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過食嘔吐の大学生へのナラテ ィブ 0セ ラ ピー風心理療法

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過食嘔吐の大学生へのナラテ ィブ 0セ ラ ピー風心理療法

富山大学保健管理セ ンター  斎 藤  清 二

Seiji Saito:So―called Narrative Therapy for a University Student with Bulirnia Nervosa

1.は じめ に

本 論文 で は、過 食、 嘔吐 を主訴 に来室 した20歳 の女 子 大学 生 Aさ ん との約 7ヶ 月 間 の面接 経 過 を報告す る。

摂 食 障害 は、現代 日本 の大学生 にお いて決 して 珍 しい病 態 で はな く、大学 の相談室 を訪 れ るケー ス も稀 で はない。 しか し、摂食 障害 の病態生理 や 治 療 につ いて、一定 の見解 が確立 して い るわ けで はない。摂食障害 は、病態分類 と して は、大 き く、

拒 食 症 (Anorexia Nervosa:AN)と 、 過 食 症 (Bulimia Nervosa:BN)に 分 け られ、 BNは らに、排 出行動 (自発 嘔吐や下剤乱用 な ど)を 伴 うタイ プ (BN with purging)と 、 伴 わ な い タ イ プ に分 け られ る (1)。Aさ ん は典 型 的 な BN w i t h   p u r g i n g で あ り、 5年 以上 の病歴 を持 って い るが、相談機関 や医療機 関 を訪 れ たの は これが 初 めてで あ る。

元 来、B N は 米 国 にお け る女子大学生 の研究 か ら注 目され るよ うにな った概念 で あ り、 自己実現 的 に生 きよ うとす る女性 の現代社会 にお ける コ ン フ リク トとい う観点 か ら病態 を理解 す る立場 が有 力 で あ る。 この よ うな観点 か らは、 BNは 一種 の 文 化 結 合 症 候 群 で あ る とい う考 え方 も可 能 で あ る ( 2 ) 。

一 方で、近年、摂食障害 に対す る治療 につ いて

の臨床疫学的エ ビデ ンスが蓄積 され、治療法 の選 択 にエ ビデ ンス情報を利用す ることが可能 になっ て きた。現時点での、摂食障害の治療 についての エ ビデ ンスを概観すれば、ANと BNは 好対照を 示 していると言わざるを得 ない。ANへ の特定の 心理療法的介入の有効性については、否定的なデー タが ほとん どであ り、特定の薬物治療の有効性 も 実証 されていない。注意深 い継続的な身体的なケ アを対照群 とした場合、認知行動療法、対人関係 療 法 な どの介 入 の有 効 性 は ほぼ否 定 され て い る (3)。

ANと は対照的に、BNに おいては、複数 の心 理療法的介入 の有効性が無作為割付試験 (RCT)

によって実証 されている。一般 に認知行動療法 に ついてのエ ビデ ンスが豊富であるが、複数 の心理 療法の有効性が実証 されている。抗 うつ薬 などの 薬物療法の有効性 も実証 されてお り、薬物療法 と 心理療法の併用 も有用である。多 くの心理療法の RCTは 、待機者 リス ト登録者が対照群 とな って いるため盲検化 されてお らず、治療者患者関係な どの非特異的効果が治療群 における効果か ら除外 されていない。各心理療法の特定の理論や技法が 他 の療法 よりも明 らかに優れているとい う証拠 は 現在 のところないと考えて良 いと思われ る (4)。

Aさ ん に対 しての今回の介入 は、形式 的 には従

(2)

来 か ら行 われ て来 た非指示 的 カ ウ ンセ リングに近 い。結 果 的 に は約 7ヶ 月間、 12回の比較 的短 い治 療 によ って、症 状 (過食 ・嘔吐 の程度 お よび うつ 気分 )は 改善 し、 治療 は終結 し、 その後再来室 す る こ とな く無 事 大 学 を卒 業 した。 しか し、 Aさ ん との治療 は、本質 的 には治療者 との 「対話」 で あ った。本治療 を、近年家族療法領域 において急 速 に注 目されて い る 「ナ ラテ ィブ ・セ ラ ピー」 の 観 点 か ら考 察 す る こ と もで き る (5,6)。Aさ ん と の対話 にお いて、 「過 食 ・嘔吐」 とい う症状 に は ほ とん ど焦 点 が 当 て られ ず、 Aさ ん の語 りの 中 心 的課題 は、 自分 自身 を含 む家族 につ いて の物語 で あ った。 その中で、 Aさ ん に とって どの よ うな 家族物 語 が生 成 され て い ったか、 とい うことが治 療経過 と密接 に関連 して い る。本論文 で は、 Aさ ん の語 り、特 にAさ ん に とっての家族物語 が どの よ うに経過 の中で、生成、変容 して い ったのか、

とい う観点 か ら考察 したみ たい。

2.事 例 の概要

Aさ ん は来談 時20歳、 大学 3年生 で あ る。 二 人 姉 妹 の次女。 両 親 は B県 で 自営業 を営 む。 14歳頃 か ら、過食 ・嘔吐が あ ったが、現在 まで医療機 関 な どで相談 した り治療 を受 けた り した ことはない。

18歳時 に C大 学 へ入学 し、 その後 アパ ー トで一人 暮 ら しを して い る。 この ころは過食 ・嘔吐 は時 々 あ る程度 で、生活 は安定 して いた。 しか し、大学 2年 生 の後半 か ら、過食 0嘔 吐 の頻度 が増加 し、

ほ とん ど毎 日食 べ 吐 きをす るよ うに な った。 X 年 4月 23日、 セ ンター に 自主 来 室 。 30分 間 の イ ン テー ク面接 を行 い、定期面接 の同意 を得 た。以下 に面接経過 を、主 と して Aさ ん の語 りの内容 を中 心 に記述 す る。 #は 面接 の回数 を示 す。 < >は 治療者 の発言、 「 」 は Aさ ん の発言。

3.面 接経過

[ # 1 : X 年 4 . 月2 3 日]

< 今 までの経過 を教 えて くだ さい > 「 14歳の 時 、 夏 ば て で4   k g 体 重 が 減 って、 1 5 0   c m 、 3 5 k g く らい に な った。 その ころか ら、 た くさん食

べて、その後吐いて しまうようになった。実家 は コンビニを経営 してお り、冷蔵庫の中に食べ物が いっぱいにつまっているような状況だ ったので、

食べ吐 きの癖が抜 けずに高校時代を過 ごした。 し か し、 この ころは、月に一度か、せいぜい週 に一 度 くらいだ った。大学へ入学 してか ら、過食 ・嘔 吐は減少 し、安定 していたが、実家へ帰 ると過食 ・ 嘔吐を して しまうことが続いていた。 ここ数 ヶ月、

過食 ・嘔吐がひど くな り、今 は一 日に一回 は最低 ある」。 <現 在 の状況 は ?>「 アルバ イ トしてい るときや、学校 にいて友人 と一緒 にいるときは我 慢で きるが、家 に帰 って一人 になると、必ず過食 して、嘔吐 して しまう。指をつ っこまな くとも吐 けるので、つ い吐 いて しま う」。 <今 の自分 の状 況 についてどう感 じますか ?>「 過食 はお金 もか か る し、太 って しまうと思 うのでいやだが、吐 く ことははかえ ってす っきりす るのでさほどいやで はない。 しか し、最近朝だる くて起 きれないこと があるし、就職の ことなどを考え ると、やめなけ ればと思 う。 しか し、 自分ではどうや った らやめ られ るかが分か らない。それで思 い切 って相談 に 来 た」 <こ れが影響 しているかなあ、 と思 うよう な心 あた りは ?>「 両親が現在二人暮 らしで、家 族間の連絡役 を自分が しなければな らないとか、

両親の ぐちの聞 き役を しなければな らない。大学 院へ進みたか ったのだが、 それが難 しくな りそ う だ とか、バイ トを したいのだが両親が反対す るな ど、色々実家が らみでス トレスがある。 それが過 食 ・嘔吐に影響 しているか もしれない」<ど うやっ て気晴 らしを していますか ?>「 趣味 は、音楽系 サークルで、気分転換を していたが、最近は過食 ・ 嘔吐に時間を とられ るので、あまりで きない。体 重の増減 は、最近 はあま りない」。

過食症の病態説明 と、今後の方針 を話 し合 う。

「食べ たい!でもやせ たい」(7)を貸 して、 <興 味 があれば読んで下 さい>と 伝えた。

[ # 2 : X 年 4 月2 8 日]

< そ の後 はどうですか ? > 「 この 1 週 間 は、 3 食 ちゃん と食べた 日もあ ったが、 たいていは一 日

(3)

過食嘔吐の大学生へのナラティブ ・セラピー風心理療法

一 回嘔吐があ った。 ひどい 日もあ ったも ひどか つ た 日は、 サー クルの ことで少 しごた ごたが あ って、

面倒 くさ くな って毎食後過食 して しまい、夜疲 れ て寝 て、翌 日は朝 か らバ イ トで持 ち直 した。 サ ー クル関係 で、何 で も悪 い方 へ考 えてす ねて しま う 人 が いて、 ほ ってお けな くて関わ るが、 うっとお しくな り、面倒 くさ くな って しま う。 自分 も昔、

その よ うな傾 向が あ ったが、 あま り正面 か ら考 え す ぎない よ うに して乗 り切 って来 た。 自分 のいや な と ころを見 るよ うな気 が して、 つ い気 にな って しま う。母 もその よ うな傾 向が あ り、 すねて、ハ ンス トを した りす る」 <ご 家族 につ いて少 し話 し て くれ ますか ?>「 家族 は、祖父母 と両親 と、姉 と自分 の姉妹 だ ったが、姉 は祖父母 になつ いてお り、父母 が けんかす ると、母 はすねてハ ンス トし、

私 を通 じて しか家族 と話 しを しな くな ることが し ば しばで、 中学校 頃か ら私 が メ ッセ ンジャー役 を や らされ た。両親 はその後 も変 わ ってお らず、姉 は結婚 してか らは、 あ ま り家 には寄 りつか ない。

両 親 は コ ン ビニ を経営 して い るが、 『子供 を大学 にや るために』 と言 ってお り、手伝 わ な ければい けな い とい う雰 囲気が あ る。休 み に帰 るたびに、

シフ トが くまれてお り、従業員 の都合 によ って時 間帯 が変 わ り、 自分 の予定 が全 く組 めないよ うな 状 況 で、 とて もス トレス。 『lヶ 月 しか手 伝 え な い』 と言 って も、『なんで もっと手伝えないのか ?』

とか、母 には う らみが ま しい態度 を と られ る。父 は口 にはだ さないが、 そのぶん ス トレスをためて 胃潰瘍 にな った りす る。 そ うす る と家 は破綻 す る ので、 自分 が何 とか しな けれ ばな らない と思 って しま う」 <そ れ は、 たいへんですね >「 それで も、

ぎ りぎりまでがん ば って しまい、冬休 み は毎 日シ フ トに入 って、最終 日、 イ ンフル エ ンザで高熱 を 出 したが、 その まま富 山へ帰 った。今二番気 が重 いの は、連体 に実家 で手伝 いを しなけれ ばな らな い こと」 <気 が重 い時 はど うや ちて しの いで いま す か ?>「 比較 的楽 な時 は、本 を読 むのが好 き、

何 で も読 むが、吉本 ばななの 『つ ぐみ』 な ど。最 近 は江 国香織 な ど。過食 でお金 を使 うので、本 が 買 え ない。面倒 くさ くな ると、 や は り、食物 に手

を出すのが最 も簡単 なので、 そ うな って しま う。

一 時飲み物で代用 しよ うと思 ったが、 カ ンチ ュー ハ イなど、良 くない ものに手 を出す よ うにな った ので、 もっぱ らパ ンを食 べて い る」。

[#3:X年 5月 7日]

<そ の後 はいかがですか ?>「 連体 中 に、実家 で、将来 の ことにつ いて、 ざ っ くば らん に話 がで きて、 とて も気分 的 にす っき り した。大学 院進学 は無理 とい うことにな ったが、就職 の こと も含 め て、合意 がで きた。公務員試験 の講習 を受 けるこ とや、パ ソコ ンを買 うこと、 そのために手伝 いの 日程 を調整 す る ことな どで合意 がで きた」 <そ れ は良 か ったね >「 気分 が明 る くな って、 イ ライ ラ が減 り、食 べ る量 も以前 よ り減 った。 吐 く回数 も 減 った。 その た めか、 2 kgほ ど体 重 が増 えて し ま ったが、 しか たないか な、 と思 って い る。 それ と便秘 が ひ ど くて、 セ ンナの常用量 を使 って いる が、 す っきりで ない」 <家 での様子 は ?>「 実家 で は、祖母 が体調 を壊 して いたのが、 び っ くり。

成 人式 の 2次 会 で中学 の同級生 と話 がで きたのが とて も楽 しか った。家 で は、掃 除 を した り、模様 替 えを した りす るのが大好 きなので、去年か らや っ て い る。父 の部屋 を、私 が模様替 え したの に、車 の音 が うるさいか らいやだ、 と言 って使 って いな か ったので、腹 が た ったが、連体 中 は私 が その部 屋 を使 った」 <大 学 の方 は ?>「 大学 院へ進学 を 考 えて いたので、勉 強 しな くち ゃと思 って いたが、

就職 に心 を決 めた ら、 す こ し自分 に楽 しい ことを させ て も良 いので はないか と思 え るよ うにな って きた。後期 は授業 を減 らそ うと思 って い る。公務 員 の講習 を受 けた り、 バ イ トした りで、 け っこう 忙 しい。友人 と一緒 に過 ごす時間が多 いので、過 食 の程度 は少 な くな った。冷蔵庫 を空 っぽ に して お くよ うに して い るが、実家 か らお菓子 を送 って きた りす るので、 うれ しい悩 み にな って い る。実 家 か ら送 って も らった もの は粗末 にで きない と感 じるので、捨 て た り、腐 らせ た りで きず、 つ い全 部食 べて しま う。今 はず いぶん良 い状態 だ と思 う。

夢 はみ な い ほ ど ぐっす りと寝 る」。 今後 2週 間 に

(4)

一度の面接 とする。

[#4:X年 5月21日]

<ど うですか ?>「 調子 は悪 くない。過食の回 数が減 り、程度 も軽 くな った。嫌 なことがあって 過食 して も、 そのせいでさらに落 ち込む ことはな くな った」 <大 学生活の方 は?>「 大学院をほぼ 完全 にあきらめ、就職のための公務員講座を受 け ることにな った。そのため、実家の手伝 い も考慮 して もらえることになって、気分的に楽になった。

友人 に大学院をあきらめることを話す と、賛成の 人 も反対の人 もいるが、 自分 としては一応す っき り した と思 って い る」 <今 の専攻 を選 んだ理 由 は?>「 中学生の頃か ら、天体観測などが好 きで、

プ ラネタ リウムや NHKの 科学番組 などが大好 き だ った。高校 の時 T大 学 の体験入学 に参加 して、

どうして も宇宙物理学へ進みた くなった。 しか し、

まわ りには話が通 じる人が少な く、両親 は理解 し て くれず、せいぜい資格を とることくらいまで し か分か って もらえない。姉 は、 自分の希望を実現 す るために、壁 を突破 した人で、私立の美大を親 に内緒 で受験 して、『合格 したか ら行かせてほ し い』 と主張、かな リ トラブルがあったが、結局学 費だけ親 に出 して もらって、生活費 はアルバイ ト で暮 らし、卒業 して広告会社へ就職 した。 しか し、

親の方 は、一年 くらい同 じ愚痴 ばか り言 うように な り、私が聞 き役 になった。 自分 としては、 自分 の希望 の道を貫 きたいとい う気持 ちはあるが、姉 と親の確執 を見ていると、 自分 はそ こまで しよう とは思えない。大学へ入 るまでは、親の言 うこと には妥協す るよ うなふ りを しなが ら、実際には自 分の道 を進む、 とい うことを して きた。 しか し、

ここまで来て、そ うもいかな くなって しまった」

<物 理学 については ?>「 世界や宇宙の色 々な複 雑 な ことを、す っきりとした単純 と した理論や計 算式ですべて説明す るとい うことは、 とて も魅力 的な ことで、 それがで きたときはエネルギーが湧 いて くる。数式 も自分で解 けるようになると、お もしろ くな って来 る。理系 (特に物理学)の 世界 は、F有名 にな りたい』 とかではな く、『自分がお

もしろければいい』 という世界 なのだが、 それは とて も価値があると思 う。 しか し、 そのよ うな話 が通 じる相手が女性 には少ない。人文や経済系の 人 とは一般的な話をす ることがで きるが、科学的 な話 は通 じない。工学や理学系の人 とは、科学の 話 はで きるが普通の話がで きない。両方で きるよ うな人がいれば、 とて もすて きだ と思 うのだが、

そ ういう人 にはなれない し、 まわ りにもいない。

科学的な話 は、む しろ男性 とする方が話が通 じる」

<と りあえずの希望 は ?>「 今 は、親 の経済状態 を無視 してまで、大学院に進 もうとす るよ りは、

いったん就職 して、お金をためて、学 びたいこと があれば、社会人入学 してで も学べば良 いのでは ないか と思 っている。働 くことその ものは辛 くな い。一応卒業研究 は、理論系 よ りも実験系の方が 将来役 にたつかなあ、 と思 っている」。

[#5:X年 5月21日]

<最 近 はどうですか ?>「 吐 くことは完全 には 無 くな っていないが、食べたいとい う気持 ちをコ ン トロールで きるよ うにな り、ずいぶん楽 になっ た。忙 しいということも幸 い しているのか も知れ ない。今 まで、F食べ吐 きの ことを知 られてはい けない』 と思 っていたのを、信頼で きる人 に数人 話 してみた ら、理解 して くれた り、心配 して くれ た りとい う反応で、 これ も楽 にな った理由の一つ だ と思 う」 <中 学、高校の頃の ことを話 して くれ ますか ?>「 D県 のD市 の出身で、高校 は地元の 進学校。中学 の時、成績が良か ったので、先生か ら期待 されて、色々な委員をさせ られたり、生徒 会役員 に立候補す るよ うにプ レッシャーをかけ ら れた りした6親 もそれに同調 し、『親 しい友人が 先 に立候補を決めているか らいやだ』 と言 ったの に、結局押 し切 られて立候補 した ら私の方が当選 して しまい、 その後気 まず くなって しまった。高 校 は推薦で進学校へ。 その時 も優等生 と周囲か ら 見 られ るのがいやで、断 ったりしたのだが、結局 そ うな った。 この頃か ら、夏ばてで激やせ した こ とをきっかけに、過食嘔吐が始まった」<そ うだっ たのですか>「 高校では、周囲か らの圧力がかか

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過食嘔吐の大学生へのナラテ ィブ 0セ ラピー風心理療法

るのが嫌で、で きるだけ目立 たないよ うに、何 も しないよ うに心が けた。成績が上が りす ぎると、

先生や両親 に知 られて騒がれた り、生徒会か ら声 がかか った りす るので、 あまり成績 を上 げす ぎな いよ うに していた。親 は、良 い成績 をとって、運 動を して、 というのを望んでいるのは分か ってい たが、 クラブは剣道 をやめて、美術部 と調理科学 部 に入 った。美術部 はお絵か き程度 と思 って入 っ たのだが、妙 に評価 されて、『美大へ行 くの ?』

とか言われるようにな り、先生が 『や る以上 は、

全力をあげて』 とい う人だ ったので、嫌 になって 調理科学部 に替わ った」 <大 学入試 は ?>「 大学 は、親か ら 『薬学か医学』 と言われていたので、

推薦 と、 前期国立 は、 ど う して も行 きたい T大 学 に して、後期 は絶対入れる (しか し希望の物理 がで きる)C大 学 に した。中期 と私立 は、 もし合 格す るとそち らへ行 けと言われるので、 ほとん ど 白紙で出 した。推薦 と前期落 ちた時は悔 しくて泣 いたが、 C大 学 に後期で合格 して本当によか った と思 っている」 <ご 両親 は ?>「 両親 は、 どち ら も身体が弱 く、父 は人付 き合 いが悪 くて、読書が 唯一の趣味で他の趣味がない。母 は銀行員を して いたので、外で友人 と会 っていないともたないタ イプ。それで、母がでかけると父が怒 る。姉が両 親 に反抗 して、 自分の道 を貫 いて、一時 は家 と絶 縁状態だ った。両親の期待 は私 に向いて、その頃 はあまり辛 いと思わなか ったのだが、両親 の間、

両親 と姉 との間に入 って、 いつ も家ではその こと で手一杯だ ったので、学校 などその他の ことで問 題 を抱え ると、す ぐに限界を超えて しまい、身体 の調子を崩 した りしていた。高校の時、登校 に時 間がかか り、夜勉強 しなが らこたつで うたたね じ ていた ら、突然父が入 って きて、怒 りだ して こた つをひっくり返 された りした。 また車の助手席で 話 を しているとき、手を挙 げ られた りしたことも ある。最近 になって、従姉妹や、友人 にそんな話 をす るよ うになって、その反応か ら、 自分の両親 はしつけにかなり厳 しか ったのではないかと、やっ と理解す るよ うにな った。姉 と電話で話をす る時 に、『私たち、結構やばい環境だ ったんだよね―』

などと言 い合 うことがある。一方では、友人の話 を聞いた りして、 自分 よ りず っとひどい家庭環境 の友人 もいるので、 まだま しなほうかな、 と思 っ た りもす る。最近、一番 うれ しか った ことは、両 親 に旅行 を勧 めた ら、二人で温泉旅行 にいって、

出無精の父 もそれな りに喜んでいた。姉 に喜んで 報告 したが、あまりぴん と来ていなか ったよ うだ。

自分 としては、両親のために もなる し、 自分 も楽 になる し、一石二鳥だ と思 う」 <今 後の ことにつ いては?>「 大学院をはっきりと断念 したことで、

かな り楽 にな っている。就職 に物理 を行かせない か とい うことで、学芸員の資格や、両親 を安心 さ せ るために、英検や行政書士の資格 もとるつ もり に している。実験 に関係す る仕事 はむ りなので、

む しろ理論系の方が、良 いのかなあとも思 ってい る。中学、高校時代の ことを話 したのは、 いまま でに一人 くらい しかいない し、姉 に話 して も理解 して もらえなか った。最近話がで きるようにな っ たのが、良 いことだ と思 っている」。

[ # 6   : 0 3 . 0 6 . 1 8 ]

(面接時刻 を忘れていて、 1時 間遅刻)<最 近 はどうですか ?>「 調子 は良 い。一時体重がかな り増えたが、特 に制限す ることな く、運動量 を増 や し、普通 に食べ るように していた ら、少 し落 ち 着いてきて、体重 も少 しもどり、食事の好み もあっ さりした ものが ほ しいよ うになって きた。食費ヘ の出費 も減 って きた し、便秘 も軽 くな って きた。

サークルとも足巨離をお くようになり、気が楽になっ た。授業の うち、専門科 目で興味が もてない もの は欠席 した りしている。以前 は絶対 に休んではだ めだ と思 う方だ った。少 し、 いいかげんになるこ とを許せ るようになって きたが、実家 にいる状態 で はそれ はで きなか った と思 う。F授業 に出 る以 上 は、全て優 をとれ』 というような親だか ら。最 近 は自分の時間 も少 しとれ るようにな り、 ビデオ や DVDを 見たりしている。本 も読みたいのだが、

お金がない」 <実 家の方 はどうですか ?>「 家族 問題 はや っぱ り難 しい。両親が コンビニを来年で やめて、その後 どうす るか決めていないというの

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で、姉 は怒 っている。 自分 として も、両親が子供 にべ った りと頼 って きそ うな気配で、 それは何 と か避 けたいのだが、 どうや って両親 に気づかせよ うか と色 々考えている。姉 と母の間 も、 もう少 し 何 とか したい。母 と姉 は性格がよ く似ているのだ が、当人同士 は絶対 に認めない。 お互 いにお互 い の地雷を踏みあ うよ うな ことを している。 自分 は 父親 と性格が似ているように思 う。 もともと姉が 父親 と近 く、 自分 は母親 と近 いよ うな構図だ った が、姉が完全 に実家か ら距離 を置 いているので、

少 しは改善 されないと自分 も困 る。幸 い体調 も良 くなって きたので、 エネルギーを蓄えて、夏休み にじっくりと話 し合いを して来ようと思 っている」

[ # 7 : X 年 7 月2 日]

<最 近 はどうですか ?>「 嘔吐はとて も減 った。

一週間に一度 くらい、特に週の真ん中頃に多いの だが、朝か ら眠 くて食欲がな く、夕方 に二食兼用 のような食事 をす ると、夜中におなかが空 いて し まって、食べずにい られな くなる。 2時 間 くらい で眠 るのだが、翌朝おなかの調子が悪い。 しか し、

ひどいときに比べ るとず っとま しで、中学 の頃、

最初 に過食嘔吐が始 まった時 と同 じ程度。食費 も 減 らせ るよ うにな って来 た。現在 の体重 は、49k g。 あ と 2 kg少 ない くらいがベ ス ト。 や は り体 重 は気 になる。最近 は本が読みたい し、 ビデオや 映画が見たい」 <夏 休 みの予定 は ?>「 夏休みは 2週 間ずつ 2回 に分 けて帰 る。 それ ほど負担 には な らないように思 う。お盆の前後 は忙 しいが、 こ こよりは蒸 し暑 さが少ない し、季節の移 り変わ り が はっきりしているように思 う」 <自 然の移 り変 わ りと、人間の身体が結 びついていることを、 自 覚す ることはとて も大事だ と思 います >「 本当に そ う思 う。一人暮 らしを していると、特 にそ う感 じる。姉 とも色々相談 して、作戦を練 っている。

コンビニやめる話 とか。母 と姉が結託 して父を責 め るパ ター ンになると、 今度 は父が持 たない」

<あ なたが全て責任を負 う必要 はない。 いままで 家族 の調整を一人で担 って きた自分 を時々ほめて あげて下 さい>「 はい。がんば ります」。

[#8:X年 7月16日]

<そ の後は?>「 調子は良い。嘔吐はかなり減 っ た。身体的には自信がついて きた。気分的には、

ち ょっと、 あ―あ とい う感 じはあ る」 <と 言 う と?>「 最近、親がまたコンビニを続 けるか も知 れない と言 いだ し、『話が違 う』 と言 った ら口論 にな った。 自分 としては、親が コンビニをやめる と言 ったので、それでは学資を出 し続 けて もらう のは無理だろうと考えて、大学院進学 をあきらめ たのに、『今 さ らそれ はないだろ う』 とい う気持 ち。せ っか く公務員試験をがんばろうとい う気持 ちにな っていたのに、無気力にな って しまう」 <

それは無理 もないね >「 実家 は田舎 にあ り、父方 の実家 は造 り酒屋、母方の実家 は庄屋で、 どち ら

も旧家。 そのため、周囲 との関係が、今で も使用 人 として他の家をみるなど、理解で きないところ があ った。姉 も私 も成績が良か ったので、狭い土 地 なので周囲か ら何か と関心 を持 たれ、最悪なの は、他の家の子供が、私達 の姉妹 と比較 されて勉 強させ られること。そのため、普通の友達だと思 っ ていた子か ら、全 く予想外の ことを言われたりす ることがあ った。そ ういうのが とて も嫌だ った。

父 は、子供の頃大病を した ことがあるというので 甘やか されて育 ち、本ばか り読んで、仕事を しな いような人だ った。母 は名家の末娘で、性格が き つ く、 しつけ も厳 しか った。 自分では覚えていな いが、従弟 などか ら、『あんたのお母 さん怖か っ た』 と言われ ることがあ った。母 はプ ライ ドの高 い人で、 プライ ドの一部が子供の成績 などで構成 されていて、成績や習 い事 などで、悪 い結果 にな ろ うものな ら、露骨 に不機嫌 になるよ うな人だ っ た。中学校のは じめまで、 そうい うことにはほと ん ど無頓着 に育 ったが、中学校の後半か らそれを 感 じるようにな り、親や周囲か ら距離 を置 くよう にな った。高校の時 は、特 にそれが はっきりして いて、反抗的だ った し、学校で も周囲に壁 を作 っ ていた。親が コンビニを始 めたのは私が14歳の頃 で、親 も商売 を初めてか ら、周囲か らどう思われ ているか、昔 とは違 うのだ ということが、少 しは

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過食 嘔吐 の大学生 へ の ナ ラテ ィブ 0セ ラ ピー風心理療法

分か ったよ うだが、 あま り変わ っていないよ うに 見える。姉 はもっと早 くか らそれに気づいていて、

激 しく親 に反抗 した。私 も今では、姉のようにす る しかないのかな、 と思 うよ うにな って きた。親 には、早 く子離れ して、 自分 たちの生活を確立 し てほ しいのだが、両親の今後 の生活設計 には私の ことが組 み込 まれているよ うで、『私 の意見や希 望 はどうなるんだ ?』 という感 じがす る。故郷 は 良 い意味での人間関係 はほとん どな く、田舎の し が らみが悪 い形でだけ=ゝりかか って くる。 そんな 土地で仕事を した くはない。 しか し、親 は分か っ て くれない」 <こ の後 は?>「 試験が終わ った ら、

とりあえず実家 に帰 る。 お盆 に姉が帰 って こない ことになったので、私 にかか る負担が多 くな りそ うだが、 なん とかや っていけると思 う。少 な くと も言 いたいことは伝えな くては、 と思 っている」。

[#9:X年 8月27日]

<実 家 はどうで したか ?>「 実家では、母 と姉 は比較的 うま く行 っているようだ ったが、両親が、

私 に対 して頼 って くる様子が見受 けられて、 あ―

あ と思 うことが多か った。 もう地元 に戻 って就職 して、親 の面倒を見 ることを前提 に しているよう な話が多 くて、分か って もらえない感 じだ った」

<最 近の状態 は ?>「 ここへ帰 って来てか ら、週 に 2回 くらい過食嘔吐がある。朝10時か ら4時 過 ぎまで公務員試験の講習を受 けて、夜 は予習 など を して寝 るとい う生活だが、気力があまりでない し、落 ち込む こともあ り、つい過食 して しまう。

身体的にはそれほど影響が出ているとい うほどで はないが、精神的にはきつ く、寝ている時間が増 えた。 もう一つ気の重 いことがある。遠 い親戚の 1学 年下の男子が、中学校か ら不登校気味 とな り、

中学 の時、生徒会の関係で少 し面倒を見てあげた り、相談 に乗 った りした ことがある。親戚か ら母 を通 じて話が来て、夏休みに図書館の ロビーで 2 時間 ほど相談 にの ってあげたところ、 その後頻回 にメールが来 るようになった。 その内容 も、 プラ イベー トなことにかかわるようなことで、ウザい ! 母親 に愚痴 をい うと、 『あなたがつ きあ ってあげ

な いか ら、 そ うな った』 とい うよ うな ことを言 わ れ るので、 とて も腹 が たつ。個人的 な内容 の メー ル につ いて は シカ トして い るのだが、拒否 されて い るとい うことが分か らないよ うで、困 っている。

知 り合 いに相談 して も、 同情 は して くれ るのだが 解 決策 が ない。 きつ い ことを言 って、具 合 が悪 く な った り して も困 るとい う不安感 が あ る。 しか も 本 家筋 の関係 の ことなの に、 父親 は完全 に我 関せ ず で、私 たちに押 しつ けて い る。頻 回 にメールが 来 た りす る と、 本 当 にス トレス。 9月 に帰 省 す る とまた会 わ なければい けない可能性 が あ り、我慢 で きない。母親 同士 とか のル ー トで色 々話 が伝 わ る可能̀性もあ り、 それ も気 が重 い」 <あ なた と し て もい っぱいい っぱい とい う感 じだね >「 今、 こ こに通 って い る ことは、親 には言 って いない。 嘔 吐 の ことを少 し母親が気づ いた ことが あるのだが、

『病 院へ行 って治 せ』 とい う態度 で、 自分 の方 の 態度 を変 え よ うとい う気持 ちはない。『あん たが、

対 応 を少 し変 えれ ば、私 は治 るよ』 と言 って や り た い。 少 し強 く言 うと、 『あん たた ち (私 と姉) は、 いつ もそ うや って親 を責 め る』 と言 って ひが む。今後 の ことを両親 と話 し合 わな けれ ばな らな い とい う仕事 もあ るのに、本 当 に困 って しま う。」

精神 的 に辛 そ うなので、 しば ら く 1週 間 に 1度 の 面接 とす る。

[#10:X年 9月4日]

<そ の後 はど うですか ?>「 親戚君 の件 は、 そ の後 メールが来 な くな ったので、一応今 は問題 な し。 しか し、親 の ことで気が重 くな ることが多 い。

父 が金銭 にル ーズなので、母 が家 のお金 関係 を取 り仕切 って い る。母 は自分 で は買 い物 はず ば っと す る方 なのだが、周 囲 に は金銭 的 な ことに うるさ く、色 々 口を出 して くる。今 回パ ソコ ンを買 わな けれ ばな らな いのだが、 その ことで連 日ああだ こ うだ と電話 を して来 て、 その くせ、実家 で のバ イ ト料 を振 り込 んで いない ことに腹 が立 って、 けん か にな った。 お金 は振 り込 まれて来 たが、 その後、

母 の方 が す ねて しま った よ うだ。 こっち もい らい らす るが、最近 は無茶食 いにはな らず、妙 に眠 く

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な って寝 て しま う。睡眠時間が10時間 を超 えて い る」 <そ うですか。夢 は見 ませんか ?>「 夢 は夜 は見 ないのだが、昼 は見 て、 あま り覚 えて いない が、夢 の中で も母 と口論 を して い るよ うだ。現実 に は80%押 さえて い るのだが、夢 の中で は派手 に 腹 をたてて い るよ うだ」 <夢 の中で は喧嘩 で きて い る>「 母 は 4人 兄弟 の末 っ子 で、長男 はお とな しい人 だが、 2人 の姉 を含 む 3姉 妹 は、気 が強 く て、理屈 もたつ ほ うで、 とて も怖 い存在。逃 げ道 を全部塞 いでか ら相手 を倒 しに行 くよ うな タイプ で、 けんか して勝 てそ うな相手 で はない。親族 の 中 で は、男性 で強 い人 はあ ま りお らず、女 性 だ け が強 い。 中学時代、金八先生 の よ うな タイプの教 師 が いて、 何 か と目をか けて くれ たのだが、大嫌 いだ った。 その先生 のために、 自分 の実際 とは違 うイ メー ジ (努力家 で勉強 も良 くす る子)が 作 り 上 げ られ て しま った。 『お まえ な らで きる』 な ど と言 われて、生徒会 の役員 に無理 に立候補 させ ら れ た り して、嫌 な ことが た くさん あ った。母 は今 で も良 い担任 だ と思 って い るよ うで、私 自身 の イ メー ジの ことにつ いて、 この間 も言 い争 いを した が、 途 中で母 が遮 断 して しま った。 『本 当 の私 は そん な イ メー ジとは違 う』 と言 って も分 か って も らえ な い。 『お まえ は、 本 当 は もっと上 にい け る はずだ った』 な どと言 われ るが、 そ うい うこと言 わ れて も困 る。特 に就職 につ いて は、親 の意 向を 考 えて希望 を断念 したの に、母親 は 『ほ― らや っ ぱ り』 と思 って い るところが あ る。私 は この大学 は理論物理学 で は レベル も高 い し、良 い大学 だ と 思 って い るのだが、母親 はそ う思 って いない。最 近 は説 明す るだ けで も疲 れ る。親 に精神 的 に大人 にな って ほ しいのだが、変 わ って くれそ うもない。

姉 は姉 で、距離 を とっている し、本当の味方 にな っ て くれ る人がいない。ち ょっと精神的 に辛 いです」。

[#11:X年 9月 18日]

<そ の後 はど うですか ?>「 姉 と電話 で 1時 間 くらい話 を して、言 いたい ことを言 えて、 か な り 救 われ た気 が した。 姉 は、 自分 にはで きな い こと がで きる人 だが、 自分 は、親 を切 り捨 てて まで、

自分の したいことをや り抜 くということはで きず、

あ くまで も調整 してい くのが、 自分 の本性のよう に思 う。 それで も、姉 に、『おまえのや りたいよ うにやれ、応援す る』 と言 って もらえて、ずいぶ ん楽にな った。 その後、母か らシフ トの連絡が来 たが、かな り冷静 に対応で きて、 これな ら、家 に 帰 って もなん とかなるかな、 と思えるよ うにな っ た。気分的には、かな り良 くなったが、体調 はあ ま り改善せず、 ア レルギーや痒みが出没す る。親 戚君か らは一度だけ住所変更のメールが来 たが、

しつ こい内容ではないので、 まあ少 しは変わ った な、 と思えた。最近夢をよ く見 る。母 と言 い争 う 夢 はな くな った。友人達が出て くるよ うな、穏や かな夢が多 い。富山の友人達 と、車 に乗 って (本 当 は車 を持 っていない友人が運転 していた)、海 岸へ行 って、友人達が波打 ち際で遊んでいるのを、

日陰に寝そべ って眺めているような夢」。

人間 とい うものは、親以外の性格 にはなれな い ものだろうか。父 と母が仲良 くして、 自立 して くれ るのが私の望み。で も、 自分 も、父 と母の性 格 を受 け継 いでいるのがよ く分か る。姉 は母 と性 格がよ く似ている。 自分 は父親似。母 は猫型で父 は大型。外見的には、母、私、姉、父、 と並ぶ。

しか し、性格的には、父 と私、母 と姉が近 い。母 と姉 は、戦闘 タイプで、徹底的に相手を攻撃す る が、分か り合えないと思 うと、完全 に無視す る」

<サ イヤ人みたいだね >「 そ うそ う ! そ の通 り。

友人 に もそ う言 った (笑)。 サイヤ人 のよ うな狩 猟民族 タイプ。父 は、 自分か らは何 もしない人。

私 は仲を取 り持 とうとす る。父 と私 は農耕民族型 だ」 <じ ゃあ、あなたはナメ ック星人。 ナメ ック 星人 は、戦闘 タイプか ら長老 まで、多彩 >「 父 は なに もしないナメ ック星人。祖母 もナメ ック星人 だが、お嬢様そだちなので 。・ (笑)」<パ ーティー を くんで、 ラスボスを倒す とい うのが良 いのだろ うが ・・>「 うちの家族 は戦士が 2人 で、お互 い にけんかばか りしている。父 は僧侶で、私 は魔法 使 い、 いや商人かな」 <商 人か ら転職 した魔法使 いというところかな>「 戦± 2人 が協力 して くれ れば、 ラスボスを倒せ るのだが、難 しい」 <真 実

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過食嘔吐の大学生へのナラティブ 0セ ラピー風心理療法

の鏡で も見せた ら?>「 見 る前 に割 って しまうと 思 う (笑)」 <あ とは、 フ ュー ジョンす る しかな いね >「 誰が ゴテ ンで誰が トランクスか も分か ら ない (笑)」「こうい う話がで きると楽 しい。 自分 はわ りとその場 を しの ぐためにはなんで もす ると ころがあ って、それを見抜 く人か ら見 ると腹がた つ らしい。姉 には良 く見抜かれ る。で もそれが私 の性格。家 に帰 って もなん とかや っていけそ うな 気が している」次回、10月に入 った ら連絡 して も

らうことにす る

[#12:X年 10月16日]

(前の週 に、『食べたい、 で もやせ たい』 の本 を返 しに来て、今回の面接 を予約)。

<ど うで したか ?>「 実家へ帰 って、 自分の気 持 ちをはっきりと説明 して、今後 は長期の休みに 実家の手伝 いに帰省 しな くとも良 い、 とい う約束 を取 り付 けて きた。 それで、かな りす っきりで き た。 それ以外の状況 はあまり変わ らないのだが、

かな り精神的に楽 になれた。実家では、バイ トは しっかりやって、友人 と楽 しむこともしっか りやっ て きた」 <そ れ は良か った。 その後 はど うです か ?>「 富山へ帰 ってか らは、過食嘔吐 はほとん ど無 く,食 べ る量 はとて も減 ったが、睡眠時間が 多いのだけは続 いている。食べ る量が変わ らず、

運動 しないで、寝 る時間が増えたので、体重が少 し増えて きているが、気分的に揺すぶ られる度合 いは以前 に比べ ると格段 に減 った。 自分の中では 50k gま では許せると思 っている (身長は163cm)。

夢 を見た」

夢 :美 容院へ行 って、かわいい髪型 (どんな髪型 かははっきりしない)に して、みんなにほめて も

らえ るのを期待 してアルバイ トヘ行 った ら、先輩 (ズバ リとものを言 う人)か ら、「な―に、それ !」

とい う感 じで言われて、 ち ょっとへ こんでいる。

連想 :実 際には美容院には行 っていない6前 の晩 にヘアスタイルの雑誌 などを読んでいたのが影響 しているか もしれない。 自分では、他の友人な ら 分か って くれ るのではないか とい う想 いがある。

その先輩 は嫌 いで はない し、現実 に顔 を合 わせて も問題 はない。

<今 後 ど う して い きま しょうか ?>「 後期 は授 業 は少 く、実 習 中心 で、 あ い た時間 は公務 員 の勉 強 を しよ うと思 って い る。 サ ー クル も秋 で引退 だ し、 4年 にな ると、卒業研究 だ けにな り、就職活 動 と公務員 試験 に力 を入 れ た い。 D県 で の就 職 だ と範 囲が限 られ る し、転勤 の可能性 な ど もあ るの で、今 の ところまだ は っきり しない点 もあ る。理 論 の コースを選 ぶか、実験 を選 ぶか も迷 って い る。

か な り、症状 も、気分 も落 ち着 いて来 たので、面 接 はい ったん終結 と して、必 要 な時 に再 来 室 とい うことに した い」 <そ れで良 い と思 います。 ここ へ通 ってみての感想 は ?>「 4月 に こ こへ来 た時 はか な り辛 か ったが、半年 の間 に、色 々な ことが 整理 で きて、良 か った と思 う。 また、 問題 が起 こ ることが あ って も、その ときはその ときで またや っ て い けば良 い と思 え る」

面 接 は12回 で終 結 し、 Aさ ん は再 度 来 室 す る ことはな く、卒業研究 を終了 して無事卒業 した。

4.考 察 :

1)神 経性過食症 の病態仮説

神 経性 過食症 の病 態 は、 現在 の ところ必 ず しも 全 て明 らか にな って い るわ けで はない。 しか しな が ら、臨床上幾 つかの重要 なポイ ン トにつ いて は、

ほぼ合意 が得 られてい る。 それを列挙す るな らば、

1)過 食 ・嘔吐 とい う行動 には、不快 な情動 (ス トレス)に 対 す る コー ピングとい う側面 が明 らか に認 め られ る。つ ま り、過食 ・嘔吐 とい う行動 は、

一 種 の自己治療的側面 を持 っている。 2)過 食 ・ 嘔 吐 とい う行 動 には、悪循環 を誘 発 す る とい う特 徴 が あ る。 つ ま り、 不快 な情 動→過食 ・嘔吐 によ る一過性 の軽減→ 自己嫌悪 によ る不快 な情動 の増 悪→過食 0嘔 吐 の反復、 とい うよ うな悪循環 で あ る。 したが って、過食 ・嘔吐 とい う行動 には、 自 己強化的 な側面があ る。 3)不 快 な情動 を通 じて、

過食 ・嘔吐 を誘発 し、強化 す る根底 に、認知面 に

(10)

お ける一定 の特徴 が認 め られ、 その中核 と して完 全主義 的傾 向、非論理 的信念 (irrational belief) が関与 して い る ことが多 い。 4)や せ願望、肥満 恐怖 が、過食 ・嘔吐行動 の強化 に強 い関連 を もっ て い る。 この体重 や体型 につ いての認知 の歪 み は、

社 会文化 的 な表 象 (マス コ ミによ るやせ体型 の礼 賛 な ど)に 強 い関連 が あ る。 5)社 会 的相互交流、

特 に家族 間 にお け る交流 のパ ター ンが、過食 ・嘔 吐 を巡 る悪循環 の形成 に、重要 な役割 を担 って い る ことが多 く、交流 のパ ター ンを変化 させ る こと は、治療 的 に働 くことが多 い。

上記 のよ うに、複数 の要 因 や文脈 の複雑 なネ ッ トワー クによ って、 BNの 病態 は成 り立 って い る と考 え られ、 それ ゆえ に、 BNへ の治療 的介入 に は、複数 の戦 略が あ り得 る し、個 々の ク ライエ ン トの特徴 に応 じて、複数 の介入、 あ るいは複数 を 組 み合 わせ た介 入 が有効 で あ る ことは驚 くには当

た らない。

Aさ ん の場 合、上記 のよ うな重要 な要 因 の うち で どれが特 に重要 であ るか は簡単 には言 えないが、

体重 、体型 につ いて の認知 の歪 み は、 それ ほど強 い とは思 えず、過食 0嘔 吐行動 その もの によ る、

反 復強化 的悪循環 も深刻 な ほどで はない と感 じら れ た。 もちろん、 これ らの側面 に対 して、悪循環 を増 強 させ ないよ うな慎重 な配慮 は重要 で あ り、

面接 の初期 には、セル フ ・マネー ジメ ン トのマニュ アルで あ る、 「食 べ たい、 で もやせ たい」(6)を 読 ん で もらうな どの、認知面 に対 す る適切 な働 きか けを心 が けた。 しか し、 Aさ んの語 りか らす ぐに 明 らか にな った ことは、 Aさ ん の実 家 の人 間関係 が、 Aさ んが感 じる情動 ス トレスの うちの重要 な 部 分 を 占めて い る ことで あ った。 ここで は、 「A

さん の ス トレス」 とい うことばを、 ラザルスの定 (7)に したが って、 Aさ ん とい う主体 が環境 と の相互交流 を行 う時 に体験 す る出来事 の 「関係 的 意 味 :relational meaning」 と相 関 して生 じる

「情動 :emOtion」 その もの と定義 す る。 したが っ て、 Aさ んの 「家族関係 にお けるス トレス」 とは、

主 と して家族 との交流 において生 じるAさ んの情 動 その もので あ り、 これ はAさ ん とい う主 体 と家

族 という環境 との 「関係的意味」によって変わる。

ラザルスによれば、 このような 「ある特定の情動」

を もた らすよ うな 「関係的意味」 を構成す るもの は、「物語 のプ ロ トタイプ」 として把握す ること が可能である。 これを言 い換えれば、「Aさ ん に とっての家族物語」が どのような タイプの もので あるか、 ということが、 Aさ ん と家族 との交流、

言 い換えれば、家族が重要 な役割を果 たす世界 に お ける 「世界内存在」 としてのAさ んの情動体験 に決定的な役割を果たす ということである。そ し て、 このような 「情動体験のパ ター ン」は、過食 0 嘔吐行動 とい うコー ピングを誘発 し、 この コー ピ

ング自体が状況を強化す るというプロセスを進行 させ る。 したが って、 「Aさ んの家族物語」が、

対話 において どのよ うに変容 してい くか、 とい う 問題が、 Aさ んの治療 において決定的に重要な役 割 を果 たすであろうとい うことが想像 され る。

2)家 族物語の変容過程

以下 に、 Aさ んの家族物語 の変容の過程 を、面 接経過 におけるAさ んの語 りと、治療者の対話 の 中に跡づ けてみたいと思 う。

まず、 #1に おいて、すでに、 Aさ んは 「大学 へ入学 してか ら、過食 ・嘔吐は減少 し、安定 して いたが、実家へ帰 ると過食 ・嘔吐を して しまう」

と述べていることか らも、 Aさ んにとっての情動 ス トレスの最 も大 きい影響因が、実家における家 族 との交流 にあることは明 らかであ った。 その内 容 については、面接が重ね られ るにつれて、具体 的に繰 り返 し語 られてい くことになる。例えば、

その一うは 「両親が夫婦 と して精神的 に自立 して いないこと」であ り、 そのために 「私 自身の人生 が、両親の将来の中に組み入れ られて しまってい ると感 じられ る」 ことである。「父母が けんかす ると、母 はすねてハ ンス トして しまい」「家族 内 で私 しかメッセ ンジャー役がいな くなって しまう」

といった体験が語 られ、 Aさ んは、家族内で常 に

調整役 を強い られて きた」 ことが、繰 り返 し語 られた。

一方で、Aさ んは、成長にしたがい、家族か ら

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過食 嘔吐 の大学生 へ のナ ラテ ィブ ・セ ラ ピー風心理療法

の期待や投影 によるイメージか ら自由にな りたい という、 自分 自身の意志 ・希望 を育てて来た。そ の主 たる ものは、「宇宙物理学 に対す る憧れ」 と して表現 されていたが、その根底 には、両親 (特 に母親)の 過剰 な期待 に合わせ る自分ではな く、

本当の自分を育て るとい う意志があ ったと思 われ る。

このよ うな家族の中で、早 くか ら自分の意志を 貫 く傾 向 を発揮 したの はAさ んの姉 で あ った。

姉 は、 自分 の希望 を実現す るために、壁 を突破 した人」 しか し、 その結果、「親 の方 は、一年 く らい同 じ愚痴 ばか り言 うようにな り、私が聞 き役 にな った」 と、 Aさ んは結局 は再 び F調整役を強 い られる」 ことにな って しまった。

Aさ んが、 このような家族 の中で、 自分 自身を 保つために採用 して きた方略 は 「親 の言 うことに は妥協す るような遮ゝりを しなが ら、実際には自分 の道を進む」 ということだ った。中学、高校 と、

優等生」だ ったAさ ん は、母や担任の教師か ら、

自分が感 じる以上の評価 を受 けてお り、 「中学 の 時、成績が良か ったので、先生か ら期待 されて、

色々な委員をさせ られた り、生徒会役員 に立候補 す るよ うにプ レッシャーをか け られた りした」。

その結果、友人 と気 まず くなった りした。 Aさ ん にとって もっともス トレスだったのは、自己イメー ジを越えて 「優等生」だ と他人か ら見 られ ること で、過食 ・嘔吐が始 まったの もこの頃だ った。 A さん は、 「実力以上 に評価 され る」 ことを避 ける ために、「ペル ソナ」 を被 り、 その 「ペル ソナ」

を被 り続 けることに限界を感 じていた。 しか し、

一方では、大学院進学の夢をあきらめ、資格を取 っ た り、就職 に備えることが母親の期待 に応え るこ ととそれを裏切 ることのア ンビバ レンスにも悩 ま されていた。

Aさ んの語 りは、現在の家族関係のみな らず、

自身の生育歴 を含む家族の歴史、 さらにはそれを 包み込む故郷の社会や歴史 という大 きなコンテク ス トヘ と発展 していった。 またその歴史 は、祖父 母の時代 にまで逆登 るもので、 3世 代以上 に渡 る 壮大 な物語 を含む ものであ ったも しか し、 Aさ ん

は自身 と家族を包み込む歴史物語全体 を、 自分 に とって しっくりす る一つの秩序を持つ物語 として 語 るには至 っていなか った。 #9, #10の 面接 では、物語 をまとめきれないAさ んの苦悩が表現 されている。 Aさ んは、 それまで体験 した ことの ない、母 との激 しい口論 を、夢の中で体験 してい る。 それまで、治療者 との対話 においてさえ も、

で きるか ぎり治療者を失望 させないようにと配慮 を続 けて来 たと思われるAさ んが、 #10に おい て 「ち ょっと精神的に辛 いです」 と、率直に語 っ ている。

3)ハ イ コンテクス トな対話 と物語生成

そ して、 このような苦悩を経て、 #11の 面接 において、 Aさ ん と治療者 は極めてユニークな対 話 をす ることにな る。 その対話 は、「人間 とい う

ものは、親以外の性格 にはなれないものだろうか」

とい うAさ んの独 自で始 ま った。 「父 と母が仲良 くして、 自立 して くれるのが私の望み。で も、 自 分 も、父 と母の性格を受 け継 いでいるのがよ く分 か る。姉 は母 と性格がよ く似ている。 自分 は父親 似。母 は猫型で父 は大型。外見的には、母、私、

姉、父、 と並ぶ。 しか し、性格的 には、父 と私、

母 と姉が近 い。母 と姉 は、戦闘 タイプで、徹底的 に相手を攻撃す るが、分か り合えないと思 うと、

完全 に無視する」 と、Aさ んは、家族間の関係を、

豊かな比喩を用いなが ら、 しみ じみと語 り始めた。

Aさ んが用 いた 「戦闘 タイプ」 というキーワー ドに、治療者 は触発 されるところがあ り、思わず、

<サ イヤ人みたいだね >と い う言葉が口をついて 出た。 この言葉 に対す るAさ んの反応 は、間髪を 入れない、非常 に生 き生 きとした ものであった。

「そうそう ! その通 り。友人にもそう言 った (笑)。

サイヤ人のような狩猟民族 タイプ。父 は、 自分か らは何 もしない人。私 は仲 を取 り持 とうとす る。

父 と私 は農耕民族型だ」8Aさ ん は、 自分 と家族 の関係、家族同士の関係 を、治療者が投 げ込んだ

「ドラゴ ン ・ボールのメタフ ァー」 を用 いて、生 き生 きと語 り始 めた。

#11の 面接 の冒頭 でAさ ん は、 「姉か ら 『お

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