九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
有機EL素子の高効率化のためのデバイス構造設計に 関する研究
八尋, 正幸
九州大学総合理工学研究科量子プロセス理工学専攻
https://doi.org/10.11501/3180451
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第4章
直接評価法を用いた
光取り出し効率の見積もり
4.1 はじめに
面状発光デバイスからの発光を古典光学的にとらえると、 デバイス内で発光し た光の約80%が導波光として失われることになる。 実際、 デバイスの端面は明 るく光り、 その光量は前面から面状発光として放出される光量とほぼ等しく見え る。 そとで、 面状発光として得られる光量は全発光量のおよそ半分であることか ら取り出し効率を50%とする説67)がある。 しかし、 との説は導波光が陰極であ る金属面で吸収され減衰する等といった効果を全く考慮に入れていない。 少なく とも導波成分の一部は金属面での繰り返しの反射過程で損失している。 例えば、
可視光領域での金属電極の反射率を90%と仮定すると、 金属電極で10回の反射 によって、 0.910=0.34つまり、66 %の光は減衰してしまうことになる。 そのため、
正確に光取り出し効率を求めるためには、 発生した全光量に対する面状発光成分 を厳密に評価する必要がある。 さらに、 有機薄膜層の厚さがおよそ 100nmであ るのに対して、 図4.1に示したようにITO電極表面の凹凸は数nmであること が知られている。 従って、 有機界面も金属電極面も決して平坦ではなく、 有機薄 膜層やITO電極の厚さが可視光のちょうど1/2程度であるため古典光学的な見 積もりが正確であるかどうかといった問題がある。 しかし、 基板から取り出すこ とができない光の強度を見積もることは非常に難しく、 技術的にも困難である。
そこで本章では、 基板から取り出すことができない光が存在することを十分に認 識した上で、 基板全体から取り出すことができた光と、 基板正面へ放出される光 の強度比を積分球を用いて直接測定し、見かけの光取り出し効率として評価した。
この見かけの光取り出し効率と本来の光取り出し効率には、 強い相関関係がある と考えられ、 実測により求めた見かけの光取り出し効率の検討は、 デバイス設計 の上でも非常に重要である。 そこで、4.2節で見かけの光取り出し効率の膜厚依 存性と、4.3 節で見かけの光取り出し効率の発光面積および、発光輝度依存性に つ いての検討を行い、4.4節で本章をまとめた。
つU月i
(a)ITO電極表面のAFM像
(b)有機層(TPD (50nm) / Alq (50nm))を蒸着したITO電極表面のAFM像
図4.1 ITO電極表面のAFM写真
Seiko Instrurnents Inc. : Nanopics 1000で測定
-74 -
4.2 光取り出し効率の膜厚依存性 4.2.1 実験方法
本章においても、 これまでと同じく TPD とAlqを積層したこ層型素子を用い、
Alq層の膜厚を変化させた素子を作製した。本実験においては、 ITO基板のサイズ が大きな影響を与えると考えられるため、 特に基板のサイズに注意した。 まず、 基 板を12mmX12mm にカットし、 2mm幅のITO電極を基板中心にバターニング した。 2.3 節に従って、 基板を十分に洗浄した後、 この ITO基板上に有機材料と 基板の中心に2mm幅のMfSi生g電極を1本蒸着した素子を作製した。 測定は、 必 要最小量の銀ペースト(DOTITE TYPE D-550 :藤倉化成製)を用いてφ50μmの 金線を約3cm程度両電極に固定し、 金線と外部からの導線を絡ませることによっ て外部電極と接続した。 さらに積分球( 6インチ スペクトラロン積分球、 IS-060-
SL : labsphere製)内で導線の露出がないようにした。本測定も大気中で行った ため、 素子の 劣化が考えられる。 そのため、 前節と同様に駆動初期の急速な劣化を 避けた素子を用いて実験を行った。
測定系と測定方法を図4.2に示す。本実験で作製した有機EL素子はAlqからの 発光であり、 ブロードなスペクトルを示す上、 Alq層の膜厚によってスペクトルが 大きく変化する。 そのため、 波長感度補正が非常に困難なフォトダイオードでは正 確な測定ができないと考えられる。 そこで、 積分球のディテクタ一保持用の穴に取 り付けられていたフォトダイオードを、 感度補正されたマルチチャンネルアナライ ザー(PMA-11 :浜松フォトニクス製)に接続したφ1mmの光ファイバーに取り 替えた。 この保持穴には、 積分球内に導入された光が十分に積分球の壁面で反射さ れた後ディテクターに取り込まれるようにパッフル板が取り付けられている。 そこ で、 素子を10mA/cm2の定 電流下で駆動させて、 素子が十分に安定したところで、
基板正面での輝度を輝度計(LS
-110 :ミノルタ製)で測定した。 これをしo凶とす
る。 すぐに基板を積分球導入用の治具に取り付け、 基板全体を積分球の中に入れ、基板前面の光とエッジから放射される光の強度(ltotoal)をPMA-11 で測定した。 そ の後素子を取り出し、 再び、基板正面での輝度(L surface)を測定した。 さらに、 8mm
X8 mm の正方形の窓を開けた 0.3mm厚の白いマスクの中心に素子をセットし、
エッジからの発光が積分球に入らないように積分球の光導入用の穴に張り付けて、
基板正面へ放射される光の強度(Isurface)を測定した。 つづいて、 素子の位置の違い
Fhu 門/
による感度補正を行うため、 外側を白くなるまで紙ヤスリでこすり、 薬包紙を巻い て放射角を広くし た緑色発光ダイオードを用いて補正係数α(=ldiode,su巾cel
ldiode,total)を測定した 。
FO 門i
(1) Llotoal、 Lsurface
High current source measure umt
(2) 110同l
Optica1 fiber
βしvnr
n e a z
-nvd cd
H n u a
M
(3) Isurfa偲
Multichannel analyzer
Luminance colorimeter
〈
e rEa e LH ny Q凶。。-
mh φEE・
円」百即F1 2ζU 山=UR
High current source measure umt
Computer
High current source measure umt
Computer
図4.2 取り出し効率測定系の概略
- 77 -
4.2 .2 光取り出し効率の膜厚依存性
測定したデータを用いて以下の計算を行い、 光取り出し効率(Cf : couple-out factor)を計算した。
1 _.._�_.._ / L
F ゆce' .L..Isurface 、,_.
- 一 一-
vf - IIotal/Z70的l ハU
(4.1)
ここでは、 素子の劣化の影響を考え、 単位輝度当たりの発光強度の比を取った。
この測定では、 素子内での光の吸収や基板の外に出てこれない光 を考慮できないの で Cfを “見かけの光取り出し効率" と呼ぶことにする。
まず、 図4.3、 4に積分球を用いて測定し、 ピーク強度で規格化したELスペク トルを示す。 積分球を用いて測定した基板前面のELスペクトルは、 各方向のスペ クトルの積分値になっているにも関わらず、基板正面と同じ干渉の影響が見られる。
これは基板の正面方向で強い干渉が起こっていることを示す結果である。 また、 エ ッジ成分を含む基板全体から取り出されたELスペクトルは、 どの素子においても ほぼ一致した。 とれは、 干渉によって打ち消されたかに見える波長の光は、 制限さ れていない方向へ放射されていることを示している。 有機ELは屈折率の異なる媒 体によって発光領域が挟まれているため、 この現象は共振器によって制限された幅 射場内の電子系から放射される光の挙動としてとらえることができる。 図4.5に示 したように、 共振器の体積が発光波長に対して十分に大きな場合、 極限である自由 空間では輯射場の放射モードはあらゆる方向の成分を持ち、 連続に分布するが、 共 振器体積が減少するにつれて共振器内で存在が許容される輯射場のモード(共振モ ード)は離散的となる。 共振器内に励起された電子系が存在する場合、 励起状態か らの発光遷移は共振モードと結合して起こるため、 この共振モードの分配によって 発光特性が変化する。 例えば、 自然放出レート68),69)、 発光スペクトル幅38),68),70)、
発光パターン39),68),71) などの変化は、 実験的に観測されている。 図4.5に示したよ
(1) 励起された電子系が自由空間にある場合、 様々な方向の多数のモードと結 合して発光遷移が起こる。
(2) 有機ELの場合、 共振モードは面発光モード、 導波モード、 減衰モードなど に分離していると考えられる。 こ こでは、 干渉による制限 はないと仮定す る。
うに、
。。門i
(3) 共振器長(発光領域と金属電極との距離)を制御することによって、輯射場 を制限した場合、干渉によって増加した面発光モード数(実際には、モード 密度と呼ぶべきであるが、ある仮想的な単位体積を仮定し、モード数と表 現する。)より制限された面発光モード数が少ない場合、光取り出し効率が 向上する。 逆に干渉によって増加した面発光モード数より制限された面発 光モード数が多い場合、光取り出し効率は減少する。
と考えられる72)D 実際には共振器長が短くなると、共振モード数が減少するため さらに複雑な挙動を示すが、干渉効果を利用した光取り出し効率の変化は、面発光 モード数と非面発光モード数の分配数の差として理解できる。
そこで、図4.6 にAlq層の膜厚に対する見かけの光取り出し効率Cfをプロット した。 とのCfもAlq層の膜厚に依存し、KLで補正した外部量子効率と非常によく 似た関係を示すことが分かった。 Cfの極大極小を与える関係も、第2章と同様に 干渉強度の極大極小を与える(2.45)、(2.4 6)式で表されることが分かった。 そこ で、基板正面へ取り出すことのできる光強度をSurface、基板のエッジから取り出 される光強度をEdge とすると、図4.6よりAlq層が50nmの時、極大値Cf=O.35、
175nmの時、極小値Cf=O.1 6を取るので、
Surface
=0.35
SurfiαceキEdge
(4.2)
ゆえに、
Edge = 1.86 x Surfiαce (極大値)
(4.3)
同様に、
Edge = 5.25 x Suゆce (極小値) (4.4)
となり、エッジから取り出される光は、基板正面から取り出される光の 1.86倍か ら5.25倍の問で大きく変化することが分かった。
この見かけの光取り出し効率と外部量子効率より、有機ELの内部量子効率を定 性的に検討することができると考えられる。 内部量子効率が Alq 層の膜厚によっ て変化しないとすると、見かけの光取り出し効率とKLで補正した外部量子効率は、
同じ比率を持つ曲線になると考えられるが、実際には、Alq 層が薄い領域で曲線は 大きく異なった。 そこで、非常に大まかな計算ではあるが、見かけの光取り出し効 率と補正した外部量子効率を用いて内部量子効率を求めた。 図4.7 に求めた内部量
ハヨ門i
子効率とAlq層の膜厚の関係を示す。 図3.19に示したように実際の有機ELの発 光領域はTPDとAlqの界面だけに集中しているわけではなく、 界面から指数関数 的な分布を持っている。 この分布は、 励起子の生成位置の分布と励起子がその寿命 の聞に拡散するために起こると考えられている45)。 さらに、 有機ELに積層された 金属電極は励起子から電極へのエネルギー移動37) を誘発して、 無輯射失活を促す 原因となるため、 励起子と金属電極が近いほど無輯射失活が起こりやすいと考えら れている。 つまり、 励起子が多数生成されるTPDとAlqの界面と金属電極が離れ るほど内部量子効率は増加する。 また、 膜厚が厚くなると、 素子に注入されたキャ
リアが再結合せずに素子を通り抜ける数が減少するので、 再結合効率は向上して内 部量子効率はさらに増加するか、 最大値100%を達成して一定となることが予想さ れる。 しかし、 その結果Alq層が100nmまで効率は増加し、 その後減少した。 こ の見積もりは、 内部量子効率も膜厚によって変化する67) ことを示唆している。
- 80-
1.2
1
d
)
,咽国・.・、
0.8
岡
・主‘ 由国 ー白
回 圃 ー
、 0.6
0.4 0.2
。 300
1.2 1
、3・〆
0.8主 同 吻u 回
副d ・
回
n
4
0 • 6 0.4 0.2
。 300
400 500 600
TPD(50nm)/Alq( dnm)
ー一ーー 25nm
- 50nm
-ーーー 75nm
-ーーー100nm
-ーー一 125nm -150nm
-ーーー175nm
700 800
Wavelength (nm)
図4.3 基板前面のELスペクトル
400 500 600
TPD(50nm)/A1q( dnm)
一一 25nm
-50nm
-ーーー75nm
-ーーーlOOnm
-一ーー125nm -ーーー150nm
-ーーー175nm
700 800
Wavelength (nm)
図4.4 基板全体から取り出された光のELスペクトル
- 81-
(a)自由空間
…・…・…一一一一一
面発光モード
?//// 円竺 ぷぷ 溢経ぷ ぷ鎗 :::::::::::::::::::::::::
�H��l �ll������ 磁 ぷ 主 興 ミ対 綾 子?? 了
ド:::::::::::::�説:�::�::\::;1::::::::::::::::::轄射場 減衰モード
(b)分配された有機ELのモード
(c)干渉によって制限された輯射場
面発光モードに多くの放射モードが再分配されると光取り出し効率が向上する
図4.5 電子系と輯射場の結合
- 82-
(ポ)凡な回ω湾出ωggaze-何回』sg-何回。沼田ω険因。hv
。0 00
1.4 1.2
0.6 0.4 0.2 1 0.5
0.4 0.3 U 0.2 0.1
0 100 150 200 250
Thickness of
Alq(nm)
00 。HV
50見かけの光取り出し効率の膜厚依存性
・:見かけの光取り出し効率(Cf) A:KLで補正した外部量子効率
図4.6っοQU
〆
、ー.、国司
J
6.0
志
副同副炉 5.0u u
、
4.0
g
g =r 司= 固3.0
2.0
4委
ー回‘司 ロ』曲ロ 圃ー
金属電極へのエネルギー移動の影響 0.0
。 50 100 150 200 250
Thickness of
Alq (nm)
図4.7 KLで補正した外部量子効率と見かけの光取り出し効率Cfから求めた 内部量子効潔
- 84-
4.3 光取り出し効率の 発光面積依存性
図4.8に基板正面での 干渉強度を与える(2.44 )式とAlqの蛍光スペクトルから 求めた発光領域と反射面の距離に対する干渉強度の計算値を示す。 その結果、 発光 領域と反射面との距離が大きくなると干渉強度は1 に収束した。 図より干渉強度l の時の膜厚は、 d=115nm、195nm. .・であることが分か る。 この 収束値を全反射 条件から求められる光取り出し効率20%と考え、 前節で求めた図 4.6 の 115nm の時の見かけの 光取り出し効率を 20%に置き換えると、 これらの関係より光取り 出し効率の おおよその値と、 基板から取り出せない光が どの程度存在するの か見積 もることができる。 まず、 図4.6 と図4.8から計算した光取り出し効率の膜厚依存 性を 図4.9 に示す。 との結果、 光取り出し効率は干渉によって27%から11%の値
を 取ることが分かつた。次に、 基板正面へ取り出すことのできる光強度をSurface、
基板のエッジから取り出される光強度をEdge、 吸収などによって素子 から出てく ることができない光強度をxとすると、 図3.5 より115nm の時の見かけの 取り出 し効率Cf=0.274 なので、
Surface
=0.2'台f
Surfiαce十Edge
(4.5 )
ゆえに、
Edge = 2.65 x SUlプαce
(4.6)
である。 そこで、 全反射条件から求められる光取り出し効率を20%と考えると、
Surface
=0.2 Surface + Edge + x
(4.7 )
となるので、(4.6)式を代入すると、
x =1.35 X SUlプαce
(4.8)
となり、 素子内から出てこれない光は基板正面から取り出される光の 1.35倍もあ ることになる。 つまり、 基板正面へ取り出される光1(20%)に対して、 エッジ方 向への放射が2.65(53%)、 基板から取り出すことができない光が1.35(27%)も
存在することになる。 カッコ内は、 有機 EL内部で発生した光 (100%)に対する 分配比である。 この値は、 有機ELにおいて基板正面へ取り出される光が17.5%、
エッジ方向への放射が 31.5%、 基板から取り出すことができない光が 51%と見積 もった報告値7ωとは異なるが 、 いずれにしても基板から取り出すととができない
「DQU
光が多量に存在しているといえる。 そこで、 乙の大きな光消失の原因を金属電極に よる吸収ではないかと考え、 光取り出し効率の発光面積依存性を検討した。 導波光 が、 大きな吸収係数を持つ金属電極を反射しながら導波すると、 発光面の端から遠 くなる ほどエッジ発光成分への寄与は小さくなると考えられる。 金属電極による吸 収が支配的であるなら、 図4.10に示したように大きな発光面積を持つ素子ほど、
基板正面で取り出される光とエッジから取り出される光強度の比は相対的に大きく なることが予測される。 さらに、 図2.15に示したように本実験で用いたTPDと Alqの積層型素子の外部量子効率には、 駆動電流密度依存性があるため、 駆動条件 と光取り出し効率の関係が存在する可能性がある。 そこで、 発光面積を変化させた 素子を作製し、 見かけの光取り出し効率を測定した。 さらに、 素子の駆動条件を変 化させ、 光取り出し効率の電流密度依存性についても検討した。
- 86-
d=80 nm Max=1.96 2
戸ーヘ
z
f
u 15国ω ロロ
・圃圃
m刀m
-n =ζu E・AEnu 同副 1疋 mはい .,,・・・且 w的
匂圃 1
。 b
g0.5 ...
園田圃
800 1000
Aリ。リ
図4.8 干渉強度の膜厚依存性(計算値)
ヴioo
30
、、戸 々
, .圃
〆h、
岩山むロ
25
20
15
10
。 50 100 150 200 250
Thickness of Alq (nm)
図4.9 光取り出し効率' の膜厚依存性
- 88-
ITO電極
面発光
導波光に 寄与する部位
Active area
一辺を10倍にすると ・
-発光面積は1∞倍になり、 素子の 辺(導波光に寄与する部位)は40 倍 になるので、 取り出し効率は5/2倍 になる。
光取り出し効率の発光面 積に依存 性がある?
正面輝度を10倍にすると・. .
- 面 発光、 導波光の強度はそ れぞれ10 倍となるので、 取り 出し効率は変化しない。
しかし、 外部量子 効率 には電 流密度依存性がある。
光取り 出 し 効 率の 輝 度 依 存 性 (電流密度依存性)はない?
図4.10 光取り出し効率 を 変化させる因子
QU QU
4.3.1 実験方法
実験に用いた素子の構造は、 TPD(50 nm)とAlq(50 nm)を積層した素子であ る。 基板サイズと、 ITO電極のバターニングはすべて図4.11 の様に固定し、 発光 面積の調整はMgAg 電極のサイズを変化させることにより行った。 発光面積は 1 X1、 2X2、 3X3、 7X7、Cmm2)となる様にMgAg電極用のシャドウマスクを準 備し、 このマスクを通してMgAg 電極を蒸着して調整した。 本実験では、 前節と 同じ積分球を用い、 素子毎のELスペクトルの変化がないのでデ、イテクターには積 分球に付属 している有効受光面積 5X5mm2 のシリコンフォトダイオード(SDA- 050-V : labsphere製)とシステムコントローラー C SC-5000 : labsphere製)を 用いた。 素子の駆動電流密度は、 0.1、 1.0、 10、 100CmA/cm2)となるように調 整し4点測定を行った。 その後、 実際の発光面積をノギスを用いて測定した。
4.3.2 光取り出し効率の発光面積および発光強度依存性
図4.12、13 に見かけの取り出し効率Cfの発光面積依存性と輝度依存性を示す。
発光面積、 輝度共に光取り出し効率に依存性は見られなかった。 この結果より、 発 光面の端に近い部位のみが、 エッジ発光成分に大きな影響を与えているわけではな く、 エッジ発光強度は全発光面積に比例していることが分かった。 つまり、 エッジ から取り出される光は大きな吸収係数を持つ金属電極で多数回反射して減衰しなが ら導波するのではなく、 ITO透明電極やガラス層を主に導波していることが考え られる。 また、 駆動電流の強度によって有機EL内での発光領域が若干移動するた め、 光取り出し効率が変化するという報告73)があるが、 本実験では駆動電流の影 響によるエッジ発光成分と基板正面への発光成分の比に明確な変化がないことを確 認した。
- 90-
1.5mm .�一一一 12mm
1.5mm 一一一惨 4
2mm
12mm
内
lmm.・. ・ .・.・.
Fm ・ ・ ・・ 4b
一一
・ 一・1 ・
一・
醤.-J.・.・.
0. .・.・.
・. Tt
15mm 15mm
MgAg電極 1mm
ActÎve area:2X 2mm2 ActÎve area: 1 X lmm2
7mm
m m
今コ
ll・-
1 a ll
- 一一一一一一一
ActÎve area:7 X 7mm2
ITOのバターニングと実験に用いた素子のサイズ ActÎve area:3 X 3mm2
図4.11
11よ
QU
0.5 同7・・v
ー-
..
ー
. . . .••••
E 同r
0.4ト
会 目
(E
0.3トhv ) h
ー-
..
ー-
. . active紅白: lxl: 2A2
:3X3 :7X7
- A ・ ・
0.2
J-
0.1ト
A p、 .u ρ、v a r
・1L O ω Ja-- m m 、.F句,'M
100且
. .
0 1
見かけの光取り出し効率の発光面積依存性
図4.12
- A ・
‘ •
• •
•
active area: 1 X 1 :2X2 :3X3 :7X7
- 企 . .
0.5
0.4
0.1
ハ》 )』 ('
0.30.2
100
0.1 1 10
Current density (mAJcm2)
0 0.01
見かけの光取り出し効率の電流密度依存性
つム Qd
図4.13
4.4 本章のまとめ
前章で、 外部量子効率はAlq層の膜厚との関連性が強く、 発光領域から直接基 板 の外へ向かう光と金属電極で反射された反射光との干渉によって変化するとい うことが分かつた。 4.1節で述べたように、 有機EL素子内で発生した全発光強 度を測定することは非常に困難であるので、 本節では積分球用いて、 基板から取 り出すことができた全ての光強度と面発光強度を直接測定し、 その比を見かけの 光取り出し効率として評価を行った。 以下に本章の結果をまとめる。
(1) 積分球を用いて測定した面発光のELスペクトルは、 空気中へ放射された
全方向のスペクトルの積分になっているにも関わらず、 基板正面方向の 干渉の影響が非常に強く現れることが分かった。 また、 干渉によって基 板 の正面方向でのスペクトルは変化しでも面発光成分とエッジ発光成分 を合わせたELスペクトルの形状は膜厚に依存しないことが分かつた。 そ の結果、 干渉効果を利用した光取り出し効率の向上は、 干渉によって変 化し ない全発光モード数のうち面発光モード数を増加させることで達成
できることが分かつた。
(2) 見かけの光取り出し効率も、 外部量子効率と非常によく似た膜厚依存性
を示 した。 これ は、 外部量子効率の膜厚依存性が光取り出し効率に強く 影響されていたことを示す結果である。
(3) 光取り出し効率の直接測定において、 光取り出し効率は、 27%から11%
の問で変化することが分かった。 また、 エッジから取り出される光が基 板正面から取り出される光の1.86倍から5.25倍もあり、 膜厚によって 大きく変化することが分かった。 さらに基板から取り出すことができな い光を考慮すると、 基板正面へ取り出される光20%に対して、 エッジ方 向への放射が53%、 基板から取り出すことができない光が27%も存在す ることになり、 多量の光が基板から出てくることができないことが分か った。
円JQd
第5章
光取り出し効率の向上への試み
5.1 はじめに
有機ELの光の取り出し効率を向上させる試みは、 基板表面にマイクロレンズを 取り付けたり36)、 波長と同程度の直径を持つ微小球を有機ELの表面に張り付けて 散乱を利用する76)など数例報告されている。 第4章で述べたように、 光取り出し 効率を向上させるために干渉効果を利用することは、 全放射モード数に対する面発 光モード数を積極的に増加させることと同義であることから、 非面発光モード数を 減少させることによっても同様に光取り出し効率の向上の効果を得ることができる と考え、 以下のような検討を行った。
図5.1 に示した通り、 有機ELでは、 面発光モード、 ガラス基板導波モード、ITO 電極導波モード、 有機層導波モード、 減衰モードの5つのモードが存在すると考 えられる。
(1)ガラス基板導波モード
ガラス基板を取り除くと、 この導波モードは無くなる。
(2) ITO電極導波モード、 有機層導波モード
有機EL を構成するのに不可欠な層である。 しかし、 膜厚を薄くすることに よって、 モード数を減少させることができる。
(3)減衰モード
金属電極による光の吸収は、 ガラス基板側での反射率を下げ、 多重反射を抑 えることでモード数を減少させることができる。
面発光モード以外の放射モードを非面発光モードと呼ぶことにする。 上に示し た方法で、 非面発光モードを減少させるとモードの再分配が起こることが予想され、
そのとき、 減少したモードの内いくらかでも面発光モードに再分配されると光取り 出し効率が向上することが期待できる。 非面発光モードを減少させることによって 現れる効果は、 以下に示した簡単な思考実験77)によって理解できる。n を各層の 屈折率とし、 有機層をllorg釧C、 ガラス基板をllglass、 空気をllair、 本章で用いたエア ロゲル層をllaerogelと表す。(llorg訓c>ng加>ll前三弓llaerOgel)
(a) ガラス基板上に非常に厚い有機層があるとき
llorganic / llglass界面とllg臨/llair界面で臨界角より大きな放射角を持つ光は、
それぞれの層を導波する導波光となる。臨界角はスネルの法則より、llorganiC とllairの屈折率差によって決まる。
「ひハ叫U
(b) 厚い有機層からガラス基板を取り除く
臨界角によって面方向に放射される光は制限され、 光取り出し効率は(a) と変わらない。(臨界角は、 norga凶cと nairの屈折率差によって決まる。) (c) 有機ELのように、 ガラス基板上に非常に薄い有機層(発光波長の2分の
l以下)があるとき78)-80)
有機層を導波可能な成分が激減する。しかし、 nglass>nair条件が変わらな いため、 光取り出し効率は若干向上するだけにとどまる。また、 面内方 向には全く制限がないため、 破線矢印で表したO次の導波モード(TE。モ ード、 TM。モード)を無くすことはできない。
(d) 薄い有機層からガラス基板を取り除く
導波成分がO次のモードだけとなり、 その他の光は面発光モードになる と考えられる。そのため、 光取り出し効率の大幅な増加が期待される。
しかし、 薄い有機層を空気中に保持することは困難である。
(e) 屈折率が非常に小さい(naerOgel .空気)基板に薄い有機層を保持したとき (d)と同じ効果が期待できる。
(f) ガラス基板と薄い有機層の聞に屈折率が非常に小さい層をはさんだとき スネルの法則により、 一度屈折率の小さな媒体に取り出された光は、 屈 折率の高い層に入っても再び全て取り出され、 結局(e)と同じ効果が期待 される。
そこで本章では、 非面状発光成分を減少させることによって基板正面からの面発光 成分を増加させ、 光取り出し効率の向上を試みた。5.2節に実験方法を示し、 5.3 節で屈折率が1.0と空気とほぼ同等の屈折率を持つ基板を用いて蛍光強度を測定し、
この基板を用いた有機EL素子の試作について述べた。最後に5.4節で本章をまと めた。
円。Qd
面発光モード
ガラス基板
導波モード ITO透明電極
導波モード 機層導波モード ガラス基板
極
層 一問 機 外 有M4
減衰モード
図5.1 有機EL内の放射モード
月iQd
Glass substrate
nnrl't�ni organlc Organic layer
nglass nair
(b)
zero order wavegide mode---
・ー---._
、E.,,,TE ,EEE‘
- -・P
(e)
---ーー�.
naerogel図5.2 光取り出し効率を飛躍的に増加させる手法とその原理
n6 Qd
5.2 実験方法
屈折率が 1.03 と空気とほとんど変わらないシリカ多孔質基板(エアロゲル基板
81) .松下電工製)を用いて、 ガラス基板導波モードを無くすことを検討した。 エア ロゲ、ルは屈折率や密度が非常に小さいにも関わらず、 真空中で有機物を蒸着するこ とが可能であったが、 堅く脆い材料であるので取り扱いに注意を要した。
本実験では、 ガラス上にエアロゲルを 10μm製膜した「エアロゲル基板」、 エ アロゲル基板上に ITO電極をスバッタしたíITO エアロゲル基本反」、 1cmの厚い エアロゲルだけで作製された「エアロゲルバルクJを、 疎水化処理したものを用い た。 参照基板には一般のガラス基板を用いた。
これらの基板を用いて、 蛍光強度の比較と有機EL の外部量子効率の比較を行っ た。 エアロゲルを用いた基板は、 有機溶媒および、水に非常に弱く、 溶解してしまう ので、 参照基板ともにuvーオゾン洗浄のみ行った。 蛍光強度の測定には、 これら の基板上にAlqを100nm真空蒸着して用いた。 有機ELは基板上に TPDとAlq をそれぞれ60nm、 MgAg電極を150nm真空蒸着して作製した。 まず、 蛍光強度 の測定系を図5.3に示す。波長400nmのGaNのLEDレーザー(N E OARK DIODE IムSER LDT-4005 :日本科学エンジニアリング製)を基板正面に対して、 450 の 方向から照射し、 φ1mmのピンホールを二枚用いて LE D レーザーの照射径を絞 った。 蛍光強度は、 基板正面にセットしたφ1mmの光ファイパーを通してマルチ チャンネルアナライザー ( PMA-100:浜松フォトニクス 製) で測定した。
Qd Qυ
Rotational stage
\連
Sample holder
170mm
φlmm Pinhole
50mm
50mm 20mm
ー... ... ....
φ2mm Pinhole
λex=400 nm
図5.3 蛍光強度測定系の概略図
-100 -
Coupler
恥1ultichannel
OpticaI fiber
5.3 屈折率 1.0の基板を用いたデバイスの蛍光強度と有機ELの試作
図5.4 にAl qを 100nm 蒸着したエアロゲルバルクと厚いガラス基板に紫外光 を照射した際の写真を示す。 ガラス基板では、 導波成分が強いために基板のエッジ が明るく光り、 エアロゲルバルクには導波光が見られずAlq の蒸着面だけが明る く光る様子が明確に分かる。 図5.5 にエアロゲル基板とガラス基板の導波光の様子 を示す。 エアロゲル基板の導波光はほとんど観察されず、 10μm のエアロゲル層 によってガラス基板が導波路になっていない様子がはっきりと分かる。 続けて、 図
5.6にITOエアロゲル基板とITOガラス基板を用いて作製した有機EL の導波光 の様子を示す。 エアロゲル基板上に ITO電極を直接スバッタすることは非常に困 難であった。 そのため、 シリカ表面処理層によってエアロゲル表面を処理した。 こ れらの膜厚が厚くなると、 屈折率の高い ITO電極(屈折率約 1.95)とシリカ表面処 理層(屈折率約1.45)の導波層が形成されてしまうが、 導波光は観測されなかった。
図5.7に石英基板を用いて測定した蛍光強度で規格化した各基板の相対蛍光強 度を示す。 エアロゲル基板で相対蛍光強度は 2倍、 ITOエアロゲル基板もほぼ2 倍程度を示した。 しかし、 シリカ表面処理層、 ITO電極が厚くなると導波層とし
て機 能するようになるため、 相対蛍光強度は幾分小さくなった。 突出している図中 A-S100 は測定時に何らかの誤差が含まれたと考えられる。 この結果により、 ガラ ス基板導波モードを無くすことによって、 光取り出し効率が向上することが明らか となったD
そこで、 glass/ aerogel(10μm)/ シリカ表面処理層(100nm)/ITO(200nm)の基 板を用いて有機EL を作製した。 結果を図5.8'"'"'12に示す。 参照基板に見られる低 電圧域での大きな電流は、 発光には寄与しない漏れ電流である。 このように、 スバ ッタによって製膜した ITO電極は市販されているものよりも性能が非常に悪かっ た。 これは、 一般にスバッタによって性能のよい ITO電極を製膜することが非常 に難しい上、 エアロゲル基板は溶媒を用いて洗浄できないととが原因である。 その ため、比較にのためオ、ノン洗浄のみを行った面抵抗10Q/口の、市販されているITO 基板(三容真空製 )を用いた参照用EL も作製した。 しかし、 ITOエアロゲル基板 では、 ITO電極の性能が悪いにも関わらず、 市販のITO基板より外部量子効率が 向上する可能性があることが分かった。 また、EL スペクトルに変化は見られなか った。 現在、 性能のよい ITO電極の作製を試みている段階であるが、 これまでに
- 101 -
試作した基板を用いたEL素子の最高外部量子効率を図5.13に示す。 これらの外 部量子効率は、ガラス基板上にITO電極を製膜した参照ITO基板と比べて1.7�1.8
倍に達した。
図5.14に示したように、 有機ELからガラス基板を取り除くと、 最も楽観的に 見積もっても面発光強度は5 倍になり、 第4節で述べた概念により、 導波成分を 面発光として取り出せるようになると3.65倍になることが予想される。 実際には、
ガラス基板を取り除いた光取り出し効率は蛍光強度の比較と有機ELの効率から、
2倍程度にしかならないことが分かつた。 しかし、 有機ELの基板表面に屈折率の 異なったマイクロレンズを配置した場合、 導波光強度は40%近く減少し、 基板正 面での光取り出し効率は約3 倍になったと言う報告がある36)ことから、 今後ITO の性能がさらに向上したと考えても3倍程度にしかならないとも考えられる。
本実験では、 効率が2倍にとどまる理由を解明することはできなかったが、 非 面発光モードを減少させることによって光取り出し効率を向上させることが可能で あることが分かつた。 また、 ガラス基板を取り除いた場合の放射モードの分配比が どの様になるのか明らかにすることはできなかったが、 効率の向上比は予想を大き く下回り、 ガラス基板を取り除いてガラス導波成分を無くしても、 素子から取り出 すことが出来ない光が多量に存在していることが示唆された。
-1 02 -
(a)基板側から励起
エッジは光らない
わずかに屈折率の分布があるた め、 基板底面の発光が屈折して見 える
(b)Alq蒸着面側から励起
Alq蒸着面
uv-ランフ
導波光によってエッ ジが明るく見える
左図より、 エアロゲルバ ルクでの蛍光強度が強い
ことが明らかに分かる。
文15.4 エアロゲルバルクと厚ガラス基板での蛍光強度の比較写真
- 103 -
エアロゲル基板においてわずかに導波光が見えるが、 ガラス基板と比べてその強度 は非常に小さい。
|文15.5 エアロゲル基板とガラス基板での蛍光強度の比較写真
エアロゲル基板では導波光が見えないのに対して、 普通のガラス基板を用いたも のでは明るい導波光が見える。
� 5.6 エアロゲル基板とガラス基板を用いて作製した有機EL素子の写穴
- 104 -
Quartz A
A-IT050 A-ITOI00 A-IT0200 Á-S50
Á-S5仏IT050 A-S5かITOI00 A-S5仏IT0200 A-SI00
A-SI00-IT050 A圃S100-ITOI00 A-SI00-IT0200 Glass-IT050 Glass-ITO 100 Glass-IT0200 Glass
。 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Intensity (a.u.)
図5.7 石英基板の蛍光強度で規格化した様々なエアロゲル基板での相対蛍光強度
A:エアロゲル基板(glass (lmm) /エアロゲル層(10μm) ) S:シリカ表面処理層
Glass :ガラス基板(lmm) ITO: ITO透明電極
Quartz:石英基板(lmm)
記号末尾の数値は各層の膜厚(nm)を示す口
-105 -
N� 102
2担国
100l ....・・ ・ ー ー・ー・・ー・一・園田園 一 聖 E EE E 企
•
. dh 雷 -
企 dh' a . -司
b
田= 園副
ah
企
10-2
t ·企
4-h企
; 叶 企
Â
p月、司 ) . 田、=民、u 、
- エア
. 参照基板ロゲル基板
Â
市販ITO基板。 2 4 6 8 10 12
Voltage のう
図5.8
エアロゲル基板を用いた有機ELの電流密度-電圧特性
105 104 103 102 101 100 10・1 10・2。
• I ・ E ・ E ・ ・ ・ I • • • I ・ ・ 盲 E
2
A
企
111: ・ EEa . I I Â � E25
. Â - 1
.. �
.Â
可•• 1
4 6 8 10 12
Voltageのう
図5.9
エアロゲル基板を用いた有機ELの発光輝度-電圧特性
-106 -
105
F〆司、 司
、
菌
u
、・・
コ、
4
町、
103
102 101
10・1 10・2 10・3
• エアロゲル基板 . 参照基板 . 市販ITO基板
A A
10・2
•
•
•
10・1 100 101 2 Current density (mAJcmM)
← 企
102 103
図5.10 エアロゲル基板を用いた有機ELの発光輝度-電流密度
3 、
,5
『圃・h4、 2盟 gu
副h1.5
0冨E回
5・4
帽0
51
r
嗣
ー
‘ 帽 固』ω 岡ー
。
10・3
A
10・2
. ・ .
• •
A
... 1 ...
I 品
•
10・1 100 百T 102 103
Current density (mAJcm2)
図5.11 エアロゲル基板を用いた有機ELの外部量子効率一発光輝度特性
-107 -
1.2 1
0 300
一一エアロゲル基板
ーーーー・参照基板 一…・市販lTO基板
今回・伺)h忠明何回ω恒国]【
0.8 0.6 0.4 0.2
400 500 600 700
Wavelength (nm)
800
図5.12 エアロゲル基板を用いた有機ELのELスペクトル
- 108 -
. .
H圃伺 4・ d 司圃司圃咽圃圃
E
エアロゲル基板・
(1. 39%)
. .,
1.5
企v a A・ A・ A・
-A' AV A-
-圃
•
•
ノ 企 /
参照基板1
/
(0.765%)参照基板2(0.799%)
同.
103
市販ITO基板• •
•
“」 .
102
且
10・1 100 101
Current density (mAJcm"')
4砂
o [
- ・ ・ ・ ・
…L...a10・J 10・h
』
ー
(30)kC固ω沼田畑ωE55田町二何回』ωロ日間
1
0.5
現在までに試作したエアロゲル基板を用いた有機ELの外部量子効率
-109 - 図5.13
Glass Organic layer MgAg cathode
Cコ
0%
九 7%
% () 作U % 23%
1) 光取り出し効率が全反射条件だけで制限されていると考えると、 面発光とし て取り出せない光は導波光となっている。 ガラス基板を取り除くことによっ てこれらの光は面発光成分として取り出すことができると考えられるので、
光取り出し効率は約5倍になることが期待できる。
2)面発光成分、 導波光成分、 基板から取り出すことが出来ない成分の比が第4章 に従う場合、 導波光成分だけを面発光成分として取り出すことができると考え
ると、 光取り出し効率は3.65倍になると考えられる。
※但し、 TE。、 TM。導波成分は導波光として残る。
図5.14 ガラス基板を持たない有機ELの光取り出し効率の検討
-110-
5.4 本章のまとめ
本章では、 有機EL内部で発生した光が、 面発光モードや導波モードなどのモー ドに分配され、 そのうち、 面発光モードに分配された成分だけが有機ELの発光と して観察できると考え、 光取り出し効率を、 面発光モード数と全放射モードの比と して定義した。 全放射モードに変化が無い場合、 非面発光モード数を積極的に減少 させることによってモードの再分配を促し、 光取り出し効率の向上の可能性を検討 した。 さらに、 屈折率が1.03 の基板を用いて有機ELを試作・評価して、 外部量 子効率向上の可能性について検討した。 以下に本章の結果をまとめる。
(1) 屈折率が1.03と空気とほぼ同じ屈折率を持つエアロゲル層をITO電極とガ ラス基板の間に導入すると、 ガラス基板を導波する光が無くなり、 エアロ ゲル基板では全く導波光が観察されなくなることを示した。
(2) エアロゲル基板とガラス基板上の有機薄膜の蛍光強度を比較した。 その結 果、 エアロゲル基板を用いた場合、 蛍光強度は約2倍となり、 ガラス基板 導波モードを無くすことによって、 その成分の一部を面発光成分として取 り出すことが可能であることを示した。
(3) エアロゲル基板上に有機ELを作製する際、 屈折率の高い ITO透明電極や シリカ表面処理層を積層すると、 これらの層が導波層として機能するため、
蛍光強度はエアロゲルだけの基板と比べてやや減少してしまうことが分か った。
(4) エアロゲル基板を用いたデバイスの効率は、 最も楽観的に見積もって5倍 となると考えられる。 しかし、 現段階での効率は、 効率は導波光を無くす ことによってガラス基板を用いた 素子よりも2倍程度にしかならなかった が、この高効率化の手法は、有機EL素子に用いる材料には依存しないので、
非常に有用な技術であると考えられる。
-tム1E4 114
第6章
駆動条件による効率の変化
6.1 はじめに
発光素子の実用化を議論する場合、 ルーメン/ワット(lm/W)で表される視感パ ワー効率は、 素子に印加した電力に対してどれだけ光を取り出せるかを示す重要な 効率である。 視感パワー効率は、 実際に測定できる電流密度J(A/m2)と電圧V (V)、
発光輝度L(cd/m2)を用いて、
lm/W=π .L/J.V
(6.1)
と表され、 (6.1)式に電圧が含まれることから駆動電圧を下げれば視感パワー効率 が高くなることが分かる。 実際に駆動電圧を下げる方法としては、
1) キャリア移動度の高い材料を用いる。
2) 電極からのキャリア注入障壁を低くする。
3) 膜厚を 薄くする。
と言ったことが挙げられ、 これらを中心に研究が進んでいる。 しかし、 有機ELを 長時間定電圧駆動すると、 電流と輝度の低下が起こり、 定電流駆動すると電圧上昇 と輝度の低下が起こる。 つまり、 素子を長時間駆動することによって、 素子が劣化 し、 効率が減少する。 したがって、 キャリア移動度や注入障壁の改善など、 直接有 機薄膜の性能の向上を目指すと同時に、 どの様な材料系を用いても起こる素子の劣 化について理解することは、 効率を向上させる上で非常に重要である。
そこで、本章では素子を駆動させた際に起こる劣化について検討を行った。まず、
6.2 節で、 有機ELの内部電界モデル ( 劣化モデル)について説明した。 そして、6.3 節と 6.4節で、 素子を駆動した際のEL特性の経時変化及び、 素子の回復特性につ
いて6.2節の内部電界モデルを用いて検討した。6.5節で本章をまとめた。
ηJ 1i -i
司司『
6.2 有機ELの内部電界モデル
有機EL の劣化の一つに、電極の剥離や有機材料の結晶化又は化学変化によってダ ークスポットと呼ばれる非発光部が発現することが挙げられる82)。 これは、有機材 料や有機 材料と金属界面での物理的・化学的変化を伴った回復不可能な劣化であり、
一度劣化が進行してダークスポットが現れると、この非発光部位を再び発光させるこ とはできない。 しかし、繰り返し素子の特性測定をしている間に一度電圧を切り、再 び電圧を印加すると素子の性能が向上するといったことや、図6.1 に示したように駆 動初期の発光輝度をほぼ一定にしても、駆動方法によって素子の寿命が異なるといっ たことが分かつてきた。 そこで、有機材料が本質的には絶縁性の誘電体であることに 立ち帰り、図 6.2 に示した有機EL の内部電界モデル83)ー87)を提案し、劣化の説明を 試みたo ITO電極をフラスに電圧を印加した時を順バイアスとする。
(1) バイアスが印加されていない作製したばかりの有機EL素子では、有機材料が 持つ永久双極子はランダムな向きに存在し、素子中にはイオン性の不純物も 混在しているため、素子に内部電界は現れない(Eo=O)。
(2)
素子を駆動させるために順バイアスEforwardを印加すると、外部電界のために 永久双極子は配向し、イオン性不純物は対向電極に向かつて移動するため、内部電界Elが徐々に形成されてゆく。 そのため、実効電界Ee行は減少し、素 子に注入される電流と効率は減少する。
EejJ = E戸rward-
�
(6.2)(3) 順バイアスの印加を中断すると、内部電界Elを駆動力として、双極子の配向 は自然緩和し、イオン性不純物は拡散する。 そのため、素子内に形成された 内部電界E2は徐々に減少する。 再び素子を駆動させると、実効電界は、(6.3) 式のようになり、駆動を中断したのの時点よりIE1-E2 Iだけ実効電界が増加 しEL特性は回復する。
EejJ = E戸川'ard -
Ez ,Ez
< E1(6.3)
(4) )11貢バイアス印加中断時に逆バイアスEreverseを印加すると、 I Ereverse + El Iを駆 動力として永久双極子の配向とイオン性不純物の移動が起こり、内部電界E3 を形成する。 さらに電界の形成が進むと駆動電界と同じ向きの内部電界を形 成する。 そのため、駆動電界より大きな実効電界Eeffが生じるo
E ejJ = E forward +尽 (6.4)
この、内部電界モデルを用いて6.3節以降の検討を行った。
- 114-
200
右目。
匂ω
�
- -- - - --_ --�
100 ,. ←
国
,... ・ - ・・り-・・』
伺 ト /
.盟 十 alteróating voltage
� 50 �
6V-帆100H川町500/0 ーconst�nt current density
よF 5mA/cmz
Time (hr)
図6.1 様々な駆動パターンでの有機ELの寿命
(ITO/TPD (50nrn) / Alq (50nm) /MgAg)
F0 1i -i
ext emal a forward bias 2)
spontaneous recovery
E1
-・
- HH。 ー EenEtoward-E2 (E2 <El)
GOO +
G ee
G ee-
EenEtow.訂d+E3 EenEtow,紅d-El
E3 undera
negative bias
有機ELの内部電界モデル
Etoward
海惨 +
1)
図6.2
6.3 実験方法
本章 においても、 一般的なTPD とAlqを積層した素子と 、 発光層に 9,10- Bis(4-c yan ostilil)anthrac ene(BSA-1)38)を用いた二層型素子を作製した。 素子の 作製法は2.3節に準じた。 また、 6. 2節で述べた内部電界モデ、ルにおけるイオン性 不純物の効果を検討するため 、 任意の不純物の導入が容易な湿式法で製膜した素子 も作製し た。 湿 式 法 は 、 ホール輸送層 にPoly (9-vinilcarbazole) (PVCz、 Mw 1,100,000、 Aldrich 製)を、 溶媒にジクロロメタン(特級、 和光純薬工業製)を用 いて溶媒 1rrù当たり1 4mg のPVCzを溶解させた溶液を、 孔径0.5μmのディ ス ポーザブルフィルターを通しながら洗浄したITO基板上に塗布し、 スピンコータ ー (lH-D3、 MlKASA製)で30秒間 4000r pm で製膜した。 様々な材料を検討し た結果、 イオン性不純物はPVCz との製膜性と溶解性において優れた過塩素酸リ チウム(特級、東京化成工業製)を用いた87)。不純物はスピンコート溶液に予めPVCz に対する重量%で添加しておき、 同様にしてスピンコート法で製膜した。 PVCz を 製膜したITO基板を蒸着装置にセットし、 2.3節と同様に、Alq層とMgAg電極 を蒸着し素子を作製した。 素子の構造を以下に示し、 本章で新たに用いた材料の構
造式を図6.3 に示した。
ITO /TPD ( 50nm) / Alq ( 50nm) /MgAg ( 150nm) ITO/TPD (50nm)/ BSA-1 (50nm)/MgAg (150nm) ITO/PVCz ( 70nm)/ Alq ( 50nm)/MgAg ( 150nm)
ITO/PVCz: i onic impurity ( 70nm)/ Alq ( 50nm)/MgAg ( 150nm)
N
BSA-1 PVCz
図6.3 化学構造式
定電圧駆動 、 定電流駆動時のEL特性の経時変化測定は、 2.3節で説明した測定 系を用いて行った。 6.2節で仮定した双極子の配向や物質の移動を伴う特性の経時 変化はある程度の時間 が必要と考えられるため 88),89)、 バイアスの印加時間を分単
位に設定した。
門/寸ti--
6.4 電圧駆動時の駆動方法と効率の関係 6.4.1 定電圧駆動時のEL特性の経時変化
図6.4にTPD/AlqのEL特性の経時変化を示す。印加バイアスパターンは図6.4
(a)に従った。 素子を定電圧で駆動するとEL特性は劣化した が、 O V又は逆バイア スを印加して素子を保存するとEL特性は 回復した。 その 回復量は、 逆バイアスを 印加した方が大きく、 劣化と回復は繰り返し起こることが示唆された。 そこで、 素 子の連続駆動時 及び 回復時に EL特性 がどの様に変化しているのかを確かめるため、
1測定点当たり 7μ秒でO から 1 0Vまで電圧を印加して電流-電圧特性を測定した。
その結果を図 6.5に示す。 バイアスの印加パターンは図 6.5(a)に示した。 o印は測 定点を表す。 素子の駆動時間と共に、 電流一電圧特性も劣化し、 自然回復及び逆バ イアス印加によって 回復していることが分かつた。 (c)の3→5と (e)の 7→9を比べ ると、 逆バイアス印加によって EL特性の 回復量 が大きくなることが分かつた。 次 に、 図6.6に発光層をAlqからBSA-1 に変化させた場合、 及び図6.7にホール輸 送層を TPDから PVCzに変化させた場合の EL特性の経時変化を示す。 どちらの 場合についても、 素子の駆動と共に特性の劣化 が見られ、 自然回復及び逆バイアス 印加により特性は 回復することが分かつた。 TPD とAlq を積層させた場合と 同様 に逆バイアスを印加した場合に素子特性の大きな 回復が見られた。 これらの結果よ り、 素子に用いる材料によらず有機材料の双極子の配向によって 6.2節の内部電界
モデルで説明される劣化と回復が起とることが示された。
そこで、次にイオン性不純物の影響を検討した。素子に過塩素酸リチウムをPVCz に対して、 O、 0.1、 0.5、 1.0wt%添加した際のEL特性の経時変化を図6.8に示す。
イオン性不純物の添加 量によって、 EL特性の劣化 及び 回復量は大きく増加した。
特に、 逆バイアスの効果は大きく、 駆動初期の特性を大きく越えることがあったD これは逆バイアスによって)11貢バイアスと同じ向きの内部電界が形成されていると考 えることができ、 内部電界モデルのイオン性不純物の影響と逆バイアス効果 が明ら かになった。
- 11 8-
『咽『
6000
( a)印加電圧パターン
5000 2000 3000 4000
Time (s) 1000
6 4
ー2 -4
2
。
S)ωM53
6
5
3.5 4.5 4 5.5
(NEω\司自)hzmgω司冨ωとEh》
6000 5000
2000 3000 4000 Time (s) 1000
3 0
130
100
80 90 120 通 110宙ω
ω ω g g
g z
-
6000 5000
2000 3000 4000 Time (s) 1000
70 0
定電圧駆動時のEL特性の経時変化
(TPD (50nm) / Alq (50日n) /MgAg) 図6.4
-119-
5
。 -5 15
10
S)副凶S目。〉
3500 3000 2500 1500 2∞o
Time (s) 1∞o
500 -10
0
11
十十+
10
(e)
5 7 8 9
Voltage σ〕
6 150
50 0 4 300
迫
5
5 200 b 皇制 唱 Z E
3
』250
1∞
11
hu
9 10
7 8
Voltage (\勺 5 6
350 300
1ω 50 250 2∞
150
(HEU通E)左前E芝居ES
ー0-9
""""Ó-I0 -仁トー11
(f)
150
50 3∞
刊6 2却
�
2∞;
100 ー<>ー3
""""ó- 4 -0-・5 300
(c)
150
50 1伺
"'6
250ミ= 2∞
&
Z � 唱
と』
3
11 10 7 8 9
Voltage (\勺 6
5 0 11 4
10 7 8 9
Voltage (\ぅ 6
0 5 4
ー<>四5 ーモ�6 -仁ト7 300
(d)
250
1ω 50 200 150
(Hgミg)主明52zEbc
Voltage (\ぅ
連続駆動時の電流密度-電圧特性
(ITO/TPD (50nm) / Alq (50日n) /MgAg)
11 10 6 9
図6.5
5
。 4
- 1 2
0
-司司司『
(a)印加電圧パターン
6
-4 4 2
。 -2
S)ωωs-z
3500 3000 2500 1500 2000
Time (s) 1000
500 -6
0
。
に
(b)電流密度の経時変化
、
60 50 40 30 20
(NEω\吋E)kmzagω唱冨ω-EEhv
3500 3000 2500 1500 2000
Time (s) 1000
500 10
0
(c)発光輝度の経時変化
00 0 8\
00
160 140 120 100 80
(NE通ω)gSEEs-
60
3500 3000 2500 1500 2000
Time (s) 1000
40 500 0
(50nm) /MgAgのEL特性の経時変化 (50日n) /BSA-1
ITO/TPD 図6.6
4Vの)11員バイアスを印加した。
約100cd/m2の輝度を得るため、
- 121 -
『可
( a)印加電圧パターン 10
。
-5 5
S)ω凶53
-10
3500 3000 2500 1500 2000
Time (s)
1000 -15 500
0
。
。 6
�
5.5ミEω
545
訴、世盟国
当3.5
-
gω 』』
ð
2.54
3 5
3500 3000 2500 1500 2000
Time (s)
1000 2 500
0
3500 3000 2500 1500 2000
Time (s)
1000 500 200
50
AO OV
150 100
(NE\唱ω)85SEE-
(50nm) /MgAgのEL特性の経時変化 9Vの)11質バイアスを印加した。
約100cd/m2の輝度を得るため、
(70nm) / Alq ITO/PVCz
図6.7