1 .は じ め に
日本から韓国へ廃鉛蓄電池輸出が急拡大している。2006年以降に韓国向けの輸出が急拡大 し,廃鉛蓄電池輸出のほぼ100%を占めている。これに伴い,日本国内の鉛二次精錬業にお いて原料調達が困難となり稼働率が低下している。既往研究では海外向けの方が販売価格は 10円/kg ほど高くなっており,韓国側が高値で廃鉛蓄電池を仕入れられる理由は把握されて いない。
そこで本稿では日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の急拡大の現状を概観し,これまで分 析されてこなかった日本―韓国間の廃鉛蓄電池貿易を経済分析する。第 2 章では,韓国側が 高値で廃鉛蓄電池を日本国内で調達している現状を貿易統計や業界データから分析する。ま た,日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の急拡大に伴う課題を整理し,現在検討されている バーゼル法の一部を改正する法律案について言及する。
次に第 3 章で,先行研究がなかった韓国の鉛二次精錬業について,韓国の廃鉛蓄電池輸入 の現状を貿易統計から分析し,さらに,韓国鉛二次精錬業の経営状態を分析し,日本―韓国 間の廃鉛蓄電池貿易の将来動向を検討する。
本稿では,日本から韓国へ廃鉛蓄電池輸出が急拡大している現状を概観し,これまで分 析されてこなかった日本―韓国間の廃鉛蓄電池貿易を経済分析した。日本からの韓国向け 廃鉛蓄電池輸出の急拡大に伴い,日本国内の鉛二次精錬業において原料調達が困難となり 稼働率が低下し,懸念されていた韓国での鉛二次精錬業による不適正処理が発生した。そ こで,韓国の鉛二次精錬業について分析したところ,日本側から懸念されている廃鉛蓄電 池の高値買取の要因は,韓国の鉛二次精錬業の生産拡大に伴う原料確保の結果であると推 察できる。さらに,韓国鉛二次精錬業の経営状態を分析すると,利益率は総じて低下して おり韓国鉛二次精錬業は過当競争にあるといえる。これらの結果から,バーゼル法改正は 不適正輸出防止には効果があるが,日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出には歯止めをかけ られない恐れがあるといえる。
日本―韓国間の廃鉛蓄電池貿易の経済分析
佐 々 木 創
2 .日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の現状・課題・対策
2-1 日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の現状日本からの廃鉛蓄電池輸出量の推移をみると,2000年代初頭にはほとんど輸出実績がな かったが,2005年に初めて1,000 t を超え,その後急拡大してきた。特に2006年以降は韓国 向けの輸出が大半を占めており,2016年には9.7万 t,韓国への輸出割合は97.9% となって いる(図 2-1 )。
廃鉛蓄電池は有害廃棄物の越境移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下,
バーゼル条約)に基づく国内法である特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
(以下,バーゼル法)で有害廃棄物として管理されており,輸出時の許可制や事前通告制,
不適正な輸出や処分行為が行われた場合の再輸入の義務などが規定されている。韓国向けの 廃鉛蓄電池輸出もバーゼル法に則って輸出されるか,もしくは,OECD 加盟国である韓国 向けのリサイクル目的での輸出であるため,バーゼル法に基づく外為法の輸出承認に際して 環境大臣の確認は不要とされている。
しかしながら,詳細は後述する通り,日本国内の鉛二次精錬業において原料調達が困難と なり資源確保の課題に注目が集まり,関連調査が実施されてきた。
矢野経済研究所(2015)では,国内の自動車解体工場へのアンケート調査から,海外に流 出している鉛量は2,959 t と全体の12.3%に留まっており,自動車解体工場ではなく国内の 仲買業者を通じて海外に流出している可能性を指摘している。同調査では使用済自動車から 発生する廃鉛蓄電池量は,交換用途によって発生するバッテリーの20%程度と指摘している 通り,解体業者経由ではなく,バッテリー交換時にガソリンスタンドやディーラー,量販店 経由でのマテリアルフロー調査が必要である。また,製錬業者や鉛関連事業者へのヒアリン
図 2-1 日本の廃鉛蓄電池輸出量と韓国への輸出割合
70.0 80.0 90.0 100.0
(%)
(t)
70,000 80,000 90,000 100,000
30.0 40.0 50.0 60.0
30,000 40,000 50,000
60,000 韓国以外への輸出量
韓国への輸出量 韓国への輸出割合 10.0
20.0 0
10,000 20,000
0.0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
(出所) 財務省貿易統計 HS code “854810000” より筆者作成。
グから,海外向けの方が販売価格は10円 /kg ほど高くなっており,韓国側が高値で廃鉛蓄 電池を仕入れられる理由は把握しきれておらず,韓国の二次精錬業者や電池メーカーに補助 金が出ている可能性を指摘する声もあると報告している。
そこで,廃鉛蓄電池の国内買取価格と韓国向け輸出単価について分析する。廃鉛蓄電池の 国内買取価格については,金属資源関係の市場情報を配信している IR universe ㈱からデー タを提供して頂いた。輸出単価については,財務省貿易統計の月次データから産出した(図 2-2 )。
図 2-2 の通り,廃鉛蓄電池の国内買取価格と韓国向け輸出単価を比較すると,韓国向け輸 出単価が常に上回っている。最大価格差は2013年 1 月の25.76円,最小価格差は2016年 7 月 の0.65円,平均価格差は11.96円となっている。なお,直近の2017年 1 月が韓国向け輸出単 価の最大値107.52円/kg となっている。
ただし,輸出価格は FOB(Free on Board)価格(本船渡し価格)となっている。そのた め,廃鉛蓄電池の国内買取価格と韓国向け輸出単価の比較において国内輸送費は相殺できる と考えられるが,韓国向け輸出単価には輸出検査費,輸出梱包費,輸出通関費,船積費等の 輸出経費が加算されていることに留意が必要である。しかしながら,平均価格差は11.96円 であるが,kg 当たりの輸出経費が10円程度高くなることは想定できないため,海外向けの 方が販売価格は10円/kg ほど高いという前述した製錬業者や鉛関連事業者へのヒアリングか らの指摘は妥当であり,韓国側が高値で廃鉛蓄電池を日本国内で調達できる要因は,韓国の 鉛二次精錬業に何らかの比較優位があると推察できる。
関連して,2013年に韓国で生産された鉛二次電池64万 t のうち,廃鉛バッテリーを原料と する鉛二次電池(リサイクル鉛バッテリー)の生産量は20万 t に達し,2010年の13万 t から
3 年間で約1.5倍に増加しているとの報告もある(九州経済産業局 2015)。
図 2-2 廃鉛蓄電池の国内買取価格と韓国向け輸出単価の推移
100.00 120.00
40.00 60.00 80.00
価格差国内の買取価格 韓国向け輸出価格 0.00
20.00
2012年1月 2012年2月 2012年3月 2012年4月 2012年5月 2012年6月 2012年7月 2012年8月 2012年9月 2012年10月 2012年11月 2012年12月 2013年1月 2013年2月 2013年3月 2013年4月 2013年5月 2013年6月 2013年7月 2013年8月 2013年9月 2013年10月 2013年11月 2013年12月 2014年1月 2014年2月 2014年3月 2014年4月 2014年5月 2014年6月 2014年7月 2014年8月 2014年9月 2014年10月 2014年11月 2014年12月 2015年1月 2015年2月 2015年3月 2015年4月 2015年5月 2015年6月 2015年7月 2015年8月 2015年9月 2015年10月 2015年11月 2015年12月 2016年1月 2017年1月 2016年2月 2016年3月 2016年4月 2016年5月 2016年6月 2016年7月 2016年8月 2016年9月 2016年10月 2016年11月 2016年12月
(円/kg)
(出所) 国内買取価格:IR universe ㈱提供データ,韓国向け輸出価格:財務省貿易統計 HS code “854810000”
より筆者作成。
さらに,韓国の二次精錬メーカーに着目した日本生産性本部(2015)では,廃鉛蓄電池の 二次精錬業は解体方式ではなく破砕方式を採用しており,解体方式が主流の日本と比べ,電 気料金等々も相俟って生産性が高いこと,中国や韓国の自動車メーカーは,仕向地別にバッ テリーのスペックを変えていることに対し日本メーカーは同等スペックで統一しているこ と,韓国は補修用を含めて色々な市場に対応しボリュームゾーンで求められる鉛バッテリー の性能と比較すると日本メーカーの4N(純度99.99%)の鉛は過剰品質ではないか,と指摘 している。
これらの韓国の鉛二次精錬業の比較優位を確認するために,日本鉱業協会や JOGMEC な どの関係者にヒアリングを実施したところ,その要点は以下の 3 点に集約される。 1 )鉛二 次精錬業は装置産業のため後発の利益が働きやすいが,鉛蓄電池の解体方式では大きな価格 差は生じないこと, 2 )日本の鉛蓄電池はメンテフリーバッテリーのため4N が主流に対し て,韓国電池メーカー向けの鉛は3N で対象とする市場が異なること, 3 )韓国調達庁が規 模の経済を働かせるために大量に鉛二次精錬業から再生鉛を補助金など上乗せ価格で購入 し,韓国電池メーカーへ供給しているとの情報がある,と指摘している。
特に 3 つ目の鉛二次精錬業と電池メーカー間取引の補助金については,日本からの韓国向 け廃鉛蓄電池輸出の急拡大の主要因であるとの指摘は多いが,確証的な情報は乏しいのが現 状となっている。
2-2 日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の課題
このような日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の急拡大に伴う課題は, 1 )日本国内の鉛 二次精錬業における原料調達, 2 )韓国での鉛二次精錬業による不適正処理,に大別され る。
日本国内の鉛二次精錬業における原料調達については,環境省「廃棄物等の越境移動等の 適正化に関する検討会」の中で,日本の非鉄製錬業の業界団体である日本鉱業協会から,日 本は銅・鉛・亜鉛の製錬所が立地する世界でも稀有で比較優位のある産業であり,資源循環 型社会の構築に大きく貢献していること,また各製錬所で発生する副産物のやりとりを行っ ており,鉛二次精錬業において原料調達が困難になることは,他の銅・亜鉛の製錬所にも影 響を及ぼすことが指摘された(日本鉱業協会 2015)。
同協会の指摘の通り,日本からの韓国への廃鉛蓄電池の資源流失によって,日本の鉛製錬 業の稼働率が低下している。2014年度の鉛製錬施設におけるリサイクル原料の処理能力67.7 万 t に対して処理実績は23.1万 t であり,42万 t の処理余力が生じている(環境省 2016a)。
以上に対し,環境省「廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会」では,バーゼル法 における国内処理原則の具体化として,有害物は国内でなるべく処理するとの原則に基づい
た輸出審査基準等を整備することで,使用済鉛蓄電池等の国内での継続的・安定的なリサイ クル処理を確保することが同研究会の報告書として,2016年 4 月にとりまとめられた(環境 省2016b)。
さらに,2016年 6 月に「日本再興戦略2016」で,国内外で発生した二次資源(使用済鉛蓄 電池,電子部品スクラップ等)について,日本の誇る環境技術の先進性を活かしつつ非鉄金 属のリサイクルを着実に進めるため,バーゼル法における規制の在り方等について2016年度 中に検討を行い,その結果を踏まえ,早期に必要な措置を講ずることとされた(日本経済再 生本部 2016)。
これを受けて,中央環境審議会循環型社会部会において「特定有害廃棄物等の輸出入等の 規制の在り方に関する専門委員会」,産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイク ル小委員会「有害廃棄物等越境移動ワーキンググループ」が設置(以下,合同会議)され た。
このような対策が日本国内で検討される中で,韓国での鉛二次精錬業による不適正処理が 2016年 6 月に発生した。「韓国において11社の使用済鉛蓄電池リサイクル業者がヒ素を含む 鉱滓(使用済鉛蓄電池のリサイクルに際して生じる残渣)約17万 t を,数年間にわたって組 織的に不法に処理していたことが発覚した。我が国から輸出された使用済鉛蓄電池もリサイ クルに際して不適正処理が行われた懸念がある」と指摘されている(合同会議 2017)。
韓国での鉛二次精錬業による不適正処理が発覚し,直後の2016年 7 月には廃鉛蓄電池の国 内買取価格と韓国向け輸出単価の価格差が最小値を付けるなど,韓国への輸出の流れが変化 するのではないかとの憶測もあった。韓国では摘発された使用済鉛蓄電池リサイクル業者 が,鉱滓スラグを一般廃棄物と称して,処理コストを 3 万3,000ウォン(約3,000円)/t ほど安 価に委託しており,これが高値で日本から廃鉛蓄電池を輸入できる要因であるという指摘も あった(日刊産業新聞 2016)。
ただし,上記の分析が正確だとしても環境コストは 3 円 /kg しか違わないため,国内相 場との買取単価差額10円 /kg の一因でしかない。したがって,日本と韓国の環境コストの 差から競争力の要因を求めるのは拙速といわざるを得ないであろう。結果的に,2016年 8 月 以降は韓国向け輸出量が回復し,2016年は前年比30%増となった(図 2-1 ,図 2-2 )。
2-3 不適正輸出を防止するバーゼル法改正
既述の通り,韓国向けの廃鉛蓄電池輸出はバーゼル法に則って輸出されるか,もしくは,
OECD 加盟国である韓国向けのリサイクル目的での輸出であるため,バーゼル法に基づく 外為法の輸出承認に際して環境大臣の確認は不要とされている。
この根拠となっている「OECD 決定では,有害廃棄物等の越境移動に際して満たすべき
要件として,① 契約履行不能となった場合などに対応する資力保証の担保と ② 環境上適正 な管理の確保を求めている(OECD 決定第Ⅱ章 B(1),D(1))が,我が国のバーゼル法に基 づく外為法の輸出承認に係る審査基準においては,これらの取扱いが明確になっていない」
ことが韓国での鉛二次精錬業による不適正処理によって露呈することになった。これに対し て,「輸出先国が OECD 加盟国である場合にも,OECD 加盟国と非加盟国との違いを考慮 に入れつつ,輸出先の処理施設の環境汚染防止措置の状況等に不適正処理が疑われるような 場合には,環境上適正な管理が確保されているかどうかを審査することができるようにすべ き」と提言された(合同会議 2017)。
これを受けて,バーゼル法の一部を改正する法律案が2017年 3 月に閣議決定され,国会審 議へ経て2017年 6 月に施行した。具体的には,バーゼル法第 4 条第 2 項で,輸出先での環境 汚染防止措置について環境大臣による確認事項を法的に明確化し,その後,省令改正によ り,先進国向けの輸出であっても環境大臣による確認対象とした。環境大臣の確認事項とし ては,処理施設の構造,環境関連規制の遵守状況,排ガス・排水対策等の環境保全対策等が 想定されている(経済産業省・環境省 2017)。
3 .韓国鉛二次精錬業の経済分析
3-1 韓国廃鉛蓄電池輸入構造前章では日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の現状とその課題,現在検討されている不適 正輸出を防止するバーゼル法改正について確認した。しかし,これらの関連報告書では韓国 の鉛二次精錬業についての分析が乏しいといわざるを得ない。そこで,本章では,韓国にお ける廃鉛蓄電池を再生原料と利用している鉛二次精錬業について経済分析を進める。なお,
韓国の生産統計は韓国統計庁(Korean Statistical Information Service:KOSIS)で概要の み閲覧が可能であり,品目ベースの生産統計を閲覧するためには住民登録番号が必要であ り,外国人が閲覧することはできない。また,本稿の分析の主眼は,日本と韓国間の廃鉛蓄 電池の貿易にあることから,本節でも韓国の貿易統計をベースに分析する。
国連加盟約200の国や地域の統計機関から報告を基に作成された輸出入統計のデータベー ス UN Comtrade を利用し,2015年における世界の廃鉛蓄電池輸入上位10カ国をみると,韓 国はメキシコに次いで世界第 2 位であり,年間42万 t を世界各国から輸入している(表 3-1)。
2005年の各国の輸入量と比較すると,韓国は世界シェア10%から30%へと輸入量を拡大し ている。また,メキシコと韓国の上位 2 カ国で世界シェアが35%から63%と上昇し寡占化が 進んだといえる。
ここで,世界の廃鉛蓄電池輸入上位10カ国の廃鉛蓄電池輸入に関する比較優位指数
(Revealed Comparative Advantage:RCA)を求める。通常,輸出競争力を反映する指標 として比較優位指数が用いられるが,これを再生資源の輸入に援用した道田(2010)は「輸 入比較優位指数は,世界の総輸入額に占める対象再生資源の輸入額の割合に対し,当該国の この割合がどの程度の規模かを示す市場である。値が大きければ,当該国の対象再生資源の 輸入がそこ国の貿易規模に対して相対的に大きいことを表している」とする。
i 国の k 財の輸入比較優位指数は,以下のように求める。
この時,i:分析対象国,k:k 財の輸入総額,s:全ての財の輸入総額,w:世界を表す。
以上から,世界の廃鉛蓄電池輸入上位10カ国の廃鉛蓄電池輸入に関する比較優位指数を示 す(表 3-2 )。
表 3-2 の通り,韓国の2015年の廃鉛蓄電池の輸入比較優位指数は12.54となり,表 3-1 で 確認した数量ベースだけでなく,金額ベースでも廃鉛蓄電池の輸入を急拡大していることが わかる。
前章で確認した通り,日本から韓国への廃鉛蓄電池の輸出が拡大し,日本の鉛二次精錬業 Mki
Msi Mkw Msw
表 3-1 世界の廃鉛蓄電池輸入量
(単位:kg)
順
位 国 名 2015 2005
数 量 世界シェア 数 量 世界シェア
1 メキシコ 458,404,552 33% 86,498,015 25%
2 韓国 424,764,990 30% 35,535,398 10%
3 ドイツ 61,242,479 4 % 12,427,400 4 % 4 ベルギー 60,991,167 4 % 35,920,017 10%
5 スペイン 42,630,853 3 % 1,805,919 1 % 6 インド 42,537,150 3 % 2,468,152 1 % 7 スロベニア 38,708,638 3 % 23,316,009 7 % 8 チェコ 38,377,326 3 % 2,193,792 1 % 9 アメリカ 36,635,662 3 % 11,890,196 3 % 10 スウェーデン 34,464,565 2 % 32,744,282 9 % その他 163,451,941 12% 104,994,498 30%
合 計 1,402,209,323 100% 349,793,678 100%
(出所) UN Comtrade HS code“854810(Waste & scrap of primary cells, primary batteries & electric cumulators; spent primary cells, spent primary batteries & spent electric accumulators)”
より筆者作成。
の原料確保が困難になっているが,韓国の廃鉛蓄電池輸入量と日本からの輸入シェア(図 3-1 )をみると近年では低下している。
韓国の廃鉛蓄電池輸入国と輸入量を詳細に分析すると,2005年に3.5万 t であった輸入量 が,2015年には42.4万 t と12倍に拡大し,輸入国も2005年に14カ国だったが2015年には51カ 国とグローバル化している。特に,近年では中南米諸国からアフリカ諸国まで韓国の廃鉛蓄 電池輸入先の多様化が際立っている(表 3-3 )。
既述の通り,韓国の詳細な生産統計は入手できないため,ここでは国際鉛亜鉛研究会
(International Lead and Zinc Study Group)の精錬鉛生産量を基に分析する。輸入された 表 3-2 世界の廃鉛蓄電池主要輸入国における輸入比較優位指数の変化
順位
国 名 2015 2005 相対
成長率
1 メキシコ 5.63 11.25 0.50
2 韓国 12.54 3.85 3.25
3 ドイツ 0.79 0.18 4.37
4 ベルギー 1.94 2.67 0.73
5 スペイン 2.07 0.12 17.21
6 インド 1.45 0.64 2.27
7 スロベニア 17.22 21.00 0.82
8 チェコ 3.25 8.41 0.39
9 アメリカ 0.20 0.13 1.58
10 スウェーデン 2.81 5.65 0.50 (注) 相対成長率は,2005年の RCA に対する2015年の RCA の比率で示す。
(出所) 表 3-1 に同じ。
図 3-1 韓国の廃鉛蓄電池輸入量と日本からの輸入シェア
(出所) 表 3-1 に同じ。
35%
18%
0 5 10 15 20 25 30 35 40
0 50,000,000 100,000,000 150,000,000 200,000,000 250,000,000 300,000,000 350,000,000 400,000,000 450,000,000
(単位:kg) (%)
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
日本を除く輸入量合計 日本からの輸入量 日本からの輸入シェア
表3-3 韓国の廃鉛蓄電池輸入国と輸入量 (単位:kg) 2005年2006年2007年2008年2009年2010年 1アメリカ17,996,066アメリカ20,448,067アメリカ65,451,346アメリカ60,357,795アメリカ57,254,039アメリカ69,996,446 2クウェート8,017,105イギリス625,840日本35,539,290日本37,072,576日本50,994,002日本44,154,485 3日本4,317,354トルコ162,005クウェート9,862,321ドミニカ9,867,308ドミニカ12,254,081ドミニカ20,373,989 4チリ3,044,506スリランカ155,000オーストラリア4,833,824オーストラリア3,912,662ニュージーランド6,491,318クウェート13,417,587 5ブルガリア1,167,040南アフリカ667,665ニュージーランド2,590,552ニュージーランド3,265,018クウェート5,386,125スーダン6,681,767 6スリランカ392,929シンガポール752,879シンガポール2,117,120クウェート2,868,660シンガポール4,350,974シンガポール5,470,491 7フィリピン279,707フィリピン62,210ガーナ1,422,267ガーナ2,216,933オーストラリア3,433,678ニュージーランド4,580,150 8マルタ100,349台湾602,505メキシコ557,036トーゴ2,098,290スーダン2,174,680ガーナ3,362,420 9シンガポール100,000メキシコ298,580ジャマイカ483,064シンガポール1,453,771エルサルバドル1,075,763エルサルバドル2,752,000 10台湾72,351マルタ118,650マルタ356,866フィジー549,845ガーナ1,034,375チリ1,456,441 他4カ国47,991他11カ国25,595,415他12カ国2,084,164他6カ国455,117他11カ国3,325,179他21カ国7,139,717 合 計35,535,398合 計49,488,816合 計125,297,850合 計124,117,975合 計147,774,214合 計179,385,493 2011年2012年2013年2014年2015年 1アメリカ111,217,760日本78,787,086日本89,064,126日本98,514,884UAE97,741,527 2日本45,828,703アメリカ37,254,807スーダン38,942,738UAE57,613,437アメリカ83,723,428 3スーダン11,621,784スーダン32,399,770UAE38,838,064アメリカ40,544,354日本75,318,998 4スリランカ9,901,194UAE18,989,288アメリカ33,432,636ドミニカ23,800,335ドミニカ24,683,072 5シンガポール9,608,114ニュージーランド14,970,138シンガポール17,101,717トーゴ18,477,903シンガポール20,163,036 6ドミニカ9,268,824クウェート10,294,818ニュージーランド15,242,756コンゴ17,457,126ニュージーランド18,452,139 7クウェート9,093,464ドミニカ10,195,799ドミニカ13,564,054ニュージーランド15,848,239コンゴ15,551,229 8ニュージーランド6,639,894シンガポール10,140,249南アフリカ11,710,692スーダン15,154,957トーゴ15,155,318 9エルサルバドル4,515,000ガーナ5,872,450オーストラリア6,435,477オーストラリア13,650,180ブルネイ14,379,973 10ガーナ3,772,677南アフリカ4,604,615ガーナ6,125,100シンガポール13,231,176ガーナ7,431,310 他21カ国13,289,917他20カ国20,341,869他36カ国37,198,670他37カ国64,975,660他41カ国52,164,960 合 計234,757,331合 計243,850,889合 計307,656,030合 計379,268,251合 計424,764,990 (出所) 表 3-1 に同じ。
廃鉛蓄電池の全量が精錬鉛生産の原料(純分換算率:53%)として利用されたとして仮定 し,輸入廃鉛蓄電池の利用率の推移を求めると,図 3-2 となる。
これらの仮定に基づくと,韓国の精錬鉛生産における輸入廃鉛蓄電池の利用率は,2005年 の7.4%から2015年に35.1%へと高められてきたことがわかる。精錬鉛生産においては国内 発生の廃鉛蓄電池や工程くずなども利用されていることを考慮すると,「世界の鉛製錬原料 の約50%は廃バッテリーを中心としたリサイクル原料であり…(中略)…WBMS(World Bureau of Metal Statistics)のデータ(World Refined Production および Secondary Refine Production の比率)から,2015年の鉛地金の生産に占める再生鉛の割合を国別にみると,
…(中略)…韓国が51%」という推計とほぼ合致していると考えられる(JOGMEC 2017)。
以上から,韓国の貿易統計をベースにした分析からは,第 1 章で日本側から懸念されてい る廃鉛蓄電池の高値買取の要因は,韓国の鉛二次精錬業の生産拡大に伴う原料確保の結果で あり,輸入先の多様化や輸入廃鉛蓄電池の利用率の向上からも裏付けられると推察される。
3-2 韓国鉛二次精錬業の経営分析
本節では,日本のみならず世界中から廃鉛蓄電池を輸入し精錬鉛を生産する韓国鉛二次精 錬業の経営状態を分析する。分析手法は,まず韓国鉱物公社の韓国鉛二次精錬業一覧から企 業を抽出した。これらの企業の大半は,非上場企業であるため財務状況は非公開である。そ こで,世界最大級(約 1 億 1 千万社)企業・財務データベースである ORBIS を利用し,
図 3-2 韓国における精錬鉛生産量と輸入廃鉛蓄電池の利用率
(注) 純分換算率:53%。
(出所) 精錬鉛生産は International Lead and Zinc Study Group,廃鉛蓄電池輸入量は表 3-1 に同じ。
7.4%
35.1%
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
0 100 200 300 400 500 600
(t)700 (%)
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 精錬鉛生産量
廃鉛蓄電池輸入量(純分換算)
輸入廃鉛蓄電池利用率
2016年現在で稼働し,かつ複数年の財務諸表が入手できた韓国鉛二次精錬業を対象とした
(表 3-4 )。
各社の売上高の推移をみると,Dansuk Industrial は継続して売上高を伸ばしていること に対して,他の鉛二次精錬業の売上高は横ばいに推移していることがわかる(図 3-3 )。
次に各社の利益率の推移では,2007年に全社平均で12.35%であった利益率が,2015年で は同-5.01%まで低下している(図 3-4 )。最大の売上高を計上する Dansuk Industrial であ っても,2009年の6.17%をピークに,2015年には1.39%まで低下している。
前項の韓国の貿易統計を基にした分析では廃鉛蓄電池の輸入量の拡大と輸入先の多様化を 確 認 し た。 他 方 で, 本 項 の 韓 国 鉛 二 次 精 錬 業 の 経 営 分 析 か ら は, 最 大 手 の Dansuk
表 3-4 韓国の鉛二次精錬業分析対象企業
企業名 生産能力
(万 t/ 年) 2015年売上高
(千ドル) 2015年純利益
(千ドル) 2015年総資産
(千ドル)
Dansuk Industrial Co.,Ltd. 7.2 383,082 3,549 220,054
DUCKSUNG CO.,LTD. 1.0 17,464 241 7,836
EMAX NETWORKS CO.,LTD. 3.0 9,278 168 2,632
HWACHANG CO.,LTD. 4.0 82,963 -1,688 28,556
JOONGIL METALS INC. 3.5 112,300 2,433 59,197
KOREA NON-FERROUS METALS CO.,LTD. 31,334 -2,531 42,693
SANGSHIN METALLIC CO.,LTD. 不明 79,837 1,301 48,567
SANGYOUNG METAL CO. 1,042 -409 7,451
(出所) 生産能力は韓国鉱物公社資料,その他は ORBIS より作成。
図 3-3 韓国の鉛二次精錬業の売上高の推移
(出所) ORBIS より作成。
(千ドル)
0 (年)
50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 450,000
Dansuk Industrial Co.,Ltd.
DUCKSUNG CO.,LTD.
EMAX NETWORKS CO.,LTD.
HWACHANG CO.,LTD.
JOONGIL METALS INC.
KOREA NON-FERROUS METALS CO.,LTD.
SANGSHIN METALLIC CO.,LTD.
SANGYOUNG METAL CO.
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
Industrial を除き売上高は横ばいであり,さらに利益率は総じて低下していることが判明し た。
以上から総合的に判断すると,韓国鉛二次精錬業は過当競争にあるといえる。これは,韓 国鉱物公社の韓国鉛二次精錬業一覧にあった企業の中で 3 社は既に倒産,または操業停止状 態にあることが ORBIS で確認できたことからも裏付けられる。
さらに,2016年 6 月に発生した鉛二次精錬業による不適正処理に関与した 5 社が,2017年 1 月に韓国環境部から公表された(IRUNIVERSE 2017)。そのうちの 4 社は本分析対象企 業であり,各社の利益率の低下が不適正処理の遠因になったと考えられる。
なお,鉛二次精錬業と電池メーカー間取引に補助金が出ている可能性についても,貿易量 や売上高などを利用し重回帰分析や重力方程式などの分析を行ったが,有意な結果は得られ なかった。各社の精製鉛生産量など基礎データや補助金の制度の詳細などを把握することが 今後の課題である。
4 .お わ り に
本稿では,日本から韓国へ廃鉛蓄電池輸出が急拡大している現状を概観し,これまで分析 されてこなかった日本―韓国間の廃鉛蓄電池貿易を経済分析した。第 2 章で論じた通り,韓 国側が高値で廃鉛蓄電池を日本国内で調達できる要因は,韓国の鉛二次精錬業に何らかの比 較優位があると推察される。韓国側で鉛二次精錬業と電池メーカー間取引の補助金が,日本 からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の急拡大の主要因であるとの指摘があるが,確証的な情報は 乏しいのが現状である。
図 3-4 韓国の鉛二次精錬業の利益率の推移
(出所) ORBIS より作成。
(%)
-50.00 (年)
-40.00
-30.00
-20.00
-10.00 0.00 10.00 20.00 30.00
Dansuk Industrial Co.,Ltd.
DUCKSUNG CO.,LTD.
EMAX NETWORKS CO.,LTD.
HWACHANG CO.,LTD.
JOONGIL METALS INC.
KOREA NON-FERROUS METALS CO.,LTD.
SANGSHIN METALLIC CO.,LTD.
SANGYOUNG METAL CO.
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
こうした中で,日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出の急拡大に伴い,日本国内の鉛二次精 錬業において原料調達が困難となり稼働率が低下していることや,懸念されていた韓国での 鉛二次精錬業による不適正処理が発生した。これを受けて,バーゼル法の一部を改正する法 律案が2017年 3 月に閣議決定され,OECD 諸国向け輸出であっても輸出先での環境汚染防 止措置について環境大臣による確認事項を法的に明確化した。
続いて第 3 章で,先行研究がなかった韓国の鉛二次精錬業について分析し,日本側から懸 念されている廃鉛蓄電池の高値買取の要因は,韓国の鉛二次精錬業の生産拡大に伴う原料確 保の結果であり,輸入先の多様化や輸入廃鉛蓄電池の利用率の向上からも裏付けられるとい える。したがって,バーゼル法改正は不適正輸出防止には効果があるが,日本からの韓国向 け廃鉛蓄電池輸出には歯止めをかけられない恐れがあろう。
他方で,韓国鉛二次精錬業の経営状態の分析では,最大手の Dansuk Industrial を除き売 上高は横ばいであり,さらに利益率は総じて低下していることが判明し,韓国鉛二次精錬業 は過当競争にあるといえる。既に韓国鉛二次精錬業において倒産や操業停止状態に陥る企業 が確認されおり,今後,韓国鉛二次精錬業の市場は健全化されると予想される。しかし,韓 国鉛二次精錬業の原料調達の観点から,日本からの韓国向け廃鉛蓄電池輸出は大きく変わら ないと推察される。各社の精製鉛生産量など基礎データや鉛二次精錬業と電池メーカー間取 引の補助金の制度の詳細などを把握することが今後の課題である。
謝辞 本稿は JSPS 科研費16H05687「自動車リサイクルの国際比較(東・東南アジア圏,欧州圏,北 中米圏を対象として)」(研究代表:外川健一)による成果の一部である。また,廃鉛蓄電池国 内買取価格については IR universe ㈱・棚町裕次氏,韓国の鉛二次精錬企業の分析ではビュー ロー・ヴァン・ダイク社・増田歩氏,国内ヒアリングでは日本鉱業協会・清水隆氏,池ノ谷和彦 氏,JOGMEC・畝井杏菜氏,片山弘行氏にご協力頂いた。ここに記して,感謝の意を表す。
参 考 文 献
株式会社矢野経済研究所(2015)『平成26年度製造基盤技術実態等調査(使用済自動車由来の金属資源 循環実態調査事業)報告書』。
環境省(2016a)「使用済鉛蓄電池の適正管理に関するこれまでの経緯と諸外国の状況について」環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課適正処理・不法投棄対策室『廃棄物等の越境移 動等の適正化に関する検討会』)第 4 回資料 1-1 。
―――(2016b)『廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書』。
九州経済産業局(2015)『廃鉛バッテリー等有害廃棄物の効果的な国内処理方策に関する調査報告書』。
経済産業省・環境省(2017)『特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律【バーゼル法】の一部 を改正する法律案について』。
中央環境審議会循環型社会部会特定有害廃棄物等の輸出入等の規制の在り方に関する専門委員会・産業 構造審議会産業技術環境分科会 廃棄物・リサイクル小委員会有害廃棄物等越境移動ワーキング
グループ(2017)『合同会議報告書』。
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)(2017)『鉱物資源マテリアルフロー 2016』JOGMEC,16-27ページ。
日刊産業新聞(2016)「韓国の鉛二次精錬,不法廃棄で一斉摘発 競争力の裏に違法性」2016年 6 月29 日付。
日本経済再生本部(2016)『日本再興戦略2016』。
日本生産性本部(2015)『動静脈産業一体型の構造築に関する非鉄金属資源を対象とした調査報告書』。
日本鉱業協会(2015)「再資源化原料の輸出入規制に関して」(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策 部産業廃棄物課適正処理・不法投棄対策室『廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会』)
第 2 回資料 1-3 。
道田悦代(2010)「再生資源循環の国際化と政策課題」(小島道一編『国際リサイクルをめぐる制度変容
―アジアを中心に―』研究双書 No. 586)アジア経済研究所,19-41 ページ。
International Lead and Zinc Study Group(各年版), WORLD LEAD AND ZINC STATICS.
IRUNIVERSE (2017)「韓国の鉛スラグ違法処理問題で二次精錬 5 社の排出量が明らかに」2017年 1 月 26日付。