生 徒 の 規 制 薬 物 乱 用 に 対 す る 学 校 教 職 員 の 対 応 に つ い
飯
て
野 海 彦
一 は じ め に 二 少年 の薬 物乱 用と その 対策 史概 観 三
﹁薬 物需 要削 減の ため の取 締処 分と 援助 の∞ 型連 携﹂ とは 四 生徒 の規 制薬 物乱 用に 対す る学 校教 職員 の対 応 五 お わ り に 一
は じ め に この とこ ろ、 著名 芸能 人が 規制 薬物 事犯 とし て検 挙さ れる 事件 が相 次ぎ
、﹁ 国民 的ア イド ル﹂ なる 者が 覚せ い剤 所持 で検 挙さ れる に至 り、 テレ ビ、 週刊 誌等 のメ ディ アは 報道 する ネタ に困 らな いと いう 有様 であ る。 その 他に も、 角界 の薬 物汚 染や 大学 生の 大麻 汚染 も各 メデ ィア を賑 わし てき たと ころ で、 後者 に関 して は、 筆者 の勤 務す る 大学 にお いて も避 けて 通れ ない 問題 とな って いる
。 我国 にお ける 薬物 事犯 の主 流を 占め る覚 せい 剤事 犯は
、平 成一 三年 以来 漸次 減少 傾向 が続 き、 平成 一九 年に やや
増加 の気 配を 見せ たも のの
、二
〇年 には 再度 減少 して
( )
いる
。覚 せい 剤事 犯に 占め る未 成年 者の 割合 は、 平成 九年 の
1
八% をピ ーク に、 平成 一八 年及 び一 九年 には とも に二
・五
%に 減少 し、 その うち 中・ 高校 生の 検挙 人員 は、 平成 九 年に こそ 二六 二名 を数 えた もの の、 平成 一八 年に 五五 名、 翌一 九年 には 三二 名と 激減 して
( )
いる
。一 方、 平成 二〇 年
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にお いて は、 検挙 人員 が大 幅に 増加 しつ つあ る大 麻事 犯の 検挙 人員 中六 二・ 七% を少 年及 び二
〇代 の若 年層 が占 め、 また
、M DM A等 合成 麻薬 事犯 の六 二・ 六% を少 年及 び二
〇代 の若 年層 が占 め、 共に 九割 弱が 初犯 者で ある と
( )
いう
。こ のこ とは
、平 成七 年頃 から の覚 せい 剤第 三の 乱用 期の 特徴 であ る﹁ 乱用 のフ ァッ ショ ン化
﹂は 未だ 健在 で あ 3
り、 ファ ッシ ョン
︵流 行︶ が覚 せい 剤か ら大 麻や 合成 麻薬 等へ 移行 しつ つ、 好奇 心か ら規 制薬 物に 手を 出す 若者 に薬 物汚 染が 広ま り易 いこ とを 示し てい るも のと いえ よう
。 我国 を含 むア ジア 諸国 にお いて は、 アヘ ン戦 争以 来、 薬物 乱用 の蔓 延が 国家 を滅 ぼし かね ない との 認識 の下 に、 その 法的 規制 にあ たっ ては 厳し い処 罰を 持っ て臨 むの が一 般的 で
( )
ある
。そ して
、我 国は
、戦 後の ヒロ ポン 流行 に始
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まり
、ヘ ロイ ン、 有機 溶剤 等の 乱用 期を
、法 的規 制の 強化 と徹 底し た取 締り とい う厳 罰主 義の 薬物 対策 で乗 り切 り、 薬物 問題 が世 界的 に見 て、 比較 的に よく コン トロ ール され てい ると 評価 され て
( )
いる
。我 国の 人口 一億 三〇
〇〇
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万人 に対 して
、被 拘禁 者数 は約 八万 人、 平成 二〇 年の 規制 薬物 事犯 検挙 人員 は、 覚せ い剤 事犯 一万 一〇 二五 人、 大 麻事 犯二 七五 八人
、麻 薬及 び向 精神 薬事 犯四 九一 人で
、一 年間 に薬 物事 犯で 逮捕 され るの は二 万人 にも 満た ない の に対 し、 アメ リカ では
、人 口三 億人 に対 して
、被 拘禁 者数 は約 三〇
〇万 人で
、か つそ の八
〇% が薬 物或 いは アル コ ール の乱 用者 であ り、 五〇
%が 依存 症者 であ り、 出所 後に 九五
%が 薬物 乱用 を再 開す るこ とが 報告 され てい ると
( )
いう
。ア メリ カ合 衆国 の国 立薬 物乱 用研 究所
︵N ID A︶ の二
〇〇 八年 の調 査に よれ ば、 一二 歳以 上の 者で 調査 以 前 6
に少 なく とも 一度 はヘ ロイ ンを 乱用 した 経験 があ るも のが 四五 万三
〇〇
( )
〇人
、同 じく コカ イン は五 三〇
( )
万人
、同
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じく マリ ファ ナに 至っ ては 二五 八〇 万人 に乱 用経 験が ある と
( )
いい
、彼 の国 の薬 物問 題の 深刻 さが 窺わ れる
。
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しか し、 我国 にお いて も、 規制 薬物 乱用 に対 する 厳罰 化に よる 一定 の押 さえ 込み には 成功 しつ つも
、根 絶す るに は至 って いな い。 統計 上、 数字 の上 では 諸外 国に 比べ 微々 たる とは いえ
、規 制薬 物乱 用者 によ る再 犯の 問題 は、 本 人に とっ ては
、否 本人 のみ なら ず家 族等 周囲 の人 々に とり 深刻 なも ので ある
。我 国の 薬物 対策 が一 般予 防面 で上 手 く機 能し てい る反 面、 薬物 依存 症者 が少 数に 留ま るた め、 特別 予防
︵再 犯防 止対 策︶ が立 ち遅 れて いる との 指摘 が
( )
ある
。刑 罰の 秩序 維持 機能 は万 能で は
( )
なく
、薬 物事 犯の 発生 に最 も大 きな 影響 を持 つの は、 当該 薬物 の需 要と 供給
10
11
の多 寡で ある から
、刑 罰権 の行 使に よる 薬物 事犯 の鎮 圧に は一 定の 限界 があ り、 薬物 の需 要と 供給 を効 果的 に減 少 させ る方 策を 伴わ ない 重罰 化は 犯罪 鎮圧 対策 とし て十 分に 機能 を発 揮し 得な いと いわ
( )
れる
。
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規制 薬物 の需 要を 減少 させ るに は、 乱用 を止 めさ せる こと であ る。
﹁ダ メ。 ゼッ タイ
。﹂ 運動 に象 徴さ れる よう に、 若者 が好 奇心 から 規制 薬物 に手 を出 すこ との ない よう 啓蒙
・教 育し
、新 たな 需要 の拡 大を 防止 する のが 肝要 で ある
。し かし
、乱 用者 の依 存症 とい う病 気で もあ るた め、 これ を克 服し ない 限り
、刑 罰の 威嚇 のみ では 再度 薬物 に 手を 出し てし まい
、需 要の 根絶 は不 可能 であ る。 我国 のこ れま での 薬物 対策 にお いて も、 厳罰 化の みで は薬 物乱 用 の禍 根を 断て ない こと が認 識さ れ、 昭和 二九 年の 覚せ い剤 取締 法改 正の 際に
、罰 則強 化と 同時 に中 毒者 の強 制入 院 制度 が実 施さ れ、 また
、昭 和三 八年 の麻 向法 改正 でも 罰則 強化 と同 時に
、麻 薬中 毒者 の強 制入 院制 度が 実施 され た
︵正 確に は﹁ 依存 症﹂ と言 うべ きで あろ う︶
。但 し、 これ らの 強制 入院 制度 及び 知事 への 届出 義務 等は
、規 制薬 物の 統 制手 段と して は最 早機 能し てお
( )
らず
、こ のこ とに つい ては 機会 を改 めて 別稿 で論 じる つも りで ある
。
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そこ で、 依存 症者 によ る薬 物の 再度 の乱 用を 防止 し、 薬物 需要 を削 減さ せる 方策 とし て考 案さ れた のが
、医 師平 井愼 二に よる
﹁取 締処 分と 援助 の∞ 型連 携﹂ とい う手 法で ある
。彼 は、
﹁薬 物乱 用防 止は
、薬 物の 供給 削減 およ び 需要 削減 を通 して なさ れる
。薬 物の 需要 削減 が薬 物乱 用を 減ら すこ とで あり
、予 防お よび 回復 を促 進す るこ とで 効 果が 上が る。 また
、規 制薬 物の 反復 乱用 者は
、一 人で も薬 物規 制法 違反 とい う違 法行 為、 並び に依 存と いう 心理 的
障害 を有 して いる
。こ れに 従い 実際 の働 きか けは 大き く二 分さ れ、 取締 処分 と援 助に 分か れる
。こ の取 締処 分と 援 助を 組み 合わ せて
、予 防と 回復 に効 果が 上が るよ うに 薬物 需要 削減 のた めの 体系 を設 定し なけ れば なら ない
。﹂ と 主
( )
張し
、告 発︱ 取締 のみ でも 守秘 義務 優先
︱援 助の みで も薬 物需 要削 減の ため の働 きか けと して は十 分で はな く、
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取締 処分 と援 助と の連 携が 必要 とい う。 そし て、 薬物 専門 外来 にお いて
、覚 せい 剤依 存症 の患 者に 対し
、﹁ 陽性 反 応が 出た 場合 は警 察署 等へ 自首 する
﹂旨 の誓 約書 とと もに
、簡 易尿 検査 キッ ド﹁ トラ イエ ージ
﹂を 用い ての 定期 的 な尿 検査 を実 施す る手 法で 依存 症か らの 回復 に効 果を あげ てき たと
( )
いう
。そ して
、平 成一
〇年 の千 葉保 護観 察所 に
15
始
( )
まり
、平 成一 六年 四月 には 全国 の保 護観 察所 で覚 せい 剤取 締法 違反 の仮 釈放 者に 対し て実 施さ れる よう にな り、
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尿検 査実 施者 の仮 釈放 取消 率の 低下 や、 保護 観察 期間 満了 時の 保護 観察 成績 が﹁ 良好
﹂と 評価 され る者 の割 合が 上 昇す るな ど成 果が 見ら れて いる と
( )
いう
。小 柳教 授が
、規 制薬 物の 自己 使用 の﹁ 犯罪 化﹂ や﹁ 非犯 罪化
﹂で はな く、
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再使 用を 防止 する ため の効 果的 な処 遇方 法を 模索
・確 立す るこ とこ そ重 要で ある とい われ るよ
( )
うに
、規 制薬 物の 自
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己使 用が 犯罪 であ るこ とを 利用 した
、再 犯防 止策 であ る。 ただ
、﹁
∞型 連携
﹂に 携わ る者 は、 守秘 義務 と告 発義 務等
、義 務衝 突に 悩ま され るこ とと なる ため
、筆 者は
﹁∞ 型連 携﹂ の法 的問 題の
﹁総 論﹂ とし て、 医療 従事 者の 守秘 義務 と公 務員 とし ての 告発 義務 に関 する 論稿 を
( )
書き
、ま
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た、
﹁各 論﹂ とし て、 医療 従事 者の 規制 薬物 依存 への 対応 に関 する 法的 問題 につ いて
、学 会報 告を 行
( )
った
。本 稿で
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は、
﹁各 論﹂ とし て、 先ず
、少 年の 薬物 乱用 の歴 史を 概観 した 後、 児童
・生 徒の 規制 薬物 乱用 につ いて の学 校教 職 員の 対応 につ いて
、刑 事法 の領 域を 超え て学 校を めぐ る法 律関 係に 踏み 込ん で検 討し よう と思 う。
( ) 平成 二一 年版 警察 白書
︵二
〇〇 九年
︶一 一四 頁。 ( ) 薬物 乱用 防止
﹁ダ メ。 ゼッ タイ
。﹂ ホー ムペ ージ より ht tp :/ /w ww .d ap c. or .j p/ da ta /i nd ex .h tm