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児童における知能構造差の研究 第一報告

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Academic year: 2021

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(1)

1 目

児童における知能構造差の研究 第一報告

―知能構造差と学業成績との関係について―

長崎大学 松岡 重 博

 学業成績と知能との相関に関しては,従来多彩な研究業績が発表されている。そしてこの関 係は学科によって異なり,C.:L・Burttの報告では,作丈の能力でr−0・60,次に算数,読み 方,書取りで,r富0.55,一番関係の薄い図工,書字でr=0.15〜0.21となっている。全 教科について見ると大体r=0.50となる。干し,他の諸報告によると,この関係は学年的に 同じではなく,高学年に進むほど知能と学業成績との間に「ずれ」が大きくなり,相関関係が 低下することが報告されている。

 前回の報告「知能発達の分析的考察」で,知能要因の各々について,その発達は必ずしもす べての要因が,平行的でも直線的でもなく,言語性要因において,比較的直線的発達を示し,

知覚,動作性要因の発達は年令と共に漸減して行く傾向を見たのであるが,そこで本報告で は,単に学習成績の規定要因としての,知能的要因を,全体知能に限定することなく,知能構 造差の観点からこれを検討し,更に関係の学年発達の様相も明らかにせんとしたものである。

学業成績としては,従来相関が高いと見られている語句使用力と算数問題解決力とをとった。

H 方法並びに用具

(1)対象,2年141名 3年]01名 4年71名 5年74名

(2)用具,(イ)知能検査 WISCの日本改訂版

  (ロ)算数問題解決力検査……問題は児童の思考力を中心にして,数範囲,未経験な内   容,算数的な特殊知識などの要素による困難i生はできるだけはぶき,日常生活の場におい   て考えられるような問題を提出した。まつ場として,次の如き内容を抽出。

  A.加法・二つのグループをいっしょにしてその個i数を知る。

    ・増加する。

    ・小さい方の順番とそれとのちがいを知って大きい方の1頂番を知る.

    。小さい方の数とそれとの差を知って大きい方の数を知る。

    ・とり去った数と残りとを知ってもとの数を知る。

    ・いくつあとであるかを示す数とそのものの位置を示す数を知って初めのものを示す      数を知る。

  B.減法・比較する。

    ・残りを知る。

    ・不足を知る。

(2)

    ・余りを知る。

    ・順番のちがいを知る。

    ・同じ二つのグループのものが,それぞれの数つつ増減したとき,その差を増減した      i数の差によって知る。

    ・異る二つのグル・一プのものが同じ数つつ増減したとき,その差をはじめの数の差に      よって知る。

  C. 乗  法,   ●累    カロ       ●イ喜

  D.除法, ・等分除   ・包含除

  E.割 合, ・倍の割合    ・分けたときの割合   Fゼ必要外の条件を除外しなければならないもの。

 二段階以上の問題については構造図によって分類 三段階までとした。 (問題総数55問)

以上の分析に従ってあらゆる型の問題を作製,一段階の問題は直接解答,二段階以上は四者選 択法による解答法により,1日15〜20問題宛毎日午前9時より40分間,3日間実施。

(ハ)語句使用力検査, (5年生のみ実施)

  字形の構造,音訓の別,文字ことばの性質に従って,予備検査により未習軒丈字55問題  を選出。1週15〜20語句宛毎日30分間指導と練習を行い,学習を終って2週間後から本  検査を実施。本検査は語句挿入法と書取りと読みと丈構成法との四方法を時日を異にして実  施。この四方法の検査を通じて正解をしたもののみを得点とした。

 提出語句は,(威厳,特別,異状,認める,放す,群れ,導かれる,例,計略,救う,季 節,率いる,大群,危険,構え,整える,配る,着陸,経験,敵,態度,賛成,官舎,希望,

:勧める,誤り,祝賀,記念,解決,非難,尊敬,衛生,利益,否定,国境,私財,包む,慣れ る,液体,製造,順序,延ばす,適当,切断,輸送,平均,検査,正確,合格,冷やす,固め る,健康,移る,浴場,清潔)

 提出語句を採択したのは東面五上。学図無上。中教訓下。

 (問題例)

 ・語句挿入法……日本とかん国の漁場問題は,今日になってもまだ(  )されない。

      かいけつ

 ・書 取 り……原子力の問題ではまだ(  )されぬことが多い。

 ・読   み……漁場の問題ではまだ解決されぬことが多い。

 ・丈構成……「解決」を用いて,単文をつくりなさい。

皿 結果とその考察

 ①ピアソγの偏差積法によって,WISCによるVIΩ. PIΩと算数問題解決力との相関係数

 をもとめたところ,第一表に示す如き数値がえられた。

(3)

第一表 (知能構造差と算:数問題解決力との相関表)

二 年

三 年

四 年

弱 年

V【Q

0.28

0.65

0.62

0.62

P⊥Q

0.22

0.50

0.37

0.27

96印は1%:水準で相関が 0でないといえる。

z±ユ.96びz

信頼限界

 (95%)

z::ヒ0.16

z士0.19

z±0.23

z±0.23

(各学年ともVIQとPエQとの相関係数 の差は5%水準にて有意)

 算数力と知能との相関係数はCLBurtやC. M. Louttitや牛島義友氏や篠原国玉等大体        

0・40〜0.55と報告されている。しかるに第一表の如く,VIΩは三年生以上において0.60以 上の相関係数を示しPIΩは学年が進むに従って低い相関しか示さなくなっている。ことに知 能との相関が高いといわれていた低学年においては,VIΩ, PIΩいつれとも低い相関しか示し

ていない。三年生にあっては,VIQ, PIΩ共に高い相関を示し,五年生になると, VIΩのみ高 い相関を示し,PIQは低い相関しか示していない。 TIQとの相関は確かに諸報告の如く各学年 0.40〜0.50の間の相関を示し,低学年が幾分高く,高学年において幾分低くなる傾向を示し ていた。更に此の事を詳細に検討するために,VIQ, PIQが算数問題解決力に部分的に関係す る度合を標準回帰係数(ピーター係数)で示したのが第二表である。         .

第二表 (ビータド係数表)

二 年 三 年 四 年 高 年

βPIQ

0.23 0.53 0.56 0.65

βVIQ

 0.10  0.23  0.13

−0.06

 此の表によると,低学年ではVIQ, PIΩ共に算数問 題解決力の成績には関係少なく,三年以上学年が進む に従って,算数問題解決力を規定する要因として,

VIQの連関性が大となり, PIΩの連関性は小となって

いる。

 以上の事から低学年においては,知能構造差が,算 数問題解決力にさしたる連関性をもつとはいえない が,高学年になるに従ってVIΩが本質的な連関性をもつことがわかる。そして:, P1Ωは全学 年殆んど連関性をもたないといえる。かくの如く知能構造差は算数科学力診断の本質的な資料

となると思われる。

 ② 同じく語句使用力とVIQ, PIΩとの関係を,ピアソンの偏差積法により相関係数で示し

 たのが第三表である。此の場合5年生に対する比較資料として,低学年(68名)における習

 得語い調査結果を用いた。

(4)

第三表 (知能講造差と語句使用力との相関表)

低学年 VIQ

0.18

PIQ

0.33

z=ヒ1.96σ・z

信頼限界

 (5%)

z±0.24

五 年

  菅●

O.53   0.22 z±0.24

VIQとP「Qとの相関係数の差はいずれも 5%水準にて有意

     聾印は工%水準で相関が0でないといえる。

 更に此の表から算数同様ピーター係数を算出すると,第四表をうる。

  第四表 (ピーター係数表)

      以上二表から,算数問題解決力の場合と同じく,比         βVIQ  βPIQ

       較的全知能との相関が高いといわれている国語力につ     低学年 0・03 0・32   いても,此の場合の(TエΩとの相関五年生で0.43)

    五年 0・56 −0・06   知能構造差による連関性の方が意味があり,高学年に       おいては,VIΩとは0.53 PIQとは0.22で, VIΩと 相当の連関性を示し,PIΩとは殆んど連関性を示していない。比較資料としてあげた低学年の 場合では,逆に語い習得はPIΩと連関性をもつ傾向を示し, VIQとは連関係を示していない。

此所に知能と学習成績との連関の仕方に低学年と高学年とでは大きなちがいのあることがうか がえる。学年が進むにしたがって学習成績を規定する要因が,知能以外の複雑な諸要因にうつ り・知能との連関性が薄くなるというこれまでの一般的な論は,必ずしも妥当せず,むしろ学 年が進むにつれVIΩが学習成績の本質的な規定要因となるといえよう。

 ③ 更にWISCの各下位テスト得点と算数問題解決力及び語句使用力との相関を五年忌に  ついて求めたのが第五表である。

第五表 (WISCの各下位テスト得点と算数問題解決力,語句使用力との相関表)(五年生)

各 下 三

算 数:

国 語

言語性テスト(V)

.45

.56

.50

.48

.20

.39

.48

.06 単

.ユ7

.24

VIQ

.62

.53

動作性テスト(P)

0

.22

0

.22

0

.Ol

.40

.ll

.44

.40

PIQ

.27

.22

TIQ

.4].

.43

溝印は相関の有意を示す(1%水準)

(5)

 此の表でかなりな相関を示すものを,ひろってみると,算数で知識,理解,類似,組合,符 号であり,国語で知識,理解,算数,符号である。

即ち算数囎問解決力では;

 ④ 言語性要因のうち,Wechs玉erのいうBasicなVerbal要因(知識理解,類似)とか  なりな相関関係を示し,他の要因との相関関係は見られない。

 @ 動作性要因のうち,知覚運動が重要な因子となっていない配列,積木及び心的運動速度  要因(完成)との相関関係は全くなく,組合,符号の如き知覚運動が重要な因子となってい  るものとの相関関係がかなりある。

 ◎ これ等から,算数問題の解決学習活動には,基礎的な言語能力及び知覚運動能力が本質  的に参与すると思われる。

次に語句使用力では;

 ④ 言語性要因のうち,知識,理解の如きBasic Verbal要因と高い相関関係を示す傾向を  もち,他との相関は著しくない。類似において算数,国語の間の著しい差が認められる。

 @動作性要因の中,符号即ちパターγ認知の要因のみはかなりな関係がみとめられる。

以上の事から,部分的ながら算数,国語の学習に関係してくる知能要因の差がうかがえる。従 って単に全体知能指数によらず,特にBasicなVerbal要因及び,知覚運動が重要な要因と なっている要因との関係において,学習成績は検討される必要があろう。

皿 結果の摘要と推考

 低学年の学業成績と知能検査の得点との問に密接な連関性がある事は多くの人々により,し ばしば指摘されてきている。そして高学年の各教科目とも知能検査と相関関係があるが,その 関係は作文や読み方で高い関係をもち,図工や,手工ではわずかな関係しか認められない傾向 を指摘されている。同じような関係は中学校,高等学校,大学の学習についても完全な関係で はないが,ある程度の関係が指摘されている。重しここで共通して指摘されているのは,低学 年より高学年,更に高等学校,大学へと相関係数は漸次減じていることである。

 所でかかる現象を知能構造の観点から,再び検討したのであるが,此の結果次のような新し い傾向が見出された。即ち,

 ①低学年においては算数,国語の学習成績は知能の言語性要因,動作性要因ともにあまり  深い関係は認められがたいが,語句使用力の低学年において見られる如く,動作性要因の方  がや玉関係が深い傾向が伺える。縦しまだ疑問として残る。

②高学年になるに従って,学習成績は言語性要因特にBasicなVerba1要因と密接な連  関性を示している。それに反し動作性要因特に,知覚運動が重要な因子となっていない要因

及び心的運動速度要因とは殆んど関係が認められなくなっている。

③学年が進むに従って,学習成績とVIΩとの相関は高くなり, PIQとの相関は低くなり,

TIΩとの相関は漸減する傾向が認められる。

(6)

に活動とが一致しないことは,直ちに子供が自分の能力を十分に発動させる立場におかれてい ないからであると結論する前に,その子供の知能構造を検討すべきであり,また現今の学校教 育における学習成績を何等かの意味において予測せんとするならば,全知能のみでなく,知能 構造特に言語性要因について検討する必要がある。高学年については特に此の事がいわれうる 知能検査の結果を教育補導のため利用するには爾更のことである。知能構造差の方が全知能よ

り,より以上に学習成績に大きな関係があると思われるからである。

文 献

・Iordan, A.M. ℃orrelations of Four Intelligence Tests with Grades,

      エEduc. Psy.1922.13.419〜429

・Brown, AndrewW, and Lind,Christine, School Achievement       in Relation to。Mental Age−Acomparative Study,

      J.Educ. psy.1931.22.561〜576

・Jerman. L. M. lntelligence of School Children, 1919

・Jordan, A灘. Educational Psychology・ 1928第13章(白根孝之訳)

・町田恭三 知能,学業成績のずれと適応性の問題 教育心理学研究亜一21954

・篠原優 数的能力の規定要因について      教育心理学研究W−41957

・城戸幡太郎編 体系教育心理学辞典       1951P・85

・依田新編 教育心理学       p.350

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