奈良教育大学学術リポジトリNEAR
数学的な見方や考え方の育成を重視した指導法の研 究
著者 吉岡 睦美, 吉岡 淳, 山上 成美
雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要
巻 6
ページ 105‑116
発行年 1997‑03‑31
その他のタイトル Research on mathematics education with emphasis on developing of students' mathematical way of thinking
URL http://hdl.handle.net/10105/4343
I‑ II間作丈
(奈良教育大学教育学部附属中学校) 吉岡淳
(奈良県立奈良工業高等学校) 山上成美
(奈良女子大学文学部附属中・高等学校)
Researchonmathematicseducation
withemphasisondevelopingofstudents'mathematicalwayofthinking
MutsumiYOSHIOKA
(TheattachedJuniorHighSchool,NARAUniversityofEducation,Nara630,Japan) AtsushiYOSHIOKA
(NaraTechnicalHighSchool,Nara631,Japan) NarumiYAMAGAMI
(TheattachedJuniorandSeniorHighSchool,NARAWomen'sUniversity,Nara630,Japan)
要旨:現代社会における科学の急速な進歩などを考えると、数学的な知識や技能も大切であるが、
思考、判断、表現などの能力の育成も極めて重要である。また自ら学ぶ意欲をもつとともに生涯 学習という点においても、「数学的な見方や考え方」を中心とした数学的な資質はこれらの能力 の基盤となっている。本稿では、中学校、高等学校における数学的な見方や考え方の育成を重視 した指導法について研究し、指導法の具体案を提案した。
キーワード:数学的な見方や考え方、実践研究
1.はじめに
数学教育の目標には、数学的な知識や技能の習得とともに、問題解決に必要な「数学的な見方 や考え方」の育成がある。現代社会における科学の急速な発展を考えると、知識や技能だけで解 決できる問題は限られている。初めて直面した課題を自分の力で数学的にとらえ、理解し、解決 していく能力を育成しておかなければならない。そのためには、知識や技能を有効に使用するた めの「数学的な見方や考え方」が必要となってくる。
本稿では、まず「数学的な見方や考え方」の歴史的考察や先行研究をふまえ、「数学的な見方
や考え方」を育成する意義を明らかにしたい。その上で、生徒の「数学的な見方や考え方」を調
査し、その特徴を調べ、授業実践を通して「数学的な見方や考え方」を育てるための指導法の検
討を行った。しかし、ある1つの「数学的な見方や考え方」を育成する授業(授業実践1)は難
しいことが分かった。そこで、普段の授業(授業実践2)をする中で、どのようにすれば「数学
的な見方や考え方」を育てることができるかを研究した。これらの研究や授業実践をふまえて、
吉岡 睦美・吉岡 淳・山上 成美
「数学的な見方や考え方」を育てるための指導法を提案したい。
2.数学的な見方や考え方について 2.1.学習指導要領にみる歴史的経緯
学習指導要領における数学科の目標における「数学的な見方や考え方」の扱われ方を中原の研 究1)を参考にして考察する。
昭和10(1935)年から使用されていた『尋常小学算術』いわゆる緑表紙教科書は、「児童の数 理思想を開発し、日常生活を数理的に正しくすること」を目標として編纂された。ここに用いら れている「数理思想」は、今日の「数学的な考え方」と同じような意味で使われている。数学的 な考え方の育成は、昭和33(1958)年の小学校、中学校、昭和35年(1960)年の高等学校の学習 指導要領にそれぞれの目標としてこの言葉が現れており、以降一貫して数学教育において重要な
目標とされている。
「数学的な考え方」という言葉が大きな関心を持たれるようになったのは、現代化運動の進展 の中においてである。昭和40〜42(1965〜1967)年に文部省が各都道府県教育委員会に、数学的 な考え方の育成について実践的研究をテーマとして出したことが、この動きに拍車をかけること になった。そして「数学的な考え方」という言糞が題目に入った発表が多くされるようになった。
このような歴史的経緯の中で強調されてきた「数学的な見方や考え方」の指導の意義について、
次のように述べられている。
現行の中学校拇導書数学編では、
「もともと、数学は、高度に発達した文明社会に生きる人々にとって、日常生活を円滑に、し かも、能率よく営むために、また、発展した科学・技術や社会・経済を運営するためにも、広い 範囲にわたって応用されているものであるが、同時に、数学は人類が生み出した知識の普遍的な 原型でもある。こうした数学を基にした見方や考え方並びに数学が構成されていくときの中心と なる見方や考え方が身に付いていることは、単に数学的な知識・技能をもっているよりも、価値 あることとして重視され、今日特に、その必要性が求められている。」2)
また、現行の高等学校学習指導要領解説数学編・理数編でも、次のように述べられている。
「将来必ずしも数学を必要とする分野へ進むとは限らない多くの生徒にとっては、数学を活用 する能力として、何をどのように育成していくかが重要な課題である。そこでは、知識の広さや 計算の技巧よりは、数学を生かして活用する能力、特に、論理的な思考力や直観力、それらに基 づく判断能力が重要となってくる。また、将来数学を必要とする分野に進むことを考えている生 徒については、専門分野につながる知識や技能を身に付けさせることが大切であるが、それらに ついても、将来に開花する発展性を内蔵した数学的な資質、言い換えると、数学を生かすための 発展性を秘めた基礎的な能力を重視することが大切である。」3)
これらが主張していることは、基礎的な概念・原理・法則の理解と知識・技能の習熟に留まる ことなく、それ以上に見方や考え方の育成を最重要視しているということである。
2.2.本研究における数学的な見方や考え方の定義
歴史的経緯や先行研究をふまえて、ここでは本研究における「数学的な見方や考え方」は片桐
の定義、及び分類を採用した。4)5)なお、[]内のように略記して分類する。
(1)数学的な見方や考え方を生み出すような背景となる見方や考え方[背景]
①自主的に行動しようとする。 ②合理的に行動しようとする。
③内容を明確にし、これを簡潔明確に表現しようする。
④思考、労力を節約しようとする。
(2)数学のねらいともいわれる数学的な見方や考え方[ねらい]
①帰納的な見方や考え方 ②類推的な見方や考え方 ③逐次近似的な見方や考え方
④演繹的な見方や考え方 ⑤統合的な見方や考え方 ⑥拡張的な見方や考え方
⑦公理的な見方や考え方
(3)思考の対象に対する数学的な見方や考え方[対象]
①抽象化 ②数量化、図式化 ③記号化 ④理想化
⑤単純化 ⑥一般化 ⑦特殊化 ⑧形式化
(4)数学の内容からみた数学的な見方や考え方[内容]
①数式における見方や考え方 ②測定における見方や考え方
③図形における見方や考え方 ④統計における見方や考え方
⑤関数における見方や考え方 ⑥集合における見方や考え方 3.研究成果(1)
3.1.アンケート調査8)
3.1.1.日的
教師の立場で、「数学的な見方や考え方」の意義や有用性は、いくらでも主張できる。しかし、
実際に生徒はどのように捉えているか、その実態はわからない。そこで、児童・生徒の立場から、
「数学的な見方や考え方」について次の2つの観点を見るためにアンケート調査をした。
(1)児童・生徒が「数学的な考え方」についてどのように捉えているか。
(2)学年とともにどのように変化するか。
3.1.2.アンケートの方法
(1)作成方法
アンケート調査を作成するにあたって、以下のことを参考にした。
・予備調査「数学的な考え方とは、どんな考え方ですか。」(自由記述)
・中島7)と片桐4)5)の定義
・他教科の学習指導要領の目標8)g)10)
またよく似た数学的な見方や考え方の項目については、言葉の意味はよく似ていても生徒の とらえ方の違いを見たかったので取り入れた。
(2)内容:〔資料1参照〕
(3)被検者:N市立S小学校5年 (28名)
国立N中学校1年 (77名)
国立N中学校3年 (72名)
N県立N高等学校2年(62名)、国立N高等学校2年(59名)
吾岡 睦美・吉岡 淳・山上 成美
(4)実施期間:平成5年2月20日〜3月20日
(5)実施方法:時間は約10分とした。数学的な見方や考え方は直観的に無意識に使われるもの であるから、アンケートを実現する際も、各項目を読んで自分の感覚にあうものを 瞬間的に選んでもらうことを目的とした。
3.1.3.結果
(1)「児童・生徒が「数学的な考え方」についてどのように捉えているか。」について
〔資料2、資料3参照〕
(2)「学年とともにどのように変化するか。」について
「数学的な考え方と思う」−「数学で使う」と答えた各学年の割合を分析した〔資料2参 照〕。特に中学校第3学年から高等学校第2学年の2年間で生徒が「数学的な考え方」であ ると思う割合の変化に注目した。([]内は2.2.の定義による分類である。)
増加傾向となる項目を多い順に並べると、(数字はアンケートの番号)
①17.一般的に考える [思考]
②4.的確に解決しようと考える[背景]
③5.使えることは何かを考える[ねらい]
④48.暗記しようと考える [その他]
などがあった。反対に減少傾向となる項目を多い順に並べると、
①67.測量して考える [内容]
②45.同じ基準で考える [ねらい]
③44.集中して考える [背景]
④53.大ざっぱに考える [思考]
などがあった。そこで減少傾向にある「45.同じ基準で考える」の考え方を育てる授業を実 践し、指導法の検討をおこなった。なお、「69.豊かな心で考える」も含めてアンケート項 目の意味について質問について、質問があった場合もしくは小学校第5学年については指導 者の説明を加えた。
3.1.4.考察
ここでは、アンケート項目を2.2.での分類(背景、ねらい、対象、内容、その他)で分け、分 類ごとに分析すると,その特徴が現れている。1つずつ見ると次のことがいえる。
・「背景」となる考え方の割合は、中学校第1学年で高く、高等学校第2学年で低くなっている。
・「ねらい」となる考え方には、特に特徴は現れていない。
・「対象」となる考え方は、「14.抽象的」「17.一般的」「18.特殊化」など数学の学習の中でよく 使用されている大事な考え方であるにも関わらず、全学年にわたってその割合が低い。
・「内容」となる考え方の割合は、全学年にわたって高い。
・小学校第5学年では「その他」の考え方を数学的な考え方と捉えている。
・学年進行とともに割合が増加する項目は少なく、逆に減少する項目が「ねらい」以外の分類で 多い。
アンケート調査の70項目を1つ1つ見ても分析しにくいので、70項目を片桐の研究を参考にし
て、大まかに分類〔資料3参照〕し、考察した。
3.2.授業実践16)
3.2.1.指導の概要
アンケート調査の結果と考察より、学年進行とともに減少傾向にある「45.同じ基準で考える」
という「見方や考え方」に着目した。
「同じ基準で考える」では、新しい課題を既習の内容や方法を使うと解決できる問題を設定す る。以前行なった方法があるならば、「このようにつながるのか、生きてくるのか」と生徒白身 が実感できる内容にする。またこれを実現するのには、授業の展開で生徒自身に十分に考えさせ ることが大切である。自分自身で見つけた解決方法は、教えられたものよりはるかに生徒自身に 定着するからである。しかし、待っていれば必ず解決できるというものではないので、ある程度 考えさせたら、授業者が示唆を与えることになる。
ここでは、これらの「考え方」を育てるための内容や教材を特別に作ったわけではない。カリ キュラムにある程度沿った内容で、二項定理をさまざまな形でとらえ、「同じ基準で考える」こ とにより、一見違った問題も同じように解けることを見つけるという目標を実現する授業展開を 考えた。
3.2.2授業実践
【高等学校第1学年】二項定理
(1)目標 二項定理をさまざまな 形でとらえ、「同じ基準 で考える」ことにより、
一見違った問題も同じよ うに解けることを見つけ る。
(2)展開の概略
・右の授業プリントが配布さ れる。
・4問あるが、解きやすいと 思った問題から解く。
・自分の解いた方法を答える。
・解き方の違った生徒の考え 方を考える。
・今回の授業で使った「数学 的な考え方」に○印をっけ る。また、特に使ったと思 う「数学的な考え方」には、
◎をつける。
(3)授業実践の結果と考察
〝∂ jfム/存跡ノ
★∂この円座を解けI
①人地点からu地点までの員毎のコースは、(可過りあるか。
①(Xl y〉‥をI〆問し/こときのx.y の伏lHlH4㌦
①H鋼かのI tl−から膜と十と、どのI h同しところを
/こどら十にq地点に慮ちた。曳け、八島何輪あ1/こと考 えら〜lろJト.
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恥2㌧.C.I.C.l.C.1.C.ト・・1.C.壬批判世上。
授業プリント
吉岡 睦美・吉岡 淳・山上 成美
授業実践前後の生徒の意識
玉津で佳トパス加膵使った
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3.2.3.結果と考察
(1)効果大の「数学的な考え方」
5.使えることは何かを考える。
1.疑問の目をもって考える。
【グラフの見方】
横軸Ⅹ:アンケート調査〔図1参 照〕において各項目に対す る「数学的な考え方と思う」
−「数学で使う」選択した 高等学校第2学年の割合 縦軸y:今回の授業実践後の「数
学的な考え方と思う」−
「数学で使う」を選択した 高等学校第2学年の割合 つまり、横軸をⅩ、縦軸をyと 考えて、y=Ⅹ付近の点はこの授 業では変化が見られなかったと考 える。y>Ⅹの点は、効果大の
「数学的な考え方」、y<Ⅹの点は 効果小の「数学的な考え方」と考 える。
(2)効果小の「数学的な考え方」
37.自然現象を表そうと考える。
32.グラフをかいて考える。
12.既習事項と同じように考える。 23.関数的に考える。
(3) 教材と「同じ基準で考える」
授業のねらいは、「同じ基準で考える」であった。実際に授業を行うと、伝えたかった「数 学的な見方や考え方」を直接声に出しては言わなかった。もちろん、口癖のように何度もその 見方や考え方を言ったり、板書したりすればアンケートの結果に強く反映されたものとなった だろう。しかし、それではその見方や考え方が本当の意味で生徒に定着あるいは体得したかど うかは大いに疑問に残る。アンケートから判断できるのは、生徒が授業で見方や考え方を使っ て認識できたかどうかであって、生徒の中に育ったかどうかではない。そのためには、評価を どうするかが新たな問題となる。育てたい「数学的な見方や考え方」を自然な形で伝え、生徒 自身が気づき、次の機会には使ってみようと思わなければならない。
そこで、ある1つの「数学的な見方や考え方」を想定し、教材構成の素材の難しさとともに、
展開も難しいことがわかった。
4.研究成果(2)
3の研究成果(D の結果と考案をふまえて、次に4.1.でカリキュラムに沿った内容や授業計
画の中の1つの授業で「数学的な見方や考え方」を育てる授業の展開を考える。
4.1.指導の概要11)
今回の授業は「数学的な見方や考え方」を育成する「三平方の定理の授業」は、どうあるべき かを考察するために実践した。4.2.で詳しく述べているように、まず、生徒の活動である「学習 内容」を考え、予想される生徒の反応を考え、それに対するアドバイスという形で「指導内容」
を考えた。そして、この2つの内容が出来上がったところで、2つの「内容」に、必要な「数学 的な見方や考え方」を「予想した数学的な見方や考え方」として指導案を作成した。
4.2.で述べている授業実践は「実践記録」である。
4.2.授業実践
【中学校第3学年】三平方の定理
(1)目標 三平方の定理の発見から証明をする活動の中で「数学的な見方や考え方」を意識した り、使ったりする。
(2)展開の概略
学 習 {l.弄
▼ 8x836・から、Hズ ー の帳ができるのはおかしい。
一陣丁礼がある
・比て考えるとおかしい。
同じ而餞の正方艶を考えるの か。
ズル1)
X8の折からはx5の仮を
疑間の を持って 2.問題澄諷{持って るパズルに挑戦して下さい 15 貝仕的に
(パズル2)
・折り紙をまず2つに切って下 さい。次にすめにU切って4枚の 紙を作って下さい,この41との 概を旺1てもとの正方形以外の 正力形を作ってTさい
・いろいろ考えてください。
すか 2.按什して
告.試行錆訂して
56 いろいろな考え/J
12.l,削、めだがら l
・伊柁示してください −8 分期して は.敗色そ真要して
芸霊票霊‡す年全部針宕すか I52鵬招える
一一番大きい⑤を証明します。
・まず四角形E F Gllが正方形 であることを鮭明する必要があ りますわ。
・回より
(alb111
,こ・ 一一 ニlト.・1 2
か成り立つことを見つけろ。
.3−4b7ニC2を導く。
・苛やl部でも証明できますわ。
・の.骨、⑮の址明はちょっと 棟しいですjつ。
い外の止別Zと軸正方形との[50逆向きに 一面脚的…える l‖捕批
文才を使って
・三平方の道理の正明から三平 方の定理を発見させる
・やってみてください。
・pしいそうですが、やってみ てください。
56・いろいろ左考え方てi
吉岡 睦美・吉岡 淳・山上 成美
4.3.結果と考察
(1)アンケートの結果(中学校第3学年,39名:自由記述による:複数回答あり)
(D22名:試行錯誤して考える。
②15名:いろいろな形ができる。考え方がひとっでないこと。いろいろな方法があること
③5名:結論は同じでも、証明の仕方は必ず1つではない。
④5名:操作的に。折り紙を使い実際に組み合わせるとわかりやすい。
(92名:なぜそうなるのかということを自分の目で確かめる。
⑥1名:すべてがわからなくても答を出せる規則がある。
⑦1名:数学的な考え方ができるといろいろな落とし穴みたいなものが見えてくる。
⑧3名:三平方の定理を学んだ。
(2)アンケートの分析
アンケートの回答数で10名以上解答のあったものを「効果大」、9名以下のものを「効果小」
として分析した。
①効果大の「見方や考え方」 ②効果小の「見方や考え方」(診解答数0の「見方や考え方」
25.試行錯誤して 30.証明しようと 8.分類して 56.いろいろな考え方で 22.操作して 21.日分の考え方を
1.疑問の目を持って 42.観点を変更して 24.確かめながら 52.理由を
2.問題意識を持って 60.逆向きに 11.帰納的に
(3)本授業と「数学的な見方や考え方」の育成について
39人の生徒のうち「予想した数学的な見方や考え方」の項目を書いた生徒が32人いた。この 授業の1ケ月前から、授業ごとに「本日の数学的な見方や考え方は何ですか。」という自由記 述のアンケートを実践していたので、生徒一人一人にはある程度「数学的な見方や考え方」の イメージができていたと思われる。「予想した数学的な見方や考え方」を教師が口にしなかっ た割には捉えた生徒が全体の80%近くいたことは、生徒が「内容(知識)」を「数学的な見方 や考え方」を使いながら学習していたからではないだろうか。
アンケートの回答数で一番多かったのは「いろいろな方法がある」という意見であった。実 際、いろいろな生徒の作品を黒板で発表すると驚きの声とともに「模様が違うだけで、①と同 じ考え方だ。」とか「自分と同じ考え方だ。」などの声が上がっていて、アンケートの解答には 出てこなかったが「8.分類して」考える必要性は感じていたように思う。
反面、この授業の大切な考え方の1つである「30.証明しようと」考えるが少なかったのは、
証明の必要性を感じるだけの時間的保証ができなかったからであろう。特に後半に出てきた
「③や④は証明できそうだ。」とか「①や②や⑥は証明できるのか。」という意見に対して生徒 が考える時間がとれなかったことが悔やまれる。特に⑥については、折り紙の使用枚数が3枚 であることや証明に相似の関係を使うことなど、発見した生徒以外でも十分興味を持つ内容で あったのに、活用できなかったことは残念であった。
今回のように授業の中で「予想した数学的な見方や考え方」をできるだけたくさん教師が考
えておくと、どの見方や考え方が生徒に伝わったかがよく分かり、その内容によっては「教師
中心」の授業か「生徒中心」の授業かも分析できるように思う。今回の授業でいえばアンケー
トの結果より、前半は「生徒中心」で後半の証明部分は「教師中心」であったと思われる。
5.おわりに
本稿では、「数学的な見方や考え方」の育成を重視した指導法について、まず、「数学的な見方 や考え方」の歴史的考察を行い、「数学的な見方や考え方」を定義した。そして、「数学的な見方 や考え方」に生徒の意識調査について考察、実践し、「数学的な見方や考え方」の育成を重視し た指導法について検討した。
この結果、「数学的な見方や考え方」の育成を重視した指導法の例を示すことができた。さら に教師の意識が、「数学的な見方や考え方」の育成において影響することが明らかになった。つ まり、教師が意識して、「数学的な見方や考え方」を板書したり、口頭で言ったりすることが影 響するということである。また、発言を重視したり、ノートに記述させることによって、生徒に 意識させることも必要である。
もとより、「数学的な見方や考え方」の育成を重視した指導には、今回示した例には表れない 多くの問題が存在する。たとえば、「数学的な見方や考え方」を重視する、より多くの教材分析
と教材開発、「数学的な見方や考え方」の育成を重視した指導の評価方法の形式化などであるが 今後の課題としたい。
参考文献:
1)中原忠男:「第2章 数学的な考え方とその育成」、岩合一男 編『教職科学講座20 算数・
数学教育』、福村出版株式会社、1990、pp.28−48
2)文部省:『中学校指導書 数学編』、大阪書籍株式会社、平成元年、p.6
3)文部省:『高等学校学習指導要領解説数学編・理数編』、株式会社ぎょうせい、平成元年、
p.13
4)片桐垂男:『数学的な考え方・態度とその指導1数学的な考え方の具体化』、明治図書出版 株式会社、1988年
5)片桐重男:『数学的な考え方・態度とその指導2 問題解決過程と発問分析』、明治図書出版 株式会社、1988年
6)吉岡淳、吉岡睦美、山上成美:「数学的な考え方を育成する指導法について 1生徒の視点 に立った数学的な考え方−」、日本数学教育学会全国算数数学教育研究滋賀大会発表資料、
1993年
7)中島健三:『算数・数学教育と数学的な考え方』、金子書房、1981年 8)文部省:『小学校学習指導要領(平成元年3月)』、大蔵省印刷局、平成元年 9)文部省:『中学校学習指導要領(平成元年3月)』、大蔵省印刷局、平成元年 10)文部省:『高等学校学習指導要領(平成元年3月)』、大蔵省印刷局、平成元年
11)山上成美、吉岡睦美、吉岡淳:「数学的な見方や考え方を重視した指導法について」、日本数
学教育学会全国算数数学教育研究三重大会発表資料、1994年
吉岡 睦美・吉岡 淳・山上 成美
〔資料1〕
ア ン ケ ー ト 調 査
学校名( )( )咋 ( )組 ( )離 氏名(
次のことばは『数学的な考え方』と思いますか.また、その考え方は、どんなl申こ使いますか.あてはまるものにOをつけて下さい.
数 学的 な 考 え方 思 想 わ わ か な ら う い な い 巨 .類 間 の 日を もっ て考 える
2 .間 瓜意 識 をも って考 え る 3 .校 に 立つか を考 え る 4 .的 確 に解決 しよ うと考 える 5 .使 える こと は何 かを考 え る 6 .】甘 仏づ けて考 え る 7 .3己録 して考 える 8 .分 が して考え る 9 .比 率 的 、舎 哩 軸 こ考 え る 10 .紳 成 して考 え る
1 1 .猫 納 的 (共 通の き ま りを見 つ ける)
1 .既習 郡項 と同 じよ うに考 え る 13 .駒 相 的 (あ るき ま りとな る朝 地 を考 える)
14 .抽 伽 的 に考 える ■ l
1 5 .具 体的 に考 える 1 .基本 的 な懸念 に 正 して考 え る 17 .一般 的 に考 える
】8 .柑 殊 化 (柑 別 な鳩 舎 に して考 える)
1g .形 式 化 (空 に はめ よ うよ うと考 え る)
20 .小 位 を址 って考 える 21 .白分 の考 えを ど う衣す か を考 える 2 2 .操作 して考 える
23 .関数 鋸 こ考 える 封 .確 かめ なが ら考 える 25 ∴灯行相 鉄 して考 える 26 .論 理的 に考 え る 27 .数 を使 っ て考 える 2 8 .定 哩 ,定 孜 を使 っ て考 える 2 9 .公式 、式 を仕 っ て考 える 3 0 、証明 しよう と考 える 3 1 、文 字 を使 って 考 える 3 2 .グラ フを沓 いて 考 える 3 3 、回 や固 形 に裁 して考 え る 3 4 .m を播 い て考え る − 3 5 、i q をつ くっ て考 える
歎
思
つ 学 的 な
考 え方 思 わ わ か な ら い な い
諮 .脇 道 を立 てて 考 える 細 ■
3 7 .自然現 灘 を表そ うと考 える
:相 .わ か りや す く考 え る 3 .粧膵 だて て考 える 4 .見通 しを立 てて考 え る 4 1 .華判ル て 考 える 4 2 」 軋恵を変 更 して考 え る 43 .予想 を立 てて考 え る 用 .集 中 し て 深 く考 え る 4 5 .閉 じプ.【卸 でみて考 える 朋 .感 骨川 に考 え る
47 .ひ らめ きで考 え る 48 .1隋龍 しよ うと考 える 49 .機械 的に 考 える S O .例 外 をな くそ うと考 える
5 1 .呪 尖的 に考 え る ■ l
5 2 .理 由 を考 える
男 .火 ざ っぱに考 え る .およ そ で考え る 54 .安 仝 勅に 考 える
55 .答 が 1 つ にな る よ うに考 える 56 .い ろいろ な考 え方 で考 え る 5 7 .か罪 して考 え る 5 8 .純水 に忠 実 に考 え る
1 5 0 .題意 を哩 解 しよ う とす る 描 潮 力) ■ l 6 0 .逆 向 きに 考 える
6 1 .バ ランス (調 和) を とって 考 える 6 2 .イメ ー ジ して 考 える 釘 .創 造的 に 考 える 6 4 .広 い机 !男 こ立 って考 え る 6 5 .1肛細に し よ うと考 える 砧 .理 屈 勅 に考 える 6 7 .乱li蓑 して 考 える 6 8 .分 析 しよ う と考 える 間 ..豊か な心 で考 える 7()∴肌 を しな いよ うに考 える
「数学的な考え方と思う」−「数学で使う」
吉岡 睦美・吉岡 淳・山上 成美
全学年に共通する特徴
割 合 計 崇 ね ら い 対 顔 内 容 そ の 他
7 5 % 以 上 2 7 . 敦 2 9 . 公 式 、式
5 0 % 以 上 2 4 . 確 か め な が ら 11 .帰 納 的 6 . 関 係 づ け て 20 . 鞄 位 3 6 . 筋 道 を 立 て て 1 g . 形 式 化 28 .定 理 、 定 義
3 9 . 順 序 立 て て 3 3 . 図 や 図 形 3 1 .文 字
4 1 . 整 理 し て 3 2 . グ ラ フ
5 8 . 基 本 に 忠 実 に 3 5 . 表
6 5 . 明 確 に し よ う と 5 7 .計 算 し て
50 % 未 満 3 . 役 に 立 っ か 14 _ 抽 象 的 ZZ .操 作 し て
2 1 , 日 分 の 考 え を ど 1 7 . 一 般 的 48 . 略 言己し よ う と
う表 す か 18 . 特 殊 化 5 1 . 現 実 的 に
61 . バ ラ ン ス を と っ 5 0 . 例 外 を な く そ う 54 .安 全 的
て と
5 3 , 大 ざ っ ば に 5 5 . 答 が 1 つ に な る
よ う に
63 .創 造 的 机 .豊 か な 心 で 70 .損 を し な い よ うに
25 % 以 下 10 . 評 価 して 3 7 . 自 然 現 象 を 表
そ う と 購 . 感 情 的 に
萎 縮 慧 芸 : 芸 : 二
日 ,帰 納 的
j
8 . 分 類 して 1 6 . 基 本 的 な 場 合 に 直 して
日 . 形 式 化
7 . 記 録 し て 20 , 単 位 2 9 . 公 式 、式 3 5 . 表
6 9 . 豊 か な 心 で
目 2 4 . 確 か め な が ら 5 6 . い ろ い ろ な 考 え で
6 5 . 明 確 に し よ う と
2 7 . 敷
5 5 . 答 が 1 つ に な る よ う に
57 . 汁 算 し て
背 景 ね ら い 対 象 内 容 そ の 他
ノト S で 高 い 項 目
10 . 評 価 して 2 5 . 試 行 錯 誤 し て
46 .感 情 的 に 48 .時 吉己し よ う と 54 _安 全 的 に 61 . バ ラ ン ス を と っ て
中 丁 で 高 い 項 目
4 . 的 確 に 解 決 し よ う と
9 , 能 率 的 、 合 理 的 に
3 6 . 筋 道 を 立 て て 3 9 . 順 序 立 て て
5 . 使 え る こ と は 何 か を
25 . 論 理 的 に
申 3 で 高 い 項 目
相 . 見 通 し を 立 て て 4 7 . ひ ら め き で
4 9 . 機 械 的 に 小 5 で 低
い 項 目
5 一 使 え る こ と は 何 か を
3 0 . 証 明 し よ う と
高 2 で 低 1 . 疑 問 の 目 を も っ 1 2 . イ メ ー ジ し て 8 . 分 塀 し て 7 . 吉己録 し て い 項 目 て
3 8 . 分 か り や す く 4 2 . 観 点 を 変 更 して 現 . 集 中 し て 深 く 5 6 . い ろ い ろ な 考 え で
6 4 ,広 い 視 野 に 立 っ て
4 5 . 同 じ基 準 で 見 て 5 7 . 測 量 し て 20 . 単 位 を 使 っ て 35 . 蓑 を 作 っ て