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Academic year: 2021

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Title 小規模の部活動における活動形成の論理 : 北海道の高校サッカー部での参与観察をもとに [論文内容及び審

査の要旨]

Author(s) 魚住, 智広

Citation 北海道大学. 博士(教育学) 甲第13974号

Issue Date 2020-03-25

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/78681

Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Type theses (doctoral - abstract and summary of review)

Additional Information There are other files related to this item in HUSCAP. Check the above URL.

File Information Tomohiro̲Uozumi̲review.pdf (審査の要旨)

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学位論文審査の要旨

博士の専攻分野の名称:博士(教育学) 氏名:魚住智広

主査 准教授 加藤 弘通 審査委員 副査 教授 小内 透

副査 教授 後藤 貴浩(国士舘大学文学部)

副査 准教授 石岡 丈昇(日本大学文理学部)

学位論文題名

小規模の部活動における活動形成の論理

——北海道の高校サッカー部での参与観察をもとに——

本論文は北海道の都市郊外圏の A 高校の運動部活動を事例に、部員数が少なくなり資源も乏し い小規模化する部活動が、困難を抱えつつも活動を形成していく論理を明らかにしたものである。

部活動をめぐっては、体罰や顧問教師の過重負担、さらには加熱する競争志向などが問題化され てきた。本論文は、こうした研究動向において盲点とされてきた地方における部活動の小規模化 を取り上げ、そうした条件下においてそれでも部活動が形成されることの意味を、三年間におよ ぶ A 高校でのフィールドワークをもとに、主に生徒の視点から論じたものである。

序章では、本論文の問題設定、および地方における小規模化する運動部活動を取り上げること のねらいが述べられる。第 1 章では先行研究の検討がおこなわれ、多くの部活動研究が「いかな る部活動が望ましいのか」という立場から研究を開始するがゆえに、実際のところ「それがどの ようにおこなわれているのか」をきちんと記述してこなかった点が指摘される。第 2 章では、小 規模のサッカー部が、公式試合に参加する際の制度的な制約条件について考察が行われる。第 3 章では、A 高校サッカー部の内部構成の分析が行われる。第 4 章では、部活動に対して多様な志 向性を持つ部員たちが、「混在を前提にした活動」を展開する点が捉えられる。第 5 章では、前 章までの事例記述をもとに、小規模化する部活動では、練習や試合といった活動だけでなく、部 員や資源の確保、辞めるメンバーへの対応など「活動を形成する活動」が必要になる点が議論さ れる。終章では、各章の要約に加えて、A 高校サッカー部の事例が、何かを「築き上げる」とい うよりも、直面する事態に状況主体的に対応する「沿って進む」営みであると整理される。さら に、部活動を実践する論理について、先行研究で言われてきたような「競争の論理/居場所の論 理」とは異なる「プレイの論理」が、そこには見出される点が述べられる。

本論文の意義は以下の三点に整理できる。第一に、部活動研究において十分に掘り下げられて

こなかった地方における部活動の小規模化という実態を問題化した点である。そこから、練習や

試合といった中心的活動だけでなく、部員数を確保することや辞めるメンバーへの対応、さらに

多様な志向性を持った部員を束ねる最低限のルールをその都度考えたり、試合に参加するための

各種条件を克服する方策を共同で編み出すなどといった、「活動を形成する活動」という、いわ

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ばメタな活動を生徒たちが組織化している様子を読み取っている。こうした「活動を形成する活 動」は小規模化する部活動ゆえにつきまとうものであるが、小規模化する中でも部活動が行われ ることの意義を新たな観点から打ち出したものであると言える。それはまたユース・スポーツと してではなく運動部活動として活動が行われることの意義を提示している。

第二に、高校サッカー界の制度的変化が、小規模部活動をより周縁化するメカニズムを描出し た点である。本論文では高校サッカーにおいて、従来のようなトーナメント形式だけでなく、リ ーグ戦形式が採用され始めていることが記述されている。それは「負ければ終わり」ではなく「負 けても、まだ試合ができる」という点において、より機会を提供する理想的な傾向のようにも見 える。しかしながら、リーグ戦形式では、より多くの審判員や運営委員の拠出が各チームに課さ れる点が解明されている。審判員や余剰部員を確保できない小規模部活動は、表面的には参加の 機会が確保されながらも、実質的にはそこから排除され、高校サッカー界においてより周縁化さ れていく。昨今の制度的変化が、同時に小規模部活動の周縁化を引き起こしている点が、新たな 知見として提示されている。

第三に、部活動に参加する生徒の志向性を一枚岩に措定するのではなく、多様な志向性を持つ 生徒たちが、その異なりを踏まえた上で、なおかつ活動を継続する論理を解明したことである。

従来の部活動研究では、「競技志向型」あるいは「娯楽志向型」などのように、部活動に取り組 む成員の志向性を一枚岩に類型化して議論してきた。A 高校では、競技志向の生徒もいれば、娯 楽志向の生徒もおり、また重要なことに、同じ生徒であっても、時間の変化に応じて志向性を変 化させることも見られた。こうした多様な志向性を認めた上で、それでも、一つのチームとして 活動を可能にする例として、著者はフットサルの利用を記述している。北海道では冬の時期にグ ラウンドを使うことができない。かわりに部員たちは 5 人でプレーできるフットサルをおこなう が、この季節性を逆手にとって、冬の時期は特定の部員たちが活動し、春になると別の部員も再 合流するという成員の離合集散性が指摘される。また辞めた部員に関しても、完全に辞めるので はなく、最終判断を保留した状態にしておくことで、復帰を可能にする仕掛けなども備えていた。

著者はこうした活動を「混在を前提にした活動」と呼び、それが先行研究で言われた「ゆとり部 活動」とは異なる点も指摘している。それは「ゆとり部活動」のように活動内容を緩くするとい うものではなく、多様な志向性を持った部員たちを束ねるための秩序として捉えられる。本論文 は、多様な志向性とチームの秩序の関係という部活動研究の新たな論点を打ち出している。

以上三点は、いずれも部活動研究に新たな知見を付け加えるものであり、審査委員会ではこれ らの点を肯定的に評価した。一方で、本論文は部活動の研究でありながらも、同時にスポーツの 研究でもあるようにも読み取れ、部活動とスポーツの関係をどのように整理できるのかを今一度 考える必要があるという課題も出された。また、事例を記したエスノグラフィーの箇所とそれを 考察した理論的整理の箇所の関連がやや不明瞭であり、両者の関連性をより明示的に描く方法が 望ましいという指摘もあり、今後の課題として出された。

こうした課題点も指摘されたが、本論文は三年間におよぶフィールドワークをもとにした貴重

な調査研究であり、そこで提示された論点も新たな部活動研究の可能性を切り拓くものである点

が評価できるものである。以上の評価に基づき、申請者は北海道大学博士(教育学)の学位が授

与される資格があるものと認める。

参照

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