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レーザ通信における変調法

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Academic year: 2021

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113

レーザ通信における変調法

宮 田 豊 夫*

Modulation Method for Laser Communication

TA

 The spread−spectrum modulation systems for laser communication are discussed to transmit laser in the optical fibers or air.

1. まえがき

 電話のアナログ伝送がまだ多量に行なわれていて,中継点で故意の傍聴を可能にして いる。しかし電話のPCM化が進められ,データ通信の拡大,ファクシミリの高速化,画 像の高品位化など,通信のディジタル化に伴って秘密性の高いパルス高速広帯域伝送を 要求される。このため副搬送波を高い周波数帯域に選定できるレーザが伝送媒体として 有効となってくる。

 レーザ通信においては,これらの基底帯信号によって副搬送波を時分割多重変調され た変調波で,レーザ変調が行なわれる。一般には通信内容の秘密性が十分に守られてい るが,中継点で故意に傍受解読されることが全く不可能とは言えないと思われる。高度 の秘密性を要するときにはスベクトラム拡散変調を副搬送波周波数帯に適用することが 有効ではなかろうかと考える。大気中のCO2レーザ伝送による通信のときと, GaAs系 レーザを石英系光ファイバで伝送する通信とにつき検討を行なったことを報告する。こ れに伴い,より高い周波数に応答できるCO2レーザ検波器を検討した。

 2.スペクトラム拡散変調

 スペクトラム拡散変調は衛星を使っての中継通信における同一周波数帯の多重使用

(マルチプルアクセス)の目的1)とか軍用に使用され,直接拡散(以下DSと記す)とか周 波数ホッピングおよびその複合などが使われる。あるいは精密レーダにチャープ変調と

して使われる。

 通信情報の1個パルス内に数十個以上の割合で擬似信号パルス列(以下PN符号と記 す,pseudo noise)を用いて情報パルス列とPN符号との積を伝送する方法のうち,符号

(2)

114

1と0(符号Gは電気的には一1の位相として扱う)に対し180度の位相差を対応させる DS法(direct sequence)が利用できよう。すなわち特定送受信局間にPN符号を予め設 定し,また任意の時間後にその符号系列を更新する手法により秘密性を高くしうる。

 図1の単パルスをフーリェ変換すれば

      竺念「∫(be Wt dt=EτSIII・x}   (・)

で表わしうる。

 搬送波(仮りに振幅E=1とおく)cosω。tをパルス幅τで切り取った波では(図2a)

       S(t)≒㌃∫1°°F(ω)・・・…d・

       ≒、顯穿ど)A・・c・・ω・・    (・)

で表わしうる2)。すなわち正弦波形の集合となり,図2bのようにfcの前後一〇。から

+。。までの周波数を含むが,両端の周波数fc±1/τの主ローブにエネルギーの90%が 集約されている3)。ただし(2)式計算では虚数部を除いてある。

 中継点での傍受解読の困難性を増すためには搬送波抑止形で送信する。すなわち図3 の平衡変調器が利用できる。図において,いま仮りにPN符号の代わりにIl cos n tを入 力し,搬送波入力トランスの出力をvcosω。tのコイル2組とし,リング変調器の出力の

・ト1

図1

−輪士

(a)

F(u)

1°11・≒Sc

  ︸女・三

∫づ

θv

2

こ翻・

(3)

トランスー次巻線電流(図のil, i2)を求めると次式となる。リング変調器を構成する半 導体整流器は同一特性をもち,2乗特性をもつとする。aは整流器特性に関する定数とす

る。

       ;::㍑:9191t;::霊;:}      (3)

 変調出力電圧は定数をんとして

      Vm=k(iエーi2)=4kav V cos (o,t cos S) t      (4)

となり,角周波数ω、±Ωの余弦波から成る。

 次にPN符号入力のとき,そのフーリエ変換した値をF(ω)とすると次式となる。

       ロ

       v・°clノ、Σ..F(ω・)…c・・t…ω・r       (5)

F(ω)は,PN符号の1と0に対し電気的にはパルス+1と一1に対応する値であるか ら・図3でのそれぞれの出力は位相反転に対応する(phase shift keying,略してPSKと いう)波となり,VmもPSK波となる。

 PN符号発生器として少ない段数のシフトレジスタで構成される例として図4では4),

レジスタ5ステージのうち2ステージを加算(2個の入力が符号異なるとき1,等しいと き0を出力とする)した値をレジスタ入力へ帰還することにより,右端出力から25−1 ニ31個の符号列出力がクロック駆動して得られる。

 PN符号と情報パルス列との積で搬送波を変調するには前述の図3の平衡変調器を用 い,入力搬送波を情報で位相反転(PSK)しておくか,あるいは情報1→0,0→1ごと にPN符号をそっくり位相反転させるなどの方法を用いる。

 PN符号化の簡単化された例として,情報1個パルスごとにPN符号列を繰返す場合 について,受信側のブロック図の図5では4),受信波と自己PN符号との相関を扱うため 同期フィルタ等を用い情報パルス1個に対応した三角波形1個(同期すればPN符号が

鵠盗孟o...

諺膓タ

図4

ガま  ノぐルス

路へ)

(4)

116

除かれ,情報パルス幅より著しく時間集約した積分波形)を得るようにし,同期検波器コ ンパレータにより情報パルスの位相正負に対応した出力をつくる。実際には秘密性を高 くするため,送信側で多数のPN符号列のメモリを用意し,受信側ではこれに対応しプ ログラム作成形同期フィルタを用いて電子的に送信PN符号に対応する方法を用いる。

 PN符号用同期フィルタとして固体音響振動表面波の直線性伝搬特性と圧電効果を利 用した図6の構造の例がある4)。図の(a)において励振トランスジューサTの伝搬長さ 方向寸法と,符号発生トランスジューサA,B, C,…の相互間隔を等しくする。 PN符 号の1101……1に応じ,A, B, C,……それぞれの電極を図のような構造とする。イン パルス入力によりTで発生した音響振動表面波は右へ進み(左進行の振動は吸収体で 除かれる),A点トランスジューサに達すると符号1に応じた極性の電気的振動電圧を 生じ出力ブスバーへ伝える。表面波がB点トランスジューサに達すると符号1に対応す る極性の振動を出力ブスバーへ伝える。同様にして図上部のPN符号に従い表面波がC 点に達すると,AやBとは逆相振動を発生し出力ブスバーへ伝える。以下同様にして出 力波形は(b)図となる。右端に表面波吸収体がおかれる。

 この例ではPN符号が固定されているが一般には送受信間で打合せにより変更を行 なうため,プログラミングできるものが使われる。すなわちPN符号発生用各トランス ジューサの電極を同じ構造とし,その電気的出力と出力ブスバーとの問に極性転換スイ ッチ(電子的)をおくことにより,即応したPN符号を用意できる。

 送信情報パルスの正負位相に対し受信側で相関をとるにも固体音響振動表面波の利用 が考えられている。この場合には音響振動表面波の伝搬の非直線性(基板にLiNbO3な

どを用いて2乗特性を得る状態で使う)を利用し,基板の長さ方向両端のトランスジュ

サへ電気的信号f,(t)とf,(t)とを加えると音響振動が伝搬し,基板長さ方向中央部の 電極のところで両音響振動の相互作用の結果,両信号同相ならばピーク出力をこの電極 からとり出しうることなどが考えられている。

 実際上は,はじめに仮定した情報1個パルスごとにPN符号列をあてるのではなく,

もっと複雑にして解読しにくくする必要がある。

3.CO2レーザの変調

大気中伝送の赤外線波長10.6[μm]のCO2レーザを変調するには,音響光学効果の利

 PN符号

[、 、

0

曹糠力

(a}

聾灘力

1  1  0

    一一t 出力電気振動

 波形

  (b)

(5)

用が有効である。圧電素子LiNbO3などの薄い単結晶板を音響振動伝搬媒体Geの棒へ 導電接着剤で圧着した構造で,LiNbO3の自由表面とGe圧着部間へ電気的入力の導線 をそれぞれ導電接着剤でとりつけられる。Ge棒へCO2レーザを入射させ回折赤外線出 力を利用する方法を既報した5)。動作周波数を高くするため,LiNbO3の厚さを薄くする 加工限界は現在のところ0.04[mm]付近であり,このとき中心周波数は約100[MHz]の 超音波振動を生じるが,機械的強度の考慮も必要である。

 副搬送波周波数として100[MHz]をとり.情報パルスとPN符号との積で変調した DS変調の応用について考える。このDS変調波で上記のLiNbO3による圧電素子を励 振することになる。いまPN符号のパルス幅を仮りにτ=0.1[μs]とするとDS変調でス ペクトラム拡散された主ローブの最大周波数は

       100・10・+⊥−110・10・[H,]

       τ となり,LiNbO3圧電素子の振動可能領域にある。

 中継点においては,受信したCO2レーザをHgCdTeの光起電力または光導電素子で 受信するか,または電波としてアンテナ受信しウォームキャリヤダイオードかショット キダイオードで検波する。検波されたDS変調波は波形成形して増幅を行ない,送信用 CO2レーザを前述の方法で同様に変調し次の伝送区間へ送信される。

 受信点においては,2.で述べた方法あるいは文献2)を参考として,PN符号の同期およ び追跡を行ない,情報パルスの正負判定などをへてもとの信号へ復号される。

 点接触ウォームキャリヤダイオードとして,基板にGeを用いた検波器6)よりは移動 度が大きいn形GaAsを基板に用いれば,100[MHz]より高い副搬送波周波数に応答で きると思われる。基板n形GaAsはGeのとき用いられるCP4でエッチングを行ない,

蒸留水洗して乾かし,片面へIn蒸着し,この面をNi円柱ポストへ導電接着剤で圧着さ れる。直径10[μm]のタングステン線の先端をNaOHの1規定水溶液により電解エッチ ングして鋭い先端円錐形をつくり,蒸留水洗して乾かし,円錐部にNiメッキを行ない蒸 留水洗ののち,さらに先端部のInメッキを行なって蒸留水洗乾かす。このウィスカ先端 部をn形GaAs基板へ接触させ,三角波パルス電圧を0.2〜0.5[V],繰返し1[kHz]で短 時間ウィスカと基板間に加えてボンドを行なう。このダイオードの静特性の例として図 7が得られ,非直線性を示し,CO2レーザの検波目的に使いうる。電流測定にはエレクト

〔μA〕

0.2

OJ

〇.3 〇2 〇1

0 OI 02    03

電圧〔v〕

〇.1

〇.2

(6)

118

ロメータ(アドバンテスト社TR8601)を使用した。

 n形GaAsショットキダイオードは先端円錐形にエッチングされた径10[μm]のタン グステン線を用い,この先端をn形GaAsへ点接触して構成する。静特性の例として図 8が得られ,CO2レーザ検波に使用しうる。

 これらのウォームキャリヤダイオードとショットキダイオードとはマイクロ波領域の 検波器としてすでに使用されているもので7)8),CO2レーザの変調用副搬送波周波数でも 十分に動作しうる。

 CO2レーザ発振管の反射鏡間約1050[mm],管電流10〜25[mA]において管電圧は

5.2[kV](4.4Torr),6.0[kV](5.6Torr)でほぼ一定である。管電圧の刻々の変動と管電流 変動はレーザ発振に微細な雑音を形成するので,DS変調の場合でもS/Nを悪くする。

とくに規則性の振動波形が存在するとレーザ出力の変調操作に影響を生じる。このため 図9の回路で管電圧を分圧し微分回路を使って端子1で観測し,管電流を抵抗R の電圧 降下から微分回路を使って端子2から観測した。R 《R,とし,分圧抵抗Rは管の見掛上 の抵抗より十分に高い値にとる。端子1または2からオシロスコープで観測したが正弦 波的振動は観測できなかった。レーザ管の陰極付近ではスパッタリングで管壁黒化が著 しく,空間電位に影響を与えているようで,不規則的な管電圧管電流の変動を常に観測 した。したがってレーザ検波出力にも不規則雑音が検出されている。

濫.

〔μA)

02

01

〇.3 〇2 〇1

o OI 0.2 0.3

電圧〔v〕

〇1

〇2

図8

水 ガス NaCl窓 } ・r・

1水

R

一一←←一一

ピ1  R

(7)

4.GaAs系レーザの変調

 情報信号で変調されたGaAs系レーザを石英系光ファイバで伝送するには,単一モー ドファイバで約30[km]ごと,集束形(グレーデットインデクスモード)ファイバで約 40[km]ごとに中継を行なわれている。この場合変調レーザから,いったん副搬送波周波 数帯域の電気的信号に戻して増幅し,波形成形して,送信用GaAsレーザ発振器を変調

(情報電気信号をレーザ電源と直列に入れて変調)して次の伝送区間へ送信される。この 中継点での傍受を困難にするためには,発信局側でDS変調を行なうことが考えられる。

受信局では送信PN符号と同期をとり,追跡し,復号を行なうこと前述同様である。

 またGaAs系レーザ発振器は材料の選定によって図109)のように発振波長をいろい ろとりうるので,10個以上の波長帯のレーザを同時に1個の石英系光ファイバで伝送で きる。したがってPN符号に応じ不連続的に波長を変えることすなわち波長ホッピング を選定することが可能と思われる。中継点および受信点では光分波器を必要とする。光 分波器にはプリズム(図11)とか,回析格子(図12)とかが用いられよう1°)。波長多重度 が少ないときには干渉膜フィルタでも可能であろう。このようにして分波された各レー ザから副搬送波電気信号に戻され増幅され,次の伝送区間のレーザ電源を変調するのに 使われる。受信点では送信側PN符号と同期をとり,情報への復号が行なわれる。

トー■■iln(As.Sbi−s)yPi−y

ト■■■イGa.lni−tASyPi−y/lnP

 司Cai−.AI,As/GaAs

0.1

ト■叫(Al、Gai−s)ylni−yP/GaAs H(Al.Ga:−z)ylni−yP/GaAs    1      10

   波 長 μm

100

図10半導体ダイオードレーザの発振波長域〔光産    業技術振興協会光技術動向調査報告書1(昭   和60年)より引用〕

w

(8)

120

三; レンズ

λ1,

格子

図12

 GaAs系レーザの検波器としてはアバランシェホトダイオードなどが使われる。

 石英光ファイバでは1.55[μm]で最低損失0.2[dB/km]が得られているが,波長 2.0[μm]以上では減衰著しい。この波長以上で低損失のものとして,ふっ化物光ファイバ 11)12)(波長2.63[μm]で0。7[dB/km])が実用となる可能性をもつ。この場合レーザ発振源 にこの波長付近のものの選定を必要とする。この波長でもDS変調は可能と思われる。

5. ま と め

 情報で変調されたCO2レーザの検波目的にn形GaAs基板をもつウォームキャリヤ ダイオードとショットキダイオードの試作を行ない,非直線性静特性を得た。なおn形 GaAsとInのオーミック接触別例は文献13)にもある。

 大気中伝送のCO2レーザと光ファイバ伝送のGaAsレーザについて,中継点での故 意の傍受を困難にする手段として,スペクトラム拡散変調を副搬送波周波数に適用する

ことの提案を述べた。

 関連する部分的研究を行なった昭和62年度と63年度卒業研究学生の労を多とする。

参考文献

1)角川,塚本:電子通信学会誌Vol.65(1982)No.10 pp.1053 2)尾崎弘:過渡現象論,2版,共立出版,昭57

3)R.C. Dixon(立野,片岡,飯田訳):最新スペクトラム拡散通信方式,ジャテックス出版,

  昭53

4)D.P. Morgan:Surface−IVave Devices for Signal Processing:ELSVIER, Amster・

  dam,1985

5)安岡,高橋,宮田:電子通信学会論文誌Vol. J63−C(1980)No.5pp.287 6)安岡,原川:レーザ研究Vol.10(1982)pp.200

7)菊池,古川:電子通信学会論文誌Vol. J64−C(1981)No.10 pp.658 8)植之原道行:マイクロ波半導体デバイス,コロナ社,昭46 9)前田三男:量子エレクトロニクス,昭晃堂,昭62

10)福光於菟三:光エレクトロニクス入門,昭晃堂,昭62 11)高橋:電子情報通信学会誌Vol.70(1987)No.3pp.254 12)岩崎裕:オプトエレクトロニクス材料:電子通信学会,昭58

13)R.K. Willardson, A. C. Beer:Semiconductors and Semimetals, Vol.15(Contacts, Junc−

参照

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