:ら

17. 7

172

19.o

16. 6

(4)

68 茨城大學教育學部紀要 第四號

4

29年度 30年度

物  理

沸学年

25,7

28.6 28.5

27.5

化  学

全学年

6.4

5,6

高学年

10,2

9,4

生  物

全学年

32.5

30,0 高学年

21.9

23,4

地  学

全学年

22.7

22,1

高学年

25.9

24,5

保健南生

全学年

12,7

13,7 高学年

13.5

一一一一

u

1翫2

鯖5・表 2 8 年・度

1 2 3 4 5 6

22.3 23.9 24.3 2。・・136・3 19.1

1.3 2.7 o.7 O.5 15.8

52.1 41.3 39.4 3ツ.5 21.6 19.9 13.9 22.2 22.8 24.9 22.6 25.8 10.4 9.9 12.8 11.3 19.o 19.4

第6表

2 9 年 度

物  理 化  学 生  物 地  学 保健衛生

Jl

16、 5

2.3

41.5 20,9 18.8

2

26.5 3.9

43.8 18.7

7. 1

3r  4

516

26. 2

1.3 44. 3

18,9

9. 3

24,9

6. 0

33,1

26.4 9.6

36.O 0.5

18.9 27.6 17.0

24.4 24,1 13,7 23,8 ・

14.O

第7表

3 0 年 度

物  理 化  学 生  物 地  学 保健衛生

1

18.2

o

38.9 22,i 20,8

2i3

39.4 5.3

31.6 18.4 5.3

31.6 0 39.5 18.4 10二5一

4 5

23.7 L4.3

33.3 26.1 12:6

34,9 2.4

16.O 25.9 20.8

6

23.8 L21.5 21.O 21,5 12. 2

 こsで.わかることはまず}第3表 最下欄の平均偏差(平均値に対する 平均偏差)が比較的小さいこと,す なわち各教科書共各分野の比重に余 り開きがないということである。こ れらの値を更に全教科書について平 均すると全般的な各分野の平均比霞 がわかる。これが第3表下欄Q「平 均」及び第4表の全部であ.る。これ から生物的教材が最も多く,次いで 物理,地艶,保健衛生ときて,一段 低く最下位に化学的教材が位概する のである。この順位は29年廣及び30 年廣においても第4表からわかるよ

うに全くi変らない。

 また全教科書について各分野,各 学年の百分率を平均してみると第5 表(28年度),第6表(29年度)及び 第7表(30年度)のようになる。

 これらの表に示されている各分野 の比重の学年の進度に伴う変化の傾 向は,先にあげた教科書Aの揚合

(第2表)とかな卯こているe1〜6

年に亘つて大体変らない位tを占め

るのは物理的教材であり,地学,保

(5)

      高 野:激科誹の分析による小・中学校理科カリキ=ラムの検肘       69

健衛生,化学的教材は高学年に行くに従つて上昇し,生物的教材は下降する。

 B.中学校用理科教科書の分析結果

 中学校用理科教科書についても小学校用教科書におけると同様の分析を行つた。小学校 の第3及び第4表に相当するものが第8表(28年度)及び第9豪(29及び30年度)である。

 第8表の平均偏差よりわかるように各教   第8表  28年 度 科害における各分野の比重はやはり小学校

の揚合と同醸にあまり変らない。1〜3年の 百分率の平均値を更に全教科書について平 均したものが第8表下欄の「平均」及び舞 9表め全部である。これによると物理的教 材が最も多くジ次いで地学,生iltT 1保健衛 生的教材ときて,化学的教材は小学校にお けると同様に最低位を保つている。この順 位は29年度及び30年度においては多少変化

し,29年度においては物理,生物,地単,

保健衛生,化学の順となり,30年度におい ては物理1地学,生物,化学,保健衛生の 順となる。物理的教材が常に最高位を占め ることを除いては少しく各年度において順 位が変化しているようであるが,29及び30 年度の第9表の値はその年度の薪版教科書 のみの平均であり,この新版教科書の全教 科書中における割合は小さいものであり,

激群窪

 A

設;物理i化学{生物;地学

1 36・ s

BI33・・

C D

34.3 27.9

19.o い。・9

E F G H

1

10.1

蕊Tl一

11.8 8,5

34.3 9, o 37・1

ノ1・5 3al ?ソ6

3B.2 10.4 18.0 13.4 16.6 12.0 15.9 16.8 14,8 16.7 18.8

17.o 26.2

卒  均 i gs均偏差

23.3 27.O 26.4

20. 9

23.9

34. 8

5.7

20.6 17.O

11・

ヌ115gl竺

i6,51i・.4 1 14. 2

健生

兄丁暫

9,5

15.6 15,7 21.3 14.1

19.o 12.7 16.0 15,6 15,5 14.6

第  9  表

29年度 30年度

物理

39.フ

38.6

化学i生物i地学

IL

R・ 2 1 ls・ 4 i 14+・

一r…「皿一

15・ 8 1 15・…8・ 3

健生 保衛

14.0

11.4

もし全教科書の平均をとるならば第8表の28年庶の結果とほとんど変りないのであるe例 えば化学的教材についてみると,30年度においては保健衛生的教材より上位に位するが全 教科書についてみれば同年度においても最低位であることがいえるのであるc

 小学校の第5,6及び7表に相当するものが第10表(28年度),第11表(29年度)及び第

12表i(30年度)である。・

 これらの表からわかることは中学校においては学年毎に特に蓮点的に扱う分野があると

いうことである。すなわち1年では地学的教材を主とし・2年では物理及び保漣衛生的教

材を主とし,3年では物理的教材を主とする。生物及び化学的教材を主とする学年はなく

特に化学的教材はどの学年も低位を保つている。生物的教材が中学校において小さな比重

(6)

70

 }

第10表  28年度

茨城大學:教育學部紀要 第匹1號

2 3

物  理 化  学 生  物 地  学 保健南生

8.3  43.9

7. 1

24.6

57, 8

2, 2

8.5 8.2 3.3

36.1

52.2 18.4

14.9 6.3 8.2

第 11』表 29年』度

しかもたないことは,小単校における最高の比重 を考えれば了解できるところであるが,化学的教 材の比重の低さは問題である。

ぱ}1

化  学

理hα5

生  物 地  学 保健爾生

4,5

22.9 59.6 2.5

2 3

49.1 8,1

11.o 0 31.8

41,8 1ぎ8 21.3 7.3

10.8

第12表 30年度

\くξ]1

物  理 化  学 生  物 地  学 保健衛生

17.フ

11.0

.1 9,3・

51.0 1.0

2 3

44、7・P53.・3

  ]

・13.4  .23.1 11.3    17.O

2.4 1.5

28 215・1・

 §4.理科カリキ=ラムの検討,

 前にものぺたように現揚で理科カリキュラムを 構成する揚合, 現在では極めて多くρ学校が最大 のよりどころを理科教科書と学習指導要領に求め ている。このような方法で構成されたカリキュラ

ムで授業を進める揚合,もちろん各単元の配列が 教科書の配列順になるとは限らないが,教科書に おける各分野の教材の比重はそのまS実際の教育 における効果の大きさを決定する要因となるわけ であるeこの問題についてこ では特に化学的教 材に蒲目して考察してみることにする。

 化単的教材の比重は前にもりぺたタうに1小学 校において全学年を通じて常に最低位を占め,し       1

かも第4位の保健衛生的教材との間にも大きな差 がみとめられる。このことは化学的教材[Z)性格か  ら小学校でに比重を小さくし,・中学校において配 慮する.ものかとも一癒予想されるところである。

然るに中学校においては小学楼におけるよりは比 重が大きいが依然として最下位を保つている。こ れで小戦で化単的教材が少なかつたのは中学校においてかなり重点的に化学的教材を扱

うのではあるまいかとの前記の予想は打消されてしまうのである。従つて小・中学校全般 において,換云すれば義務教育課程の理科教育において化学的教材の比重は一貫して最下 位を保つているのである。これはかなりの問題である。

 前にものぺたようにカリキュラムを構成する揚合,何も教科書にもたれかかつて行う必

要はないのであつて,学校が;・教師が主体的に独・自なカリキ三ラムの構成をなすのが正し

いといえる.(蝉校の揚合アチーブその他に対する醗が考えられるが,この賠は基

本的なあり方をのべようとしているめである。)しかしそれでは化学的教材の比重を大き

ぐすればよいかというと,そう単純に結論を急ぐこ一とはできない。こ』》に2 っの疑問が浮

(7)

高 野:漱科彊め分祈による小ゼ中学校理科カリキユラムの検討

71

んでくる。第1は化学的教材の比重は果して小さすぎるか,これで十分ではないかどうか という疑聞・第2はもし比重が小さすぎるとしてもこれを大きくすることは化学的教材の 量を多くすることを意味するかどうかという.疑問である。

 まず第1昌の疑問についてであるがこれを考慮するには3っの事情について調べてみなけ ればならないe]つはカリキュラムに対する社会の要求であり,1つは児童,生徒の学習 力及び現揚の実状が化学的教材に適応できるかどうかということであり,もう1つは学問 の体系からみてどうかということである。これらについて少しく考えてみたい。

 まず社会の要求についてであるが,これは時代によつて次第に移り行く性質のものであ るところに特徴がある。現在の社会のように動的な社会においては,特に将来へのある程 度の見透しを以てカリキュラムの構成に当る必要がある。端的にみても国民1の有職者の70

%は生趨に従事しているといわれている。しかも近代の産業の特徴は次第に工業的にな る,換云すれぱ工業化というところにある。将来は当然現在より一層工業の占めるぺき位 概は高まるといえよう、そうすると産業,就中工業の発展のために小・中学較の義務教育 は何を貢献できるかという問題になるが,このとき最も大切な教科はもちろん理科であ るeその理科の中において産業の工: iL化に最庵役卒つ分野は物理及び化学的教材であると 考えられる。物理的教材も前述したような状態でよいかどうか,いささか問題は残るがそ れは一応さておいて化学的教材が終止一貫最低位を保つているということはかなり大きな 問題ではないかと考えられる。

 次に児童,生徒の学習力及び現揚の実状が化掌的教材に適応できるかどうかという問題 である。換云すれば児寛に教える揚合,すなわち学習指導の際化学的教材は他の分野の教 材に比ぺて教えにくいのではないかという疑問であるeこの疑問をある程度肯定させろ理 由に次のよ うなものがあると考えられる。

 (1)化学的教材はどうrしても実験を必要とする。従つて設備及び時間を要し・まだ教

師の実験上の素養が要求せられる。しかし一歩退いて考えてみればすぐ分ることであるが

実験,観察は理科教育の中核をなすものであり,いろいろの骨折りがあるからといつて

実験を避けたならそれは理科教育の半分以上の目的を失ってしまうといつても過云ではな

い。また実験に必要な設備については,それを充実させるためにこそ昭和29年4月から理

科教育振興法も成立したのであるから,力強い裏付けができたといえよう・また化学的教

材爽験は他の分野以上に経費を要するといつ牟こともなレ1。このようにみてくると案験を

要する故に化学的教材を避けることは妥当ではなく,むしろどうして一b実験を必要とする

という性格を有する化学的教材こそ,理科教育の目標の最も大きなものの一つである実証

性を養うのに最も適した教材り山つであるといえよう。

(8)

72

茨城大學教育學部紀要第四號

 (2)次に化学的教材は物質の質の変化についての教材なのでや〜理解が困難であると いう考えが出るが,これは他の分野の教材に比べて,揚合によつてはいささかとつつきに

くいということもあるかもしれないが,少し進めば他の教材に比べてより理解困難iという こともない。そして注意すべきは化学的教材は質的変化に関するものであるが故に,児童 生徒の強い興味と関心を起すことができる教材であるということである。

 (3)次に化学突験においては危険性が伴うということがある。しかしこれは少しの注 意を払えば防げる程度の危険が大部分で,非常に危険な実験など殊更小・申学校でとりあ げる必要はないであろう。

 以上の考察で化学的教材が実際の撰業において特に教えにくいということはなく,却つ て理科教育の目標を逮成するのに非常に適した性格をもつた教材であるといえる。・

 最後に学問の体系からみてどうかということであるが,これは殊更考える必要はないか もしれない、化学は物理学,生物学,地学等と肩を並べる自然科学の一分野であり,しか もこれらの中では基礎的な自然科学に属する.ものである。その化学的教材が小・中学校を 逓じて最下位の比重を保つている一ということは考慮されてしかるべきである。

 以上の考察から明らかのように化学的教材の位置は確かに非常に低いといλる。化学的 教材の位置は現在より相当程度高められることが必要である。それはどのようにしたらな

遡1得るか,これが問題であるe.

 まずすぐ考えられる方法は,化学的教材の量を現在以上に増加すると.いつた方法であ る。ところがこの方法には重大な問題がある。それは理科の単習指導についての老慮によ つて明らかである。こ で大切なのはカリキュラム構成に対する学習指導面からの規定で ある。まず現在の理科の学習指導について多方面から次のようなことがいわれていること を考えねばならない。それは現在の理科はとかく学習内容が非常に多方面にわたつて数多 くなつているにもか わらず,その割合に児童の身についたものにならないことが多い。

具体的にいえば基礎的な知識や技能に欠けるところが多いということである。

 このような状態におジて化学的教材の量を増すことは,いたずらに教材の量を増すこと になり,教育効果は上るどころか下る危険もある位である。こVで少しく考えてみる必要 がある。前記のような状態になぜなったかということが大切な鍵である♂その主なる原因 は2つあると考えられる。

 第]は理科カリキ.zラムが総花式になりやすく,教材の量と授業時間数とのバランスが 破れていること,その結果としてみちれる授業における教師, 児童両者の態度のあわたS

しさである。これは熱心な教師に割に多い欠陥である。これを救う道は,、思いきつて教材

の量を減少させて重点主義をとるか,あるいは理科の授業時間数をもつと増加する,すな

(9)

高 野:激科霧の分所による小・中単校理科カリキユラムの譲講

73』

わち義務教育課程における全教科中の理科り比重を大きくするという方法をとるかであ る。このことは次の第2の原因に関係するのである。

 第2の原因は小・中学校,特に小学校の理科教育の・目標を漠然と多岐に考えやすく,従 って焦点が明らかでないため,カリキュラムの構成においても,実際の授業中の単習指導 においても,主目標がはつきり出ていない。すなわち主目標と直結していないということ である。それではこのように小・中学校の理科教育の目標をたS 多岐的に考えるのではな

く,焦点をしぽつて掴むにはどのように掴んだらよいかということになる。

 これは小・中掌校,特に小学校の理科教育の主目療は,児童,生徒に科掌的なみ方,考 え方を養うことにあるとい・たいのである。すなわち知識と共に,否知識以上に態度,能 力を重視すべきである。ところが現状において相当多くみられるこどは,これも大切,あ れも大切で,結局は総花式の彪大なカリキュラムを構成してしまい,その結果授業時聞数 とのバランスがとれなくなり駈足授業になり,従つて理科教育の主目概である科学的なみ 方,考え方は極めて不十分にしか養えないことになつてしまう携合が多いのである。

 以上の考寮から,最後に筆者は基本的には次のような方策・を提出1しTい。

 まず理科カリキュラムを構成するに当つてめ態度としては幽、 .

 (1) スコープを整理すること。具体的にに化学的教材に上LiL,  tれ以外の分野のスコー

プをより大巾にi{葎理して,全体として大巾に整理するこJと。 .∴ −i−

(2)(1)の族て化学的鮒の埴キ概に欄的にはt一つa;Cv.} 7  tpげであるが,次に 深さの点で比重を増一t 。それも知識の深さよlj ,学習指鴬におげる時間をかけたていねい

さを尊重すること。                  .、 .F

 (3)現状においては,理科教科書の編集は内容をもつと重点的に選択し,難理するこ

とが望まれる。

 次に単習指導法についてであるが   、   「L二   一    

 (4 )小・中学校理科教育り主目標と直結した学習措導法をとる,すなわち科学的なみ 方考え方を養うことに主眼をおいて,ていねいに時間をかけた指導をなし,あわただしさ

をなくすること。そのためにはまず教師自らが科学的なみ方,考え方を体得しなければな

らないであろう。

 以上筆者は理科カリキュラム問題の検討を主として化学的教材に関してなしたが,その 他の分野についての検討は将来においてなすつもりである。 一      凸

 〔後記〕本研究の一部は昭和28年TO月,日本化学会化学教 育討論会において発表しであ

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参照

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