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日中韓の自由貿易協定の調査 分析平成 22 年度農林水産省委託事業自由貿易協定等情報調査分析検討事業プロマーコンサルティング 2011 年 3 月 9. 日中韓 日韓 日中 中韓 FTA に係る計 量分析のレビュー 日中韓 FTA あるいは日中 日韓 中韓 FTA については 域内 域外の産業 貿易

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(1)

9.

日中韓、日韓、日中、中韓FTAに係る計

量分析のレビュー

日中韓 FTA、あるいは日中、日韓、中韓 FTA については、域内・域外の産業・貿易に与える 影響について、これまで数多くの計量分析が行われている。本節では、これらの計量分析のうち 主要なもの、比較的新しいものを中心にレビューを行う。それぞれ、使用データや、前提条件、 数式の立て方、データの取り扱い方等について様々なバリエーションが見られる。ここでは主に 結果を紹介することに重点を置く。それぞれの使用データや前提条件等の詳細については、それ ぞれの著書、レポート、論文等で確かめられたい。9.1 節で日中韓 FTA に関する分析、9.2 節で 日中韓 FTA と日中、日韓、韓中等を比較した分析、9.3 節で日中、日韓、韓中に関する分析を取 り上げ、9.4 節にまとめを付す。

9.1.

日中韓FTA

9.1.1.

GDP及び経済厚生への影響

国務院発展研究中心 (DRC)、総合研究開発機構 (NIRA)、対外経済政策研究院 (KIEP)によっ て 2003~2008 年に渡って実施された三国共同研究において、計算可能な一般均衡分析(CGE) を用いて日中韓 FTA の経済効果を測定した。2003 年、2005 年、2007 年の各年に静学的な手法 によるシミュレーションが実施され、2008 年にはさらに資本移動の要素を組み入れた動学的な 分析を行い、さらに FTA 締結の組み合わせや順序によって 16 のシナリオをを比較した。 共同報告書の各年版によれば、これらのシミュレーション結果は次頁表のようになっている。 いずれにせよ、日中韓 FTA によって、日本、中国、韓国の GDP を押し上げる効果が見られると いうもので、日本と中国には 0.3~0.4%のプラス効果、韓国経済へは 2~5%のプラス効果がみら れる。

(2)

表 91 日中韓 FTA のマクロ経済効果(三国共同研究) 報告年 要素 日本 中国 韓国 2008 GDP 成長率(%) 0.30 0.40 2.80 2007 GDP 成長率(%) 0.41 0.30 5.26 2005 GDP 成長率(%) 0.37 0.30 3.55 2003 GDP 成長率(%) 0.1~0.5 1.1~2.9 2.5~3.1 2005 経済厚生(百万ドル) 16,760 3,349 12,446 2003 経済厚生(10 億ドル) 6.7~7.4 4.7~6.4 11.4~26.3 出所)(三国共同研究 2003)(三国共同研究 2005)(三国共同研究 2007)(三国共同研究 2008)より抜粋 (阿部 2008)では、日中韓 FTA に向けて、総合研究開発機構(NIRA)、中国国務院発展研究中 心(DRC)、韓国国際経済政策研究所(KIEP)が中心となって実施してきた三国間の共同研究と 並行して進められてきた NIRA における日中韓 FTA 研究に関連して、日中韓 FTA が域内・域外 諸国に与えるマクロ経済効果が算出されている。分析では、GTAP バージョン 6(基準年 2001 年)を用い、分析には資本蓄積効果を組み入れた。FTA 下の関税率については完全撤廃を想定 している。ただし、中国は 2002 年の WTO 加盟に伴って関税率を段階的に引き下げたため、中 国が WTO 加盟の際にコミットした関税引き下げを別途シミュレーションし、その効果を差し引 いて、日中韓 FTA がもたらす効果を計算している。 これによれば、日中韓 FTA は日本の実質 GDP を 0.41%、実質輸出を 4.77%、実質輸入を 6.71% 押し上げる効果があり、経済厚生にして 20,374 百万ドル増加する。 表 92 日中韓 FTA のマクロ経済効果(阿部、NIRA、GTAPver.6) 日本 中国 韓国 米国 EU タイ 豪州 実質GDP (%変化率) 0.41 0.83 3.99 -0.03 -0.02 -0.83 -0.11 経済厚生 (百万ドル) 20,374 6,294 15,147 -3,860 -1,935 -1,011 -603 実質輸出 (%変化率) 4.77 10.5 9.77 -0.42 -0.08 -1.07 -0.14 実質輸入 (%変化率) 6.71 14.21 12.69 -0.47 -0.12 -1.38 -0.57 出所)(阿部 2008, 28)より抜粋 (C. J. Lee et al. 2005)は、韓国の国務総理室傘下の経済人文社会研究会(NRCS)の主催の下で KIEPが中心となって関連研究機関によって 2005 年に実施された、日中韓FTAの韓国経済に対す るインプリケーションと題された一連の研究 140 140 これには「韓中日 FTA の経済的波及効果と対応戦略」「製造業部門の対応戦略-センシティブ品目の分 析を中心として-」「農業への影響と対応策」「経済のサービス化の現状とサービス交渉のインプリケーショ ン」の四つのプロジェクト研究が含まれる をとりまとめ、英文資料として出版したもので ある。分析ではGTAPバージョン 6(基準年 2001 年)を用い、静的モデルと資本蓄積効果を組み 入れたモデルの二つを準備、さらにシナリオI :モノの貿易については完全撤廃、シナリオII:サー ビス貿易については除外と貿易障壁 50%カットの二つのシナリオを想定、計 4 通りの分析を行

(3)

った。ここではシナリオI に基づく分析結果を挙げる。これによれば、日中韓FTAは日本のGDP を 1.05%、実質輸出を 4.85%、実質輸入を 5.45%押し上げる効果がある。

表 93 日中韓 FTA のマクロ経済効果(Lee 他、KIEP、GTAPver6)

単位:%変化率 静的モデル 資本蓄積モデル 日本 中国 韓国 日本 中国 韓国 GDP 1.05 0.89 3.27 1.13 1.45 4.74 厚生 0.18 0.16 1.74 0.24 0.61 3.13 輸出 4.85 11.36 7.94 4.95 12.02 9.51 輸入 5.45 15.36 8.74 5.56 16.08 10.38 出所) (C. J. Lee et al. 2005, 37)より抜粋 前掲の NRCS の一連のプロジェクトの一つである(李, 朴, and 金 2005)は、日中韓 FTA が韓国 農業に与える影響についてより詳細に調査するため、前述の(C. J. Lee et al. 2005)に農産物に関す る条件を加えたシミュレーションを行っている。ここでは、農産物については、コメは非常にセ ンシティビティが高いためにまず除外するとの前提で、①その他の農産物関税について完全撤廃、 ②中国は完全撤廃、日本と韓国はセンシティブ品目について 70%の削減という二つのシナリオ の下で、国内生産への影響を算出した。これによれば、資本蓄積を組み込んだモデルでは、日中 韓 FTA は日本の GDP をシナリオ①で 1.40%、シナリオ②で 1.37%押し上げる効果があり、表 91 で示したモデルに比べて、コメを除外した場合は日本の GDP に与える正の効果は大きくなるこ とが分かる。しかし、韓国と中国では逆に GDP の増加率は減少し、中国は静態モデルでは GDP に与える影響はマイナスとなる。 表 94 コメ除外時の日中韓 FTA のマクロ経済効果(李他、KIEP/KREI、GTAPver6) 静態モデル 資本蓄積モデル 日本 中国 韓国 日本 中国 韓国 シ ナ リ オ ① GDP の増加(%) 1.43 -0.04 2.29 1.40 0.69 4.54 民間消費支出の増加(%) 0.20 -0.06 1.16 0.32 0.57 8.76 輸出額の増加(%) 3.90 8.37 5.60 4.98 9.42 10.31 輸入額の増加(%) 5.92 13.09 8.58 5.70 13.96 9.93 貿易収支(百万ドル) -5,774 -4,300 -32 277 -3,005 331 シ ナ リ オ ② GDP の増加(%) 1.41 -0.30 2.63 1.37 0.55 4.46 民間消費支出の増加(%) 0.19 -0.12 1.21 0.30 0.61 3.08 輸出額の増加(%) 3.89 7.73 5.52 4.94 8.92 8.70 輸入額の増加(%) 5.87 12.82 8.14 5.64 13.78 10.14 貿易収支(百万ドル) -5638 -6,022 2,654 354 -4,094 207 出所)(李, 朴, and 金 2005, 87)より抜粋

(4)

(Cheol 2010)は、最新の GTAP バージョン 7(基準年 2004 年)を用いて、2001 年から 2004 年 の貿易の変化を反映して、特に韓国の GDP 増加率が小さくなる可能性を指摘している。 表 95 日中韓 FTA のマクロ経済効果(Cheol、GTAPver7) Johansen モデル Gregg モデル GTAP 日本 中国 韓国 日本 中国 韓国 バージョン6(基準年 2001 年) 0.07 0.29 0.96 0.30 0.05 2.03 バージョン7(基準年 2004 年) 0.06 0.08 0.46 0.33 -0.09 0.65 出所)(Cheol 2010, 53)より抜粋

9.1.2.

農林水産業分野に対する影響

前掲(三国共同研究 2008)では、部門横断的効果については、農業について中国で生産増加の 影響、日本と韓国で生産減少の影響があると述べるにとどまっている。 (三国共同研究 2004)では、農業部門への影響について、次のようにまとめている。「農業関係 者は、中国が最も大きな利益を得るだろうと考え、また多くが、韓国の農業貿易での赤字が拡大 することを予測している。日本の農業部門の関係者も日中韓 FTA の負の影響を予想している。 所得の減少を生む市場での損失の他に、彼らは農業関連技術や品種についての IPR(知的所有権) 保護や、食品の安全性、検疫の監視について関心を寄せている。一方で、分業の進展や、SPS(衛 生植物検疫措置)の標準化を含むような貿易円滑化措置の促進によって、域内貿易の増加に期待 している。中国の農業関係者および専門家は、日中韓 FTA によって中国農業への全体的な正の 影響が生じると考えている。しかし、中国の輸出能力や質、および日本や韓国の差別的な措置や 検疫も含む非関税障壁などの制約要素をも指摘している。」 前掲(阿部 2008)では、産業別の日本の国内生産では、穀物でマイナス 49.27%、野菜・果物で マイナス 0.39%となるが、その他の農産物、食肉・酪製品、加工食品の分野では若干増加する。 中国の国内生産では、穀物が 16.79%の増加となるほか、他の農林水産物分野でも若干増加する。 韓国の国内生産では、穀物がマイナス 6.11%、野菜・果物がマイナス 4.30%となるが、逆に食肉・ 酪製品は 17.04%増、加工食品は 29.91%増になると推計されている。 表 96 日中韓 FTA の産業別生産への効果(阿部、NIRA、GTAPver.6) 日本 中国 韓国 穀類 -49.27% 16.79% -6.11% 野菜・果物 -0.39% 0.57% -4.30% その他農産物 0.75% 0.85% 3.53% 食肉・酪製品 1.83% 1.57% 17.04% 加工食品 1.66% 0.29% 29.91% 出所)(阿部 2008, 29) より農林水産業関連を抽出した

(5)

前掲(李, 朴, and 金 2005)によれば、コメ除外かつその他の農産物関税について完全撤廃のシ ナリオ①の下では、日本の農林水産物等の生産は、飲料・タバコを除く各部門で減少し、食肉で -3.69%減、穀物で-3.31%減、果実・野菜では-1.36%減、家畜では-1.87%減と示されている。コメ 除外かつ中国は完全撤廃、日本と韓国はセンシティブ品目について 70%の削減というシナリオ ②の下では、食肉で-3.76%減、家畜で-1.87%減等となっている。 表 97 日中韓 FTA の部門別生産への効果(資本蓄積モデル)(李他、KIEP/KREI、GTAPver6) 単位:%変化率 シナリオ① シナリオ② 日本 中国 韓国 日本 中国 韓国 コメ -0.53 0.15 2.68 -0.51 0.35 1.64 穀物 -3.31 7.98 47.26 -1.11 -0.39 22.24 果実・野菜 -1.36 0.94 3.6 -0.96 0.84 0.91 その他作物 -1.47 6.76 15.84 -1.46 -0.72 19.69 家畜 -1.87 0.69 15.21 -1.87 1.19 10.07 食肉 -3.69 5.65 13.98 -3.71 7.2 9.89 その他加工食品 -0.75 1.58 34.23 -0.59 2.61 19.15 飲料・タバコ 0.21 0.34 4.84 0.19 0.53 4.06 林産物・水産物 -0.1 0.53 9.47 -0.08 0.82 4.74 鉱業 -2.9 -0.38 5.08 -2.75 0.23 5.18 工業 0.53 0.41 2.87 0.5 0.77 3.24 サービス業 0.19 1.03 2.66 0.17 1.27 2.36 出所)(C. J. Lee et al. 2005, 84)より抜粋 漁業分野 (三国共同研究 2007)では、漁業部門への影響について、次のようにまとめている。「日中韓の 漁業市場における、関税率のレベル及び貿易依存度を考慮すると、日中韓 FTA の負の効果は、 韓国でより大きく、日本がそれに続く形となり、両国の貿易赤字を拡大させそうである。一方、 中国は、日中韓 FTA によって、プラスの効果が期待できる。中国にとって最大の漁業輸出先で ある、日本及び韓国からの需要が増えると予想されるからである。」 また、同報告書は中国、日本、韓国の漁業におけるセンシティブ品目の割合について、2002 年 から 2005 年について、中国について日本と取引した品目の 26%、韓国と取引した品目の 37%、 日本について中国と取引した品目の 84%、韓国と取引した品目の 54%、韓国について中国と取 引した品目の 71%、日本と取引した品目の 44%であるとしている。

(C. J. Lee et al. 2005)では、Chu Moon-bae らによる 2004 年の研究結果を引用し、韓国から中国 への輸出は 37.5%増、中国からの輸入は 16.0%増、韓国から日本への輸出は 7.1%増、日本からの 輸入は 13.0%増との推計を示している。

(6)

9.1.3.

非関税障壁に関する分析

日中韓 FTA に係る三国共同研究は、2008 年に第 1 フェーズを完了したが、2009 年から、三国 研究機関によって第 2 フェーズとしてより掘り下げた研究が開始される運びとなった。第 2 フェ ーズで重要視される点の一つとして、非関税障壁に関する実証的研究が挙げられる。(三国共同 研究 2009)によれば、世界銀行が作成した非関税障壁の従価税換算値のデータセットを用いた実 証的研究文献では、関税と非関税障壁は日本でそれぞれ 6.9%、15.5%、中国で 13.2%、9.4%であ る。今後、さらに非関税障壁の削減を含むより深い研究が継続される見込みである。

9.2.

日中韓FTAと日中、日韓、中韓FTAの比較

9.2.1.

日中韓、日中、日韓、中韓

(Cheong 2005)は、GTAP バージョン 5(基準年 1997 年)を用いて、FTA 締結における GDP や 輸出入への影響について、日中、日韓、中韓及び日中韓の比較を行っている。これによれば、三 か国いずれにとっても、日中韓 FTA を導入するケースが最も GDP 増加率が高い。日本及び中国 にとっては、それぞれ韓国との FTA よりも、日中 FTA の方が、GDP 増加率が高い。韓国にとっ ては、日韓よりも中韓のほうが GDP に与える影響は大きくなる。 表 98 日中韓の FTA 締結における GDP 変化率の比較 単位:% 資本蓄積無し 資本蓄積有り 日本 中国 韓国 ASEAN その他 日本 中国 韓国 ASEAN その他 日中韓 0.06 0.34 0.94 -0.06 -0.01 0.13 1.29 2.45 -0.59 -0.12 日中 0.05 0.27 -0.05 -0.03 -0.00 0.12 1.11 -0.26 -0.36 -0.06 日韓 0.01 -0.01 0.22 -0.01 -0.00 0.04 -0.03 0.92 -0.08 -0.02 中韓 -0.00 0.12 0.76 -0.02 -0.00 -0.04 0.45 1.76 -0.19 -0.06 出所)(Cheong 2005, 146)より抜粋

(Y. M. Yoon, Gong, and Yeo 2009)は、GTAP バージョン 6(基準年 2001 年)を用い、FTA 締結に おける GDP や社会厚生、輸出入への影響について、日中、日韓、中韓及び日中韓の比較を行っ ている。基準年度は異なるが、(Cheong 2005)とほぼ同じ傾向を示している。

(7)

表 99 日中韓の FTA 締結における GDP 変化率及び厚生変化率の比較 日本 中国 韓国 米国 その他先進国 その他途上国 GDP 増加率(%) 日中韓 0.99 0.60 2.53 -0.26 -0.26 -0.34 日中 0.87 0.34 -0.59 -0.16 -0.17 -0.20 日韓 0.22 -0.07 0.32 -0.04 -0.04 -0.05 中韓 -0.10 0.34 2.80 -0.06 -0.05 -0.09 社会厚生の変化(百万ドル) 日中韓 5,939 3,595 6,133 -1,743 -2,604 -3,198 日中 5,160 2,690 -813 -928 -1,586 -1,531 日韓 1,163 -172 451 -318 -295 -440 中韓 -384 1,077 6,495 -497 -724 -1,227

出所)(Y. M. Yoon, Gong, and Yeo 2009, 54, 55)より抜粋

(Yin 2007)は、アジア経済研究所の作成した国際産業連関表 1995 年と GTAP バージョン 5 の各 国関税率を組み合わせて、国際連結社会会計表(SAM)を構築、日中韓の FTA 締結における等 価変分変化率を算出した。社会厚生の変化については、上記表とほぼ同じ傾向を示している。産 業別には、農業貿易について、中国が日中韓、日中において大きく輸出超過に傾く。 表 100 日中韓の FTA 締結における等価変分変化率の比較 単位:百万ドル 日本 中国 韓国 ASEAN その他 世界計 日中韓 4,885 1,879 4,224 -1,678 -8,038 1,272 日中 4,311 428 -744 -577 -4,028 -610 日韓 1,078 -278 986 -187 -1,591 8 中韓 -183 666 4,667 -278 -3,555 1,318 出所)(Yin 2007, 54)より抜粋 101 日中韓の FTA 締結における貿易収支の変化 単位:百万ドル 全体 農業貿易 日本 中国 韓国 日本 中国 韓国 日中韓 -2,930 -2,266 -3,213 -8,797 17,344 -2,333 日中 -2,574 -2,857 145 -6,755 8,877 -53 日韓 -772 12 -896 -1,313 -55 2,553 中韓 188 -147 -2,718 -188 10,333 -5,889 出所)(Yin 2007, 55, 56)より抜粋

(8)

(岡本 et al. 2007)は、東アジアにおける FTA について、アジア経済研究所が作成した国際産業 連関表 2000 年を用い、動学的空間的応用一般均衡モデルを利用して、東アジアで FTA が発効し た場合の経年変化についてシミュレーションを行っている。これによれば、韓中締結による日本 の GDP への影響はほとんど表れない。日本及び中国にとっては日中韓 FTA を発効させることが 最も GDP への効果が高い。しかし、韓国では韓中以外の FTA では、GDP への影響はマイナス となっている。 表 102 日中韓の FTA 締結における GDP 変化率の比較 単位:% 日本 中国 韓国 2005 2010 2015 2005 2010 2015 2005 2010 2015 日中韓 0.01 0.03 0.04 0.07 0.11 0.12 -0.11 -0.10 -0.08 日中 0.00 0.01 0.01 0.04 0.06 0.07 0.00 -0.02 -0.03 日韓 0.01 0.02 0.03 0.01 0.00 0.00 -0.10 -0.11 -0.12 韓中 0.00 0.00 0.00 0.02 0.05 0.06 0.00 0.04 0.07 出所) (岡本, 梅﨑, 小池, 川本, and 玉村 2007, 223)より抜粋 (竜. 福田 2010)は、韓国の農業保護政策と自由貿易政策の進展が両立可能かどうかについて論 じることを目的に、GTAP バージョン 6(基準年 2001 年)を用い、韓中日で可能な FTA の全て の組み合わせ(日中、日韓、韓中、日中韓)について、三か国それぞれにもたらされる経済的利 得(FTA 締結無しの均衡価格体系下の所得と、FTA 締結後の所得の差である等価変分)を比較 した。 これによれば、日本にとっては、コメが除外されて中韓 FTA が締結された場合に、経済的な 利得が 170 百万ドル減少するが、その他の場合ではいずれも経済利得が向上する結果となってい る。また、完全撤廃の場合は日中韓 FTA を締結する場合が日本にとって最も利得が大きく、コ メを除外する場合は、中韓 FTA が締結されずに、日韓 FTA と日中 FTA の両方が締結された場合 が最も利得が大きい。韓国にとっては日中 FTA が締結されずに、日韓 FTA と中韓 FTA の両方が 締結された場合が最も利得が大きい。

(9)

表 103 日中韓の FTA 締結における利得の比較

単位:百万ドル

完全撤廃 コメ除外

日本 中国 韓国 日本 中国 韓国

日中FTA、日韓 FTA、中韓 FTA 21,630 48 7,564 6,527 -1,393 3,507 日中FTA のみ 18,596 -277 -861 5,875 -1,246 -818 日韓FTA のみ 1,674 -237 2,420 897 -225 400 中韓FTA のみ 1,276 -701 8,621 -170 -1,044 4,560 日中FTA と中韓 FTA 17,870 469 7,043 5,262 -1,136 3,191 日韓FTA と中韓 FTA 13,099 36 9,142 675 -1,301 4,949 日中FTA と日韓 FTA 20,021 -485 -211 7,190 -1,456 -513 出所)(竜. 福田 2010, 198)より抜粋

9.2.2.

日中、日韓、中韓

2010 年 4 月に李大統領が中韓 FTA の検討を指示するなど、中韓 FTA への動きが加速している が、(奥田 and 渡辺 2010) はこれを受けて、中韓 FTA の締結が締結国や第三国に与える影響と、 仮に締結された場合に対抗策となる日中 FTA が日中両国及び第三国に与える影響について、最 新のデータを用い、静学的分析により、短期的な輸出増加効果とその際の代替効果について算出 した。 分析では、輸入額は各国の 2008 年貿易統計、関税率は 2008 又は 2009 年の各国の実行関税率、 国内生産額は各国の産業連関表を用いて最新の状況を反映しており、代替の弾力性のみ GTAP バージョン 6(基準年 2001 年)を用いている。最大の特徴としては、FTA 下の関税率について、 完全撤廃を想定せず、現実的な仮定として、日本は日チリ EPA の日本側税率、韓国は韓チリ FTA の韓国側関税率、中国は韓チリ FTA の韓国側譲許に準拠という前提を採用していることである。 また、(奥田 2010)では、韓国に係る未発効FTAの一つとして日韓FTAをとりあげ、日韓FTAが 締結国や第三国に与える影響について、上記と同じく輸出増加及び代替効果を算出している。分 析では上記とほぼ同じデータ・条件を使用しているが、代替の弾力性のみGTAPバージョン 6 よ り、著者の判断によりこれを 3.75 で141 これによれば、中韓 FTA が先行した場合、日本には貿易転換効果により日本の両国への輸出 は 69.7 億ドル減少すると推計されている。中韓にとってはそれぞれ相手国への輸出増と相手国 からの輸入増による国産減を差し引いた結果はプラスとなっている。 除した数値を用いており、上記分析やここで取り上げた 他の分析に比べると低い弾力性となっている。このため日中、中韓と日韓を同じ条件下で比較す ることはできないが、ここでは参考のために結果を併記して掲載する。 141 低い弾力性を採用した経緯については(奥田 2010, 232)を参照のこと。

(10)

日中 FTA が先行した場合、日本にとっては対中輸出増が対中輸入増による国産減を大きく上 回り、差し引き 404 億ドルのプラスになるが、中国にとっては対日輸出増を対日輸入増による国 産減が大きく上回り、差し引き 102 億ドルのマイナスとなってしまう。 日韓 FTA が先行した場合も、日本にとっては対韓輸出増が対韓輸入増による国産減を上回り、 差し引き 38 億ドルのプラスになるが、韓国にとっては対日輸入増による国産減が、対日輸出増 を上回り、収支は 11.8 億ドルのマイナスとなる。

104 中韓 FTA・日中 FTA・日韓 FTA に係る各国の貿易の収支状況

単位:百万ドル 日本 中国 韓国 中韓FTA 貿易転換効果 によるロス -6,973 対韓輸出増 12,638 対中輸出増 27,760 対韓輸入増に よる国産減 -10,467 対中輸入増に よる国産減 -6,777 計 -6,973 2,171 20,983 日中FTA 対中輸出増 46,675 対日輸出増 10,058 貿易転換効果 によるロス -5,112 対中輸入増に よる国産減 -6,252 対日輸入増に よる国産減 -20,245 計 40,423 -10,187 -5,112 日韓FTA 対韓輸出増 3,937 貿易転換効果 によるロス -697 対日輸出増 216 対韓輸入増に よる国産減 -108 対日輸入増に よる国産減 -1,392 計 3,829 -697 -1,176 出所) 韓中・日中 (奥田 and 渡辺 2010)より抜粋 日韓 (奥田 2010, 174, 177)より著者整理 産業別にみると、農林水産物では中韓 FTA が先行した場合、韓国の対中国輸出は 152 百万ド ル増、中国の対韓国輸出は 691 百万ドル増加する。これらの輸出増加のうち、日本の農林水産物 製品と代替される割合は限られているが、韓国市場では比較的多く影響をうける。対韓国輸出で は 23 百万ドル、日本の対中国輸出では 9 百万ドル、計 32 百万ドルが減少すると推計されている。 これは 2008 年の韓中への農林水産物輸出のうち 3.4%にあたる。 日中 FTA が成立した場合、日本の対中国農林水産物輸出は 199 百万ドル増となると推計して いる。一方で、中国の対日本輸出は 512 百万ドル増加するが、このうち、287 百万ドルは日本の 国産品との代替となる。このため、差し引き日本の農林水産業の収支はマイナス 88 百万ドルと なる。 日韓 FTA が成立した場合、日本の対韓国農林水産物輸出は 73 百万ドル増となる。日本の韓国 からの農林水産物輸出は 37 百万ドル増となるが、このうち 12 百万ドルが日本の国産品との代替 である。このため、差し引き日本の農林水産業の収支はプラス 61 百万ドルとなる。また、韓国

(11)

の農林水産業の収支もプラス 21 百万ドルとなるが、韓国にとって、これら農林水産分野は、皮 革・繊維と並んで日韓 FTA で数少ない収支がプラスになる分野である(経済全体ではマイナス 1,176 百万ドル)。 表 105 中韓 FTA 発効に伴う産業別輸出増加効果 単位:百万ドル 中韓FTA 韓国の対中国輸出 中国の対韓国輸出 輸出 増加分 中国製品 との代替 第三国製品との代替 輸出 増加分 韓国製品 との代替 第三国製品との代替 計 うち日本 計 うち日本 農畜産物 66 24 42 3 281 190 90 10 食料・嗜好品 84 27 57 6 299 168 131 12 木材・紙 2 1 1 0 111 58 53 1 農林水産物計 152 52 100 9 691 416 274 23 その他 27,608 10,415 17,193 5,327 11,948 6,361 5,587 1,614 総計 27,760 10,467 17,293 5,336 12,638 6,777 5,861 1,637 日中FTA 日本の対中国輸出 中国の対日本輸出 輸出 増加分 中国製品 との代替 第三国製品との代替 輸出 増加分 日本製品 との代替 第三国製品との代替 計 うち韓国 計 うち韓国 農畜産物 78 31 47 3 119 74 45 5 食料・嗜好品 111 40 72 5 245 134 111 5 木材・紙 9 3 -6 0 148 80 68 0 農林水産物計 199 74 125 8 512 287 224 10 その他 46,476 20,171 26,304 4,797 9,546 5,964 3,582 296 総計 46,675 20,245 26,429 4,805 10,058 6,252 3,806 307 日韓FTA 日本の対韓国輸出 韓国の対日本輸出 輸出 増加分 韓国製品 との代替 第三国製品との代替 輸出 増加分 日本製品 との代替 第三国製品との代替 計 うち中国 計 うち中国 農・水・畜産 72 15 57 26 37 12 25 7 木製品・紙・出版 1 0 1 0 0 0 0 0 農林水産物計 73 16 58 27 37 12 25 8 その他 3,864 1,376 2,488 586 287 96 191 77 総計 3,937 1,392 2,546 612 324 108 216 85 出所) 中韓・日中 (奥田 and 渡辺 2010) 、韓日(奥田 2010, 175, 179, 180)より著者整理 注)農林水産物計については、区分の農畜産物、食料・嗜好品、木材・紙を著者合計

(12)

9.3.

日中、日韓、中韓FTA

9.3.1.

中韓

FTA

(H. S. Lee et al. 2005)は、KIEP による中韓 FTA が韓国経済に与える影響分析をとりまとめたも ので、前述の KIEP による日中韓 FTA 分析と同じく、GTAP バージョン 6(基準年 2001 年)を 用い、静的モデルと資本蓄積効果を組み入れたモデルの二つを準備、さらにシナリオ I :完全撤 廃、シナリオ II:サービス貿易については除外と貿易障壁 50%カットの二つのシナリオを想定、 計 4 通りの分析を行った。ここではシナリオ I、資本蓄積有りのモデルで、中国の GDP を 0.58%、 韓国の GDP を 3.13%引き上げると推計されている。(In and Jung 2008)においても、ほぼ類似した 傾向である。

表 106 中韓 FTA のマクロ経済効果(完全撤廃のケース)

単位:%

(H. S. Lee, Im, I. K. Lee, Song, and Soon Chan Park 2005)

資本蓄積無し 資本蓄積有り 中国 韓国 中国 韓国 GDP 0.40 2.44 0.58 3.13 厚生 0.07 1.13 0.59 2.99 輸出 3.54 4.76 3.73 5.43 輸入 4.73 5.15 4.94 5.86

(In and Jung 2008)

中国 韓国

GDP 0.43 5.02

出所) (H. S. Lee, Im, I. K. Lee, Song, and Soon Chan Park 2005)(H. S. Lee, Im, I. K. Lee, Song, and Soon Chan Park 2005, 71, 72)(In and Jung 2008, 362)より抜粋

また、(H. S. Lee, Im, I. K. Lee, Song, and Soon Chan Park 2005)は、韓国の農水産業で-14.26%、 加工食品で-2.58%、生産を引き下げる効果があると推計している。

(13)

表 107 中韓 FTA が韓国の生産及び韓中貿易に与える効果 韓国の生産 韓国から中国への輸出 中国から韓国への輸出 %変化 百万ドル 静的 資本蓄積 静的 資本蓄積 静的 資本蓄積 農水産業 -14.70 -14.26 59 59 10,681 10,789 加工食品 -3.05 -2.58 119 120 524 528 繊維 7.92 8.85 1,991 2,035 636 646 衣類 -1.98 -1.47 310 314 459 463 化学 5.53 6.43 3,696 3,788 343 357 鉄鋼 0.31 1.46 776 814 200 209 自動車 4.46 5.16 1,705 1,725 115 118 その他運送機械 -6.15 -5.28 43 45 22 23 電気製品 -0.28 0.72 2,643 2,752 390 426 機械 -0.66 0.58 1,681 1,756 532 548 その他工業 3.22 4.05 993 1,016 307 315 貿易/ビジネス 2.68 3.39 -7 -6 6 7 運輸/通信 1.58 2.05 -4 -4 3 3 財務 4.22 4.95 -1 -1 1 1 その他サービス 3.61 4.34 -4 -3 3 4 合計 13,998 14,409 14,220 14,435

出所)(H. S. Lee, Im, I. K. Lee, Song, and Soon Chan Park 2005, 76)より抜粋

9.3.2.

日中

FTA

(内閣官房 2010)によれば、内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき、内閣府 経済社会総合研究所客員主任研究官 川崎研一氏の GTAP モデルを使ったシミュレーションでは、 日本の GDP に対する影響は、日中 EPA によって完全に自由化した場合で 0.66%、日本がセンシ ティブ分野を自由化せず、中国が自動車分野を自由化しなかった場合で 0.36%である。

9.3.3.

日韓

FTA

(深川 2006)は、日韓 FTA 交渉が中断に至るまでの経緯やその背景、再出発に向けた課題の整 理を行っているが、その中で日韓 FTA の影響に関する過去の研究結果をとりまとめている。そ れによれば、韓国については日本との貿易収支が赤字になるが、経済厚生にとってはプラスの影 響がある。日本にとっては、おおむね韓国との貿易収支は黒字である。ただ、いずれもやや古い 研究であり、基準年は 1990 年代のものとなっている。

(14)

表 108 日韓 FTA によるマクロ経済効果

日本 韓国

KIEP(1) IDE(1) IDE(2) KIEP(1) KIEP(2) IDE(1) IDE(2) KIET 経済厚生 (%) 0.14 0.03 9.29 -0.19 11.43 0.34 7.09 0.48 GDP (%) 0.04 0.00 10.44 -0.07 2.88 0.06 8.67 -0.07 相手国との貿易収支 (百万ドル) 60.1 38.6 24.6 -60.1 -4.4 -38.9 -24.6 -33.6 全体の貿易収支 (百万ドル) -15.5 54.8 182.0 -15.4 30.1 -2.7 408.0 -6.9 出所)(深川 2006, 106)より抜粋 (川崎 2005)では、日韓 FTA について、関税の完全撤廃と日本側関税のみセンシティブ品目を 除外したケースのそれぞれについて、静学的な分析により、日韓 FTA が日韓及び第三国の貿易 額、各国の生産額、市場価格、GDP にもたらす影響を算出している。分析では、GTAP バージ ョン 5(基準年 1997 年、財 57 部門)を用いている。代替の弾力性のみ、GTAP で示されている 係数は小さすぎる可能性があるとの観点から、GTAP のデータをそのまま用いた場合と、弾力性 を 2 倍とした場合との二通りを計算している。センシティブ品目には、生乳・乳製品、肉調製品、 米調製品を含め、日本側のみこれらセンシティブを除外している。 これによれば、日韓 FTA は日本の韓国への農林水産物輸出額を 4.3~10.1% (20~47 百万ドル)、 日本の韓国からの農林水産物輸入額を 0.9~2.1% (18~42 百万ドル)押し上げる効果を持つと推計 されている。前述の(奥田 2010)による日韓 FTA の分析と比べると、日本の農林水産物輸出につ いての増加金額が小さくなっているが、ここでは輸出額が現在より小さく、構造が異なる 1997 年当時を基準と用いているため、その違いが影響しているものと思われる。(次頁表参照。) また、GDP に対する影響では、弾力性が標準のケースでは日本の GDP に対する影響はほとん どみられない。また農林水産物に対する GDP の影響は部門によって概ねわずかにマイナス、あ るいはプラスとなっている。韓国については GDP を 0.22~0.81%上昇させる効果を持つ。農林水 産物分野でも比較的効果は高い。

(15)

109 日韓 FTA 発効に伴う産業別輸出増加効果 日本の対韓国輸出 日本の対韓国輸入 基準年 輸出額 完全撤廃 完全撤廃 センシティブ 品目除外 センシティブ 品目除外 基準年 輸出額 完全撤廃 完全撤廃 センシティブ 品目除外 センシティブ 品目除外 弾力性標準 弾力性2 倍 弾力性標準 弾力性2 倍 弾力性標準 弾力性2 倍 弾力性標準 弾力性2 倍 輸出増加分(単位:百万ドル) 輸出増加分(単位:百万ドル) 農産物 16 21 293 20 260 103 23 48 28 103 畜産物 7 1 2 1 2 7 1 1 1 2 林業 219 9 24 9 24 190 1 2 1 2 漁業 24 2 9 2 9 359 11 14 11 14 加工食品 192 101 516 99 498 1,063 332 1,454 342 1,564 センシティブ品目 8 2 15 2 10 259 141 535 -1 -5 農林水産物計 467 20 47 20 47 1,980 18 38 20 42 二次産業(労働集約型) 13,141 854 2,037 841 2,011 8,558 342 770 351 813 二次産業(資本集約型) 12,647 0 0 -13 -13 4,310 -9 -30 -4 -22 三次産業 1,354 0 0 0 0 1,029 0 0 0 0 合計 27,609 1,011 2,942 983 2,848 15,875 860 2,832 748 2,512 輸出増加率(単位:%) 輸出増加率(単位:%) 農産物 1,317 18,430 1,271 16,344 222 470 271 1,002 1,317 畜産物 81 224 80 211 79 171 90 253 81 林業 43 109 43 108 6 8 6 10 43 漁業 101 367 101 377 30 40 30 38 101 加工食品 526 2,692 518 2,601 312 1,368 322 1,472 526 センシティブ品目 304 1,894 272 1,308 547 2,070 -5 -21 304 二次産業(労働集約型) 43 100 43 100 9 19 10 21 43 二次産業(資本集約型) 65 155 64 153 40 90 41 95 65 三次産業 0 0 -1 -1 -2 -7 -1 -5 0 出所)基準輸出額及び輸出増加率については(川崎 2005, 214)より抜粋。他の分析との比較のため、輸出増加分についてPromar 計算

(16)

表 110 日韓 FTA の GDP 及び農林水産分野の生産額に対する影響 単位:%変化 完全撤廃 弾力性 標準 完全撤廃 弾力性2 倍 センシティブ品目除外 弾力性 標準 センシティブ品目除外 弾力性2 倍 日本 GDP 0.00 -0.04 0.00 -0.01 農産物 -0.1 2.3 0.3 3.0 畜産物 -0.1 -0.6 -0.0 -0.7 林業 0.2 0.1 0.2 0.1 漁業 -0.1 -0.5 -0.2 -0.7 加工食品 -0.1 -1.1 -0.1 -1.3 センシティブ品目 -0.9 -4.1 0.2 0.2 韓国 GDP 0.25 0.81 0.22 0.70 農産物 8.6 18.5 3.1 6.0 畜産物 8.2 29.5 6.4 26.2 林業 0.2 0.1 0.1 0.0 漁業 4.8 10.5 4.8 11.0 加工食品 9.0 35.2 8.7 37.4 センシティブ品目 13.6 44.7 1.5 2.9 中国 GDP -0.01 -0.03 -0.01 -0.03 農産物 -0.2 -0.4 -0.2 -0.4 畜産物 -0.2 -0.3 -0.2 -0.3 林業 0.0 0.0 -0.1 0.0 漁業 -0.2 -0.3 -0.2 -0.3 加工食品 -0.3 -1.1 -0.3 -1.1 センシティブ品目 -0.3 -0.7 0.3 -0.2 出所)(川崎 2005, 214, 222, 223)より抜粋

9.4.

シミュレーション分析のレビューのまとめ

シミュレーション分析については、それぞれ分析の前提が異なるため、単純に得られた数値を 比較することはできないが、これまでのレビューで得られた様々な結果を総合的に見て、全体的 なまとめを以下に付す。  日中韓の研究所による三国共同報告書によれば、日中韓FTAによって、GDP で日本と中 国には 0.3~0.4%程度、韓国には 2~5%程度のプラス効果がみられる。ただし、コメを除 外した場合には、中国のGDPに与える影響は、静態モデルではマイナスになる可能性も ある。また、中国WTO加盟以降の関税削減、貿易構造の近年の変化等の要因で、新しい 基準年142 142 これまでの日中韓あるいは日韓、日中、中韓のシミュレーション分析の多くは、基準年 2001 年あるい はそれ以前のデータを用いている。最も頻繁に使用されているデータベースはGTAP バージョン 6 で基準 年2001 年である。なお、最新の GTAP バージョン 7 は基準年 2004 年。 を用いた分析では、韓国のGDPに与える影響がやや小さくなる可能性もある。

(17)

 日中韓 FTA において、関税を完全に撤廃した場合では、例えば(阿部 2008)によれば、日 本の農業生産に与える影響は穀物で-49.27%、野菜・果物で-0.39%と、コメの生産に大き な影響が出る結果となっている。コメを除外した場合では、例えば(李, 朴, and 金 2005) によれば、日本の農業に与える影響は、食肉で-3.69%、穀物で-3.31%、果実・野菜では-1.36%、 家畜では-1.87%となる。  日中韓 FTA と日中、日韓、中韓を比較した場合、完全撤廃を前提とすると、日本の経済 全体にとって最も利益が大きいのは日中韓 FTA、次いで日中 FTA である。韓国にとって も日中韓を除くと、中韓 FTA が最も利益が大きい。コメを除外した場合では、(竜. 福田 2010)によれば、日本にとっては日中と日韓 FTA、韓国にとっては中韓と日韓 FTA のみが 成立した場合が、利得が大きくなる。  2010 年に 4 月に李大統領が中韓 FTA の検討を指示するなど、中韓 FTA への動きが加速し ているが、中韓 FTA が先行した場合、例えば(Y. M. Yoon, Gong, and Yeo 2009)によれば、 日本の GDP にはマイナス 0.1%の影響がある。  レビューで取り上げた研究のうち、ユニークなものは(奥田 2010)及び(奥田 and 渡辺 2010)によるもので、ここでは 2008 年貿易統計、2008 年実行関税率表と最新のデータを 用い、さらに関税削減について日・チリ EPA、韓・チリ FTA における日・韓側の関税率を 採用し、現実的な影響に近い状況を再現しようと試みている。これによれば、農林水産 物貿易については、日チリ EPA と同じ条件で日中 FTA が成立した場合、日本の農林水産 物輸出は 1 億 9,900 万ドル増、また中国からの輸入増 5 億 1,200 万ドル増のうち国産品と の代替は 2 億 8,700 万ドルで、最終的な収支はマイナス 8,800 万ドルとなる。また、日チ リ EPA と同じ条件で日韓 FTA が成立した場合は、日本の農林水産物輸出の増加は、韓国 からの農林水産物輸入増による国産減を上回り、貿易についての収支はプラス 6,100 万ド ルとなる。他方で、仮に中韓 FTA が先行した場合は、日本の中韓両国への農林水産物輸 出は 3,200 万ドル減少する。  なお、非関税障壁の撤廃に関する十分な検討は今後の研究を待つ必要がある。

表   91  日中韓 FTA のマクロ経済効果(三国共同研究)  報告年 要素 日本  中国  韓国  2008  GDP 成長率(%)  0.30  0.40  2.80  2007  GDP 成長率(%)  0.41  0.30  5.26  2005  GDP 成長率(%)  0.37  0.30  3.55  2003  GDP 成長率(%)  0.1~0.5  1.1~2.9  2.5~3.1  2005  経済厚生(百万ドル)  16,760  3,349  12,446  2003  経済厚
表   93  日中韓 FTA のマクロ経済効果(Lee 他、KIEP、GTAPver6)
表   99  日中韓の FTA 締結における GDP 変化率及び厚生変化率の比較  日本  中国  韓国  米国  その他先進国  その他途上国  GDP 増加率(%)  日中韓  0.99  0.60  2.53  -0.26  -0.26  -0.34  日中  0.87  0.34  -0.59  -0.16  -0.17  -0.20  日韓  0.22  -0.07  0.32  -0.04  -0.04  -0.05  中韓  -0.10  0.34  2.80  -0.06  -0.05
表   103  日中韓の FTA 締結における利得の比較
+7

参照

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