経営情報システム展開と組織,タスク,人間
その他のタイトル The Evolution of Management Information Systems ; Organization, Task and People
著者 広田 俊郎
雑誌名 關西大學商學論集
巻 24
号 1
ページ 27‑56
発行年 1979‑04‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00020948
経営情報システム展開と 組織,タスク,人間
広 田 俊
郎
I .
序ますます拡大する情報処理量,相互関連する複雑な経営システムについて の管理情報の必要性の増大,などを背景に,コンピュークの処理能力,記憶 容量,などの目覚しい進歩や,人件費の高騰,などの要因が加わって,コン
ピューク化された経営情報システムの展開が,質的にも,量的にも,着実に 進行しているように思われる。そして,この進行は,切迫した諸企業のニー ズを背景に,展開されている,との印象が強く持たれる。
それだけに,このようなコンピューク化の展開を規定する条件として,各 企業にとっての一般的環境をなす, コンピュークの性能向上や人件費の高 騰,という要因に着目するだけでなく,各企業,あるいは産業に特徴的なニ ーズに着目することは,経営情報システムの現状の理解と,システム実行へ の示唆とに,より有効な視角を提供するのではないか, と思われる。
そこで,われわれは,企業の情報処理上のニーズを規定するものとして,
企業のクスク環境の特性をとりあげたい,と思う。このように,企業の側の 情報処理のクイプを規定するクスク環境の特性ないしクスク特性の議論を導 入することによって,情報処理のニーズの面から見た,情報システムの展開
28(28) 経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊)
についての議論に焦点を当てられるのではないか,と思われる。そのような 立場に立った議論の紹介と,再展開が,本稿の課題である。
そのために,まず, I[.コンピューク化の組織構造へのインパクトの問題提 起,において,コンピューク化の進展の組織構造へのインパクトについての Whislerの議論を紹介し,Ill.状況要因と情報システム,において, Whisler
自身の,コンピューク化の程度は,そのタスク特性に依存するものだという contingency approachによるまとめを紹介し,
1 V .
コンピューク化の進展と組織,において, Edstrom& N augesが行った, フランス企業16社にお ける,コンピューク化の進展についての,通時的研究を紹介する。そして,そ
*
1こでの議論をふまえ,われわれの研究の議論の再検討を行いたい,と思う。
]I. コ ン ピ ュ ー タ 化 の 組 織 構 造 へ の イ ン パ ク ト の 問 厘 提 起 コンピューク化が及ぽす組織構造や人間行動へのインパクトについて,様 々な研究がなされてきたが,その一つの先駆となったのは Whisler,T. L.
* 2
の TheImpact of Computers on Organizationsであった。彼は, 保険 会社の,コンピューク導入以前と,•以後の組織構造を比較するという形で,
コンピューク化の組織構造への影響が,様々な次元について調査を行った。
たとえば,(1)雇用者の数については,事務員の数,監督者の数が減少すると し,経営管理者レペルでわずかに増加するだろうとされた。*3
また,(2)スパン・オブ・コントロールについては,(1)の関連から,減少す るであろうとされた。そして(3)組織階層については,通常,組織の成長とと
*l広田俊郎 [1978J「企業の情報戦略と状況要因との関連について」,関西大学商学
・論集,第23巻第5号。
*2 Whisler, T. L.,〔1970],The Impact of Computers on Organization, Praeger. 周知のように既に1958年, WhislerはLeavittとコンピュータ化の経営に及す
ィンパクトを予想して論じている。 Leavitt, H. J. & Whi辿ler, T. L.〔1958]
"Management in the 1980's," Harvard Business Review, November‑December, 1958.参照
*3 Whisler, T. L., [1970] p. 45参照。
もに,組織階層は,通信内容の増加のために,増大するであろうが, コンピ ュータが人間に代替することによって,減少するであろうとされた。そして (4)部門化のパターンとしては,(イ)情報処理活動のアグリゲーション,(口)部門 の合同,(ハ)ヨコ型組織 (paralleldepartmentation) から職能制組織(タテ 型組織)への再移行という状態が,コンピュータの情報処理のスビードと貯 蔵能力の故に見られる,とされたのであった。
このような主張の妥当性が普遍的なものでないことは, Whisler自身が
. * 4
contingency analysisを展開していることからも明らかであるが, その他 にも色々な問題点を持っている,思われる。それを示すためにも, Whisler の情報システムヘの contingencyapproachを検討しよう。
m. 状 況 要 因 と 情 報 シ ス テ ム (1) 枠 組
Whislerが,情報システムの contingencyanalysisを展開する際の基礎
* 5
となる,分析枠組を図に表わせば次のようになる。
決 定 状 況
●不確実性の程度
●決定の反復度
●情報処理最
, ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ,
i
I 組 織コンピュータ
I
1 人 間L--- —•-- ‑ . . .
*4 Whisler, T. L.,〔1975)pp.246‑267参照。
*5 Whisler, T. L., (1975J P.246参照。ここに示した図は, Whislerの主張をより 明示化できるように,われわれが修正したものである。
30(30) 経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊)
すなわち,決定状況の差異に応じて,コンピュークの利用の展開のされ方 ゃ,それが組織に及ぽす影轡が異なるであろうが,その差異はどのようなも のであるかを調べようとしている。その際, 何故,決定状況と参照させら れて,組織一人間ーコンピュークの関連が調査されるかと言えば, Whisler は,種々の情報処理こそが,経営過程の中心をなすものとしており,そして その情報処理ないし意思決定の個々のモードを特徴づけるのは組織一人間一 コンピュークの関連だからであるとするからである。
ところで組織一人間ーコンピュークの関連は Whislerによって次のよう に考えられている。すなわち,人間は合理的情報プロセッサーないし意思決 定者としては限界を持ち不完全であるので,組織がそれを補うものとして考 えられる。そして,更にコンピュークも個人の限界を補うものとして考える ことができるという。*6
このようにして,人間は組織と同様,情報処理ないし意思決定というクス クにおいて,コンピュークによって代替されるか,補完されるか,という形 での問題に直面することになる。そこで,コンピュータが,組織と人間に及 す影響を,決定状況の相遮毎に見ていこうとするのである。そしてここでは 決定状況は, 1)決定における不確実性 (uncertainty)の程度, 2)決定の 反復度 (repetitiveness), 3)処理される情報量 (informationprocessing
*
7 load)'という三つの次元でとらえられている。そして,各状況のもとでの,コンピュークー組織一人間の相互関係を示そ うとするのである。その前に,状況を規定する各次元の変数と,それが意思 決定,ないし情報処理に及す定性的ないし定量的影響が,個々に考慮される。
(2) 状況の諸次元と意思決定 a)不確実性と意思決定
*
8決定状況を取り巻く不確実性としては Thompson (1967〕が示したよう
•6 Whisler, T. L., (1975) p. 2訊参照。
•7 Whisler, T. L., (1975) pp.259‑264参照。・
*I! Thompson, J. D., (1967) Organizations in Action, p. 86参照。
経営梢報システム展開と組織, タスク,人間(広田俊) 31)31 に,二つのクイプを区別することができる。最初のものは,可能な結果につ いての選好に関するものであり,第二のものは因果関係についての信念に襲 するものである。すなわち前者は,ある意思決定状況において,その意思決 定による結果についての選好が明確であるか,不明確であるかというもので ある。具体的にどのような結果が生ずるかわかっていても,それに対してど のような選好を与えるかが,明確となっていない場合が,組織過程にしばし ば現れるという事態がイメージされている。
また,後者は,ある結果がもたらされる因果関係についての理解が確実で あるか否かというものである。
そして, Thompsonによれば,このような二次元についての二分法で示さ れる四つのセルのそれぞれ
に適合した,意思決定戦略 が存在するものとし,それ ぞれを計算戦略,判断戦略,
妥協戦略, ィンスピレーシ ョン戦略と呼んでいる。
Whislerは こ の よ う な
Thompsonの 議 論 を コ ン
因果関係につ いての信念
確 実
不確実
* 9
可能な結果に ついての選好 明 確 不明確 計 算 妥 協 戦 略 戦 略 判 断 インスピ
レー ン
戦 略 ノ ョ戦略 図ー2
ピューク使用の意思決定という観点から見直す。そしてコンピュータが意思 決定に利用される段階としては,可能な結果についての選好の不確実性が社 会的,交渉的プロセスを経て除去された後の段階であろうとする。そこで不 確実性としては,因果関係についての理解に関するものだけがとりあげられ る。したがって,組織が採用する戦略タイプはどのようなものかに言及すれ ば,計算戦略か判断戦略かのいずれかを取るということになる。
ともかく,決定状況の一つの次元としての因果関係についての信念の不確 実性が示されたわけであるが,残る状況を特徴づける他の二要因として,決 定の反復度 (repetitiveness)と情報量が,次に考察される。
*9 Whisler, T. L.,〔1975]pp.257‑258参照。
32(32) 経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊)
b)反復度,情報処理量と意思決定
まず,決定の反復度という次元について考察しよう。決定状況がしばしば 繰り返されれば,意思決定が質的に変化していくことが考えられる。それだ けでなくコンピューク使用の経済性も変化する。すなわち, 1回限りの分析 やプログラミングのコストが相等額に達する時,コンピューク化が慎重にな されるというようにコンピューク使用の反復度が,コンピュータ化の一つの 鍵となる変数であると言える。*10
次に,情報処理負荷という次元について述ぺよう。コンピュークを用いて 大量の情報が処理される場合に最も経済性が発揮されるクイプの情報処理ク スクが確かに存在する。*U. しかし, ここで情報処理自身の大きさが, しばし ば,計算の経済性が高まった必要限度を超えて設定されてしまうという状態 に注意が喚起させられている。
(3) 状況要因の組合せ
以上で示したように,不確実性,反復度,情報処理負荷,という三つの状 況次元を組み合わせて八つに区分された状況を考えることができる。*12
そして,それぞれの状況 高反復度 低反復度 は,異なる意思決定,情報 因 果確 実 口 く 確 実 確 実因,果
i
不 確 実処理クスクを課するものと されている。
一般的な予測としては 1) コンピューク利用は
左上の状況 (I, JI)
情 報 高 処理一一 負 荷 低
W珊
'
V V l l
︐ 3
̀
ll"I I I I
で最も一般的であり,右下の状況(渭,圃)では余り見られないだろう。
2) 意思決定のための応用としては, 1, I, ][, lVにおいて一般的であ り,情報処理のための応用としては,
1
,I,v,
"で最もよく見られる•10 Whisler, T. L., 097的 p,260参照。
*11 Whisler, T. L., (197印 p,261参照。
•12 Whisler, T. L., (197的 PP.261‑265参照。
であろう。
3) 個人に集団に代ってコンピュークを代替するという働きの影響はI,
I , Y
という状況(高い情報負荷と高い確実性あるいは高い反復度)で 最も強いであろうし,補完の影響は, I,1Vという状況(高い不確実性と高い反復度)で最も強いだろう,ということが述べられている。*13
(4) 各状況における情報システムの諸局面
以上のような一般的議論をふまえて,個々の状況の中で,コンピュータ利 用とその組織的帰結などについての, より特定した予測が Whislerによっ
, *14
て提出されている。その内容は表ー1に示されている。その図において, A 列は状況を示し, B列はそのような状況に適用される種類の活動を示してい る。また,各状況について想定される特有の個人の限界が C列に示されてい る。そして, D列とE列において,この個人の限界に対処するための組織的 対応およびコンピュータ使用による対応が述べられる。更に, F列では,コ
ンピュークの個人および組織に対する代替物または補完物としての機能が述 べられ, G列では組織構造への影響が述ぺられ, H列で組織成果への影響が 述べられている。
(5) 結 論
このような図を示した後, Whislerは次のような結論を与えている。*15
1. コンピュータ・システムの組織構造への影轡は,八つの決定状況の中*16
の一つの状況においてだけ大きな効果をもつ。すなわち
I
という決定状 況に直面した組織において,相当な構造変化が起るであろうとされる。そして組織におけるその部分が,組織の技術的コアであるということで ある。
•13 Whisler, T. L.,〔1975JPP.262‑264参照。
*14 Whisler, T. L.,〔1975Jp.262参照。
•15 Whisler, T. L.,〔1975Jp.264参照。
•16 Whisler, T. L.,〔1975Jp.262参照。このことについて,まず言及されるのは,
このコンピュータ・システムの組織構造への影響というテーマが,従来色々な形 で論じられたからである。
34(34) 経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊)
I A
状況I
B 例I
C 個人の限界I
D 組織の対応因 大量生産,大量輸 時間の幅,知識
古回 果 機能,職務専門化
情 確 I 送についてのロジ
スティック計画 エネルギー サンプリング 高 報 実
処
理
!
実 ジョプ・ショップ 情んとき蹂評報の価柔を翡結に軟お合性ら此 Iと 同 様 多 元 的 負 ・スケジューリン反 荷 ][ グ,ポートフォリ いて, 判断,確率モデル,
オマネジメント, すると 委員会 学生入学事務, ,
復
因 物的プロセス Iと同様
低 果 ][ Iと同様,より低
度 情 確 コントロール い必要性
報 実 処 理
!
実負 Iと同様 委員会,確率モデ
荷 w ?
ル,多元判断
因 単品生産について
古回 果 のロジスティック Iと同様 一時的プロジェク 情 確 V 計画,エンジニア
ト・チーム 報 実 リング設計
低 処
理
!
実 ..負 大規模計画への価 Iと同様 一時的プロジェク 反 荷
"
,格づけ 判断を含むト・チーム,多元復 因
低 果 な し
情 確 Vil ?
度 報 実 処
理
!
実 活動代替案の診断負 と評価において情 多元判断
荷 VJ[ ?
. 報を結合するとき の柔軟性 表ー1
E コンピューク I F コンピューク IG響組織構造への IH組織成果への
による対応 に よ る 代 替 ・ 補 完 影 影響
サイパネティック 知覚と変換の他の 人員の減少 信の頼改報性良とスピード システム, ラージ I. P.と D.M.タ
・ファイル,T.C. スクについて.個 意思決定の集権化 情 プロセッシン
(恒久的) グおよぴ D.M.に
設備 人と組織に代替 おけるコスト削減
ラージ•,,フ.変ィァ換ジイュプルアロ,T. 知 覚 と 変 換 の 他
C.設備 グ の, I.P.クスク 事務員の数の減少 信頼性とスピード ラム,ヴィ ュアル
について,替お個人診て完断個と の改良,コスト削 ディスプレイ,シミ 組翌織に代 . (恒久的)
ュレーション(会話 組に い価 減 よ り 良 い 決 定
システム) 織を補
信頼性が特に重要
Iと同様, しかし とならない限り, Iと同様
Iと同様
不必要かつ非経済 規模は小さい 信頼性が優先 的
シミュレーション
診断的評価におい
プログラム,その よりよい決定
他変換プログラム て個人と組織を補 な し
(会話型) 完
,
定型的な変換プログラムを用いての 事務員と 事務員の数の減少 改良されたスピー データのバッチ処 適度な代替
(経過的) ド,侶頼性
理 (一時的)
適当な T.C.設備 Vと同様 Vと同様 Vと同様 があれば,定型的
変換プログラム
不必要
不 必 要 (I.P.) 実行可能(D.M.)
T.C.=テレ・コミュニケーション I. P.=情報プロセッシング D.M.=意思決定
36(36) 経営情報システム展開と組織,タスク,人間(広田俊)
2. コンピュークの組織成果へのインパクトは,構造に対するよりも二つ の理庄から,より浸透的な効果を持つ。まず第1に,クイプ
I
決定は局 地化されがちであるが,一方,第二に,成果への影響は八つの決定状況 の中で六つの状況で期待され,構造への影蓉は五つの状況でしか期待さ れない,からである。3. E列で示される,コンピュータの対応は,各決定状況に応じて,様々
*
17なコンピューク/テレ・コミュニケーション・システムにおけるかなり の差異をもたらすだろう。その相遮は幾つかの次元で生ずる。まず第1
に,ハードウェア設備,次に,プログラムのクイプ,第3に,相互作用
*18
のモード,などである。
このような結論を示す一方, Whislerは,従来の諸研究についてのまとめ
*19
を示している。
すなわち,組織と個人へのコンピュータのインパクトについての,従来の 諸文献における論争は,各論者がそれぞれ異なる意思決定状況を想定してい た,ということにもとづくものだ,とするのである。それにも関わらず,コ ンピュークの組織内の個人への影善は好しくない性格のものである,という 点で一致していたとする。更に,一致していたのは,人間の,コンピューク による代替の側面に関心が寄せられていた,ということであるとする。それ は初期のコンピュータ使用が,人間行動への代替という結果を生む状況に集 中させられたということに基くのであり,何故このようであったかと言え ば,得られるであろう成果収益の確からしさには疑問があっても,とにかく コスト節約はかなりの信頼性をもって達成されるように見えたからである,
とされる。
*17テレ・コミュニケーション (telecommunication)とは,無線回線や伝送回線を 通じてデータを伝送し,受信する,電気通信のことである。
*18包括的な, コンビュータ/テレ・コミュニケーション・システムについてのクイ ポロジーの必要性が, Whislerによって主張されている。
*19 Whisler, T. L., Cl975J pp.264‑265参照。
経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊) (37)37 一方,コンピュークシステムが人間を補完し,成果を増加させるようにデ ザインされている処では,コンピュークの淮在的純収益は高いだろうが,そ の不確実性のため大幅に割引されている。 それにもかかわらず, そのよう な適応が,ぁちらこちらでなされてきた。
要するに,まず,コンピューク利用が,特定の個人及ぴ特定の仕事へどの ような効果を及すかを分析するには,個人のクスクが,情報処理と意思決定 の双方で専門化させられている程度,職務の情報処理量,反復度,そして不 確実性の性格についての情報,等を把握するための職務分析を行なわなけれ ばならないだろう,としている。その際のボイントとしては,次のようなも のを指摘している。*20
1. 個人が同様なクスクを遂行している幾人かの内の一人ならば,コンピ ューク代替に直面する。
2. 組織の周辺部,情報の取入口に当る所で働いている人は,かなりのク スクの再組織化に直面するが,代替には至らないだろう。
3. クイプ1IとタイプlVを伴う仕事に直面する人(典型的には,スクッフ 部門)は,意思決定をする際にコンピュークを会話的に用いることを学 習する必要がある。
4. 組織のクスクの通常の垂直的統合を与えられたものとすると, トップ は通常,"およぴ圃状況で決定をなすよう専門化する。したがって,彼 らのジョプは,コンピューク導入の結果,ほとんど影響を受けないだろ う。
Whislerは,この種のmicro的予測から,コンピューク導入の影響のmacro 的予測を導くには,組織のコンピューク化の通時的な経過についての諸事実 を明らかにするか,または信念の問題として展開するかである,としている。
そこで, Whislerは,クイプ
I
とクイプI I
状況におけるコンピューク適用が,過去において主要なものであった,というのが彼自身の,以前から表明して いる信念である,と言明している。そして,代替効果が中心的なのは,この
*20 Whisler, T. L.,〔197印 p.264参照。
38(38) 経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊)
状況においてであった,とするのである。そして,将来,管理者がコンピュ ークの人間活動との補完的適用が一般的な領域へ移行して行くにつれて,コ ンピューク介在に伴う組織攪乱は減少するだろう,とされる。また,管理者 が,「技術的コア」における不確実性を減少させるための努力の結果,新し*21
い種類のタイプ
I
, タイプI
の状況が継続的に組織内で硯れてくるだろう,としている。しかし,これらは,新しいタイプであるため,コンピュークに 関連する攪乱を伴わないようなものである。更に,将来の課題としては,注 意の焦点が,コンビュータ代替(主に情報処理クスクにおける)から,コンピ ューク補完(主に意思決定における)に移行するにつれて,管理者への適当な 訓練において,個人の意思決定における認知的側面,集合的意思決定プロセ ス,意思決定における,コンピュークとの会話型相互作用,などについての 理解に強調点をおくようになるだろうとしている。
(6) Whislerの主張の意義と問題点 1) コンピューク・テーラリズム
コンピュータ化が,組織の集権的コントロールを招くだろうとの研究を提 出し,論争を呼ぴ起こした Whislerについて,彼がその議論は必ずしも一 般性を持つものではなく,種々の決定状況の中の特定の1つのクイプに焦点 を合わせたものとして主張したのに過ぎない,としていることを述べた。す なわち,彼が以前示した,コンピューク化が,事務員の減少をもたらすとい う事態は,彼がとりあげたタイプ
I
決定,すなわち情報負荷量大で,反復度 が高く,しかも因果関係について明確である場合には,同様に成り立つとし,しかも,従来中心的な状況はこのような状況だとしている。その意味で,彼 の議論は,彼の以前の研究の条件性を明らかにしたという所に意義がある。
そしてなおかつ,その条件がかなり中心的なものだろうとの指摘を行うこと によって,以前の議論の弁護を行っている,という性格を持っている。
ただし,異なる状況,すなわち,クイプ1Vや冒などうまく構造化されない
*21 Thompson, J. D.,〔1967]参照。
( 状況では,コンピュータが人間に代替するのではなく,補完して,種々の決 定を遂行するものとしている。
このように,異なる決定状況での,異なるコンピュータのインパクトとい う事態の可能性の指摘をしたという点での意義を認めたとして Whislerの 議論の問題点を探ることにしたい。
すなわち, Whislerの議論の問題点は, 人間一組織ーコンピュータの関 連を情報処理効率の面からのみ それもエン ソニアリング的視点からのみ,
しか見ないことである。
このようなクイプの議論は,人間ーコンピュータの関連について次のよう な点に注目する。 たとえば well‑definedな意思決定状況における問題を 解くとき,人間,組織およびコンピュータの計算スピード,記憶容量,等々 が人間相互に比較される。
また ill‑definedな意思決定をサポートする場合,統合された情報貯蔵と 検索のシステムを用いて,経営管理者が会話型のシステムによって問題を解 くというやり方が考えられるが,その場合の評価基準は,できるだけ速いア クセス,できるかぎりアップ・トウ・デートなデータ等が,検索システムの
*22
助けを得て利用可能かどうかにおかれる。
そして,このように機能的面へ主たる考慮が向けられることによって,人 間とコンピュータとは機能遂行のための競合する手段と見なされ,それらの 優越が論じられる。そして,すべての組織について,経営情報システム設計 が技術的基準から構想されているという印象が作り出される。
このような経営情報システム設計の概念的枠組みにおいては,組織が直面 する問題状況に対してコンピュータの港在能力の利用は,どれだけのデータ ボリューム,どのような反応時間,またどれだけの程度のフレキシビリティ が,それぞれ適当であるかが問われる。人間の仕事は,組織成員の特性から 抽象化され, コンピュータの仕事と質的差異が見出せなくなる。そして,人 間とコンピュータとのコスト・ベネフィット分析が常に行われる。このよう
*22 Kieser, A. & Kubicek, H., (1975] p.165参照。
40(40) 経営情報システム展開と組織,クスク,人間(広田俊)
な形での, 単なる機能的, 技術的な経営情報システム適用を, Kieser &
Kubicek*23 はコンピューク・テーラリズムと呼んでいる。
すなわちわれわれは, Whislerの議論はこの種のクイプの議論が中心的で あると言えると考え,そこに問題点を見出すのである。すなわもWhislerに おいて人間の情報プロセッシング,ないし意思決定能力の限界をコンピュー
クや,組織について代替していくという局面に主に目が向けられている。確 かに Whislerは人間固有の能力として,判断を活動に結ぴつける素朴な能力 をあげ,因果関係についての信念が不甲確な場合に,コンピュークは補完的 に用いられることが有効であるとしているが,これも人間の情報処理プロセ ッサーとしての側面に注意を向けたものであり, Whislerの議論には構成 員のパワー行動,参加的行動,モティベーション,等々の形で繰り広げられ る,コンピューク化に伴う人間の抵抗側面についての議論を含んでいない,
と言えるのである。
Whislerの関心の焦点が, well‑definedな状況におけるコンピューク化 の浸透と,それに伴う影響にあったために, Whislerにおいて well‑defined な状況で中心的な議論となる情報処理効率に論点が絞られたという事情は認 められる。それにしても,人間行動の一面しか取り上げていないことは事実 であり,重ねて言うと,この点に,われわれは問題点を見出すのである。
このような形で,Whislerのアプローチの是非を問うことは,well‑defined な状況では,人間行動の動機的側面,組織における凝集性等の諸問題に関し て,コンピューク化によってそれらがうまく統合されるかなどという問題に ついての問題提起を行うことである。また, illdefinedな状況では,人間一 組織ーコンピュ・ークの関連は,どのようになるのかという問題提起をも喚起 するだろう。
このような問題提起に対して,.いわば規範的に解を与えるには,システム を構成する,人間,組織, コンピュータ,クスク不確実性,などの関連が余 りにも未知である。そこで,そのような解答を得るための第一点として,現
*23 Kieser, A., & Kubicek, H.,〔1975]p.164参照。
経営情報システム展開と組織, タスク,人間(広田俊)
実の諸企業において, どのようにコンピュータ化がうまく進展してきたの か,あるいは失敗したのかの調査を行うことに江って,各要素の作用連関を 把握しようとする接近法が考えられる。そのためには 1つのケースについて
*24
調査を行った Pettigrew (1974]のようなやり方と, 複数企業の多期間デ ータをふまえながら,情報システムの各要素間の相互関連のあり様を把握し ていく方向がある。
ここでは後者の接近法をとる Edstrom& Naugesの研究をとりあげて検 肘したい。
N.コ ン ピ ュ ー タ 化 の 進 展 と 組 織 (1) 枠 組 み
われわれが検討したいのは, Edstrom& N auges*25 による,フランス企業16 社の1967'73年の七年間における, コンピュータ化の進展と,それが,組織 構造,やコンピュータのハードウェアとどのような関連を持ちながら展開さ れてきたかの調査であり,その調査の検討を通じて, コンピュータ化プロセ ス,あるいは情報システム展開についての条件性を把握したい。そこで,まず,
Edstrom & N augesによる調査の際の枠組みについて述べることにしよう。
*26
その枠組の基礎となったものは Leavittによって提出された,すなわち,
Leavittによって,組織は多変量のシステムであるとされ, その中で特に大 きなものとして最低四つのものを上げねばならないとし, クスク (task), 構 造(structure), 技 術(technology), 人 間 (actor,people)が示された。
大まかに言って, タスクは組織の存在理由を示す固有の課題を言い, 製 造,販売等の多くのサブタスクから成っている。また,人間という言葉によ って, タスクの遂行者が想定されており,技術によって技術的トゥール,た
*24 Pettigrew, A. M.,〔1973]The Politics of Organizational Decision ‑Making, Tavistock.参照。
*25 Edstrom, A., & Nauges, L.,〔1975]pp.65‑94参照。
*26 Leavitt, H.J.,〔1964], "Applied Organizations Change in Industry; Stru‑ ctural, Technical and Human Approaches." pp. 56‑71参照。
42(42) 経営情報システム展開と組織, タスク,人間(広田俊)
とえばコンピュータ等が意味されている。そして構造によって, コミュニケ ーションのシステム,権威のシステム, ワーク・フローのシステムが考えら れている。
このような枠組みを用いて,新しい技術的トゥール,例えばコンピュータ の導入が構造(コミュニケーション・システム,組織の決定様式)に影響を 及すかも知れないし,人間(その数,熟練度,態度,活動)に影響を及すか も知れないし,タスク(成果や,その内容)に影響を及すかも知れない,と いう関連をたどることができよう。ところで, Edstrom& Naugesは,この Leavittの枠組みを修正して用いて,調査を行おうとする。その際, 全体部 門を統轄する全体組織に対して,情報システムも情報システム部門という下 位組織を形造り,それらも,構造,タスク,人間,技術に分けて把えられると した。情報システム部門の意義は,全体組織を統合することにあるとして,
次のような図で示される枠組みを提出した。*27
r‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑,
I I
I 構 造 l
I │ 1
I タスク 技 術
し‑‑‑‑‑‑‑‑‑人
‑ F a : ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ]
[‑‑‑/スー_クー―....―‑_//‑‑‑_‑‑_術ー一_]
全体組織
情報処理部門
図ー4
*27 Edstrom, A. & Nailges, L., [1975] p.66参照。
Edstrom & Naugesの枠組みと前章のWhislerのContingencyApproach 枠組みとの相遮および関連に関して言えば,両者とも,人間,組織,コンピュ
ータ(技循)と, タスク特性としての決定状況の不確実性の関連を述べるとい う共通点が見られる。ただし, Edstrom& N augesが行ったように,全休組 織から情報システム部分を分離することによって, Whislerにおいて見られ た,情報処理と意思決定のみが組織過程だという印象を与える傾向が除去で きると思われる。そして,情報処理システムの上に,広く包括的な人間行動を 含んだ全体組織があるということを想起させることが出来ると思われる。
そして,全体組織の四つの変量が相互関連し合いながら運営されることが 必要であるが,また,情報システム部門は全体組織をうまく統合させるのに 寄与するとともに,自部門も統合していかなければならない,とされる。
そこで彼は,統合手段として,(1)構造を通して,(2)組織内のシステムや諸 手続きを通して,(3)システム開発を通して,(4)人間を通して,という四つの
*28
クイプを示している。
(1)は,情報処理部門(以下 ISDと略記)の結果が経理, コントローラー に報告されるか,社長に報告されるか,という形での統合問題,(2)は長期計 画などによる各部門の調整,(3)は,組織変革や,システム開発などであり,
(4:)は教育訓練,等によるものである。
(2) コンピュータ化プロセスの変数
コンピュータ化プロセスを分析するために,技術, クスク,構造,人間 の,各変数の変化のステップを表わす変数を設定することにする。そして,
ISDシステムにおける, これらの変数を表わすものとして, a)ハードウエ ァ, b)応用例, c)ISD組織の変化, d) ISDの部門の長, の各々をとる ことにする。*29
まず, a)ハードウェア,について,四つの変化のステップを考える。そ
*28 Edstrom, A., & Nauges, L., (1975] p. 67参照。
*29 Edstrom, A., & Nauges, L., (1975] pp. 68‑69参照。
44(44) 経営情報システム展開と組織,タスク,人間(広田俊)
して, 多くの組織が, IBM設備を用いていたことから, IBMモデルの用 語で変化を示すことにする。すなわち,最初の段階は, IBM1401,ないし 同等の機種の導入である。次は, IBM360への移行であり,第三番目には,
IBM 360シリーズの改良機種か, もう一つの機種の導入が想定され, 最後 に, IBM370シリーズヘの移行がある。これらの四つの段階が,各々, E1, E2, Ea, E4,で示される。
また, b)応用例,についても, 四つの段階を考える。最初の段階は,純 粋に記録作成や,送り状などの文書の作成のためのものである。第二の段階 は,マネジメント・コントロールのための情報についてのものである。例と
しては,実績と予算との比較や,在庫記録と,再発注点との比較というよう なものである。また,第三の段階は,コンピュークによって業務的生産計画 が設定されるような,プログラム化された意思決定への適用というものであ る。最後に,第四番目の段階として,組織の長期計画への適用を考える。例 としては,中・長期の,予想貸借対照表や,予想損益計算書,販売予測,な どが考えられる。 そしてこれらの各々の段階が, A1, A2, Aa, Aば 示 さ れ る。
また, c)ISD部門の組織変化についても, 四つの段階が設定される。第 ーの構造は,プログラマー,アナリスト,.オペレークーが区別し難く未分化 の場合である。また第二の段階は,システム開発が,コンピューク製造活動 と分離した所で行なわれる段階である。
また,第三の構造は,システム開発が,アプリケーション・グループの名 で,更に分化して行われるようなものである。例えば,アナリストとプログ ラマーの何人かは, 財務・経理システムに専門化させられる。第四の構造 は,機能ラインの概念や, コンピュークの応用がうまく統合され,業務上の 必要にかなうことを保証するような組織分析,を導入することによって,コ ンピューク・・システムのより広いインパクトを腿識したものである。 そし て,これらの各段階は, S1, S2, Sa, S4,で示される。
また, d)ISD部門の長, については三つのクイプのものを区別すること
ができる。まず,第一に,部門の長が,経理か人事の長へ報告する場合があ る。また次に,部門の長が,より広い組織的責任をもって,取締役に報告す る段階がある。そして最後に, ISDの報告が直接トップ・マネジメントヘ報 告されるケースが考えられる。 そして, これらの各段階は, 01, 02, Osで 表わされる。 これらは, ISDシステムを統合する三つのやり方を示してい
る。
また,統合の第二の形態である,情報システムの長期計画は,それが存在 するか,しないかによって区分される。この変数はPで示された。
(3) 研究の概要
フランスの企業16社が,異なる情報システムのクロス・セクション分析が 可能なように選ばれ,研究された。応用例についての情報を集める手段とし
*30'
ては, Brabander, et al (1972]におけるリストが利用された。
元のサンプルの内の2社について,パイロット・スタディとして,インタ ビューがなされた。そして,このインタビューの基礎の上に,質問表がデザ インされ,それが,サンプルをなす各社に送られた。
これらの調査の中で,デークが利用可能となった企業12社の諸特性は,次 のようなものである。まず規模別分布は,表ー2で示される。*31
雇 用 者 数 企 業 の 数
<2000 3 2000 <4000
゜
4000 <6000 7
>6000 2 12 表ー2
*30 Brabander, D. et al (1972]参照。
*31 Edstrom, A., & Nauges, L.,〔1975]P,71参照。
46(46) 経営情報システム展開と組織タスク,人間(広田俊)
また,各社のコンピュータ導入時期が,表ー3で示される。
コンピュータ導入時期 企 業 の 数
<1964 2 1964‑1966 4 1966‑1968 4 1968> 2 12 表ー3
(4) 現状についての結果
ここでの研究の結果は三つの異った部分に分けられる。まず第一が硯状で ある。すなわち,各企業がコンピュータ化をどの程度達成しているか, とい うことである。第二には, どのような経路を経て, 現状に到達したかであ る。また最後に,情報システム部門と全体組織との相互作用が問われる。
まず,現状を示す表が,表ー4,表ー5で示される。その表中の数字は,*32
各段階の変数に該当する企業の数を示している。その結果より, コンピュー タ化の進展は, コンピュータ技術の採用時期とは,それ程関連しないことが 示された。どちらかと言うと,後期にコンピュータ化した企業の方が,その 進展のスピードの早いことが示された。また製造企業と非製造企業を見るな らば,製造企業の方がその進展のスピードが早いことが示された。これは,
製造企業の中に後期採用企業が多いことから来ている。 (5社中4社) そして結局, タスクの特性が, コンピュータ化の程度について最も強い説 明変数である, と言えるのではないかという仮説が提出される。*33 たとえば Bra bander*34 はベルギーの従業員200人 以 上 の 会 社173社を対象にした研究に おいて,各企業のコンピュータの使用度を調査したが,その程度を決める変
*32 Edstrom, A., &. Nauges, L., Cl975J pp. 71‑73参照。
*33 Edstrom, A., & Nauges, L., [1975J p. 73参照。
*34 Brabander, et al [1972]参照。