熊大教育実践研究第01 号, 17 ー87,3991
資 料
精神薄弱養護学校における実践的研究活動の充実のために
演繹的研究方法のすすめ 坂 本 裕・大友 昇*
S u g g e s t i o n
s D f o e v i t c u d e Method r o f l a n o i t a c u d E h c r a e s e R n i l a i c e p S s l o o h c S
Yutaka SAKAMOTO and N oboru OHTOMO (Received October 1, )2919
は じ め に
精神薄弱養護学校における教育・研究活動の非科 学性の指摘(山口, .9791 ,大友, 3819 , .3891 ,柘 植,).7891 がなされてから久しい.山口と大友はと
もに,日本の精神薄弱教育は「ベテランの教師の経 験と勘による指導」を直接受け継ぐ体制で発展した が,教員数の増加などにより,そのような体制が崩 壊し,個々の児童生徒に対する指導技術の鰍密な研 究が停滞していると指摘している.そして,そのよ
うな状況を打開するため,学習心理学,なかでも特 に,応用行動分析学の成果の導入を提言している.
さらに大友は論を進め,特に行動の般化の観点、から,
学校現場における研究と実践の一体化を図ることの 有効性とその必要性を訴えている.また,柘植は,
養護学校から出版されている研究紀要は,適切な教 育測定や評価が行われていないために,単なる実践 集の域を出ていないと指摘し,普遍的な教育測定や 評価の方法の確立と活用を主張している.
このような指摘がなされる中,精神薄弱養護学校 などにおけるアセスメントの実態調査(一門・坂本,
1 9 8 8
. ,一門ら, 991 1.)や,ソーシャル・スキル・
トレーニングに関する文献調査(坂本, 1991 , ).2991 を実施した.その過程において,養護学校における 研究活動の問題性を強く実感した.つまり,先述し たような精神薄弱養護学校の教育・研究活動の非科 学性の指摘を解決しようとする動きを見いだすこと はほとんどできなかったのである.
さらに,藤田)0991( は養護学校で多々みられる 事例研究について,次のような指摘を行っている.
*附属養護学校
“特殊教育科
事例研究とは 1 事例を通して,①未知の現象・事象 を発見すること,②未解決の問題を解決すること,
③未知の問題を解決する新しい方法・手段を発明し たり,既知ではあっても改善を要する問題に対する 従来の方法・手法を越える方法・手段を開発するこ と,④ある現象・事象を説明する新しい理論を構築 すること,といった規程を満たす研究でならなけれ ばならない.そして,これらの規程を満たしていな いものは「事例研究」とはいえず,単なる「実践報 告」にしか値しないと言及している.
本稿においては,乙れらの指摘を受け,精神薄弱 養護学校における実践的研究活動がより研究として の科学的な営みとなるように,どのような手順を踏 みながら,教育研究を推進していくべきかについて 提案する.
演緯的研究方法の手順とその概要 精神薄弱養護学校における研究活動がスムーズに 展開されるように,研究の手順を設定した.GIF(
1).この研究活動の流れは実験科学的研究方法,す なわち,演鐸的研究方法であり,精神薄弱養護学校 における代表的な研究活動である事例研究などの研 究の展開にも合致したものになると思われる.
以下,それらの各段階について,具体的な手順お よび活動内容などを挙げながら,検討を加えるもの としたい.
1
. 問題提起
教育現場におげる研究活動は,日々の実践上の課 題や悩みを起点とし,実践を通して検証・実証がな され,その成果は日々の実践へとフィード・パック されるものでなげればならない.そのため,日々の 教育実践上でも必要不可欠な問題意識をさらに確か
-71 ー
1.問題提起
2
. 研究計画
3
. 文献・資料の収集
4
. 実態調査
5
. データ処理,分析
6
. 研究主題の確定
7 .仮説の設定
8
. 検証方法・計画
9
. 実践
1 0
. データ処理・分析,考察
11.まとめ・執筆 F
I G .
l 研究活動(演縛的研究方法)の手順 なものとしなければ,その後の研究活動は展開する
ことは不可能である.問題意識を明確化し,仮主題 を設定するためには,その文章化が必要である.さ らに,その文章化もr4W1HJ を意識しながら,より 具体的な表記でなければならない.
このような問題提起の過程は,学校や学部を単位 とした共同研究においては,個人研究よりも重要と なり,その後の研究の歩みを左右するものともなっ てしまう.多くの意見や考えを集約し,取りまとめ ていくには K]r 法J (日本能率協会, )8791 などの 活用が有効であろう.
2
. 研究計画
学校や学部単位での共同研究においては,研究の 期限が研究発表会などの開催のために必然的に設定 されていることが多い.しかし,個人研究において は,投稿論文などを除けば,その期限は自ら設定し なければならない.特に学校現場においては,本務 としての教育活動およびそれに伴う種々の事務処理 などの合聞をぬっての研究活動である.そのために
も,より能率的な,また,無理のない研究計画の立 案が重要となる.
計画の立案は徽密さを必要とするとはいえ,教育 現場の研究活動においては目前の実践が中核となる ので,現実的に処理できる中での鰍密さでよいとい える.つまり,児童生徒と対面し,授業を行ってい る学期期間中に後述する調査や実践は必然的に実施 きれなければならなくなる.一方,文献・資料の収 集,検証計画などは,時間的に余裕のある長期休業 中に実施することが可能となる.このような学期期 間中と長期休業期間中を組み合わせた研究計画が,
学校現場においては望ましいものと思われる.また,
この際, rpERT 法J (福岡県教育研究所連盟, 991 )1 を用いれば,共同研究などにおいてよりスムーズな 計画を立案することができる.
3
. 文献・資料の収集
これから展開する研究の目的を明確にしていくた めには,既に行われている同種の研究,あるいはそ の目的をとりまく領域の他の研究についての動向を 踏まえておくことが必要となる.
養護学校の現場の研究においては,その独自性を 強調するがために,先行研究の押さえがほとんどな されていない.研究とは一人の教師ゃある学校だけ の枠内で済ませることなく,一般化がなされて初め てその成果があったといえる.との枠内を出ること ができなければ,それは佐伯)6891( の指摘を待つ
までもなく rお勉強」でしかなく r学問」とはい えないのである.
学校現場における先行研究を押さえるためには,
国立特殊教育総合研究所が毎年発刊している「特殊 教育諸学校・教育研究所等における研究課題等の調 査一00 年度に実施した研究課題」を調べれば,そ の年度内に行われた各学校などの研究課題の概要を つかむことができる.さらに,国立特殊教育総合研 究所などでは,そのデータがコンビュータにも入力
されており,デ}タベースとしての何か年にわたる 検索も可能である(大石,.)6891
また,特殊教育全体の動向を知るためには,日本 特殊教育学会発行「特殊教育学研究」の毎年度の第 l巻に掲載される「文献目録J が重宝である.さら に r教育心理学年報J (日本教育心理学会), r児童 心理学の進歩J (金子書房), r心理学関係研究文献目 録J (日本教育情報学会)なども活用できょう.
同様に r発達障害研究J(日本発達障害学会), r職 業リハビリテーションJ( 日本職業リハビリテーショ
精神薄弱養護学校における実践的研究活動の充実のために
ン学会), r行動分析学研究J (日本行動分析学会) ,
「行動療法研究J (日本行動療法学会), r発達の遅れ と教育J (日本文化科学社), r実践障害児教育J 学( 研,) r障害児の授業研究J (明治図書)などといった 特殊教育に関する邦文の機関誌や雑誌なども,最新
の動向を把握することのできる有効な情報源である.
さらに,このような文献・資料を収集するまでの 過程において,その研究活動の立脚する研究の方法 論)ogyolodeth(m を明確にしておくことにも留意 しておかなければならない.教育現場における研究 においては,その方法)odthme( のみに注目し,全
く異なる方法論に基づく先行研究をいかにも一連の 研究であるかのように取り上げ,モザイク的な研究 になっているものも多数みられる.個人研究はもち ろんのこと,共同研究においても,できる限り“も ののみかた"ともいえる方法論を統一し,首尾一貫
した研究を追求すべきである.
4
. 実態調査
実態調査は,日々の問題意識を明確化する中で設 定した仮主題を,さらに焦点化するために実施する ものである.実態調査においては標準検査,自作評 定尺度や観察法などを用いることが多い.その際,
どのような調査を実施すれば,より必要なデータを 得ることができるかについても十分に検討しなけれ ばならない.
心理・教育検査については「心理テスト法入門」
(伊藤, )3891 や「障害児理解の方法J (坂本ら, )5891 に,各検査の特徴,該当範囲などが記載されている.
その際,特に標準検査 (norm )stsetdecnerefer と 基準検査noiretirc( decenrefer )stset の違いを十 分に把握し,適切な利用を行わなければならない
( B i j o
w , .7791 ,大友,.).8791
自作評定尺度は,養護学校において多数作成され ている.それらの自作評定尺度については,一門ら によるアセスメントの実態調査(一門・坂本,
1 9 8 8
. ,一門ら, 991 1.)によって多数が把握されて いる.
観察法も単に対象児の記録をするのではなく,後 述する研究や指導の独立変数を的確にとらえ得るも のでなければならない.観察法としては,場面選択 観察法,行動見本法,時間見本法などがある.さら に,学校現場におげる授業観察法としては, -nalF d
e r s ( 1 9 7 0
) が示した相互作用分析システムなどがあ る.また,柘植ら(1 )299 ・が開発を進めている精神 薄弱児教育における授業分析システムにも注目すべ
きである.
さらに,実態調査計画で決定したいかなる調査方 法であっても,対象児や対象となるグループにとっ て適したものであるかの予備調査は必要である.実 際に使用してみるなかで,その適用範囲を的確につ かむことができる.
また,地域や家庭,他校を含めた調査においては,
本調査を実施する以前に,調査対象者にとって質問 紙などの読解が可能であるかなどの点についての予 備調査が必要となる.自作の調査紙などの場合,作 成者の意図が伝わりにくいことがないような配慮が 必要不可欠である.同時に,調査方法の手順や内容 そのものを熟知し,熟練していなければならない.
そのためにも,ふだんからの研修などが大切といえ る.
5
. データ処理,分析
実施した調査によって得られたデータの分析,す なわち読み取りが十分に行われなければ,調査を実 施したことの効果が半減してしまう.分析において は,データのグラフ化などによる視覚的検討lausiv( i
n s p e c t i o n
) が中心となろう.その際,柱条図表,度 数折れ線図表,累積グラフなどの中からいずれのグ
ラフを採用するのか,また,その目盛りの取り方な どで,調査結果の印象が変化するので留意しなけれ ばならない.
そしてさらに,調査対象や内容によっては因子分 析などの多変量解析といった統計的処理も実施すべ きである.そのことによって,視覚レベルではとら え切れなかった因子を見いだし,研究の仮説などに 大きく影響を与えかねないのである.
6
. 研究主題の確定
研究主題を確定するためには,日常の問題意識を 明確化することにより設定した仮主題を,実態調査 の分析結果などを踏まえ,依田ら(1)969 が論題の 含 む べ き 要 素 と し て 示 し たytiverb (簡単),
s p e c i f i c i t
y (特殊性), derutcurts-llew (よい構造) , a
t t r a c t i v
e danevitcnitsid (魅力的,特色)といっ た各要素を含んだものへと高めなければならない.
TABLE1 に示した観点は群馬県教育研究所連盟
( 1 9 8 1
) による研究主題確定の観点を参照し,再構成 したものである.
7
. 仮説の設定
研究活動においては,研究仮説を立て,その妥当 -73 -
性を客観的に求めなければならない.つまり,仮説 自体も明確なものでなければ,.その役割を果たすこ とはできない.そのため,仮説の採択においては,
F I G .
2 に示したような各要因を含まな砂ればなら ないと考える.
にする.独立変数とは「操作的に測定あるいは統制 しうる物理的・社会的・心理的な環境条件j (教育心 理学辞典,教育出版)であり,教育現場においては 様々な教師などの手だてと考えて良いであろう.ま た,従属変数とは「操作可能な外的条件(独立変数) の変化に応じて変化すると考えられる変数(j教育心 理学辞典,教育出版)であり,特に事例研究では標
「研究対象」とは「障害種J や「領域や教科j,r教 材や教具」などであり,その対象を絞り込み,明確
ro0 について, 0 O を0 0 することにより, 0 0 となろう」
研究対象 独立変数 従属変数
FIG.2 研究仮説について
TABLE 1 研究主題確定の観点(群馬県教育研究所連盟. 198 .1 r学校におげる教育研 究の進め方」より作成)
観 点 | 各 観 点 の 視 座
方 向 性|研究課題の目指している方向,目的や価値の追究するものであるか 内 容 性|包含している意味内容の構造はどのようになっているか
方 法 性|課題解決に向けて i 加えようとしている手だては明確か 緊 急 性|目の前の児童生徒にとって,最も緊急を要するものであるか 課 題 性|学校の教育目標との関連で,今日的課題性を持つものであるか 時 代 性|時代が現代教育に求めているものであるか
特 殊 性|地域や学校の独自の性格に基づくものであるか 適 時 性|児童生徒の心身の発達に適応するものであるか
そ の 他|その研究が特に留意し,注目しなければならない観点はないか
TABLE 2 教授過程にまつわる変数(松田ら. .4981 r教授心理学増補改定版Jよ り引用)
教育目標
統制:内的活動,外的活動
5虫 教 授 方 法 教材提示:方向,不確定性,提示者,提示媒体,提示対象 動機づけ:欲求,誘因,強化
立 教 材 : 質 , 量
放。ι言 3凡~ 教 師:教材を中核とする知識・理解・教養,教授技術的能力と型,
互
作 教授意欲,学習者の個人的・集団的特性の理解 数 用 個人:既習レベル,思考・学習の型とか能力,学習意欲
学習者 集団:生産性,凝集性
従 属 変 数
第1 次:教授過程における一般的なもの 教 授 効 果 第2次:教材の習得,理解など
第3次:長期的な学習,態度形成,人格的発達など
精神薄弱養護学校における実践的研究活動の充実のために
的行動と目標行動および目標行動に関連する行動と なる(藤田, .)0991
教育活動にお付る独立変数と従属変数を,松田・
松田(1)489 はTABLE2 に示したように分類・整理
している.
8
. 検証方法・計画
検証方法としては,実験群と統制群を設げて行う 心理学的方法がある.しかし,日本の教育現場にお いてはその理解が七分に進まず,受け入れが困難な 状況にある.ただし,それに代わる効果的な検証方 法が開発されておらず,単に,指導などの働きかけ
る以前と以後の状態像を比較する方法が採られ,研 究仮説の効果を明確にするには不十分なものが多い
といえる.
このようなことを解決するものとして,単一事例 研究法がある.単一事例研究法は研究仮説(独立変 数)の効果を実証する観点から開発されたものであ
り,反転デザイン,多層ベースライン,要因交代デ ザインの3種に大きく分類することができる.それ ぞれの詳細については割愛するが,「言語障害児の実 験研究法J (McReynolds te, la, )8391 , r 1事例の 実験デザインJ (Barlow , )4891 , r行動心理ハンドブ ックJ (小川, )9891 , rシングル・ケース研究法J 岩( 本・川俣,)0991 などがある.
検証計画は,その研究仮説などから様々なものが 考えられる.ここでは,事例研究の際の基本的なそ のパターンを以下に示す.これは,藤田(1 )589 が 示した生活技能などの指導に関する検証計画の在り 方をベースとし,精神薄弱養護学校現場の視点,お よび,東ら(1)879 ,大友9791( ,8491 , )4891 ,東 (
1)289 ,河合(1)689 を参照し,加筆した.
①教師は指導開始前に,親などの周囲の人の指導 に関する可能な限りの理解,協力を求めておく.
②どのような課題を指導するのかを決める.複数 の指導すべき課題があり,優先順位をつげなけれ ばならない場合は,③対象児や周囲の人にとって 重要性・緊急性の高いと予測されるもの,⑥目標 が達成されやすいと予測されるもの,@他の課題 の基礎をなし,それらにプラスの効果を及ぽすと 予測されるもの,を選択する.
③指導すべき課題が決まったなら,日常場面にお けるその課題の現状・実態を観察・記録する.
④また,指導課題の最終目標を設定し,その目標 を達成するために必要な下位の行動単位を明らか にする.ただし,この課題分析は一様なものでは
-75 -
なく,対象となる児童生徒や教師,家族などの身 近な者の動きに対応して,個々のケースごとに検 討するようにする.
⑤指導前のペースラインとして,この下位の行動 単位のどこまで対象児が獲得しているかを調べる.
⑥未護得の下位行動の単位行動だけを取り出して 指導するのが有効か,目標行動の流れの中でそれ を指導するのが有効的かを判断する.
⑦指導における独立変数と従属変数を検討し,明 確にする.
⑧指導プログラムを順向型プログラム dwarfor( c
h a i n i n g
) ,背向型プログラム (backword .niahc i
n g
) のいずれで組むかを検討する.
⑨単一事例研究法の中から,いずれの研究法を採 用するかを決める.
⑬目標行動の生起率を増加させるであろうと予測 される強化刺激をリストアップする.また,同時 に強化スケジュールを検討する.
⑪指導場所として学校,家庭のいずれにするのか,
また,教室かプレイルーム,体育館かなどのいず れか,さらに自然状況か人為状況かなどといった ことを検討する.また同時に,指導人数として個 別指導,集団指導のいずれを採用するのかも決め る.ただし,この指導場所や指導入数などが独立 変数ど成り得ることもあるので注意が必要である.
⑫次に 1日(週,月)あたりの指導回数と 1 回あたりの指導時間(または練習=試行の回数) を仮に設定する.
⑬授業の開始から終了までに予想される対象児の 行動とそれに対する対処の仕方(ことぽ,モデル,
促進)のフローチャートなどを作成する.
⑬指導の経過を数量化できるような記録用紙を作 成する.
⑬次のステップに移行するための通過基準を設定 する.
⑬チーフの教師の他に,サプの教師(補助者,記 録用紙記入者, VTR 記録者など) ,スーパーパイ ザー(校長,教頭,学部主事など)などの十分な スタッフがいる場合は,全員で話し合いを実施し,
それぞれの役割を決める.
⑪教室で他の児童生徒が複数いるときは,その児 童生徒からも目を離さずに,対象児の指導ができ
るように配慮する.
⑬指導に必要な材料のすべてを一覧表に書き出し ておく.
⑬⑬に従って指導に必要な材料を準備,あるいは
作成し,指導開始まで保管し,対象児などが触っ てめちゃくちゃになることがないようにしておく.
⑫教師により授業の開始が告げられ,指導プログ ラムに従って指導が開始されるその日の,その 指導は,プログラムのどのステップから開始する
FIG.3 指導手続きのブローチヤ)ト
(藤田. .5891 r精神薄弱児の生活訓練」から引用)
かが確認され,そのステップから指導が始まる.
⑫プログラムに基づいた指導を実施するに当たっ ての一般的手続きは, FIG.3 r指導手続きのフロ ーチャート」に示されている.図中「正反応させ る」とあるのは,正反応が生じないのに指導を終 わらなげればならないことがあるので,その対象 児が現時点で受けている水準の介助によって正反 応させるととを意味している.介助の水準を後戻
りして全面介助で正反応させて指導を終わること がないようにする.
⑫対象児のl 試行ごとの反応を,対象児が反応す るたびごとに記録用紙に記録する.直接関係ない と思われるような反応も備考欄に記入しておく.
記録用紙記入者などがいない場合にも,指導プロ グラムを立案する際に対象児が100% 近い正反応 であるようにすることですべて正反応となれば,
指導終了後にチェックすることで対応が可能とな る.また,誤反応のみのチェックで記録が完了す るような記録用紙の工夫も必要である.
⑫予定の指導が終了したなら,教師は対象児に授 業の終了を告げ,指導を終える.日常の自然状況 の中での指導であれば,指導終了後は,次の授業 に移るか,休息時間となる.
⑫できるだけ早く記録の整理,後片付け,翌日(ま たは次の日の指導)の準備,他のスタップがいれ ば,その人たちとの話し合いなどを実施する.
⑫指導が行き詰まったならば,すぐにその原因の 究明を図る.プログラムのステップが組すぎはし な い か , 対 象 児 の 反 応 に 随 伴 し て 与 え る 刺 激
( F I G .
3 における「ほめる」刺激)がその行動を増 加させる機能を有していないかなどを検討し,プ
ログラムや指導手続きを修正して指導してみる.
⑫指導の結果をグラフに表示しておく.
⑫指導上の問題点を明らかにし,次の指導に生か していく.
9 . 実践
研究活動における実践は,日々の教育実践上の課 題から導き出された研究課題や研究仮説を受けての ものであり,基本的には通常の教育活動と同質のも のである.しかし,ここで押さえなザればならない のが,ペースライン,すなわち,指導前の学習水準 の確定である.研究仮説の検証,すなわち,独立変 数の働きを明確にするためには,従属変数による指 導前の対象となる者の状態像の明確な把握が必要と なる.
精神薄弱養護学校における実践的研究活動の充実のために
教育研究のメインとなる本実践においては,検証 計画で述べた基本的な手続きが周到に実施されるこ とが望まれる.また,本実践のデータ収集において は .4 実態調査でも述べた行動見本法,時間見本 法などの観察法や授業観察法や授業分析システムが 活用され,より目的的な収集が実施されなければな
らない
さらに,事後調査や追調査も予備実践・事前調査 と同様に確実に実施されなければならない.ともす ると,本実践,データ収集の段で実践を終結しまい がちである.しかし,般化状況や維持状況の確認を 受けて,その展開を終了すべきである.特に精神薄 弱教育においては,授業などにおいて獲得した技能 や知識が,普段の生活において般化され,維持され るまでを,一連の過程ととらえるべきである.その ため,事例研究などにおいては,指導終了後数か月,
もしくは 1年後のフォロー・アップまでを,実践 の枠内に組み入れておくべきである.
1 0
. データ処理・分析,考察
実践で得られた授業記録などのデータの処理や分
析には, TABLE3 に示したような統計法s 記述法,
解釈法などがある(福岡県教育研究所連盟, 199 .)1 それぞれの利点を持つ一方,それぞれに問題点も含 んでいるため,研究課題,仮説に最も合致したもの を選択しなければならない.また,いろいろなデー タの分析結果の関連性を明確にするためには,先述 したKJ 法などの活用も考えられる.
次の段階にて,それらの分析結果を研究仮説と照 らし合わせての考察が行われるとととなる.仮説は 検証されたか否かを明確にし,分析した諸結果に関 する推論,解釈を行う.その際,先行研究の研究結 果と比較検討するととも忘れてはならない.
考察を進める中で,仮説と合致したデータのみを
取りよげることにならないよう,また研究結果を必 要以上に拡大解釈しないように特に注意しなければ ならない.さらに,今回の研究で明確になったこと
じ今後の課題として残されたことを明確に区分し,
今後行われる研究の先行研究としての役も担えるよ うにしておくべきである.
1 1
. まとめ・執筆
研究活動の最終段階して,研究論文としての執筆 を行わなければならない.乙の執筆においては,こ れまで述べてきた各段階をまとめることになるが,
単に羅列してもその意味を成し得ない.西国(1 )689
は教育現場における研究論文のスタイルとして「実 証的研究や実験的研究の論文(研究仮説を設定した 研究論文,研究仮説を設定しない論文)J, r調査研究 の論文J,r事例研究の論文J,r教育相談に関する研 究論文J,r教材研究の論文」といった5種8タイプ を示し,各タイ・プの項立ての在り方ならびに各項ご との執筆の観点,要領なども示している.
お わ り に
精神薄弱養護学校における実践的研究活動の科学 化推進の方策を探るべく,本稿では研究手順を取り 上げ,その内容を明確にした.このような手順を踏
まえるごとで,教育現場における教育研究がより客 観性をもち,科学的な営みとなる努力をすべきであ
ると考える.
しかし,これらすべての手順を洩れなく実施しな くとも,実践的研究活動は十分に展開できることも 最後に触れておきたい.すべての段階を踏破するこ
とがより望ましいことではあるが,教育現場におい ては,指導の手を抜くことができない児童生徒が自 の前にいるのであるから,諸段階の踏破に手間取り,
時間をいたずらに経過させることだけは避貯なげれ
TABLE 3 教育実践に関するデータの主な処理方法(福岡県教育研究所連盟. 1.991
「新訂校内研究のすすめ方」より作成)
処理方法| 処理方法の特徴と教育現場における課題 統計法|・データを統計処理し,量的に表現する方法
.統計に関する専門的な知識が必要である
記述法|・調査した事実をありのままに,しかも論理的に記述する方法
・客観的な記述となるような表現方法・技術が必要である
解釈法|・結果に関する相関関係や因果関係などについての解釈を加える方法 -立脚する方法論の明確化やより客観的な解釈が必要である
- 77 ー
ばならない.実践的研究活動の実施回数を重ねてい く中で,各段階をひとつずつ確かなものへと高めて いくことが肝要といえる.
引 用 文 献
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