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首 椰 大 学 東 京
2018年 度 修士論文
成長曲線による再利用可能部品の 需要予測方法に関する研究
首都大学東京大学院 システムデザイン研究科
システムデザイン専攻 経営システムデザイン学域
17892519
鴫 原 晴香
指 導 教員 開 沼 泰 隆
目次
第
1章 序 論 ・ . . . . . . . . . . . . . . . . .
• 11.1
は じ め に
l1.2
研 究 背 景
11.3
研 究 目 的
I1.4
本 論 文 の 構 成
2第
2章 ク ロ ー ズ ド ・ ル ー プ ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ・ ・ . .
42.1
は じ め に . . . .
• • • • • • • • • • • • • • • 4 2.2サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .
4 2.3ク ロ ー ズ ド ・ ル ー プ ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ・ ・
10 2.4お わ り に . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
15第3 章 需 要 予 測 . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・
163.1
はじめに・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
1 6 3.23.3 3.4 3.5
需要予測モデル・・・・・・..............
時 系 列 デ ー タ の 少 な い と き の 需 要 予 測 . . . . 事 例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . お わ り に . . . . . . .
6 9 0 4 l l 2 2
.
. .
.
第 4 章 方 法 論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25
4.1は じ め に . . . . . . . . . . . . .
4.2
累 積 交 換 デ ー タ を 用 い る 方 法 ・
4.3需 要 予 測 式 ・ ・ ・ . .
4.4
最 大 累 積 需 要 量 の 計 ・ ・ ・ ・ ・
4.5提 案 し た 需 要 予 測 . . . . . .
• 25
・ 27
• 29
・ 30
・ 33 4.6
ロジスティック曲線とゴンペルツ曲線の統一表現可能モデル・・・
37 4.7お わ り に . . . .
• • • • • • • • • • • • • • • 3 8第
5章 結果と考察・・・・・・・・・•...... 40
5.1
はじめに・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
40 5.2最 大 累 積 需 要 量 . . . . . . . . . . . . . . . . .
40 5.3評価方法・・・・・・...............
40 5.4提案方法の結果・評価...............
40 5.5提案方法の考察...................
54 5.6統一表現可能モデルヘの当てはめ結果と考察......
55 5.7おわりに.....................
57第
6章 結 論 . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・
58謝辞..........•............ 59
参 考 文 献 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
60第
1章 序 論
1. 1 はじめに
1980年代にサプライ・チェーン・マネジメントという概念が登場して,以来日本で は,市場構造の変化や情報通信技術の発展のような社会的,技術的な背景のもとで,日 本においても 1990年代末から本格的にサプライ・チェーン・マネジメントの導入が始 まった.そしてそのサプライ・チェーン・マネジメントは20年以上の歳月が経過した 現在でもいまだに注目されている[6].
さらに,大量生産・大量消費を行ってきたことで資源枯渇が問題となっているため,
企業の社会的責任として環境に配慮した活動が求められるようになっている.これらの 問題を解決し,持続可能な循環型社会の実現のためリュースやリサイクルなど,使用済 みの製品を回収し新しい製品の生産に活かすことが求められている.
そのため,従来のフォワード・サプライ・チェーンに加え,製品の回収から再生産を 考慮したリバース・サプライ・チェーンを持つクローズド・ループ・サプライ・チェー ンが重要になると考えられる.
1. 2 研 究 背 景
高度経済成長期において,環境問題に対する意識が低く大董生産・大量消費・大量廃 棄を行うことで経済環境が急激に発展した.また,生産活動においても大量の廃棄物を 生み出しており,環境に対する取り組みがより一層求められるようになってきた.
企業の活動においても様々な方法で環境問題への対策がとられ,社会的責任を果たす ことに努めている.その中で,製造業では使用済みの製品を顧客が廃棄物として処分す るのではなく,企業が再製造のために回収するという形で環境問題への対策に取り組む 例が増えてきている.このシステムを機能させるために重要になるのがクローズド・ル ープ・サプライ・チェーンである.特に複合機を扱う企業ではクローズド・ループ・サ プライ・チェーンの中でも,資源消費や廃棄物の削減を目的として行われる使用済み部 品のリユース,リサイクル,そして新品同様に再生を行うリマニュファクチャリングが 注目されている.
1. 3 研 究 目 的
前節で述べたように複合機メーカーである(株)リコーでは,使用済み製品や部品を 用いることで資源消費や廃棄物の削減に取り組んでいる.製品に組み込まれている部品 は使用後,新しい部品と交換される.このとき重要なこととして部品の交換台数と交換 時期があり,これらを予測することがその後の生産計画を立てるために必要不可欠であ
る.交換台数の予測というのは使用済み部品の回収量の予測と同時に,新たな部品の需 要量の予測も可能とする.
もし,生産過剰となれば過剰在庫を生み,在庫廃棄率を高める.生産過少となれば,
店頭在庫不足による機会損失を発生させる.そのため,多くの企業では製品の過剰在庫 や販売の機会損失を少なくするために柔軟で素早い生産計画を立案するための需要予 測が求められてきている.
そのため,本研究ではロジスティック曲線,ゴンペルツ曲線,遅れS字曲線の3つの 成長曲線モデルを 6カ月ごとに選定し,需要予測を行う場合と, 1つの成長曲線モデル を用いて需要予測を行う場合とで予測誤差にどのように影響していくかを検証した.実 測データが6か月分得られるたびに,成長曲線モデルとパラメータの選定を行い,より 実績に近い予測値を求めていく.時系列データは多い方がより正確な予測モデルの提案 が可能となる.そのため6カ月の交換実績データが得られるたびに予測モデルのパラメ ータを変化させていく必要がある.
また,成長曲線を組み合わせる需要予測方法として,木村ら[26]による,ゴンペルツ 曲線とロジスティック曲線の両式を含む統一表現可能モデルが挙げられる.統一表現可能 モデルによって:m出した予測値と 1つの成長曲線のみを使用したモデルとの比較を行い,
統一表現可能モデルの有効性も検証する.
1. 4 本 論 文 の 構 成
本論文の構成を図 1.1に示す.第2章ではサプライ・チェーン・マネジメントの概要 と成功企業の事例,および課題について述べ,循環型社会構築に期待されるクローズド・
ループ・サプライ・チェーンの概要企業事例について述べる.第3章では需要予測方 法について述べ,事例として成長曲線モデルを用いる予測方法について説明する.第4 章では実測データが増加するたびにパラメータの更新を行うことでより実績値に近い 値を算出することが可能であることを述べ, 3つの曲線モデルを用いた需要予測方法の 提案をする.その後,ロジスティック曲線とゴンペルツ曲線モデルの統一表現可能モデ ルヘ当てはめ,統一表現可能モデルと 1つの曲線モデルとの予測誤差の比較を行った.
第5章では,第4章で述べたモデルの結果をまとめ,考察を行う.その後,需要量が急 激に増加する期間を推測することで,精度の高い需要予測について検討する..第 6章 では結論と今後の課題を述べる.
第 1
章 序 論
第
2
章 クローズド・ループ・サプライ・チェーン SCM概要,事例l [
CLSC概要,事例第3章 需 要 予 測
I 様々な需要予測方法 I累禎総需要鼠を用いたモデル I
' l I I I I I
.
'
. .
ゴンペルツ曲線とロジスティック曲線 パラメータの更新を行うモデル
I 1つの曲線モデル I I 3つの曲線モデル
I
統一表現可能モデル 1 1つの曲線モデル
̀ I/
第5章 結 果 と 考 察
シミュレーション結果 I 考察
‑
>
第
6章 結 論
図 1 .
1 本論文の構成第
2章
ク ロ ー ズ ド ・ ル ー プ ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン2. 1 はじめに
近年サプライ・チェーン・マネジメントと呼ばれる概念や戦略,手法に大きな関心が 持たれている.さらに,地球環境問題や資源枯渇問題などが顕在化される中で企業は環 境負荷に配礁したモノづくりを求められている.
本章では,サプライ・チェーン・マネジメントの概要と課題,それに対する手法と事 例についてまとめた後に,循環型社会,クローズド・ループ・サプライ・チェーンにつ
いて述べる.
2.2 サプライ・チェーン・マネジメント 2. 2.1 サプライ・チェーン・マネジメントとは
現在サプライ・チェーン・マネジメントと呼ばれる概念や戦略,手法に大きな関心が 持たれ,多くの企業で取り入れられている.その背景の一つには消費の多様化・高度化 や製品ライフサイクルの短縮化などの産業構造の変化がある.
戦後の日本は,何を作れば売れるのかある程度予測することが可能であった.
さらに,作れば売れる時代であったため,多くの企業が大量生産を行ってきた.これが 大量生産・大量消費につながっている.しかしバブルの崩壊とともに市場の成熟化が進 み,「消費の多様化・高度化」と呼ばれる傾向が強くなった.具体的には消費者が購入 する品目の数が増加し,消費者の嗜好は個人によって異なり,製品の使用期間の短縮化 が進んでいったのである.
このような消費者行動の変化に対応するために,製造業では従来から構築してきた少 品種・大量生産から,多品種・少量生産へと移行した.しかし,このような生産方式へ の移行によって企業が抱える在庫量は増え,経営を圧迫すると共に,市場の不確実性が 高い製品については,予想を超える売れ行きで欠品が発生してしまうこともある.店頭 での欠品は,ただ販売機会を損失するだけではなく,長期的な顧客離れを生む可能性が ある.そのため,企業は顧客の求める製品やサービスを適当なタイミングで提供するこ とが必要不可欠になっていったこのような問題に対してどのように対処するかは,企 業にとって解決すべき重要な経営課題となっている[1].
また,消費はますます多様化しており,企業内だけでなく企業間の連携が必要になって きている.さらに,多くの企業の市場が国内だけでなく海外にまで広がり,企業間の競 争が激化してきている.これらがサプライ・チェーン・マネジメント発展の背景の一つ といえるだろう.サプライ・チェーン・マネジメントは幅広く研究が行われており,一 概にサプライ・チェーン・マネジメントといえど,その解釈は人により様々で定義も
多少なり異なってくる.ここで定義をいくつか紹介する.
CSCMP(Council of Supply Chain Management Professionals) [7]によると,「サプラ イ・チェーン・マネジメントは,調達と購買,組立加工とロジスティクス・マネジメン トに関連する計画と管理が含んでおり,サプライヤー、中間業者、サードパーティープ ロバイダーとチャネルパートナーとの協調や協働を含んでいる.本質的には企業内、企 業間の需要管理と供給管理を統合することである.」と定義されている.
徳山ら[2]は,「サプライ・チェーン・マネジメントは、原材料の調達,部品の加工,
製品の組立て,倉庫や配送センターでの保管や仕分け,そして小売りを経て最終顧客に 至る全てのモノの流れを,各企業や事業体の活動なりとして,すなわち「供給連鎖」と
して捉える考え方」と定義している.
日本工業規格(JIS)[8]では、「サプライ・チェーン・マネジメントは資材供給から生 産,流通販売に至る物又はサービスの供給連鎖をネットワークで結び,販売情報,需 要情報などの部門間又は企業間でリアルタイムに供給することによって,経営業務全体 のスピード及び効率を高めながら顧客満足を実現する経営コンセプト.」と定義されて
¥ rヽる.
Mentzerら[9]は、サプライ・チェーン・マネジメントの目的は戦略的なネットワーク
(統合サプライ・チェーン・マネジメントによる顧客価値と顧客満足の実現)で効率性
(コスト削減)及び効果性(顧客サービス)を実現し,最終的に収益性をもたらす競争 優位性を創出することにあるとしている.
また, Lee[lO]は高いパフォーマンスを誇るサプライ・チェーンとして,三つの点を 指摘している.急激な需給変動にも即応できる俊敏さ (Agile),市場や戦略の変化に合 わせることのできる適応さ (Adaptable),サプライ・チェーンを構成している各企業に おける連携(Align)である.俊敏さ,適応性,連携を備えたサプライ・チェーンは持続 可能な競争優位性を企業にもたらすことが出来る.これらの条件を軽視し,少しの無駄 を許容することを恐れ,効率性のみの追及に偏りすぎると需要や供給の予期せぬ変化に 対応することができないと指摘している.
これらのことから川上に位置する原材料メーカーなどの供給者から川下に位置する消 費者に至るまでの一連の活動を統合し,激変する市場の状況変化に対し,サプライ・チ ェーン全体を俊敏に対応させ,コスト削減や顧客満足度の向上と競争優位性を図ること がサプライ・チェーン・マネジメントの目的であると考えられる.図 2.1にサプライ・
チェーン・モデルを示す.
サ プ ラ イ ヤ ー
発 注
LT ↑、
I、 供 給
LT工 場
発 注
LT↑ ↓
供 給
LT倉 庫
発 注
LT ↑ ↓供給
LTI 小売
需要
t
顧客
図
2.1サプライ・チェーン・モデル※[2]を基に加筆・修正
2. 2. 2 サプライ・チェーン・マネジメントを困難にする四つの要因[3]
前節で述べたようなサプライ・チェーンを実現することは現実的には困難である.そ の際に障害となるサプライ・チェーン・マネジメントの課題を大きく以下の四つと考え
られる.
( 1 )
需要の不確実性少品種大量生産から多品種少量生産へと移行したことで消費が多様化・高度化し,製 品のライフサイクルが短縮化してきているため市場動向の予測は非常に困難となって きている.とくに消毀財の場合には,製品属性が多岐に渡るため,それぞれについて売 れ行きを分析しなければならない.
需要の不確実性ばサプライ・チェーン・マネジメントを困難にしている最も根本的な 問題であり,精度の高い需要予測の必要性が挙げられる.
(2)顧客許容リードタイムと比較したスループットタイムの長さ
材料を調達してから生産し,消費者へ届けるまでの時間(スループットタイム)が顧
客許容リードタイム(購入の意思決定を行い,発注してから納品までのリードタイムと して許容できる時間)よりも短ければ,サプライ・チェーン・マネジメントは比較的容 易となる.しかし実際はこのようなケースは少ない.アパレル業界のような,生地を発 注し,納品を待って縫製を行い,店頭に届けるまでのスループットタイムに比べ,商品 の売れるシーズンは極めて短いと,受注生産が困難のため,需要予測に基づく見込み生 産を行わなければならない.その結果,在庫切れ,不良在庫を抱える原因となりサプラ イ・チェーン・マネジメントを行うことが難しくなる.
(3)プルウィップ効果
需要情報はサプライ・チェーンの川下から川上に向かうまでの間に,多段階の意思決 定方法,リードタイムの存在,需要予測の方法など様々な要因の影響を受けて徐々に歪 められ,需要の不確実性が大きくなってしまう.この効果のことをプルウィップ効果と
v ヽ う ・
プルウィップ効果の抑制にば情報の共有や価格の安定化,そして企業間の在庫政策,
価格政策,輸配送政策のコーディネーションなどが挙げられる.
( 4 )
デカップリングポイントにおける商品の多様性スループットタイムが長く,需要予測が難しいとしても,単一の商品だけを取り扱っ ている場合では,サプライ・チェーン・マネジメントは比較的容易である.
一方,商品が多様化してくると,通常サプライ・チェーン・マネジメントは難しくな る.特に,見込み生産と受注生産の境界となるのをデカップリングポイントと呼び,デ カップリングポイントにおける商品数の多様化が抑制することが,サプライ・チェーン・
マネジメントの管理は容易とすると考えられている.つまり,受注してから比較的少数 の部材を組み立てて,多様な商品を供給できることが求められている.しかし,デカッ プリングポイントの商品数が絞り切れない場合,受注引取ポイントの在庫を大量に抱え る必要が生じ,サプライ・チェーン全体が市場の影響を受けやすい不安定な構造になっ てしまう危険性がある.
デカップリングポイントの商品の多様化の解決策として,商品の多仕様化のポイント をできるだけ先送りにする戦略があり,これをポストポーメント戦略と呼ばれ,ヒュー レット・パッカード社やベネトン社の例が有名である.顧客の要求に応じた製品の分化 を出来る限りサプライ・チェーンの下流で行うことで,市場の不確実性の影響の極力排 除や,市場動向に即応したサプライ・チェーンの構築が可能になり,その結果として安 全在庫や売れ残り在庫の低減や顧客のサービスレベルの改善に繋がる,この戦略を行う 方法としては,部品共通化,コンポーネントの標準化,モジュール化,作業工程の標準 化,作業工程を後ろにずらすこと,作業工程の入れ替えなどがある.デカップリングポ イントを考えることは製品が多様化し,需要変動が大きい現代の市場において非常に重
要であるといえる.
2. 2. 3サプライ・チェーン・マネジメントの事例
本節では企業におけるサプライ・チェーン・マネジメントの導入事例として以下の三 社を紹介し,そのビジネス・モデルについて述べる
( 1 )
デル株式会社デル・ダイレクト・モデルはデル社[4][11]が顧客志向の企業理念に基づいて開発した 独自のビジネス・モデルである.メーカーのデルが顧客とのダイレクトな関係を築くこ とにより,製品の品質・性能・価格・納期・サービスなどあらゆる面において常に最高 の価値を顧客にご提供することがデル・ダイレクト・モデルの基本思想であり, 1984
年
の創業時からデルのすべての事業活動の根幹となっている.このモデルによる重要な成 果の一つは, VMI(Vendor Managed inventory)と ITを用いて見込み生産を受注生産に 変えたことである.また,デル・ダイレクト・モデルは次の二つの戦略を持ち込んだ.一つ目は,マス・
カスタマイゼーションである.これは大量生産(マス・プロダクション)のメリットを 生かしながら顧客のニーズに合わせた(カスタマイズされた)製品を提供することであ る.そのために,企業にプロセスをモジュール化して,個々の顧客の要求に合わせてモ ジュールを組み合わせるように製品を形成する体制が必要であり,それを支援する IT システムも必要になる.二つ目はポストポーメントである.これは顧客のニーズが確定 する前は見込みでベースとなる共通かつ標準的なキットを作っておき,ニーズが確定し た時点で,そのキットに指定のモジュールを組み付けていく注文方式である.そのため には,完成在庫を持つ必要はないが顧客の要求する納期に間に合わせて生産する能力を 持たなければならない.図 2.2にデル・ダイレクト・モデルを示す.
需要予測
消費者
(ユーサー)`
製
品
i‑ 寄
部品製造業者 製品情報
部
品
配 送 状 況 / 二 三 二 =
生産状況・出荷依頼 ズ
塁 !
運送業者 (FeDEX) 製 品 物 流
工場
図
2.2 デル・ダイレクト・モデル※
[4]を基に加筆・修正(2)トヨタ自動車
トヨタ自動車[4]では, JIT(Just In Time)生産方式を取り入れている.これにより,
リードタイムを徹底的に管理し,在庫,リードタイム,補充,品質などのムダを排除し ている. JITとは,「必要な物を,必要な時に,必要なだけ生産する」という概念であり,
「カンバン」を情報媒体として用いた調達•生産・物流のサプライ・チェーンが構築さ
れている.従って, JITはカンバン方式とも呼ばれることがある. JITの推進手段であ るマネジメント活動には,短納期生産,段取り時間の最小化,ロットサイズの縮小化,
待ち時間の最小化,リードタイムの短縮化,品質改善やサプライヤーとのパートナーシ ップ化などがあり,これらの活動を経て,トヨタ自動車は現在世界トップの自動車メー カーとなった.
(3)オムロン
︐
オムロン[4]は,センシング&コントロール部門を担っている IAB事業における生産 拠点を中国の上海に設立する取り組みを 2005年から開始した IAB事業とは,インダ ストリアルオートメーションビジネスのことであり,自動車,デジタル,食品・日用品,
社会インフラの 4業界への選択と集中をグローバルで展開している.日本国内の事業所 は製品開発の技術拠点として再編し,上海では部品調達から設計,生産までを一貫して 行うように変更した.これは製品の付加価値などを高めつつも生産コストを抑え,また 製品の機会損失と在庫過多を抑えたサプライ・チェーンを構築するために,こうした生 産拠点の整備や新システムの導入などによる工場主体の在庫管理を行い,各リードタイ ムの短縮や供給体制の強化を図ることで,事業の効率化を推進している.
2.3ク ロ ー ズ ド ・ ル ー プ . サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 2. 3. 1 はじめに
前節で述べたようにサプライ・チェーン・マネジメントを取り入れている企業は増加 傾向にあり,今後企業間の競争は国内のみならず海外にまで及び,さらに激化すること
が予想される.また,主に製造業では商業的なものに留まらず,企業の社会的責任(CSR) として環境に配應した生産活動が求められてきている[5].
このような状況の中で他企業との差別化を図るために,クローズド・ループ・サプ ライ・チェーンが重要になると考えられる.
本節ではまず循環型社会について説明する.その後,循環型社会構築に期待され る,クローズド・ループ・サプライ・チェーンの概要,現状及びクローズド・ルー プ・サプライ・チェーンが抱える課題について述べる.その中で,サブシステムの一 つである, リマニュファクチュアリングについて詳しく述べる.
2. 3. 2 循環型社会
戦後の日本は作れば売れる時代であったため多くの企業が大量生産を行ってきた.当 時は環境問題に対する意識が低く,環境への負荷を無視した大量生産・大量消費の経営 が行われていたまた,消費者による大量廃棄も行われたしかし近年,二酸化炭素を 主とする温室効果ガスの増加による地球温暖化や森林伐採による砂漠化,石油等の資源 枯渇や異常気象の増加など環境問題が顕在化してきており,それを解決することが求め られている.これらの問題を解決しなければ今後も国や産業の発展は難しいと考えられ,
環境問題に対する意識が大きく高まったそのため今後の国や産業の継続的な成長には 環境負荷を減らした生産活動が必要であると共に,資源の再生・再利用や廃棄物の削減 などに取り組んでいく必要があると考えられる.
このような社会の構造を変え,自然界から資源採取を可能な限り少なくし,再生・再 利用することで廃棄物を最小限に抑える社会へと転換しようとしたのが「循環型社会」
である. 日本では循環型社会実現に向けて 2000年に循環型社会形成推進基本法が執行
された.これは循環型社会を構築するにあたっての国民,事業者,市町村,政府の役割 が規定された法律である.循環的な利用が行われる物品と処分が行われる物品を「廃棄 物等」とし,廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけ,その循環的な利用 を促している.この法律では処理の優先順位が初めて法定化され,その優先順位は(1) 発生抑制,(2)再使用,(3)再生利用,(4)熱回収,(5)適正処分となっている[12].
基 本 理 念 と し て 排 出 者 責 任 と , 拡 大 生 産 者 責 任 (EPR: Extended Producer Responsibility)という考え方が取り入れられ,これは経済協力開発機構 (OECD)加盟 国政府に対するガイダンス・マニュアルに策定されている.排出者責任とは,「廃棄物 の処理に伴う環境への負荷の低減に関してはその一義的な責任を排出者が追わなけれ ばならない」という考え方である一方,拡大生産者責任とは「生産者に製品のライフサ イクルにおける責任を課すことで,製品から発生する環境負荷の低減を目指す戦略であ る」という考え方である[13].
こういった環境への意識は徐々に広がっていき,
EU
では2003
年に廃電気・電子機器 の削減・再利用・リサイクルを目的とした WEEE指令と,有害物質の使用を禁止とした RoHS指令が執行され,環境対応が社会的に求められるようになった[1].資源の消費量,廃棄物の削減という観点から循環型生産システムの構築は今後ますま す重要になると考えられる.循環型生産システムは,廃棄される製品を回収して新しい 製品の生産に活用するといったシステムであり,次節ではその循環型生産システム確立
に期待されるクローズド・ループ・サプライ・チェーンについてまとめる.
2. 3. 3クローズド・ループ・サプライ・チェーン
環境破壊や廃棄物の問題は日本のみならず,世界共通の問題となっている.この問 題を解決するために,持続可能な社会構築が必要であり,循環型生産システムが重要 視されている.こうした環境問題の懸念からサプライ・チェーン・マネジメントはサ プライ・チェーン全体の最適化を目指した.ただ,サプライ・チェーン・マネジメン トはあくまでサプライヤーから最終消費者に至る,サプライ・チェーン内での最適化 であり,消費者が購入した後についてのことは考慮されていない.現在の環境問題を 考えると,消費者が製品を使用した後の廃棄物やリサイクルといった消費者側の生産 活動までを考慮する必要がある[14].そこで,従来のサプライ・チェーン・マネジメ ントが対象であるフォワード・サプライ・チェーンに, リュースやリサイクルを考慮
したリバース・サプライ・チェーンを組み合わせたクローズド・ループ・サプライ・
チェーンが重要となってくる.
循環型のサプライ・チェーンを構築するためには,生産・流通・消費といった流れ(フ ォワード・サプライ・フロー)のあとに回収・再生産・流通といった流れ(リバース・
サプライ・フロー)を付け加える必要がある.フォワード・フローとリバース・フロー が一体となり,閉じた循環をなすサプライ・チェーンをクローズド・ループ・サプライ・
チ ェ ー ン と 呼 ぶ 図
2.3にクローズド・ループ・サプライ・チェーンの概略図を示す.
原材料調達
部 品 生 産 製 品 生 産
「―‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑」I
i
部 品 再 生 ― 「 分解・洗浄・ 検 査 ーロ←—l
二
廃 棄
使 用
部 品 ・ 製 品 回収
図
2.3クローズド・ループ・サプライ・チェーンの概略図
※
[5]を基に加筆・修正
また,実線をフォワード・サプライ・チェーン,点線をリバース・サプライ・チェーン とする.
2.3.4
クローズド・ループ・サプライ・チェーンの事例
循環型社会の実現に向けて多くの企業クローズド・ループ・サプライ・チェーンに取 り組んでいる.本節では例として複写機メーカーの富士ゼロックスとリコーを紹介し,
その特徴を述べる.
( 1 ) 富士ゼロックス
富士ゼロックス
[5][15]は資源循環システムを「使用済み製品は廃棄物ではなく貴重 な資源である」という考えに基づき構築している.このシステムは,使用済み製品を資 源として有効利用する「クローズド・ループ・システム」を中心に,部品の再使用を前 提に環境負荷の少ない製品作りを目指す「インバース・マニュファクチャリング(逆製 造)」,再使用できない部品を分別・賓源化し,再び新しい資源として活用する「ゼロエ
ミッション」の三つで構成されている.次に示す図
2.4がその略図である.
インバース ・ ライフサイクル計画 マニュファク
チャ リング
リュース/リサイ クル計画 環 境 影 響 ア セ ス メ ン ト クローズド・ループ・システム クローズド ・
ループ.
I部品リュース
システム
材 料 リ ユース 有害物質分別
ゼロ・ マ テ リ ア ル リ サイ クル
エ ミ ッ シ
サ ー マ ル リ サ イ ク ル
廃棄ゼロ/汚染ゼロ/不法投棄
図 2.4
富士ゼロックスの資源循環システム
※[15]
を基に加筆・修正
インバーズ ・ マニュファクチャリングは,ライフサイクル企画, リ ュース/リサイク ル設計,環境影梱アセスメント,クローズド・ループ ・ システムの四つのステップで構 成されている資源循環システムの根幹となるクローズド ・ ループ・システムは,部品 のリユースを最俊先にしている.これらを実現するために,新商品を企画する段階から,
部品の再使用を前提としたライフサイクル企画を導入している . 使用期間が
3 5年で ある複写機は,回収されるまでの間に機種の世代交代が予想される . そのため部品リュ ースを効果的に行うには ,商品が使用済みとなって回収された際に,後継機の部品とし て再使用できるような多世代にわたる企画が欠かせない
.また ,再使用部品を拡大するためにリユース/リサイクル設計にも取り組んでいる.
さらに,環境アセスメントを実施し,環境に負荷を与えないような商品作りを目指して いる.廃棄ゼロ化に向けた活動がゼロエミッションである.ここでもクローズド・ルー プ・システムの基本的な考え方を基に,部品リュースを最優先にしている.
そして,再使用できない部品は再資源化工程で最大 44部品類に徹底的に分別し,再資 源化される.これまで再資源化率の低かったガラス・ゴム系も資源として活かされてい
る.
さらに,業界では初めて,新品と同等の品質でリサイクルプラスチック素材を提供で きる技術を素材メーカーと共同開発した.富士ゼロックスの資源循環システムは,一度 使った資源を活かして,できる限り新たな資源は使わずに,廃棄ゼロを実現するもので
ある.
富士ゼロックスでは,リュース部品を使った商品は中古機として売り出さず,新品同 様のメーカー保証をしている.
(2)リコー
(株)リコー[5][16]では,資源・エネルギー消費量の低減,最終廃棄物の低減,有害 物の排出防止を目的として,これらを達成するための再生産サイクルの概念をエネルギ ー・原材料から製品に至るまでの各段階のリサイクルを示した循環型社会の概念図とし て,「コメットサークル」を提案している.その概略を図 2.5に示す.この概念に基づ き,環境保全と経済性を追求する経営を同軸のものとして企業活動を行っている.ごみ ゼロを全社目標とし,産業廃棄物,一般廃棄物だけでなく,生活系廃棄物までをゼロに し,資源の完全循環を目指している. 2000年度は国内 16拠点の全生産系事業所がごみ ゼロを達成している.また,製品のリユースや部品のリュースを優先的に行うことで使 用済み製品の経済価値を高い状態に戻し,部品としてリユースできないものはマテリア ルリサイクルに回すとしている.その場合も高品質な素材へのリサイクルや再び使う資 源へ戻すリサイクルを進め,コメットサークルによる高い経済価値の創出と新たな資源 の投入や廃棄物の発生を抑制することを目指している.
富士ゼロックスでは,リュース部品を使った商品は中古機として売り出さず,新製品 に使用し,この新製品を新品同様のメーカー保証をしているのに対して,リコーではリ ユース部品を使った商品は中古機
( R C
機)として売り出している.具体的な例として,リコーは,デジタルモノクロ複合機の新製品として,「imagioMP 7501RCシリーズ」な ど, 2シリーズ4モデルを発売したこれらの新製品は,使用済みの「imagioMP 7501 シリーズ」などを回収し,先進技術によって再生処理を行った,リコンディショニング
( R C )
機である.リユース部品の使用率は質最比で平均85
%を達成し,製造工程におけ る二酸化炭素の排出量は新造機と比較して約 97%削減するなど環境負荷の低減を実現 している.またリユース部品を使用しながら,新造機と同等の品質検査をクリアしてい る.2.4
おわりに
センター 業 者
図2.5 リコーのコメットサークル
※[16]を基に加筆 ・修 正
回収業者
最終 処分業者
本章では,サプライ・チェーン ・マネジメントの概要についてまとめるとともに,循 環型社会構築に期待されるクローズド・ループ・サプライ・チェーンの概要について述 べた.多品種少最生産が進む現代においてサプライ・チェーン ・マネジメントの重要性 が高まっている.しかしサプライ ・チェーン・マネジメントを困難にしている要因がい くつかある.その中で需要の不確実性というものは最も根本的な問題である.従って,
サプライ ・チェーン・マネジメン トを円滑に行うためには精度の高い需要予測の必要性 が挙げられる.次章では,需要予測についてまとめ,特に時系列データが少ない時の新 製品の需要予測方法について述べる.
第
3章 需 要 予 測
3. 1 はじめに
製造業において,販売計画や生産計画を立案するために市場動向をきめ細かく把握 し,予測することは重要な問題である.消費財メーカーにおいては市場の状況を正確 にリアルタイムに把握すること,資本財メーカーでは顧客企業の生産計画の情報をそ の変化を含めタイムラグなく共有する必要がある[17]. しかし,大量生産,大量消費 システムの時代から多品種少量生産システムの時代へのパラダイムシフトの中で,製 品のライフサイクルが短くなり,市場動向の予測は困難なものとなった.また生産性 の向上からコストや品質だけで顧客のニーズに応えることに限界が生じてきている.
そのため,多岐にわたる商品仕様や製品の開発速度の速さが必要となり,個々の製品 の特性の細かな分析を考慮することに加え,マーケティング活動などの効果を考慮し て,需要予測を立てることが必須になってきたこのため需要予測が以前に比べてよ り困難になってきている.製品の生産が過剰となれば,過剰在庫を生み,在庫廃棄率 が高まる.そうした在庫の廃棄にもコストはかかり,製品のライフサイクル収益を下 げることとなるまた製品の生産が過少となれば,店頭における在庫不足により,機 会損失を発生させてしまい,これもまた製品のライフサイクル収益の低下につながる [18].正確な生産計画ができれば、短期的には販売機会損失による売上減や在庫量過 多による管理コスト増大を防ぐことができ、長期的には企業の経営戦略を正しい方向 へ導くものとなる.さらに近年ではグローバル化やニーズの多様化により企業にも柔 軟で素早い生産計画の立案が求められてきている[19].正確な生産計画を立案するた めには高い精度の需要予測が必要不可欠となり,需要予測について見直すことは意義 あることである.
3.2 需 要 予 測 モ デ ル
予測には各種の手法[20]があり,それぞれに特徴がある.予測は,過去のデータに 頼りながら予測モデルを活用する定量的予測法と,論理構造の立場から需要量を推定 していく判断予測法の二つに大きく分けられる.予測の各種手法を図 3.1に示した.
定量的
予測法
判 断
予測法
3. 2. 1定量的予測法
線形予測 時系列モデル
非線形予測 回帰モデル
デルファイ法
営業マン積み上げ法
マーケットリサーチ法
図
3.1予測の各種手法※
[20]に加筆・修正
移動平均
指数平滑
分解法
過去のデータを用いて,関数を当てはめていこうとする定量的予測法で最も一般的 なものは時系列モデルであり,時間経過とともに形成されるパターンのモデルを構築 し,それを先に延ばすことによって将来を予測していく.これに対して回帰モデルは 時間以外の変数を使った予測法である.時系列モデルの構築に使用されるのは売上実 績などの過去のデータのみである時系列で変化するパターンを参考にモデルを作成 し,将来を予測する.過去のデータのみで作成できる時系列モデルは導入しやすいた め,多くの企業で主流となっている.一方で売上実績を構築する内部の要因を解明し てモデルを作成するわけではないのである意思決定が売上にどのように影響を及ぼす かといった予測には適していなく,そういった場合は回帰モデルが用いられる.
( 1 ) 時系列分析
時系列分析は需要の連続性と相関性に基づいている.過去の需要データがない場合
や,現在の需要が過去の需要に対して完全独立である場合には,時系列分析は成り立
たない.そのため,時系列分析ではまず過去のデータを蓄積しておくことが求められ る.
一般に時系列は,傾向変動,循環変動,季節変動,不規則変動の四つの時系列の要 素から成り立つと考えられている.この四つの変動を分離させ,それぞれの変動を分 析するモデルと,予測する変数(自己指標)の階差値を過去の各時点における階差値 で表示した関数を用いようとする自己回帰モデル (ARモデル)に分けられる.
傾向変動とは,予測する変数を長期的に見た時に,上昇傾向なのか下降傾向なのか を示すものである.これは変数の細かな変化を見るのではなく,大局的に見た傾向を とらえる際に見る変動である.傾向変動の分析方法として移動平均法が有名である.
循環変動とは,予測する変数がある周期性をもって現れる変化を示すものである.
傾向変動とは違い,上昇と下降の変化が一緒に見られる.循環変動の分析方法として は,これログラム分析やピリオドグラム分析,スペクトル分析が活用されている.
季節変動(とは,季節ごとに繰り返し起こる変化を示すものである. 1年を周期とし た変動パターンを見せる.予測する変数で 12か月移動平均を行うことで,季節変動を 取り除くことができる.季節変動の分析方法としては,米国の
CENSUS
局法や日本のEPA
法などが有名である.次に自己回帰モデル(autoregressive[AR]model)について述べる. 自己回帰モデルと は,予測変数のある期の値が,純粋にランダムな変動と過去の値の影署による部分
(自己指標の過去の各時点における階差値)の和で表されるモデルである.このモデ ルを変形させたもので,生産予測などの短期の予測を用いる際に用いられる指数平滑 法がある.指数平滑法は直近の売れ行きや変化を重視する場合によく使用される
[20].
また,上記の自己回帰モデルにMAモデルという過去の各時点における不規則な変動 のウエイト付の累積を複合させた, ARMAモデル(autoregressivemoving average model)がある.さらに時系列の各時点間の差をとることで定常時系列得て, ARMAモデ ルで表わすARIMAモデルがある.
上記のモデル以外に,新製品普及モデルとして,少ない時系列データから製品の成 長,成熟,衰退の全過程における需要を表す,成長曲線モデルも存在する.よく使わ れるモデルとして,バスモデル,ゴンペルツ曲線,ロジスティック曲線があげられ
る.
(2)回帰分析
需要系列間の相関性を用いて需要を予測する.回帰分析の目的は,需要決定要因が 与えられたときに需要がどれほどになるかを推定,予測すること,また需要と需要決 定要因の間の理論的関係の樹立ということが考えられる.
また,相関性は必ずしも因果関係があるとはいえないため,回帰モデルを構築する 時は多重共線性や因果関係をしつかり分析する必要がある.
3.2.2判断予測法
予測モデルにおいては,永続性が保証されることが望まれている.それは,予測に おいて過去のデータを正確に把握すること,根元法則の永続性が必要とされる予測の 本質的な原理から当然である.そのため,対象とする製品の需要構造を正確に理解す ることが重要であり,それに適したモデルを活用することが必要である.一般的にデ ルファイ法,営業マン積み上げ法,マーケットリサーチ法などにより予測していく.
判断的予測法は,経済学やマーケティングにより構築されることが多いが,特に市 場行動や製品計画などのマーケティング理論を取り入れたものが多く,主流となって いる.次節では時系列データの少ない予測方法とモデルを紹介する.
3.3 時 系 列 デ ー タ の 少 な い と き の 需 要 予 測[22]
前節での需要予測としてあげた時系列分析はいずれも長期的な時系列データが必要 である.統計的な予測方法では基本的に長期間の出荷量や販売量などの時系列データ が存在する既存製品を対象とする.そのため時系列データの少ない市場に出始めたば かりの新製品の需要予測の場合は,十分な時系列データが得られないため,一般的に は新製品に類似した既存製品の時系列データを新製品の過去の時系列データとして仮 定することで,足りないデータを補足し,統計的方法を適用している. しかしこの予 測法では,多くの新製品で精度が低いことが問題となっており,新製品の需要を高い 精度で予測できる新たな方法が必要とされている.
3. 3. 1 従来の市場投入初期の需要予測
市場に出始めた新製品の需要予測の場合は,統計的な予測のための十分な時系列デ ータを取得できないため,直接統計的な予測方法を使用することができない.従来方 法である指数平滑法は, トレンドには線形,上昇,下降,なしという 4種類,季節指 数には加法的,乗法的,なしという 3種類によって,全部で 12通りの需要予測式が定 式化される.仮想的な長期間の新製品の時系列データに対して, 12種類の需要予測式
の中からBIC(BayesianInformation Criterion:ベイズ情報量基準)が最小となるもの を決定することで予測値を算出する.この際,時系列データの大部分が類似製品のデ ータであり,新製品の前に類似製品の時系列データを挿入しているため, BICが最小
となる需要予測式の選択は,暗黙のうちに新製品が類似製品の変動パターンと同じに なるということを仮定しているということになる. しかし実際には類似製品といえど も新製品と過去の既存製品とは異なった製品であるため,その変動パターンも異なっ ていることが多い.つまり,類似製品の時系列データが決定した需要予測式の選択と は別に,異なった種類のトレンド,季節指数で組み合わされた需要予測式を,新製品 本来の需要予測式として選択する必要がある場合が多くあるということが言える.こ れらが原因で,多くの新製品で十分な予測精度が得られることができなくなってしま