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論文審査の結果の要旨 氏名:矢

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:矢 田 麻 衣

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:都市部の住宅への分散型電源導入による電力自立型地域構築の可能性に関する研究 審査委員: (主 査) 教授 根 上 彰 生

(副 査) 教授 岡 田 智 秀 教授 西 川 省 吾 特任教授 金 島 正 治

本論文は,電力自立型住宅の観点から都市部の住宅への分散型電源の普及拡大を目指し,家庭用分 散型電源の潜在導入可能性を明らかにするとともに,導入による電力削減効果を算定し,電力自立型 地域構築の可能性を明らかにすることを目的とし,成果として以下の知見を得ている。

① 電力需要を適切に把握することが重要となる今日において,時間間隔評価による電力消費量把握 は,家庭用分散型電源導入評価を行う際に重要なファクターであることを示した。

② 家庭用分散型電源の導入に対する住民の意向についてアンケート調査を行い,将来を見据えた住 み替え意向まで踏み込んで評価し,今後の家庭用分散型電源の潜在導入可能性を示唆した。

③ アンケートにより求めた分散型電源普及率と地理情報(GIS)データを活用して地域における電力 需給バランスに関するメッシュデータ解析を試み,分散型電源導入効果の可視化による分散型電源導 入に関する検討手法を新規に提示した。

以下に各章での詳細な成果と評価を記述する。

第 1 章「序論」では,研究の背景と目的を示し,既往研究を整理した上で,家庭用分散型電源の普 及促進に対する障壁や将来の導入可能性まで踏み込んで包括的な検討を試みたものとして本研究を位 置づけ,論文の独自性を明確にしている。

第 2 章「実測データによる住宅用電力消費量の評価」では,電力消費量評価に影響を及ぼす要因と 考えられる計測時間間隔に着目し,各時間間隔の特性と評価に対する影響を明らかにすることを目的 としている。

電力自立型住宅の普及や地域構築にとって家庭用分散型電源の導入や需要側におけるデマンドコン トロールが重要であり,住宅用電力消費量の詳細な把握が必要として,実測調査を通して電力消費量 評価を行っている。具体的には,関東地方の 5 世帯において 2013 年 9 月から 2014 年 8 月の 1 年間,1 分間隔で消費電力を計測し,電力消費特性を把握している。1 分間隔のデータを 5 分,15 分,30 分,

60 分間隔に換算し,各時間間隔の特性を分析した結果,5 分間隔では 1 分間隔に近い精度で電力消費 量の変動を示すという成果を得ている。さらに,家庭用燃料電池をモデルに各時間間隔で導入効果を 算定した結果,導入効果のシミュレーションで多用される 15 分間隔の評価では 5 分間隔の評価と比べ て発電効率に最大 4%の差が生じ,15 分間隔で導入効果を算定する際には過大な評価となる恐れがあ るため留意する必要があると指摘している。電力消費量を適切に把握するためには時間間隔が重要な ファクターであり,5 分間隔程度を住宅の電力消費量評価に適切であることを示したことは本研究の 成果として評価できる。

第 3 章「家庭用分散型電源の導入効果の検証」では,家庭用分散型電源の中でも特に導入に注意が 必要である固体酸化物形燃料電池(SOFC)コージェネレーションシステムについて住宅の 5 分間隔電 力消費データを用いて導入評価を行い,太陽光発電については 1 分間隔計測を行い,5 世帯が電力自 立型住宅を目指した場合の適正導入容量を算出することを目的としている。

SOFC は機器特性上電力負荷が小さく発電効率が低い状態でも稼働し続けるため,電力消費量が一日 を通して比較的大きな住宅への導入が適するとして,5 分間隔の電力消費量を用いて SOFC の導入効果 について発電効率の観点から評価を行い,年間電力消費量が最も小さい世帯(2321kWh/年)は発電効 率が低い状態で稼働する時間が長く導入に適さないが,他の世帯については比較的高い発電効率で稼

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働し,特に年間電力消費量が最も多い世帯(8,132kWh/年)では 1 日を通して定格発電効率に近い状態 で稼働するため SOFC の導入効果が高いという結果を得ている。年間平均発電効率(μ)と年間電力消 費量(x)の関係式を求め,決定係数 R2=0.9 の精度で直線近似できることを明らかにしている。

太陽光発電については 1 年間 1 分間隔で発電出力を計測し,計測結果を基に 5 世帯の適正容量を算 出している。電力自立型住宅を目指すために太陽光発電システムには蓄電池を導入し,発電した電気 は自家消費することを前提として評価し,具体的な数値を得ている。

第 4 章「アンケート調査による住民の家庭用分散型電源導入意向と電力消費量の把握」では,省エ ネルギー意識や分散型電源の導入に対する住民の意向,将来の住み替え意向を調査し,分散型電源の 普及可能性を明らかにし,住宅の電力消費量の実態を地域レベルで把握することを目的としている。

1 都 3 県の住宅 1,000 件を対象に太陽光発電,家庭用燃料電池,および太陽熱温水器についてイン ターネットアンケート調査を実施し,各機器に対する認知度や関心度,導入意向等について分析を行 い,さらに,導入物件への住み替え意向から今後の普及可能性についても考察を行っている。アンケ ート調査への参加には,1年間の月別電力消費量を回答できることを条件とし,比較的エネルギーや 光熱費削減に関心がある層を調査の前提としている。調査の結果,回答者は省エネルギーに対する関 心が高く,世帯収入が平均以上であり,標準的な規模の住宅に住み,比較的分散型電源が導入しやす い層であると考察している。当該層では,80%以上が太陽光発電や家庭用燃料電池が導入された住宅 に魅力があると感じており,理由として光熱費の削減による経済的メリットに加え,非常用電源とし ての防災メリットがあげていることなど,今後の普及の手がかりとなる成果を得ている。また,集合 賃貸在住者の 50%に住み替え意向があり,そのうち 42%は住み替え先に集合賃貸を希望しており,集 合賃貸在住者の 80%近くが分散型電源の導入された住宅に住み替えたいとの意向を示し,集合賃貸に おいても分散型電源導入の需要がある可能性を示唆する結果を得ている。

また,都市部の住宅地域における家庭用分散型電源の導入評価を行う際の基礎データとして,アン ケート調査対象世帯の検針票により電力消費量を把握し,戸建住宅と集合住宅の電力消費月別パター ンと年間電力消費量ヒストグラムを作成して,年間電力消費量に対する導入燃料電池の年間発電効率 算定式を求め,年間電力消費量に対する太陽光発電導入容量を設定している。

第 5 章「家庭用分散型電源の導入による電力自立型地域構築の可能性」では,家庭用分散型電源の 導入可能性と電力削減効果について GIS データを用いて可視化し,家庭用分散型電源導入による電力 自立型地域構築の可能性について明らかにすることを目的としている。

都市部における家庭用分散型電源導入のケーススタディとして,世田谷区を対象に戸建住宅に太陽 光発電と SOFC を導入した際の 100 メートルメッシュ単位の電力消費量削減効果の算定を試みている。

アンケート調査で得られた 1,000 件分の年間電力消費量と延床面積から関係式を算出し,世田谷区の 建物を「戸建住宅等」,「集合住宅」,「その他用途」に分類し,各用途別の延床面積をメッシュ毎に 算出し,関係式から各用途別の電力消費量をメッシュ毎に算出している。さらに,年間電力消費量ヒ ストグラムと「家庭用分散型電源の導入効果の検証」の結果を用いて,SOFC と太陽光発電の導入によ る電力削減量を建物単位で算出した後,メッシュ毎に合計して電力削減効果を評価し,SOFC と太陽光 発電の導入により,電力消費削減率が 50%を超えるメッシュが全体の 20%という結果を得ている。電 力消費削減率が 50%を超えるメッシュの発生地点は小中学校から 200m 範囲内に点在しているため,

小中学校を核とした電力自立型地域を構築し,非常時は個別世帯の電力消費を抑えることで地域への 電力供給を安定して行う可能性を示すとの考察を行っており,本研究独自の成果として評価できる。

第 6 章「結論」では,本研究の成果と社会的意義,および今後の課題について述べている。

家庭用分散型電源導入評価を行う際に時間間隔が重要なファクターであり,全国規模で電力消費量 を適切に把握し,家庭用分散型電源の導入に対する住民の意向について住宅の住み替え意向にまで踏 み込んで評価し,将来の家庭用分散型電源の潜在導入可能性を示し,さらに GIS データを活用して地 域レベルでの分散型電源導入効果の可視化した一連の成果と知見は,将来の分散型電源導入に関する 検討手法を提示するものとして有用性が高く,その成果として,家庭用分散電源が都市部の住宅に広 く普及した際,小中学校を核とした電力自立型地域構築の可能性があることを示しており,今後の発

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3 展性が認められる。

このことは,本論文の提出者が自立して研究活動を行い,又はその他の高度な専門的業務に従事す るに必要な能力及びその基礎となる豊かな学識を有していることを示すものである。

よって本論文は,博士(工学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上

平成28年10月20日

参照

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