企業財務 報告 における気候変 動関連 情報 の開示 川 概要
全文
(2) 第56巻. 1は. 第3号. じ. め. に. 最 近,地 球 の 気 候 変 動 を 要 因 と した様 々な 企 業 活 動 へ の 潜 在 的 影 響 に対 す る投 資 家 の 関 心 が 高 ま りつ つ あ る こ とを 背 景 に,気 候 変 動 に関 連 した企 業 情 報 が 投 資 家 の 意 思 決 定 に有 用 な 情 報 の 一 つ と して 資 本 市 場 で の 開 示 を 要 請 す る国 際 的 な 動 きが あ る。 気 候 変 動 を 要 因 とす る経 営 へ の 物 理 的 影 響,規 制 強 化,一 般 社 会 の 評 判,消 費 者,取 引 先 や 金 融 機 関 の 行 動 変 化 な ど は,特 定 の 企 業 に と っ て は よ り強 く潜 在 的 リス ク と して 認 識 さ れ るで あ ろ う し,気 候 変 動 の 緩 和 や 適 応 は重 要 な 経 営 課 題 の 一 つ にな りつ つ あ るか も しれ な い。 最 近 で は,国 際 的 な 投 資 家 等 が 気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示 を 要 求 す る顕 著 な 行 動 も見 られ,ま た 財 務 報 告 で の この 情 報 開 示 を 可 能 とす る よ うな 報 告 フ レー ム ワー ク も提 案 され て お り,こ の よ うな 投 資 家 等 の 情 報 要 求 の 高 ま りを 受 けて,制 度 開 示 の 議 論 に相 当 の 影 響 が 及 ぶ こ と も 予 想 され る。 も と よ り,将 来 の 企 業 財 務 内容 に重 大 な 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 の あ る企 業 を 取 り巻 く リス ク は,投 資 家 等 の 意 思 決 定 に有 用 な 情 報 と して,財 務 報 告 で 適 切 に情 報 開 示 す る こ とが, 先 進 諸 外 国 や 我 が 国 の 財 務 報 告 制 度 上 要 請 され て き た。 と こ ろが,現 状,気 候 変 動 に関 す る情 報 開 示 の状 況 を み る と,温 室 効 果 ガ ス(GHGs)排. 出量 が著 し く多 い 業 種 の 企 業 間 で. も,記 述 箇 所,記 載 内容,情 報 の 詳 細 さの 程 度 や リス ク記 載 の 有 無 に ば らつ きが 見 られ, 企 業 間 比 較 や 企 業 評 価 に有 用 な 程 度 の 信 頼 性 の 高 い十 分 な 情 報 開 示 が な され て い るか を 疑 問 視 す る見 方 も あ り,こ の 問 題 の 解 決 の た め に は明 瞭 な 開 示 基 準 や そ の た めの 様 式 の 必 要 性 が 議 論 され て き た。 しか し,現 状,国. 内外 で 一 般 に認 め られ た個 別 の 報 告 基 準 が い まだ. 確 立 して い る と は言 え な い状 況 で あ る。 さ らに,要 求 され る開 示 項 目の 中心 と も いえ る温 室 効 果 ガ ス排 出 量 情 報 に関 して は,測 定,報. 告 お よ び検 証(MRV)シ. ス テ ム の整 備 が 必. 要 で,情 報 の 信 頼 性 を 確 保 す る た めの 企 業 統 治 や 内部 統 制 整 備 な ど経 営 戦 略 の 問 題 も喫 緊 の 重 要 課 題 とな りつ つ あ る。 よ って この 問 題 につ いて 深 く検 討 す る こ と は,投 資 家 に有 用 な 気 候 変 動 情 報 の 信 頼 性 を 高 め る た めの 制 度 開 示 に関 す る政 策 的 議 論 の 基 礎 を 提 供 す る上 で 非 常 に重 要 と いえ る。 本 稿 で は,ま ず,気 候 変 動 に関 す る情 報 開 示 が 要 求 され る背 景 とな る最 近 の 国 内外 の 規 制 動 向や 状 況 を概 括 し,次 に気 候 変 動 関 連 情 報 開 示 の 意 義 を 検 討 し,そ して 提 案 され た 主 な 報 告 フ レー ム ワー クを 吟 味 して い る。 そ して 投 資 家 等 の 意 思 決 定 に有 用 な 情 報 開 示 の た めの 重 要 な 課 題 を 検 討 す る。 ‑416(1458)一.
(3) 企 業 財 務 報 告 に お け る気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示(川 原). H気. 1気. 候 変 動 を 巡 る 国 内 外 の 規 制 動 向. 候 変 動 に関 す る国 際 的 知 見. 最 近 の 地 球 温 暖化 に よ る 自然 現 象 が 人 為 的要 因 に よ り引 き起 こ され た との 科 学 的知 見 と,そ. の 経 済 社 会 へ の 影 響 に 関 す る 経 済 的 知 見 は,気. 候 変 動 を 問 題 と す る 見 方 に 強 く影 響. して い る も の の 代 表 と 言 え る 。 国 際 的 科 学 者 団 体 で あ る 「気 候 変 動 に 関 す る 政 府 間 パ ネ ル (IPCC)」. か ら2007年. 変 動 の 主 な 原 因 が,主. に 公 表 さ れ た 「第 四 次 評 価 報 告 書. 気 候 変 動2007」. に お い て,気. 候. に化 石 燃 料 の 燃 焼 に よ る二 酸 化 炭 素 な ど温 室 効 果 ガ ス排 出量 の 増 加. お よ び大 気 中濃 度 上 昇 に よ って も た らされ た人 為 的 な 地 球 温 暖 化 で あ る とす る統 一 的 な 科 学 的 見 解 が 示 さ れ て い る(1)(2)。 ま た,英 す る ス タ ー ン ・ レ ビ ュ ー)」 で は,地 算 さ れ,気. 国の. 「ス タ ー ン ・レ ビ ュ ー(気. 候 変 動 の 経 済 学 に関. 球 温 暖 化 が 引 き起 こす 将 来 の 重 大 な 経 済 的影 響 が 試. 候 変 動 は き わ め て 深 刻 な 地 球 規 模 の 危 機 で あ り,世. 要 と の 見 解 が 示 さ れ て い る(3)。ま た,気. 界 規 模 で の 対 策 が 今 す ぐ必. 候 変 動 に対 す る強 固 か つ 早 期 の対 策 を行 う こ と に. よ る 便 益 は そ の コ ス トを 上 回 る と の ス タ ー ン ・ レ ビ ュ ー の 見 解 は,興 変 動 の 及 ぼ す 経 済 的 側 面 を 評 価 し て い る も の と し て,IPCCに. 味 深 い こ と に,気. 候. よ っ て 高 く評 価 さ れ て い. る ④。. 2温. 室 効 果 ガ ス削 減 に関 す る国 際 交 渉. 気 候 変 動 の 主 な 原 因 と され る温 室 効 果 ガ ス排 出量 削 減 を 巡 る主 な 国 際 交 渉 の 最 近 の 動 向 を み る と,今. 後 の 企 業 活 動 を 取 り巻 く法 規 制 強 化 の 可 能 性 が 伺 え る 。 気 候 変 動 を 巡 る 主 な. 国 際 交 渉 は,1992年6月 1994年3月. の. 「環 境 と 開 発 に 関 す る 国 際 連 合 会 議(UNCED)」. に 発 効 し た 「国 際 連 合 気 候 変 動 枠 組 条 約(UNFCCC)」. 年,UNFCCCの. 「締 約 国 会 議(COP)が. 行 わ れ,1997年12月. 際 的 法 的 拘 束 力 の あ る 「京 都 議 定 書 」 が 議 決 さ れ,2005年2月. で 採 択 さ れ,. に始 ま る と いえ る。 毎 の 京 都 で のCOP3で. は,国. に 発 効 し て い る(5)。「京 都 議. (1)IPCCは1988年 に 「国 際 連 合 環 境 計 画(UNEP)」 お よ び 「世 界 気 象 機 関(WMO)」 に よ り設 立 され た 団 体 で,気 候 変 動 の 最 近 の 状 況 や そ の 潜 在 的 な 環 境 や 社 会 経 済 的 結 果 に 関 す る科 学 的 見 地 を 提 供 す る評 価 組 織 で あ る。 そ の 活 動 が 認 め られ2007年 ノー ベ ル 平 和 賞 を ア ル ・ゴア と と もに 受 賞 して い る(IPCC,http://www.ipcc.ch/)。 (2)CoreWritingTeam,etal.(eds.)(2007). (3)HerMajesty'sStationeryOffice(2006). ωIPCC(2008),p.53. (5)我 が 国 は2002年5月 の 国 会 承 認 を 経 て,2004年6月 に国 連 に受 諾 書 を 寄 託 し 「京 都 議 定 書 」 を 批 准 して い る。 「京 都 議 定 書 」 に つ い て は 環 境 省 「 排 出量 取 引 イ ンサ イ ト」(http://www.ets‑ japan.jp/.)参. 照。 ‑417(1459)一.
(4) 第56巻 定 書 」 で は,2008年 (7%)な. か ら2012年. ま で の5年. 第3号 間 に,日. 本(6%),欧. 州 連 合(8%),米. 国. ど 先 進 国 ご と に 「温 室 効 果 ガ ス 」 の 総 排 出 量 の 削 減 義 務 が 掲 げ ら れ て い る(6)。し. か し排 出 量 当 時 世 界 第1位. の 米 国 は,そ. 全 体 の 約3割. ら に 議 定 書 発 効 後 の 経 済 成 長 が 著 し い 中 国 や イ ン ドな ど 新 興 国. に 過 ぎ ず,さ. の 後2001年. に 離 脱 し,削. の 削 減 義 務 が 定 め られ て い な い 状 況 に あ る 。2009年12月 15回 締 約 国 会 議(COP15)」. で は,先. 進 国,途. 減 義 務 国 の 排 出量 は世 界. に コペ ンハ ー ゲ ンで 行 わ れ た. 「第. 上 国 お よ び 新 興 国 間 の 交 渉 は環 境 問 題 と い. う よ り 国 際 的 政 治 経 済 会 議 と し て 注 目 さ れ た と 言 え る(7>。COP15は. 京 都 議 定 書 に続 く. 2013年 以 降 の 温 室 効 果 ガ ス 削 減 の 新 た な 枠 組 み を 決 め る 重 要 な 会 議 と して 位 置 付 け ら れ て い た が,法. 的 拘 束 力 を 伴 う 新 議 定 書 の 採 択 期 限 も 未 定 の ま ま,2010年. の メキ シ コ会 議 へ 議. 論 が 先 送 り に さ れ た 。 結 局,「 コ ペ ンハ ー ゲ ン 合 意 」 の 採 択 に も 至 らず,各. 国 が合 意 案 に. 留 意 す る こ と と さ れ た(8)。 しか し,我. が 国 は,「 京 都 議 定 書 」 で の 削 減 目標 が 不 遵 守 の 場 合 に は 様 々 な 厳 し い 措 置. を 受 け る こ と と な る(9)。ま た2009年9月 年 比 で2020年. ま で に25%削. 合 意 案 で も2010年2月. に 鳩 山 首 相 に よ り国 連 気 候 変 動 首 脳 会 合 で. 減 」 の 条 件 付 き 目標 が 示 さ れ て い る ⑩。 さ ら に コ ペ ン ハ ー ゲ ン. ま で に 排 出 量 削 減 目 標 の 提 示 が 求 め られ て い る 。 よ っ て,国. 括 的 枠 組 み の 完 成 を た だ 待 つ だ け で な く,国 ら,途. 「1990. 連の包. 内の 排 出量 取 引 市 場 な ど制 度 基 盤 を 整 え な が. 上 国 と 相 互 承 認 が 可 能 な 国 際 的 枠 組 み を 提 示 して い く こ と の 重 要 性 も 指 摘 さ れ て い. る(ID。す な わ ち,温 室 効 果 ガ ス 削 減 に 関 す る 国 際 交 渉 に お い て,依 に 向 け た 国 家 や 企 業 の 対 応 が 求 め られ て お り,企. 然,排. 出量 削 減 目標 達 成. 業 活 動 を 取 り巻 く関 連 規 制 強 化 の 重 要 な. 背 景 と いえ る。. (6)京 都 議 定 書 の 温 室 効 果 ガ ス と は,二 酸 化 炭 素(CO2),メ タ ン(CH4),一 酸 化 二 窒 素(N20), ハ イ ドロ フル オ ロ カー ボ ン(HFC),パ ー フ ル オ ロ カ ー ボ ン(PFC),六 ふ っ化 硫黄(SF6)の6 種類を指す。 (7)会 議 の 詳 細 につ い て,UNFCCC,http://unfccc.int/2860.php.参 照。 (8)コ ペ ンハ ー ゲ ン合 意 案 は,科 学 的 見 地 に立 ち今 後 の 気 温 上 昇 を 産 業 革 命 前 か ら2度 以 内 に抑 制 す る こ と,先 進 国 は2020年 に 向 けた 排 出 削 減 目標,途 上 国 は 排 出 抑 制 行 動 につ い て そ れ ぞ れ2010 年2月 を め ど に提 示 す る こ とが 求 め られ,先 進 国 か らの 資 金 提 供 を 受 けた 途 上 国 の 排 出 抑 制 行 動 は 自 ら検 証 す る こ と,先 進 国 支 援 に よ る行 動 は国 際 的 に検 証 す る こ と,途 上 国 へ2010年 か ら2012 年 に総 額300億 ドル を 支 援,お よ び2020年 ま で毎 年1000億 ドル の 資 金 提 供 や 途 上 国 の対 策 を 支 援 す る 「コペ ンハ ー ゲ ン ・グ リー ン気 候 基 金 」 の 創 設,ま た コペ ンハ ー ゲ ン合 意 の 評 価 を2015年 ま で に実 施 す る こ とな どが 主 な 内 容 と され た 。 (9)2001年 のCOP7で 「マ ラケ シ ュ合 意 」 が採 択 さ れ,次 約 束 期 間 か ら不 遵 守 分(排 出超 過 分)の L3倍 が差 し引 か れ る な ど の厳 しい措 置 手 続 き が定 め られ て い る。 ⑩ 外 務 省(2009年)。 qD澤(2009年)。 ‑418(1460)一.
(5) 企 業 財 務 報 告 に お け る気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示(川 原) 3温. 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 測 定,報. 告 お よ び 検 証(MRV). 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 情 報 開 示 に あ た り,排 の 定 量 化 や 測 定 な ど,い 準 や 方 法 は,国. わ ゆ る 「炭 素 会 計(カ. ー ボ ン ・ア カ ウ ン テ ィ ン グ)」 に 関 す る 基. 際 的 に あ る い は 地 域 ご と に,様. 開 発 さ れ て い る 。 代 表 的 な も の と して,ま 援 す る た め,国 の 開 発 や,定. 出 量 の 適 切 な 把 握 が 最 も 基 礎 と な る が,そ. 々 な 目 的 や 対 象 に 対 応 して,様. ず,IPCCは1996年. 家 の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 ・吸 収 目 録(イ. 量 化 の 指 針 を 提 供 し て き た が,2006年. 界 資 源 研 究 所(WRI)と. よ りUNFCCCの. 活動を支. ンベ ン ト リ ー(inventory))の に は5冊. 果 ガ ス 排 出 ・吸 収 目 録 の た め の ガ イ ドラ イ ン(2006年 ま た,世. 々な 項 目で. か ら な る 「IPCC国. 方法 別温室効. 版)」 を 公 表 し て い る ⑫。. 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 世 界 経 済 人 会 議(WBCSD). に よ っ て 設 立 さ れ た 温 室 効 果 ガ ス ・プ ロ ト コ ル ・イ ニ シ ア チ ブ(TheGreenhouseGas ProtocolInitiative)か め の2つ. の. そ して,国. 「GHGプ. 業 や フ゜ロ ジ ェ ク トで の 温 室 効 果 ガ ス 算 定 お よ び 報 告 の た. ロ ト コ ル 」 が 公 表 さ れ て い る⑱。. 際 標 準 化 機 構(ISO)か. ど に 関 す るISO14064お 述 の 「GHGフ. ら は,企. ら は,温. よ びISO14065の2つ. 減 方 法 お よび 認 証 な. の 規 格 が 公 表 さ れ て い る ω。 こ れ ら は,前. ゜ロ ト コ ル 」 と の 互 換 性 が あ る も の と さ れ て い る ⑮。ISO14064は. ス 排 出 量 の 算 定 と 検 証 の た め の 規 格 で,温 告,お. 室 効 果 ガ ス の 排 出,削. よ び 検 証 等 に 関 す る3つ. 温室効果ガ. 室 効 果 ガ ス 情 報 お よ び 資 料 の マ ネ ジ メ ン ト,報. の 規 程 か ら な る(1④ 。ISO14065は. 温 室 効 果 ガ スの 検 証 等 を 行. う機 関 に対 す る要 求 事 項 を 規 定 す る もの で あ る。 GRIの ンG3」. 公 表 す る 持 続 可 能 性 報 告 フ レ ー ム ワ ー ク の 第3版,い で は8つ. イ ドラ イ. の エ ネ ル ギ ー お よ び 温 室 効 果 ガ ス 排 出 関 連 の 指 標 を 提 供 し て い る ⑰。. そ の 他,UNFCCCで ズ ム(CDM)や. わ ゆ る 「GRIガ. は,「 京 都 議 定 書 」 の 「京 都 メ カ ニ ズ ム 」 で の ク リー ン 開 発 メ カ ニ 共 同 実 施(JI)の. 67の 個 別 方 法,14の. 活 動 の 排 出 量 測 定 に 適 用 可 能 な,9つ. 結 合 方 法 を 承 認 して お り,別. の 一 般 的 方 法,. 途34方 法 も 検 討 中 と い うq8)⑲ 。. ⑫"20061PCCGuidelinesforNationalGreenhouseGasInventories"(IPCC(2006))参 q3)"TheGreenhouseGasProtocol:ACorporateAccountingandReportingStandard" (GreenhouseGasProtocolInitiative,the(2004))お よ び"TheGreenhouseGasProtocol: TheGHGProtocolforProjectAccounting"(GreenhouseGasProtocolInitiative,the. 照。. (2005)参 照 。 な お,地 域 用 の 算 定 基 準 は見 られ な いが,こ の他 に,土 地 利 用 等 個 別 項 目対 応 の ツー ル も複 数 開 発 され 公 表 され て い る。 「GHGプ ロ トコル 」は 「企 業 に よ る算 定 と報 告 の た め の 基 準(TheGreenhouseGasProtocol:ACorporateAccountingandReportingStandard (RevisedEdition))」 を 指 す 。GreenhouseGasProtocolInitiative(2004)参 照。 ωISO(http://www.iso.org.)参 照。 ⑮ な お,地 域 用 の 規 格 は 見 られ な い 。 ⑯ 検 証 等 に は,妥 当 性 確 認(validation)や 検 証(verification)を 含 む。 ⑰GRI(2006). ⑱ 「京 都 議 定 書 」 は排 出 削 減 目標 達 成 の た め の 補 足 的仕 組 み と して,第6条(共 同実 施(JI)), 第12条(ク リー ン開 発 メ カニ ズ ム(CDM)),お よ び 第17条(国 際 排 出量 取 引(IET))の3つ の/ ‑419(1461)一.
(6) 第56巻. 第3号. こ れ ら と は 別 の 自 治 体 向 け の 基 準 と し て,国. 際 環 境 自治 体 協 議 会(ICLEI)等. が米国の. 大 都 市 を対 象 に温 室 効 果 ガ ス排 出量 や その 他 気 候 変 動 に関 す る デー タを 自主 的 に公 開 す る プ ロ ジ ェ ク トを2008年. よ り開 始 して い る が,そ. の た め に 開 発 さ れ た プ ロ トコ ル が あ る 。 こ. れ は 参 加 約30自 治 体 の 事 務 事 業 か ら排 出 さ れ る 温 室 効 果 ガ ス の 算 定 方 法,報. 告指針お よび. 政 策 フ レ ー ム ワ ー ク の 詳 細 か らな る ⑳。 こ の よ う に,温. 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 測 定(算. 定),報. 告 お よ び 検 証(MRV)に. 関 す る基. 準 や 方 法 に は,国 家 あ る い は 組 織 や プ ロ ジ ェ ク トと い う対 象,報 告 や 検 証 の 基 準 を 含 む か, 強 制 的 か 自主 的 か な ど,様. 々 な 相 違 点 が 見 ら れ る⑫1)。 よ っ て,使. に 情 報 開 示 す る こ と が,開. 示 情 報 の 信 頼 性 や 比 較 可 能 性 の 基 礎 と して 重 要 と な る 。 温 室 効. 果 ガ ス 排 出 量 は,燃 さ れ る た め,計. 用 した基 準 や方 法 を 適 切. 料 使 用 量 な どの 活 動 量 や 排 出係 数 を 用 い た一 連 の 計 算 過 程 を 経 て 算 定. 算 過 程 で の 算 定 お よ び 集 計 方 法,ま. た は 排 出 係 数 の 選 択 に よ り,開. 示 され. る 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 数 値 に 影 響 す る か ら と い う⑳。 つ ま り削 減 量 か ら の 排 出 権 は 机 上 で 算 定 さ れ,物 け れ ば,物. 理 的 に 存 在 せ ず,そ. の 測 定,報. 告 お よ び検 証 に厳 格 な ル ー ル が 適 用 され な. 量 情 報 の 信 頼 性 に 関 す る 潜 在 的 リ ス ク が あ る と 指 摘 さ れ て い る㈱。 し か し,こ. れ ま で の 持 続 可 能 性 報 告 に お け る 自 主 的 公 表 に お い て も,GHGプ. ロ トコル な ど どの よ う. な 基 準 や 方 法 を 利 用 して 排 出 量 が 算 定 さ れ た か の 情 報 開 示 は そ れ ほ ど 多 くな い と い う⑳。. 4国. 内 の 地 球 温 暖 化 関 連 法 規 制 と温 室 効 果 ガ ス排 出 量 の 情 報 開 示. 国 内 の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 報 告 制 度 に つ い て は,地 様 々 な 地 球 温 暖 化 関 連 法 規 制 に お い て 見 られ,情 い る とい え る。 これ ま で の主 な 関 連 法 制 に は 球 温 暖 化 対 策 に 関 す る 基 本 方 針 」(1999年),「 「地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 」(1998年)が. \「京 都 メカ ニ ズ ム(Kyotomechanisms)」. 球 温 暖 化 対 策 を推 進 す る た め の. 報 開 示 を 促 進 す る 重 要 な 役 割 を 果 た して. 「地 球 温 暖 化 防 止 行 動 計 画 」(1990年),「. 地. 地 球 温 暖 化 対 策 推 進 大 綱 」(1998年,2002年),. あ り,こ. れ らを 引 き 継 い で. 「京 都 議 定 書 目 標 達 成 計. を設 け て い る。. q9)ACCAandGRI(2009),p.15. ⑦ ①"LocalGovernmentOperationProtocol"(CaliforniaAirResourcesBoard,eta1.(2008)) 参照。 ⑳ 「検 証(verification)」 は,排 出 削 減 量 の検 証 を 指 す 。 排 出削 減 量 は,排 出 削 減 プ ロ ジ ェ ク ト が な い場 合 を 想 定 した ベ ー ス ラ イ ン排 出量 とそ の プ ロ ジ ェ ク トか らの 排 出量 の 双 方 の 差 額 で あ り,両 方 を 検 証 す る こ と にな る。 これ と は別 に,「 認 証(certification)」 減 量 を 文 書 で 認 証 す る(裏 書 きす る)こ とを 指 す 。 ⑫ 日本 公 認 会 計 士 協 会(2009年a),p.26。 ⑬ 三 菱 総 合 研 究 所 編(2008年),pp.64‑65。 ⑳ACCAandGRI(2009),p.38。 ‑420(1462)一. は,検 証 され た 排 出 削.
(7) 企業財務報告にお ける気候変動関連情報の開示(川 原) 画 」(2002年)が. 策 定 され て い る㈱。. まず,「 地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 」 に お け る 「温 室 効 果 ガ ス排 出 量 の 算 定 ・報 告 ・公 表 制 度 」 は,温 室 効 果 ガ ス を一 定 量 以 上 排 出す る者 が,毎 年 度,排 出量 を算 定 し,国 に報 告 し, 国 は報 告 され た 情 報 を集 計 して公 表 す る制 度 で,自 主 的 温 暖 化 対 策 の 取 組 を 促 進 す るた め,排 出量 情 報 の 公 表 お よ び可 視 化 の 手 法 が 採 用 され て い る。2009年4月. 施 行 の この 改 正. 法 で は,事 業 者 お よ び フ ラ ン チ ャ イ ズ単 位 で の 温 室 効 果 ガ ス排 出量 の 算 定 お よ び報 告 な ど 対 象 範 囲 が 拡 大 され て い る。 この 他 の 温 室 効 果 ガ ス排 出量 報 告 と して,1979年. 以 降2008年. まで5回 改 訂 され た 「省 エ ネ ル ギ ー法 」 の も とで の 定 期 報 告 制 度 もあ る⑳。2010年4月. 施. 行 の この 改 正 法 に お いて 規 制 対 象 範 囲 が 事 業 所 単 位 か ら多 店 舗 展 開 企 業 な ど企 業 単 位 に拡 大 され て い る⑳。 温 室 効 果 ガ ス排 出量 の 情 報 に限 らず,広 範 囲 な環 境 情 報 の 公 表 に つ い て は,「地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 」 に お いて,企 業 等 が 排 出抑 制 等 の 指 針 を 策 定 し,公 表 す る こ と等 を 通 じて, 自主 的積 極 的 に環 境 に配 慮 した 事 業 活 動 に取 り組 む こ と が推 進 され て い る。 同様 に,「 環 境 配 慮 促 進 法 」 で も,特 定 の大 企 業 者 等 が 環 境 報 告 書 の公 表 に努 あ る こ とが 示 さ れ て い る㈱。 「京 都 議 定 書 目標 達 成 計 画 」で も,温 室 効 果 ガ ス排 出量 削 減 に関 す る積 極 的 な 情 報 開 示 が 促 さ れ て い る⑳。 中 で も,日 本 経 済 団 体 連 合 会 の 自主 行 動 計 画 の 参 加 事 業 所 の温 室効 果 ガ ス排 出量 に 関 して,「 地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 」 に 基 づ く個 別 事 業 所 の 排 出量 デ ー タ を 活 用 し,先 進 的 な 取 組 事 例 を 定 量 的 に示 す な ど,情 報 開 示 を 積 極 的 に促 進 す る 旨が 示 され て い る。 温 室 効 果 ガ ス排 出量 お よ び その 抑 制 に向 け た取 組 の 状 況 につ いて も,環 境 報 告 書 へ の 記 載 を促 進 す る と と も に,中 小 事 業 者 につ いて も二 酸 化 炭 素 排 出量 を 把 握 す るな どの 環 境 配 慮 の 取 組 の 促 進 を 図 る こ とが 示 され て い る。 一 方,こ の 計 画 にお いて,金 融 機 関 にお い て も,投 融 資 プ ロ ジ ェ ク トの 際 に,自 投 資(SRI)フ. らの 環 境 配 慮 の 企 業 統 治 を 率 先 した り,社 会 的 責 任. ァ ン ドの設 定 を 拡 大 した り して,企 業 等 に環 境 保 全 に 関 す る取 組 や 環 境 保. 飼. 「地球温暖化対策推進法」は正式 には 「地球温暖化対策の推進 に関す る法律」(最終改正:平 成 20年6月13日 法律第67号)を 指す。 ⑦ ③ 「省エネルギー法」 は正式 には 「エネルギーの使用の合理化 に関す る法律」(最終改正:平 成20 年5月30日 法律第47号)を 指す。 ⑳2008年 改正で は,多 店舗展開企業,例 えば小売店,コ ンビニエ ンスス トア,フ ァス トフー ドな どの全国 の支店 や営業所 を多数有 す る企業全体 の年 間のエネルギ ー使用量 が1,500kL/年 以上の 場合 に対象 とな る。 ⑳ 「環境配慮促進法」 は正 式 には 「環境情報 の提 供の促進等 による特定 事業者等 の環境 に配慮 し た事業活動の促進 に関す る法律」(平成16年法律第77号)を 指す。 四 「京都議定書 目標達成計画」 は2005年4月28日 に策定,2006年7月11日 一部 改定,2008年3月 28日 に全部改訂 により閣議決定 されてい る。 ‑421(1463)一.
(8) 第56巻. 第3号. 全 プ ロ ジ ェ ク トの 状 況 な どの 情 報 開 示 を 要 求 す る こ と も促 進 され て い る。 こ の 「京 都 議 定 書 目標 達 成 計 画 」,UNFCCCの. 「京 都 議 定 書」,各 種 国 内法 令 お よ び 日. 本 経 済 団 体 連 合 会 の 自主 行 動 計 画 が 相 互 に結 びつ くと いえ る,温 室 効 果 ガ ス排 出量 関 連 の 包 括 的 な 情 報 公 表 制 度 が あ る。2010年 施 行 の 「地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 」 は,企 業 の 温 室 効 果 ガ ス排 出量 の 報 告 だ けで はな く 「京 都 ク レジ ッ ト」 の 自主 的 償 却 量,お. よ び二 酸 化 炭 素. 排 出量 か ら 「京 都 ク レ ジ ッ ト償 却 量 」 を控 除 した数 値 の 報 告 が 要 請 さ れ て い る⑳。 企 業 に と って 二 酸 化 炭 素 排 出量 削 減 に 「京 都 ク レジ ッ ト」 を 積 極 的 に活 用 す る こ との 制 度 的 根 拠 が 設 定 され,さ. らに国 内排 出総 量 規 制 の 導 入 を 見 据 え て,今 後 企 業 の 「京 都 ク レジ ッ ト」. の 積 極 的 購 入 も加 速 す る と いわ れ る㊨1)。 強 制 力 の あ る制 度 と して,東 京 都 で は2009年 施 行 の 改 正 「環 境 確 保 条 例 」 に よ り,温 室 効 果 ガ ス総 量 削 減 義 務 と排 出量 取 引 制 度 を 導 入 して い る。 温 室 効 果 ガ ス排 出量 が 相 当 程 度 多 い企 業 等 大 規 模 事 業 所 に対 して 「温 室 効 果 ガ ス排 出総 量 削減 義 務 」 と 「排 出量 取 引制 度 」 の 導 入 し,中 小 規 模 事 業 所 に対 して も,「地 球 温 暖 化 対 策 報 告 書 制 度 」 を導 入 し 「地 球 温 暖 化 対 策 結 果 報 告 書 」 な どの 提 出,評 価 お よ び公 表 を 義 務 付 けて い る⑳。 国 内の 排 出量 取 引 市 場 は徐 々 に発 展 しつ つ あ るが,国 家 お よ び企 業 等 に よ る排 出量 の 測 定,報 告 お よ び検 証(MRV)に. か か る知 見 や 経 験 の蓄 積 は,排 出 量 情 報 の信 頼 性 向 上 の. 重 要 な基 盤 と言 え る㈱。 まず,環 境 省 に お い て2005年2月. に,確 実 か つ 費 用 効 率 的 な 削 減. と取 引等 に係 る知 見 お よ び経 験 の 蓄 積 を 図 る こ とを 目標 に,「 自主 的 参 加 型 国 内排 出量 取 引 制 度(J‑VETS)」. が導 入 さ れ て い る。 こ の制 度 は,排 出枠 の交 付 総 量 を設 定 した上 で,. 排 出枠 を個 々の 主 体 に配 分 す る と と も に,他 の 主 体 との 排 出枠 の 取 引 や 京 都 メ カニ ズ ムの ク レジ ッ トの 活 用 を 認 め る こ と等 を 内容 とす る もの と され て い る。 自 ら定 めた 削 減 目標 を 達 成 しよ う とす る企 業 に経 済 的 な イ ンセ ン テ ィ ブが 与 え られ,そ の 排 出枠 の 取 引 を 活 用 す る仕 組 み で あ る剛。. ㊨ ① 「京都 クレジッ ト」 は,CDMの 実施 による排 出削減量 の単位(CER)と,JIの 実施 に よる排 出削減量の単位(ERU)が あ り,そ れぞれの単位(ク レジ ッ ト)は 二酸化炭素換算量 で表 され, 国連の指定運営組織(DOE)の 排出削減量の検証お よび認証の手続きを経て発行 され る。 これ ら を京都議定書の批准国間で移転 また は獲得す る制度を国際排出量取引 という。 ⑳ 大塚(2008年),p.25。 勧 「環境確保条例」 は正式 には 「都民の健康 と安全を確保す る環境 に関す る条例」(2008年最終改 正)を 指す(東 京都環境局(2008年))。 ㈱ 排 出量取引(排 出権取引)は 排出可能量の移転を指す。排出量取引 には,条 約や法律な どの規 定 による京都 クレジ ットや欧州排 出量取引 スキー ム(EU‑ETS)が あ るが,そ の他,米 国やその 他の地域での 自主参加型制度 もある。 なお,米 国 では二酸化硫黄(SO2)の 排 出権 取引な ど多 く の経験があ る。 ⑳ 自主参加型であ り,特 に排出量が比較的多い企業の参加を義務付けた制度 とはいいがたい。 ‑422(1464)一.
(9) 企 業 財 務 報 告 に お け る気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示(川 原) 次 に,2008年. に 経 済 産 業 省 に お い て,国. 減 量 を 認 定 す る 「国 内 ク レ ジ ッ ト制 度(国 さ ら に,2008年10月. 内 ク レ ジ ッ ト認 証 委 員 会 が 二 酸 化 炭 素 の 排 出 削 内 排 出 削 減 認 証 制 度)」 が 導 入 さ れ て い る 。. に は,「 排 出 量 取 引 の 国 内 統 合 市 場 の 試 行 的 実 施 」が 開 始 さ れ て い る 。. 前 述 の 「試 行 排 出 量 取 引 ス キ ー ム 」 と 「国 内 ク レ ジ ッ ト」 の2つ 書」の. の 仕 組 み と,「 京 都 議 定. 「京 都 メ カ ニ ズ ム 」 を 利 用 して 発 生 し た 「京 都 ク レ ジ ッ ト」 を 統 合 す る 市 場 が 試 行. 的 に 設 定 さ れ た も の と い え る ㈲。 東 京 都 で は,前. 述 の 条 例 に よ り,2010年4月. か ら独 自 の キ ャ ッ フ゜・ア ン ド ・ ト レー ド方. 式 の 排 出 量 取 引 制 度 が 導 入 さ れ る ⑳。 こ の 制 度 で は,基 準 排 出 量 が 決 定 さ れ,削. 減 義 務 量 が 確 定 さ れ,義. よ っ て 取 得 す る 制 度 で,違. 準 排 出量 の 申請 に基 づ き都 か ら基. 務 履 行 達 成 の た め削 減 量 を 排 出量 取 引 に. 反 の 場 合 の ペ ナ ル テ ィ が あ る 。 な お,都. の義務履行状況の情報. 公 開 サ イ トで,「 対 象 事 業 所 の 排 出 量 」 や 「削 減 実 績 」 な ど が 公 開 さ れ る 。 以 上,見. て き た よ う に,国. 内 で 一 部 試 行 的 に,一. 部 強 制 的 に排 出量 取 引 が 導 入 され て お. り,国. 家 や 企 業 に お いて 知 見 の 蓄 積 と制 度 基 盤 整 備 が 行 わ れ つ つ あ る状 況 が 伺 え る。 そ し. て,こ. の よ う な 状 況 に 鑑 み,排. 年2月. に 閣 議 決 定 で 設 置 さ れ た 「地 球 温 暖 化 問 題 に 関 す る 懇 談 会 」 で は,排. 出 量 情 報 の 信 頼 性 の 確 保 が 重 要 な 課 題 と さ れ て い る 。2008. ジ ッ トの 信 頼 性 の 確 保 が 重 要 課 題 で あ り,そ の た あ の 排 出 量 の 報 告,モ ガ イ ド ラ イ ン,排 MRVシ. 出 枠,ク. 出量 や ク レ. ニ タ リ ン グ の 検 証,. レ ジ ッ ト等 を 管 理 す る シ ス テ ム を 整 備 す る こ と が 重 要 と の. ス テ ム の 整 備 に 関 す る 指 摘 が あ る⑳。. 最 後 に,温. 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 情 報 公 開 に 関 して,環. 境 省 の2008年. 企 業 行 動 調 査 」 の 複 数 回 答 結 果 に よ れ ば 調 査 対 象 企 業 の40%超. 度. 「環 境 に や さ し い. が 非 公 開 の 状 況 で,公. て い る 場 合 で も前 述 の 「地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 」 制 度 で の 国 へ の 報 告 が34.1%あ か わ らず,環 り,一 ・ 方,有. 境 報 告 書 で の 自主 公 開 が31.7%,イ. る に もか. ン タ ー ネ ッ トで の 」1青 報 提 供 も29%と. 価 証 券 報 告 書 な ど法 定 財 務 報 告 書 類 で の 開 示 は わ ず か に1.5%と. 開 し. 下回. の結果が見 ら. れ る 鮒。 環 境 法 規 制 に よ る 報 告 と 財 務 報 告 で の 情 報 開 示 の レベ ル が 同 じ程 度 と は 言 え な い 状 況 が 伺 え る。 ㈱. 「試 行 排 出量 取 引 ス キ ー ム」 に は不 遵 守 の 罰 則 規 定 は な く,ま た 「国 内 ク レジ ッ ト」 は 中 小 企 業 等 の 排 出 抑 制 対 策 支 援 が 主 な 目的 で,手 続 きの 利 便 性が 求 め られ て い る こ とか ら,今 後 の 排 出 量 取 引 市 場 の 本 格 導 入 に向 けた 実 証 段 階 と もい え る。 ㈲ 「キ ャ ップ ・ア ン ド ・ トレー ド方 式 」 は政 府 等 が 温 室 効 果 ガ ス 総 排 出量(総 排 出枠)を 設 定 し た 上 で,そ れ を 個 々の 主 体 に 排 出枠 と して 配 分 し,そ の 排 出 枠 の 取 引 を 認 め る もの を い う。 これ と比 較 して,「 ベ ー ス ライ ン ・ア ン ド ・ク レ ジ ッ ト方 式 」 は,個 々の 主 体 に 排 出 枠 を 設 定 せ ず に, 温 室 効 果 ガ ス削 減 プ ロ ジ ェ ク トの 実 施 に よ る削 減 量 に対 して ク レ ジ ッ トを 発 行 し,そ の 取 引 を 認 め る もの を い う。 ⑳ ㈱. 内 閣 官 房 副 長 官補 室(2009年)。 環 境 省(2009年e)。 ‑423(1465)一.
(10) 第56巻 5我. 第3号. が 国 の 制 度 会 計 と気 候 変 動 情 報 開 示. 我 が 国 の 会 計 制 度 上,排. 出 量 取 引 に 関 す る会 計 処 理 につ い て は 「京 都 議 定 書 」 に よ る. 「国 際排 出量 取 引」や その 他 様 々な 排 出量 取 引 の 企 業 実 務 の 進 展 を 背 景 と した 実 務 上 の 必 要 性 に よ り整 備 され て き た。 例 え ば,企 業 が 業 界 団 体 等 で 設 定 した 自主 行 動 計 画 の 目標 達 成 の た め,自. らの 負 担 で 自主 的 に 「京 都 メ カニ ズ ム」 を 活 用 して 「京 都 ク レジ ッ ト」 を 取 得. す る場 合,ま た 前 述 の 「排 出量 取 引 の 国 内統 合市 場 の試 行 的実 施 」 で の 「国 内 ク レ ジ ッ ト」 に関 す る取 引 を行 う場 合 が あ る。 この よ うな 実 務 上 に対 応 す る必 要 性 か ら,企 業 会 計 基 準 委 員 会 よ り2004年11月 に実 務 対 応 報 告 第15号 い」 が,2009年6月. 「排 出量 取 引 の 会 計 処 理 に関 す る当 面 の 取 扱. に改 正 版 が 示 され て い る。. この 報 告 の 主 な 会 計 処 理 は以 下 の と お りで あ る。 まず,① 専 ら第 三 者 に販 売 す る 目的 で 排 出 ク レジ ッ トを 取 得 す る場 合 と,② 将 来 の 自社 使 用 を 見 込 ん で 排 出 ク レジ ッ トを 取 得 す る場 合 の2つ. に区 分 され て い る。 試 行 排 出量 取 引 ス キー ム に お いて 排 出枠 を 無 償 で 取 得 す. る場 合 の 会 計 処 理 は② に含 まれ る。 そ して,① 専 ら第 三 者 に販 売 す る 目的 で 他 者 か ら国 内 ク レ ジ ッ トを 取 得 す る場 合,1)取 価,3)販. 得 時 は 「棚 卸 資 産 」,2)期. 末 評 価 は,原 則,取. 得原. 売 時 は 「棚 卸 資 産 」 の 販 売 と して 処 理 す る。 次 に,② 将 来 の 自社 使 用 を 見 込 ん. で 他 者 か ら国 内 ク レジ ッ トを 取 得 す る場 合,1)取 その 他 の 資 産 」,2)期. 得 時 は 「無 形 固 定 資 産 」 また は 「投 資. 末 評 価 は,原 則,取 得 原 価(減 価 償 却 せ ず),3)自. 原 則,「 販 売 費 お よび 一 般 管 理 費 」 の 区分 な ど適 当 な科 目で 計 上,4)売. 社 使 用 時 に, 却 時 は 「無 形 固. 定 資 産 」 ま た は 「投 資 その 他 の 資 産 」 の 売 却 と して 処 理 す る。 ② の 試 行 的 実 施 の 国 内 ク レ ジ ッ トの 場 合,政 府 か らの 無 償 取 得 は取 引 を 認 識 せ ず,売 却 した場 合 の 売 却 対 価 は当 該 ス キ ー ム に参 加 す る複 数 年 度 を 通 算 して 目標 達 成 が 確 実 と見 込 まれ た 時 点 で 利 益 に振 り替 え る。 この 他,ク. レジ ッ トの 税 務 上 の 取 扱 い は,原 則,前 述 の 会 計 基 準 に従 った 取 り扱 い と さ. れ る。 これ は法 人 税 法 上 の 取 扱 い に関 して は,課 税 所 得 は,別 段 の定 め が あ る もの を 除 き, 「一 般 に公 正 妥 当 と認 め られ る会 計 処 理 の基 準 に従 って計 算 され る」(法 人 税 法(昭 和40年 法 律 第34号)第22条. 第4項)こ. と に よ る た めで あ る。. この 第15号 は 「当面 の 取 り扱 い」 と され て お り,今 後 の 排 出量 市 場 の 整 備 な ど国 内制 度 が 整 った 段 階 で,新 た に取 り扱 い を設 定 す る よ う な 内 容 が 残 され て い る と い え る。 例 え ば,現 状,排. 出量 取 引 で の 投 資 は事 業 投 資 と され 金 融 投 資 で はな い との 扱 いが 示 され て い. る。 ま た,非 財 務 情 報 の 範 疇 で の 情 報 開 示 に関 す る議 論,例 え ば排 出量 取 引 自体 を 巡 る リ ス クや 排 出量 の 開 示 な どの 議 論 は この 報 告 で は触 れ られ て いな い。 ‑424(1466)一.
(11) 企業財務報告にお ける気候変動関連情報の開示(川 原) 次 に,非 財 務 情 報 と して の 気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示 につ いて は,新 指 摘 され て い る。2003年3月. しいル ー ル が 必 要 と. に 「証 券 取 引 法 施 行 令 の 一 部 を 改 正 す る政 令 」 お よ び 「企 業. 内容 等 の 開 示 に関 す る 内閣 府 令 等 の 一 部 を 改 正 す る 内閣 府 令 」 が 施 行 され,2004年7月 降 に提 出 す る有 価 証 券 届 出書 お よ び2004年3月. 期 の 有 価 証 券 報 告 書 か ら,「 事 業 等 の リス. ク」,「財 務 状 態 お よ び経 営 成 績 の分 析(MD&A)」,「 の3項. 以. コー ポ レー ト ・ガ バ ナ ン スの 状 況 」. 目が,非 財 務 情 報(定 性 的 情 報)と して追 加 して記 載 す る よ う義 務 づ け られ て い る。. 最 近,日 本 公 認 会 計 士 協 会 の 「投 資 家 向 け制 度 開 示 書 類 に お け る気 候 変 動 情 報 の 開 示 に関 す る提 言 」(2009年)が. 公 表 さ れ,現 状 の 有 価 証 券 報 告 書 で の気 候 変 動 情 報 の 開示 可 能 性. はな い と は いえ な い もの の,温 室 効 果 ガ ス排 出量 の 記 載 が 可 能 な 追 加 的 な 情 報 開 示 の た め の ル ール が 必 要 で あ る と指 摘 され て い る。 さて,最 近,企 業 財 務 報 告 に お け る温 室 効 果 ガ ス排 出量 関 連 の 情 報 開 示 の 在 り方 に関 す る政 策 的 議 論 は,政 府 の 委 員 会 等 で も見 られ る。 まず,経 済 産 業 省 で は,金 融 市 場 か らの 環 境 配 慮 を促 進 す る資 金 の 流 れ に関 す る政 策 検 討 の 中で,こ れ まで 企 業 の 環 境 情 報 は企 業 社 会 的責 任(CSR)報. 告 書 が 自主 公 開 さ れ て き た が,「 環 境 の 視 点 が ぼや け て き て い る」. との 情 報 内容 に関 す る疑 問 が 提 示 され,さ. らに投 資 家 へ の 直 接 的 な 情 報 開 示 の 枠 組 み の 検. 討 の 必 要 性 や,「地 球 温 暖 化 対 策 の推 進 に 関す る法 律 の一 部 を改 正 す る法 律 の 附帯 決 議 」で 明 示 され た投 資 家 向 けの 情 報 開 示 につ いて 関 係 省 庁 の 連 携 と情 報 収 集 を 一 層 促 進 す べ き と の 主 張 が 示 され て い る。 一 方 ,環 境 省 で は,日 本 公 認 会 計 士 協 会 の 提 言 や 国 際 動 向 を 踏 まえ な が ら,投 資 家 向 け の 情 報 開 示 の 在 り方 と政 府 の 役 割 を 検 討 して い る。2009年3月. に公 表 した 「環 境 配 慮 促 進. 法 の 施 行 状 況 の 評 価 ・検 討 に関 す る報 告 書 」 の 中で,政 府 が 有 価 証 券 報 告 書 を 通 じた 地 球 温 暖 化 関係 情 報 の 開 示 につ いて 検 討 を進 め るべ き との 見 解 が 示 さ れ て い る紛。 温 室 効 果 ガ ス排 出量 の 大 幅 削 減 の 実 施 に は低 炭 素 化 社 会 の 実 現 が 不 可 欠 で,金 融 投 資 市 場 の 働 きか け と投 資 家 へ の 気 候 変 動 情 報 の 提 供 の 重 要 性 が 指 摘 され,投 資 家 の 意 思 決 定 に有 用 な 情 報 源 と して,有 価 証 券 報 告 書 な どの 制 度 開 示 書 類 を 上 げ,財 務 諸 表 と一 体 とな った 気 候 変 動 情 報 の 組 み 込 み の 利 点 が 強 調 され て い る。 ま た,排 出量 の 多 い企 業 の 場 合,排. 出抑 制 の た め. の コ ス ト負 担 が 企 業 価 値 に直 接 的 な 影 響 を 及 ぼ し,「カ ー ボ ン債 務 」とな る可 能 性 が 指 摘 さ れ,機 関 投 資 家 等 に よ り米 国 証 券 取 引 委 員 会 へ の カー ボ ン債 務 の 開 示 の た めの 指 針 の 提 示 が 要 求 され て い る こ と も紹 介 され 日本 企 業 に も関 係 が あ る可 能 性 に言 及 され て い る⑳。 働 ㈹. 環境省(2009年a)。 環境省(2009年d)。 ‑425(1467)一.
(12) 第56巻 さ らに,自 民 党,民 主 党,お. 第3号. よ び公 明 党 の 最 近 の 政 策 に お いて,財 務 報 告 で の 気 候 変 動. 情 報 開示 の 推 進 に 関 す る項 目が 掲 げ られ て い る。 自民 党 で は2008年6月. に,地 球 温 暖 化. 対 策 推 進 本 部 中 間 報 告 に お い て,「 投 資 家 が 内在 す る炭 素 コ ス トを 踏 まえ て 的確 な投 資 判 断 が で き る よ う,地 球 温 暖 化 対 策 推 進 法 に基 づ き公 表 さ れ るCO2排. 出量 の算 定 結 果 や 対. 策 の 実 施 状 況 つ いて,有 価 証 券 報 告 書 上 で も公 表 を 義 務 付 け」 との 言 及 が 見 られ る。 民 主 党 で も同年9月. に,「 資 本 市 場 にお け る適 切 な 価 格 形 成 と資 金 配 分 の も と に企 業 ・経 済 主. 体 の地 球 温 暖 化 対 策 を促 進 し,地 球 温 暖 化 対 策 の 観 点 か ら健 全 な経 済 の発 展 を 促 す た め に,有 価 証 券 報 告 書 の 企 業 内容 等 の 開 示 事 項 に温 室 効 果 ガ ス排 出量 お よ び地 球 温 暖 化 に関 わ る リス ク と対 策 を 追 加 す る政 策 を 推 進 」 との 環 境 ビ ジ ョンが 掲 げ られ て い る。 さ ら に, 公 明 党 で も2009年1月. に,地 球 温 暖 化 対 策 本 部 の 「『グ リー ン産 業 革 命 』 へ の提 言 」 で. 「環 境 に取 り組 む企 業 に 出 資 ・融 資 す る環 境 ・エ ネ ル ギ ー金 融 を本 格 的 に ス タ ー トさせ る こ と」 が 示 され て い るω。. 皿. 1気. 気候変動関連情報の開示の意義. 候 変 動 と経 営 リス ク. 気 候 変 動 が 企 業 経 営 に及 ぼす 様 々な リス ク は 「気 候 変 動 リス ク」 と定 義 づ け られ,気 候 変 動 リス クの マネ ジ メ ン トの 必 要 性 が 次 第 に高 くな る と言 わ れ て い る。 な ぜ な ら気 候 変 動 は避 けが た く進 行 中で あ り,仮 に適 切 に リス ク に対 応 しな けれ ば経 営 業 績 へ の 影 響 は増 加 す る か も しれ な い か らと い う幽。 加 え て,政 府 機 関,投 資 家,銀 行,保 険 会 社 な ど事 業 を 取 り巻 く幅 広 い ス テー ク ホル ダー が,自. らの 気 候 変 動 へ の 適 応 方 針 を 発 展 させ つ つ あ る。. よ って 固 定 資 産 を 保 有 し,こ の よ うな 財 務 取 引 先 を もつ 企 業 にお いて は,気 候 変 動 リス ク マネ ジ メ ン トは事 業 リス ク マネ ジ メ ン トの 核 に統 合 され るべ き もの と言 わ れ る。 気 候 変 動 リス ク は,1)物 お よ び4)法. 理 的,2)法. 規 制,3)投. 資 家,銀 行 や保 険会 社 の行 動 変 化,. 務 の 各 要 因 に分 類 が 可 能 で あ る。 まず,物 理 的 リス クで あ るが,管 理 で きな. い気 候 変 動 か ら生 じる事 業 上 の リス ク に は,市 場 需 要 の 変 化,事 業 競 争 力 の 低 下,売 上, 生 産 性 ま た は効 率 性 の 減 少,資 本 的支 出 や運 用 維 持 費 の増 加,資 産 劣 化 や耐 用 年 数 の減 少, 保 険 費 用 の 増 大 と保 険 提 供 機 会 の 喪 失,環 境 汚 染 リス クの 増 大 や 訴 訟 の 増 大,地 域 社 会 と の 軋 礫 増 大,ま. た廃 棄 や 原 状 回 復 関 連 の 負 債 が あ げ られ る。 これ ら は利 益 率 の 低 下,資 産. ω 環境省(2009年b),pp。32‑33。 (42)Connell(2009). ‑426(1468)一.
(13) 企業財務報告にお ける気候変動関連情報の開示(川 原) 価 値 低 下,評 判 の 棄 損,負 債 返 済 不 能,ま. た資 本 増 加 の 困 難 を 招 く可 能 性 が あ る。 避 け ら. れ な い気 候 変 動 へ の 適 応 が 物 理 的 リス ク低 減 の 鍵 と いえ る。 次 に,規 制,財 務 お よ び法 的 要 因 に関 連 す る法 規 制 へ の 適 応 リス クが あ げ られ る。 例 え ば,英 国 の 「気 候 変 動 法 」 に は,政 府 が 組 織 に リス クを 定 期 報 告 させ る法 律 上 の 義 務 が あ り,国 家 が リス ク評 価 と コ ス ト対 効 果 分 析 を し,組 織 の リス ク評 価 実 施 に請 求 権 を もつ と い う⑬。 ま た,欧 州 委 員 会(EC)の 適 応 フ レー ム ワ ー ク と してEU市 して お り,様 々なEU重. 白書 に よ れ ば,欧 州 連 合(EU)で. は,気 候 変 動 へ の. 民 の気 候 変 動 の影 響 へ の対 処 を 改 善 す る こ と を 目標 と. 要 政 策 分 野 と統 合 して い る と い う幽。. 3つ 目 に,機 関 投 資 家 か らの 企 業 へ の 気 候 変 動 に関 す る質 問 や,銀 行 や 保 険 会 社 自 らの 行 動 変 化 も リス ク要 因 と いえ る。 例 え ば,欧 州 復 興 開 発 銀 行(EBRD)で 投 資 上 の リス クを 引 き起 こす と考 え て,リ. は,気 候 変 動 が. ス ク評 価 や 適 応 に関 す る指 針 や 実 践 的 手 法 を 開. 発 し,銀 行 の プ ロ ジ ェ ク ト管 理 に統 合 して い る と い う。 これ は貸 付 銀 行 の ク レジ ッ トリス ク分 析 に影 響 す るか も しれ な い。 保 険 会 社 は,気 候 変 動 に脆 弱 な 場 所 の 保 険 を 断 る こ と に 関 心 が あ り,気 候 変 動 の 結 果 を 負 うの で 気 候 変 動 に よ る新 しい リス クを 分 析 して 顧 客 の リ ス ク管 理 を支 援 しよ う と して い る。 金 融 機 関 の 適 応 行 動 自体 が 企 業 の 新 た な リス ク と いえ る。 4つ 目 に法 的 面 で は気 候 変 動 は今 や 合 理 的 に予 測 可 能 で あ る と言 わ れ る。 例 え ば建 設 設 計 開 発 の 過 程 を通 して 予 測 で き,適 切 な 手 続 きが 取 られ て い るか を 確 か め る専 門 家 に責 任 が あ る こ と にな る と い う。 政 府 規 制 当局,会 計 士,法 律 家,取 締 役,技 術 者,建 築 家,銀 行,財 務 サ ー ビス会 社 な ど は,意 思 決 定 に対 す る法 的 責 任 と提 供 した 助 言 に関 す る結 果 を 引 き受 け る こ と にな る。 気 候 変 動 の 影 響 評 価 や 提 示 の 業 務 を 企 業 か ら要 請 され た 場 合,物 理 的 損 害,財 務 損 失,あ. る い は法 的 債 務 な ど非 常 に深 刻 な 見 通 しを た て る よ う にな りつ つ. あ る。 いわ ば専 門 家 の 法 的 責 任 が よ り重 くな る こ とが 示 唆 され て い る。 最 後 に,炭 素 価 格 の 設 定 が も た らす 企 業 経 営 へ の 重 要 な 影 響 が 指 摘 され て い る。 炭 素 価 格 は温 室 効 果 ガ ス排 出量 削 減 の 環 境 政 策 の 重 要 な 手 法 と して 採 用 され,炭 素 税,排 引,ま. 出量 取. た は排 出量 規 制 を 通 じて 設 定 され つ つ あ る。 炭 素 価 格 の 適 切 な 設 定 の 潜 在 的 可 能 性. と して,炭 素 税 や 排 出量 取 引 の よ うな 直 接 的 な 形 の み な らず,排. 出量 規 制 の よ うな 間 接 的. な 形 を 通 じて,企 業 行 動 に よ って 生 じ る社 会 的 費 用 が 負 担 さ れ る こ と,企 業 で は商 品 や. ㈱OPSI(2008).英 国で は内閣府 に気候変動を専門に扱 うエネルギーお よび気候変動省(DECC) が2008年10月3日 に設置 されて いる(http://www.decc.gov.uk/)。 幽EC(2009). ‑427(1469)一.
(14) 第56巻. 第3号. サ ー ビス に対 す る投 資 を 炭 素 集 約 的 な もの か ら低 炭 素 型 の もの へ と転 換 で き る こ と,企 業 の 投 資 意 思 決 定 に お いて 炭 素 価 格 が 反 映 され,低 炭 素 化 技 術 の 研 究 開 発 投 資 や 普 及 が 促 進 され る こ と,国 際 的 な 炭 素 価 格 の 共 通 化 に よ り,最 も対 策 費 用 の 低 い地 域 ・部 門 で の 排 出 削 減 が 実 施 され,経 済 効 率 を 向 上 させ る こ とが あ げ られ る。 排 出量 取 引 制 度 にお いて,炭 素 価 格 は国 際 共 通 疑 似 通 貨 と して 想 定 され て お り,こ の 炭 素 価 格 の 信 頼 性 を 確 保 す るた め の さ らな る市 場 拡 大 や 国 際 的 共 通 ル ー ル や 枠 組 み の 形 成 が,ま す ます 重 要 とな る と指 摘 さ れ て い る㈲。. 2投. 資 家 等 の 気 候 変 動 に関 す る情 報 開 示 要 求 の 国 際 動 向. セ リー ズ は,気 候 変 動 な ど持 続 可 能 性 の 課 題 に対 応 す る た めの,投 資 家,環 境 団 体,企 業 と投 資 家 の 協 働 の た めの 公 益 団 体 か ら構 成 され る国 際 的 ネ ッ トワー クで あ るが,近 年, 気 候 変 動 情 報 の 開 示 を 要 求 す る活 動 を 積 極 的 に展 開 しつ つ あ る。 セ リー ズ は,1989年. に米. 国 系 巨大 石 油 企 業 エ ク ソ ン社 タ ンカー の バ ル デ ィー ズ号 が 座 礁 し,世 界 有 数 の 生 態 系 を 誇 る ア ラ ス カ沖 に10.8百 万 ガ ロ ンの 原 油 が 流 出す る と い う事 故 を契 機 に,企 業 の環 境 コ ス ト や 環 境 や 社 会 影 響 に関 す る説 明 責 任 の 問 題 に対 処 す る た め に組 織 され,以 後,20年. 以上活. 動 を続 け て い る㈲。 セ リー ズ は,地 球 と人 類 の健 全 の た め,資 本 市 場 に持 続 可 能 性 を 統 合 し,ビ ジネ スや 資 本 市 場 に社 会 福 祉 お よ び地 球 の 生 態 系 シ ス テ ムや 資 源 の 保 護 を 増 進 す る 新 しい 世 界 観 を ビ ジ ネ ス 社 会 に導 入 す る使 命 を 掲 げ,投 資 家 と他 の 重 要 な ス テ ー クホ ル ダ ーの 影 響 力 を結 集 して,企 業 や 資 本 市 場 に働 き掛 けて き た。 これ まで の 主 な 国 際 的 影 響 力 の あ る活 動 と して,環 境 社 会 お よ び経 済 の 業 績 報 告 の た めの グ ロー バ ル ・リポー テ ィ ン グ ・イニ シ ア チ ブ(GRI)を. 立 ち上 げ た り,気 候 変 動 リス ク問 題 の 対 応 プ ロ グ ラ ムを 開 発. す る,持 続 可 能 性 企 業 統 治 フ ォー ラ ム を大 学 や保 険会 社 と設 立 した り,ナ イ キ(Nike), デル(Dell)ま. た は ア メ リカ銀 行(BankofAmerica)と. と も に持 続 可 能 性 に関 して 先 進. 的 に取 り組 み,気 候 変 動 に よ る リス ク と機 会 の 増 大 に対 応 す べ く投 資 家 等 と国 連 に赴 いた り,7兆. ドル 超 の 資 産 運 用 を す る70以 上 の 機 関 投 資 家 と,気 候 変 動 リス ク に関 す る投 資 家. ネ ッ トワ ー ク(INCR)を. 立 ち上 げ た り,ま た気 候 変 動 の 意 味 合 い を投 資 家 が理 解 で き る. よ う先 端 的 な 調 査 報 告 書 を 発 行 した り して い る。 最 近 の 報 告 で は,気 候 変 動 と企 業 統 治 に 焦 点 を 当て,世 界 トップ企 業 の 事 例 分 析,保 険 業 銀 行 業,消 費 財 や 情 報 技 術 企 業 に関 す る 調 査 結 果 を公 表 して い る。 ㈲HerMajesty'sStationeryOffice(2006). ㈹Ceres,http://www.ceres.org. ‑428(1470)一.
(15) 企 業 財 務 報 告 に お け る気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示(川 原) 2つ 目 に,カ. ー ボ ン ・デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー ・プ ロ ジ ェ ク ト(CDP)は,2000年. 以 降,世. 界 の 主 な 企 業 の 気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示 を 促 進 す べ く 国 際 的 活 動 を 続 け て い る ㈲。CDP は 英 国 政 府 の 支 援 の も と 独 立 の 非 営 利 組 織 と し て2000年 家,企. 業,お. に ロ ン ドンで設 立 さ れ た。 投 資. よ び 政 府 が 危 険 な 気 候 変 動 へ の 抑 止 行 動 を と る こ と を 動 機 づ け る た め,質. 高 い 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 情 報 の 収 集 と 提 供 を 行 い,世. の. 界 中の 組 織 か らの 気 候 変 動 デ ー タを. 調 和 さ せ て 国 際 的 な カ ー ボ ン 報 告 に 関 す る 基 準 を 開 発 し よ う して い る 。 CDPの. 「投 資 家CDP(lnvestorCDP)」. ス 排 出 量,温. プ ロ グ ラ ム で は,2001年. よ り毎 年,温. 室効果ガ. 室 効 果 ガ ス削 減 目標 お よ び削 減 計 画 等 に係 る気 候 変 動 に関 す る情 報 開 示 に関. す る 質 問 状 を 世 界 の 主 要 企 業 に 送 付 回 収 し,結 模 は 年 々 に 拡 大 し,2008年. 現 在,世. 果 を2002年. 界 約60力 国2204社. よ り報 告 して い る 。 調 査 対 象 規. の 開 示 情 報 を 保 有 し,世. 界最大の気. 候 変 動 情 報 に 関 す る デ ー タ ベ ー ス の 保 有 を 自 負 して い る 。 こ れ ら 企 業 が 温 室 効 果 ガ ス 削 減 目 標 を 設 定 し,実. 績 改 善 の た め,排. 出 量 の 測 定 と 気 候 変 動 戦 略 の 開 示 を 行 う よ う 要 請 して. い る 。 デ ー タ ベ ー ス は,機 関 投 資 家,企 組織. 政 府 機 関,学. 者,一. 業,政. 策 策 定 者,政. 府 ア ドバ イ ザ ー,公. 般 公 衆 に よ っ て 広 く利 用 可 能 と さ れ,こ. 共 セ ク ター. の 結 果 に対 す る関 心 が. 年 々高 ま る可 能 性 が あ る。 2009年 公 表 の 「カ ー ボ ン ・デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー ・プ ロ ジ ェ ク ト2009グ. ロ ー バ ル500報. 告 」 で は 気 候 変 動 情 報 開 示 の 改 善 傾 向 が 示 さ れ て い る 。 こ の 報 告 は,2009年2月. にお いて. 約55兆 米 ドル の 投 資 資 金 を 管 理 す る 世 界 の475の 機 関 投 資 家 等 に よ る 情 報 要 求 の 署 名 の も と,世. 界3,700社. を 対 象 に 調 査 を 実 施 し た も の で,調. 企 業 群 か ら の 回 答 も年 々 上 昇 し,82%(409社)と. 査 対 象 企 業 の う ち,「 グ ロ ー バ ル500」 前 年 の77%(383社)よ. り上 昇 し て い. る ⑱。 調 査 結 果 は 情 報 開 示 レ ベ ル の 点 数 化 に よ り,業. 種 ご と に,FTSE社. 象 株 式 銘 柄 群(投. 問 状 に不 回 答 の 企 業 名 も企 業 規 模 順. 資 ユ ニ バ ー ス)ご. と に 公 表 さ れ,質. に 公 表 さ れ て い る㈹。 主 な 結 果 と し て,温 量 認 証,お に,排. 室 効 果 ガ ス の 排 出 量,削. の3つ. 減 目標,見. の投資対. 通 し,排. 出. よ び年 次 報 告 の 項 目な ど重 要 開 示 デー タ数 の 継 続 的 に改 善 が 示 され て い る。 特. 出 量 の 報 告 の 改 善 が 著 し い 。 ま た,炭. ル ギ ー 企 業 を は じ め,間. 素 集 中業 種 と され る電 力 な ど公 共 事 業 や エ ネ. 接 的 影 響 が 顕 著 と され る金 融 機 関 に お いて 気 候 変 動 の リス クや 機. ⑳CDP,http://www.cdproject.net. ㈱CDP(2009).FTSEと は英 国 の代 表 的経 済 紙 「フ ァ イ ナ ンシ ャル ・タ イ ム ス(TheFinancial Times)」 と ロ ン ドン証 券 市 場 の 共 同 出資 に よ る独 立 の投 資 情 報 提 供 企 業(FTSEInternational Limited)を い い,「 グ ロー バ ル500」 とはFTSEの 「FTSEグ ロー バ ル 株 式 イ ンデ ッ クス シ リー ズ 」 の 投 資 対 象 銘 柄 群(投 資 ユ ニ バ ー ス)を 構 成 す る銘 柄 の 大 企 業500社 を い う。 ㈹3つ の 区 分 は そ れ ぞ れ3つ の 投 資 対 象 銘 柄 群 と対 応 し,「Global500:theFTSEGIobalEq‑ uityIndexSeries」,「S&P500:Standard&Poor's5001ndex」,お よ び 「FTSE350:theFTSE 3501ndex」 で あ り,銘 柄 に よ って は複 数 の群 に組 み込 ま れ て い る。 ‑429(1471)一.
(16) 第56巻. 第3号. 会 に 関 す る 開 示 が 進 ん で い る 。 消 費 財 食 料 品 業 種 や 産 業 お よ び 情 報 技 術 業 種 で は,リ よ り も 新 製 品 や サ ー ビ ス か らの 機 会 が 認 識 さ れ て い る 。 排 出 量 の 開 示 は,ス コ ー プ2の. 排 出 量 の 報 告 は 一 般 的 に 良 好 で あ る が,ス. コ ー プ3排. コ ー プ1と. スク ス. 出量 の 開 示 につ いて はす. べ て の 業 種 に お い て 一 貫 して 十 分 で な い6①。 こ の こ と は 組 織 の 報 告 領 域 や 計 算 方 法 に 関 す る さ らな る 指 針 が 必 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 企 業 統 治 に 関 して 公 共 事 業 や 素 材 業 種 で 気 候 変 動 担 当 役 員 が 指 名 さ れ る 割 合 が 高 く,経 示 唆 さ れ て い る 。 欧 州 の 開 示 が 進 ん で お り,特 る 。 結 論 と して,グ. 営 者 層 の 関 与 と情 報 提 供 の 質 の 関 係 が. に排 出量 取 引 市 場 との 関 係 も示 唆 され て い. ロ ー バ ル500企 業 に お い て,気. 候 変 動 の 情 報 開 示 が 進 ん で お り,気 候 変. 動 は 投 資 家 に も 企 業 に も ま す ま す 重 要 な 問 題 に な りつ つ あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 3つ. 目 に,気. (WEF)」. 候 情 報 開 示 基 準 審 議 会(CDSB)は,2007年. の 年 次 総 会 で 設 立 さ れ た 国 際 的 組 織 で あ る61)。CDSB審. 事 務 局 に,ま. た 前 述 の セ リ ー ズ,ク. れ ら7組. 議 会 は,前. 述 のCDPを. ラ イ メ ー ト ・グ ル ー プ(theClimateGroup),ク. メ ー ト ・ レ ジ ス ト リー(theClimateRegistry),国 お よ びWRI,こ. の 「世 界 経 済 フ ォ ー ラ ム. ライ. 際 排 出 量 取 引 連 盟(IETA),WEF,. 織 の コ ン ソー シア ムで あ る。 技 術 的作 業 部 会 は国 際 的会 計事 務. 所 お よ び 職 業 的 会 計 士 団 体 に よ り,顧 組 織 お よ び 非 政 府 組 織(NGOs),並. 問 委 員 会 は 国 連 環 境 計 画(UNEP)な. ど国 際 的 政 府. び に 世 界 の 主 な エ ネ ル ギ ー 大 企 業 に よ り構 成 さ れ て い. る 励。 CDSBは,既 reports)」 ま た,気. 存 の 様 々 な 国 際 基 準 を 基 礎 に,気. 候 変 動1青報 を 「主 流 報 告(mainstream. で 開 示 す る 際 の 国 際 的 フ レ ー ム ワ ー ク の 開 発 に よ り,開 示 促 進 を 目指 し て い る 。 候 変 動 リ ス ク や 機 会,カ. ー ボ ン フ ッ トプ リ ン ト,炭 素 削 減 戦 略,炭. 素削減の株主. 価 値 の 意 味 合 い に 関 す る 企 業 報 告 の 際 の 一 般 に 認 め られ る フ レー ム ワ ー ク を 提 唱 す る こ と を 目 的 と して い る ㈲。 2009年1月 ⑲. に,「CDSB報. 告 フ レ ー ム ワ ー ク(theCDSBReportingFramework)」. の. 報 告 組 織 か らの 直 接 排 出 を ス コー プ1,間 接 排 出 を ス コー プ2お よ び3と し,ス コー プ3は 報 告 組 織 の 活 動 結 果 に よ る排 出 で あ るが,そ の 組 織 に よ って 所 有 や 管 理 され な い 排 出 源 か らの 排 出 を 指 す 。 これ らの 分 類 は 「温 室 効 果 ガ ス ・プ ロ トコル ・イ ニ シア チ ブ」(GreenhouseGasProtocol Initiative(2001))に よ る(CDSB(2009),p.33)。. 6DWEF,http://www.weforum,org.WEFは 独 立 の 国 際 的 非 営 利 財 団 と して1971年 にス イ スで 設 立 され,中 心 メ ンバ ー は 年 間 総 売 上額50億 ドル 超 の 国 際 的 企業 約1,000社 か らな り,毎 年1月 に スイ スの ダ ボ スで 年 次 総 会 が 行 わ れ て い る。 (5カCDSB,http://www.cdsb‑global.org/. ㈹CDSBの 「主 流報 告(mainstreamreports)」 と は,あ る企 業 が操 業 す る領 域 で の企 業 法,法 令 遵 守,ま た は証 券 法 にお い て 監 査 済 み 財 務 結 果 の 提 出 が 要 請 され る際 の そ の 年 次 報 告 パ ッケ ー ジを 指 す 。 我 が 国 環 境 省 がCDSBの 目的 を説 明 す る際 に,「 投 資 家 向 け気 候 変 動 情 報 を 有 価 証 券 報 告 書 な どの 制 度 開 示 書 類 の 中 で 開 示 す るた め の,国 際 的 に 広 く受 け 入 れ られ る企 業 の 情 報 開 示 フ レー ム ワ ー クを 開 発 す る こ と」 と して お り,「 主 流 報 告 」 が 有 価 証 券 報 告 書 な ど の制 度 開 示 書 類 と して い る(環 境 省(2009年d))。 ‑430(1472)一.
(17) 企 業 財 務 報 告 に お け る気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示(川 原) 公 開 草 案 が 公 表 さ れ て い る 励。 こ の 公 開 草 案 で は,気. 候 変 動 に 係 る マ ネ ジ メ ン ト戦 略,気. 候 変 動 に よ る 規 制 リ ス ク ・物 的 リ ス ク,温. 室 効 果 ガ ス 排 出 量 等 が 開 示 項 目 と して 列 挙 さ れ. て い る 。 こ の フ レー ム ワ ー ク は,CDSB審. 議 会 メ ン バ ー が 主 導 して き た 実 務 に 基 づ い て お. り,WBCSDとWRIに. よ っ て 開 発 さ れ た 「GHGプ. 準 と 関 連 さ せ な が ら,気. 候 変 動 関 連 開 示 に お け る 最 善 実 務 を 参 考 に,強. 制 お よ び 自主 的 な. 報 告 や 排 出 量 取 引 ル ー ル に お け る 発 展 を み て 作 ら れ て い る ㈲。 ま た,主. 流 報 告 や気 候 変 動. 関 連 開 示 に お け る 先 進 的 実 務 を 行 う 組 織,す 士 協 会,国. 際 会 計 士 連 盟,イ. 認 会 計 士 協 会 の5つ. ロ ト コ ル 」 に 基 づ き,財. な わ ち 英 国 勅 許 会 計 士 協 会,カ. ナ ダ勅 許 会 計. ン グ ラ ン ドお よ び ウ ェ ー ル ズ 勅 許 会 計 士 協 会,お. の 職 業 会 計 士 団 体 と,国. 際 的4大. 務報 告の基. よ び 日本 公. 会 計 事 務 所 で 構 成 さ れ るCDSB技. 術 作 業 部 会 に よ り開 発 さ れ て い る ㈹。. 3気. 候変動関連情報の開示の意義. 企 業 の 気 候 変 動 関 連 情 報 を 開 示 す る 意 義 と して,投 連 情 報 の 提 供 が あ げ られ,開. 資 家 の 意 思 決 定 に有 用 な 気 候 変 動 関. 示 を 通 し た 資 本 市 場 の 情 報 の 透 明 性 の 向 上 の 効 果 と して,経. 営 者 と 投 資 家 等 の 情 報 の 非 対 称 性 の 解 消 に よ る 効 率 的 資 本 市 場 の 形 成 が あ げ ら れ る ㈲。 CalPERS等. がSECに. 請 願 し て い る よ う に,リ. 害 を 被 らな い よ う 投 資 家 等 を 保 護 す る た め に,適. ス ク情 報 が 開 示 さ れ な い こ とで 不 測 の 損 切 な 企 業 情 報 の 開 示 が 求 め ら れ,そ. のた. めの 開 示 様 式 や 手 続 きの 基 準 化 が 要 請 され て い る。 ま た,気. 候 変 動 関 連 情 報 が 財 務 報 告 で 開 示 さ れ る こ と の 意 義 と して,過. 去の金額情報を. 中心 と した財 務 情 報 に対 す る補 完 追 加 的 な 非 財 務 情 報 の 提 供 が あ げ られ る。 この よ うな 非 財 務 情 報 の 開 示 の 意 義 に つ い て,国 「経 営 者 の 説 明(MC)」. 際 会 計 基 準 審 議 会(IASB)が2009年6月. の 公 開 草 案 は重 要 な意 味 合 い を 提 供 して い る。 この公 開草 案 の 主. な 特 徴 的 な 点 を 見 て い き た い 。 ま ず,MCの と 財 務 の 状 況(OFR)」. に 公 表 した. 位 置 づ け は,米. に あ た る も の と さ れ る 。MCは. 務 諸 表 に 付 加 さ れ る も の で,企. 業 の 財 務 状 態,財. 国 のMD&Aや. 英 国 の 「営 業. 財 務 諸 表 の 一 部 分 で は な い が,財. 務 業 績 お よ び キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー と,経. (5のCDSB(2009)。 ㈲. 「GHGプ ロ トコ ル 」 は 「企 業 に よ る 算 定 と報 告 の た め の 基 準(TheGreenhouseGasPro‑ tocol:ACorporateAccountingandReportingStandard(RevisedEdition))」 を指 す 。 GreenhouseGasProtocolInitiative(2001)参 照。. 岡. こ こ で い う国 際 的4大 会 計 事 務 所 は,DeloitteLLP,Ernst&Young,KPMGLLP,お よ びPricewaterhouseCoopersを 指 す 。 開 発 の予 定 は,2009年3月 に公 開草 案 が 提 出 さ れ そ の 後 9月 まで パ ブ リッ ク コ メ ン トを 募 る こ と と され て い る。 な お,環 境 省 は この 公 開 草 案 に関 す るセ ミナ ー を,2009年8月25日 に 投 資 家 や ア ナ リス ト等 に向 けて 行 って い る(環 境 省(2009d))。 (5のCalPERSetal.(2007). ‑431(1473)一.
(18) 第56巻. 第3号. 営 目的 や戦 略 が ど う関係 す る か を説 明 す る た め の もの と さ れ る。 そ して,今 回 のMCの 公 開 草 案 は,MCの. 作 成 と開示 に 関す る 国 際 的最 善 実 務 を描 い て お り,様 々な 司 法 権 を ま. たが る経 営 の 一 貫 性 と比 較 可 能 性 を 向 上 させ る非 強 制 的 指 針 で あ る と考 え られ て い る。 MCの. 提 供 す る情報 に つ い て,次 の 点 が 示 され て い る。 す な わ ち,MCで. 提 供 され る情. 報 の 種 類 は,資 本 提 供 能 力 の あ る財 務 報 告 利 用 者 が,企 業 目的 達 成 の た めの 経 営 戦 略 の 成 果 と と も に,企 業 の 将 来 予 測 や リス クを 評 価 す る ツー ル と して,日 常 的 に使 用 す るた ぐい の もの で あ る。 ま た,MCは. 多 くの 企 業 に と って 既 に資 本 市 場 に お け る重 要 な コ ミュニ. ケ ー シ ョ ン要 素 で あ り,財 務 諸 表 に補 足 補 完 され る もの で あ る。 と りわ け,こ の 公 開 草 案 は 国 際 財 務 報 告 基 準(IFRSs)に. 準 拠 して作 成 さ れ る財 務 諸 表 を 補 足 補 完 す る た め の フ. レー ム ワ ー ク と して 提 供 され て お り,ビ ジネ スの 特 殊 な 状 況 に お いて この フ レー ム ワー ク の 最 善 の 適 用 方 法 を 企 業 経 営 者 が 決 定 す る た めの もの と され る。 そ して,MCで. は,情 報 利用 者 に 有用 な 内 容 と して,次 の5つ を掲 げ て い る。MCは,. 企 業 の 実 際 状 況 に応 じて 適 切 に扱 わ れ る にせ よ情 報 利 用 者 の 意 思 決 定 に有 用 とな る次 の 内 容 を利 用 者 に理 解 させ る情 報 を 示 して い る。 それ は,1)事 の 戦 略,3)重. 要 な 資 源,リ. ス ク お よ び関 係,4)営. 業 の 性 質,2)経. 営 目的 とそ. 業 成 果 と将 来 見 通 し,そ して5). 経 営 目的 に対 して 企 業 業 績 を 評 価 す る た めの 重 要 業 績 評 価 指 標 で あ り,こ れ ら は総 合 に関 連 して お り独 立 して い る もの で はな い と い う。 ま た,興 味深 い こ とに,IASBで. はMCの. 情 報 は資 本 提 供 能 力 者 以 外 の 利 用 者 に お いて も関 心 が あ る もの とみ て お り,広 範 囲 な 利 用 者 に関 係 の あ る問 題 が 企 業 業 績 や 企 業 価 値 に影 響 す る程 度 を 適 切 に情 報 提 供 で き るか を, 経 営 者 が 考 慮 す る必 要 が あ るか も しれ な い と い う。 ただ し,MCは. 広 範 囲 な ス テー ク ホル. ダ ー に 向 けて 報 告 す る他 の 様 式 に代 替 す る もの と して 考 え られ るべ きで はな い点 を 強 調 し て い る。 そ して,MCの. 公 開草 案 で は,情 報 内容 に対 す る利 用 者 の 情 報 要 求 に関 して 次 の. よ う に分 析 され て い る。 それ は,1)事 識,2)目. 業 の 性 質 につ いて は,事 業 や 外 部 の 事 業 環 境 の 知. 的 と戦 略 につ いて は,企 業 の 適 用 す る戦 略 の 評 価,そ の 戦 略 が 経 営 者 の 示 した. 目標 を達 成 す る可 能 性 の 評 価,3)資. 源,リ. ス ク お よ び関 係 につ いて は,他 者 へ 移 転 義 務. の あ る資 源 お よ び企 業 の 利 用 可 能 な 資 源 に関 す る決 定 の 基 礎,長 期 の 持 続 可 能 な 純 資 源 流 入 の 能 力,ま. た資 源 を 生 み 出す 活 動 が 長 短 期 間 に さ らされ て い る リス ク,4)成. 果 と将 来. 見 通 しにつ いて は,見 通 し通 りの 成 果 を 出 したか,暗 示 的 で は あ るが,市 場 の 理 解,戦 略 の 実 行,ま た資 源,リ ス クお よ び関 係 の 管 理 が いか に う ま くで きた か を 理 解 す る能 力,5) 業 績 評 価 と指 標 につ いて は,経 営 者 の 示 した 目標 や 戦 略 に対 して,企 業 業 績 を 評 価,管 理 す る た め経 営 者 が 使 う重 要 な 業 績 評 価 指 標 に焦 点 を 当て る能 力,と 一432(1474)一. い った 情 報 要 求 が 想 定.
(19) 企 業 財 務 報 告 に お け る気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示(川 原) され て い る。 財 務 報 告 で 開 示 さ れ る 気 候 変 動 情 報 は,財. 務 ア ナ リ ス トを 通 じて,企. 業評価分析のた め. の 有 用 な 情 報 と して,ま. す ま す 活 用 さ れ る か も しれ な い 。 よ っ て,ど. の よ うな 気 候 変 動 情. 報 が 開 示 さ れ る か は,投. 資 家 等 の 企 業 評 価 の 手 法 や 見 方 に重 要 な 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 も あ. る 。 気 候 変 動 に よ る 様 々 な 影 響 を 特 に 考 慮 す る 必 要 の あ る 企 業 の 場 合 に は,格 取 引 先 へ の 情 報 提 供 な ど,ス. テ ー ク ホ ル ダ ー の 視 点 を こ れ ま で 以 上 に 踏 ま え て,情. 戦 略 を 見 直 す こ と に な る か も しれ な い 。 例 え ば,米. 業 の 気 候 変 動 リス ク を,気. 影 響,訴. 因 に 分 類 し,こ. 出,操. 制,競. 業 コ ス ト,キ. 素 管 理 戦 略,潜. 争 力,お. よ び 評 判 の5要. 報開示. 国 の 環 境 格 付 機 関 で あ る イ ノ ベ ス ト社. (lnnovestStrategicValueAdvisors)は,企 訟,規. 付 けや 財 務. 候変動の物理的. れ らが 設 備 投 資 の 資 本 的 支. ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー お よ び 資 本 コ ス トに 反 映 す る と み て い る 。 そ して 炭. 在 的 炭 素 リ ス ク,気. 候 変 動 要 因 の 収 益 機 会 の 戦 略,お. よ び 改 善 傾 向 の4つ. の 情 報 が 反 映 さ れ た 格 付 け を 行 っ て い る と い う 鮒。. IV気. 1財. 候 変 動 情 報 開 示. 務報告での開示要求内容の比較. カ ル フ ォ ル ニ ア 州 公 務 員 退 職 年 金 基 金(CalPERS)な 米 国 証 券 取 引 委 員 会(SEC)に. 対 して,以. 下 の4つ. ど機 関 投 資 家 等 は,2007年 の 気 候 変 動 関 連 情 報 に 関 して,財. 告 で の 開 示 の 基 準 作 成 を 請 願 して い る 。 す な わ ち,1)過. 去,現. 候 変 動 リ ス ク と 排 出 量 マ ネ ジ メ ン トの 戦 略 分 析,3)気. 物 理 的 リ ス ク の 評 価,お. よ び4)温. 国 オ バ マ 政 権 下 で は,気. 下 院 を 通 過 し,環 境 保 護 庁(EPA)に の 予 定 で,様. 務報. 在 お よ び予 想 され る温 室. 効 果 ガ ス 排 出 量,2)気. に 関 して,米. 以 降,. 候変動の. 室 効 果 ガ ス 排 出 量 の 規 制 関 連 リ ス ク で あ る ㈲。4) 候 変 動 対 策 法 案(ワ. ッ ク ス マ ン ・マ ー キ ー 法 案)が. よ る 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 報 告 制 度 も2011年. よ り開 始. 々な 気 候 変 動 政 策 強 化 が 予 想 され る 中で 開 示 の 重 要 性 が 高 ま る もの と言 え よ. う ⑳。 CDPの ス,2)リ. 調 査 で は,投. 資 家 に 有 用 な 情 報 開 示 項 目 と し て,1)気. ス ク と 機 会,3)温. に 対 す る 緩 和 と 適 応 の4つ. 室 効 果 ガ ス 排 出 量,そ が あ げ られ て い る 。2)の. ネ ス機 会 が 含 まれ て い る点 が 特 徴 的 で あ る。 厨InnovestStrategicValueAdvisors(2009). (59Ca1PERSeta1。(2007). 6①ACCA(2009c). ‑433(1475)一. して4)気 よ う に,気. 候 変 動 戦 略 とガ バ ナ ン 候 変 動 業 績,気. 候変動. 候 変 動 を 要 因 とす る ビ ジ.
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