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ピーマンにおける多収性の生理生態的要因に関する 研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ピーマンにおける多収性の生理生態的要因に関する 研究

鍋島, 怜和

http://hdl.handle.net/2324/2236305

出版情報:Kyushu University, 2018, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 鍋島 怜和

論 文 名 ピーマンにおける多収性の生理生態的要因に関する研究 論文調査委員 主 査 九州大学 教授 北野雅治 副 査 九州大学 教授 尾崎行生 副 査 九州大学 准教授 江口壽彦 副 査 九州大学 准教授 安武大輔

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

飛躍的な多収性品種の育成が求められているピーマン(Capsicum annuum L.)においては,雑 種強勢によって親系統以上に旺盛な生育と高い生産性を示す雑種第 1 代(F1)が,商業的栽培 品種として用いられている。しかしながら,多収性に関与する形質と雑種強勢による多収化の要 因が明確になっていないため,多収性品種の開発には,多くの系統の個体群を対象にした圃場での 収量調査と選抜を繰り返す必要があり,膨大な労力と時間が費やされている。そこで,多収性に関 与する形質と雑種強勢による多収化の要因が明らかになれば,栽培初期や個体単位でも選抜が可能 となり,育種の効率化や迅速化が期待できる。本論文は,個葉,個体,個体群を対象にした光利用,

光合成,乾物分配などに関する生理生態学的方法論に基づき,多収性の選抜指標となり得る形質お よび雑種強勢による多収化の要因を解明したものである。

まず,高知県で栽培されているピーマン8品種を対象にして,形態,光合成,乾物分配の観点か ら多収要因の解明を試み,多収化には,果実への乾物分配率よりも,地上部総乾物生産量の増加が 大きく寄与していることを明らかにしている。また,高い地上部総乾物生産量が,個葉の光合成能 ではなく,群落構造や受光態勢が関与する群落光合成量の増加によってもたらされていることを明 らかにしている。さらに,形質に関しては,主茎径と主枝節数が,地上部総乾物生産量に対して高 い正の相関を示したことから,地上部総乾物生産量の高い品種の選抜指標として,主茎径と主枝節 数を用いることが可能であることを示唆している。

つぎに,4つのF1品種とそれらの親系統4系統(花粉親2系統,種子親2系統)を用いて,個葉 の光合成能における雑種強勢の効果について検証している。F1品種とその親系統間で,光強度に対 する光合成の応答に差異は認められず,また個葉の光合成能の決定因子である最大カルボキシル化速度 および最大電子伝達速度についても,F1 品種とその親系統間で有意差は認められなかった。すなわち,

個葉の光合成能における雑種強勢の効果は認められないことを明らかにしている。

そこで,雑種強勢による多収化は,群落構造と受光態勢により決定される群落光合成量の差違に 起因すると推察されたため,受光量および光合成について群落内の鉛直プロファイルの解析を試み ている。その結果,F1品種においては,親系統に比べて高い草丈と発達した葉層が,高い群落受光 量と群落光合成量,さらには地上部総乾物生産量の増加をもたらしたことが多収化の要因であるこ とを示唆している。また,F1 品種の多収化は,親系統よりも高い果実への乾物分配率にも起因して いることを明らかにしている。さらに,全ての F1 品種および親系統において,過剰な着果後に起 きる生理的な落花もしくは落果による収量の低下が観察されたが,収量の回復がF1品種で早かった ことから,F1品種では雑種強勢によって,茎葉だけでなく果実へも十分に乾物分配できるほどに群 落光合成量が増加したことで収量の回復が早められたと説明している。これらのことから,群落光

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合成量と地上部総乾物生産量も多収性育種における選抜指標になり得ることを示唆している。

以上,本論文は,個葉,個体および個体群での光利用,光合成,乾物分配などを対象にした生理 生態学的方法論によって,ピーマンにおける多収性に関与する形質および雑種強勢による多収化の 要因を明らかにし,効率的な多収性育種のための新たな選抜指標を提示したものであり,農業気象 学の発展に寄与する価値ある業績と認める。

よって,本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。

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