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大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

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(1)

大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

著者 江原 武一

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 27

号 1

ページ 115‑128

発行年 1978‑11‑25

その他のタイトル Institutional Management and Decision‑Making of Faculty Members in Japanese Universities (2)

URL http://hdl.handle.net/10105/2502

(2)

乱最監rau急.CE盈。.戸襟2祝芝1(cult.&s。c).至3*

978

大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

江  原  武 (教育学教室) (昭和53年4月28日受理)

目  次

要 約

第1節 分析の意図 第2節 分析の枠組

第1項 意識構造‑2つの次元‑

(1)大学教員の意思決定 (2)質問項目の抽出 第2項 規定要因の設定 (1)規定要因の設定

(2)所属組織の特性と個人的属性

(3)多変量解析‑多量分類分析(MCA)の通用‑

第3節 大学の組織・運営における教員の意思決定 第1項 予備的考察

(1)数値の意味

(2)交互作用効果の検定 (以上第26巻第1号) 第2項 意思決定の構造化

(1)教授会における意思決定 (1ト1 教授会への意思反映度 (1ト2 教授会構成の原則 (2)教授会の運営方法 (3)大学行政‑の志向 (4)大学行政の運営方法 (5)大学改革の方向

‑残された課題‑ (以上本号・完)

第2項 意思決定の構造化

(1)教授会における意思決定 (1ト1 教授会への意思反映度

大学教員の個々の意見は、はたしてどの程度、学部教授会における意思決定に反映されている

115

(3)

表5 教授会への意思反映度

Unadjusted  ‑4   6 21 ‑3 ‑Ill‑15‑14‑11 4 10 16 35 45 58 Adjusted   !‑5 3 ; 2 ‑1 0‑13‑13‑13 1 ll 16 32 44 59 a) Grand Mean‑19,サンプル数 1766, R2‑0.230

b)設置者、年令、地位×規模のeta係数はそれぞれ0.12, 0.34, 0.46,またbeta係数は それぞれ0.14, 0.03, 0.45である。

C)この多重分類分析では、設置者と地位×規模との2要因の間に第2次の交互作用がある (有意水準0. 026) ,

のだろうか。学部教授会の意思決定に対する大学教員の意識を、このような形で捉えてみること から分析を始めてみよう(表 5),

大学教員のなかで、教育・研究条件を直接左右するような問題、例えば人事、予算、あるいは 教務などについて、自分自身の意見が、学部教授会の意思決定に反映されていないと考えている 者の比率は19%である。逆に言えば大学教員の81%は、自分白身の意見は学部教授会の意思決定 に反映していると考えている。

この数値の解釈は人によってかなり異なるだろう。場合によっては、学部教授会‑の意思反映 度が8割の大学教員によって盲定されていることは、当然とみなされるかもしれない。しかしこ の8割という数値を唐突に感じる人も少なくないように思われる。あるいはサンプルが助手層よ りも教授層に、従って比較的高年令の大学教員に、また設置者別にみれば私立よりも国立にかた よっているので、このような結果になったのではないかという疑問が生じるかもしれない。そこ で表‑3のF検定の結果をふまえて、合成変数「大学の規模×教員の地位」を加えて行なった多 重分類分析(MCA)の計算結果をみると、大学教員の学部教授会への意思反映度は、その基本 的属性によって著しく異なることが明らかになる。

まず第一に、大学の規模に関係なく教授層の実にU% (100‑ (19‑13))は、自分自身の意見 が学部教授会の意思決定に反映していると回答している。この対極に位置するのは、教員数500 人以上の大規模大学の助手である。当然予想されるように、助手層の学部教授会への意思反映度 は一般に低い。小規模大学の助手層でも、その50% (19十32)は自分自身の意見の反映を否定し ている。しかし大規模大学の助手層では、その78%が否定的な回答を寄せている。大学の規模が 大学教員の学部教授会‑の意思反映度と、どのように関わっているのか、そのメカニズムの解明 はしばらく措くとして、大規模大学における教授層、助教授層、助手層の意識の落差は、学部教 授会‑の意思反映度についてみれば、想像以上に大きいように思われる。

これに対して、大学の特性としてとりあげた設置者別や、大学教員の個人的な属性として分析 に加えた教員の年令では、各カテゴリー間でそれほど大きな開きはみられない。たしかに教員の 年令に注目してクロス分析を行なえば、 20‑39才の層と50才以上の層との間に32%の開きがみら れるが、他の独立変数を統制したAdjusted欄をみると、教員の年令による意見の相違ははとん

(4)

大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

117

ど消滅してしまう。後にも触れるように、教員の年令は教員の地位と密接に関連しているので、

その効果は他の独立変数を統制すると弱められる傾向がある。設置者別では、私立よりも国立に 在職する大学教員に、学部教授会への意思反映を肯定する者の割合が多く、意見の分布は国立

>公立>私立の順にきれいに並ぶが、その落差は12%にとどまる。

(l)‑2 教授会構成の原則

ところでこの学部教授会‑の意思反映度は、大学教員が学部教授会の構成員であるかどうかに よっても左右されるので、続いて学部教授会の構成原則に関する大学教員の意識を構造的に捉え てみることにしよう(表‑6)。学部教授会に参加していることは、ただちに自分自身の意見が 学部教授会の意思決定に反映することと結びつくわけではない。しかし学部教授会の構成員から 除外されている者にとって、その意見の学部教授会の意思決定‑の反映は常に間接的にならざる を得ないだろう。大学教員の学部教授会の構成原則に対する意識は、この問題を裏面から知ろう

とするものである。

大学教員の34%は、学部教授会は原則として助手以上の全員で構成するのがよいと考えている が、このような意見の分布は、大学教員の個人的な属性とその在職する大学の制度的特性によっ て異なるパターンを示す。ここでは、 「教員の年令×教員の地位」と「設置者×大学の規模」の

2個の合成変数を使用した計算結果を用いることにしよう(10)0

はじめに個人的な属性によるパターンをみれば、教授層<助教授層<助手層の順に学部教授会 への助手参加の要求は強くなる。しかもこの傾向は、教授層、助教授層、助手層のいずれにおい ても、年令が低くなる程強い。 50才以上の教授層(19#)と39才以下の助手層(6430 との差は 45%である。

国立および私立の小規模大学では、大学教員の40%が学部教授会への助手参加を原則として肯 定している。これはすでに学部教授会に助手が参加している小規模大学が多いからだと思われる が、私立の中規模大学の示す20%という低い数値の意味は必ずしも明らかではない。いずれにせ よ4個の独立変数のなかではなによりも教員の地位が強く作用している。助手層と若手の助教授 層を除けば、学部教授会への参加は、それほど強く求められていないといってよいだろう。

1960年代後半の「大学紛争」当時から、大学行政や教授会の運営‑の助手層の参加や学生参加 は、大学改革に関する議論の焦点の一つになってきた。たしかに「大学紛争」以前と比べれば、

表6 教授会構成の原則

、\、 yふtV水せんi   設置者×規 模&」ァ」サ

独詣荒\\\

私:国!公

500

¥m

私!公!公 国

0  9

0〜9

2  4

9

0〜9

1

年令 × 地位

5  0

教 授教 授・50才以上 教数.0..enoJCO 助教授 助教授・40才以上 c M  CO

Unadjusted  !‑14 ‑7 2 2 7 ‑1 5 6 7│‑15 ‑6 ‑6 ‑1 4 21 26 30

Adjusted   ト14 ‑4 1

a) Grand Mean

i‑15 ‑7 ‑6 1 3 20 23 30

サンプル数‑1646, R2‑0.129

b)設置者×規模,年令×地位のeta係数はそれぞれ0.15, 0.33,またbeta係数はそれぞれ0.14, 0.33である。

(5)

助教授層や助手層を刷えた学部教授会は増大している。その傾向は人文科学系と社会科学系の学 部に顕著である(ll)。本稿で使用したデータでは、所属学部の教授会ならびに教授会に準ずる機関 の名称、構成、規模、審議事項などを聞いているが、その集計結果によれば、総数361のうち、

教授層のみで構成される教授会ならびに教授会に準ずる機関は全体の16%であるのに対して、助 手以上の全員が参加しているのは34%を占めている(12)。

このように教授会‑の助手をはじめとする若手教員の参加は顕著な傾向として認められるが、

この教授層以外の大学教員の教授会参加の増大は同時に、同一学部内における教授会ならびに教 授会に準ずる機関の数を増加させた、審議、決定事項に応じて構成員の異なる複数の「教授会」

を設置している学部が少なくないのである。人事、予算または教務等の重要事項の審議決定を行 なう「学部教授会」についていえば、その構成員は教員の地位によって依然として制限されてい

るといってよい。そしてこのような現実の学部教授会構成が、教員の地位による「教授会構成の 原則」に対する意見の相違に反映しているように思われる。

(2)教授会の運営方法

眼を転じて、次に学部教授会の運営方法の問題を探ってみよう。その意思決定の方法は、大学 教員によってどのように評価されているのか(表‑7)。

4個の従属変数のうち、 「(3)教授会の適正規模」 (人数が多すぎて実質的な審議ができにくい) は、学部教授会の運営方法の組織的な特性を明らかにするために、分析に加えた変数の一つであ る。運営方法の非合理的な側面は、大学教員自身だけでなく部外者からもしばしば指摘される。

元のデータでは他に、 「実質的な議論よりも、形式的な報告や、すでに決定したことの承認を求 められることが多い」、 「教授会の運用の仕方に問題があるため、概して会議が長時間にわたるこ とが多い」、 「審議や決定の過程で、わずらわしい手続きが多すぎる」などの問題点についても、

意見を求めているが、ここでは、学部教授会構成員の拡大に伴ってその規模が拡大せざるを得な い状況のなかで、学部教授会の規模が大学教員によってどのように捉えられているのか、その実 態を確認することにしよう。

「(4)発言者のかたより」 (発言が特定の者に限られて、議論が片よるきらいがある)と「(6)若 手教員の意思反映度」 (教員の人事の審議・決定において、若手教員の意思が充分に反映されな い)は、学部教授会への意思反映に関する問題点を聞いた質問項目である。これまでの分析で

も明らかなように、若手教員、とりわけ助手層の意思をどの程度教授会の意思決定に反映させる かという問題は、学部レベルの組織運営の重要な課題である。最後に「(5)教授会決定の実行皮」

(審議・決定した事項でも往々にして実行に移されない場合がある)は、学部教授会における意 思決定の実質的な効力をみるために設定した変数である。

これらの4個の従属変数はいずれも、学部教授会の運営方法に関して、その否定的な問題点を 記した質問項目を設定し、正否の判断を得る形式をとっている。本稿ではこの回答を、 「そう思

う、どちらともいえない」(カテゴリー「0」)と「そうは思わない」(カテゴリー「1」)とに二 分してみた。従って表‑7の右端のGrand Mean は、否定的な内容を含む設問を改めて否定し た者の割合である。

このGrand Meanの数値をみれば明らかなように、大学教員の53%は、学部教授会の人数が 多すぎて実質的な審議ができにくいとは考えていない。発言が特定の者に限られて、議論が片よ るきらいがあるとは思わない大学教員は全体の40%を占める。審議・決定した事項でも往々にし

(6)

大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

表7 教授会の運営方法

‑   ‑  ‑      ‑    ‑ ‑        ‑ ‑

l\「、

tiw屯㌫

(3)教授会の適 正規模

(5)教授会決定

5 0   才

也;    設置者 ×規

39 49 上 授 授 手

I

li 1 1‑19

叫こrrri Arlju.

(6)若手教員の 意思反映度

私立o・0人以上 私立oen・0‑‑05CM‑^ 9

0〜9

1

0 ‑3 ‑7    9 14‑15

ol l ト21 1‑3‑7 7 ll 14‑15 1

‑15    9  8‑10 ‑20

‑9  0

Unad. 」15 ‑1

‑       ‑      ‑ ‑   ‑

Adju.  0 ‑1

5│ 4 ‑5‑13

I

7 ‑2 10 16 ‑1‑17  5 ‑4 ‑9 6 ‑1 ll 13 1‑17  6 ‑3 ‑8

tie

GM=53 N=1661 R2=0. 024 GM=58

N=1657 R2=0. 066 9!10‑12‑34!‑621314

1110‑12‑34!‑83141。一寸廃園誓軍引 I.

a)各要因のeta係数およびbeta係数は次のとおりである。

年 令 [ 地 位   設置者×規模

eta beta eta : beta

従属変数(3) 0.01 0.04

'中0.19 0.ll

9

1

0

6

0.08       0. 13 0.10 i 0. 19       0. 17

0.10       0.16

0.02       0.26       0. 13

0.26       0. 12

b)従属変数「(3)教授会の適正規模」では、分散分析の結果、年令と設置者×規模との間に交互作用(有意 水準0. 001)がある。同様に地位と設置者×規模との間にも交互作用(有意水準0.038)が認められた。

Rl: 、、、

独立変数 設置者

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(4)発言者のか U たより  Adju.

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ユju・ i 0 3‑ 5‑7‑9ト10‑2‑2‑2

a)設置者、地位、規模×年令のeta係数はそれぞれ0.04, 0.ll, 0.13,またbeta係数はそれぞれ0.03, 0.12, 0.10である。

b)この多重分類分析で使用した独立変数には、分散分析の結果、設置者と規模×年令との間に交互作 用(有意水準0.036)があることが確められている。

(7)

て実行に移されない場合があるという指摘は、 58%の大学教員によって否定されている。さらに 教員の人事の審議・決定において、若手教員の意思が充分に反映されないという設問には、 50%

の大学教員が「そうは思わない」と回答している。

このようにいずれの従属変数も50%前後の大学教員にとっては、教授会の運営方法の問題点と して意識されていないが、この現状に対する肯定は、設問の仕方と集計方法を考え合わせれば、

かなり強い肯定といってよい。この反応パターンは、大学教員の基本的属性によってどのように 異なるのか。さらに分析を進める必要があるだろう。

ところでこの教授会の運営方法としてまとめた4個の従属変数の多重分類分析は、必ずしも成 功していない。たとえば表‑7の右端のR2の数値は、いずれの従属変数においても低い。また

「設置者×大学の規模」あるいは「大学の規模×教員の年令」を合成変数として導入しても、独 立変数間の交互作用効果は十分に除去できなかった。分析の手順に従えば、さらに3個の独立変 数を組み合わせた合成変量を導入すればよいのだが、このような措置を講じることによって分析 の精度が著しく上昇するとは思われない。それよりも独立変数の選択そのものに問題がありそう である。大学の規模は学部レベルの教授会の運営方法を分析するには、あまり有効ではないよう である。教員の年令も、他の独立変数を統制すると、著しくその効果を弱めてしまう。従って大 学教員の基本的属性による反応のパターンの相違は、必ずしも明確には把握できないが、少なく とも次の諸点は指摘できるだろう。

まず第一に、 4個の独立変数の中では教員の地位が最も大きな効果をもっているが、この教員 の地位別に回答の分布をみると、教授層は学部教授会の現状を肯定する傾向があるのに対して、

助手層はその反対に、現在の運営方法に批判的である。 「(4)発言者のかたより」、「(5)教授会決定の 実行度」、 「(6)若手教員の意思反映度」のいずれにおいても、教授層<助教授層<助手層の順に、

現在の運営方法に対する批判の姿勢は強くなる。なお「(3)教授会の適正規模」の回答で、助手層 の68% (100‑ (53‑21))が「人数が多すぎて実質的な審議ができにくい」と反応しているのは、

「(6)若手教員の意思反映度」の回答と矛盾しているように思われるが、これは「(3)教授会の適正 規模」の回答に「どちらともいえない」と回答した助手層が多いことによる。実際に、 「そう思 う」のカテゴリーに反応した者のみについて集計すると、教員の地位による意見の相違は縮小す るが、その場合でも教授層は最も現状肯定的な反応を示すC

このように大学教員の意思決定の手段としての教授会の運営方法は、教員の地位によってその 評価がかなり異なるが、この相違は「(6)若手教員の意思反映度」において最大になる。学部教授 会における審議・決定事項のなかで、最も重視されるのは人事に関する事項だろう。この質問項 目における意見には教授層と助教授層との問で22%、教授層と助手層との問では実に44%の開き が認められる。これは問題点としてとりあげた他の3点と比較しても、きわめて対膿的な結果で ある。学部レベルにおける意思決定では、大学教員の地位にもとづく組織の内部構造に大きな溝 があることがうかがわれる。そしてそれはなによりも、若手教員の意思反映に集約されているよ

うである。

第二に、教員の地位以外の独立変数に注目して、特徴的な傾向を整理してみよう。教員の年令 は教員の地位に吸収される傾向があり、また大学の規模は教授会の運営方法には直接関与してい るとは思われないので、設置者による反応パターンの相違を中心に計算結果を分析してみようO

はじめに「(3)教授会の適正規模」では、公立大学に在職する大学教員に肯定的な意見が多いこ とを指摘すべきであろう。とりわけ医療科学系の単科大学が多い教員数200人未満の公立小規模

(8)

大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

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大学では、その大学教員の67%は「学部教授会もしくはそれに準ずる機関は、人数が多すぎて実 質的な審議ができにくい」とは考えていない。その対極に位置するのは教員数500人以上の私立 大規模大学に在職する教員である。国・公・私立のいずれにおいても、大学の規模が大きくなる につれて、教授会の規模拡大に対する不満は多くなり、それは私立大規模大学で最も顕著にみら れる。このような結果は、一般に国・公立大学では、大学の規模が大きいことは学部数も多いこ とを意味するが、私立大学では、マンモス私立大学に典型的にみられるように、学生数の増大を 学部定員の増大、したがって学部教授会メンバーの増大でまかなってきたことに帰因しているよ

うに思われる。

口4)発言者のかたより」には設置者別の相違はあまり認められない。しかし「(5)教授会決定の 実行度」は、公立および私立の小規模大学で批判的に反応されている。そしてこの対極には公立 の大規模大学が位置するが、同じ小規模大学でも国立の大学教員は、現状により肯定的である。

自6)若手教員の意思反映度」では、この国立小規模大学と公立大規模大学に批判的回答が少な く、国立大規模大学と私立大学に多くなっている。このような傾向の解釈はさしひかえることに しよう.各カテゴリーを構成する大学や学部構成を考慮すれば、ある程度推論することができる が、教授会の運営方法に関する大学教員の反応パターンは、これらの独立変数よりも、教員の地 位の相違によって大きく異なることを再び強調しておきたい。

(3)大学行政への志向

学部を越えた全学レベルの大学行政は、大学教員の意識構造のなかで、どのように位置づけら れているのか。大学教員の大学行政への志向(orientation)を、大学行政への関心度と満足度の 2側面から捉えてみよう(義‑8),

大学教員の大学行政‑の関心度はそれほど高いものではない。所属大学の全学レベルの審議・

議決機関(たとえば評議会・部局長会議・全学教授会など)で、どのようなことが審議されてい るか、この問題に強い関心を持っているのは全大学教員の40%を占める。残りの60%は、「ある程 度の関心をもっている」あるいは「ほとんど関心をもっていない」と回答しているが、これは実 質的に「無関心派」とみなしてよいだろう。これに対して大学行政への満足度は、予想に反して 比較的高いように思われる。大学教員の58%は、所属大学における全学レベルの審議・議決機関 や学長を中心とした執行部活動一般に対して満足しているようである。

この両者はどのように関連しているのか。はじめに教員の個人的属性に視点を置いてみよう。

これまでの計算結果と同様に、教員の年令は、他の独立変数を統制すると、ほとんどカテゴリー 間の差を生じさせないので、教員の地位に主として注目すると、教授層は大学行政‑の関心度も 高く U7%)、満足度も高い(68#;。これと対照的に助教授層と助手層の関心度は32%、 26%で

あり、満足度も47%、 35%にとどまる。

このように大学行政への関心度と満足度は、教員の地位に応じて同一方向に変化している。大 学行政‑の関心度が弱まれば、満足度も減少するのである。しかも教員の地位の相違による意見 の開きは、教授層と助教授層との間で大きい。学部教授会とその運営に関する大学教員の意識で は、全体としてみれば助教授層と助手層との問に大きな溝がみられた。しかし大学行政に関して は、教授層と助教授層・助手層とに大学教員は2分され、その意識に相違がみられるようである。

大学によっては慣例として、大学行政への参加を教授層に限っている。かつては学部教授会にお ける意思決定に関して、このような傾向が指摘されていた。今日では、学部レベルでは助手層の

(9)

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(10)

大学の組織・運営と教員の意思決定(2)

123

問題が中心になっている。学部教授会と大学行政では、大学教員の意識構造は明らかに異なって いるようである。

第二に、大学組織の特性に注目してみよう。表‑8の「設置者×規模」欄について、設置者別 に大学の規模による意見の相違をみると、国立大学では大学の規模による大学行政への関心度の 差はない。また大学行政への満足度は教員数200‑499人の中規模大学では低いが、大規模および 小規模大学では高くなっている。しかもこの満足度における意見の開きは、他の設置者(公・私 立)よりも大きいのである。公立大学では、小規模大学の教員は大学行政‑の関心度は高いが、

満足度は低いことに留意しておこう。そしてこれは私立小規模大学の教員にもあてはまる。私立 大学では、大学の規模が拡大するにつれて、大学行政への関心度は減少し、大規模大学の教員の

大学行政への関心度がもっとも低い。満足度もどくわずかであるが、大学の規模が拡大するにつ れて高くなる。

これらの結果から次の諸点を指摘することができるだろう。すなわち大学行政の管理・運営に 対する大学教員の志向(orientation)を、設置者および大学の規模という大学組織の特性によっ てみると、国立と公・私立との間に第一の境界があり、さらに国立大学では2‑3学部構成の中 規模大学と、小規模および大規模大学との問で、大学教員の大学行政への満足度に相違がみられ る。いうまでもなく大規模大学と小規模大学とでは、同じように大学行政の満足度が比較的高い といっても、その内容は異なる。しかし「大学行政の運営方法」としてまとめた「(9)学部(もし

くは学科)問の利害の対立」、 「uO)設置者の方針と教員の意思」の結果をみれば明らかなように (義‑8)、国立の中規模大学における大学行政の管理・運営にはより多くの問題が含まれている ように思われる。

次に公・私立大学では、小規模大学と大規模・中規模大学との問に、大学教員の意識の差があ らわれている。公・私立の大学教員は大学の規模が小さくなるにつれて∴大学行政への満足度を 減少させるが、大学行政‑の関心度は、小規模大学においてきわ立って高くなる。公・私立の小 規模大学に在職する教員は、大学行政への関心度は高いが、その満足度は低いのである。これは 国立の小規模大学と比較すれば、一層はっきりした形で捉えることができるだろう。

大学組織の特性をあらわす独立変数として採用した「設置者」と「大学の規模」に含まれる内 容は、必ずしも明らかにされていない。しかしこの相互に関連しあう2つの独立変数は、大学行 政の管理・運営における大学教員の意思決定を、その根底から規定していると考えてよいだろう。

(4)大学行政の運営方法

大学行政の具体的な運営方法については、 「(9)学部(もしくは学科)の利害の対立」と「uO)設置 者の方針と教員の意思」の2点に限定して考察を進める。前者は、大学の全学組織とその下位機 関としての学部との間の調整に関する問題としてとりあげた。また後者は、大学行政の主体的な 行使者はだれかという、くりかえし論じられてきた論議に関連した問題である。いずれも考察の 範囲をひろげれば、膨大なスペースを要請する。しかしここでは、元のデータそのものが大学行 政の運営方法について、一般的な印象評価を求めているので、計算結果の分析に主眼をおくこと にしよう(義‑8)。

所属大学における全学レベルの管理・運営組織に関連して、その一般的な印象を求めると、「個 々の学部(もしくは学科)間の利害が優先して、全学レベルの管理機関での調整がうまくいかな い」という印象は、大学教員の44%によって肯定されている。また「設置者(国・地方公共団体

(11)

・法人)の方針と教員側の意思とが対立することが多い」と受け取っているのは全体の67%であ る。ただしこの質問項目のカテゴリーは、 「そう思う」 (25%)、 「どちらともいえない」 (35#)、

「わからない」 {!%)を「0」としてまとめているので、第一の質問項目と同じ集計をすれば、

この質問項目は大学教員の25%によって肯定されていることになる。さらにこの2つの質問項目 について、学部教授会の運営方法と同様に、大学行政の否定的な問題点を記した質問項目を改め て否定した者、すなわち「そうは思わない」と回答した者の割合を求めてみると、それぞれ24%、

33%である。従って単純に比較すれば、学部教授会の運営方法よりも、大学行政の運営方法の現 状の方が大学教員によって批判的に受け取られている。しかしこれらの数値をそのまま比較する のは、必ずしも妥当ではないかもしれない。質問項目の内容が異なっているだけでなく、なによ りも大学教員のなかで直接参加している者の多い学部レベルの意思決定機関と、きわめて限定さ れた者がその具体的な運営に参加している全学レベルの大学行政とでは、大学教員の意識に映じ たそれぞれのイメージがかなり異なるからである。

次に各カテゴリーの反応パターンを整理してみよう。まず第‑に教員の個人的な属性に注目す れば、これまでの分析からも予想されるように、大学行政の運営方法に対する批判は、教授層よ りも、助教授層・助手層の若手教員層に多い。大学行政については、大学教員はこの二つの層に 二分されている。

第二に所属する大学の制度的な特性をみると、国立の中規模・大規模大学の教員に批判の声が 多い。とりわけ国立の中規模大学では、学部間の利害の対立が強く意識されている。 2‑3学部 構成の大学が多い中規模大学における大学行政の管理・運営で、学部間の利害の対立が表面化し やすいのは当然のように思われる。しかしこの仮説は、少なくとも調査にあらわれた結果では、

国立の中規模大学にしか通用できない。単科大学の多い小規模大学で、これらの質問項目に対す る批判が少ないのは了解できるだろう。しかし私立大学の教員は相対的に批判の声を抑制してい るが、これは何を意味するのだろうか。学部教授会における意思決定に関する私立大学教員の反 応は批判的であるのに対して、大学行政における意思決定では私立大学の教員はその批判の声を 抑制している。設置者別にみれば、学部(もしくは学科)問の利害の対立や、設置者の方針との 対立は、国・公立の大学でより強く意識されている。

このように大学行政の管理・運営に対する大学教員の意識は、教員の地位に代表される個人的 な属性だけでなく、設置者や大学の規模といった大学の制度的な特性によって、かなり対周的な パターンを示す。本稿の分析は、実態の把握を兼ねているので、厳密な論理的推論をある程度犠 牲にしたが,正しく「存在が意識を規定している」といってよいだろう。

(5)大学改革の方向‑残された課題‑

大学教員の意識構造は、その基本的な属性の相違に応じて、さまざまなパターンを描く。しか もそれぞれの属性(独立変数)の効き方は、問題によってその強度と方向が異なる。最後にこれ らの分析結果と、大学改革の方向に関する質問項目とを関連させて、いくつか考慮すべき課題を 提示することにしよう。

まず第一に、大学行政への若手教員の直接参加が、若手教員自身によって要求されているが、

これはどのように理解すべきなのであろうか。

「全学レベルの管理機関には、教授のみならず助教授・講師・助手層も直接に参加すべきであ る」と回答した者は、助手層59%、助教授層52%、これに対して教授層は25%である。質問項目

(12)

大学の粗雑・運営と教員の意思決定(2)

セ‑/IラルIKパナンス

表9 大学改革の方向・大学行政‑の若手教員の直接参加

125

a) Grand Meen‑62,サンプル数‑1784, R2‑0.144

b)年令、地位、規模×設置者のeta係数はそれぞれ0.26, 0.32, 0.12,またbeta係数はそ れぞれ0.04, 0.29, 0.11である。

の文章の問題、あるいは現在行なわれている大学行政の運営などを考慮すれば、若手教員自身の 大学行政‑の直接参加の要求は、かなり強いと考えてよいだろう。しかしB‑1 (大学行政への 志向)の分析が明らかにしたように、たしかに彼等の大学行政‑の満足度は低いが、それと同時 に彼らの大学行政‑の関心度もまた低いのである。

第二に、一般的に大学教員は学外者による助言機関の設置に、それほど強い反発を示していな いo 日本の大学制度や財政の改革に関して、 「大学は社会の意見をきくために、学内に学外者の 助言機関を設けることが必要である」という質問項目に「そうは思わない」と強く否定的に回答 したのは、全休の37%にとどまる。学外者による助言機関の設置の必要性を強く肯定している大 学教員は25%だが、 「いちがいにはいえない」と回答した中間派が全体の35%を占めている。し かも理事会を通して,学外者の参加に対してある程度の歴史と経験のある私立の若手教員の大半 (助教授層の76%、助手層のm%)が廿定的な態度を示しているので、このような大学改革の方 向は再考する価値があるように思われる。

第三に、大学の管理・運営の効率化についてみると、大学教員の大半m%、表‑4)は、そ の必要性を認めている。この質問項目は、その前半部で「構成員の意思反映」に触れているにも かかわらず、大学教員の基本的属性に関わりなく、一様にみられる意見である。しかしこれまで の分析を重ね合わせれば、彼らの抱く「効率化」のイメージは、その基本的属性の相違によって

表10 大学改革の方向・学外者の助言機関の設置

\独立変数

〜 \

独諸悪\\

u nadjusted Adj usted

年  令 一 規  模]    設置者×地位

40 50 0 ;200

、 i才' 、

?  ? ∴ ?  ?

I I 、 l以1

39 . 49 199 i499

500

w

‑202 0‑11二言巳;三:‑500

‑500:::;

a) Grand Mean‑37,サンプル数‑1787, R2=ニ0.017

b)年令、規模、設置者×地位のeta係数はそれぞれ0.03, 0.02, 0.13,またbeta係数は それぞれ0.02, 0.02, 0.13である。

(13)

相互に数多くの対立点を含んだものであることが予想される。

本稿の分析は、教員の年令、教員の地位、設置者、大学の規模の4個の独立変数のみを用いて いる。大学の組織とその運営における大学教員の意思決定に関する大学教員の意識構造は、これ らの規定要因によってさまざまなパターンを描くことが確かめられた。簡単な仮説によって割り 切れる程、大学教員の意識は単純ではないo Lかも本稿の分析は、当初設定した課題に対して、

ごく限られた範囲の考察しか行なっていない。たとえば大学の所属学部・学内の管理的な役職や 委員会などの経験の有無、大学教員の役割に対する志向などの独立変数は、この問題と直接関連 しているように思われる。また分析の過程で常に意識されたのは、大学の組織・運営には、いわ ゆる「日本型」とでもいうべき政治的な側面が色濃く反映しているのではないか、という疑問で あった。学内「政治」の実態のなかで、社会学的な数量処理によって解明しうる部分は、それほ ど大きくないように思われる。試みに学長の選出過程をみれば、その実質的な決定過程は、厚い ベールにおおわれている。大学教員のパーソナリティ特性や、大学組織の日本社会における文化 的な文脈まで考慮すれば、さらに精敵で、広大な理論を用意しなければならないだろう。

(10)義‑3のF検定の結果からも明らかなように「教員の年令」と「教員の地位」との交互作用効果は無視し てよい。実際にこの2個の独立変数と合成変数(「設置者」 × 「大学の規模)」による多重分類分析では、独 立変数間の交互作用は認められない。

(ll) IMHE Project Team・Research Institute for Higher Education・Hiroshima University, 1976, Japanese

Patterns of Institutional Management in Higher Education, RIHE・Hiroshima University, p. 37.を参 漁.

価 Ibid., p.27.を参冊。

(14)

127

Institutional Management and Decision‑Making of Faculty Members in Japanese Universities (2)

Takekazu Ehara

Department of Education, Nara University of Education, Nara, Japan (Received April 28, 1978)

This paper intends to make clear the patterns of decision‑making process in Japanese higher educational institutions. The four nonmetric independent variables (factors) used here are the age and status of respondents, and the founder and size of institution, The 13 dependent variables include the composition and conduct of faculty meetings, members'interest in and satisfaction with governmental administration of higher education, and so on. The following is a summary of the findings in this study.

1. Results of the analysis show that the status rank of faculty members tends to have strong net effects on most of the dependent variables, especially on those related to the composition and management of faculty meetings. In addition to this factor both the type of control and size of institution have influence on the variables related to the central level of governance, although these two factors have complicated interactions.

2. As to the extent to which faculty members feel that junior members'opinions are reflected in faculty meetings, faculty members at small national and large public insti‑

tutions are most likely to say that their opinions have much impact. It should be noted that there is little variation among faculty members by institutional size in the private sector.

3. While in the private sector the smaller the institution the greater is the likelihood for members to express concern with the nature of central campus government, there is relatively little variation by size in the national university sector, and in the public university sector concern is highest in large and small universities. On the other hand, in the public and private sectors, the smaller the universities the lower tends to be the level of satisfac‑

tion with the central level of governance.

4. As to the hypothesis that the self‑interests of decentralized organizational units such as faculties and departments make it difficult for their university to make harmonious university‑wide decisions, the faculty members at national universities are most likely to agree while those at private universities are least likely. In the private sector, the smaller the university the greater tends to be the disagreement, but in the national universities, the agreement is most common in the medium‑sized and large universities.

5. Concerning conflicts between faculty and university founders, in both the public and private universities, the smaller the institutions, the greater the incidence of conflicts.

But in the national university sector, faculty members in the larger universities are most likely to report frequent conflicts with founders.

(15)

Based on the results of this multivariate analysis, we gain a clearer sense of the location of some of the problems of campus governance. Besides these factors, however, such factors as size of faculties and departments, form of decision‑making and members participation in these units, quality of information delivered to academic staff, and style

of leadership by the deans or department chairmen might also be considered.

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