九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
効率的な肺ガン特異的ヒト型モノクローナルIgG抗体 の取得に関する研究
川原, 浩治
九州大学農学研究科食糧化学工学専攻
https://doi.org/10.11501/3075469
出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第5章 抗体非産 生融合パー ト ナー細胞の 樹立
第1節 緒言
ハイブリ ドー マの抗体産生は、 用いた融合パー ト ナー
細胞の元来の抗体産生に影響されている ことを第3章で 述べた。 マ ウ ス ハイプリ ドー マの場合、 最もよく利用さ れる融合パー ト ナー細胞は、 ミ エ ロ ー マでありリ ン パ球
系の細胞である にもかかわらず、 抗体を構成するL鎖 (ペ ン ス ジ ョ ン ズタ ン パク)しか合成しない。 さらに、
L鎖さえ合成しない融合パー ト ナー細胞が樹立され、 マ ウ ス ハイブリ ドー マが幅広く利用されるひとつの要因に な っ ている6 )。 と こ ろが、 ヒ ト の融合パー ト ナー細胞株 の場合、 ミ エ ロ ー マ由来の融合 パー ト ナ ー細胞株は、
Abramsら48)やOlssonら2)によ っ て報告されてはいるが、
いずれも融合効率が低いため、 実用的に困難を伴 っ てい る。 従 っ て、 リ ン パ芽球様細胞株が、 比較的高い融合効 率を示すためよく用いられる。 しかしながら、 これらは
もともと抗体分子を合成する能力をも っ ているため、 得 られるハイブリ ドー マの抗体産生は、 融合 ノマー ト ナ ー細
胞の影響を受けてしまう。
そ こ で、 著者は抗体合成とは関係の無い ヒ ト T細胞株
を融合パー トナ ー細胞株として樹立する こ とを試みた 。
現在のと こ ろ、 T細胞由来の ヒ ト型ハイブリ ドー マは、
リ ン フ ォ カイ ン やT細胞機能の研究のために、 作製され
ている4 9 )、 5 0 )。 しかし、 T細胞とB細胞を融合させて、
抗体産生ハイブリ ドー マを作製したという報告はないo
T細胞由来であれば、 リ ン パ芽球のもつ融合効率の高さ
とハイブリ ドー マの抗体産生に影響を与える要因をもた
ない、 理想的な融合パー トナ ーになりうると考えられる
からである。
- 65 -
第2節 融合 パー ト ナー細胞の樹立
第1項 ヒ ト白血病細胞株M0 1 t 4の培養とク ロ ー ニ ン グ
用いた細胞株は、 ヒ ト白血病由来の T細胞株M0 1 t 4で ある5 1 )。 この細胞を通常1 0完FBS-ERDF培地で継代培養し
たo 著者は、 第3章で融合パー ト ナー細胞株として良好 な融合効率を得るには、 ク ロ ニ ン グ効率の高い細胞を
選択するこ とが重要であるこ とを明らかにしてい る。 そ
こ で、 M 0 1 t 4細胞を限界希釈法に よるク ロ ー ニ ン グを行
い 、 増殖速度が最も速いク ロ ー ンを選択した。 つづいて
ハイブリ ドー マ作製時の選択培地 HATに感受性をもたせ
るため、 6 ー チ オ グ ア ニ ン5 0μ g/mlを含む1 0%FBS-RP
MI1640培地で培養しHGPRT欠損株を選択した。 再びク ロ
ー ニ ン グを行い、 増殖速度の速か っ た6 ク ロ ー ンを選択 した。 それらは、 いずれもク ロ ー ニ ン グ効率6 0%以上を
与え、 倍加時聞は22時間前後であ っ た。
そ こ で、 これらのク ロ ー ンを細胞融合に供して、 それ
ぞれの融合効率を検討す る こ とにしたo
第2項 細胞融合
細胞融合は、 ポリ エ チ レ ン グ リ コ ール(PEG)4000 (ベ ーリ ンガー) を用いて、 第2章第4節に示した方法に従 っ たo Molt4細胞をク ロ ー ニ ン グして得られた6種の融 合パー ト ナ ー細胞はそれぞれ1x 1 0 7 細胞用意して、 肺ガ
ン患者由来のリ ン パ節リ ン パ球1x 1 0 7 細胞と 融合した。
融合後、 9 6穴培養プレ ー トに 1枚ずつまきこんで、 選択 培地中で培養した。 2週間後、 ハイブリ ドー マの存在す るウ ェ ルの数を計測した。 まきこんだ穴に対するハイブ リドー マの増殖しているウ ェ ルの割合を、 融合効率とし
てTa b 1 e 5 - 1に示した。
用いた6種のク ロ ー ンの融合効率は、 19.8%から3 2 . 3 %の範囲でばらついていた。 これらの中で、 ク ロ ー ン A
4が最も高い融合効率を示したo 検鏡に よる観察では、
A 4株以外の5種のク ロ ー ンが、 1つずつの細胞が分散
し増殖しているのに対して、 A 4株はぶどうの房状のク ラ ン プを形成しなが ら 増殖していた。 したが っ て、 得ら れたハイブリ ドー マも、 このク ラ ンプを形成しやすく、
継代培養の際に懸濁を十分に行わ ないと、 ク ラ ンプの
- 67 -
o、
co
Table 5圃1
Fusion efficiencies of various clones derived from human leukemic cell line, Molt4
No.of No.of Fusion
Clone Seeded wells Hybridomas Efficiencies(%)
A3 96 20 20.8
A4 96 31 32.3
C10 96 29 30.2
D 3 90 22 24.4
D6 96 19 19.8
F9 96 21 21.9
中央部に位置する細胞が死滅する可能性もあ った。 しか しながら、 それらのハイブリドー マの増殖速度は非常に
速く、 従来の B細胞由来のハイブリドー マのそれと、 匹
敵する ほ どで あ っ た。
そこで、 A 4株を再ク ロ ー ニ ン グし、 増殖速度の最も
速か ったク ロ ー ン をA4 H 1 2細胞と名付けた。 さらに、 こ
のA4 H 1 2細胞とリ ン パ球とを融合して、 選択培地中で増 殖してくる細胞がハイブリドー マであるか否かに ついて
確認するため、 フ ロ ー サイト メ ト リーを用いたDNA含量
分析を行 った52)0 Fig.5-1に示すように、 融合細胞は、
A 4 H 1 2細胞の細胞周期G 2 (染色体数4 n ) の位置に、
G 1期が認められ、 明らかにDNA含量が2倍に な ってい ることが分か った。 従 って、 著者は、 このA4 H 1 2細胞を 新しい融合パート ナ ー細胞として、 以後の研究に用い る
ことにしTこ。
第3項 A 4 H 1 2細胞由来のハイブリドー マの産生する抗体 ク ラ ス
A 4 H 1 2細胞と肺ガ ン 患者のリ ン パ節リ ン パ球を融合し、
nwυ pnv
Gl S G2jM
将棋 �
Parent cell
,
J
. f」:ケ.モ�
.. ーー ー ..・ ー .ーー:
1 : . ..ーーーー・ー
GY
SGZ/M- Hybddoma
.、,c -.v 2・
「、 ,司 F
肱位協
のい ω35ロロロ ωυ
Fluorescence intensities
Fig.5・1
Comparison of the DNA contents between A4H12, a parent cell, and hybridoma derived from that cell
Cells were stained by propidium iodide and were measured with flow cytometer.
得られたハイブリ ドー マの培養上清中に存在する抗体ク
ラ ス をELISA法に より検討した。 Table 5-2に融合パー ト
ナー細胞株として、 通常用いてい るHK-128、 HO-323細胞
の場合と比較した結果を示した。 A4 H 1 2細胞を用いた場 合、 I g Mのみを産生するハイプリ ドー マが全体の半分を
しめるもののIgGのみを産生する株も得られた。 また、
1 g GとIgMの両方を産生するハイブリド ー マ が全体の1 0 Z存在していた。 一方、 HK-128細胞を用いた場合 には、
全体の90%以上がIg Gを産生しており、 HO-323細胞を用い
た場合には全体の90%以上がIgMを産生していたo これら
の結果から、 A 4 H 1 2細胞を融合パー ト ナ ー細胞として用 い ることで、 I g M 、 Ig G両方のク ラ ス の抗体を取得可能で
あることが示唆された。 とこ ろで、 I g GとIgMの両方を産
生してい る株に関して、 HK-128細胞由来のハイブリドー
マはIgMが、 HO- 323細胞由来のハイブリ ドー マはIg Gが産
生されなくなるこ とを第3章で述べたo と こ ろが、 A4
H 1 2細胞由来のハイブリ ドー マは、 非常 に安定して両方 の抗体が産生され続けた。 このことは、 ハイプリ ドー マ
の抗体産生機構が、 I g MとIg Gで異な っ ていることを示唆 してい た。
1i 円,f
-.J r::-..:>
Table 5・2
Classes of Igs secreted by hybridoIllas derived from A4H12. HK-128 and HO-323 cells
Parent cells
A4H12 HK-128 HO-323
Percent of hybridomas secreting Ig
IgG IgM
15 51
90 。
。 90
IgG+ IgM N one
10 24
10 0
2 8
第3節 肺ガ ン特異的モ ノ ク ロ ー ナ ル抗体 の取得
新たに樹立した融合パー ト ナ ー細胞株 A4 H 1 2と、 肺カ寸 ン患者由来のリ ンパ節リ ンパ球とを融合してハイブリ ド ー マを作製した。 得られたハイブリ ド ー マのうち、 2 F
1 0ク ロ ー ンの産生するモ ノ ク ロ ー ナ ル抗体( 1 g M )が 肺ガ、
ン細胞株A5 4 9とよく反応した。 そ こ で、 こ の抗体の種々 の ヒ ト ガ ン細胞株および正 常細胞株に対する反応 性を
E L 1 S A法を用い て検 討した。
Fig.5-2に示すように、 肺ガン、 乳ガ ンによく反応し たが、 胃ガ ンにも若干反応性を示した。 しかし、 大腸ガ ン や正常繊維芽細胞にはほとんど反応しなか っ た。 した が っ て、 さらに こ の抗体が体内に存在してい るガ ン細胞 とも反応を示すか否かを検討するため、 肺腺ガン患者由 来の組織を用い て2 F 1 0抗体の免疫組織染色を行 っ た。 染 色法は第8章第4節に示した通り である53)0 Fig.5-3 に組織染色写真を示した。 2 F 1 0抗体は組織のガン細胞部
分にのみ結合しており、 正常細胞の集合である結合組織 には反応しなか っ た。 従 っ て、 2 F 1 0抗体は、 特異的にガ
ン絢胞と反応してい ると思われた。
円ぺυつl
1.0
ぱ30 ぱ3
0
1.0 PC-9
4
0.5司
0.5ば30
O�
0.1 0.3 1.0
Antibody conc. (μg/ml)
。
0.1 0.3 1.0
Antibody conc. (μg/ml) 1.0
�MKN・28
〈ば 0司3
0.5
。 。
0.1 0.3 1.0 0.1 0.3 1.0
Antibody conc. (μg/ml) Antibody conc. (μg/ml)
1.0 I
WI-38
1.0 I
司
0.5司
0.5。 。
0.1 0.3 1.0 0.1 0.3 1.0
Antibody conc. (μg/ml) Antibody conc. (μg/ml)
Fig.5・2
Reactivities of monoclonal antibody 2FIO against various human cancer cell lines and a normal human fibroblast
2F 1 0 (0---0) and h uman serum IgMゆ一・1) adjusted to 1lJ.g/ml IgM concentration were diluted sequentia11y and reacted wi仕1various cell 1ines (Lung cancer, A549, PC-9; Breast cancer, MCF-7; Stomach cancer,品位三N-28; Colon cancer,
COL0201; NOIτnal fibroblast,羽司-38)
(A)
(B)
Fig.5-3
lmmunohistochemical st必ning of human lung adeno carcinoma wi仕1 2FIO monoclonal antibody
(A): Posi位ve stain泊g泊仕le irnmunoperoxidase reaction wi仕1 2FIO monoclonal anむbody. (B): Reacむon of control an位body wi仕1仕le same tissue. Nuclei were stained by hemato勾rlin.
E.U 可I
第4節 考察
リ‘ン パ球由来の抗体をハイブリドー マで修飾されずに
得るには、 融合パー トナー細胞自身が抗体を産生しない
ことが重要であると考えられた。 融合効率のすぐれた B
リ ン パ芽球様細胞株でも、 抗体を分泌しない株の報告は
ある2 2 )、 3 2 )。 しかしながら、 ハイブリドー マを作製し
た場合、 リ ン パ球が産生していたと 思われる抗体以外の
抗体分子が分泌されてしまう。 この抗体分子は、 融合 ノマ
ー トナー細胞由来であると思われた。 従 っ て、 リ ン パ球
系の細胞で、 抗体産生しない T細胞株を利用することに
した。 樹立した融合ノマー トナー細胞株A4 H 1 2は、 これを
用いて作製されるハイブリドー マの産生抗体ク ラ スが、
従来までの融合ノマー トナー細胞由来の株のそれとは全く
異な っ ており、 I g G産生株もIgM産生株も取得可能であ っ
た。 このことは、 種々 の抗原特異抗体産生ハイブリドー
マの取得に、 A 4 H 1 2細胞が有効であることを示唆してい
たo 現在のとこ ろ、 T細胞株を用いたモ ノ ク ロ ーナル抗
体産生に関する報告はなく、 本研究はモ ノ ク ロ ーナル抗
体作製に新たな概念を提案したと考えている。
第5節 小括
ヒ ト型ハイブリ ドー マ作製のための融合パー ト ナー細
胞A4 H 1 2を ヒ ト T細胞株から新しく樹立した。 この株を
用い て、 細胞融合を行 っ たとこ ろ、 1 g G型およびIgM型の
抗体をそれぞれ産生するハイプリ ドー マが得られ、 それ
らの抗体産生は、 継代培養しでも従来の融合パー ト ナー 細胞由来のハイブリ ドー マより比較的安定していた。 ま
た、 融合効率も従来の株に匹敵するほど高か っ た。 肺ガ
ン患者由来のリ ンパ球と A4 H 1 2細胞を融合して得られた
\ イプリ ドー マの中から、 肺ガ ン細胞株A 549に反応する
IgM 型のモ ノ ク ロ ー ナ ル抗体産生ク ロ ー ンを取得した。
この抗体は、 肺ガ ン以外iこも乳ガ ン、 胃ガ ンに反応する
が、 大腸ガ ン や正常細胞にはほとんど反応しなか っ た。
さらに、 肺ガ ン組織を用いて反応性を検討したとこ ろ、
ガン細胞部分にのみ結合し、 正常細胞には反応を示さな
い ことが分か っ た。
- 77 -
第6章 ヒ ト リ ンパ球の体外免疫法の確立
第1節 緒言
モ ノ ク ロ ー ナル抗体は、 種々 の疾病の診断 ・ 治療薬と して用い ることが理論的に可能であるため、 幅広く研究 されてきた。 特に マウ ス を用い る場合、 目的の抗原を マ ウ ス の体内に直接投与して免疫するため、 抗原特異的な モ ノ ク ロ ーナル抗体を高効率で取得可能である。 しかし ながら、 この マウ ス モ ノ ク ロ ーナル抗体を人体内に投与 することは、 人体にと っ て異物であるため抗原抗体反応 を引き起こし、 致命的な副作用を生じる原因となる 54)。
一方、 ヒ ト型モ ノ ク ロ ーナル抗体は、 元々 ヒ ト由来であ るため、 こうした副作用は生じない。 従 っ て、 種々の ヒ
ト型抗原特異抗体を効率よく取得可能な方法の確立が、
重要な課題であ っ た。
従来、 種々 の疾病に対する抗原特異的な ヒ ト型モ ノ ク ロ ー ナル抗体を取得する場合、 それぞれの患者由来のリ ン パ球と ヒ ト融合パー トナー細胞とを融合しなければな らなか っ た。 すなわち、 ガン特異抗体を取得するには、
がン患者由来のリ ン パ球を確保する必要が生じていた。
しかしながら、 種々 のガ ン患者からハ イ ブリ ドー マを作
製するのに十分なリ ン パ球数を取得することは困難であ る。 さらに、 ガ ン患者であるからとい っ て必ずしも免疫
感作を受けているとは限らない、 という問題点も存在す る。 一方、 ガ ンのような危険な抗原を健常人の体内に投 与して免 疫することは、 倫理 ・ 道徳上不可能であ る。
これらの問題を解決するひとつの方法として、 ガ ン細 胞に対する体外免疫法がある。 もし、 健常人のリ ン パ球 を体外で目的とするガ ン細胞に対して免疫することが可 能であるなら、 細胞融合に供するリ ン パ球を確保できる ばかりでなく、 免疫感作を受けた リ ン パ球が必ず存在す ることになり、 ガ ン特異的ヒ ト型モ ノ ク ロ ー ナ ル抗体を 容易に取得可能となる。
そ こで本章では、 種々 の免疫賦括剤を用いて、 健常人 のリ ン パ球を ヒ トガ ン細胞株に対して体外で免疫するこ とを試みた。
nuJU 円,t
第2節 細胞の調製と培養
健常人から末梢血をへパリ ン入り真空採血管に採集し た。 1 5 m 1遠心管にリ ンパ球分離液55) (LSM: オ ルガノ ン
テク ニ カ) 4 m 1をあらかじめ入れておき、 この上に血液 5 m 1を重層した。 この時、 LSMと血液の境界面を乱さない ょう注意して行 っ た。 つづいて、 400 gで30分間遠心し、
LSM と血し ょ うの境界に位置するリ ンパ球の集団を ピ ペ ッ トで丁寧に回収した。 これを基本合成培地ERDFで懸濁 して、 遠心、 洗浄を3回繰り返した。 通常、 10m 1の血液 から、 2 - 5 x 1 0 6細胞のリ ン パ球が取得可能であ っ た。 リ
ン パ節リ ンパ球の取得は、 第2章第2節第1 項と同じ方 法で取得した。 これらのリ ンパ球は、 実験に使用するま で、 10%FBS-ERDF培地で培養するか、 もしくは-8 0 ocで凍 結して保存した。 凍結した リ ン パ球は、 融解した後、
ERDF培地で3回洗浄して用いた。 抗原となるガ ン細胞株 は、 10完FBS-ERDF培地で継代培養して用 いた。
第3節 体外 免疫法の確立
第1項 リン パ球の前処理
生体内で生じ る免疫反応は、 大きく2 つに分かれる。
ひと つは細胞の食作用、 および細胞殺傷因子等に従 っ て
異物を除去する細胞性免疫であり、 も うひと つは抗原抗
体反応に よる異物を除去する体液性免疫である 5 6 )。 本
章の最終目的は特異抗体を取得する ごとに あるため、 <._ "?
の体液性免疫機構を利用し なければならない。 体液性免
疫に関与する細胞群は、 免疫反応が進行するため に働く
ヘルパーT細胞 ( h -T細胞) と免疫反応を 抑制するため に働くサプレ ッ サーT細胞( 8 - T細胞) である。 著者は、
体外免疫を効果的に行うため、 8-T細胞を選択的に取り
除きh-T細胞およびB細胞の集団を用いる ことにした。
Borrebaeckらは、 こうした 8-T細胞を中心とする 免疫抑
ー 市1]的に働く細胞がリ ソゾームに富ん でいる ことから、 L -
ロ イシル -L- ロ イシン メチルエステル(LeuLeu-Q Me)で細
胞を処理する ことで、 選択的に除去する ことが 可能であ
る ことを示し た 5 7 )、 5 8 )。
- 81 -
そ こで、 著者は体外免疫に使用するリ ン パ球を、 この 方法で処理することを試みた。 血清含有ERDF培地中で培 養しているリ ン パ球を、 ERDF培地で2度洗浄し、 1 x 106 細胞Imlの 細胞密度にERDFで懸濁したo つづい て、 終濃 度でO. 25m MになるようにLeuLeu-OMeを添加し て、 4 0分間
3 7 ocで培養したo これらの細胞を遠心して、 洗浄して体
外免疫に用いた。 Fig.6-1に、 この処理で得られる細胞 集団の フ ロ ーサイ ト メ ト リー解析を示した。 フ ィ コ エ リ ス リ ン(P E )標識抗ヒ トh-T細胞抗体と フ ルオ レ セイ ン イ ソ チ オ シ ア ネー ト(FITC)標識抗ヒ ト s-T細胞 抗体を用い て、 処理前と処理後 のリ ン パ球を染色したとこ ろ、 処理 前はh-T、 s-T細胞の両方が存在しているのに対して、 処 理後はh-T細胞に変化はなく、 s-T細胞がほとんど存在し ていないこと がわか っ た。 したが っ て、 体外免疫に用い るリ ン パ球は、 すべてこの方法で処理したリ ン パ球を用 いfこ。
PE
FITC
(B)
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FITC
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Fig.6・1
PEfω
Flow cytometric analysis of human lymphocytes treated with LeuLeu-OMe
Human lymphocytes before (A)むld after
(B)
the treatment with IJeuIJell-OMe were stained With PE labeled anti-human helper T cell antibody and FITC labeled anti-human suppressor T cell antibody.- 83 -
第2項 体外免疫の検出法の開発
一般に免疫感作を受けた細胞の検出には、 羊赤血球
(S R B C) に抗原を結合させて抗原抗体反応と補体反応を用 いた プラーク形成法57)や、 培養上清中に 分泌される特 異抗体を検出する ELISA 法59 ) 6 0 )等がある。 しかしな が
ら、 いずれの方法も、 検出感度が低か ったり、 時間がか かるとい う難点を有していた。 そ ごで、 著者は ごの問題 を解決するため酵素抗体法(E I A )を用いて、 ガン細胞に
結合した特異抗体を直接認識する(Direct detection;
DD)DD-EIAを開発した。 Fig.6-2に、 この方法の原理を示 した。
まず、 抗原となるヒ ト肺ガン細胞株A549を2 4穴培養プ レ ートに まき ごんだ(a)。 翌日、 免疫するリン パ球と免 疫賦括剤を含む5完FBS-ERDF培地を添加して、 4日間培養
した(b )。 この培養期間に抗原感作 されたリン パ球は、
特異抗体を分泌し始める。 分泌抗体は、 感作リン パ球付 近に存在する ガ ン細胞と結合する(c)。 次に、 リン パ球 と培養培地を取り除き、 プレ ートに残 った ガ ン細胞を
ERDF培地で3回おだやかに洗浄し、 o . 0 5完グルタールアル
デヒ ド (シグマ社)含有リン酸緩衝生理食塩水(PB S )を添 加し て、 4 oc、 1 5分間細胞 を固定した(d)。 つづい て、 抗 体の非特異的反応を防ぐため、 o . 2完ゼラチ ン (バイオラ ツ ド社) -0 . 5先牛血清アルブミ ン (ベーリンガーマン ハイ ム社)を含むPBSで370C、 2時間ブロ ッ キン グした。 ガン
細胞に結合し ている特異抗体 を検出するため、 ビオチ ン 化抗ヒ トIgGもしくは1 g M (ブロ ッ キン グ液で500倍に希釈 したもの ; ベクタ一社)を添加し て、 3 7 oc、 1時間反応 させた。 さらにアビジ ン ービオチ ン化ペルオキシダーゼ複 合体(ABC) (ベクタ一社)を37 oc、 1時間反応させた( e )。
最後に、 酵素基質液 3,3' -diaminobenzidine tetra- hydrochloride (DAB) (同人化学) 1 0m g を2μ 1の30%H2
o 2を含むO.lM Tris-HC l緩衝液(pH7.2)lOm lに溶解したも の)を添加し て、 3 7 oCで20分間反応させた(f)。
Fig.6-3に示すように、 ガンに対する免疫が リン パ球 に生じると、 特異抗体が産生され、 リン パ球の周囲に存
在するガン細胞と結合し、 陽性クラスターを生じる(A )。
一方、 免疫が生じなか った場合に は、 陽性クラスターは 認められない( B )。 すなわち、 ごの陽性クラスター数を 計測すれば、 体外免疫の効果が判定可能となる。
- 85 -
(a) Preculture
Medium
(c)
IVI(e)
EIAFig.6・2
(b) Coculture
@ @ @ @
(d) Fixation
{勾Detection
Substrate Color
Diagram of principle of direct detection with a EIA (DD-EIA) method
l:}:州I Cancer cell (Antigen)
。 Immunoactivator
や Avidi的
。L問h州e
y Specific antibody
� J
( A) (B )
Fig.6・3
Direct detection of specific antibodies produced by lymphocytes immunized with A549cells
using EIA
Antibodies secreted by sensitized lymphocytes bound to human lung cancer cell lK1e,A549,and posiUve clusters composed of several A549 cells s悩fied.お歩毛主A were detected with
DD-EIA(A). No staining of A549 cells was observed without specific antibodies CB).
ワtnRU
第3項 種々 の免疫賦括斉IJの体外免疫に およぼす効果
体外免疫では、 免疫賦括斉IJとして、 o K -4 3 2 61) (2 5 0μ g / m 1) (中外製薬)、 ムラミルペプチド(MDP ) 62) (10μ g/
m 1) (カルビ オケ ム社)、 ヒ トイン ター ロイキ ン 2 (1 L-
2) 63) (100U/ml) (ゼン ザイム社)、 ヒ トイン ター ロイキ
ン 6 ( IL- 6 ) 6 4 ) (10U/ml) (ゼン ザイム社)、 ポークウ ィ
ドマイトージ ェ ン(P W M) (1完) (ギブ コ社)、 リポ多 糖(LPS) (25μ g/ml) (デ ィ フ コ社)を用いた。 ごれらは、
あらかじめ最も高い効果を示す濃度を検討し て用いた。
OK-432は、 溶連菌製剤の抗ガン剤で、 細胞性免疫に 主と
して作用すると されている。 MDPは アジ ュ パントペプチ
ドである。 体外免疫は、 これらの免疫賦括剤を含む5%
FBS-ERDF培地で、 4日間の培養で行われた。
A、口、
Tabl'e 6-1に示すように、 OK-432を単独で添加した場 無添加の コント ロールに比較して、 約5倍の活性を 示した。 OK-432と1 L -2を組み合わせて用いた場合、 コン
ト ロールの約15倍に免疫効率を増強した。 1 L - 6はOK-432 と組み合わせて用いても、 免疫効率に影響はなか っ た。
しかしながら、 1 L - 6が存在した場合は、 陽性クラ ス ター
が強く染色された ごとから、 1 L - 6は免疫感作 に直接かか わるのではなく、 感作した活性化リ ン パ球の抗体産生を 増強する働きをも っ てい る ごとが示唆された。 これらの 免疫効率の傾向は、 OK-432の代わり にMDPを用い ても同様
であ ったが、 OK-432よりさらに免疫 が増強された。
Table 6-2に、 1 L -2と1L - 6の免疫効果に つい て検討した
結果を示した。 1L -2は、 OK-432やMDPなしでも体外免疫 効果を示した。 1L - 6は、 1 L -2に比較し てほとんどその効 果をもたなか った。 また、 1 L - 2と1L - 6を組み合わせて用
いた場合、 陽性クラ スターの数は1L -2を単独で使用した 場合と同じ であるが、 その染色 は強く、 抗原感作した活 性化リ ン パ球の抗体産生を増強し てい た。 また、 OK- 432もしく はMDPと1L -2、 1L - 6を組み合わせて用い ると、
より顕著に免疫が増強される ごとがわか った。
一方、 Table 6-3に 示す ように、 PWMは、 ほとんど免疫
が生じる こと はなか った。 LPSは、 単独では若干の免疫 が生じ るも の の、 PWMと の 組合
せ
では、 むし ろ効果は減少した。 さらに、 最も体外免疫効果の高か ったOK-432 やMDPと1L - 2、 1 L - 6の 組合せに、 PWMとLPSを添加した場
メ入口、 逆に体外免疫 の効果を間害する ごとがわか った。
- 89 -
以上の結果から、 免疫賦括剤とし て、 OK-432もしくは MDPと1 L -2、 1 L -6を用い る ことが適当であると考えた。
Table 6・1
Effects of OK-432. MDP. IL-2 and IL-6 on IVI
Lm
?
Additive No. of Positive Clusterb ( mean :tSEM )
OK-432 MDP IL-2 IL-6
。
+
1士1+ +
5:t1+ + +
15:t 2+ + +
8:t2+ + + +
14:t 2+ +
4:t0+ + +
15:t 3+ + +
4:t1+ + + +
26:t 5aL.戸nphocytes separated from peripheral blood of a noロnal humむ1 doner were used.
b Data were means :t
SEM
of number of positive cluster from triplicate cultures.4EムnuJV
Table 6・2
Effects of IL-2 and IL-6 on IVI
Additive No. of Positive Clustera (mean + SEM)
None
IL-6
。 9 + 5
2 + 1 9 + 4 14 + 3 22 + 5 IL-2
IL-2+IL-6
OK-432+IL-2+IL-6 MDP+IL-2+IL-6
aData were means + SEM of number of positive cluster from triplicate cultures.
Table 6・3
Effects of PWM and LPS on IVI
Additive a
No. of Positive Cluster PWM
LPS
ìLOK-432+ MDP+ �-2�IL-6 Îi=--i+IL-6 ( mean:tSEM )
。
+
1 :t 0+
7:t2+ +
4:t 1+
14:t 3+
22:t 5+ + +
5:tO+ + +
6 :t 1a Data were means :t
SEM
of number of positive cluster 企om triplicate cultures.n《unuu
第4節 免疫感作リン パ球の産生する特異抗体のクラス
体外免疫で、 抗原感作を受けたリン パ球が産生する抗 体クラスをELISA法を用い て検討した。 Fig.6-4に結果を 示した。 OK-432もしくはMDPとIL -2、 I L -6を組み合わせ て用い た場合、 IgMとIgG両方のクラスの特異抗体を産生 する ことが分か った。 そし て、 それぞれのクラスの抗体 を産生するリン パ球は、 OK-432ではIgGがIgMの2倍程 度、 MDPでは 3倍程度多く存在するごとが分か った。
般に、 体内での免疫は、 抗原感作後4日間程度では、 血 中抗体価はIgMがIgGより高く検出される。 こ のごとから 体外免疫のひと つの利点とし て、 免疫反応を体内でのそ れより、 より円滑に生じさせるごとができるごとが示唆 された。
[Additive]
None
門 図
IgMIgG
OK-432+
IL-2+IL-6
MDP+
IL-2+IL-6
。 10 20 30
No. of Positive Cluster
Fig.6・4
Classes of speci白c antibodies produced by sensitized lymphocytes
Specific IgM and IgG antibodies were directly detected with anti
human IgM or anti-human IgG as 2nd antibodies by DD-EIA.
τ'he results were shown as mean+SEM of number of positive cluster by仕iplicated experiments.
FhJv nHd
第5節 体外免疫に及ぼす リ ン パ球の個体差
著者が開発した 体外免疫法が、 種々 の提供者由来のリ ン パ球 でも可能か否かに ついて、 検討したo Table 6-4
lこ示すように、 OK-432もしくは MDPとIL -2、 IL-6を用い
てリ ン パ節リ ン パ球および末梢血リ ン パ球を免疫 したと
ころ、 いずれも免疫の成立が認められたo 全5例のうち 最も体外免疫の効率が高か った場合と低か った場合とで
は、 3倍程度の違いがあ ったo また、 リ ン パ節リ ン パ球
を用いた場合、 OK-432でもMDP でも同じ様な刺激効果を
有していた が、 末梢血リ ン パ球を用いた場合、 MDPの方
がOK-432よりも優れた 結果を示した。 以上の結果から、
体外免疫は、 免疫賦括剤として MDPとI L -2、 1 L -6を組み
合わせて使用する ことで、 最も効果的に生じる ことが分
か った。
CD -.J
Table 6・4
Effect of individual differences of lymphocytes on IVI
Origin of No. of Positive Cluster ( meむ1 ::t SEM
)a
L戸nphocytes None IL-2+IL-6 OK-432+ IL-2+IL-6 MDP+
Ly立lph node b l 。 30 ::t 4 26 ::t 3 2 l::tO 14 ::t 2 24 ::t 2 Peripheral bloodC � 1 。 20 ::t 5 52 ::t 5
2 。 14 ::t 5 26 ::t 9
3 。 9::t4 18 ::t 2
a
Data were meむlS ::t SEM of number of positive cluster from 廿iplicate cultures.bLymph nodes were obtained from breast cancer patients.
C Peripheral blood was derived from normal doners.
第6節 抗原となるガ ン細胞の違いが体外免疫に及ぼす 影響
こ こ まで、 抗原として、 ヒ ト肺ガ ン細胞株A 5 4 9を用い
て体外免疫を行 っ てきたが、 種々 のガ ン細胞に対して、
こ の方 法 が適用可能 か否かに ついて検討し た。 Ta b 1 e
6 -5に示すように 、 A 5 4 9細胞と由来の同じ肺腺ガ ン細胞
株PC-9では、 A 5 4 9の半分程度の免疫が生じた。 また、 由
来の異なる肺ガ ン細胞株で扇平上皮ガ ンQ G - 5 6、 小細胞
ガ ンQG-90'こも体外免疫が生じた。 一方、 胃ガ ン細胞株、
乳ガ ン細胞株では、 免疫が生じる細胞と生じない細胞が
存在して いた。 以上の結果から、 体外免疫法は、 種々 の
ガ ン細胞に対して使用可能である こ とが分か っ たo ただ
し、 使用するガ ン細胞が、 体外免疫に有効であるか否か
に ついて、 DD-EIA法を用いた検討を行 っ て確認すべきで
あると思われる。
Table 6-5
In vitro imrnunization of normal hurnan lymphocytes against various human cancer cell lines
Cell line No.of a
positive cluster
Lung cancer
Adenocarcinoma
A549 20:t 4
PC-9 10 + 2
Squむnouscarcinoma
QG-56 41 + 15
Small cell carcinoma
QG-90 16士3
Stmach cancer
MKN-28 43土30
MKN-45 。
Breast cancer
MCF-7 11 :t 3
HBC5 。
a Data were means土SEM of number of positive cluster fromむiplicate cultures.
- 99 -
第7節 ヘルパー T細胞が体外 免疫に 及ぼす影響
体外免疫が、 どのような機構で作用してい るかを検討 するた め、 免疫前のリ ン パ球と免疫後のリ ン パ球集団に ついて、 フ ロ ーサイト メ トリーを用いたサ ブセ ッ ト解析 をした65 )。 解析のた めに、 異な る蛍光色素を標識した 抗体( F 1 T C標識抗ヒ トサ プレ ッ サー T細胞抗体とPE標識 抗ヒ ト ヘルパー T細胞抗体) を用いた。 Fig.6-5に結果 を示した。 LeuLeu-MeOで処理したリ ン パ球を体外免疫に 用いてい るが、 普通、 免疫直前のリ ン パ球集団のうち、
ヘルパー T (h-T)細胞の比率は、 全体の約20%であ っ た。
しかしながら、 体外免疫後 はh-T細胞の比率が全体の 30%以上にまで上昇していた。 一方で、 h-T細胞の比率 が低いと、 体外免疫の効率も低くなることがわか っ てい るo 従 っ て、 体外免疫の効率は、 h-T細胞の活性化に相
関してい ることが示唆された。
PE (A)
(20.80/0)
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PEI(B)
(33.10/0)
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一.・幽司.
・ ... ・.
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••.
川川hht円hL門hh ・・・・ 11111111 ・
FITC
Fig.6・5
Flow cytometric analysis of immunized l戸nphocytes in vitro
Humむ11戸nphocytes before (A)ぉ1d
a丘町(B)
irnmunization were stained with PE 1abeled anti-human he1per T cell antibody and F:πC 1abe1ed anti-human suppressor T cell antibody. Populaむon of helper T cells increased from200/0
to300/0
over.- 101 -
第8節 考察
多くの研究者が、 種々 の抗原を用いて マ ウ ス牌臓細胞 の体外免疫法に関する報告をしてきた66)。 しかしなが ら、 ヒ トのリ ン パ球を用いた場合は、 マ ウ スのリ ン パ球 を用いた場合に比較して、 その効率が低く、 有効な体外 免疫法は確立されていない。 この 原因のひと つとして、
体外免疫を鋭敏に、 短時間で検出する ス クリー ニ ン グ法 が確立できなか っ たことであろう。 一般に、 ガ ン細胞 を 抗原として用いたEL 1 S A法 では、 検出可能な抗体価が高 すぎたり、 プラー ク形成法では、 操作に時間がかか っ て
しまう。 そこ で、 著者は抗原として用いた ガ ン細胞に結 合した特異抗体を直接検出可能なDD-EIA法を開発した。
この方法は、 試算したところEL 1 S A法の1 0 0分のl程度の 特異抗体でも検出可能であ っ た。 さらに操作に要する時 間も、 4時間程度である。 このDD-EIA法が、 今回の体外 免疫法の 確立に大きく貢献した。
体外免疫に必要 な免疫賦括剤として、 o K -4 3 2、MDP、
1 L -2、IL-6を用いた。 OK-432は抗腫蕩活性をもち、 細胞
性免疫に作用するこ とが知られていたが、 液性免疫にも
効果があることが示唆された。 MDPは ア ジ ュ パン ト ペプ チ ドで、 抗原感作を促進する因子である。 したが っ て、
o K -4 3 2やMDPは、 IL-2やIL-6の存在下で、 免疫効率の上
昇に役立 っ たと思われる。 とこ ろで、 1 L - 2と1 L -6はリ ン パ球活性化因子であり、 それぞれの因子の作用は広く研 究されている。 しかしながら、 体外免疫に組み合わせて 用いた例は少ない。 Sp 1 a w s k iらは、 1 L - 6による B リ ン パ 球の分化は、 IL-2 の存在に依存していることを示して
いる6 7 )。 このことから、 抗原感作、 抗体産生を誘導す
る一連の免疫反応を生じさせるには、 リ ン フ ォ カイ ンの 単独投与ではなく、 組み合わせて用いる必要があること を示唆していた。
体外免疫の研究において、 従来は抗原に可溶性タ ン パ ク質6 8 )や微生物等6 9 )が使用されてきた。 これらは、 抗 原性が高く、 免疫効率も良好である。 しかしながら、 ガ
ン細胞のように、 抗原性が低いと考えられている場合で も、 体外免疫が可能であることを明らかにした。 現在の とこ ろ、 ガ ン免疫の機構は、 まだ詳細には解明されてお らず、 本研究が発展することで、 この分野に新たな知見 を与えるものと思われる。
- 10 3 -
第9節 小括
健常人由来の ヒ ト リ ン パ球を、 ヒ ト ガ ン細胞株を抗原 として、 体外免疫する方法を確立した。 ヒ ト リ ン パ球を
ガン細胞株とともに、 種々 の免疫賦括剤を含む培地中で 4 日間培養した。 体外免疫は、 OK-432もしくはMDPと
IL-2 、 IL-6を組み合わせて用いた時、 効果的に生じた。
感作リ ン パ球の産 生する特異抗体ク ラ ス は、 1 g Gと1 g M
の両方を産生していたが、 その存在比はI g GがIgMの2倍
以上であ っ た。 また、 提供者の異なるリ ンパ球を体外免
疫に供したと こ ろ、 その効率の低い場合と高い場合で3
倍程度の差が認められたものの、 いずれも免疫が生じて
いた。 さらに、 種々 の ヒ トガ ン細胞株を抗原として免疫
したとこ ろ、 ほとんどの場合、 免疫が生じるけれども 、
そうでない場合も若干認められた。 また、 こ うした体外
免疫には、 ヘルパー T細胞の活性化が重要な役割を担 っ
ている こ とが示唆された。
第7章 体外免疫リ ン パ球を用いた肺ガ ン特異的モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗体産生ハ イ ブリ ドー マ の取得
第1節 緒言
肺カ。 ン特異的ヒ ト型モ ノ ク ロ ー ナ ル抗体として、 1 9
8 5年、 HB4C5抗体が我々 の研究室から報告された。 この 抗体は、 現在、 肺ガ ン の診断 ・ 治療に向けて、 R 1イ メー
ジ ン グ8 )や血清診断70 )、 7 1 )への応用研究が続けられて い る。 これら の抗体の特徴は、 いずれ もIgMク ラ ス に属
している こ とである。 これ は、 第2章、 第3章で述べて
きた。 著者 は、 抗体をより幅広く有効に用いるには、 さ
らに種々 の特異性をもち、 様々 なク ラ ス の抗体を豊富に
取得することが重要であると考えた。 そ こ で、 著者の確
立した体外免疫法を用いて、 肺ガ ンに対して抗原感作を
受けた リ ンパ球を融合パート ナー細胞と細胞融合させ、
肺ガ ン特異的ヒ ト型モ ノ ク ロ ー ナ ル抗体を取得する こ と
にした。 体外免疫は、 確実に抗原感作を行うことが可能
であるため、 効率的にガ ン特異的なモ ノ ク ロ ー ナ ル抗体
を取得できると思われる。 さらに、 第6章第4節のデー
- 105 -
タから、 感作リ ン パ球の産生する抗 体ク ラ ス は、 1 g M"
IgGの両ク ラ スが検出されていた。 こ の こ とは、 体外免
疫した リ ン パ球を用いてハイブリ ドー マを作製すれば、
IgG、 IgM両ク ラ スの肺ガ ン特異的モ ノ ク ロ ー ナ ル抗体が
取得可能に な る こ とを示唆してい る。
著者は、 健常人末梢血由来のリ ン パ球を ヒ ト肺腺ガ ン
細胞株A5 4 9で体外免疫し、 得られたリ ン パ球を用いてハ
イブリ ド ー マの作製を試み た。
第2節 リ ンパ球の体外免疫
第1 項 リ ンパ球の調製
体外免疫に供するリ ンパ球は、 4人の健常人提供者の 末梢血から分離した。 簡単に述べると、 へパリ ン加真空 採血管(テ ルモ社) に1人につき50 m 1ずつ採血した。 そ れらを、 リ ンパ球分離液(L S M )に重層して、 400 gで3 0分 間遠心した。 LSMと血し ょ うの境界付近lこ層をなして分 離しているリ ンパ球を分取し、 基本合成培地ERDFで3回 洗浄した。 この時点、 で回収された リ ンパ球数は、 1 -3 x
107細胞であり、 生存率は95%以上であ っ た。 これらを、
ERDF培地で1x 106細胞Imlになるよう懸濁した。 さらに 、 分離した リ ンパ球の中から、 免疫抑制的に働くサ プレ ッ サー T (s-T)細胞を除去するため、 L- ロ イ シ ル ーLーロ イ シ ン メ チルエ ス テ ル(LeuLeu-OMe)を終濃度O.25mMになるよ うに懸濁液に添加して、 3 7 ocで40分間保温した。 体外免 疫に供した リ ンパ球は、 全てs-T細胞の存在しないリ ン バ球集団を用いた。
- 107 -
第2 項 体外免疫
第6章で検討した結果として、 最も効率よく体外免疫 を生じる 免疫賦括剤の組合せとして、 ム ラ ミ ルペプチ ド
( M D P、 10μ g/ml :カ ル ビ オケ ム社) ヒ ト イ ン ター ロ イキ ン2 (IL-2, 100U/ml :ゼン ザイ ム社) 、 ヒ ト イ ン タ
ー ロ イキ ン6 (IL-6, 10U/ml :ゼン ザイ ム社) を用いた。
まず、 ヒ ト肺腺ガ ン細胞株A 5 4 9を1x 1 0 4細胞/mlの密度に
1 0完FBS-ERDF培地で調製し、 5 m 1の培養デ ィ ッ シ ュ にまき こ んで培養した。 翌日、 こ の培養上清を除去した後、
FBSを2 5 0μl添加して、 上記の免疫賦括部jをそれぞれ添 加した。 こ の添加順序は正確に守 っ た。 なぜならば、
1 L - 2やIL -6は、 培養器や ピ ペ ッ ト等に非特異的に結合し
たり、 温度によ っ て 分子の分解が生じる傾向があるため である。 つづい て、 ロ イ シ ン処理をしたリ ン パ球をER
DF培地で懸濁して、 最終的に1x 1 0 6細胞/mlになるように 調製し、 培養ガ ン細胞に添加した。 Fi g. 7 -1にガ ン細胞 とリ ン パ球の共存培養の様子を示した。 抗原で刺激され たリ ン パ球が、 活性化して増殖してい る状態が、 認めら れ る。 体外免疫のための培 養は、 4 日間行 っ た。
(A) (B)
Fig.7・1
Activation promes of human lymphocvtes cocultured with the human lung candr cell
line, A549
(A);
Normal human 1戸nphocytes treated with LeuLeu-OMemャ cocultured on出e sheet of lung cancer, A549. Culture medium consisted of 50/0 FBS-ERDF medium contain泊g MDP,IL-2and IL-6.Magnineauon xloo-(B);Control
��eriment was perfoロned by culturing lymphocytes without A549 cells. Magñifìcation x ì'OO.
- 109 -
第3節 細 胞 融合とハイブリ ド ー マ の スク リー ニ ン グ
体外免疫したリ ン パ球は、 ヒ ト融合パー ト ナ ー細胞株
A 4 H 1 2細胞と ポリ エ チ レ ン グ リ コ ー ル(P E G )法に より、 融
合した。 体外免疫した リ ン パ球は、 よく懸濁して回収し
た。 細胞間相互作用に より活性化しているリ ン パ球は、
ガン細胞と強く結合しているため、 ピ ペ ッ テ イ ン グを十 分行い、 取り残しがない よう、 検鏡に より観察した。 細
胞融合法は、 第2章に記した方法と同じである。 融合し
た後、 得られるハイプリ ドー マの培養上清を、 ヒ ト肺ガ
ン細胞株A5 4 9を抗原としたELISA法に より スク リー ニ ン
グした。 なお、 A5 4 9細胞 に反応する抗体が検出された培
養上清は、 その抗体ク ラ スを検討するため、 2次抗体iこ
抗ヒ トIgGと抗 ヒ ト1 g Mを用いたEL 1 S A法を行 っ た。
Table 7-1に、 融合結果を示した。 実験には 4人の提
供者由来のリ ン パ球を用い、 さらに、 その内3人は体外 免疫の コ ン ト ロ ールとして、 免疫していない リ ン パ球も
同時に融合した。 4回の融合で、 いずれも高率でハイブ
リドー マが取得されたo 特に 1例目では、 1 00%の融合効 率であり、 体外免疫に よるリ ン パ球の損傷は認められな
か った。 また、 免疫して得られたハイブリ ドー マの内、
少なくとも1 ク ロ ー ン は、 抗原であるA 5 4 9細胞に反応す
る陽性株であ っ た。 一方、 コ ン ト ロ ールである免疫して
いない リ ン パ球を用いた場合は、 ハイブリ ドー マは得ら
れるものの、 陽性株は全く得られなか っ た。 さらに、 得
られた5株の陽性ハイブリドー マは、 1 g G産生株が2株、
IgM産生株が3株であ っ た。
以上の結果から、 体外免疫法は、 抗原特異的な ヒ ト型
モ ノ ク ロ ー ナ ル抗体取得に有効である こ とが明らかとな
っ た。
- 111 -
Table 7・1
Human-human hybridomas generated by lymphocytes immunized in vitro
Exp. No.of N0.of No. of C Class of
Seeded wellsa Hybddomas b Positive Clones POSitiveMOAbsd
1. Control e 192 192
IVI 192 192
2. Control 96 96
lVI 96 68
3. Control 192 100
lVI 288 86
4.1VI 192 45
a Number of wells seeded after cell fusion.
b Number of wells containing hybridomas.
。
1 IgG
。
1 IgM
。
2 IgG,IgM
1 IgM
c Number of clones secreting monoclonal antibodies (MoAbs) reactive to A549 cells. Positive clones were defined by following formula.
A405 (MoAbs) - A405 (Control: Human serum IgG or IgM) > 0.3 d Class of MoAbs reactive to A549 cells.
e Normal human lymphocytes without IVI were fused with fusion P訂tner cells.
第4節 抗原であるA 549細胞に対する抗体 の反応性
体外免疫後、 細胞融合して得られた陽性ハイブリ ドー
マの反応性を、 抗原であるヒ ト肺ガ ン細胞株A 549を用い
て検討したo まず、 ハイブリ ドー マの培養上清中に存在 する抗体濃度を測定し、 全て1 μ g/mlになるよう調製し
た。 ガ ン細胞株A 5 4 9は9 6穴培養プレ ー トに コ ン フ ルエ ン トに なるまで培養し、 グルタールアルデヒ ドで固定した
もの を用いた。 抗体の非特異的反応を防ぐため、 このプ
レ ー トに ブ ロ ッ キ ン グ液( 0 . 2 %ゼラ チ ン ーO. 5 %牛血清ア
ル フ ミ ンを含む P B S )を添加した。 1 μ g/mlに調製し
た抗体を2分のlずつ段階希釈した ものを 検体とし、 コ
ン ト ロ ールとして、 同濃度に調製したヒ ト血清1 g Gもし
くはIgMを 用いた。 これら検体を反応させた後、 2次抗
体として、 ペルオ 牛 シ ダー ゼ標識抗ヒ ト1 g G もしくは
IgMを反応させ、 基質液( A B T S液)を添加して、 発色さ
せた。
Fig.7-2に これらの結果を示した。 IgG型のモ ノ ク ロ ー
ナル抗体BD 9、 BE 2は、 ともにA 5 4 9細胞に対して抗体濃度
に依存した反応性を示したが、 BD9は BE 2と比較して、 よ
一113 -