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一一遊びの伝承一

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Academic year: 2021

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(1)

クラスの枠を越えての活動   一一遊びの伝承一

松丸令子・山路純子・多田慧子。大里道子・福田洋子・森 直美       (1986年11月5暇受理)

1 は じ め に

 附属幼稚園に入園を願い出て来る保護者の多くは,兄弟がいない,近所に友達がいないということを その理由に上げている。子どもの数の滅少や核家族化により,子どもの遊び場を作り出したいがために 教育の場を求めるという傾向が見られる。年齢を越えた,いわゆるガキ大将とも言うべきリーダーを中 心に,年の幼い子どもにみそっかすと言う特権を与えながらも遊びが成り立っていたびと昔前の姿が,

懐しく,また今となってはそこに非常に大きな教育的意義が潜んでいることに気付くのである。

 私共の園でも,三年保育が開始され既に14年を経過しているが,同年齢の教育の場では望めない育ち を,クラスの枠を越えたかかわりの中に見い出し指導計画に位置づけようとの試みを始めている。

 今回の研究に取り上げたく遊びの伝承 についても単にわらべ歌とか鬼遊びという狭いとらえ方をす るのではなく,幼児の生活の中から編み出されたものを大切に次の世代へと引き継いで行く姿に視点を 置き,遊びの見直しにとりかかったところである。

2 園生活の中での交流を支えるもの

 園生活の中には,年齢を越えた交流場面が各所に展開している。こうした活動のきっかけとなるもの は,幼児の持つ好奇心・興味・関心に支えられ行動化されて来ることが多い。 ttあそこでおもしろそう なことをやっているから見て来よう召tCおみせでお菓子を買って来たいな。 と言うように,幼児は即行 動に移し,或いは教師の手を引いて一緒に出かけて行く姿が見られる。小さな交流は,園生活の中にい くらでも転がっていて,それを教師がどのように受け止めて行けるかによって展開や幼児に貯めこまれる ものが異って来てしまうのである。私共は常に教師間の共通理解を図るために,幼児についてのミーテ ィングを重ねるようにし,教師同士,自分のクラス以外の幼児の求めている姿にも配慮をし対応出来る ように心掛けているのである。

3 交流のいろいろ

 幼稚園の学級編制は,61年度は3年保育3歳児(20名)・4歳児(36名)・5歳児(35名), 2年保 育4歳児(33名)・5歳児(31名)で構成されている。2年保育4歳児は,はじめて園生活を経験する 幼児がほとんであるが,入園と同時に,自分たちより小さい3歳児がいるわけであるから,純粋の2年 保育4歳児とはいささか質に違いがある。

 交流の多くは,次に示すように3・4歳手張5歳児というかかわりが多く見られ,園の生活の中で5

(2)

2 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

歳児の存在は非常に大きな意味を持っている。次に交流の様々なスタイルについて述べて行く。

 A 個人対個人

  5歳児のリードで,3・4歳児に仲良しが出来る。5歳児は自分が得意とする物を作ると仲良しにプ レゼントをしに行ったりする。同じ方面からの通園や,同じ時間帯での通園などで顔見知りであったり ということがきっかけとなることも多い。ともかく5歳半の自発的行動……小さい子の世話をしたいと いう気持ちが原動力となり,単発的に現れるが長期に亘る行動ではない。大きな活動が展開する時の下 地ともなる姿である。       3・4歳児      5歳児  B 個人対グルーープ

  394歳児が育って来るようになるとクラスを離れる ことに不安を感じなくなり,一人でも出かけて行くよう になる。拾って来た木の葉の名称を教えてもらおうとか お金を持って買物に出かけて行ったり,サッカーの仲間 に入れてもらったりする姿が見られる。

 C グループ対グループ

  5歳児が始めた遊びが,自分のクラスだけではおも しろくなくなり,お客として3〜4歳児を呼びに行く姿 が見られる。見せる側もお客がいることによって更に遊 びが楽しくなることや喜んでもらうことで自信を持つ。

 3〜4歳児は経験して来たことをもとに自分のクラス に戻ってからの遊びが深まる様子も見られ,相互に得る ところの大きい自然交流の姿である。,

 D グループ対クラス

  o nOO    Oo o

@  O   oO  O

O   o

@O

 O◎

   B 個人対グループ 3。4歳児        5歳児㊥︒8      000︒・題 ◎0

     O

@oO@o O

@OO    O       O

D㌔㊥

C グループ対グループ

  5歳児の活動は時としてクラス全体の大きな活動に発展をして行くことがある。2〜3人の幼児の 小さな遊びがきっかけとなり 町を作ろう と部屋全体を使ってのパノラマが展開する。このようにク

ラス全体がひとつの目的意識を持ち,3〜4歳児に対しても約束事を守らせながら招待をするという交 流が見られるようになる。これは5歳児の幼児たちが技術的にも協調性の面からも育ちが見られるよう になった時期に可能となる交流の姿である。

 E クラス対クラス 又は全クラスの交流

  5歳児2クラスの交流が非常に円滑に行くようになって 来るのは2学期も中間,運動会のような大きな活動に向かう 時期である。体力もつき,3〜4歳児との体つきの差も大き くなるにつれて,世話をしょうという気持ちに行動が伴って 行くようになる。5歳児同士,力を合わせることによってよ り以上の目的が達せられることが分かり,協力することの必 要性が実感としてとらえられて来る。

 3〜4歳児は,5歳児のリードで活動に加わって行くが,

の自分たちが立場を変えた活動の中で,

 3 歳

(3年保育)

 4 歳

(2年保育)

 4 歳

(3年保育)

 5 歳

(2年保育)

 5 歳

(3年保育)

      E クラス対クラス又は合クラスの交流        この経験が心の中に大きく貯めこまれ翌年        プログラムも作らなければ tt万国旗もいるね ttよく分か るように腕章も付けよう と次々に思い出して取り組んで行くようになる。

(3)

       4 交流の実態 4月〜10月

A〜Eまでの様々な交流の姿がダ実際に園生活の中では次の表のように展開している。

4

5

6

7

囁月

姿

5 歳  児 4歳児・3歳児

rk 年少組の身支度の世話

rk プレゼント作り

iifti 赤カブ取り

○ サッカー

。 当番の仕事

。 こいのぼり作り

◎ たけのこ

◎○◎ooO◎◎O◎○○◎◎OO

   i  O    l   O    i

   ・    O

   l   O    ;  ☆

一〇

   …    …

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   …

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   …    l    Q

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   i  O

   ・    O    l   O    …

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_⊥_☆

   1    0    ;  ◎

入園式に手をつないでもらう。

近所の年長さんと一緒に幼稚園に来る。

スモックを着せてもらう。

一緒に遊んでもらう。

バックのプレゼントをもらう。

ドッチボール ミニゴルフ

畑をたがやす。見に行く。

イルカショウ ゲーム お店やさん

散歩

病気の友に手紙を出す。

サーカス

梅とり,梅ジュース作り お化け屋敷

迷路

青虫からのリズム表現一一〇

じゃがいも堀り

フォークダンス くじびき 水族館

サッカーに入れてもらう。

rk

☆[亟三勇

◎ 収穫

  むO  フーノレ

こいのぼりを一緒に見る。

歌を歌う。

散歩に行く。

たけのこのかわむきをする。

遠足に行く。

映画を見せてもらう。

ミニゴルフをやらせてもらう。

イルカショウを見せてもらう。

ゲームをもらう。→自分たちも作る。

アイスクリームを買う。

本屋さんをする。

サーカスを見て自分たちもする。

お化け屋敷をする。

探検:ごっこで出かける。

チョウの羽を作ってもらう。

チョウになっておどる。

くじびきを作る。

水族館を作る。

お当番をしているのを見る。

リズム表現 お皿をもらう。

じゃがいもをもらう。

プールで遊ぶ。

合奏

(4)

4 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

9

10

☆カレーパーティ

◎ 花の絵

◎ 畑のおじさんに手紙をかく。

o あわぶくたった

。 飛行場

☆ 梨のおみやげ

☆[麺ヨ

。 ドライブスルー

◎ 運動会のVTR O パチンコ

。 サーティワン

。 楽器

◎ リレー

◎ どんぐり拾い

OOOO◎◎◎ 研究所

鳥の博物館 畑の草取り お店やさん

一一一l一→oあわぶくたったの仲間に入れてもらう。

一一一ゥ一>o飛行機を作る。

   i 。水でっぽうで齢。

_4_。ドライブスルーに買いに行く。

_1一・パチン・をする・

:〉ヒ自認;露ごんをする.

一一一ィ一一タ。合奏を聞く。

   i ◎縢訓練

   i  o工作を作ってもらいに行く。

     。呼ぶときに       指名する。

チューリップの球根植え じゅず玉を分ける。

サッカーa

一〇研究所で調べてもらう。

一〇鳥の博物館を見に行く。

   i 。お姫様ごっこ    l   oパノラマ

_L→◎じゅず玉をもらう。

   1  0おまつりごっこ

・年長組に見せる。

。お金を作って買い に行く。

・全然遊びは違うが その中に年長組で 経験した一部分が

出ている。

☆◎○ 大きな交流

中ぐらいの交流 小さい交流

(5)

 交流の実態の中から6月上旬のtt青虫からのりズム表現 を例に,活動の広がる様子を追ってみると 次のようになり,各クラス,各年齢による受け止め方の違いが表われていることが分かる。

3獺

2灘

3灘

2犠

3獺

6 月 k 旬 6 月 中 旬 6 月  F 旬 ? 月 上 旬 ? 月 中 旬

。青虫 亀虫を探し歩く

。鳶虫の羽化で トラフルを起

O響虫の話作り,女児の チsウの動きに男子が

援助する。他のクラスに身体表現をみせる

胃虫の成長を見る 図鑑で調べる

。月組の司化を 見て慧豫醐を 描く

チにへし森逃のを鳥ウくトヨ一丁

Q

O宵虫を家人公にした誰

をスライドにする

招_

Tる…

.院議

オ…

。アゲハチ ョウの幼 虫を飼う

アゲハの羽化 を見に行く

。ls来磐

。チョ になり 月組へ

。チョウの羽 を付け飛び歩

アゲハの羽化 をみる

0羽をつけ    QチSウやアリの家 踊る       が鵡来る

辮畿

 5歳児は,周囲の事象に興味・関心を持ちとらえようとする力があり,青虫の付いた穴だらけのキャ ベツに飛びついて,変化する様子を食い入るように眺める。観察したことを絵やTPシートに描いてま

とめ,または手作りの新聞を使って他クラスにも感動を伝えようとする。

 それを受け止めて行く3〜4歳児の姿は,年齢による特徴を顕著に表わしている。3歳児はく値輸入 とも言うように,経験(見せてもらったこと)したことを即,自分たちも 自分のクラス でやっ てみたいと,それは強く教師に要求をして来る。特に3歳児の心をとらえたのは,青虫が羽化するまで をまとめたリズム表現による劇である。自分のクラスに戻る道々,「先生,チョウになりたい。」「青い 羽を付けて。」と要求をして来る。早速材料を用意して来ると,長い列を作り羽が出来上がるのをじっと 待っている。「先生,空組さんの羽は,もっと大きいよ。」「頭に付けるの(触角)も作って。」と見て来 た通りそのままにという要求が出て来て,教師はその対応に大忙しとなる。チュールの青い羽を付ける

と,「音楽をかけて」と言いチョウになり切って表現を楽しんでいた。

 4歳児の受け止め方は,これと大部異なっている。3歳児のようにその日,その時にではなく,見て 来たことが一旦貯めこまれる。自分なりに消化出来ると,似たような材料を探し出して来て羽を作ると

チ・ウの欄が集まり・チ・ウのおうちごっこが始まる・鵜疲》さ∴tt▽隻で議1

相談がまとまると,羽を動かしながら園庭に散歩に出か け,花の蜜を吸ったりしてチョウになった気分を味わっ ている。このように4歳児は経験したことを自分たちの 遊びに,自分たちに合った形に変えて取り入れているの

である。

(6)

6 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

5 幼児の育ちとクラスの枠を越えての活動との関係について

 3〜5歳までの幼児が集まる幼稚園生活では,クラスの枠を越えたかかわりも各々の年齢の育ちと関 係が深く,1年を通して見て行くと,今どの年齢の幼児が伸びようとしている時期であるかをとらえる

ことが出来るのである。

 次の表の斜線で示してある部分が,各年齢の特に育ちが見られる時期である。5歳児は,4月には年 長組になったという自覚が出て来て,自分たちは大きいのだから3〜4歳児のお世話をしなければと張 り切って行動する。弟や妹がいることで巾広い活動場面が出て来ることは,5歳児の育ちにょい刺激と なっている。

 また,クラス編制のところでも述べたことであるが,幼稚園には2年保育と3年保育があり,5歳児 の段階においてもクラスの特質がはっきりと現れている。園生活の経験の多い3年保育の方が遊びも創 造性豊かであり,協調性を持って遊びを進めて行くことが出来る。その差から,5歳児同士なかなか融 合しきれない所があるのだが,各クラスの一部の幼児が接点となり差は埋められて来るようになるのが

2学期の運動会の頃からである。体力もついて,自分たちの力で何でも出来るという気持ちが高まって

来る。

 4月〜10月頃まで,5歳児が,3〜4歳児を相手に自分の力を伸ばして行く時期であると言える。

 そして,11月頃から3月にかけて,今まで経験したことをもとに,3〜4歳児(特に4歳児)が大き く伸びて行く時期に入る。5歳児の遊びの再現をし,出来上がると5歳児・3歳児に声をかけて見ても らおうと働きかけを積極的に行うようになる。そして,3月に近くなると,年長組に進級することの喜 びも加わり,視野の広い活動が可能になって来るのである。

o飼育当番のやり方を伝達する︒

お別れ会お別れ会

月 項5歳児の活動背景となるもの4歳児・3歳児の活動

(7)

 このように,今の時期はどの年齢の幼児が育つ時期であるかを踏まえて,指導計画の中に位置づけて 行かなければならない。徒らに相手の育ちを無視した交流を続けることのないように心して指導をして 行く必要がある。

6 まとめ(遊びの伝承)

 3〜5歳児までの幼児が集まる幼稚園,各々のクラスが母体となり,他クラスとのかかわりが始まる につれて,経験も広がって来るようになる。クラスの枠を越えようとする幼児の要求に耳を傾け,育ち に合った対応に心掛けて行かなければならない。貯めこまれた経験に更に自分たちの創造性も加わって,

毎年繰り返される遊びにも発展性が認められる。そして立場を変えた幼児の言動には,一緒に遊んだ幼 児の姿がそのまま写し出されている様子も認められるのである。

 幼児の遊びは,このように大きな子から小さな子へと今も昔も伝えられて行くものであると思われる。

=圏一一

「鞠鱒輔扁葡輔需罷一 鱒囎一一、

i <前鞭> 1

馨      l l      1

         匿

ダリリ ゆコリのコののりリののつ

1 〈今年度〉  :

馨       霧 l      l l      l

  : 年少l   l

     コ の の  り  の の ロ の り の の り の コ  コ コ

l      l

: 〈来年度〉  :

l      l l      匪 l      l

年長e一〉年少1

:年長

・酷へ楽しい

。やってみたい

疾ξ犠ら

やってみよう eすぐに真似る

・同じ場所でする

 \・同じことをする    \・自分たちで新しい    へことをする     、

・小さい子に見せ満

・活動の申には今ま財司

での貯めこみが生 きている

・大きくなったらやろう

・意識上での貯めこみ

・年度ごとに教師も幼児も膨らみ深みのある交流の姿を見ることが出来る

 現代社会の中で失われて来ている様々な年齢の遊びの集団,年齢に差があるからこそ,小さい子へい たわりを自然に持つようになる。そして楽しく遊ぶために自分の気持ちも押えコントU一ルすることも おぼえて行く。幼稚園の生活の中で,年齢の差こそ少ないが,かかわりの中に見られる教育的意義を今 後もしっかりと押えながら,育ちを援助して行きたいと考えている。

参照

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