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3章 ベンチャー企業の本質と位置づけ 1. 独立型ベンチャー企業の定義と本質

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3章  ベンチャー企業の本質と位置づけ

1. 独立型ベンチャー企業の定義と本質

  ベンチャー企業の定義については、本論の出発点がJ.A.シュンペーターにあることから、

シュンペーターに戻る必要がある。すでに第2章1.J.A.シュンペーターの「創造的破壊」

による創出のところで詳しく引用したので、ここではまとめてみたい。ポイントとなるの は、資本主義のエンジンは新結合によるイノベーションを用いた創造的破壊であるが、そ の担い手が企業家(起業家)であるということである。そして、企業家は新人であり、そ れによる企業は、新企業であるとしている。そこで、ベンチャー企業の定義を構成する要 素をまとめると以下のようになる。

①新人としてのアントレプレナーの存在

②新結合によるイノベーション(新しい財貨、新しい生産方式、新しい販路の開 拓、原料の新しい供給源、新しい組織の実現)注 2 − 2

③新企業

④資本主義のエンジン

また、J.A.シュンペーターを高く評価したドラッカーは、イノベーションについて、次の

点を現代性を入れて付加している。

①予期せざる成功失敗と事象

②調和せざるものの存在、かくあるべきものと乖離した現実、つまりギャップの 存在

③必然的に必要なニーズの存在

④産業や市場の構造変化

⑤人口構成の変化

⑥ものの見方、感じ方、考え方の変化

⑦新しい知識の獲得

「イノベーションと企業家精神」(ダイヤモンド社1985年)p.55−56

  さらに、企業成長理論の中からは、グレイナーの「進化と革命による組織成長論」を本 論の理論的中心のひとつとしているが、定義に関することは、以下の通りである。

①進化と革命という矛盾をエネルギーとして成長する。

②急成長企業は、進化と革命の間隔が短い。

③時間的経過(歴史的見方)が重要で、組織の年齢のインパクトが高い。

  さて次に、日本におけるベンチャー論の原典は、「ベンチャー・ビジネス」(清成忠男、

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中村秀一郎、平尾光司著  日本経済新聞社1971年)であると、第2章4-1)総合的ベンチャ ー論の原典で述べた。ここでの定義を構成する要素は、以下の通りである。

①研究開発集約的、デザイン開発集約的な、能力発揮型の創造的新規開業企業。

②経営者が高度な専門能力と、才能ある創造的な人々を引きつけるに足る魅力の ある事業を組織する、起業家精神をもっている。

③高収益企業であり、急成長する可能性を持つ企業。

  さらにより具体的には「ベンチャー企業の経営と支援」(松田修一監修、早大アントレプ レヌール研究会編  日本経済新聞社1994年10月)では、以下のように定義している。p.20

「成長意欲の強いリーダーに率いられた、リスクを恐れない若い企業で、商品の独創性、

事業の独立性、社会性、さらに国際性を持った企業」

  以上のすべての要素を筆者なりに消化し、また筆者の哲学に適合し、かつベンチャー企 業の本質を表現できる定義として、以下のように定めたい。なお、この定義は、新たに起 業する独立型ベンチャー企業であり、既存企業が設立する社内外ベンチャーは含まれない。

この独立型ベンチャー企業の定義についての考え方は、以下の通りである。(ベンチャー企 業という言葉は、とくにことわりがない場合は、独立型ベンチャー企業のことを意味する。)

①数値的定義は、中小企業の範囲としていることになる。中小企業の定義は、1999 年に変更されたが、その内容は、資料 3-1 に示すとおりである。中小企業基本 法では、資本金、又は従業者数という数値規準しかないので、本定義は、これ に質的基準を加えて、普通の中小企業と区分している。質的基準での区分では、

曖昧であるとの批判もあろうが、体系的ベンチャー企業経営論は、かつての二 重構造論や、中小企業弱者論を克服する意味があり、理念的姿を明示すること で輩出の効果があると考えるからである。

②中小企業の範囲を越えた独立型ベンチャー企業を「中堅企業」と定義し、大企 業の定義は、東証1部上場企業の一応の基準となる資本金10億円以上とする。

この定義からは、中堅企業とベンチャー企業は区別するが、ベンチャー企業経 営論では、中堅企業も範囲に入れて検討することとする。なぜなら、ベンチャ ー企業から中堅企業への成長は、短期間に達成されることもあり、関連が深い からである。

③高い志という意味には、単に経済的成功だけでない別の目標を、持っていると   高い志と成功意欲の強いアントレプレナー(起業家)を中心とした、新規事業への 挑戦を行なう中小企業で、商品、サービス、あるいは経営システムにイノベーション に基づく新規性があり、さらに社会性、独立性、普遍性を持ち、矛盾のエネルギーに より常に進化し続ける企業。

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いうことを意味し て い る。中村注 2 − 1 2は、アントレプレナーには、「気概

(thymos)」があると、プラトンを引用して述べている。高い志の内容は、起業 家にとっては技術開発であったり、社会貢献であったり種々様々であるが、こ れがあるから、清成・中村が主張した創造的な人々を引きつける魅力が生じて くるのである。

④成功意欲が強いことの中心的意味は、経済的成功であることは当然である。し かし、あえて成長と表現していないのは、起業家によっては、成功の尺度は様々 でありうるからである。成長では、規模や売上といったイメージが強くなりす ぎるのである。

⑤アントレプレナー(起業家)は、独立型の場合は、原則新人、つまりその新規 事業を創業し始めるという前提がある。そして、中心としてという意味は、単 に一人の起業家の超ワンマンの体制だけでないということを意味している。特 にハイテクベンチャー企業の場合は、V.C.が創業時から出資をして、技術を開 発した創業者とは別人物を社長にするという、チーム制でスタートするといっ た形態もありうるからである。

⑥イノベーションとは、J.A.シュンペーター、及びドラッカーの意味する内容を 広い範囲に含む概念である。しかし、一方でイノベーションに基づく新規性で あるので、アイディアだけが新しいといった思いつきは含まず、イノベーショ ンによる裏づけがあるということである。またこの新規性は、商品やサービス だけでなく、経営システム(経営のやり方)におけるものでも良いと考える。

これは、J.A.シュンペーターの新組織の実現を取り入れている。

⑦新規事業への挑戦という意味には、資本主義のエンジンとしての意味や「創造 的破壊」という、社会・経済へのインパクトの大きさを表現している。結果と して、新産業の創出という社会的使命を持った企業、ということになる。

⑧社会性の中には、社会に貢献する企業であり、しっかりした倫理観を持った企 業ということである。なぜならば、企業は社会的公器であり、設立されるとス テークホルダーとの様々な関係が生じ、責任が生じる。そして将来、株式公開 を目指し、真に社会的な存在となる志向があることも含まれる。しかし、これ はあくまで志向であって、未公開企業でも必要なディスクローズを行ない、社 会的チェックを受ける企業については、株式公開は条件ではない。逆に株式公 開を自己目的化し、手段を選ばずキャピタルゲインだけを目的とするといった ことは、社会性が欠如すると判断する。

⑨独立性とは、他社の資本系列ではなく、意思決定の主体性があることを示して いる。特定企業との取引関係が強い場合は、ケースバイケースでの判断が必要 である。

⑩普遍性というのは、特定地域の原料を用いた特産品がメインの商品のような場

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合、商品の特殊性はあるが一般性がなく、インパクトが弱いということで入れ てある。またこの中に、特定の国とか地方だけにしか運用しないものではなく、

国際性を持つという意味も含めている。

⑪この定義を創業時から完全に満たす企業は、逆に少数である可能性がある。要 は、このような理念的な定義を明確にして、これを目指して進化しつづけるの が、ベンチャー企業であるということである。そのエネルギーは、企業内部と 企業外部に存在する矛盾を、解決しようという意思から生まれる。ベンチャー 企業の創業は、厳しい経営資源の不足状況のままスタートせざるを得ない。起 業家は、必死の努力をしながら、経営資源の獲得に努める。その結果、規模が 大きくなると次の矛盾が発生し、それを克服する次の革命を必要とするという ことである。

⑫別の多くの定義の中にある高成長という要件は、成長率の概念の決め方や、期 間も設定が困難であり、成功意欲が強いという定義で表した。高収益という概 念も同様に基準が設定しにくい為、新規性が高ければ通常高収益性は、いずれ どこかの時期で達成されると考えた。

資料3−1  中小企業の範囲の変更   

    改正前の中小企業基本法の定義  改正後の中小企業基本法の定義  資本金 1 億円以下又は従業者数  資本金 3 億円以下又は従業者数  製造業その他 

300 人以下  300 人以下 

資本金 3 千万円以下又は従業者  資本金 1 億円以下又は従業者数  卸  売  業 

数 100 人以下  100 人以下 

資本金 1 千万円以下又は従業者  資本金 5 千万円以下又は従衰者  小  売  業 

数 50 人以下  数 50 人以下 

資本金 1 千万円以下又は従業者  資本金 5 千万円以下又は従業者  サ  ー  ビス  葉 

数 50 人以下  数 100 人以下 

(注)  中小企業金融公庫法等においては、政令により旅館業は資本金5千万円以下又  は従業員数200人以下、ソフトウエア業・情報処理サービス業は、資本金3億円以下  又は、従業員数300人以下を中小企業としている。   

(出所)「2000年版  中小企業白書」中小企業庁編、大蔵省印刷局 

  以上の定義に明らかになったように、ベンチャー企業の本質は「創造的破壊」による新 規事業の創出での社会進歩への貢献と、社内・社外の矛盾をエネルギーとして進化し続け る企業、ということになる。

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2. ベンチャー組織の体系

  独立型ベンチャー企業の定義を明らかにしたいが、他の類似の企業や組織についても、

定義や関係を明らかにすることによって、独立型ベンチャー企業の全企業構成や組織構成 における位置づけを明確にしたい。資料3-2に、ベンチャー組織の体系を示してある。

  ここに示したように、全体をくくる概念をベンチャー組織としているのは、NPOや社内 ベンチャーなど、営利企業以外が含まれているからである。まず営利型ベンチャー(企業、

組織)の中には、独立型ベンチャー企業と企業革新型ベンチャーが含まれるが、中には個 人形態もありうる。独立型ベンチャー企業のうち完全独立型は通常の形であるが、創業者

が V.C.などからの出資をうけ、株式の51%以上を保有していないケースもあり、これを独

立支援型ベンチャーとして区別している。

  独立型ベンチャー企業とは異なり、既存の企業革新を遂行するため、社内ベンチャーや 社外ベンチャーを起こして、新規事業開発を行なう場合がある。これを通常社内外ベンチ

資料3−2  ベンチャー組織の体系

(出所)「新訂ベンチャー企業論  2001年3月柳孝一共著      (財)放送大学教育振興会」図1−2改編

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ャーと呼ぶが、ここでは企業革新型ベンチャーとしたい。後に第10章で企業革新戦略の構 図と企業革新型ベンチャーについて詳述するが、社内外ベンチャーは形態を表しており、

その目的は企業革新を進めることにあるからである。英語ではコーポレート・ベンチャー

(Corporate  Venture)注3−1と言われているが、これは社内起業という意味で、社外ベン チャーを必ずしも含んでいないので、目的を明確にするという意味と、企業革新戦略の一 貫であるという意味を含めて、企業革新型ベンチャーと称することとする。まず社内ベン チャーであるが、これは既存の組織の中に、新規事業開発のために特別に作られた組織で ある。特別という要件は、以下の通りである。

①既存事業とは距離がある新規事業を立ち上げることをミッションとする。この ことは、既存事業内で改良型商品の開発と区別されるということである。

②専任のリーダーが、特別の権限を与えられてマネジメントを行なう。

③原則として、既存事業とは独立してオペレーションされている。

④事業計画等が明文化され、ある一定の期限の中で評価される。

  買収事業が社内ベンチャー化したものもある。さらに、プロジェクトチームがある程度 実績を上げると擬似子会社型となり、社内資本金を持ち、いつでも切り離せる状態で運営 される場合もある。新規事業が軌道にのると、既存組織内での新事業部に格上げされるか、

又は新規性が非常に強く、社外ベンチャーにした方が発展すると考えられた場合は、別会 社としての法人格を持った社外ベンチャーとなる。社外ベンチャーにも 100%子会社から、

親会社出資比率20%未満の関係会社まで形態は多様である。

  このように、社内ベンチャーでスタートし、社外ベンチャーに成長する場合も多く、そ の目的は既存企業、又はグループの企業革新にあるということである。

  次に非営利型ベンチャーについては、法人形態と個人形態とがある。非営利型には、今 までも財団法人、学校法人、医療・福祉法人、ボランティア組織等様々な形態が存在した。

そして、1998年12月に施行された「特定非営利活動促進法(通称NPO法)」による認証 法人であるNPO法人が可能になったこともあり、非営利団体の中でも活動内容や組織化の 方法などが、非常に新規性を持つベンチャー的な組織が増加している。一方、社会のニー ズも営利企業や行政だけで対応できないほど、多様になってきている。

  P.F.ドラッカーは、「イノベーターの条件」(上田惇性生編訳  ダイヤモンド社2000年12

月)の中で次のように指摘している。「これからは社会的なニーズが二つの分野で高まる。

一つは、伝統的に慈善として捉えられてきた救済サービスの分野である。貧しい人、障害 のある人、寄るべなき人、害を受けた人を助けることである。もう一つは、コミュニティ と人間に働きかける社会サービスの分野である。特にこの第 2 の分野において、社会的ニ ーズが急速に高まる。p.95」そして、「過去 40 年間、政府自らが実行者となることによっ て、社会的問題を解決しようとしたアメリカの政府プログラムのうち、意味ある成果を生 み出したものは一つもない。これに対し、NPO(非営利組織)は、目覚しい成果をもたら

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している。p.16」とも述べているのである。まさにP.F.ドラッカーが、イノベーションが起 きる条件のひとつとして指摘した「産業や市場の構造変化」が起きている分野である。こ のような米国での先行的動きや、日本におけるNPO法人の急増などから、非営利型ベンチ ャーをベンチャー組織の中に位置づけるものである。NPO 法人は、2003年 2月末現在で

10,089法人が認証され、これは1999年2月の初認証からみて3年間であり、かなりの急

増である。活動分野別には、保健・医療・福祉59.6%、社会教育45.7%、まちづくり37.8%、

子供健全育成37.4%など(2003年3月2日付朝日新聞  複数回答)となっており、多分野 にわたっている。このように NPOを中心とする非営利型ベンチャー組織は、21 世紀には 大きな社会的機能を果たす存在になりうる。しかし、本論では、全体的位置づけとその役 割の重要性を、指摘しておくのにとどめたい。

3. ベンチャー企業・組織の位置づけ

1) ベンチャー企業の位置づけ

  資料3-2を日本における企業構造、組織構造の中で位置づけ、社会的・経済的役割を表し たのが資料3-3になる。まず、統計ベースで企業構造をみると、会社数(個人事業者を除く)

は、1,607,810 社存在する(2001 年総務省「事業所・企業統計調査」)。このうち、東証一 部上場企業が1,498 社であり、統計上の中小企業数が1,595,493 社であるから、その差とし ての中間企業が10,819 社ということになる。会社数の実に99.2%が中小企業であり、圧倒 的ウェイトを示している。もちろん、大企業と中間企業の合計である12,317 社の常用雇用

者数は 1,256 万人を占め、全体3,381 万人の 37.1%を占めているから、会社数ほどのウェ

イトはない。

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大企業 1,498社

東証一部)

革新型企業 革新型非営利組織

東 証1部上場

中堅非営利組織

構成員300 中間企業 中堅企業

10,819

中小企業 1,595,493社

ベンチャー企業 株式公開

質的基準なし

(会社形態)

脱 落

変 身

質的基準合致

・アントレプレナー(起業家)

・イノベーションに基づく新規性

・社会性、独立性、普遍性

・矛盾 のマネジメントによる進化

個人形態  個人事業 SOHO

個人形態  任意団体  ボランティア SOHO 質的基準合致

・ミッションリーダー

・創意工夫による新規性

・社会貢献性 非営利 ベンチャー 公共型、NPO、各種団体 NPO法 人 10,089法人      (法人形態)

個人形態  個人事業 SOHO 3,095,229所

営利型 非営利型

資本金10 億円

資本金 3億円以下

出資金300万円 ( 法人)

経済再生ゴールデーンルート

成熟ルート質的基準法人予備軍

計 4,703,039所 法人会社数 合計

1,607,810社

V

V

資料3−3  ベンチャー企業・組織の位置づけ

注1:会社数、企業数等  総務省「事業所・企業統計調査2001年」

注2:NPO法人数  2003年2月末  内閣府

(出所)「ベンチャー企業周辺の新潮流  柳孝一著 中小公庫マンスリー2003年8・9月号」

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  さて、中小企業約 160 万社のうち、ベンチャー企業数やウェイトがどの程度であるかを 非常にラフに考えてみたい。まず、最も絞られたものとしては、「日経ベンチャービジネス 年鑑2003 年版」に収録されている2,406 社がある。しかしこれは、日本経済新聞社のネッ トワークと基準であり、これを最低の水準と考える必要がある。資料3-4に会社設立数の推 移を示しているが、これでみると毎年最近では9万社程度が設立されている。

資料3−4  会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移 

〜バブル崩壊以降、低下する開業率〜 

(出所)中小企業白書2003年版  中小企業庁編

社歴が短い、つまり若いということからみると、この内の先に示した定義に近いものが ベンチャー企業、又はベンチャー企業に近い企業ということになる。「2003年版新規開業白 書」(国民生活金融公庫総合研究所編)による、国民生活金融公庫が2001年4月から同年 9月にかけて融資した企業で、融資時点で開業後1年以内の企業は、4,793社となっている。

これを仮に年間ベースとしても、約 1 万社ということになる。国民生活金融公庫の融資先

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は、新規開業の比率が高いが、一方ではサービス業のウェイトが高いという偏りを持つ。

また、新興市場への株式上場企業数は、ジャスダック(店頭市場)944 社(日経会社情報 2003年Ⅰ号)、ヘラクレス103社、マザーズ43社で、合計1,090 社となっている。これら の相当部分は、中小企業の範囲を越えて中堅企業に達していると考えられるが、ベンチャ ー企業論の範囲に入れて考えるということは、以前に述べた通りである。さらに、「東洋経 済会社四季報未上場会社版2003年下期」には、未上場会社7,000 社が収録されている。こ の中には、いわゆる大企業にあたる会社も含まれているが、中堅・中小企業の範囲に入る 企業も多数存在する。さらに別資料で未上場会社20,000社の収録もある。これらのデータ からでは、正確な推計は不可能であるが、中小企業の総数約 160 万社からみた場合、ベン チャー的といえる会社は、ストックベースで2万〜5万社と考えられる。これはもともと正 確な推計というより、オーダーとしての日本の企業構造におけるウェイトの見当をつける 必要があったからである。

  さて、ベンチャー企業は会社形態(法人)に限っているが、現実には、当初個人事業や SOHO からスタートする場合もありうる。そこで個人形態を法人予備軍と位置づけると、

個人事業は約 310 万事業所ある。このようにベンチャー企業は、中小企業とも曖昧な境界 をもち、個人事業とも関連を持つ大変把握しにくい存在とも言える。しかし、それが大き く発展するかもしれないという潜在力でもあるのである。

2) 中堅企業・革新型企業への進化 − 経済再生ゴールデンルート

  ベンチャー企業は、起業家の高い志と成功意欲の強さで急成長し、中小企業の範囲を超 えると、中堅企業に進化したことになる注3−2。資料3-3では、資本金3億円以下という範 囲であるが、製造業の場合、従業員 300人の範囲でもよい。資料 3-5 に示すように、新興 市場の株式公開基準は、時価総額や利益基準が実質的に緩和された為、中小企業の範囲で も株式公開は可能である。

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  特に従業員規模でみると、サービス業の場合 100 名以下であるが、その範囲内の株式公 開企業もありうる。ということは、中堅企業との境界も曖昧になってきているため、ベン チャー企業経営論では、経営基盤確立期と重複させて取扱っている。しかし、わかりやす く区別すれば、新興市場への株式公開企業を、ここでは中堅企業を称しておくこととする。

しかし、現時点での新興市場での株式公開企業は、先にも示したように 1,090 社であり、

非常に少ないということができる。その中でも最も多い店頭市場でも 939 社であるが、資 料3-6に示すように新規公開会社数は、最近では1995年の137社から減少に向かい、2002 年は70社にとどまっている。

資料3−6  店頭市場の登録会社と新規公開会社の推移 

   

年  1963  70  75  80  85  90  95  登録会社  129  106  88  109  149  357  698 

新規公開  138  3  3  13  15  86  137 

               

年  96  97  98  99  2000  2001  2002  登録会社  779  847  868  871  886 

926  939 

新規公開  112  103  62  73  97 

98  70 

( 出所) 日本証券業協会ホームページ等から作成 

     

  このようにベンチャー企業が進化し、新興市場への株式公開会社を多く出し、それが大 企業(東証1部上場企業レベル、株主資本10億円)へと進化し続けることが、資料3-3に 示した経済再生ゴールデンルートとなるのである。

  米国経済も70年代の停滞を乗り越え、80年代の後半から再生したのは、マイクロソフト に代表されるベンチャー企業の躍進があったからである。日本経済でも、ベンチャー企業 から中堅企業、そして革新型企業への流れを創り出す必要がある。

  ところで、この経済再生ゴールデンルートは、既存企業としての中小企業、中間企業、

大企業という既存企業の流れは、成熟ルートと称して区別している。この既存企業の成熟 ルートでは、日本経産の再活性化にはつながらないと考えられているからである。バブル 崩壊から1994年ごろまでの通産省の経済活性化策は、既存企業中でも大企業を軸とするも のであった。そして産業構造審議会基本問題小委員会は、報告書を発表して、成長が見込 まれる新分野を具体的に提示し、誘導政策をとったのである。しかし、不良債権問題、国 際競争力の低下への対応が精一杯で、結局大企業が行なったのは、選択と集中の美名のも とでの合理化と人員削減であった。そこで通産省の方向は大きく変わり、1995年の中小企

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業創造法によるベンチャー企業育成へ、大きく政策の重点を移したのである。つまり、既 存の企業の活性化だけでは、日本経済の再生は困難であるということである。このような ことから筆者は、ベンチャー企業から進化した企業は、既成の大企業とは異なる、大企業 になっても企業革新をし続ける革新型企業になるべきだし、ならなければならないと考え ている。

  革新型企業とは、どんな企業か。筆者の評価では、ソニー、本田技研、花王、キャノン、

任天堂、オムロン、京セラ、セコム、大和運輸、イオングループ、イトーヨーカ堂グルー プ、ミスミ、最近のトヨタ自動車等が挙げられる。これらの企業は、トヨタ以外は戦後の ベンチャー企業であるが、創業者のアントレプレヌールシップが、企業内にDNAのように 受け継がれて脈々と生きている。このような企業を創り出す必要がある。その典型的な例 として、ソニーの創業者井深大氏注3−3が、1946年1月(昭和21年)に起草した、東京通 信工業株式会社を、長文であるが引用したい。

東京通信工業株式会社設立趣意書

1946年(昭和21年)1月,ソニーの創業者,井深  大(いぶか  まさる:ファウンダー・最高相談役)

が起草した「東京通信工業株式会社設立趣意書」

*東京通信工業株式会社は,1958年(昭和33年)に社名を現在のソニー株式会社に変更した。

真面目ナル技術者ノ技能ヲ 最高度二発揮セシムベキ

自由豁達ニシテ 愉快ナル理想工場ノ建設

東京通信工業株式会社設立趣意書      井深  大

会社創設ノ目的

一、真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ   愉快ナル理想工場ノ建設

−、日本再建、文化向上二対スル技術面、生産面ヨリノ活発ナル活動

−、戦時中、各方面ニ非常ニ進歩シタル技術ノ国民生活内ヘノ即事応用

−、諸大学、研究所等ノ研究成果ノ内最モ国民生活ニ応用価値ヲ有スル優   秀ナルモノノ迅速ナル製品、商品化

−、無線通信横類ノ日常生活ヘノ浸透化並ビニ家庭電化ノ促進

−、戦災通信網ノ復旧作業二対スル積極的参加並ビニ必要ナル技術ノ提供

−、新時代ニフサワシキ優秀ラジオセットノ製作普及並ビニラジオサービ   スノ徹底化

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−、国民科学知識ノ実際的啓蒙活動

経営方針

一、不当ナル儲ケ主義ヲ廃シ、飽迄内容ノ充実、実質的ナ活動ニ重点ヲ置   キ、徒ラニ規模ノ大ヲ追ハズ

一、経営規模トシテハ寧口小ナルヲ望ミ大経営企業ノ大経営ナルガ為ニ、

  進ミ得ザル分野ニ技術ノ進路卜経営活動ヲ期スル

一、極力製品ノ選択ニ努メ技術上ノ困難ハ寧口之ヲ歓迎、量ノ多少二関セ   ズ最モ社会的ニ利用度ノ高イ高級技術製品ヲ対象トス、又単二電気、機   械等ノ形式的分類ハサケ、其ノ両者ヲ統合セルガ如キ他社ノ追随ヲ絶対   許サザル境地ニ独自ナル製品化ヲ行フ。

一、技術界業界ニ多クノ知己関係卜絶大ナル信用ヲ有スル我ガ社ノ特長ヲ   最高度ニ活用以テ大資本二充分匹敵スルニ足ル生産活動販路ノ開拓資材   ノ獲得等ヲ相互扶助的二行フ

一、従来ノ下請工場ヲ独立自主的経営ノ方向へ指導育成シ、相互扶助ノ陣   営ノ拡大強化ヲ計ル

一、従業員ハ厳選サレタル可成小員数ヲ以ッテ構成シ、形式的職階制ヲサ   ケ、一切ノ秩序ヲ実力本位、人格主義ノ上ニ置キ個人ノ技能ヲ最大限ニ   発揮セシム。

一,会社ノ余剰利益ハ適切ナル方法ヲモツテ全従業員ニ配分、又、生活安   定ノ道モ実質的面ヨリ充分考慮援助シ、会社ノ仕事即チ自己ノ仕事ノ観   念ヲ徹底セシム。

(注)1・上記引用資料は(www.sony.co.jp)からのものである。

  2・設立趣意書の表示の次に長文の文章が1ページほどあるが,著者の判断で

  中略させていただき,「会社創立ノ目的」「経営方針」のみを引用させていただ   き,「経営方針」以降も後略させていただいた。

この設立趣意書は、1946年1月に発表されたのであるから、1945年8月15日敗戦の混 乱のきわみの中で書かれたものである。この中で井深氏は、「他社ノ追随ヲ絶対許サザル境 地ニ、独自ナル製品化ヲ行フ。」と述べ、いわゆるイノベーションに基づく新規性を何より 大切にした。そして、「真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ 愉快ナル理想工場ノ建設」と、敗戦の焦土の中から高らかに謳いあげたのである。そして さらに「従ラニ規模ノ大ヲ追ハズ」とか、「個人ノ技能ヲ最大限ニ発揮セシム」とも述べ、

さらに「会社ノ余剰利益ハ適切ナル方法ヲモッテ全従業員ニ配分」といった、今日的な経 営にも通じるメッセージを残している。このような起業家の高い志は、パートナーであっ

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た盛田昭夫とのコンビで世界企業のソニーを生み出し、企業グループの中にDNAとして生 き続けているのである。この証左として具体的事例を記録に残しておきたい。

  2001年7月5日早大アントレプレヌール研究会では、会発足後10年目を迎えるという ことを記念しての第 9 回国際シンポジウムを、早大国際会議場井深大記念ホールで開催し た。この基調講演に最もふさわしい講師として、ソニー株式会社取締役会長兼CEO出井伸 之氏にお願いして「ネットワークビジネスとベンチャービジネスの可能性」と題して講演 をお願いした。この講演の中で出井会長に、以下のような趣旨のお話をいただいた。

「井深さんと盛田さんは、社員が明るく働けることを願っていた。よくソニーはモルモッ ト(先端的技術への挑戦者)に例えられるが、ソニーでは、内部でもモルモットを多く飼 っており、自由に動きまわっている。このようにモルモットを育てる風土がソニーにはあ る。組織だけで今後の戦略を決めさせると、例えばアイディアを殺してしまう。そこで会 長である私(出井)がモルモットを飼っているわけである。このような中から、プレイス テーションの久多良木注3−4や、マネック証券の松本などが育ってきている。しかし、時と 場合によっては私自身が、モルモット・イーター(研究開発や事業開発を中止すること)

にならなければならない時もある。モルモット・イーターにとって大切なことは、選球眼 である。また、大企業の社内ベンチャー企業は、大企業の資源を利用できるし、ある程度 の失敗ができるというメリットはある。しかし、どうしても甘えや甘やかしが出てしまう。

例えば、5億円の金は大金だが、それが小さく見えてしまうといった問題点がある。ベンチ ャーを作る(起業)ということと大きく発展させることでは、まったく違う経営技術が必 要である。つまり「貞観政要」が必要とされるようなものである。自分(出井)はCEOと して闘う神(ゼウス)でいられるのは、分身の神である安藤プレジデントがいるおかげで ある。ベンチャー企業の創出は大切で、米国や中国で大学が果たしているような役割を、

日本にも期待したい。しかし、上場目的だけのベンチャー企業は絶対にやめてほしい。(講 演のメモより、筆者の責任で文章化)」

  長文を引用したのは、起業家井深氏の高い志や理念が、4代目出井会長の言葉の中に、随 所に出現していたからである。

3) 既存企業の変身

  以上述べてきたような、経済再生ゴールデンルートを駆け登る企業がある一方で、途中 で普通の中小企業、中間企業、大企業に脱落してしまう企業も多い。または、途中で挫折 して、消えてしまう企業も少なくない。だからこそ、本論での構築を進める「体系的ベン チャー企業経営論」が必要とされるのである。

  一方で、資料 3-3 に示したように、法人会社数全体としては約 161 万社であるが、その うちベンチャー企業(ベンチャー的も含めて)5万社あったとして、残り156 万社が普通の 法人会社数ということになる。ベンチャー企業を創出し、革新型企業まで進化させること は絶対に必要であるが、時間がかかり、かつ数に限界がある。この既存の 156 社の企業革

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新を行ない、いかに生まれ変わらせるかを研究するのが、筆者がもうひとつのライフワー クにしてきた「企業革新論」である。これも後で述べるように「企業革新の構図」に示し てあるような理論体系があり、ここでは重すぎるので、直接関係のある企業革新型ベンチ ャー企業だけについて述べておきたい。

  資料3-3に示したように、ベンチャー企業、中堅企業、革新型企業が脱落して普通の企業 になってしまうことが起きる一方で、普通の中小企業が、ベンチャー企業に変身するとい ったことも可能である注3−5。例えば先の革新型企業でも、任天堂は、花札、カルタ、トラ ンプの伝統企業からの変身であるし、イオングループは地方百貨店、イトーヨーカ堂グル ープは下町の洋品店からの変身であった。大和運輸は中堅企業レベルの時、小倉昌男元社 長が従来の小口貨物輸送業から宅配便という新規事業を立ち上げ、革新型企業に変身した のである。花王も地味な石鹸メーカーのひとつであったが、中興の祖である丸田芳郎元社 長によって、油脂科学に基礎を置く総合家庭用品メーカーに変身したのである。

  大企業からの変身としては、キャノンがカメラメーカーとして大企業になり、その後経 営危機に直面し、本社ビルを売却するなどして危機を乗りこえ、エレクトロニクス技術を 開発して総合 OA 機器メーカーに生まれ変わり、革新型企業として躍進を続けていること が挙げられる。トヨタ自動車は、世界初の「カンバン方式」などを開発してきた超大企業 で、巨大で収益性が高く強い企業であった。しかし最先端の技術開発や、若者があこがれ る車を創り出すといった先進的イメージはなく、保守的でオーソドックスであった。しか し10年以上前に、多段階組織をフラットにするという大組織改革を断行し、その後先端的 技術開発や先端的車開発にも力をいれ、従来の強さに先進性が加わり、まさに世界企業に 変身しつつある。同様にカルロス・ゴーン社長注3−6の改革が成功した日産自動車も、この 改革が根付くようになれば、大企業から革新型企業への変身のケースに入れることができ る。

  このように、普通の企業が変身して、それぞれの段階で経済再生ゴールデンルートに乗 ることも可能である。この場合、既存企業の活性化と、ベンチャー企業の排出という両輪 がかみ合って再生した、米国モデルに近い形になる。この両輪とも必要なことは当然であ るが、既存企業の起業革新は、後で述べるように、成功体験があるだけに大変難しい。し かも、J.A.シュンペーターが指摘しているように、「創造的破壊」は新人起業家によって担 われる。そこで、本論のウェイトは、ベンチャー企業の輩出が中心命題になっているので ある。

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注3-1  「コーポレートベンチャリング」  ダイヤモンド社1994 年10月  Zenas  Block, Ian C MacMillan著  松田修一監訳  社内起業研究会訳

「本書の主たる目的は、組織内で新規事業の創出、及びイノベーションの成功に役立つこ とが実証された、具体的な経営手法を提供することである。p.1」

注3-2  「中堅企業論」  東洋経済新報社1964年7月  中村秀一郎著  p.1〜p.3」

注3-3  「ソニーを創った男  井深大」ワック㈱2002年9月  小林峻一著

井深の創業の経緯、設立趣意書の背景が詳述してある第8章東通工に込めた理想と戦略

注3-4  「ソニーの革命児たち」  IDGコミュニケーションズ1998年10月  麻倉怜士著

久多良木 健のプレイステーション開発までの過程と、大賀社長の社内におけるエンジェル 機能が詳述してある。

注 3-5  「中小企業のベンチャー・イノベーション」  ミネルバ書房 2002年 12月  佐竹

隆幸編著

本書は、中小企業論の立場から、既存の中小企業の経営革新による第二創業型ベンチャー の可能性を高く評価した立場である。「ベンチャー的戦略行動をとる企業としては、おおむ ね次の3つの形態があげられる。すなわち、①アメリカ経済における典型と見られる起業 家型の独立型ベンチャー、②既存中小企業の経営革新による第二創業型ベンチャー、③既 存大企業などの組織における社内ベンチャー、である。中でも既存中小企業の活性化を志 向した、既存中小企業の経営革新による第二創業型ベンチャーは、経営資源・経営形態・

経営戦略の視点から検討していくと、多くの可能性を保有している。同書p.3」このように、

中小企業論の立場から、中小企業の第二創業が、ベンチャーイノベーションにつながると いう評価で、これは中小企業論のひとつの発展方向として、筆者としては評価し見守りた い。

注 3-6  「ルネサンス」  ダイヤモンド社 2001年 10月  カルロス・ゴーン著  中川治子

「エピローグ − 私の戦いは、これから始まる

現在、日産リバイバルプラン(NRP)は折り返し時点を過ぎて、最後の年になる 3 年目に 向かって進んでいる。2000 年度の決算報告で発表したように、日産は ER(救急救命室)

から回復室へ移ったが、未だに完全に回復したとはいえない。私は、患者の体温や脈拍、

血圧などをチェックし、治療の成果を確かめ、健康な体に戻す医者のようなものである。

P.261」

参照

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