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政府赤字,資本移動および為替レート動学

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(1)

政府赤字,資本移動および為替レート動学

菅原晴之

1.序 論

近年における国際マクロ経済学の分野で,

静学体系および動学体系によって固定為替相 場制度および変動為替相場制度における均衡 条件,動学的安定性・不安定性に関する多く の特性が解明されてきた。

変動相場制度において,短期的には財政・

金融政策はマクロ実物変数に影響を及ぼすの であるが,長期的には実質タームでの利子率,

産出量,国際収支,対外資産等には影響せず に,貨幣数量説およびPPPが成立するとい う意見が支配的である。マネタリストによれ ば,もし財政政策等が実物変数に何らかの影 響を与えてるとすれば,その政策の短期的な 結果が正しくても,誤っていても,価格,物 価あるいは為替レートの期待を通じて一時的 に有効需要に影響を与えるにすぎない。長期 的には期待の形成を通じて,実物変数は恒常 的な水準に回帰してしまうのである。

その主張の結論を導く前提として安価な政 府または政府収支の均衡を忘れてはならない。

従来の国際金融論および近年の国際マクロ 経済学でも,国際間で移動する金融資産およ び金融フローの源泉は各国の民間企業が発行 する債券,株式および各国の外国為替,通貨 であった。金利および為替レートは貿易取引 における実物項目および資本収支上の各民間 金融資産の均衡および裁定により決定するフ レームワークが形成されている。しかし,現 実の経済では各国の政府が大量の国債を発行 しており,その一部は国際間で取引され,そ

の規模も次第に拡大しつつある。さらに,国 債の大量発行は国内経済における金利および 金融システム自体にも大きな影響を及ぼし,

金融自由化の引き金にすらなっている。にも かかわらず,近年の論争においても政府赤字 が引き起こすこの二つのファクターを十分配 慮しているとはいえない。

長期的な視点から,マネタリストが主張す る安価な政府は,民間主体が期待の調整を誤 らなければ,通貨量をコントロールするだけ で内外経済をバランスさせることは容易であ ろう。しかし,現実には各国政府は,近年大 幅かつ長期におよび赤字に悩まされており,

その要因も国により,また時代により異なる。

その上,わが国をはじめ諸外国でも長期かつ 大幅な政府赤字を続けてきたので,国際マク ロ経済学の動学的分析にも,利子支払いと資 産としての政府債権を含めた政府予算制約式 を導入する必要がある。

本稿では,このような政府予算制約式を導 入した上で,諸外国によって選択された各政 策が,国際間相互依存関係にある自国のマク ロ経済の変動にいかなる影響を与えるかにつ いて確かめたい。

第2章では,固定価格および固定為替相場 制度における動学的モデルを展開する。ここ では,政府予算制約と国際間相互依存関係の 他に,二つの特色を有するモデルとなってい る。第一に,政策パラメータとして,政府赤 字の資金調達手段として,貨幣の新造刷と公 債の新規発行の二つの組合せを,また中央銀 行による公開市場操作等を通じた外貨準備の

(2)

変化の不胎化の害IJ合を選択できる。第二l 各国国内居住者は自国の債券と他国の債券を 保有できるが,両者は完全代替ではないもの とする。したがって,国際間で資本は不完全 にしか移動しない。

3章では,物価変動を伴う固定為替相場 制の動学モデノレを展開する。産出量について は,ケインズ=フィリップス型の所得支出ア プローチを採用することにより,産出市場の フロー均衡式と他のパラメータによって決定 される点では短期の分析と差はない。しかし,

資産の均衡式およびストックとフローの関係 についてはマネタリストの見解を導入するo

4章では,変動相場制度における短期分 析の特性を確かめたい。

2.1.  固定価格および固定相場制度

相互依存関係にあるこ国間のモデルにおい て,両国間の為替レートは固定され,その水 準は1に等しいものと仮定する。さらに,自 国の一般物価は,財貨をニュメレールとする

乙とにより常に1に等しいとする。

はじめに,国内産出市場均衡条件は次の式 によって表されるo

H( Y D, r, V) X ( D*, r*, V*) (1)  O H1 1H2 0H3> 

0 x1 1X2 0x3

Y=実質国内産出高 yD=実質国内可処分所得 r 国内利子率

V=実質国内純資産残高 H =実質国内民間支出

x=実質輸出量 Gd=実質国内政府支出

本稿は小国の経済と異なり,二国間モデノレ となっているので輸出は外生的に所与ではな く,国内支出と同様に外国の有効需要および 富効果によって決定される。したがって,外 国におけるマクロ的な政策の選択が,国内産 出市場を通じて直接的にインパクトを及ぼす ノレートは, (1)式の輸出の項目である。

各国の国内居住者は自国通貨を需要するが,

外国通貨は保有しないものと仮定する。した がって貨幣需要は次のように特定化できる。

LdL(Y, r (2)

L10, L2 00 L3 1

貨幣供給は国内要因による貨幣ストックLD と外貨準備残高F2つによって構成される ハイパワードマネーである。

L= LD+ F  (3)  貨幣と並んで,国内居住者は金融資産とし て内国債および外国債を保有することが可能 であるUしかし,資本移動が完全であるとい う特殊なケースを除いて,両資産は完全に代 替的であるとは看倣さない。そ乙で,コンソ ノレ債券のように無期限償還の債券について,

民間経済主体は次のような需要関数をもつも のとする。

A D  

=JD( Y, r, V, r*) 

Jf> 0, 0 Jf 1Jf O

A F  

=JF(Y

Jf 00 Jf 1Jf> 

rrD =ND(YrVr*) 

Nf 00 Nf 1Nf> 

rrF =NF(y* V*r)  Nf> 00 Nf 1Nf O

(4a) 

(4b) 

(4c) 

(4d) 

*は国内変数lこ対応する外国の各経済変 (4a)式は内国債に対する国内需要を表わし 数を示す。 ており ,ADは国内居住者が保有する内国債

(3)

の数量を示している。同様に (4b)式は内国 債に対する外国居住者による需要を表わし,

AFはその保有数量を示す。 (4c),(4d)も同 様に,外国債に対する国内需要およびその発 行国の需要を示している。

ところで,各国の国内経済において,単純 化のため純投資および株式の新規発行を捨象 するO したがって,物理的国内資本ストック および発行済株式数量は各々 K,Eで一定と なるo これらの資産は国際間で取引されず,

国内の資産保有者においては国債と完全に代 替的であるとする。本稿では,資本蓄積およ び経済成長は射程外にある問題であり, しか も以下では資本の移動が国際間で全く行われ ないケースと移動が完全なケースの2通りを 検討するため ,K Oとおき, しかも企業の 資金調達の手段として間接金融による外部資 金に依存するケースを除外しておく。

静学的均衡を完成させるためには,最後に 可処分所得の定義が必要とされる。可処分所 yDは,国民所得および国内居住者が保有 する内国債および外国債に対して支払われた 利子所得から租税をヲ I~' た額に等しくなると 定義される。税率はu(一定)の比例税率と すると次のように表記できる口

yD=(l‑u)(yD+AD+CD)  (5)  次に,動学的体系について整理しておきた い。まず第一の関係式は,政府の予算制約で ある。

β+()=ω‑u(Y+ A D+ CD) 

=g  (6) 

Gおよび A は,各々財・サービスへの政府 総支出,発行済内国債に対する支払い利子額 を表す。 U(Y+AD+CD)は政府の総税収額 であり,これは実質国内産出高から可処分所 得を差号│し、た額に等しい。したがって (6) は政府赤字をハイパワードマネーの増加また

は債券の新規発行によって賄わなければなら ないことを示している。

国内貨幣供給の海外ファクターは国際収支 (総合収支)のバランスに等しい。したがっ (3)および(6)より次の関係が成立する。

PD 

一 一

. L   (7) 

もし,財政金融政策の手段LDおよび Aが 政府が自律的に内生的調整が可能であるとす ればg+B=Oとなる必要はない2L政府赤字 g+Bの調達手段として,新規通貨の造刷に 伴うハイパワードマネーの増加の割合を0 残りの 1‑0の割合を新規内国債の発行を賄 うものとする。。は一定であると仮定すると 次式が成立するo

Jj ‑(1 ‑ (8a) 

凶 =(1‑(g B) ぬ)

¥r 

国際収支の黒字(または赤字)の新規貨幣 発行による不胎化率を 1‑s,外生的新規貨 幣発行量をrとおくと,貨幣供給フローの国 内ファクターについて次のような関係が成立 する。

D=Og(1‑0)B

=Og(1‑s)B‑r

L 0 ~ 1, ~ ~ (9)  ただし ,r=(O‑s)B 

したがって,外生的な貨幣フロー供給は一 般に国際収支の黒字・赤字と一義的に関係し ない。すなわち,貿易黒字の状態にあっても 不胎化率 l‑sが,政府赤字および国際収支 の合計の債券調達比率 1‑0を上回っていれ ば,貨幣供給は増加するが,逆の場合,すな わちトータルの赤字(黒字)を公開市場操作 によって民間に債券を売却(民間から購入) することによって資金を調達(放出)しても,

それ以上に国際収支が胎化され,後者が前者 の資金額を上回る程度だけ,自律的に貨幣供

(4)

給が行われてしまうのである。もし,不胎化 子支払は,債券の国際間移動を大なり小なり 率と債券調達率が等しければ,公開市場操作 相殺することになる。

による債券の売却(購入)に伴う資金の公的 以上から,体系は次のように整理する乙と 部門と民間部門との移動が,国民経済の赤字 ができる。

の債券・貨幣の一定割合による資金調達が完 Y=H[(1‑u)(Y+ADCD), r, V] 

全l乙相殺されることになるので,乙の場合は 国際収支の赤字・黒字にかかわらず,貨幣の 自律的な発行を伴わないことになる。

したがって (9)式は,国内要素の貨幣供給 フローが政府赤字の貨幣調達部分と国際収支 の不胎化による相殺部分およびスピルオーバ ー効果の三者の合計に等しいことを示す。第 三のスピノレオーバー効果は,国際収支の不胎 化部分と政府国内赤字と国際収支のネットの 赤字の公開市場操作のルートの貨幣調達(放 出)の相殺した額の残差を表わし, 。と S 相対的な関係およびBの絶対額に依存してい

(9) JjFを加えると,総貨幣供給の調整を 表現できる。

L= 8g+ sB‑r  (10)  (7)および (10)より,内国債の新規発行 量の調整メカニズムを表わすことができる。

()=(1‑8 )g+(1‑s)B+r  (11)  モデノレを定義する最後の式は国際収支であ る。これは経常収支および純資本移動によっ

構成され,次のようになる口

B= X(yD*rV*)‑(yD, r,竹 IAF¥ le¥ 

勺‑‑¥ ~* C

O x1 1X2 0x30, 

O M1 1M2 0M3>  (12)  資本移動は,新資本の流出入と負債に対し て支払われた利子から構成される。前者のネ ットの資本流入フローは (AIr) (eDI同) で示されるO また,後者の負債利子のネット フローは (CDAF)である。したがって,利

+X(yDr*V*)+ Gd  L= (Y, r, V) 

(13a)  (13b)  A A

7 +=JD(Y, r, V, r*) NDY, r, Vげ)

(13c) 

A A

7+=JD(Y, r, V, r*)+JF( YVか)

(13d)  A=AD+AF 

A C V=L+一一一十一

r" 

(13e)  (13f)  この静学的体系はAL, Y*, r*, V*, yD* 

等を外生的パラメータとして, Y, r, V, CD,  AF, AD について解くことが可能である。

さらに,貨幣ストックLおよび内国債残高 (Alr)に関する動学は次のように表わせる。

vt

 

CU  

EArOB

S τ i  

ll

︐ ︐ . ︑

g

=  

AU

︑ ︑

E11/

= ・ Ar .L/

ト¥

(14a)  (14b)  動学方程式体系は ,LA'乙関する連立微 分方程式に表現することが可能である。とい うのは, (13)式の体系の解はLAおよび外 国の経済変数を用いて,そのパラメータの関 数とすることができるからである。しかし,

以上の条件のみでは,体系の局所的安定性の 一般的特性に関する結論は下せない。

2.2.  資本移動を伴わないケース

当面,国際間で資本移動が行われず,発行 された国債はすべてその発行国の居住者が保 有するという極端なケースを想定する。この 特殊な制約lとより,静学方程式体系(13)は次 のように表現できる。

(5)

Y‑H[(l‑u)(Y+A)r, V]‑X(Y*,  r*, V*)‑Gd= 

(y, r, V)L=O L+ム‑V=O 

(15a)  (15b)  (15c)  これは内生変数を Y,r, Vとする方程式に なるo さらに, L, に関する動学的方程式 は次のように表現できる。

L=s [G‑uY+(l‑u)A]+s(X‑M) (16a) 

(

)=(l‑sHGuY+(ο1u)A

+(ο1S)(XM)+r (16b)  以上より,

8 [ ! θ Y  

ー」乙=‑u一 一 一 くO θL θL 

ただし, θg/8AθB/8LθB/θ Aについ ては一般的に符号を判定することはできない。

動学体系 (16)に不安定性が存在しないため の条件は,次のようになる。

(gL+Bd+γ(1‑0)(gA+BA)o(17a) 

(O‑O)(gLBA‑gABd>O  (17b)  乙の場合, (17b)は常に等号で成立するの で局所的に安定的ではなく. (17a)の条件を みたしている限り,初期条件のLおよびAの 値が特定の径路上にあれば均衡解に収束する が,さもなければ発散する。また. (17a) 条件をみたさなければ,初期条件がいかなる 点にあっても体系は不安定である。このよう なナイフ・エッジの均衡収束および不安定性 については,不胎化率l‑sの値のいかんに かかわらず成立し sは体系の不安定性には いかなる影響も与えない。

もし,国際収支が所得のみに反応し,利子 率および金融資産残高に全く反応しないとい

う特殊なケースを想定すれば,

ι2E‑22=(1‑U1)M22f O θL 8A θAθ‑¥.1.  Ul/.lY.q 8L  となり,均衡が鞍点になることが明らかになる。

ただし,中央銀行がハイパワードマネーを 裁量的にコントロールすることにより,不胎 化政策を自由にコントロールできるのであれ (17b)式の左辺の第1項はO‑sとなり,

十分不胎化を進めることにより,不等式が成 立する。十分不胎化が進んでO>sであれば,

(17b)式の安定性の条件が成立するための必 要十分条件は,(A/r)=Oの傾きがL=Oの傾 きより大である(第1図)。また,不胎化が 不十分であり,かつ政策赤字の貨幣調達比率

Sが大きいため s>Oであれば, (17b)式の 安定性の条件が成立するための条件は,第1 図の場合と逆になる。

(~)=o

1. /'L=o 

1図 。>s

L=o 

2 s> 0  

国際金融論で不胎化を進めれば体系は不安

(6)

定になるという通説に対して,以上のケースで θr  0との相対的な関係およびθglθLθBIθA θu 

θglθA.θBIθLの符号によっては安定性を 保障できる。その理由は利子支払いの項目が 安定要因として機能するからである。より詳 細に解釈すれば,国際収支の黒字を政府赤字 を相殺する傾向が強く, したがって不胎化率 が高ければ,内国債の支払い利子は国際収支 勘定よりむしろ政府赤字勘定における国民所 得における可処分所得として相対的に強く作 用し,かっ金融資産としての流動性ストック は,政府勘定における国民所得決定の消費の 資産効果を通じた税収より輸入関数の資産効 果の額の方に強く作用する場合には,体系が 安定的である。第2図のケース,すなわち不 胎化率が低く,政府赤字の債券による調達比 率が高い場合には,第1のケースと逆になる のであるが,所得税率が極めて高く, しかも 輸入関数の資産効果が十分大きい等の条件を みたさなければ安定的にはならず,不安定に なる見込みが強いであろうO

さて,均衡解を求めるには静学方程式体系 (15)を解けばよい。式が繁雑になるのを避け るため,当面資産効果を無視しておく。国内 における政府支出および減(増)税の効果は 次のように求められる。

θy  θG

=(今一吋IK>O

θr  θGd 

= L1IK>O  θY 

θu 

(18a) 

(18b) 

AL3 ¥ 

=‑(Y+A)Hd ‑;" ‑L)IK o (18c) 

¥r

=

(Y+A)H1LdK o (18d)  ただし. Kは次のように定義される。

K=‑L2(1(1‑u)H1)

(1 ‑(1 ‑)H

‑L1H2> O  

以上の結果から明らかであるように,政府 赤字の資金調達手段。および不胎化率 l‑s は,財政手段が静学的均衡に効果とは独立で あることが示される。しかし,ハイパワード マネーの供給は().sおよび他のパラメー タの組合せにより,安定性の条件に影響を及 ぼすことは既に指摘した通りである。

次に,国際収支を通じて小国の仮定が成立 せず,相互依存関係にある国々について外国 の政策が自国に波及する効果について確かめ ておこう。

(15a)式においてもはや輸出は世界的に所 与の値ではなく,外国の所得,利子率および 資産に依存する。すなわち,外国においても (18)式のような解が存在する。この外国の財 政政策が圏内の所得,利子率に及ぼす効果は 次のように求められる。

θy  θGd* 

IALっ ¥

=αlτEL2)IK 

Jzz=αBGd*  ‑L.LJ11K  θY 

θu* 

=s*()IK

る=什日

(19a) 

(19b) 

(19c) 

(19d)  ただし, α*およびs*は次のように定義さ れる。

(7)

α* [X(AL3Ir2‑L2)1 K 

X2L1IK] 

s* =‑(Y+A)Hα* 

X1> 0, X2 O

α*の第一項である所得ファクターの符号は プラスであるが,第二項の所得ファクターの 符号はマイナスであり,両者が相殺し合うの でトータルの効果については一般に判定しが たい。しかし,ここでは資本移動が行われな いので、第二項については無視しても支障はな い。したがって,a*>O, s*>Oとなり,正 の移転効果のみが発生する。

次に金融政策の効果を確かめたい。ハイパ ワードマネーの増加は静学的均衡体系には影 響を及ぼさないが,動学体系l乙は()=sのケ ースを除いて安定解および調整径路に影響を 及ぼす。(14)式から,第3図および第4l 示すように,ハイパワードマネーの増加は L=Oの均衡線を左上方にシフトさせ,また (Alr) 0の均衡線を右下方にシフトさせる。

L' =0 

1 .=0 

3図 。>s

すなわち ()>sの場合にはdr>Od(Alr)

0, dL> 0を結果として得る。また s>

Oの場合にはdr011:対して,d(Alr)0 dL Oを得る。この結果と r  ‑)(s)Bよ

り,一般に a(Alr)1θB >  0, aLIθB>O  となる。換言すれば貿易黒字は常に金融資産

L'=O 1.=0 

U

一 一

U

︑ ︑ 1

''

=

Ar

4︑ ︑ l

(

4図 。 くS

としての流動性ストックおよび債券ストック を増大させるように安定均衡解をシフトさせ るであろうo ただし,L=Oと(Alr)=0の二 本の均衡線の傾きの差が小さいほど,乙のシ フトファクターは大きく作用して安定均衡解 に到着するまで膨大な時間を費すこともあり うる。特に調整の過程を通じて常にB>O 国内の金融資産を累積的に増大させる場合に は,この累積効果による安定均衡点の移動の 方が現実の経済の調整より速い場合には定常 均衡解は存在しないことになる。

以上の議論は0Sの場合であったが,次 ()=sのケースの均衡条件および動学的調 整について触れておく。

乙の場合,静学的均衡体系(15)式は同様 に成立するので。キSのケースと同様の結論 を得る。金融政策による動学的体系への影響 はなくなる。なぜなら()1とより,国際収 支の黒字・赤字は不胎化しても同額だけ政府 赤字の債券調達によって相殺されるので,ハ イパワードマネーの増減には結びつかないか らである。

さらに 2本の勤学方程式体系 (16)式は 次のような1本の方程式に集約される。

G‑uY (1‑u)A ‑M =   (20)  (20)式を時間に関する微分方程式として,

(8)

の水準は各国にとって所与であるとしようo

乙のような条件を考慮すると. (15)式の静 学的体系は次のように改められる。

L==0 Y‑H[(l‑u)(Y+AD+CD)V] 

5

これから調整径路を求めると,次のようにな

(A‑Ao) O)(L‑Lo) (21) 

。キSの場合,第l図および第2図からで も明らかであるように,適当な条件をみたせ ば初期条件がし、かなる点であっても安定解は 特定の状態に限られていたが 0=sの場合 lとは初期条件および政府赤字の債券調達比率 (不胎化率)に依存しており,その結果乙の 安定均衡解が静学体系のシフトパラメータと して作用するようになる。その上,既に指摘 したように金融政策は静学体系および動学体 系のいずれにも影響を及ぼすことはできず,

政策的なコントロールはすべて財政手段に委 ねるしかないことになる。しかも,静学体系 および動学体系のいずれも,国際間で相互依 存が強まれば自国の輸出関数を通じて外国の マクロ変数の影響を受け,これが均衡解に対 するシフト要因になる。

2.3.  完全な資本移動

さて,相互依存の関係にある国々において,

内国債と外国債が完全に代替的であり,利子 率は世界全体の市場で瞬時的に決定され,そ

‑X [(1‑u *)( Y*+ AD*+ CD*)V*] 

‑Gd=O  (22a)  (Y, r, V)‑L=  (22b)  L+(AD+CD)/r*‑V=O  (22c)  以上の体系はY,Vおよび ADCDを未知数 として,それらは貨幣ストックL.世界均衡 利子率子および諸外国の経済的諸変数をパラ メータとして解く乙とができる。

gおよびBLおよびAについて解くと 次のようになるo

(23a)  θ B δ Y  

(lu)M 一一+(1‑(lU)Md  θ ¥.L  u.LY.qθL 

θ(AD+CD) lIA"  8V 

‑ M'J;:一一 (23b)  θ .LY.L‑aL 

θg‑ (23c) 

θA B

(23d)  θA 

θY  H3(1‑u)H1(L‑1) 0  (23e)  8L 

θB  (l‑(l‑u)Hd+(l‑u)r* LIHl 

> 0   θL 

(23f)  θ B θ Y θ V   8L (1‑u)M18L ‑ M8L  (23g)  θ(A D+ CD)/8Lの符号は一般的に相殺し 合う二つの項の和になっているため,判定が 困難であるため,以下ではその値をゼロとお

くことにする。

静学的均衡条件 (22)式を tについて微分 して.(23)式を利用すると 1次近似によって 次の関係を導くことができる。

(9)

AD+CD=O 

7AF=A‑ADより CD‑AF=‑AoL とAI乙関する連立動学方程式として,行列の 形式で次のように整理する乙とができる。

1‑s

つ 〔 斗 [OM

s/r"r')lA)  l(1‑(})g+(l‑s)B  (24)  もし s=Oで あ れ ば 体 系 はLに関する単 一の微分方程式に集約され,その均衡解およ び径路については第6図に示してある。解は A/rの値のいかんにかかわらず,常にある一 定のL*の水準に向かう。ただし,a(AD+CD) /θLOであれば,体系は垂直な二本のL

に関する連立微分方程式となり,パラメータ にある制約を加えない限り,発散する可能性 がある。

=0 

L* 

6 s=O 

さてa(A D+CD)/θL=Oの場合でも ,(A/r) 

=0の均衡線の傾きの符号判定は容易ではな い。ただし (j>sかつ(1(j )gL (1S)BL 

0または各々その逆の不等号は(A/r)=O 傾きが負になるための十分条件であることは

=0 

7

一=0

衡するが,貨幣で調達すればそれだけ国際収 支バランスに影響を与える。

さて,外国の政策は乙の動学体系にし、かな る影響を与えるであろうか。外国の財政政策 は輸出関数を通じて国内に入る。しかし ,L

=0は外国の財政支出および租税政策から独 立である。他方,(A/r)=Oは資産効果等を 通じて影響を受ける。以下では財政支出のみ

について確かめる。

外国の財政支出の効果は静学方程式を行列 表示にした体系の右辺のベクトルの第1成分 X1(l‑u)として表わされる。これを自国 の所得および資産について解くと次のように なるO

Y XlL3(1u) 

aOτ = r* > 0  

Y ‑X1Ld1‑u) 

ーで..‑ O

av r*

ただし,

1 (1‑u)H1‑H3(1u)H1

.1=  L L3 > 0  

容易に確かめることができる。また,いずれ ‑1  1/r* 

か一方の不等号に限って向きを逆lとすれば, と定義する。

(A/r)=Oの傾きは正になる。

もし経済が完全な均衡状態にあれば,政府 赤字をすべて債券で調達すると国際収支は均

δYu(1‑u)L3X

L = ‑ u一一一= (25a) 

dO*  I N  aO*  r* 

(10)

L=o 

E'  (4)=0 

前節では物価が硬直的なケースについて分 析したが,以下ではインフレーションを含む 場合における財政金融政策の短期比較静学お よび長期動学の特性を確かめておきたい。本 節では固定相場制度l乙フィリップス曲線を導 入して総供給関数を導入する。変動相場制度 のケースについては次節で展開するO

()' 前節と同様に,国内産出バランスは次のよ

L

8 外国の財政支出増加の波及 8A 一三ι_/~ι

θG*θG*/θA 

‑u(1‑u)L3X

r*L1  θ X1L(l‑u) 

8Gτ = >0 

r

(25b) 

したがって,外国政府が積極的財政政策を 採用すると,当該国の政府収支が赤字幅を大 きくするので,自国が発行した債券を手放す。

その結果,債券が供給過剰になり,利子率が 上昇する。外国の運用手段としての自国の債 券の手持量が少なくなるので支払い利子が少 なくなる。換言すれば (Alr)が低下しつつ も,全体としての均衡貨幣量は変化しないの で,結局 (Alr)0の均衡線が下方にシフト することが理解できるのである。外国の租税 政策も全く同様に,自国に対しては貨幣スト ックには影響を与えず,金融資産のうち債券 のストックのみ変化させるのである。この乙 とから,もし自国政府が政府赤字を貨幣の新 造刷のみに依存していれば,外国政府からの マクロ的波及は債券市場のみに独立に影響を 与えるが,さもなければ債券市場はは内外両 面からの経済的波及を被ることになる。

3.  伸縮的価格と固定相場制度

うに表わす。

Z=H(yD, rπQEIPl'V)  +X(yD*, r* π*QEIP1, V*) 

Gd  (26) 

Z 実質国内産出高

H 国内生産l乙対する実質国内民間需要 X 実質輸出額

Gd =実質政府支出

yD=実質民間国内可処分所得 r 国内名目利子率

π =PI乙対する期待物価上昇率 P=国内生産財の価格

P 国内生計費(一般物価水準) Q =外国財価格(外国通価表示) E 外国為替レート(自国通価表示)

=民間実質国内金融資産残高

*は各変数に対応する外国の変数を示す。

Z, H, X, Gd P1でデフレートしており,

yDおよびVは Pでデフレートする。

l乙,国内居住者の効果関数が国内財と輸 入財に関してコブ=ダグラス型であれば,一 般物価水準について次の関数が成立する。

P= P1(QE)ld 

これを対数型にして,各物価の上昇率で表 現すると次のように書き換えられる。

Pl ‑d )(  (27)  さらに,線型のフィリップス曲線から次の ような誘導型の総供給関数を得る。

Pl=aO+α1(z‑z)+a2π+α3(q+e)  (28)  α1>00α2<1, <α3< 

参照

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