氏名・(本籍)
学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位論文題目
論文審査委員
内 田 陽 子(静岡県)
工 学 博 士
工博乙第 22 号 平成元年3月15 日 学位規則第5条第2項該当
LaB6/GaAs界面の解析とショットキ特性の研究
(委員長)
教 授 助 川 徳 三 教 授 今 井 哲 二 教 授 稲 垣 訓 宏 教 授 山 田 祥 二
教 授 藤 安 洋 教 授 安 藤 隆 男
論 文 内 容 の 要 旨
本研究は,LaB6のGaAs半導体電子素子におけるショットキゲート電極材料としての可能性を確 めることを目的とし,LaB6とGaAs界面に形成されるショットキ障壁の特性,界面の熱的安定性お
よび障壁の形成過程を調べたものである。
まずGaAsおよびLaB6の基礎的物性について検討を行ない,次のようなことがわかった。MBE
(Molecular Beam Epitaxy)法はヘテロ構造を持つ高速電子素子の製作,また,半導体と金属と の清浄界面形成に有効な薄膜結晶成長法である。このMBE法で成長したGaAsにおいて,Siは Ga格子位置に入りn型ドーパントとして働くが,高濃度ドーピング領域ではAs格子位置にも入り 始め,P型ドーパントとして働く。そのため,n型およびp型ドーパントが互いに補償しあい,電気
的活性化率が低下することがわかった。またLaB6は金属並みの低い抵抗率を示し,電子ビーム蒸 着により容易に化学量論比組成の均一な連続膜が形成される。
LaB6が高耐熱性ショットキゲート電極材料として採用されるためには.GaAsとLaB6の界面が 高温においても安定であること,界面に形成されるショットキ障壁ができるだけ高いことが必要とさ れる。現在使われているWSi,系材料の障壁の高さは0.8eV程度であり,高温熱処理によりGaAs と反応を起こすという難点がある。一方,LaB6/GaAsショウ,トキダイオードを作製し,電流一 電圧特性および接合容量一電圧特性を測定したところ,障壁の高さは0.7eVを示した。その後,熱処 理を行なうとショットキ障壁は0.9eVまで上昇し,750℃の熱処理後もこの値を示す。自己整合型M
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ESFETでは熱処理プロセスを伴うため′熱処理後に高いショットキ障壁を示すLaB.jは最適である。
また′熱処理前後の界面の様子を高エネルギーイオン散乱法(HEIS)およびⅩ線光電子分光法
(XPS)を用いて観察した結軋850℃の熱処理後も界面での顕著な反応は観察されず,熱的に安 定であることがわかる。
これらの性質はLaBGがGaAs MESFETのゲート電極材料として優れていることを示している。
そこで,LaBf;をゲート電極として用いた自己整合型GaAs MESFETを試作し,その静特性を調べ た。その結軋LaB6ゲート電極は高温熱処理を含む自己整合型プロセスに充分耐えることができ,
良好な静特性を示すことがわかった。特に,エンハンスメント型FETにおいてLaB。ゲート電極 の高いショットキ障壁を反映し,高い順方向ゲートバイアスで大きなドレイン電流および相互コンダ クタンスが得られる。これらの結果,LaB.,ゲートGaAs MESFETは集積化に適しており,集積回 路の基本素子として有力な候補となり得ることがわかった。
LaBtiとGaAsの界面には熱的に安定なショットキ障壁が形成されることが確められたが,更に障 壁がいかに形成されるかについての検討を行なった。
HEISおよびXPSによれば,化学エッチング処理したGaAs表面は約3原子層の自然酸化膜で覆 われている。LaBfiの付着により,その一部は還元され,LaとBの酸化物が形成される。そして,
その後の熱処理により,自然酸化膜は完全に消失する。この自然酸化膜の消失により,乱れていた表 面のGaおよびAs原子は正規の格子位置に戻る傾向が見られる。一方,界面に形成されたショット キ障壁の高さは熱処理前は0.7eVを示し,熱処理温度と共に増加し,400〜750℃の熱処理後,一定 値0.9eVを示し,その後,再び減少する。この傾向は,GaおよびAs原子の内殻電子の束縛エネル ギーの熱処矧こよる変化に類似しており,その変化竜もよく一致している。このことは,熱処矧こよ る界面付近のエネルギーバンド構造の変化がショットキ障壁の変化に対応していることを示している。
すなわち,界面でのフェルミレベルのピン止め位置が熱処理前後で変わっていることを表している。
一方,界面に自然酸化膜が形成されていない試料では次のような現象が観察された。MBE法によ り作製されたGaAs表面の約3原子層の原子は,正規の格子位置からずれた位置にある。このよう なGaAs上に,LaBtiを蒸着し,熱処理を行なうと,界面のGaおよびAs嘩子は正規の格子位置に戻 る傾向が見られる。それと同時に,GaおよびAs原子の内殻電子の束縛エネルギーも変化している。
この傾向は化学エッチング処理GaAsの場合と同様である。一方,ショットキ障壁の高さは熱処理 前で0.7eVを示し,熱処理温度と共に徐々に増加し,850℃の熱処理後ではぼ0.9eVに達する。この ことから,この場合も,熱処理による界面でのフェルミレベルのピン止め位置の変化が,ショットキ 障壁の高さに反映していると思われる。
これらの結果を考え合わせると,表面を自然酸化膜で覆われている(化学エッチング処理)GaAs,
覆われていない(MBE成長)GaAs,いずれの場合も熱処理に伴う界面の変化が,フェルミレベ ルのピア止め位置を変化させている。すなわち,LaB。/GaAs界面におけるフェルミレベルは,伝 導帯の底から0.7eV下あるいは0.9eV下のいずれかの位置にピン止めされ,ショットキ障壁を形成す る。フェルミレベルがどちらの準位にピン止めされるかは界面のGaAs原子の配置に依存し,原子
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の配置が乱れている時は0−.7eV,正規の格子位置に存在している時は0.9eVの位置にピン止めされる。
以上の検討結果より,LaB6は優れた高耐熱性ショットキゲート電極材料であることがわかった。
更に,LaB6をゲート電極として製作したGaAs MESFETは優れた静特性を示した。
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