( 69)
原著 :秋 田大学医短紀要1
0( 2):1 71‑1 7 9,2 0 0 2
マ レーシアにおける地域 に根 ざした リハ ビリテーシ ョンの現状 と課題 一政府主導の活動 と民間活動の分析か ら‑
大 洋 諭樹彦 工 藤 俊 輔
要 旨
マ レーシアで実施 されている政府主導の国家統一 ・社 会福祉 省,保健省 と,民 間団体 によるCBR 活動 の現状 を明 らか にす る 目的で調査 を行 った。調査 はCBRセ ンターでのイ ンタビュー と,関係機 関か らの情報収集 を実施 した。
国家統一 ・社会福祉省 のPDKは,全国的にセ ンター数の増加が見 られたo Lか し,活動の対象が 知的障害児等 に限定 され,活動 内容 は機能訓練 や教育等 の個人へ のアプローチが多 く,社会的側面へ のアプローチが充分 に実施 されていなかった。保健省 によるCBRの活動 内容 は,専 門家 による障害 の早期発見,早期介入 プログラムであった。民間団体の
CBRは,社会的 アプローチ によ り障害者の
エ ンパ ワーメ ン トを図 っていた。今後 の課題 として,CBRの質的向上 を図 るため,3機関 による連携 の必要性が指摘 された。
は じめに
マ レーシアに 「地域 に根 ざ した リハ ビリテー シ ョン :
Co mmu ni t y Ba s e dRe h a b i l i t a t i o n
」(以後CBRとす る)が紹介 され,社会福祉省 と世界
保健機 関 によるCBRプログラムが実施 された
の は19
84年 で あ る。そ の後 の20
年 間 で 国家 統 一 ・社 会福祉省 (旧社会福祉 省) はCBRを社 会福祉施策 として全国に展 開 して きた。 また, この期 間 に保健省 は保健 医療施策の小児検診 プ ログラムにCBRの概念 を取 り入れて活動 を展 開 し,民 間団体 において も,障害者関連の団体 がCBRプログラムを展開 して きた。
CBRとは,1 97 0
年代 に世界保健機 関によ り提唱 された地域住民主体型 の リハ ビリテーシ ョ ンモデルである。現在 では発展途上 国で広 く受 け入 れ られ,CBRの実施 国は世界9
0
ヶ国 に広 が っている。CBRが世界 で展 開 された背景 として,1
9 8 3
年か ら19 9 2
年 にかけての 「国連 ・障 害者 の10年」 で障害者 の機会均等が強調 された ことがあげ られる。 この ことによ り,障害者の エ ンパ ワーメン トを目的 とす るCBRに期待が 高 ま り,世界各国で実施 された。マ レーシアで展 開 されていた
CBRの運営形
態 には,国家統一 ・社会福祉省 によるCBR, 保健省 に よるCBR,民間団体 によるCBRの3
形態があ り,それぞれが独 自の活動 を展開 し秋 田大学医療技術短期大学部 理学療法学科
秋 田大学医短紀要 第 1 0 巻 第 2 号
Ke y wo r d s :
マ レーシア地域 に根 ざ したリハビリテーション エ ンパ ワーメ ン ト
1 7 1
(70) 大津諭樹彦/マレーシアにおける
CBR
の現状 と課題ていた。国家統一 ・社会福祉省の取 り組みはマ レーシアの
CBR
活動 を牽引する役割 を果た し て きたが,最近 になってその活動 は世界保健機 関の定義 したCBR
と異 なることが指摘 されてCBR
の現状 を把握する 目的で,3
機関によっ て実施 されているCBR
を分析 し,その課題 に ついて考察 したので報告す る。調査方法
2002年 3月 4日か ら同年 4月 3日にかけてマ レーシアのマ レー半島に位置す るスランゴール 州,ベ ラ州 においてフィール ド調査 を実施 した 。
調査方法は
CBR
セ ンターでの活動観察 と利用 者,ス タッフへのインタビュー,及び関係機 関 か らの資料収集 とし, これ らの情報か ら国家続 一 ・社会福祉省,保健省,民間団体のCBR
活 動 を分析 した。マ レーシアの概要
マ レーシアはマ レー半島 とボルネオ島か らな る熱帯性気候の国である。国土面積 は32.9万kni で,人 口 は2,379万 人 で あ る。人種 構 成 は マ
レー系が55%,中国系25%,イン ド系10%,少 数民族10%である。宗教 はイスラム教56%,仏 教 ・儒教22%, ヒンズー教 8%,その他14%と 多彩 な宗教観 によ り文化が形成 されている。公 用語はマ レー語であるが,各人種 によ り中国語,
タミール語等 も使用 されている。国は15州か ら
1 7 2
成 り,各州 に90の行政区があ り, さらに各行政 区は15か ら20の郡 に分 け られ,各郡 は幾つかの 村 もしくは町か ら構成 されている。マ レーシア の経済は電子 ・電気産業等の製造業の発展 によ り高度成長 を達成 してお り,2020年 に先進国入 りを目指 している。
保健医療 に関す る状況 を表 1に示す。 日本 と 比較す ると,特 に専 門家数の不足が 目立 ってい
る。
国家統一 ・社会福祉省による
CBR
の現状 社会福祉政策は,国家統一 ・社会福祉省 によ り実施 されていた。障害者 に関す る独立 した法 律 は制定 されていなかった。 リハ ビリテーションの事業 として,施設型 リハ ビリテーシ ョンと,
CBR
プログラムが進め られていた。障害者数 に関す る調査方法や障害分類 は 日本 と異 なるが, マ レーシアの障害者数は政府推定で全国民数の1%に当たる220,000名 と報告 されていた。
国家統一 ・社会福祉省が実施 している
CBR
は,マ レー語のP e mu l i h a nDa l a m Ko mu n i t i
が広 く使用 され (本論 では以後PDK
とす る),政 府発行のガイ ドラインに基づいて全国にプログ ラムが展開 されていた。PDK
プログラム数の 増加 は急速で89年 の 6件 が,2000年 には229件 と約38倍 に増加 していた。 これに伴 いPDK
に 係 る社会福祉 局 の予算 は,92年 の1,129千RM ( RM :
マ レーシア ドル, 1RM‑約30円)か ら99年の3,100千RM
と約2.7倍 に増 えていた。表
1
マ レーシア と日本の医療 ・保健状況の比較マ レーシア 日本 出生時の平均余命 (歳)罪 /女
699/7 43 7 6. 8/82. 9
5歳未満児死亡率 (出生干対)1 1 4
妊産婦死亡率 (出生 10万対)39 8
適切 な衛生施設 を利用す る人の比率 (%)都市 /農村
9 9/98
人口
1
万人当 り医師数 (名)67 1 9. 7
人口1
万人当 り看護師数 (名)1 1 . 6 77. 9
人口1
万人当 り理学療法士数 (名)0. 1 4 1. 58
人口1
万人当 り作業療法士数 (名)0. 11 0. 87
世界人 口白書
200
0,理学療法 白書20
(カ よ り作成秋 田大学医短紀要 第1 0巻 第 2 号
大津諭樹彦/マ レーシアにおける
CBR の現状 と課題
州 別 の
PDK
セ ンター数 と登 録PDK
ワー カー 数 ,登録 障害児 数 を表2
に示 す。PDK
の構 成 は 図1
に示 す とお り, 国家 統 一 ・社 会福祉 省 ,社 会福祉 局 ,各州 の社 会福祉 局 ,地 区福祉 事 務所 ,そ して各pDK
の運営 委 員 会 に よ っ て組 織 され,現 場 の活 動 はPDK
ワー カーが担 ってい た。 また 中央 レベ ルで は政 府 と 民 間 団 体 に よ っ て
Ma l a ys i aCo u n c i lo f Re h a b i l i t a i o n
が 運 営 さ れ,Na t i o n a lCちR Co o r d i n a t eCo mmi
tte e
を組 織 してPDK
の コーデ ィネー ト,全 国調査 ,研 修 会 を実施 してい た。
全 国 の各
pDK
に割 り当 て られ る社 会福祉 局 か らの予算 は,PDK
ワー カーの手 当,施 設 の賃 貸料 のみ で あ り,他 にかか る障害児 の送迎 費 , 専 門家 の雇用 費等 の経 費 は各PDK
セ ンターが 地域 の民 間 団体 等 か ら寄付 を集 め て対応 してい た。 ゴ ンバ 郡 は郡 内 にあ る4
つ のPDK
セ ン ターの活 動 を調整 す る 目的で,PDK
セ ンター, 地 区 福 祉 事 務 所 と 民 間 団 体 等 で 構 成 す るCo o r di n a t i ng Bo d y o f Go mb a k' s CBR pr o g r am me
を設 置 し,地域 か らの寄付 金 を郡 内( 71)
の
PDK
セ ンター に配分 す る等 の役 割 を果 た し てい た。 しか し,サ ー ビス の充 実 や規模 拡大 に 係 る資 金 につ い て は,更 に各PDK
セ ンターが 独 自に寄付 金 を集 め な くて ほな らない ため,餐 金創 出能力 の差 に よ りセ ンター間の活動規模 に 格 差 が生 じてい た。全 国の
PDK
の活 動 はガ イ ドライ ンに基づ き 実施 され てい た。PDK
の活動 形 態 はPDK
セ ンター に地域 の障害児 を集 め るデ イ ・ケ ア型 と, 障害児 宅へ の訪 問型 か ら成 ってい た。活動 内容 は障害児へ の機 能訓練 ,歌 や遊 び を取 り入 れ た 教 育 , トイ レ動 作 等 の生 活 指導 が行 われ てい た。活動頻 度 はガ イ ドライ ンに基 づ き, デ イ ・ケ ア は
1
日4
時 間で1
週 間 に4
回の実施 ,訪 問活動 は1
週 間 に 1回 の実施 とされ てい た。各pDK
セ ンター には,PDK
ワー カー と して社 会福祉 局 に登 録 され た地域 住 民 が 配置 され てい た。P
DK
ワー カー は主婦 が多 く,PDK
の知識 や障 害児へ の対 応 方 法等 は,社 会福祉 局が 開催 す る 研 修 会 か ら習得 して い た。 しか し, 1
年 に2
回 行 われ てい た研 修 会 は,社 会福祉 局 の財 政不 足表
2
国家続 一 ・社 会福祉 省 に よるPDK
の州 別 の現状( 1 9 9 7
年 /2 0 00
年 ) 州名人 口
センター数 ワーカー数 登禄障害児数 ワーカー1
名当り (千名) (件 ) (名) (名) の障害児数(名) プルリス2 0 4
.4 4/4 8/8 5 3/86
ケダ 1 , 6 49. 7 1 1/1 7 2 3/4 0 1 8 8/3 8 8
ペナン1 , 31 3
.41 7/1 7 29/2 8 1 81/21 3
ベラ2, 0512 1 7/25 24/46 358/558
スランゴール4, 1 8 8. 8 21/2 9 40/88 433/706
クアラルンプール1 , 3 7 9. 3 2/3 4/6 3 0/44
ネグリスンピラン85 99 1 8/24 3 2/48 379/546
マラッカジョホール パハン
トレンガヌ クランタン サバ サラワク ラブアン
6 35. 7 8/l l 2, 7 4 0. 6 1 8/30 1 , 2 88. 3 1 9123 8 9 8. 8 8/1 3 1 , 31 30 1 5/1 8 2, 603
.45/8 2 , 0715 3/5 7 6. 0 1/1
1 6/23 203/291 32/59 3 08/657 42/52 291/41 4 21/31 1 3 4/234 26/31 2 8 2/3 41 1 3/21 92/264 6/11 57/247 2/2 1 1/1 2
6. 6/1 0. 7 8. 1/9. 7 6. 2/7. 6 1 4. 9/1 ‑ 2. 1 1 08/8. 0
7. 5/7. 3 l l. 8/1 13 1 2. 6/1 2. 6 96/l l. 1 6. 9/79 6. 3/75 1 0. 8/l l . 0 7. 0/1 2. 5 9. 5/22
.45. 5/6. 0 合 計 23 , 2 7 46 1 67/229 31 8/494 3 000/50 01 9. 4/1 0. 1
1 9 9 7
年と2 0 0 0
年のセンター数,ワーカー数,登録障害児数を比較すると全てに増加傾向にあるO ワーカ‑1
名当りの障害児数の増加は,ワーカーへの負担が大きくなりつつあることを示している。秋田大学医短紀要 第1 0巻 第 2
号1 73
( 7 2)
1 7 4
大洋諭樹彦/マ レーシアにおけるCBRの現状 と課題
民 間 団 体 政 府 機 関
図 1 国家統一 ・社会福祉省による PDKの運営組織図
図
2
1999‑2001年のスラヤンPDK運営委員会の組織図秋 田大学医短紀要
第10巻
第2 号
大洋諭樹彦/マレーシアにおける
CBR
の現状 と課題表3 スラヤンPDKセンターの利用者
( 20 0 0
年)年齢別の内訳 障害種別の 内訳
年齢( 歳) 人数( 名) 割合 (%) 障害名 人数( 名) 割合 (%) 1 ‑ 5 3 0 5 0. 0 知的障害 3 0 5 0. 0 6‑ 1 0 21 3 5. 0 脳性麻療 20 3 3. 3 1 1 ・ 1 5 7 1 16 ダ ウン症候群 8 1 3. 3 1 6・ 20 1 1 . 6 学習障害 1 1 . 6 2 2‑ 25 1 1 . 6 二分脊椎 1 1 . 6
合計 6 0 合計 60
PDK の利用者の内訳は ,1 ・ 1 5 歳までが全体の 85% を占めていた。
知的障害と脳性廃車 を合わせると,全体の 833%を占めていた。
利用者の分析から年齢 と障害の種類の偏 りが確認できた。
図3 PD Kセンターでワーカーにより積み木 遊びの指導が行われている様子
によって1
997
年か ら200
1年 まで開催 されていな かった。今 回調査 したPDKセ ンターの一つであるス ラヤ ンPDKセ ンターは,スランゴール州 ゴン バ郡 (人 口5
69, 081
名) に位置 していた。ス ラ ヤ ンPDKセ ンターは,障害児 を持つ親が社会 福祉局 に働 きかけて1991
年 に設立 された。運営 委員会はガイ ドラインに倣い14
名で構成 されい て,11名 の障害児 の家族 が委員 に就 いてい た(図
2
)。運営委員会の会議は定期的に開催 され, 活動 内容や予算等 の協議や報告 を行 っていた。運営委員 は2年毎の選挙で,PDKセ ンターを 利用 している障害児の家族等か ら選出 されてい た。 PDKワーカーの人数は 4名で,その うち
3
名が主婦であった。セ ンターの活動 は,月曜秋 田大学医短紀要 第1 0巻 第 2 号
( 7 3)
図4 PDKセンターでワーカーにより機能訓 練 が行われている様子
日か ら日曜 日にかけて
9
時か ら1 2
時 までデイ ・ ケア活動 を行い,月曜 日と火曜 日の2
時か ら4 時 まで訪問活動 を実施 していた。 日曜 日の午前 中は国立病院か ら理学療法士 と言語聴覚士がデ イ ・ケアに参加 して,治療 とPDKワーカーへ の相談業務 を行 っていた。スラヤ ンPDKセ ン ターの利用者 は知的障害児が多 く (表3
),宿 動 は遊戯や トイレ動作指導,関節可動域訓練等 と障害児への直接的な関わ りを主な内容 として いた。 これに対 して,世界保健機関等のCBR
定義 (後述)に示 されている地域 開発 に関する 地域住民への啓発活動,障害児の親の会設立支 援等の社会的側面への働 きかけは,十分 に展開されていなかった。 (図3,図 4)
1 7 5
( 7 4)
大洋諭樹彦/マレーシアにおけるCBRの現状 と課題保健 省 に よる
CBR
の現状保 健省 に よ り実施 され てい るCBRは全 国で 54プ ロ グ ラムあ り (表
4
), 医 師,看 護 師,作 業療 法士 ,理学療 法士 等 の専 門家 に よって実施 され てい た。活動 内容 は障害児 の早期 発 見 と早 期 介入 であ った。保 健 省 管 轄 の
C B Rセ ン タ ー で あ る Chi l d De ve l o pme nt皮 Re ha bi l i t a t i o nCe nt r e
は,ス ラ ン表
4
保健 省 に よ るCBRの州別件 数( 1 998 年) 州 CBR 数( 件)
プルリス
3
ケダ
3
ペナン
5
ベラ
5
スランゴール
3
クアラルンプール0
ネグリスンピラン
5
マラッカ
3
ジョホ‑ル
6
パハン
4
トレンガヌ
5
クランタン
6
サバ
4
サラワク
2
ラブアン
0
合 計 54
表
5 Chj l dDev el opmen taRehabi l i t a t i onCen t r e
で発 見 された障 害 の種 類 :0‑1 8
歳( 1 997・ 2001
年)障害名 人数( 名) 割合 (%) 脳性麻痩 5 9 ? . 75
ダウン症候群47 219 言語 ・聴覚 ・視覚障害 4 4 20. 5 De l a yMi l e s t o n e 29 1 3. 5
学習障害 1 3 6. 0
知的障害 5 2. 3
二分脊椎 2 09
その他 1 5 7, 0
合 計 21 4
脳性麻庫,ダウン症候群が全体の
4 9
4%を占めていたoPDK ( 表 3)
に多い知的障害が,保健省のCBR
では 全体の23%
と低い診断率であった。1 7 6
ゴー ル州 ク ラ ン郡 (人 口
6 81 , 7 2 4
名 ) にあ る ク リニ ックに併 設 され てい た。 セ ンター は1 9 9 6
年 に設立 され,常 勤 の医 師 と看護 師が勤務 に就 い てい た。活動 内容 は 0歳 か ら1 8
歳 まで の早期 発 見 プログ ラムで,発 達 評価 表 と母 子 手帳 を利用 して定期 的 な発 達評 価 を行 い,障害 が診 断 され れ ば医学 的 リハ ビリテ ー シ ョンが受 け られ る病 院へ 紹介 してい た。2 0 0 0
年 のセ ンター利 用者 数 は3 3 8
名 で, そ の うち3 7
名 が 障 害 と診 断 され て い た。 障害 の種 類 は脳 性 麻痔 が最 も多 く,次 い で ダ ウ ン症 候 群 が続 い てい た (表5)。 (図5)民 間 団体 に よ る
CBR
の現 状マ レー シアで は民 間 団体相 互 の ネ ッ トワー ク が充分 に発 展 してい ない ため
, CBRの活動 を
展 開 してい る団体 数 の把 握 は困難 であ った。民 間 団体 で あ る
Ya ya s a nSuぬnI 血i sSha hは 1 9 8 2
年 にベ ラ州 に設立 され,障害者 の リハ ビ リ テー シ ョンに関 わ る活動 を展 開 して いた。競馬 協 会等 か ら財 政支援 を受 けて,勢 力 的 に活動 を 展 開 してい た。Ya ya s a nSul t a nI d r i sSha hはベ ラ
州 内 に13のCB Rセ ン ター を持 ち,常 勤 の コ
ミュニ テ ィー ・オー ガナ イザー 1名 ,医 師 1名 , 理学療 法士4
名 ,作 業療 法士2
名 ,言語聴覚士1
名 を雇 ってい た。各 セ ンターで は地域 住 民 に よる運営委員 会 が設置 され,住 民 の参加 が主体 的 に展 開 され てい た。各 セ ンターの運営 は運営図
5
保 健 省 の 早 期 発 見 プ ロ グ ラ ム で看 護 師 (右 ) が発 達評価 を行 ってい る様 子秋 田大学医短紀要 第1 0巻 第 2 号
大洋諭樹彦//マレーシアにおけるCBRの現状と課題
表6 YayasanSultanldrisShah (YSlS)にお ける年別の新規登線障害者数
( 1 9 85・ 2 0 0 1 年) 年 人数( 名) 年 人数( 名) 1 9 85 2 2
1 9 8 6 2 3 1 9 87 1 23 1 9 8 8 236 1 9 8 9 21 9 1 9 9 0 2 01 1 9 91 25 2 1 9 9 2 2 07 1 9 93 23 0
1 994 2 93 1 995 2 72 1 996 2 84 1 997 2 5 6 1 998 41 6 1 999 3 4 5 2000 31 0 2 0 01 2 6 5
合計3 , 9 7 8 同ベ ラ州 の PDKの萱鐘 障害児数 ( 表 2)と比較 すると , YSI S の合計登鐘者数 は約 7 倍の数である。
委員会 によって決定 され,支障等が生 じた場合 にコミュニテ ィー ・オーガナイザーの支援 を受 けていた。活動内容 は医学的 リハ ビリテーショ ンサービス,障害の早期発見 と早期介入等の個 人へ の アプローチ だけで な く障害者 のエ ンパ ワーメン トを目的に,障害者手帳 申請の支援, 運転免許取得の支援,バイクや車の改造支援, 所得取得支援,障害児の学校入学支援,チ ャリ
テ ィー活動 を通 した地域住民への啓発活動等 と, 社会的側面への活動 も広 く展開 していた。セ ン
ターの登録障害者数は
3, 9 7 8
名で,小児か ら高齢 者 まで多岐のニーズ に対応 していた (表6)。また,幾つかのセ ンターはイン ド系,中国系居 住地 に設置 されてお り,利用者がマ レー系 に偏 らない ように配慮 されていた。Yayasansultan ldrisShahはCBRワーカーへの基礎 的 リハ ビ
リテーシ ョン研修会 を年 に
2
回開催 し, これま で に各州のPDKワーカー も含 めた4 2 0
名が受 講 していた。 (図6)マ レーシアにおけるCBRの問題点 と課題 マ レーシアで展開 されていたCBRは, リハ ビリテーシ ョンに関わる専 門家の協力 を得 なが ら,地域住民 自らの力で地域 に根 ざした形で リ ハ ビリテーシ ョンを展開 していこうとする点 に 特徴があ り,我が国の患者 ・利用者主体の医療 ・ 福祉 のあ り方 を考える上で学ぶべ き内容 も多 く
秋 田大学医短紀要 第1 0巻 第 2 号
( 75)
図6 YayasanSultanldrisShahに よるワー カーへの研修会の様子
含 んでいた。 また,国家統一 ・社会福祉省の
P DKは,政府 による知的障害児へのサー ビスを
全国に広げて きた意味で大 きな役割 を果 た して きた。 しか し,マ レーシアのCBRを世界保健 機関等の定義 したCBRか ら捉 えた場合 に,国 家統一 ・社会福祉省のPDKや保健省 によるC BRには,幾つかの問題点 と課題が見 られた。そこで,民間団体 における活動 との比較か ら考 察 を行 った。
世界保健機関,国際労働機関,ユ ネス コの合 同定義 による と
,「 CBR
とは地域 開発 にお け るすべての障害者のための リハ ビリテーシ ョン, 機会の均等,社会への統合 のための戦略である。CBRは障害者 自身,家族 ,地域社会の共同の 運動,そ して適切 な保健,教育,社会サービス によって実施 される」 とされている3'。つ ま り, CBRの活動 は対象 とする障害の種類や年齢層 の制限をもうけた り個人へ のアプローチ に留 ま ることな く,障害者 を含めた地域住民の主体的 な関わ りを基盤 として,障害者のエ ンパ ワーメ ン トを図る社会的アプローチに強調 を置いてい る。
今回の調査結果か ら,政府主導の国家統一 . 社会福祉省 と保健省 による両省の活動 は,その 活動の制限や活動内容の偏 りか ら見て,世界保 健機関等が定義 したCBRその もの とは異 なる 活動 を展開 していたことが分かった。前述 した
1 7 7
( 76)
大津諭樹彦/マレーシアにおけるCBRの現状 と課題ように,国家統一 ・社会福祉 省の
PDKは,政
府 主導 で作 成 され た ガイ ドライ ンに基 づ い た トップダウン式 の事業 として展開 されていた。住 民 の参加 は運営 委員 会 の メ ンバ ーや
PDK
ワーカー とい う形 で政府 によ り促 されていたが, 住民 の主体 的参加 とい う面 では, ガイ ドライ ンに基づいた範囲内の受動 的な参加 に制限 されて いた。主体 的参加 とは,活動 に関わる計画か ら 実行 ,評価 に至 る全てのプロセスで,住民の 自 己決定権が保障 されてい ることである4‑
。pD
Kにおける地域住民 の決定権 は, トップダウン 型で決定 された内容 の範 囲内 に留 まってお り, 画一的な活動 を展 開せ ざるを得 ない状況 にあっ た。これ に対 して,民間団体 の
CBRは障害 の種
類や年齢層への制 限が な く,多様 なニーズ に対 応 し,障害者のエ ンパ ワーメ ン トを支援す るこ とに 目的が 置 か れ た活 動 を展 開 してい た。マ レーシアの障害児 を持つ親のニーズ調査 による と,親の求める支援 として,子 どもの学校入学 支援 ,就労支援 ,地域生活援助支援へ のニーズ が高 く,社会的側面へ の対応が強 く望 まれていKの活動が身体 的側面へ のアプローチ に留 まっ ている限 り,必ず しも親のニーズに充分応 えて いけない ことが伺 われ,ニーズ を汲み取 るため に も障害児 の親 の会設立支援 の必要性が示唆 さ れた。そ して,当事者 のニーズ に対 して弾力的 な活動 を展 開 していけるように, PDK運営委 員会の活動 を政府が支援 していけるボ トムア ッ プ型の システム を構築,強化 してい くことが必 要 と考 え られた。
PDKワーカーへ の定期 的 な研修会 は1 99 7
年 か ら開催 されていなかったため,研修 を受 けた 経験 のない ワーカーが全 国のPDKセ ンターで
活動 してお り, ワーカーの活動 に支障 を きた し ている と思 われた。今 回の研修受講経験 のない ワーカーへ のイ ンタビューか ら,障害児へ の対 応 に自信が持 てな くス トレス を感 じていた り, 活動‑ のモチベーシ ョンを持 てない とい う話が 聞かれた。表2
に示 した ように,PDKワーカー 1名当 りの障害児数 は増加傾 向 にあるため,今1 7 8
後
PDKワーカーの不安 とス トレスは益 々大 き
くなる と危倶 され, リハ ビリテーシ ョンの専 門 家 による相談支援等が必要 と考 え られた。いず れに して も, CBRワー カーへの研修会の必要 性 は指摘6 7‑され て い る よ うに, PDKワー カーが 自信 を持 って活動 を続 ける上 で必要不可 欠 と考 える。 また,地域 との コ ミュニケーシ ョ ン能力,資金の集め方等 と幅広 い知識 と技術 をCBRの概念理解 に合 わせ なが ら学ぶ ことも重
要である。 まさにPDK活動 における人材育成 への対応策が強 く望 まれていた。民 間団体のCBRでは,政府機 関に欠 ける柔 軟 で多様 な取 り組 みが展 開 されていた。 しか し 民 間の体力 では,その活動 をマ レー シア全土 に 広 げることは難 しく,活動範囲は制限 されて し まう。今後 は政府 と民 間の連携 をさらに図 り, 民 間機関の実績 と経験 をPDKに応用 して,マ レーシア全体 における障害者のエ ンパ ワーメ ン トに努めてい くことが課題 としてあげ られた。
そ の 一 つ と し て,図
1に 示 し た Ma l a ys i a Co unc i lorRe h a bi l i t a i o n
の下部 に,州 レベ ルで協 議会 を構 成 して,地域 の民 間団体が参画 しやす い体制 を構築 した り,
州 ・郡 レベルの協議会 にPDKに対す る外部評価 の機能 を設 けた りす る
等 ,民 間団体 の意見 を汲 み取 れるシステム を設 けることの必要性が考 え られた。今後 は他地域 の
PDKや民 間団体 の活動等 を
調査 して,CBRにおいて住民の主体的参加 を 可能 にす る要 因分析 や,主体的参加が活動 に与 える効果 について調査 を進めてい きたい。本調査 は平成
1 3
年度教育改善推進費 (在外研 究員) を受給 し,マ レー シアで行 った研究成果 をまとめた ものである。引用文献
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Thet r i pa r t i t ec oo pe r a t i o no ft heMi ni s t r yo fSo c i a lWe l f a r e,t heMi ni s
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秋田大学医短紀要 第10巻 第