【学位論文審査の要旨】
1 研究の目的
1964年に複素解析の手法を用いて複素補間という概念がカルデロンによって提唱され た。複素補間の定義は大きくいって第一、第二の二つの概念がある。しかしながら、従来 の解析ではルベーグ空間を扱うことが多く、この場合は第一と第二は同一であると証明さ れているために、比較的平易である第一複素補間にのみ着眼されることが多かった。しか しながら、2014年にLemarie-Rieussetにより,モレー空間においては第一と第二の複 素補間の出力は別であると証明された。第一複素補間についての部分的な結果は Yang,
YuanとSickelによって得られていた。本研究の目的は以上のことを踏まえて、第一複素補
間と第二複素補間の違いを明らかにすることである。
2 研究の方法と結果
モレー空間に対しては上述の通り,Lemarie-Rieussetにより結論が得られているので、そ のほかの関数空間を考察することにする。つまり,関数空間をいろいろ取り換える方法で 第一、第二複素補間の違いを明確にするという戦略を取ることにする。関数空間の中でも 特に重要なのが、モレー空間の閉部分空間である。この閉部分空間という概念はルベーグ 空間ではなかなか重要性が認知されないが,モレー空間に移ったことによりその重要性を はっきりと理解できる。すなわち,台コンパクト性,関数の有界性,滑らかな関数によっ て近似されるかどうかなどがモレー空間では決して自明ではなく,そのような良い条件を 有するかどうかは閉部分空間を通じて記述できるからである。モレー空間はパラメータが 二つあり、そのことにより、いろいろな関数がモレー空間の元としてあらわされる。典型 的な例はべき関数という|x|aである。ここで a は負の数である。この関数を頭打ちして得 られるmin(|x|a,1)や遠方での値を0に打ち切る|x|a-min(|x|a,1)はどちらもモレー関数 であるが,このような関数が種々の反例を構成する。関数空間の違いの検出には上記のよ うな関数が主要な役割を果たすが,上述した二つの複素補間の違いを検出する際に重要に なるは1964年のカルデロンの構成である。すなわち第一補間は関数 f が与えられると
|f|のべき|f|αzを材料にして正則関数を構成するのに対して,第二補間では第一補間で考 えた関数の線積分を使うことになる。
実際に,上述の方法で研究を進めていった結果,関数|f|の大きさが複素補間において重要 であることが分かった。上述の方法ではazをzで積分することになるが,分母にlog aが現 れることからわかるように|f|の大きさが第二補間では思わぬところで影響を及ぼす。
Hakimは上記の反例や関数fの絶対値の対数log|f|を用いて,モレー空間の閉部分空間に
関する次のような結果を得た。第一複素補間に関しては,関数を上から打ち切ってモレー 位相で近似できるような関数として第一複素補間が特徴づけられるという成果を得た。
Yang,Yuanと Sickelによって得られていた第一補間の特徴づけと比べるとより内在的に 表示できている点が重要である。つまり,インプットのパラメータとは独立な表示ができ ていることが重要である。一方,第二複素補間に関しては、予想もしなかったことである が、関数fを|f|のレベル集合を用いて上下から打ち切ってモレー位相で近似できるような 関数として第二素補間が特徴づけられるという成果を得た。
以上のことからわかるように複素補間では関数の絶対値が重要であることがわかるが,そ のことを鮮明にするためには第一パラメータ p が関数φに一般化されたモレー空間が有効
であり,Hakimの多くの結果はこの一般化されたモレー空間にまで拡張されている。なぜ,
一般化されたモレー空間が有効かというと,一般化されたモレー空間はL∞空間を含むよう に関数φを選んだり,L∞空間に含まれるように関数φを選んだりできるからである。すな
わち,Hakimの一連の結果により複素補間は第一、第二ともに関数fの絶対値|f|について
の操作であるという結論が得られた。さらに,この結論を裏付けるように,論題に挙がっ ているそのほかの関数空間でも同じ結論が得られた。
3 審査の結果
Hakimの単著の部分に関してもう少し深く説明したい。共著部分はモレー空間とモレー空
間の補間であるが、単著部分ではルベーグ空間の特別な場合のL∞空間とモレー空間の補間 である。実際に,Hakimによって得られた結果を用いると直ちに共著部分の結果が得られ る。これは二つのモレー空間と「モレー空間1」,「モレー空間2」とおいたときに,「モレ ー空間2」は「モレー空間1」とL∞空間の中間にあることが Hakim によって示されたか らである。このHakim の単著部分の持つ意味はこれだけではなく、「モレー空間1」,「モ レー空間2」の間はratio conditionと呼ばれる特殊な仮定が必要であったが、それがどう して必要になるかを暗示している。つまり,パラメータの自由度の高い「モレー空間1」
と固定されているL∞空間の中間にある「モレー空間2」はカルデロン積と呼ばれる操作か ら作られるために、束縛を受けてしまうのは必然と考えられるということをHakimの結果 は示唆している。とくに|f|のレベル集合に関する結果は重要であり、今後も研究対象とし て多くの人に研究されるであろうと推察される。以上の理由から第二複素補間についての
Hakimの結果は今までは知られていないために、新しい知見を与えていると結論付けられ
ると判断した。
4 最終試験の結果
単著論文2編は、著名な国際学術雑誌及び国内学術雑誌に掲載予定であり、そのほかにも 共著論文を含め、既に総計18編の研究業績がある。上記のHakimの業績は多くのモレー 空間に関する研究に影響を与えてきた。補間理論を通じてモレー空間や一般化されたモレ ー空間について研究していたが、その研究成果を発展させて、楕円型微分方程式の解のア
プリオリ評価を調べた。また、チェコ、アメリカ、中国、韓国などの諸外国の研究集会、
ワークショップなどにも参加して、海外においても研究成果は十分に高い評価を得ている。
招待講演は10数件ある。最終試験は1月24日に実施され、判定会議の結果、非常に優 秀であると結論付けられた。