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環 境 水 の成 分 変 化 に よ る魚 類 のス トロ ンチ ウ ム

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Academic year: 2021

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(1)

環 境 水 の成 分 変 化 に よ る魚 類 のス トロ ンチ ウ ム と カ ル シ ウ ム の 含 有 比*

宜 ・宮 原 昭 二 郎

Ratio of Strontium and Calcium in Fishes by the Variation of Components in Environmental Water.

Yukinori NOZAKI and Shojiro MIYAHARA

Some experiments were carried out with "Mejina" Girella punctata GREY to see whether or not the fish takes up strontium as the concentration of strontium and calcium in the environmental sea water is higher than that in the general sea water.

After 40 days, the amount of strontium in the scale, skin, gill, muscle, diges- tive tract, liver and vertebra of the index fishes was larger than that in those organs of the fish living in general sea water, although the accumulation varied in degree by organ. The accumulation was especially dense in hard tissue such as scale, gill and vertebra compared with that in soft tissue.

The accumulation of strontium in fish organs was related to the absolute concentration of strontium in the environmental water irrespective of the concent- ration of calcium in the water.

水 中 生 物 は そ れ が 生 棲 す る環 境 水 か らあ る種 の 元 素 を 吸 収 して 体 内に 蓄 積 した り,ま は 体 外 に排 出す る機 能 を も っ てい る こ とが知 られ て い る。 生 物 体 内へ の 吸 収 経 路,蓄 積 さ れ る場 所,蓄 積 量 や 体 内 で の 存 在 状 態 な どは 金 属 元 素 や 生 物 の種 類 そ の 他 の 諸 条 件 に よっ て 異 な りきわ め て複 雑 で あ る。 金 属 元 素 は 生 物 体 に お け る他 の生 体 物 質 に 比 べ る とそ の存 在 量 は きわ め て僅 か で あ るに もか か わ らず 生 物 体 に 微 妙 な 影 響 を 及 ぼ す こ とが 各 分 野 で 明 らか に され て き て お り,ま た 水産 生 物 の環 境 水 中 に 含 まれ る金 属 元 素 の 取 りこみ,蓄 積 な どにつ い て は 多 くの研 究 が な され て い る。

近年,放 射 性 物 質 に よ る海 洋 汚 染 が 問 題 に な って ぎて い るが,水 産 生 物 へ の核 分 裂 生 成 物 質 の 移 行 につ い て の研 究1‑5)が 多 く,水 産 生 物 が 放 射 性 物 質 を 摂 取 す る場 合 そ の吸 収 経 路 や 放 射 性 物 質 の種 類 に よっ て は きわ め て 異 な った 特 徴 を 示 す も のが あ る。 例 え ば,佐 伯 1)ら は Zn65 , Sr90お よび Cs137  を用いて ヒゴイの体 内へ の転 移は各組 織に よって異 な るこ とを 報 告 した 。 吉 井 ら2)は 金 魚 を 用 い て P32,  S35,  Ca45  お よび  Sr89  の転 移 を 調

*源 子 吸 光 法 に よ る組 織 中 の 金属 の定 量‑Ⅲ"と す る。

(2)

70 長崎大学水産学部研究報告 第34号(1972)

べているが直接環境水からの転移ではCa45およびSr89が鯛に顕著な蓄積があったと報

告している。

 海洋に降下した核分裂生成物のうちストPソチウムー90は海水に溶解され種々の形の化 合物となったのち,1年以内に安定ストロンチウム (以下Srと略す)と同じ化学的挙動 を示すことが調査6)の結果知られている。海産生物のSrの蓄積に及ぼす環境水中のSr,

カルシウム (以下Caと略す)濃度に関して生物体内組織別に検討した例7−11)は少ない ようである。前報捜では海産二枚貝が環境水中のSr, Caの濃度変化に伴ってSrの特 異な取りこみをすることを報告した。今回,海水中のSr, Caの濃:度変化に伴うSrの海 産魚への蓄積の状態を調べたので報告する。

実  験  方  法

 実験水槽はポリ塩化ビニール製の循環濾過式のもので,供試魚は1972年4,月長崎大学水 産学部野母臨海実験所の沖で採取したメジナGirella Punctata GREY(体長10〜12cm,

体重10〜149)を用いた。実験水槽4基にそれぞれ供試魚30尾を収容し,Table 1に示 す実験条件で40日間無二二で飼育した。

Table 1. Condition of the environmental sea water.

Tank  Concentration of

Sr* mg/2 Ca* mg/a Method of Addition    Sea water Volume Temperature

1

2

80

80

400

2,000

Addition to effect those concentrations on the starting day.

80 2

!!

17.2一一一23.OOC

11

3

4

80 80

400

2,000

Addition daily from lst day through 30th day to effect those concentra−

tions on the last day.

11

or

!1

!1

* Added Sr and Ca were in the form of SrC12 . 6H20 and CaCl Q respectively.

 各水槽から経日的に供試魚3尾つつを採取し,正常海水で5分間飼育してから解剖し鱗,

皮,鰐,筋肉,消化管,肝臓および脊椎骨の7部位に分け,3尾の同一組織を合わせて550 0Cで5時間加熱して灰化した。灰化後できるだけ少量の1N塩酸に溶かしてから蒸発乾 固し,再び0.1%塩酸に溶かして定容としたのち前報13)の定量法によりSrとCaの定 量を行なった。Srの濃縮の変動はCaとのモル比すなわちSr/Ca mol%で表示した。な

お,装置はJarrell−Ash−AA ITH型原子吸光分光分析装置を用いた。

実  験  結  果

 正常海水中のメジナの各三管のSr/Caモル比をTable 2に示す。また環境水中のSr,

Caの濃度を変化させて40日間飼育したメジナの鱗,皮,鰐,筋肉,消化管,肝臓および脊

(3)

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Variation of Sr/Ca in scale.

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      Time(days).

    Fig.3. Variation of Sr/Ca in gill.

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    10 20 30 40

      Time(days)

Fig. 2. Variation of Sr/Ca in skin.

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Fig. 4. Yariation of Sr/Ca in muscler

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Fig . 5. Variation of Sr/Ca in digestive tract.

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O 10 20 30 40

       Tirhe{days)

  Fig, 6. Variation of Sr/Ca in  liver.

(4)

72 長崎大学水産学部研究報告 第34号(1972)

Table 2. Sr/Ca mol % in organs of   tCMejina  G;; reZla punctata GREY in   the general sea water.

Sr/Ca mol %

1.0

Organ Scale Skin Gill

Muscle

Digestive tract Liver

Vertebra

O.20 0.22 0.11 0.32 0.34 0.27 0.22

α5

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  Pt−x丁ank l

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    /   ヤ/

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O 10 20 30 40

      Time(days)

Fig. 7. Variation of Sr/Ca in vertebra.

椎骨への蓄積の状況をそれぞれFig.1〜Fig.7に示す。

 Fig.1〜Fig.6から明らかなように鱗,皮,鰐のSr/Ca mo1%は最初は増加したが 5日目から変動の巾は小さく一般に減少し,15日目から再び増加した。 また皮,筋肉,肝 臓は15日目から,鱗は30日目から増加を続け,鱗,消化管は増加したのち一部に再び減少 する傾向がみられた。特に鯉,筋肉,消化管では15日目から20日目付近の増加は急激であ った。脊椎骨ではFig.7に示すように15日目までほとんど変動はないが20日目から徐々 に増加してきた。40日目の値と正常海水中の魚の値を比較すると40日目は鱗3.1〜4.0倍,

皮2.3〜3.8倍,鯛3.4〜7.3倍,筋肉2.6〜3.6倍,消化管2.5〜3.4倍,肝臓2.7〜3.4 倍,脊椎骨2.7〜4.2倍となっている。.このように各組織ではSrの特異な取りこみがみら れたが,環境水中のSr, Caの濃度の相違による貯水槽間の同一組織のSrの取りこみに は明瞭な差は認められなかった。

 通常海水のSr/Ca mol%は1.00であるのに対し海産魚はBoROuGHSら4)による と0.1かあるいはそれ以下としている。海産魚肉中のSr/Ca mol%は田中ら15)によ ると0.22,また海産魚骨のそれは上田16),田中ら15)はそれぞれ0.27,0.19であり,回 報17)では0.30であったがメジナでは筋肉0.32,脊椎骨0。22の値を得た。この値は海 産魚では妥当な値であろうと考える。 メジナの各組織のSrの蓄積や濃縮の様子をみると 各組織とも特異な取りこみ状況がみられこのことは吸収の相違(生理学的要因)と考えら れる。佐伯ら1)はSr 90は脊椎骨,鱗,ヒレ,鰐などの硬組織での蓄積が著明であり筋肉

や皮などの軟組織にも若干の存在が認められるが硬組織に比べるとはるかに少ないとして いる。Sr/Ca mo1%について正常海水魚と40日目の値とを比較すると各組織とも大きな 差はみられなかったが,最高値で鱗4.0倍,皮3.8倍,纒7.3倍,筋肉3.6倍,消化管3.4 倍,肝臓3.4倍,脊椎骨4.2倍とな:っていることから, こり中で硬組織である脊椎骨,鱗 および鯉へのSrの取りこみが他の軟組織より若干高いことを示している。 Srは生体内で はClとよく似た挙動をとり硬組織に固く結合して容易に離脱しない14)とされているが 生体内でCaの存在量の多い組織にSrが取りこまれ蓄積されることは注目すべき点であ

(5)

る。 またSr,Caの 添 加方 法 の 相 違 に よ る各 水槽 間 の 同一 組 織 に よ るSrの 取 りこみ に 明 瞭 な差 が認 め られ な か った こ とはSrの 取 りこみ がSrの 絶 対 量 に よ る もの と考 え られ, 環 境 水 中 のCa量 が 増 加 して もSrの 取 りこみ に は 関 与 しな い も の と考 え られ る。 こ の こ

とは 前報12)の 二 枚 貝 の 実 験 と 同 じ結 果 で あ った 。

飼 育 海 水 中 の  Sr  お よ び  Ca  の 濃 度 変 化 に と も な う Sr  の 海 産 魚,メ ジ ナ  Girella  Pun‑

ctata  GREY  へ の 蓄 積 状 態 を 調 べ た 。 各 組 織(鱗,皮,鰓,筋 肉,消 化 管,肝 臓,脊 椎 骨) は 取 り こ み 状 況 に 相 違 が み られ,ま たSrの 蓄 積 は 硬 組 織 の 方 が 軟 組 織 よ り も 比 較 的 多 か

っ た 。

Sr  お よび Ca  の添 加 方 法 の 相違 に よ る 各 水 槽 間 の 同一 組 織 の  Sr  の 取 りこみ に は 明 瞭 な 差 は認 め られ なか った 。 この こ とは  Sr  の取 り こみ が環 境 水 の  Ca  量 に あ ま り関 係 な く Sr  の絶 対 量 に のみ 関 係 す る もの と考 え られ る。

最 後 に試 料 採 取 に あ た って 助 力 を賜 わ った 長 崎大 学 水 産 学 部 夏 苅 豊 氏 な らび に 分 析 機 器 の使 用 に つ い て種 々 の 便 宜 を 賜 わ った 西 海 区 水 産研 究 所 浜 田七 郎 氏 に感 謝 す る。

D佐 伯 ・森:日 水 誌,21,945(1955) 2)吉 井 ・渡 部 ・岡 田:同 上,22,240(1955)

3) H. BOROUGHS, J . TOWNSLEY and R. W. HIATT : Biol. Bull., ill, 336 (1956) 4) H. BOROUGHS, J . TOWNSLEY and R. W. HIATT : Limnol. Oceanogr., 2, 28 (1957) 5) T. R. RICE : ibid. 1. 123 (1956)

6)上 田 泰 司:私 信(1972)

7)市 川 ・小 栗 ・福 田 ・高 田:日 水 誌,27,351(1961);27,990(1961);28,1160(1962);

    31,  435  (1965)

8)  佐 伯 ・上 田 ・鈴 木 ・小 柳 ・石 川:放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 年 報,149(1967) 9)上 田 ・鈴 木 ・中 村:日 水 会 年 会 講 演,講 演 番 号302(1969)

10)小 林 邦 男:同 上,講 演 番 号476(1969)

11)  上 田 ・鈴 木 ・中 村 ・佐 伯:同 上,講 演 番 号1114(1970) 12)野 崎 ・田 端 ・宮 原:本 誌,29,117(1970)

13)野 崎 ・八 木 ・田 端 ・宮 原:本 誌,27,65(1969)

14)  益 子 帰 来 也:魚 類 生 理,恒 星 社 厚 生 閲,東 京,334(1970) 15)  田 中 ・富 川 ・河 村 ・大 八 木:日 化 誌,89,175(1968) 16)上 田 泰 司:放 射 線 科 学,15,56(1972)

17)  野 崎 ・宮 原:本 誌,33,81(1972)

参照

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