経営 と経済 第86巻 第1号 2006年6月
CFROI 会計 と業績評価
39
上 野 清 貴
Abstract
ThepurposeofthispaperistounderstandthemeanlngOfcashflow returnoninvestment(CFROI)accountingandtostudythecharac‑ teristicsandproblems.CFROIaccountingappliestheideaofinternal rateofreturn (IRR)toperformanceevaluationandcorporatevalua‑
tion.ThecharacteristicsandadvantagesofCFROIaccountingareas follows.(1)CFROIaccountingisacomprehensiveaccountingsystem relevanttomutualintheaccountingfigures. (2)CFROIaccountingis therealacquisition‑costaccountingandenablestoperiodcomparison andcomparisonbetweencompanies. (3)CFROIaccountingisthein‑ vestororientedaccounting.TheproblemsofCFROIaccountingareas follows.(1)CFROIaccountinghasaveragethinkingandisbasedon thenon‑realisticassumptionthatthepresentcashflowisappropriateto tllefuturecashflow. (2)CFROIaccountingistheratioinnature,there foretheincreaseinCFROIisnotnecessarilythecorporatevaluein‑
creaseinitself.
Keywords:CFROI,performanceevaluation,IRR,netcashreceipts, realcostofcapital
I は じ め に
近 年 ,企 業 価 値 評 価 お よび 企 業 業 績 評 価 に お い て ,投 下 資 本 利 益 率 (ROIC,returnoninvestedcapital)が よ く使用 され る。 これは税引後営業
利益 (NOPAT,netoperatingaftertax)を投下資本で除 した率であ り1),投 下資本 に対 して稼得 されたまたは期待 され る利益率であ る。
しか し, このROICにはあ る問題点 が内在 している. それは,企業 が一 度 にま とまった設備投資を行 う場合,ROICは年度 ご とに大 き く変動する と い うことである。 この問題 をコープラン ド等は次の ような具体例で説 明 して いる (Copeland,RollerandMurrin [2000]pp.18ト182:邦訳212‑213頁)0 ここに 1軒の レス トランを経営するR社があ り, この企業は4年 ご とにそ の レス トランを建 てなおすために1,000ドルを投資す るもの とする。投資 し た年 では,投下資本 は1,000ドルである。 しか し,毎年投下資本は減価償却 によ り250ドルずつ減少す る。減価償却前の利益 (収入)が毎年安定 して350
ドルだ とし,税金がない とする と,ROICの計算結果は表 1の ようになる。
表 1 ROICの計算
0
1 2 3 4償却前利益 (収入) 350 350 350 350 減価償却費 250 250 250 250 NOPAT 100 100 100 100 有形固定資産 1,000 ・750 500 250 0
収入は350ドルで安定 しているに もかかわ らず,R社のROICは10%か ら 40%まで変化する。資本 コス トを13%とする と,R社は,最初の年 は価値 を 破壊 し, 2年 目に価値 をち ょうど維持 し, 3,4年 目に価値 を創造 している ように見 える。 しか し,理念的 には,各年度のROICは投資の内部収益率
(IRR,internalrateofreturn)に等 しいはずである。IRRの公式で計算 し てみ る と,R社 のROICは レス トランの耐用年数 を通 じて, 15% とな るは ずであ る。 ここに,ROICの問題点がある。
この従来の企業価値評価および企業業績評価 には,さ らに大 きな問題点が
CFROI会計 と業績評価 41
あ る。それは,そこで使用 される資本 コス トであ る。一般に,資本 コス トの 計算 には加重平均資本 コス ト (WACC,weightedaveragecostofcapital)2)
が用い られ るが,問題 は,WACCを算定す る際 に重要な計算要素 となるβ
が過去のデー タに基づいて将来を予測す る方法を とっていることであ る。
βは,株式市場全体の平均価格変動 を基準 とした場合,個別企業の株式の 価格変動が平均価格変動 を どれほ ど上回っているか,あるいは下回っている かを示す数値である。これは過去のデー タに基づいて算定 された ものであ り, WACCが機能するためには,将来 に対す る直接的な予測が必要 であるに も
かかわ らず,それがなされないのであ る。そ して, これによって,資本 コス トの計算が企業のキ ャッシ ュ ・フロー とは関係な く行われ,資本 コス トの妥 当性を判断す るフィー ドバ ック ・システムがないのである。
これ らの従来の企業価値評価および企業業績評価 における問題点を解決す る方法 として,最近,キ ャッシ ュ ・フロー投資利益率 (CFROI,cashflow returnoninvestment)が提唱されている。 これは,マ ッデソ (Madden)が
開発 し,米国のコンサルテ ィング会社 であるホル ト社 (HoltValueAssoci‑ ates)が推進 している評価手法であ り,資本 コス トをモデルの予測に組み込 んで利用 し,IRRの思考 を企業価値評価 お よび企業業績評価 に適用す る方 法である。
本稿 は この手法の重要性 に鑑み,CFROIを企業の業績評価の観点か ら会 計学的に考察 し,CFROI会計の意味を理解 し,その特質お よび問題点を解 明することを 目的 としている。本稿の内容は以下の とお りである。
(1)まず,CFROIの意味を明 らかにし,CFROI会計の概要を説明する。
(2)次に,CFROI会計を具体的な数値例 によって計算 し,CFROIを最終 的に算定する。
(3)これに よって,CFROI会計のほぼ全容が明 らかになる と思われ るの で, これ らに基づいて,CFROI会計 を機能的お よび会計構造的側面 か ら検討 し,い くつかの観点か らこの会計システムの特質および利点を解
明する。
(4)しか し,CFROI会計は利点のみな らず,問題点 も有 しているので, その問題点をい くつかの側面か ら指摘する。
(5)最後 に, これまでのCFROI会計の論点をま とめる とともに,CFROI 会計の会計システム一般 における役割ない し適用領域 を示唆す る0
Ⅱ CFROI会計の概要
既述の ように,CFROIは資本 コス トをモデルの予測 に組み込んで利用 し, IRRの思考 を企業の業績評価 に適用す る方法である。CFROIを会計学的 に 考察するに際 して,まず本節では,かかるCFROIの意味を理解 し,CFROI 会計の概要をさらに詳細 に説明することとする。
1 CFROl会計の一般的説明
マ ッデソに よれば,CFROIは企業業績 を表す経済的尺度であ り,企業が 達成 した投資利益率 (Rot,returnoninvestment)を貨幣購買力単位の変化 で修正 して求め られる。 この場合,ROIは内部収益率 (IRR)であ り,プロ ジ ェク トにおける各期のキ ャッシ ュ ・フローの現在価値合計 とそれに対す る 投下資本が等 し くなるような収益率 として計算 され る。キ ャッシ ュ ・アウ ト フロー とキ ャッシ ュ ・イソフローは,同じ貨幣購買力単位で表 され,毎期の 一般物価水準の変動が調整 される。経済的業績の測定はインフレ修正を必要 とする。そ うでなければ,そのキ ャッシ ュの額は経済的業績 と貨幣単位変動 の混合物 とな って しまうか らである。 こうして,プロジ ェク トに対す る企業 の経済的業績 は,実質ベースで達成 されたROIとなる (Madden[1999]p.
14)0
かかるCFROIを計算す るためには,同 じ貨幣購買力単位お よび現在の貨 幣価値で表 された次の4つの計算要素が必要 となる
(1)資産の耐用年数
CFROI会計 と業績評価 43 (2)資産総額 (償却資産 および非償却資産)
(3)これ らの資産の耐用年数 にわたって仮定 され る期間的キ ャッシ ュ ・フ ロ‑
(4)資産の耐用年数末期 における非償却資産の回収価額 これ らの計算要素の関係を図示する と,図 1の ようになる。
非償却資産 の 回収価額
資産総額
図1 CFROlの計算要素
そ して,CFROIは次式 によって計算 され, この式 を満たす割引率 とい う ことになる。
i
.
CFt . NDAL∫
‑∑ t e l ( 1
+ CFROZ)il(1+ C F R OZ ) L (1 )ここで,Zは資産総額 (投下資本),Lは資産の耐用年数,CFはキ ャッシ ュ ・フロー,NDAは非償却資産 の回収価額 をそれぞれ衰 している。
最後 に, このCFROIは現在 の貨幣価値 で表 された企業の実質資本 コス ト と比較 され,CFROIが資本 コス トを上回れば,企業は価値 を創造 してお り, 下 回れば価値 を破壊 している とい うことになる。CFROI会計では, この よ
うにして企業の業績評価を行 うのである。
2 CFROlを計算する4つの要素
それでは,CFROIを計算す るための 4つの計算要素 をさ らに詳細 に見て い くことにしよう。
まず,資産の耐用年数は,企業の有形固定資産 の平均経済的耐用年数 を推 定 した ものである。 これは,修正 した総設備額 を減価償却費で除 して計算 さ れる。すなわち,次式の ようになる。
資産の耐用年数 ‑題 ㌶ 慧 覧 (2)
総設備額 はすべての有形固定資産の原価合計である。土地 と改良工事や建 設仮勘定 も有形固定資産 と考 え られ るが,これ らは,開通す る減価償却費が 発生 しない ところか ら,総設備額か ら除外 される。 これが修正 した総設備額 となる。また,総設備の減価償却費は修正 した総設備 に対す る当期の減価償 却費のみを表すべ きものである。 したがって,減価償却費の項 目にはのれん の償却費は含まれない (Madden [1999]p.113)0
次に資産総額 (投下資本)であるが, これは償却資産および非償却資産 に 分け られ,両者は現在の貨幣価値で表 される。 これ らの うち,償却資産 に関 して,CFROIは,株主だけのためではな く,すべての資本提供者 に対す る 収益率の測定尺度であ るので, ここで必要な資産の額は次の もの も含 まなけ ればな らない。すなわち, (1)オペ レーテ ィング ・リースによって使用 して いる営業資産の資産計上価値,お よび(2)営業資産 に対 して支払われた適切 な額ののれんである (Madden [1999]p.115)0
オペ レーテ ィング ・リースによる営業資産の価値 を企業の資産総額 に含め る場合,リース費用はキ ャッシ ュ ・フローの計算 に際 して純利益 に加算 され, オペ レーテ ィング ・リースの将来の債務は,資本構造上,負債 に含め られる。
また,オペ レーテ ィング :・リースの資産計上価値 を決定する際, リース年数 は資産の耐用年数 にはば等 し く,支払 リース料はインフレーシ ョンに合わせ て調整 され る と仮定 している。 したがって,当期の リース費用の流列は固定 的な貨幣価値 であ り, リース資産総額 を決定す るために実質負債利子率で割 り引かれる。 この場合,実質負債利子率は企業負債の名 目利子率の推定値 か ら予測 インフレ率を控除 した ものである。
CFROI会計 と業績評価 45 資産総額の うち,非償却資産の額は,プロジ ェク ト期間の完了時点で受け 取 るキ ャッシ ュ ・イソフロー,つま り非償却資産の回収価額で もある。概念 的には,非償却資産 は次の ものか ら構成 され る。 すなわち, (1)企業プロジ ェク トの関係で必要 とされる純運転資本投資 (現在の貨幣価値で表 される棚 卸資産 を含む), (2)現在の貨幣価値 で表 された土地,および(3)期間的キ ャ
ッシ ュ ・フ ロー を生 むため に使用 され るその他 の有形非償却資産 であ る (Madden [1999]p.124)0
最後 に,キ ャッシ ュ ・フローであるが, これ も,インフレ修正 して現在の 貨幣価値で表 され る。概念的には, どの ように資金が調達 されたかにかかわ りな く,企業の営業活動 か ら生 じるキ ャッシ ュ ・フローの額が把握 される。
会計上の純利益 に加算 される額は,減価償却費,修正 した支払利息, リース 費用,貨幣保有利得 (損失),FIFO棚卸資産 に対するLIFO費用 (控除項 目), 純年 金費用 ,税 引後 特別項 目お よび少数株 主持 分利益 であ る (Madden
[1999]p.133)3)0
このキ ャッシ ュ ・フローをマ ッデンはネ ッ ト受取キ ャッシ ュ (NCR,net cashreceipt)と呼んでいるが, これは,彼 によれば,債権者お よび株主の 双方 が請求権 を有す るものであ る。企業か ら見た場合,NCRは,総キ ャッ シ ュ ・フローか ら総資本支 出 と純運転資本の変動か らなる再投資額 を控除 し た ものである。他方,資本提供者か ら見た場合,彼 らが手 に入れ るキ ャッシ ュは,支払利息,負債 の元本返済額 ,配当金お よび株式の買い戻 し額であ る。
したがって, この場合のNCRは, これ らのキ ャッシ ュか ら新規借入れ と追 加株式発行,つま り資本提供者の支出したキ ャッシ ュを控除 した ものである
(Madden [1999]p.67)。 この ように見 る と,マ ッデンのい うNCR, ここ でのキ ャッシ ュ ・フローはいわゆ るフ リー ・キ ャ ッシ ュ ・フ ロー (FCF, freecashflow)である と解することがで きる。
3 資本 コス ト
これ らの計算要素 によって算定 されるCFROIは,企業の実質資本 コス ト と比較 され,業績評価 が行われる。 その場合,CFROI会計では,従来の資 本資産評価モデル (CAPM)お よび βは利用 されず,企業の実質資本 コス トは市場割引率 に企業独 自の リスク格差を加味 して決定 され る。そ して, こ の企業の リスク格差は,企業規模 および財務 レバ レッジか らなる。
市場割引率は,全企業の負債お よび資本の市場価値総計 と全企業の予想キ ャッシ ュ ・フロー総計か ら導 き出され る。具体的には,次式を満たす割引率 として決定 され (Madden[1999]p.89),個別企業のCFROIを計算するの と同じ手法が用い られる4)0
全企業の負債 ・資本市場価値総 計 ‑予想キ ャッシ ュ ・フロー総計
1+市場割引率 (3) この市場割引率に企業独 自の リスク格差を加味 して,企業の実質資本 コス トが決定 され るが,その場含 まず,財務 レバ レッジは次の ように考慮 される。
CFROIはすべての企業資本提供者 に対 する総キ ャッシ ュ ・フローか ら計算 されてお り,キ ャッシ ュ ・フローは支払利息の税節約のために高 くなるので,
CFROIと予想キ ャッシ ュ ・フロー も高 くなる。企業 のキ ャッシ ュ ・フロー に関するこの好影響を相殺するために, より高い割引率を設定 しなければな
らない。
企業規模 に関 して,小企業 に投資す る場合,取引コス トは高 くなる。それ ゆえ,投資者は,それを補償するために取引 コス ト前の よ り高い収益率を期 待することになる。 さ らに,ある水準の小規模企業では,経営 ミスや景気後 退か ら生 じる大 きな障害 に十分対応で きないため,投資者はその ような リス
クも補償す る収益率を期待することになる (Madden[1999]p.101)0 これ らの結果,一般 に次の ようにい うことがで きる。
(1)財務 レバ レッジが高 くなるほ ど, リスク格差は大 き くなる。
(2)企業規模が小 さ くなるほど, リスク格差は大 き くなる。
CFROI会計 と業績評価 47 したが って, これ らの状況 が生 じる場合 ,企業 の実質資本 コス トは市場割 引率 よ りも高 く設 定 され る こ とにな る。
Ⅲ cFROl会計の計算
これ に よって ,CFROI会 計 の概 要 が明 らか とな った ので,本節 で は この 会計 シス テム を さ らに理解 す るため に,具体的 な数値 例 に よって CFROI会 計 の計算 を行 い ,CFROIを最終 的 に算定 してみ よう。 その場 合 ,マ ッデソ の用 いた数値例 (Madden[1999]pp.106‑138)を解説 す る形式 で進 め る こ
と とす る。
1 計算 の前提
マ ッデソは1993年度 のハ ー シー ・フーズ社 (HersheyFoodsCorporation)
の資料 を用 いて CFROIを算 出 して い る。 その貸借対照表 お よび損益計算書 は表 2の とお りで あ る5)0
表2 貸借対照表および損益計算書
貸 借 対 照 表 損 益 計 算 書 (資産の部)
現金及び現金同等物 15.959 純売掛金 294.974 棚卸資産 453.442 その他流動資産 124.621 総流動資産 888.996 総有形固定資産 2,041.764 減価償却累計額 580.860 純有形固定資産 1,460.904 無形資産 473.408 その他資産 ノ 31.783 総資産 2,855.091 (負債の部)
1年以内に償還予定の長期負債 13.309 支払手形 354,486
3,488.249 1,895.378 1,592.871 販売費及び一般管理費 1,035.519 償却前営業利益 557.352 減価償却費 100.124 営業利益 457.228 支払利息 34.870 営業外収益 (費用) 7.875 特別項 目 80.642 税引前利益 510.875 法人税等 213.642 特別項 目前利益 297.233 臨時項 目 (103.908) 純利益 193.325
買掛金 未払税金 未払金
総流動負債 長期負債 繰延税金 その他負債
(資本の部) 普通株式資本金 資本剰余金 利益剰余金
(‑) 自己株式 普通 自己資本
813.845 165.757 172.744 290.401 89.922 9.681 1,431.704 118.963 1,412.344 負債 ・資本合計 2,855.091
CFROIを実際 に計算す るためには, これ らの貸借対照表 お よび損益計算 書に加えて,補足資料 が必要 となる。 まず,資産 の耐用年数 を計算するため の資料 は次の とお りであ る。
(1)土地 お よび改良工事 は48.24ドルであ り,建設仮勘定は171.10ドルで ある。
(2)減価償却費は113.06ドルであ り,のれんの償却費は12.94ドルである。
償却資産 を計算するための資料は次の とお りである。
(1)1993年度の総設備 インフレ修正係数は,1.23478である6)0 (2)実質負債利子率は3.9%である。
(3)支払 リース料は18年間にわた り毎年24.52ドルである。
(4)年金無形資産は11.56ドルである。
非償却資産 を計算す るための資料 は次の とお りである。
(1)LIFO引当金は59.00ドルである。
(2)土地お よび改良工事のインフレ修正係数は,やは り1.23478である。
キ ャッシ ュ ・フローを計算するための資料は次の とお りである。
(1)資産計上利息は4.65ドルである。
CFROI会計 と業績評価 49 (2)GNPデフレーターの変動率は2.61%である。
(3)棚卸資産の うち,FIFO棚卸資産の割合は40%であ る。
(4)卸売物価指数の上昇率は1.45%である。
(5)年金関連費用は44.45ドルであ り,年金関連サービス ・コス トは31.83
ドルである。
(6)税率は37%である。
2 4要素の計算
これ らの資料 に基づいて,CFROIの計算要素 を順 に計算 してい くと,以 下の ようになる。 まず,資産の耐用年数は表 3の ように計算 され,18年 とな
る。
表3 資産 の耐 用年数
項 目 計 算 過 程 金 額
修正総設備 2,041.76(総設備)‑48.24(土地)‑171.10(建設仮勘定) 1,822.42
総設備 の減価償却費 113.06(減価償却費)‑12.94(のれん償却費) 100.12
次 に,償却資産 を計算する と表4の ようにな り,3,196.19ドル となる。
表4 償 却 資産
項 目 計 算 過 程 金 額
修正総設備
総設備 イン フレ修正
建設仮勘定総 リース資産 214.,8252.2(4リース費用)2×1.23478‑1×((,812.2.03492)18‑1)/0.039(1.039)18 1,438127212.7.2.1.48912705
修正無形資産
償却資産 473.41(無形資産)‑ll.56(年金無形資産) 461.85 また,非償却資産 を計算す る と表5の ようにな り,593.29ドル となる。
表5 非償却資産
項 目 計 ‑ 算 過 程 金 額
貨幣資産 15.96(現金)+294.97(売掛金)+124.62(その他流動資産) 435.55
流動負債 108.46(買掛金)+35.60(未払税金)+301.99(未払金) (446.05)
棚卸資産その他資産 土地
非償却資産 448.53.244(4(土地棚卸資産 ))×1.23+54789.00(LⅠFO引当金) 51352.9.1.475487 最後 に,キ ャッシ ュ ・フローを計算する と表 6の ようにな り,424.49ドル となる。
表6 キャッシュ・フロー
項 目 計 算 過 程 金 額
純利益 減価償却費 修正支払利息リース費用
貨幣保有利得 3(4.4486.70(支払利息)‑5(流動負債)‑4.64535.(資産計上利息)55(貨幣資産))×2.61% 2193213.0.4.0.7.0225236227 LⅠFO費用 (453.44(棚卸資産)×40%)×1.45% (2.63)
純年金費用 . 44.45(年金関連費用)‑31.83(年金関連 コス ト) 12̲.62
税 引後特別項 目
キャッシュ.フロー 80.64(特別項 目)×(1‑37%) (50.80)
3 計算結果
以上の計算 によって,資産の耐用年数が18年であ り,資産総額が3,789.48 (‑3,196.19+593.29)ドルであ り,キ ャッシ ュ ・フローが424.49ドルであ り,非償却資産の回収価額が593.29ドルであることが明 らか となった。 これ らの関係を図示する と,図 2の ようになる。
これに よって,CFROIが計算で きることにな り, これをエクセルのIRR
関数等で計算す る と,CFROIは9.20%とな る。 そ して,業績評価 を行 うた めの資料 として,当企業の実質資本 コス トが6.0%である とす る と,CFROI
CFROI会計 と業績評価
非償却資産 の 回収価額$593.29
資産総額$3,789.48
図2 CFROlの具体的計算
51
はこれを超過 してお り,当企業は価値 を創造 している とい うことがで きるの である。
Ⅳ cFROl会計の特質
これまで,CFROI会計の概要を説 明 し,次 に この会計システムを具体的 な数値例 によって解説 した。 これによって,CFROI会計のほぼ全容が明 ら かにな った ことと思われる。そ こで,本節では これ らを受けて,CFROI会 計を機能的および会計構造的側面 か ら検討 し, この会計の特質および利点を い くつかの観点か ら解 明してい きたい。その観点 とは,会計システム,会計 数値比較 および会計主体の観点である。
1 総合会計システム
既述の ように,CFROI会計では,CFROIを計算するために,同じ貨幣購 買力単位 および現在の貨幣価値で表 された次の4つの計算要素が必要 となる
(1)資産 の耐用年数
(2)資産総額 (償却資産および非償却資産)
(3)これ らの資産の耐用年数 にわたって仮定 される期間的キ ャッシ ュ ・フ ロ‑
(4)資産 の耐用年数末期 における非償却資産の回収価額
そ して,CFROIは次式 によって計算 され, この式 を満たす割引率 とい う
ことになる。
l‑皇t91(1+CFROCFiI)ir(‑1+NDALC FROT) L
(1)
ここで,Jは資産総額 (投下資本),上は資産の耐用年数,CFはキ ャッシ ュ ・フロー,NDAは非償却資産の回収価額をそれぞれ表 している。
これ によって明 らかな ように,CFROI会計では,鍵 となる変数が内部で 相互 に関係 し合 っている。例 えば,割引率 (CFROI)を特定す るためには, 非償却資産の回収価額をも含めて,キ ャッシ ュ ・フローを予測する手続が必 要 とな って くる。 この意味で,CFROI会計は,会計数値 が相互 に関連す る 総合会計システムである とい うことがで きる。
この ことは,CFROIと比較 され,業績評価 が行われる企業の実質資本 コ ス トについて も妥 当する。上述 した ように,CFROI会計では,従来の資本 資産評価モデル (CAPM)お よび βは利用 されず,企業の実質資本 コス ト は市場割引率 に企業独 自の リスク格差 (企業規模および財務 レバ レッジ)を 加味 して決定 される。
この場合,市場割引率は,全企業の負債 お よび資本の市場価値総計 と全企 業の予想キ ャッシ ュ ・フロー総計 か ら導 き出される。具体的には,次式を満 たす割引率 として決定 され,個別企業のCFROIを計算す るり と同 じ手法が 用い られる。
全企業の負債 ・資本市場価値総計 予想キ ャッシ ュ ・フロー総計
1+市場割引率 (3) すなわち, ここで も鍵 となる変数が内部で相互 に関係 し合 ってお り,企業 の集合体 に関する市場割引率 も,それ らの企業のキ ャッシ ュ ・フローが どの ように予測 されるかに依存する。そ して,それは当然,現在の負債 お よび資 本の市場価値総計か ら導 き出され る将来指向的な割引率である。
この ように見て くる と,CFROI会計は二重 の意味で,会計数値 が相互 に 関連す る総合会計システムである とい うことがで きる。すなわち一方では,
//
CFROI会計 と業績評価 53 個別企業 の レベル において,CFROIを計算す る段階で会計数値が相互 に関 連 し,他方では,全企業のレベルにおいて,市場割引率を計算する段階で会 計数値が相互に関連するのであ る。
そ して, これに よって,CFROI会計では,資本 コス トの妥 当性を判断す るフ ィー ドバ ック ・システムが内在 す るこ とにな る。 しか も,そ こでは, CFROIと資本 コス トとしての市場割引率は同 じ計算構造 に基づいて算定 さ れるので,両者は論理的 に比較可能 となる。したが って,これ らの ことか ら, CFROI会計は真の意味で,会計数値 が相互 に関連す る総合会計システムで
あるとい うことがで きるのであ る。
2 実質取得原価会計
次に,CFROI会計を会計システムお よび会計数値比較の別の観点か ら考 察 してみ よう。一般 に,会計システムの測定要素 には,測定単位 と評価基準 とがあ り, これ らを組.み合わせることによってすべての会計システムが構成 されることになる。
測定単位 とは,資産 を測定 す るための基準単位 であ り,それは貨幣単位 (1ドル等)で表 される。資産は この貨幣単位の量 とその資産 との関係づけ によって測定 されることになる。 この ように,測定単位は資産の測定 に際 し て貨幣単位量 と結合 される基準単位であるが, この基準単位である貨幣単位 は必ず しも 1つではな く,次の ように大 き く4つに分けることがで きる。
(1)名 目貨幣単位 (2)一般購買力単位 (3)個別購買力単位 (4)貨幣収益力単位
名 目貨幣単位は,一般物価の変動 ,個別物価の変動,ない しは貨幣収益力 の変化を考慮 しない測定単位であ り,その時 々の基準単位 を修正 しない もの である。一般購買力単位は,一般物価の変動 を考慮 した測定単位であ り,‑
般物価指数の変動 に応 じて基準単位を修正 してい くものである。 この一般購 買力単位は,資産 を測定する場合 に,各測定値を同一の一般物価水準に統一
し,一般物価水準 に関 して比較可能 にするために用い られる。
個別購買力単位 は,個別物価の変動 を考慮 した測定単位であ り,個別物価 指数の変動 に合わせて基準単位 を修正 してい くものであ る。 この個別購買力 単位は,資産の各測定値 を同一の個別物価水準で統一 し,個別物価水準 に関 して比較可能にす ることを 目的 として用い られる。貨幣収益力単位 は,企業 の収益力ない し貨幣収益力を考慮 した測定単位であ り,貨幣収益力の変化 に 応 じて測定単位 を修正 してい くものである。 この貨幣収益力単位は,資産の 各測定値 を同一の貨幣収益力水準で統一 し,貨幣収益力水準 に関 して比較可 能 にす るために用 い られる。
評価基準 とは,測定単位 によって関係づけ られる資産 の基準 となる測定値 の ことであ り,測定単位たる基準単位 を1とした場合の貨幣単位量の ことで ある。 この評価基準は,その資産 を取引する, もしくは取引 した仮定の相違 によって次の4つに大別することがで きる。
(1)取得原価 (2)購入時価 (3)売却時価 (4)現在価値
取得原価は,ある資産 を購入するために,過去 に支払 われた貨幣単位量で ある。購入時価は,ある資産 をいま購入す る とするな らば,支払わなければ な らない貨幣単位量である。売却時価は,ある資産 をいま売却する とするな らば,受け取 るであろう貨幣単位量である。現在価値 は,ある資産 を将来売 却する とすると,受け取 るであろう貨幣単位量をある割引率で現在 に割 り引
いた ものである。
各会計システムは,これ らの評価基準たる取得原価,購入時価,売却時価 , および現在価値と,測定単位た る名 目貨幣単位,一般購買力単位,個別購買
CFROI会計 と業績評価 55 力単位 ,および貨幣収益力単位 を組み合わせることによって,類型的に導 き 出され ることになる。いま, これを行 った結果を‑表 にま とめ,各会計シス テムに名称を付す と,表 7の ようになる (上野 [2005]7頁)0
表7 会計 システムの諸類型
・ 評 価 基 準
測 定 単 位
取得原価 購入時価 売却時価 現在価値名 目 貨 幣 取得原価 購入時価 売却時価 現在価値
単 位 会 計 会 計 会 計 会 計
一般購買力 実質取得 実質購入 実質売却 実質現在
単 位 原価会計 時価会計 時価会計 価値会計
個別購買力 実体取得 実体購入 実体売却 実体現在
.単 位 原価会計 時価会計 時価会計 価値会計
貨幣収益力 成果取得 成果購入 成果売却 成果現在
これ らの こ とを前提 としてCFROIを考察す る と,CFROI会計 における 評価基準は取得原価であ り,測定単位 は一般購買力単位であることが分かる。
前節のCFROI会計の計算例で明 らかな ように, この会計の出発点は取得 原価会計 に基づ く貸借対照表お よび損益計算書である。そこでは,資産 (お よび負債)は取得原価 によって評価 されてお り, この意味で,CFROI会計 における評価基準は取得原価である ということがで きる。
そ して, この取得原価 に基づ く資産 は,GNPデフレー ターや卸売物価指 数の一般物価指数 によって修正 され,現在の貨幣価値で表 される。 これは, CFROI会計 が測定単位 として一般購買力単位 を採用 していることにはかな らず, これ らの意味で,CFROI会計は実質取得原価会計であ る とい うこと がで きる。
ただ,CFROI会計が通常の実質取得原価会計 と異な る ところは,実質取 得 原 価 会 計 が実 質 実 現 利 益 の算 定 を計 算 目的 として い るの に対 して,
CFROI会計は実質投資利益率の算定 を計算 目的 としていることである。換 言すれば,実質取得原価会計は実質実現利益 とい う絶対額の算定を 目的 とし ているのに対 して,CFROI会計 は実質投資利益率 とい う比率の算定 を 目的
としていることである。
通常の実質取得原価会計は一般 に,企業の財務諸表を同一の一般物価水準 で表す ことによって,各会計数値 が比較可能 とな り,期間比較および企業間 比較 を可能 にす る といわれてい る。 しか し,CFROI会計は,会計数値 を実 質投資利益率 とい うように比率化す ることによって,通常の実質取得原価会 計 よ りもさ らに期間比較 お よび企業間比較 を可能 にす る とい うこ とがで き
る。
通常の実質取得原価会計では,各会計数値 を絶対額で表 し,それ らの数値 は取得原価 を一般物価指数で修正 した ものであるか ら,必ず しも現在の価値 (公正価値)を表 した ものではない。それゆえ,一般購買力単位の レベルで は比較可能であって も,個別購買力単位の レベルでは比較可能である とは限 らない。 この意味か ら,公正価値 を重視する現代会計か らす ると,通常の実 質取得原価会計は企業間比較を不可能 にする可能性がある。
しか し,CFROI会 計 には この危 供 は当て は ま らな い。 とい うの は, CFROIは比率 であ り,除数 お よび被除数が同 じ現在の貨幣価値 で表 されて い る限 り,絶対 的 な数値 は問題 とはな らな いか らで あ る。 この意 味 で , CFROI会計は期間比較 お よび企業間比較 をさ らに強固な ものに してい るの である。
CFROI会計 は,会計数値 を比率で表 す ことに よって,さ らに大 きな利点 を有 している。それは,CFROI会計 によって,企業規模の相違 にかかわ り な く,企業間比較が可能になるとい うことである。他の企業業績評価指標は, 利益等の絶対額で表すために,経営効率が悪 くて も企業規模 が大 きい とい う だけで多額の利益が発生 し,経営効率の良い小企業 よりも高 く評価 され る可 能性があ る。CFROI会計 は,企業業績 を比率で評価することによって, こ