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教員養成学 と不登校生サポーターの対人専門職‑の 職業的社会化

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弘前 大学教育 学部紀要 特集号 :6 5‑8 7 ( 2 0 0 4 年 3 月)

Bul l .r a e .Ed u e . Hi r o s a k iUn i v. AS p e c i a lI s s u e:6 5‑8 7 ( Ma r .2 0 0 4)

教員養成学 と不登校生サポーターの対人専門職‑の 職業的社会化

一方法論の検討 と PAC 分析を通 して‑

6 5

" S c i e n c eo fTe a c he rEd u c a t i o n"a ndS o c i a l i z a t i o nt o wa r dt he Ps y c ho ‑ s o c i a lS u p p o r 血gPr o f e s s i o n

‑T h r o ug hMe t hod o gi l c a lCo ns i d e r a t i o na ndPACAna l ys ュ sOfPe r s o n l Ex pe r i e nc ei nSt ud e n tSu ppo r t e rt oSc h ool ‑ no na t t e n da nt s 一

豊 嶋 秋 彦 * ・近 江 則 子 ** ・斉 藤 千 夏 **

A ki hi koTOYOSHI M A* ,Nor i koOHMI **,Chi na t s uSA l TOH

* *

要 旨 適応指導教室の通室生 に対す る適応サポー ター として派遣 されてい る学生の変化 を、「 対人専門職 と しての教師」‑ の社会 化過程 として捉 え、その研究 を教員養成学 の座標軸 に位置づ けた上で、教員 養成学 の重要 な領域 である社会 化研究のために、個人 に密着 しつつ類型化 してい く方法論 を吟味 し た。 それ に基づいて、 1‑ 2 年間、積極的 なサポー ト活動 を展開 した 6 事例 にお ける体験の構造 に PAC分析 で迫 り、「 対人専門職‑ の社会化」進行の共通契機 と社会 化要件 を抽 出 して、それ らを獲得

させ るための予期的社会化の方法 を考察 した。

キー ワー ド 予期的社会 化、不登校生サポー ト、社会化研究方法論 、PAC分析 、 自己不確実感

目 次

Ⅰ 問題 :「 対人専門職‑の社会化」研究方法論 と 事例からの帰納

Ⅱ 「 サポーターの社会化」研究の現況 と課題

Ⅲ 社会化分析の方法論

Ⅳ 社会化過程の個人構造 r Vl1 目的 と方法 I V‑ 2 個人構造の事例研究

Ⅴ 対人専門職に向けた予期的社会化の焦点 と方法 1一一 1 日的 :共通項抽出と社会化の方法試論 ヽr ‑ 2 成功例 としての Fl 詳論

Ⅴ‑3 他 5 事例における社会化

Ⅴ‑ 4 総合的考察

( 1 ) 社会化の契機 としての自己不確実感

( 2 ) 「 斜め」の教師役割の模索 と学校的価値からの 離脱

( 3 ) 「 内面‑のまなざし」 と 「 内面‑の囚われ」

( 4 ) クライアン ト中心的態度と率直な自己開示 ( 5 ) 社会化阻害因としてのエゴグラム低 A

I 問題 :「 対人専門職への社会化」研究方法論 と 事例か らの帰納

森 田 ( 1 9 91 ) は、東京都 区部及び全 国政令指定 都市 の公立 中学校 2 年生 6, 0 0 0 人調査か ら 、1 9 8 8 年 度の 1 年間で、登校 回避感情 を抱 く不登校潜在群 までを含める と、7 0%弱が不登校傾向にある事実 を突 きつ けた。それ は今や大都市圏の問題ではな く、地方 中都市 の中規模 中学校 における我々の調 査で も、同様 の数値 を示 し ( 豊嶋 ら 2 0 0 0 ,小森 2 0 0 0 ,野村 2 0 0 1 ) 、中学校では登校回避傾 向を有

*弘前大学教育学部 附属教育実践総合セ ンター教育臨床研究部門/弘前大学大学院教育学研究科学校教育講 座教育心理学分野

De pa r t me ntofCl i ni ca lEduca t i on,Ce nt e rf orEduc a t i ona lRe s ea r ch a nd Pr a c t i c e,Fa c ul t y ofEduca t i on,Hi r os a ki Uni ve r s i t y/De pa r t me ntofEduca t i ona lPs ychol ogy,Gr a dua t eSchoolofSc hoolEduca t i on,Hi r os a kiUni ve r s i t y

**弘前大学大学院教育学研究科学校教育専修教育心理学分野大学院坐

Gr a dua t eSt ude ntofEduca t i ona lPs ychol ogy,Gr a dua t eSc hoolofSchoolEduca t i on,Hi r os a kiUni ve r s l t y

本稿Ⅳ章 は、第二 ・第三著 者 との共 同実践 に基づ き、平成 1 5 年度科学研究費補助金基盤研 究 ( C) ( 課題番

号 1 5 5 3 0 5 6 0 代表 :羽賀敏雄) による。本稿全体はそれ らを包括す る視点か ら、平成 1 5 年度弘前大学教育学部

研究推進計画 「 教員養成学構築 に向けた基礎的研究」 の一環 として構成 された。

(2)

す る生徒が主流 となった今 日、教師 には不登校問 題 に対処できる「 対人関係職」( 花屋 ら 2 0 0 2 , p 3 7 ) 、 あるいは、「 対人専門職 ( ps yc ho‑ s oc i als uppor t ‑ i ngpr of e s s i on) 」 としての役割が期待 され、社会 化エー ジェン ト ( s oc i al i z at i onage nt ) としての 教員養成学部 には、かかる役割期待 を満たす予期 的社会 化 ( ant i ci pat or ys oc i al i z at i on)を行 うこ とが求め られ る。それは、 中学校教員養成 に特 に 強調 され るべ きであるが、小中連携の観点 に立つ と小学校教員養成 にとって も重い課題 と受 けとめ ねばな らない ( 花屋 ら 2 0 0 1 ,豊嶋 2 0 0 2 a) 。

本稿全体の 目的は、学校教育の この よ うな危機 を突破できる教師に向けた社会化過程 を、大数的 水準ではな く個 に密着 した事例研究 によって詳細 に解明す ること、それ に基づいて、対人専門職養 成学部が行 うべ き予期的社会化の方途 を実証的に 探 ることに置かれ る。

使用 され る事例は、不登校生対象の適応指導教 塞 ( 以下、 「 A 適応教室」) に、通室生の適応支援 のために、週半 日以上のペ ースで通年派遣 され、

教育臨床 ・心理臨床的な立場で通室生 に関わった 学生サボ‑ターであるO従 って、 この 目的の達成 は、教員養成学にだけではな く、心理臨床職‑の 予期的社会化研究 にも新たな展望 を切 り拓 くこと が期待できる。なお、学生サポーターの派遣は、

弘前 大学教 育学部 フ レン ドシ ップ事業 ( 豊嶋 1 9 9 9 , 2 0 0 1 a, 2 0 0 2 b ,豊嶋 ら 2 0 0 3 a) として行われ た。

目的の第二は、教員養成学の 4つの軸が作る空 間 ( 豊嶋 2 0 0 4 :本誌所収)か ら、 「 学生学 」 「 対 象 としての全人的諸変数 」 「 長期効果研究 」 「 生活 臨床の学」の象限を切 り取 った時 に、その象限に 属す る研究が採 るべ き方法論 ( me t hodol og y) を 明 らかにす ることにあるCそれは、論者 自身の個 人的な経験、乃至は体験の、磨かれない原石の投 げ出 しか、高みか らの託宣かに留ま りがちであっ た従来 の教師論の統合支点 として、原石 と託宣の 中間点か ら、教員養成学を実証的に立ちあげてい くべ きと考 えるか らであ り、 さらに、対象者の感 想文のせいぜいが現象的分類か、没人格的な数値

‑の解体か に留ま りがちであった 「 教師‑の社会 化」研究の起点 として、事例 に密着 しつつ抽象 し 事例群か ら普遍 に迫 る研究をこそ、教員養成学は 着手すべ き と考 えるか らである。それ には方法論 的 自覚が必須の前提 になる。

二つの 目的の遂行を通 して、如上の象限に属す

る研究の 1範型 を提示することも狙われ る。

Ⅱ 「 サポーターの社会化」研究の現況 と課題 不登校生 に対す る学生の長期サポー トが、学生 サボ‑タ‑の体験 とその変容 に及ぼす機能 と構造 に焦点を当てた、恐 らくは最初のイ ンテ ンシブな 研究は、山形大学教育学研究科 グループの報告で あ り( 加川 ら 1 9 9 9 ,小嶋 ら 1 9 9 9 ,野本 ら 1 9 9 9 ) 、 不登校 生サポー トや教 員養成 に対す る PAC 分析 の適用例紹介 として価値がある一方で、学生 にお ける変容の構造の考察が平板な限界を持つ。他方、

秋 田大学教育文化学部 による短期集 中サポー トの 効果研究 ( 本間 2 0 0 1 ) は、非指示的で子 ども中 心的な柔軟な構 え と対処が取れ るよ うになること を見出 し、それ をもとに教員養成カ リキ ュラム開 発が図 られている。 これは事前指導の後 に不登校 生宿泊訓練の リーダー役割を とらせた学生の変容 を捉 え、学部教育 を改革 してい く本格的な取 り組 みであ り、教員養成学の視点か ら高 く評価できる が、カ リキ ュラム開発 とい う 「 学部学」 ( 豊嶋 2 0 0 4 ;本誌所収参照)の研究 として己むを得ない

とはいえ、変化の構造把握が欠落 している。

不登校サポー トか ら、学生 による不適応サポー トに視野 を拡 げても、豊嶋 ら ( 2 0 0 2 , p p 1 6 ‑ 1 7 ) の 文献展望 に加えるべ き研究は乏 しい。ただ し、適 応指導教室通室生 に対す る 日常的サポー トを行っ た教師の変容の構造 を捉 えた佐藤 ( 2 0 0 4 ) は、準 専門家サポーターの対人専門職‑の社会化の研究 例 として も、また、学生サポーターの対照例 を提 出 した とい う意味で も、出色である。

これ に対 して我 々は、A適応教室 におけるサポ ー ト事業草創期のサポーターに対す る多面的な調 査か ら、以下の知見を積み重ねてきた。

まず、長谷川 ら ( 2 0 0 1 ) は、学生サポーターの 関与の積極 ・消極性 と、サポー ト体験 による成長 感の強弱 とを規定す るのが、サポー ト活動 中の役 割混乱感や被拒絶感等の否定的な感情体験であ り、

それ に囚われたサポーターの活動は消極的 とな り 成長感 も得 に くいのに対 して、否定的感情 をもた らした通室生の内面や、通室生 との関係性 を見つ めることに関心焦点を移す 「 視点転換」 に成功す る と、関与の構 えの強 ま りと明確な成長感 に帰結 す ることを見出 した。

次 に、長谷川 ( 2 0 0 2 , p p 6 4 ‑ 7 5) 、長谷川 ら ( 2 0 0 2 )

は、 このサポー ト事業の草創期 3 年間の学生サポ

ーター全 4 1 名に、 1 0 ‑1 2 月時点 ( 派遣 1 年 目の者

(3)

教員養成学 と不登校生サポーターの対人専門職‑の職業的社会化 表 1 学生サポーター 4 1 名における変容の

「自然過程」( 長谷川 ら ( 2 0 0 2 ) から作表。 ) 第 1過程 ( 多 くはサポー ト1 年 目) 不明確な役割像 と 『 異文 化体験』‑の当惑

‑ a 関わ り方の模索

‑ b 非教師的 ・尊重的関わ りによる良好な関係形成 と不登校像の第 1 次転換 (( 明 るい不登校)像の 獲得 )

‑ C ( 秦 ( ス)の 自己)表出‑ の 自信

‑ d 自他折衷的 ( アサーテ イブ)な関係形成 第 2 過程 ( 多 くはサポー ト 2 年 目) 自信 とサポー ト意欲の強 ま り

‑ e 生徒 の内面的感情‑ の共感

‑ f 否定的感情 ・葛藤‑ の気づ きによる

( 明 るい不登校)像か らの再転換 ( 第 2 次転換) 一 g 内面理解のための個人情報‑ の希求

‑ h よ り効果的なサポー ト方法の模索

‑ i サポーター役割 と枠の限界‑の気づ き

‑ j 教育環境 の問題点の確認、

自らの教育観 の検証 と再構築

では 6‑8 月後、 2 年 目の者では 1 8‑2 0 月後) に 課 した内省 レポー ト、『サポー ト体験 によってえた 気づ きと自分 自身の変化』の分析 と調査面接 とに よって、殆 どのサポーターの変容過程 を覆 うこと ができるフ ローチャー トをえた。それを圧縮 した の が表 1 で あ り、 うち、第 1 過程 の概 説 は豊 嶋 ( 2 0 0 2 C・ d) を参照 されたい。重要なのは、第 1 ・ 第 2過程 とも、過程 の展開は "自分 の想いか ら、

通室生の想い・ 通室生 との関係‑の関心焦点移行" 、 即ち、「 生徒 の内面 と関係性‑の視点転換」によっ て もた らされ ることである。

さらに長谷川 ( 2 0 0 2 , p p 7 6 ‑ 2 4 9 ) は、ある年度の サポーター全 1 3 名に対す る PAC 分析か ら、体験 と 変容の共通項 9項 ( 表 2) を帰納 し、各項の内部 構造 も詳細 に検討 した。 しか しそれ らは、サポー ト歴の短い事例や消極的関与 に終わ った事例 を含 む共通項である。そ こで豊嶋 ら ( 2 0 0 2 ) は、草創 期 2‑3 年 目に 2 年間に亘るサポー トを積極的 に 表 2 学生サポーター 13 名に対する PAC 分析か ら

えた体験と変容の共通項 ( 長谷川 ( 2 0 0 2 ) に よるが、表現は一部修正。 )

1. 「 戸惑い」か ら 「 あ りのままの 自分で尊重的 に関わ る」‑

2. 「 戸惑い」か ら、多様 なルー トを経た成長‑

3. 「 指導員 ・教 師、適応教室 ・学校 の側の問題」 の認 知 と、教師 ・学校像の再構築

4. 「 再びの戸惑 い」か ら 「 敗北感」、 または、「 課題 に 対す る積極的構 え」‑

5. 通室生‑ の疑問 とそれ‑の対処 6. 教職志向の強ま り

7. サポー ト体験か らえた対人的構 えの 日常生活‑の応 用 ・汎化

8. 長期支援‑の欲求の強 ま り 9. 「 斜 めの関係」の体得

6 7 展開 した全事例 3 名に対す る PAC 分析か ら、対人 専門職 に向けた社会化の過程進行の契機 と共通項 を提示 した。

過程進行の重要な契機 は、役割模索 と自他の内 面‑の気づ きであ り、 ここか ら動 き始める社会化 過程の所産が、① 「 斜 めの関係 」 ( 笠原 1 9 7 7) ‑ の移行、②通室生 との支えあいによる成長感、③ 率直な自己表出による不明確な役割像の乗 りこえ、

・ ④ 自他のペースの尊重、⑤異質な存在 との出会い による対人態度の拡が り、⑥ 自他‑の態度の好 ま しい変容感である。

① は増 田 ( 1 9 9 8 ) が推奨す る 「 斜 めの関係 もと れ る教師」 に向けた社会化その ものであ り、③〜

⑥ は対人専門職 に必要な対人態度 ・価値態度の獲 得そのものである。② の 「 成長感」 も、二つの理 由で、対人専門職の要件 と見な し うる。その第‑

は、対人専門職はクライアン トを支えるだけでは な く、 クライアン トとの関係の成功 によって 自我 支持 され、成長 してい くべ き専門職であると考 え るか らであ り、第二は、 クライアン トの発達的変 容のために、不断の 自己分析 を通 して深化発展 さ せたパースナ リテ ィ ( 全人性) と技法 とを投入す べ き ( 河合 1 9 9 5 , P8 )だか らである。

しか しそれ らはまだ、" 非専門"学生 における、

試行錯誤 を通 したナイーブな変容の過程、即ち、

「自然過程」の知見に過 ぎない。 とい うのは、草 創期 には、第一 に、カ リキ ュラムの制約 によって、

例 えば心理学科な ど、対人専門職‑の志向が強い 臨床系専攻学生の派遣が不可能だったか らであ り、

第二 に、学生 による不登校サポー トに関す る我々 自身の実証的知見 も乏 しかったか らである。

そ こで、逐次、臨床系専攻学生の投入 を図 りな が ら、本事業 4 年 目か らは、否定的感情体験‑の 囚われ による消極的関与 ( 長谷川 ら 2 0 01 ) 、" 再 びの戸惑 い"か ら " 敗北感"( 長谷川 2 0 0 2 ) と いった 自然過程 の陥穿 を回避 し、 より速かな過程 展開を引き出す こと、即ち、対人専門職 に向けた 成長 を積極的 に引き出す予期的社会化を狙 って、

二つの試み を行 った。

その第一は、「 斜めの関係」を とるよ うにとの従

前か らの指示に加 え、" 通室生の内面 を受 けとめ読

み とり共有 しつつ 「 素 ( ス)の 自分」 を表出でき

る段階をまず 目指す' 'とい う表現で、 「 尊重 ・ 共感

を基盤 とした率直な 自己開示」を当面の 目標 とし

て明示 した ことである。 これは、 自然過程 に関す

る表 1 の b , C, e , f項、自然過程‑の PAC 分析 による

(4)

共通項 ( 表 2) の 1項、豊嶋 ら ( 1 992)の 「 契機 としての内面‑の気づ き」、及び③④項か ら導かれ た。

第二は、事前指導、中間指導 において、 自然過 程 の詳細 を解説 し、そ こに自分 自身を定位 させた 上で、次の段階に進む方法 を提示 した ことである。

第三は、臨床系専攻の学生 ・大学院生 を、充実 した研修体制 を持つ別の適応指導教室 ( 以下、「B 適応教室」) のスタッフ として派遣 しつつ、平行 し て A 適応教室サポーター として投入 した ことであ るo B適応教室は、19 93 年来、第‑筆者 と精神科 医による月例スーパ ビジ ョンシステム下にあ り、

加 えて、学生 ・大学院生スタッフは教育相談 を専 門 とす る多数の常勤スタッフ と協同 してサポー ト を行っている。そ こで獲得 した知識 ・態度 ・技法 をA 適応教室 の学生サボ‑ タ‑に伝 え させ ること を狙 った。

この よ うに、対人専門職‑ の予期的社会化を意 図 した体制の下で、学生サポータ‑に生 じた体験 と社会化の構造を明 らかにすることが、本稿の課 題 となる。なお、Ⅳ章で使用する事例の一部 をお おまかに探 った予備的検討 ( 近江 ら 2003 ,豊嶋 ら 20 03b)では、エ ゴグラムの低A、及び学校的価値

‑のこだわ りが、洞察 と社会化進行を妨 げる と示 唆 された。本稿ではその検証 も目指 され る。

Ⅲ 社会化分析の方法論

対人専門職‑の社会化 にアプ ローチす るには、

調査 と分析 の手続 きとしての方法 を述べ る前 に、

その方法の方法論的吟味が必要であることは、 Ⅰ 章で論 じた通 りであるC我々は、サボ‑タ一個人 の体験 と社会化の過程 と構造 に、事例法で接近す ることか ら始める。個人 にこだわ るのは、対人専 門職 に限 らず教師一般 も、知識 ・スキルのみな ら ず、トータル ( 全人的)な対人態度や価値態度等 々 も尽 く統合的 に投入 して、個性的全体的人格 とし て児童生徒 に関わるか らである。対 「 人」専門職 の社会化を、個性的全体を解体 し変数 ごとに分析 してい くのは馴染まない。 しか も、サボ‑タ‑ と、

通室生 ・ 適応教室の状況 との関わ り ( 即ち、人格 ・ 社会 ・文化の三者の出会い)か ら生 じる個人の体 験 も個性的である。従って、 旧来の社会学的社会 化研究の常套法、個人の個性的体験か ら離れ各変 数 ごとにマスデータを分析 してい く方法 は、余 り にも安易である。個人に焦点を当て、臨床心理学 的事例研究法 と、人格 ・社会 ・文化の出会いの構

造 に中層接近法 ( me di um appr oach) でアプロー チ してい く、中層接近社会心理学的分析法 ( 安倍 1 969) とを統合 した事例法が必然 となる。

もちろん、個人構造の事例研究 には二つの陸路 がある。第一は、個別事例の事例研究は普遍 に迫 りえない ことである。その陰路 を くぐり抜 けるに は、事例の共通性 と異質性の丹念な積み重ねか ら、

個 と普遍 を媒介す る発生類型 ( ge not ype)を求め る手法が有効であろ う。 この手法 も中層接近社会 心理学の特徴の一つである。

第二の陸路は、個人構造 を研究者側の構成概念 に沿って構造化 してい く方法の危 うさである。そ こか らえられるのは、極論すれば、研究者の創作 になる対象者の物語 に過 ぎない。か といって、対 象者 自身が織 りなす物語 を投 げ出すのは、感想文 の提示 と同根で余 りにもプ リミテ ィブ過 ぎ、そ こ か ら共通性 を抽出 した り構造を描 くのは、物語の 上 に物語 を重ねることとなる。従来 の教育実習研 究の方法論的限界 を鋭 く指摘 した紅林 ら ( 2001) で さえ、 ここで失敗 している。問題は、対象者が 織 りなす物語の前提 となる「 素材」の構造、即ち、物 語化 され る以前の構造 を、客観的 に取 り出せ るの か、とい う点にある。それ を解決 しうるのが、「 素 材」問の近接 「 感」の個人内多変量解析か ら始 め る方法であろ う。

こうした要請 を充たすのが、内藤 ( 1 997)の確 立 したPAC( 個人別態度構造 ; pe r s onalat t i t ude cons t r uc t ) 分析である。 これは、態度 に限 らず個 人の内面構造 に迫 り臨床的理解 に進 めてい く技法 であって、多変量解析 と質的研究の両極か ら個人 の内面構造のアプ ローチす る点が高 く評価できる。

先ず、提示 された刺激語 ( 教示)か ら自由連想 に よって反応語 ( 連想項 目) を得 る。次に、連想項 目群の相互関係構造 を、連想項 目間の主観的類似 度得点の クラスター分析 によって、デ ン ドログラ ム として可視化す るCつ ま り、物語 の 《素材)の 構造が、被検者 と研究者双方 に客観的に顕現する のである。 ここか ら、被検者 自身にクラスター命 名 と解釈 を求める半構造的面接 を深めていき、最 終的 に、刺激語 を巡 る個人の内面構造 を、研究者 が解釈 ・構成 ( cons t r uc t ) してい く。

しか も、各 クラスターはそれ に属す る連想項 目

群の統合体 ( Ge s t al t ) であ り、クラスター構造 は

統合体群の全体的な関係構造である。従 って、刺

激語 を工夫すれば、体験統合体の抽出や体験統合

体群の構造 を可視化できるし、 さらに中層接近社

(5)

教員養成学 と不登 校生サポーターの対人専門職‑の職業的社会 化 会心理学 における人格‑の接近単位である生活空

間 ( l i f e‑ s pac e) の、下位統合体 としての生活空間 領域や、全体構造 としての生活空間構造を可視化 する極めて有力な技法にもなる。

こうしてアプローチ法は確定できた。残 る問題 は、通年 にわたるサポー トの どの暗点で、 どのよ

うにデータをとるのが最 も有用か とい う問題であ る。社会化研究であるか らには、サポー トの都度 都度の感想や体験ではな く、「 長期的効果を持つ体 験」を拾い出 しその構造を捉えねばな らない。 と すれば、適応指導教室 における通年サポー トが終 了 した時点での総括的な洞察 と体験 を取 り上げる のが最 も有用 とい うことになる。即ち、回顧法で あ る。回顧 法 を豊 嶋 ( 1 99 3,p 95)は、人格 構 造 ( 生活空間構造) に組み込まれ、従って、回顧 し たその時点 において もなお機能 し続 けているモ メ ン ト、即ち、「 長期的効果を持つ体験」を探 るのに 適すると位置づ けて きた。

回顧法 と PAC 分析 を組み合わせ ると、その構造 が推定できる し、項 目、 クラスター、面接陳述の 時系列に注 目すれば、変化の構造 としての過程を 解明することも可能 となるC

最後 に 、PAC 分析 における面接者 としての研究 者 と、構造解釈者 ( 内藤の用語で言 えば 「 総合解 釈」者) としての研究者の問の、乗離の問題 と、

了解の"かのように" 悼 ( Roge r s の 、" asi f " qual i t y) の精度、乃至は リア リテ ィの問題 に触れたい。

内藤 ( 1 99 7 ,pp 20 ‑ 22)はこの間題 について、研 究者 ( 厳密には、面接者) と対象者の間の 「 H非"

共通主観」を共通化す るのが、客観的なクラスタ ー構造 を媒介にした問主観的解釈 と現象学的了解 であるとす る。彼は明言は していないが、「 共通主 観」 には対象者 とのそれ以外 に、他研究者 とのそ れの二つがあることが示唆 されている。後者は、

準拠する学的世界の文化 と言語が作る主観である と言って よいであろ うC構造解釈者は面接者 とし て形成 した 「 対象者 との共通主観」を、「 学的共通 主観」 に置 き換 えてい くことが求め られることに なるが 、PAC 分析 を行 うのは研究者であるか ら、

一般 に置 き換 え作業は妥当性が高い と期待で きは す るC

他方で、研究者が対象者のおかれた状況 と対象 者の体験 ・経験 とを共有 していない程度 に応 じて、

"かのよ うに性"の リア リテ ィは低下 して、了解 の基盤 として仮想 される 「 人間 としての普遍性」

にのみ依存するしかな くなるであろ う。そ こか ら

69

紡がれる解釈が、" 研究者の創作になる対象者の物 語"構成 に終わ らぬ保証はない。

しか し、対象者 との共通主観、学的共通主観、

"かのよ うに性"の高い リア リティとい う三者全 てを担保す ることができれば、問題は一・ 気 に解決 に向か うであろ う.解は参与的フィール ドワーク である。つま り、対象者のおかれた状況 と関わ り 対者 に、同 じく関わった共通体験 を持ち、対象者 の陳述 を リアルに了解でき、かつ、学的世界の文 化 と言語を共有する者が、面接 と解釈を行えばよ いのである。

そ こで次章では、心理学研究の素養のあるサポ ーターが、他のサポー ターを対象 にす る方法が採 用 される。近すぎる面接者の,巻 き込まれや主観 的解釈の危険は次の手法で軽減がはか られ る。そ れは、分析対象者の関わ った状況 と対者の リア リ ティを適度 に共有 し、かつ、面接者の個人特性の リア リテ ィも捉えている研究者が、最終的なクラ スター分割 一命名 も含む構造解釈 を行 うとい う方 法である。 この方法は、 対象者一面接者一構造解釈 者の間でそれぞれの関係が、それぞれの共通主観 に結ばれつつ、次第に対象化 ・客観化の度合いを 上 げてい く特質を持つ。

Ⅳ 社会化過程の個人構造

Ⅳ‑ 1 目的 と方法 1)対象事例 と目的

対象は、予期的社会化を意図 したⅩ年度の指導 体制の下で、派遣期間中一貫 して強いサポー ト意 欲 を顕わ し、かつ、我 々との間で充分なラポー ト が確立 していたサポータ ー6 事例であるC各事例 のサポー ト期間は 1‑ 2 年間であ り、 うち 1 名は、

派遣 に先立つ 1 年前か ら、 リー ド色の強い別のフ レン ドシップ事業 ( 羽賀 ら 2 0 03)にも積極的 に参 加 しているOまた 2 名は、平行 して B 適応教室ス タッフとして派遣 された。

本章の目的は、個別事例 に密着 しつつ普遍 に迫 るべ き 「 教師‑の社会 化」研究の起点 として、各 事例におけるサポー ト体験 と社会化の個人構造を 明 らか にし、あわせて、Ⅴ章で遂行 され る社会 化 の共通項や共通契機 を考察す るためのデー タを提 示す ることである。

事例の考察 に際 して、クラスター に注 目す るの は当然であるが、社会化過程進行の分岐 と考 えら れる役割模索 ( 豊嶋 ら 1 9 92) と、"自分の想い"

か ら " 通室生の内面、通室生 との関係性"‑の視

(6)

点転換 ( 長谷川 2 0 0 2 ,長谷川 ら 2 0 0 2) に関す る 連想項 目や面接陳述 も拾 ってい く。

2) 分析 と記述の手続 き ・方法

分析 は 、PAC 分析 とエ ゴグラム ( TEG第 2版、

以下、 「 TEG」 )データを総合 して行 う。

PAC 分析は、まず、第二 ・第三著者が、Ⅹ年度 末か ら Ⅹ+ 1 年度 にか けて、面接 と第一次解釈 を 行った。第二著者は Ⅹ‑ 1年度か ら 2 年間、第三 著者はⅩ年度の 1年間、サポーターを務めたOつ ま り、第二 ・第三著者は対象事例 とはサポーター 同期生であ り充分な ラポー トが確立 しているだけ ではな く、A適応教室の状況 も通室生の状況 も知 悉 しているか ら、事例の陳述 を リアル に了解でき る位置 にある。次 に、 Ⅹ+ 1年度 に、第一著者が

表 3 PAC 分析に用いた教示 適応指導教室での活動を通して、どんなことに気づい たか、自分がどう変化したかを考えて下さい。変化や気 づきに関することであれば、どんなことでも構いません。

思い浮かんだイメージや言葉や文を、思い浮かんだr r 酎こ 番号を付けながらカードに記入して下さい。

原データの再点検 を含む最終解釈 を行った。

教示 は表 3の通 り、サポー ト開始か らⅩ年度末 までを回顧 させ、体験 と気づ きを巡 る自由連想項 目 ( 以下、 「 項 目 」) を収集 した。項 目の類似度評 価は 7 段階法、クラスター分析 はウォー ド法の統計 パ ッケー ジ、 HALWI N による。

TEGは、毎年度4月、サポー ター選抜のために 実施 し、原則 として、 NP・FC が 5 0 %i l e 以上の 自 他肯定型であるか、または、 「 健全なパ ターン 」

( 杉 田 1 9 8 4 , p 4 4) か らの逸脱度 が小 さい ことを 選抜規準 にしている。 2 年 目のサポー ト継続 を希 望す る者 も選抜手続 きを経 るので、TEGが再実施 され る。 また 、 A 適応教室指導員 とサポーターのた めにⅩ年度2月 に開催 した事例研究会で も、 TEGを 一斉実施 した。

TEGの安定性 は危供 され る ところであるが、パ ターンレベル、自我状態の %i l e 値 レベル、各項 目 粗点 レベルの全てについて、数量化Ⅲ類 も使用 し て分析 し、少な くともマス レベルでは、不登校生 サポー ト体験 によってそれ らの変化が説明できた ので、サポー ト体験 による変容 を反映す る と考 え たい ( 長谷川 ら 2 0 0 0 ,長谷川 2 0 0 2 , p p 1 8 ‑ 5 0 ) 0

Ⅲ‑ 2 個人構造の事例研究

事例の考察 に先立 って、各事例の所属専攻、サ

ポー ト歴、その後の進路動 向を記述 し、最終的な TEGパ ターンの本誌読者向け解説 も付記 したO事 例の考察 は、TEGデータ と関連づ けて行 うO

以下、F とMは女子 と男子、学年 はⅩ年度の学年、

[ ]内はクラスター番号 とクラスター名、項 目 番号は重要度順位 、cp・ NP・ A・ FC・ AC はTEG の 自我状態である。 また、各 自我状態 について、

5 0±2 5 % i l e 値 と 5 0±4 5 %i l e 値で区切 った領域の どこに属す るかを示 したTEGパターン図 、PAC 分 析のデ ン ドログラム、体験 と社会化の構造の概念 図を、事例 ごとに図示す る。

事例の配列は、a〜d を総合 して大まかに見当づ けた社会化深度の順 による。

a. サポー ト体験か らえた主観的成長感。

b. 最終的 にえ られたTEGパ ター ンの、 「 健全な パ ター ン」、及び、配慮 ・ 尊重性 を必要 とす る 対人専門職 に適す るパターン‑の近接度。

C . 役割模索 と、通室生の内面 と関係性‑の視点 転換の明確度。

d. 著者 3 名夫々が行 った参与観察の印象。

1 )事例 F lの構造 ( 図 1‑3)

2 年間サポー トした臨床系専攻の 4 年女子。 4 年次 には併行 して B 適応教室 スタッフも務 めた。

6 事例中、最 も強 く自己変容 一成長 を感 じてお り、

Ⅹ+ 1 年度、臨床系専攻大学院 に進学 し、対人専 門職志望 を強 く堅持 した事例である。TEGでは当 初の低Aが次第 に上昇 し、最終的 には、「 健全なパ ターン」 に近い型 に達 した。

事前指導で 「 斜めの関係」が強調されたにもかか わらず、サポー ト当初、学習に向かわせようと指示 的関わ りを取ってしま う。これには 、Ⅹ‑ 1年度の 低 A が関わっていよう。 しかし、 それでは通室生との 関係が開かないことに気づき 、 「( 高 F C・高 NP の) 秦 ( ス)の自分で通室生 と共に行動しよう」とい う 構えに転 じて 、 [Ⅱ. 共行動の楽 しさ]を感 じるよ うになる。その中で過度に身体接触してくる男子通 室生が現れ困惑するが、コンサルテーションによっ て、困ることを伝えた上で彼の内面に焦点を当て配 慮するアサ‑テイブな表出 ( 対者の欲求や感情を配 慮尊重しつつ、自らの欲求 ・感情を対者に開示して いく、といった意味である)を試みて奏功し、他通 室生 との関わ りにも適用してい く。[Ⅰ.アサ‑チ イブな表出と、通室生 との支えあい]の関係の確立 であり、ここから [Ⅱ]が一層強まっていく。

こうした関係の中で、表面的に関わる限 りでは通

(7)

教員養成学と不登校生サポーターの対人専門職‑の職業的社会化

xl l i E I 隻4 月 X年度 4月 X 年度 2 月

5 0準 50 覇 頭

囲1 F lの TEG パター ン

0 7. 91

1 ) [ Ⅰ アサ‑テ ィ7な表出と

事 距離

1 . 0 0 相手のことを考えながら.自分の思っていることを伝える. 連想項 目 3 )

6) 通室生 との支えあい] 3. 1 . 9 0 4 0 断れ るようになってきたか もC 子 どもか ら必要 とされている感 じがあると、

ここにいてよかつたなと思 う.

7) 5 . 6 4 元気になる.

8) 1 . 0 0 一緒 にや ろ う. [ Ⅱ 共行助の楽 しさ]

9) 7. 91 楽 しいC

2 ) 1 ̲ 0 0 焦 らないo

1 2) 4 ̲1 8 落ち着き○ [ Ⅲ 自他の内面を見つめる

4 ) 1 , 0 0 悩む ( 考える)回数が増えた. 落ち着き]

5 ) 6.1 4 いつ も、適応教室の図繋室にいる

l 子 どもと、学習室にいる子 どもの問 を考える.

1 0) [ Ⅳ 不登校像の変化 と、学校的価値か らの l岨 批 よる、許容性 .耐性】 1 . 0 0 許せる範囲が広がった.

ll

) 2. 8 9 勉強 ( 学習)に対 して,無理に押 しつけない.

図 2 F lのデン ドログラム

低A 高

FC

図 3 Flにおける体験 と社会化の構造

室生は明る く楽 しそ うに見えるが、次第に、葛藤 を 覆 う表層の明るさに過 ぎぬことに気づいて、「 不登校 像の第 2 次転換」が生 じる。相侯 って、葛藤 を抱 え 学習に向きあえぬ彼等 に受容的に関わる構 えに転 じ、

耐性 も高まる。 [ Ⅳ.不登校像の変化 と学校的価値 か らの離脱 による、受容性 ・耐性]である.

この過程 と平行 して、項 目 4) 5) に見るように、

自他の内面を見る ( 考 える)視点に転換でき、その 結果、一方ではA の上昇、他方では、項 E lとして現

71

れてはいないが.配慮性 ・尊重性の高ま りがもた ら され、本事例 自身の 「 落 ちつ き」 もえられた。 [ Ⅲ.

自他の内面を見つめる落 ちつ き]であ り、そこか ら [ Ⅳ ] も更に明確化 されてい く。

2) 事 例 M lの構 造 (図 4‑6)

1 年 間派 遣 の臨床 系専 攻 4 年 男 子 。Ⅹ‑ 1年 度 もサ ポー ター を希望 し TEG を受検 したが 、X‑ 1 年度 か ら 2 年 間 、B 適応 教 室 に関わ る こ と とな り、

Ⅹ年度 にな って A 適応教 室 に派遣 され た 。 Ⅹ年 度 は A 適応 教 室 と B 適 応 教 室 の 二つ に並 行 して派 遣 さ れ た こ とにな るC この間、教 師 志望 が一層強 ま り、

Ⅹ+1 年度 には教 育 系専 攻 の大 学 院 に進 学 した。

Ⅹ年 度 2 月 TEG は受検 して いな いが 、 Ⅹ年度 4 月 にはス コアが上下両端 に張 り付 く極 端 な 自他 肯 定型 を呈 し、対 人専 門職 と して活動 す るには調整 を要 す るパ ター ンで あ った。

項 目 1) は、B適応教室での 1年間の経験か らえた

「 関わってみると普通の子」 とい う 「 第 1次不登校

像転換」( 表 1 参照)と 、A 適応教室での再確認であ

り、 ここか ら Ml の A 適応教室でのサポー トが始ま

る。また、B適応教室で既に形成 されていた、通室

生 の個性 と変化 を尊重す る構 えも急速 に確立 した

( 日 .「 普通の子」観 と 「 個性」「 変化」の重視] ) 。

これ には、高NP ・低 CPと、 この 1年間で高まった

(8)

xl l 年度 4 月 X 年度 4 月

5 0 露

図 4 M lの TEG パ ター ン

0 9̲1 3

I ) 2 ) 3 ) 5)

9) l 距離 連想項 目

1 ̲ 0 0 普通の子 と変わ らない子 ども連

Ⅰ 「 個性 「 普通の子」観 と 」 「 変化」聴視の構え 1 1 1 2 . ̲ ̲ ̲ 0 0 0 6 0 0 0 9 何がベターなのかをよ り考 える 個性の大切 さ 小 さな変化 カウンセ リングの必要性、有効性

4) 1 . 0 0 場 に応 じた役割の変化

6 ) Ⅲ 自他の変化への感受性の高 ま り 1 . 0 0 子 ども連の小さな変化によ り気づけるようになった

7) 1 . 0 0 いろいろな役割、顔 を持つ ことができた

8)

91 3 自分の役割の.、 化

l

いh Ⅲ 教育 .社会鵬 批判 1 . 0 0 現在の教育現場の対応‑の遅 さ,まず さ

1 2 ) 5̲74 子 ども達 を支えきれていない社会

図 5 M lのデン ドログラム

1年間の 高N P

A の上 昇

サ ポ ー ト .キ ャ リア

卜 ■ 第 一 次忘 換 ■ 低C P

l \

\ 1

[Ⅰ 「 普 通の子

観 と

[ Ⅲ 教 育 ・社会環境

批 判 ] [ 感受性 の高 ま り] 自他の変化への 1

[ Ⅳ 未熟 さの 自覚]

図 6 M lにおける体験 と社会化の構造

A も寄与 しているであろ う。

[ Ⅰ]か ら [Ⅱ . 自他の変化 に対す る感受性の高 ま り]が生ず る 。 4) 7 ) 8) に注 目す る と、 [ サ ポーター役割の模索 とその結果 としての多様な役割 取得]のクラスター と括 ることもで きるが、 1) と あわせ ると、多様な役割取得は、役割行動試演‑反 応の検索‑役割行動調整 と新たな役割の模索‑反応 検索‑反応 ・状況に応 じた役割転換、 といった過程 の所産 と解す るのが妥当 と考 えて、 川 ]の命名 と なった ものである。 この役割調整 ・模索 も高 A に支 えられているであろ う。

[1] [Ⅲ] と高A か ら、 ̀ 児童生徒の個性 と変化"

に焦点を当てていないように見える今 日の学校 に対 す る [ Ⅲ.教育 ・社会環境批判]を強めてい くが、

一方で [ Ⅳ. 自分の未熱 さ] も痛感 し、大学院進学 後のサポー ト継続 を強 く希望す るに至 るC

3) 事例 M2 の構 造 (図 7‑9)

1 年 間派遣 の教 育 系専 攻 3 年 男子。 派遣 に先立 つ Ⅹ‑ 1年度 か ら、子 ども と関わ り指 導す る別 の フ レン ドシ ップ事 業 に も参加 し続 け 、Ⅹ+ 1 年度 もサ ポー ター を務 め る一 方 で 、平行 してそ の事業 に も関わ り続 けた。 ス トレー トで教 職 に正採 用。

Ⅹ年度 2 月 TEG パ ター ンは M lに準 じる。

本事例 自身は、図 9 の 1) 〜l l) を 1 つのクラスタ ー として扱い 「自分のプラスの変化」 とま とめてい るが、 2 つのサブクラスターに分割 した。

「 斜 めの関係」 と 「 素 ( ス)の 自分の表 出」の重 要性 を事前指導で知 らされたが、 自己開示 に蹄鰭、

通年 に亘って、 [ Ⅲ.秦 ( ス)の自己表 出‑の不安 ・ 葛藤]を感 じつつのサポー トが続 くO このクラスタ ーに属する項 目数が最 も多いのは、別のフレン ドシ ップ事業で 《子 どもを リー ドする関わ り》 に適応 し てきた本事例 にとって、異質の世界‑の適応が迫 ら れた不連続性の感覚や役割葛藤 を頻繁 に感 じたか ら であろ うO この不安 ・葛藤が通年持続 していること は、不連続性の感覚が体験イヒされた ことをも意味す る。

しか しその一方で、高 N P・ 高 A も相侯って、比較的

早期に [ト 1 .共感的 ・理解的態度 による深い関係

形成]と、項 目 2)4)1 )に見るよ うに、視線の転換

による [ 卜 2 . 個の理解 と個 にあわせた関わ り] と

(9)

教員養成学と不登校生サポーターの対人専門職への職業的社会化

X年度 4月 xI I 二 度 2) i

5 0 霞 図 7 M2 の TEG パター ン

0 1 0,1 4

l 距離 連想項 目

1 ) I , 0 0 信頼 関係

5) [I‑ 1 共感的 .理解的態度による 1 . 7 3 理解 力

6) 深い関操形成1 2. 4 9 包容 力

1 0) 1 . 0 0 子 どもの将来 を考 える時がある.

1 2 ) 「 495 子 ども達 と結柄深い話が出来 るよ うになった

2) 1 . 0 0 子 ども達 を見 る ( 理解 しよ うとす る)視野が広が ったb 3 ) [Ⅰ‑ 2 個の理解 と個に 1 . 0 0 一人一人の子 どものペースに合わせ られ るよ うになった○

4) あわせた関わ り] 2‑ 5 8 柔軟性 を持つ ことの大切 さ、持てるよ うになったq

8 ) i , 0 0 客観性

9 ) 1 . 00 子 ども達 との関わ る姿勢 の変化B

ll

) 7. 90 自分の子 ども連 の捉 え方が単純 じゃな くなった○

1 3) E l [ 昔 ポ禁 忌芸諾孟欲〕 1 . 00 子 どもがポ ジテ ィブな方向に変わ ると嬉 しい.

1 4) 1 . 7 3 来年度 も続 けたい と強 く思 うよ うにな った.

1 5) 】 5̲7 7 最近は子 ども遠 といるのが楽 しいのか、

1 6 ) [ 皿 素 ( ス)の 自分 を J よく子 ども達 に冥顔 を見せ るよ うになった.

2. 0 0 自分の関わ りが子ども達にどんな影博を与えているのか 長く になるB

1 9 ) 2. 00 自分の素を見せた らどうなるか悩む時がある. ( 一 一 、 円 ‑ 2 0) 表出す る不安 と葛藤] 2 , 00 初めて きた子 にど う鯛わろ うか考 えると 自分 の素 ス)で関わ りたし とI L i 、 つので○

21 ) 4 ̲ 8 3 悩む ことも多 くなった. なかなか踏み出せない時があって悩む○

17)

】 2 , 0 0 偽物の 自分で関わ っていないか ど うか . . ‑ ‑ 1 8) l O̲1 4 自分が明 る く振 る舞お うとす る時があ る○

7) [ Ⅳ i "「 縦 」性の強 い指導体制' への批判的適応 】 ' 1 . 0 0 我慢

2 3) 1 . 0 0 束が合わないスタ ッフへの対応 力○

2 4) 4 . 0 0 嫌いなスタッフと

2 2) 表面上は上手 くやっている、やれるようになった.

図 8 M2 のデン ドログラム

I)‑ ド性の . 喝 ・叩荊指帝 ' 強 い

‑ ‑

.

r斜め」と自己I 関わ り体掛 夢 二脱示の強3 1

( [ Ⅲ] の一貫拝殿)

図 9 M2 における体験 と社会化の構造

に成功 し、 [Ⅱ.関わ る喜び とサポー ト継続の意欲]

を強めてい く

他方、本事例 自身が獲得 した [ 卜1 ][卜2 ] に比 して、この適応教室が既成の教員文化か ら抜 けきれ

7 3

ず " 縦"性の強い指導に留ま りがちであると感 じて、

批判の構 えを強めて行 く。 とはいえ、 項 目 7) 2 3 ) 2 4) には、 この文化 とそれを担 うスタッフに対す る適応 努 力も窺 い知れ る。それ らの複合が、 [ Ⅳ."「 縦」

性の強い指導体制"に対す る批判的適応]である。

本事例の低 C P を考慮す ると、この批判性は高 A に発す ると考えて よく、参与観察 によって も、指導体制の

「 縦」性は拭いがた く看取 されたか ら、妥当な批判 であると言 うしかないO

4) 事例 F2 の構造 ( 図 1 0‑1 2)

2 年 間派遣 の臨床 系専 攻 4 年 女子。 面接 で 「2

年 間 のサ ポー トを振 り返 って ま とめた言葉」 と述

べ て い る よ うに、項 目は絞 り込 まれ た もので あ っ

たO そ の後 、臨床 系 の職 に就 くが辞 し、教 職へ の

指 向 を強 めて いった 。Ⅹ‑1 年度 4 月 の TEG は、過

剰 な NP が抑 え られれ ば 「 健 全 なパ ター ン」に一・ 致

す る もので あ ったが 、 Ⅹ年 度 2 月 には、他者 肯 定

(10)

Xl l年度 4 月 x年度 4 月

% 1 ( 沿 95 75 50 25

5 0 5 0

図 1 0 F2 の TEG パター ン

X 年度 2 月

‑ i ‑ = 1 ̲ ;

図 1 1 F2 のデン ドログラム

l教‑ 堂の強まり l

図 1 2 F2 における体験 と社会化の構造

性 が 際立 つ反 面 で、 抑圧 と自己主張性 の抑 制 を窺 わせ るパ ター ンに変 化 してい る。

項 目 4) の = モヤモヤ日には、次の経緯がある。 コ ンサルテーシ ョンも担 った特別サポーターをモデル とし、 「 子 どもの ことを真剣 に考 え」、 「 子 どもの笑 いがみ られない時 も、子 どもが うま くいっている時 も、子 どものため に自分 にもっ と何 かがで きない か ? 」 と、常に通室生の内面に焦点をあてなが ら、

個 と状況に応 じたサポー トの模索を常に行 うが、そ れで も、ク リアカ ッ トな解がえられない " モヤモヤ"

である。 しか し " モヤモヤ"を保ちつつ、「 身構 えず、

ゆった り、素 ( ス)で、率直に」関われ るよ うにな った として、強い成長感を持つ。 これが 日 .常の 模索 と強い成長感]であ り、本事例 自身による命名 は [ 成長過程]であった。" 子 どものための配慮' '

を支えたのが高NP、持続す る模索を支えたのが高A であろ う。

教育実習で も、サポー ト事態で揮得 した " 配慮 ・ 模索 ・ゆった り ・率直"な対人態度 による関わ りに 努め、教育実習成功感 と成長感をえて、 この対人態 度が一層確立 され ると共 に、教職志望 も強まってい く。 この対人態度 と、通室生の感情 を共有 ・一体化 しなが ら通室生の成長を願 う [ Ⅲ.一体化 と、通室 坐‑の希求]は、相互に支えあ う関係 になる。

[Ⅰ] と [ Ⅲ]か ら、" 新 しい学校 ・教師"像 を模 索 した本 事例 は、 「 " 個" と "内面"を重視 した学 校 ・教師が必要。そのためにまず、学校 と適応指導 教室の連携が課題」と考 える。それが項 目6) の意疎 であ り 、 [ Ⅳ.課題 としての、学校 一適応指導教室 の連携]である。また、クラスター として教育界‑

の提言が現れ ることにも,高 A が関与 しているであ ろ う。

[Ⅱ]の本人命名は、 [(2年 間のサポー トを終 え た後の)思い出]であ り、サポー ト体験の総括 クラ スターであることが窺える。 しか し、項 目 5 )は 「 通 室生が自分 を楽 しませて くれ、成長 させて くれた」

とい う意味であることが面接か ら明 らかになったの で、命名 については、 [Ⅱ.成長 させて くれた通室 生たち‑の感謝]の方が妥当である。 この感謝の背 景 には、一貫 した高 AC に由来す る謙虚 さがあるよ

うに思われ る。

この間の著 しい FC 低下の背景は不詳である。

5)事例 F3の構造 (図 1 3‑1 5 )

2 年 間派遣 の教 育 系専 攻 4 年女 子。 サ ポー ト体

験 を通 して 、早期 完 了的 な教 職 志望 が解 除 され 、

(11)

教 員養成学 と不登校生サポー ターの対人専門職‑ の職業的社会化

X‑ 1年度 4 月 X年度 4月

X年度 2 月

50 琶 5 0 窺

図 1 3 F3 の TEG パ ター ン

0 6 . 7 3

い 2 ) 7 )

目 白他をみる枠の拡大] 1 2 . , 0 2 0 4 いろいろな人の生き方を許容できるようになった. 自分は視野の狭い人だと思った.

I 4 . 0 2 先生以外の職掛 こも興味が持てるようになった○

1 1 2 3 ) ) [ Hr 明るい不登

像‑の転換] 三 : 呂 : ≡苦Tp A O:U 認 諾 詰 壷校になることを印 した.

9 ) 」 [ Ⅲ 「 …警 芸芸悪霊宴去] 2 . 0 0 学校に行かなくてもよいのでは、と思うようになった.

l い 2 , 0 0 適応教室は、不登校の子にとって安心できる場所だと思う.

1 4 ) 6 . 7 3 不登校の子は,とても人の日を気にすると思う.

3 ) [ Ⅳ 「 教師」役割を巡る 1 . 0 0 実際に教師になって、不登校の子と向き合っていく自信がない.

6 ) l 自己不様実感] 1 . 7 3 先生や学枚に対する文句を聞くのはつらい○

8 ) 5 , 5 1 学生として不登鹿の子とかかわっていくぷんには.

子どもたちはわりといろいろなことを話してくれるが、

これが教師だったらどうなるかと思う.

4 ) [ V 嫌われ不安 . 2 . 0 0 もつと自分のことを話せば、子ともたちと仲良くなれたと思う.

1 0) f 自己開‑酵腐] 4 . 5 0 自分は子どもたちに好かれているかどうか i iiiiiiii i i i l 不安になることが多かつた○

1 5 )

1 6 ) l 3 4 . . 0 2 0 8 不登校の子は,家庭にも何か問題のあるケースが多いと思った 非行に走る子の 自分には理解できない. [ Ⅵ 逸脱 .非行型判列の 了解幽雑感と不安]

5 ) 6 . 7 3 不登校の子と撲すると、やっぱり子どもの成長に

図 1 4 F3 の デ ン ドロ グ ラム

対 人 サ ポ ー ト職 に 向 か っ て い っ た 事 例 で あ る 。

TEG で は 、 2 年 間 一 貫 し た 低 A 、 著 し い 低 AC が 特 徴 的 で あ り、 客 観 視 や 論 理 性 の 明 らか な 弱 さ と、

抑 圧 ・妥 協 的 な 在 り方 ‑ の 馴 染 め な さ、 乃 至 は 拒 否 感 が 示 唆 さ れ る パ タ ー ン で あ る 。

サ ポ ー ト初 期 に [ Ⅱ , 「 明 る い不 登 校 」 像 ‑ の転 換 ] が あ っ たC こ こ か ら [Ⅲ .r 不 登 校 生 の 居 場 所 」 と して の適 応 指 導 教 室 観 ] が 形 成 され る。 項 目 1 4 ) は 、

「 学 校 で は 人 の 目が 気 に な るが こ こで は 気 に しな い で 済 む 」 とい う意 味 で あ る。

一 方 、 関 わ り方 を巡 る 自己不 確 実 感 が あ り自己 開 示 に蹄 賭 し、 "居 場 所 の は ず の 適 応 教 室 な の に、 通 室 生 との親 密 度 が 他 サ ポ ー ター に 比 べ て 低 い " とい う認 知 か ら、 「 通 室 生 に好 か れ た い 」 欲 求 が 現 れ 、 一 層 開 示 が 抑 え られ る 。[ V. 嫌 わ れ 不 安 ・自 己 開 示 蹄 緒 ] で あ るC 「 早 くか ら素 の 自分 を も っ と出 せ ば 良 か っ た 」 との 反 省 を意 味 す る 項 目 4) か らは 、 [ Ⅴ] と 自己不 確 実 感 の 慣 性 的 持 続 が 示 唆 され 、 こ こか ら許 容 的 構 えが 作 られ るc

数 師 志 望 も早 期 か ら固 く、「 学 校 に行 くの は 当 た り 前 とず っ と思 っ て い た 」 と言 う本 事 例 は 、 [Ⅲ] と [ Ⅴ] か ら、 自分 の 進 路 志 望 も 「 生 徒 の あ り方 」 観 も転 換 し始 め る。[Ⅰ. 自他 をみ る枠 の拡 大 ]で あ る。

7 5

[ Ⅶ 1 牡梁的アイデンティティの再f i i ] 図15 F3 に お け る体 験 と社 会 化 の 構 造 進 路 志 望 枠 の拡 大 が 、 [ Ⅳ . 「 教 師 」 役 割 を巡 る 自己 不 確 実 感 ] と相 保 って 、 職 業 的 ア イ デ ンテ ィテ ィ を 動 揺 させ る。

[ Ⅵ] は [ 逸 脱 ・非 行 型 事 例 ‑ の 了 解 困 難 感 と不 安 ] と解 釈 で き る。 とい うの は 、 項 目 1 5) につ い て 、

「( 許 容 的 構 え で 接 して も)通 室 生 が 自分 の 目の 前 で

逸 脱 行 動 を した り、 "悪 い こ と" を 自慢 げ に話 して

くる」こ との 了解 困 難 感 が 面 接 で 語 られ 、項 目 1 6) で

(12)

は、 「 非行型生徒 に教師 として関わ る暗 には、家庭 との連携が欠かせないのに、"問題のある家庭" と の連携は困難」 とい う認知が語 られたか らである。

[ Ⅵ]の背景 には、内面に視線 を向ける構 えが未獲 得で許容的構 えに留まっていた こ とと、 [ Ⅳ]に見 るような、既成の教師役割‑の囚われがあろ う。

しか しこうした動揺は、項 目7) の通 り、「 子 ども の成長に関わ る仕事」 とい う拡大 した進路展望の形 成 によって解消に向かってい く。

なお、項 目と面接陳述 には二つの特徴があった。

罪‑は、本事例の側か らの理解、本事例 自身の欲求 は多 く語 られ るが、通室生の視点に立つ表現が乏 し いことであ り、 これは、̀ ̀ 逸脱 ・非行の了解困難感"

( Ⅵ) や " 許容性" とも符合す る。つ ま り、 [ 自他 をみ る枠 の拡大] (I)はえ られたが、通室生 の視 点‑の転換や共感性が不十分だったのである。その 背景には、 一貫 した低 A があると考えられる。第二の 特徴は、「 教 師 として」、 「 教 師 にな った時 に」 とい った表現の多用であ り、既成の教師役割 と上か ら見 る視線‑の囚われを感 じさせた。背景に、早期完了 ( f or e c l o s ur e ) 的 な教職 志望 と一貫 した著 しい低

AC があると解 された。

またこの間、CP低下 とNP上昇が著 しいが、 自己 不確実感 ( Ⅳ ・Ⅴ) の慢性的持続 と進路展望の崩れ がCP低下をもた らし、その補償 と許容的構 えの固着

X‑ 1年度 4 月

%u e l e o

95 7 5 5 0 25 5 0

が NP 上昇をもた らした と解 される。

6) 事 例 M3 の構 造 (図 1 6 ‑1 8 )

2 年 間派遣 の教 科 系専 攻 4 年 男 子 で、 自己変容 感 が薄 い事例 で あ る。 既成 の教 師文化 に立つ 関係 者 か らは高 く評価 され続 け、 教 職 に も正採 用 とな った 。TEG で は Ⅹ‑ 1年度 に 5 0%i l e 値 だ った A が低 下 し 、 Ⅹ年度 には 自己対 象 化 ・客観 視 が不 十 分 な まま 自己肯 定性 が際 だ ち、 自分 の欲 求 ・想 いで動 きが ちなパ ター ンを呈 した。

派遣初期 に 「 明るい不登校」像 をえ、「 明 るい通 室生が "ネガティブな反応"をしている。それ をど

うリー ドするか ? 」 とい う発想に立ち、対応行動 を 探 してい く 。 2 年間持続す る [ Ⅳ.「 普通の子」観 か ら表面的対応の模索‑]である。

こ うして、 [ Ⅱ. ( 教室が定めた)既定の活動プロ グラムに乗せる努 力]が始まる。併行 して、本事例 の個性 を生か した関わ り方に通室生を乗せ るための 模索が始 ま り、「 下手 ( シタテ) に出る」方法 を考 えつ く。 [1. 自分 らしさの追求 と、乗せ るため に

「 低みに立つ」努力]である。

待つ ことも、教室のプログラムや 自分 らしい関わ りに乗せ る技術 となる。 さらに、 「 子 どもを立てる」

X年度 4月

‑ 1 = 二 ≒ CP NP A FC CP CP 〜P A FC AC

図 1 6 M3 の TEG パター ン

0 5 ̲ 9 4

2 ) 1 ̲ 0 0 不登校の子に対する自分の接 し方.

特別な振る舞いは必要でな く.自分 らしくあること.

4 ) [ Ⅰ 自分 らしさの追求と、 1 . 0 0 子 どもの好きな こと、興味のあること、

乗せるために 「 低みに立つ」努力] 趣味について調べた り、 自分でもやってみること.

1 0 ) 」1 1 ̲ 0 0 自分がいかに子供達 といて奥 しいか、笑っていられるか.

ll)

41 5 自分の話もする ▼と それ によって、子 どもも変化する,

3 ) 1 . 0 0 なるべ く言葉をかけること○

9 ) l ■ ■ ■ ■ 3 . 0 0 子 どもに対す る吾輩かけの難 しさ○ 勉強に取 り組んでもらう.活動に入ってもらう.

5 ) 〔 Ⅱ 既定の活動プログラムに乗せる努力] 1 1 . 0 0 毎 日変化す る子 どもの様子に合わせた対応 をとること.

6 ) l l の

教室に入った時に日を見て知 ろうとすること.

7)

4 . 00 待つ ことの大切 土に気が付 く.

1 2 ) 「 594 子 どもをたてて 自分を少 し抑える >と [ 皿.技術 としての 「 待ち」 と 「 立て」]

1)

2 . 0 0 不登校に対するイメージの

8)

l 5 , 94 不登校の子 どもが持つネガティブな反応に対す る考 え方○ ネガティブ.ポジティブな変化.

図 1 7 M3 のデン ドログラム

(13)

教員養成学と不登校生サポーターの対人専門職‑の職業的社会化

低A

[ N 「 普通の子」観か ら

表面的対応の模索‑]

l

に乗せる努力] : 「 低みに立つ」努力]

[

Ⅲ 技術 としての

「 待ち」 と 「 立て」]

([ I l ' ]

の一貫持続)

図 1 8 M3 における体験 と社会化の構造

ことも、[Ⅰ]の 「 低みに立つ」か ら発展 した 「 自 分の個性に乗せるスキル」である。このように、[ Ⅲ.

技術 としての 「 待ち」 と 「 立て 」] が早期か ら使わ れていった。

[Ⅰ]〜 [ Ⅳ] を通 して、通室生の反応の背景に 関心焦点をおいてそれに適 した反応 ・役割を模索調 整する通室生指向 ・内面指向の構えが微弱で、通室 生を巻き込み乗せるための行動 レパー トリーを増や そ うとする、行動指向的で、"自分の想い"中心の 構えが前景化している。このことはサポー ト場面の 観察でも読みとることができた。 こうした特徴が一 貫 した低 A に起因することは、サポーターに課 した 総括 レポー トが簡明な感想文に終わっていたことか らも推察できたが、同時に、第一筆者の参与観察か らは、多くの通室生にとって、一貫して人気の的で あったことも記 してお く。

Ⅴ 対人専門職に向けた予期的社会化の焦点 と方法

Ⅴ‑1 目的 :共通項抽出 と社会化の方法試論 個人構造 のデータか ら出発 して、対人専門職養 成 のための予期的社会化の焦点 と具体的方法 を明 らか にす るには、個 と普遍 を繋 ぐ中間水準の構成 体 としての発生類型 を得 るアプ ローチ を採 る こと を意味す る。 もちろん 6 例で発生類型 に達す るの は至難であるか ら、本章では、発生類型化のため の観点 ( 規準) とな りうる共通契機 ・共通構造 を 抽 出 して、それ をもとに、対人専門職‑ の予期的 社会化のエージェン トた るべ き教員養成学部が、

と りうる方途 を探 りたい。

そ の た め に、次 第 に対 人専 門職 に相応 しい に TEG パ ター ン変化 し、サポー ト活動 による成長感 も最 も明確であった事例 F lの過程 と構造 を吟味 し、次 に、 F lとの対比で他事例の特徴 を位置付 けてい く手法 を とる。

さらに、《 社会 化阻害 因 としてのエ ゴグラム低

7 7 A) ( 近江 ら 2 0 0 3 ,豊嶋 ら 2 0 03 b) と、《社会 化 阻害 因 としての学校的価値‑の こだわ り》( 豊嶋 ら 2 0 0 3 b) の仮説検証 も試み られ る。

また、考察 を進 めるため に、「 斜 めの関係」の二 つ の規準 を、事 例 分析 の記述概念 として使用 して い く。それ は、

・ 「自他 を見 る視点 と、関わ る軸、

乃至 は座標 系の転換」( 以下、「 視点転換」と略記)、

i; 通室生 との 「 " 逆ナナ メ"の関係」を受 け入れ る こと ( 田中 ら 2 0 0 2) や、通室生 との間の "支 え あい"、通室生 との地 位差 をを括弧 に入れて、同 じ 立場 で共 に活動す る 「 共行動」な ども含む 「 地位 標高差変換」である。実 は、長谷川 ら ( 2 0 01 , 2 0 0 2) 、 長谷川 ( 2 0 0 2) が、サポーターの発達〜社会 化過程 進行の重要な契機である と指摘 した、「 通室生の内 面や、通室生 との関係性 を見つ める こと‑の関心 焦点移行」 も、 「 視点転換」の‑型 なのである。

「 斜 めの関係」の二つ の新規準は、笠原 ( 1 9 7 7 ) 以来、不登校や青年期不適応症例 の治療〜再適応

に とって鍵概念 ・鍵戦略 とされて きた この概念の 再考 を通 してえ られた ものであ り、その詳細 は本 誌別稿 ( 豊嶋 2 0 0 4) に譲 る。但 し、「 地 位標高差 変換」の概念規定は別稿で も明示 していないが、

以下 の考察 に一部必要 なので概述 したい。それ は、

サポータ‑ とサボ‑テ ィ‑の問の地位 ( 社会学的 概念 の地位である)の落差 ( 標高差) を、解消 あ るいは逆転 しよ うとす る関係性、または、解消 ・ 逆転 した関係 に入 ってい くことを、サポー タ‑や サポーテ ィーが受容 ( ac c e p t )、あるいは願望す る 関係性である。

Ⅴ‑2 社会化の成功例 と しての F l詳論 1 )社会化進行の起 点 と契機 :自己不確実感への

直面化 と役割模索、及び 「内面へのまな ざ し」

F lの過程 には二つ の起点がある。第一の起点 は、事前指導で禁 じられた指示的関わ りをつい と って しまい、関係形成 に失敗 したその困惑 に直面 化 ( c onf r ont at i on) できた ことである。 ここか ら、

関わ り方の模索が後続 し、事前指導で強調 された

"秦 ( ス)の 自己表 出 による 「 共行動 」" ( クラス ター Ⅱ : 以下、 ローマ数字は クラス ター番号) に 転 じた。失敗 によって指示的 リー ド的役割の不適 切性 を漸 く体験 し、それ を脱構築 した 「 素の 自己 表出」か らサポーター役割の再模索過程 に入 り、

共行動者役割‑の転換がな されたのである。

第二の起点が、" 通室生か らの身体接触 による困

惑"‑ の直面化であ り、 とるべ き対人態度 の模索

(14)

が後続 し、通室生の内面 に焦点 を当て る 「 他者の 内面‑のまな ざし」が確立 されてい く。そ して二 つ の困惑‑ の直面 化は、 「自己の内面‑ のまな ざ し」が可能 に した と考 え られ る。 これ以降の F l の全過程 は、「自他の内面‑ のまな ざし」が撚 り糸 とな り、過程進行の契機 になってい く。

なお、" 通室生か らの身体接触 による困惑"に際 しては、第一著者 によるコンサルテー シ ョンが行 われてい るが、困惑‑ の直面 化 と役割の模索 ・再 模索が コンサルテー シ ョンを求め させ た と考 え ら れ、 コンサルテー シ ョンが F lの社会化過程進行 の主要 因 と見 るべ きではない。

2) 「内面へのまな ざ し」の内化 ・定着

葛藤 を抱 える通室生 に対す る受容性 ・ 耐性 ( Ⅳ) や、全過程 の到達点 と考 え られ る、 自他 の内面 を 見つ める落 ちつ き ( Ⅲ) は、 自らの困惑 ・自己不 確実感 といったネガテ ィブな感情 をも含む 「自他 の内面 に向か うまな ざし」が、異和感な く、 自我 親和的 に内化 ( i nt e r nal i z at i on) ・ 定着 した ことを 示唆す る。 ちなみ に社会 化 とは、 当該社会 ・ 文化 ・ 役割セ ッ トに対す る適応要件の内化過程 を謂 う。

3 ) 「内面へのまな ざ し」か ら「 視 点 ・ 座標 系転換」 へ

「 内面‑ のまな ざし」は、まず、自他 の内面 を尊 重 したアサーテ イブな関係 を作 る構 え‑ の 「 視点 転換」(Ⅰ)をもた らし、次 に、不登校像 の第 2 次 転換 と学校的価値か らの離脱 ( Ⅳ) とい う 「 視点 転換」 に展開 した。加 えて、共行動 ( Ⅱ) も支 え あい (Ⅰ) も、地位標高差 の平準化 としての 「 地 位標高差変換」である。実 は、 1 )項で見た役割 転換 も、「 他者の内面‑ のまな ざし」も、困惑 を機

にした 「 視点転換」その ものである。

これ ら多 くの 「 視点転換」が波状的重帖的 に体 験 された ことが Fl の特徴 である。 Fl が最 も成長 感が強 いの も当然であろ う。 しか も、 これ らの転 換がそれぞれ クラスター として現れた ことは、「 斜 めの関係」構築 の充分な条件が、明瞭なゲ シュタ ル トを持つ体験統合体 として構造化 されて内化 し てい る ことを示す。

4) クライア ン ト中心的価値態度への転換 と、尊 重 ・共感 を基盤 と した率直な 自己開示

「 他者の内面‑ のまな ざし」は、他者の感情 に焦 点 を合わせ、受 け留め ・読み とりを可能 にす るま な ざしである。 これ は、 自他 の内面 を尊重 したア サーテ イブな関係 (Ⅰ)や、葛藤 を抱 える通室生 に対す る受容性 ( Ⅳ) と併せ 、Roge r s の言 うクラ イ アン ト中心的 ( c l i e nt ‑ c e nt e r e d) 態度‑ の転換

と言 うことがで きる。 この転換 を基盤 とした、「 素 ( ス)の 自分での関わ り」、即 ち、率直な 自己開示 が、通室生 との 「 楽 しみなが らの共行動 」 (Ⅱ) を 可能 にさせた よ うである。

5) 学校的価値か らの離脱

「 内面‑のまな ざし」は、一見明 るい通室生の背 景 に学習 に向きあえぬ葛藤 を感知 させ、不登校像 の第 2次転換 をもた らしただけではない。確立 し た 「 内面‑ のまな ざし」 と尊重的構 えが、その対 極 としての、個の尊重 を欠いたまま外面 に対 して 規範で迫 る学校的課題、学校的価値 を相対化 させ る。それが 「 Ⅳ.不登校像の変化 と学校的価値か らの離脱 による、受容性 ・耐性」 として現れた と 解 され る。

6) Flの総括 とエ ゴグラムAの意味

要す るにF lでは、指示 ・指導者役割で関わ っ た失敗感や通室生 の反応 による困惑 といった 自己 不確実感‑の直面 化 と、それ に後続す る役割模索 とを起点 に、学校的価値か らの離脱 も含め、多 く の面で 「 視点転換」が生 じ、「 斜 めの関係」もとれ る対人専門職、即ち、《不登校や学校不適応 に有効 に対処 できる対人専門職 としての教師》‑ の社会 化が進行 した と言 える。 この過程 を、「 内面‑ のま な ざし」の発見 と定着 を通 した、指示 ・指導者役 割か ら共行動者役割‑、 さらにクライアン ト中心 的カ ウンセ ラー役割‑の役割転換 の過程 と括 るこ

ともで きるであろ う。

さて、サポー ト初期 に TEG 低 A であった Fl が 指示的役割 を とって しまったのは、「 斜 めの関係 を とるよ うに」 とい う事前指導の理解 とそれ に沿 っ た 自己統制が困難 だった ことを意味す る。 これは、

《社会 化阻害 因 としてのエ ゴグラム低 A》 の例証 である。 にもかかわ らず、 F lでは、失敗 を起点 に社会 化過程が進行 しただけではな く、派遣 2年 目の 4月 には、Aの上昇が認 め られた。失敗 一 自 己不確実感‑ の直面化 も、「 内面‑ のまな ざし」も 役割模索 も、Aに由来す る もので あ るが、Aの促 進要 因で もある。 自己不確実感‑ の直面 と役割模 索が、失敗感か らの回復 のみな らず、Aの上昇 を

もた らした と考 えて よいであろ う。

Ⅴ‑3 他 5 事例 における社会化

ここでは、①社会化進行の契機 としての 自己不

確実感‑の直面化 と役割模索、② 「 内面‑ のまな

ざし」 の内化 ・ 定着、③多 くの 「 視点転換」、④ ク

ライアン ト中心的価値態度‑ の転換 と、尊重 ・共

参照

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