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鶴留, 優也

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

足場タンパク質NHERF1に着目したトランスポーター の細胞膜局在における概日リズム制御機構の解析

鶴留, 優也

http://hdl.handle.net/2324/2236171

出版情報:九州大学, 2018, 博士(臨床薬学), 課程博士 バージョン:

権利関係:やむを得ない事由により本文ファイル非公開 (3)

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(様式5) 氏 名 :鶴留 優也

論文題名 :足場タンパク質 NHERF1 に着目したトランスポーターの細胞膜局在における 概日リズム制御機構の解析

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

序論

様々な生体機能に認められる概日リズムは、時計遺伝子と呼ばれる転写因子群が約 24 時間周期 で発現の増減を繰り返すことで引き起こされる。薬物の体内動態を制御する代謝酵素の活性やト ランスポーターの機能にも概日リズムが認められ、薬物の消化管吸収、代謝、腎排泄などは投与 時 刻 の 違 い に よ っ て 変 化 す る 。 当 研 究 室 で は こ れ ま で の 基 礎 研 究 に お い て 、 時 計 遺 伝 子 が Cytochrome P450やABCトランスポーターの「転写」に概日性の変動を引き起こすことで、こ れらタンパク質の発現が時刻依存的に変動し、薬物の体内動態に投薬時刻の違いによる差異を生 じさせることを明らかにしてきた。

一方、トランスポーターなど細胞膜におけるタンパク質の発現には、それを下支えする「足場 タンパク質」が重要な役目を担っている。我々はマウスの肝臓、腎臓、小腸などの各臓器におい て、足場タンパク質のひとつであるNa+/H+ Exchanger Regulatory Factor 1 (NHERF1)の発現 が概日リズムを示すことを見出した。そこで本研究では、NHERF1の発現リズムによって膜タン パク質の発現や機能にも概日性の変動が引き起こされるのではないかとの仮説を提唱し、以下の 第1章から第3章における研究を行った。

第1章 足場タンパク質NHERF1の発現リズムに基づいたトランスポーターの細胞膜局在にお ける概日変動メカニズムの解析

第1章では NHERF1 の発現リズムが及ぼすトランスポーターの細胞膜局在に与える影響につい て 解 析 を 行 っ た 。 マ ウ ス の 肝 臓 か ら 得 ら れ た 細 胞 膜 画 分 を 対 象 に 免 疫 沈 降 お よ び 質 量 分 析

(LC/MS)を組み合わせて解析したところ、NHERF1 と結合する複数の膜タンパク質が同定され

た。そのなかで脂肪酸輸送トランスポーターのひとつである Fatty acid transport protein 5 (FATP5/Slc27a5)は、マウス肝臓膜画分において NHERF1 の発現リズムに応じて時刻依存的な 結合を繰り返していることが明らかになった。FATP5 は、mRNAおよび細胞全体でのタンパク 発現量に概日リズムが認められなかったものの、細胞膜における局在には概日性の変動を示し、

脂肪酸(オレイン酸)取込み活性にも膜局在のリズムと対応した時刻による差異が観察された。ま た、培養したマウスの肝由来細胞にNHERF1を強制発現させたところ、細胞全体でのFATP5の タンパク質およびSlc27a5 mRNAの発現量には変化は認められなかったが、細胞膜へのFATP5 の局在は有意に増加し、オレイン酸の取込み量も増大した。

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第2章 NHERF1をコードするSlc9a3r1遺伝子の発現リズム制御機構の解析

第2章では NHERF1 をコードする Slc9a3r1 遺伝子の発現リズムの制御メカニズムについて 解析した。マウスSlc9a3r1遺伝子の転写開始部位から上流 5,000bpと下流5,000bpには主要な 時計遺伝子の応答配列は認められなかったが、これら領域を含むルシフェラーゼレポーターベク ターを作成して検討を行ったところ、Slc9a3r1 遺伝子の転写活性は時計遺伝子 PER2 によって 抑制されることが明らかになった。PER2 は Slc9a3r1遺伝子の転写促進因子である p65 と結合 し、その転写活性化を周期的に抑制することで Slc9a3r1 遺伝子の発現に概日リズムを引き起こ していた。実際、Per2 機能不全マウス(Per2m/m マウス)においては、Slc9a3r1 mRNA および

NHERF1 タンパク質の発現リズムが消失し、いずれの時刻においてもその発現量は野生型マウ

スに比べて高値を示していた。また、Per2m/mマウスの肝臓において、FATP5の細胞全体での発 現量には野生型マウスと際は認められなかったものの、細胞膜への局在や脂肪酸の輸送活性はい ずれの時刻においてもPer2m/mマウスで高値を示していた。

第3章 足場タンパク質NHERF1の発現リズムに基づいた肝細胞物質輸送シミュレーションモ デルの構築

第3章では第 1章、 第 2 章の結果を踏まえて、足場タンパク質の発現リズムに基づいた肝細 胞物質輸送モデルの構築を行った。構築したモデルのシミュレートにより、PER2 やその制御下 にある各因子のmRNAやタンパク質の発現が概日リズムを示し、FATP5の基質の肝臓への取込 み活性に時刻依存的な差異を表現することができたが、NHERF1が膜へ局在化するには、その移 行を制御する補助的因子も必要であることが示唆された。そこで、NHERF1のリン酸化に着目し て検討を行ったところ、胆汁酸がその有力候補として同定された。胆汁酸(コール酸)はAKTシグ ナルの活性化を介してNHERF1の膜への局在を促進し、NHERF1による膜タンパクの足場形成

には Slc9a3r1 遺伝子の転写レベルにおける概日リズムとともに、肝臓内の胆汁酸含量の概日変

動も重要な役割を担っていることが明らかになった。

結論

本研究の結果から、足場タンパク質の発現リズムが細胞全体のトランスポーターの発現量には 影響を及ぼすことなく、膜への局在に時刻依存的な変動を引き起こし、その機能や基質となる化 合物(薬物)の体内動態にも影響を及ぼすことを明らかにした。このことは、「膜タンパク質の 細胞膜への局在リズム」という新たな概日時計の制御メカニズムの概念を提唱するものであり、

トランスポーターや受容体などを標的とした製剤技術の開発や薬物治療の最適化への応用のみな らず、生体リズムの異常によって引き起こされる様々な疾患の成因解明にも繋がる可能性がある。

以上、本研究で明らかにした概日時計のメカニズム概念が、疾患の治療や予防に役立つことを期 待したい。

参照

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