九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
医学・健康分野の考える決断科学
錦谷, まりこ
九州大学持続可能な社会のための決断科学センター健康モジュール : 准教授
https://doi.org/10.15017/1563554
出版情報:決断科学. 1, pp.28-34, 2016-01-27. Institute of Decision Science for a Sustainable Society, Kyushu University
バージョン:
権利関係:
医 学
. 鍵療分野の考える決断科学
決断科学と聞いて思い出すのは︑かつて公衆衛生大
学院 で履 修し たロ
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旨昆 羽田
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色 吾
自
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冨
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同出
︵公 衆衛 生と 医学 にお ける 決断 分析
︑以 下︑ 決 断分 析学
︶と いう 科目 であ る︒ 私は 公衆 衛生
大学
院で は 修士 課程 のコ
1
ス機回
︶に
遣っ
てい たが
︑当 時そ 乙に は
7
つの専 門が あり
︑臨 床疫 学︑ 職業
・環 境保 健学
︑公 衆 衛生 法学
︑公 衆衛 生政 策学
︑国 際保 健学
︑地 域保 健学
︑ 統計 学と わか れ︑
それ
ぞれ 必要 な単 位か 取得 しな けれ ば 単機 叫室 主コ ース 輔要
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ならなかった︒私は社会疫学デ
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?を 用い た縦 断分 析 に興 味が あっ たた め︑ 統計 学︵ 実際 には
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口広号
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長 ︒品 切 ︒ ︒
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ロとい う専 門︶ に所 属し てい たの だが
︑決 断分 析学 は
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ら
7
つの 専門 の中 でも 花形 であ る政 策学
︵同 邑吾 口問
︒冨 自認
︒
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︒ロ
︶の 教官 たち が担 当し てい た︒ ちな みに
︑上 記の
7
つの専 門に は各 国か らそ れぞ れの 興味 や素 養を もっ た 学生 が集 まり
︑特 徴的 な集 団を 形成 して いた
︒臨 床疫 学 はま じめ そう な学 生が
︹現
役臨 床医 も︶ 多く
︑国 際保 健 は特 に多 国籍 で社 交家 が多 く︑ 政策 学は
Hつ
いで に︵
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問︒ ロ自 身印
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−に 通う
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なス マー トで 抜け 目な い人 種が
︑そ
して 統計 学に は数 学オ タク やお とな しい 連中 が たく さん 集ま って いた
︒
今︑当時のカリキュラムガイドを見ると︑この守決
断分 析学
﹄は 出
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﹀乱 吉宮 前官 住吉 の科 目群 に 含ま れて おり
︑上
記
7
つの 専門 群の うち
︑統 計学 か臨 床
疫学
を専 門に して いる 学生 のみ 履修 可能 とな って いた
︒ よっ て数 学的 要素 は強 い科 目と いえ る︒ この 科目 群に 含 まれ るそ の他 の科 目は
﹁経 済分 析﹂
︑﹁ 保健 機関 の運 営﹂
︑
﹁健 康セ クタ ーの 改革
﹂︑
﹁健 康政 策の 戦略
﹁﹁ 政策 分析
﹂ など など
︷以 上︑ 科目 名を 意訳
︶︑ 文字 通り 公衆 衛生 の 政策 およ び管 理学 の内 容に 終始 して おり
︑お そら く決 断 分析 学は 健康 政策 分野 では ごく 基礎 的か つ手 段を 学ぶ と いう 内容 で用 意さ れて いた もの であ ろう
︒実 際に 履修 した
﹃決 断分 析学
﹄で は事 象を 数値 化し て計 鼻す るよ う なコ
i
スワー クが たく さん 行わ れた
︒科 目群 中の 必要 単 位を 稼ぐ ため に仕 方な く履 修し た私 にと って 特に 面白 い わけ では なか った が︑ その 内容 は公 衆衛 生や 健康 科学 上 重要 たろ うと 理解 して いた のは 覚え てい る︒ 担当 教員 は
日
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とい う素 敵な 教授 で百
︶︑ 内外 の委 員会 や会 議で 忙 しそ うだ な︑ と思 った 記憶 もあ る︒ 政策 立案 など の現 場 に︑ 彼女 が切 り込 んで いっ てい る様 子は クー ルで あっ た︒ さて
︑簡 単に
ζの
科目 の内 容を 説明 しよ う︒ 乙の
﹃決 断分 析学
﹄で は医
療技
術評 価︑ 健康 政策 分析
︑医 学の 意
思決
定︑ およ び医 療資 源割 り当 てに おけ る決 断分 析と 費 用効 果性 分析 の方 法と
︑増
大し つつ ある その 応用 範囲 に つい て学 ぶこ とを 目的 とし てい る︵ と︑ シラ パス
には
書 かれ てい た︶
︒実 際に 記憶 にあ るの は︑ ロ 02 5口 0 県
0 を
描い てリ スク の確 率を 計算 した り︑
Z
×
Z表を 描い て確 率の 根拠 にな る尤 度比 やオ ツズ を求 めた り︑ それ らを 用 いて どの 手段
︵治 療や 政策
介入
など
︶が 目的 のた めに は 有効 か︑ など を計 算し たと とで ある
︒た とえ ば︑
﹃白 血 病の
35
歳の 男性 にと って︑骨 健移 植を 行う ベス トの 時 期は いつ か︵ 行わ ない ほう がい いの か︸
?﹄ とか
︑﹃ 乳 がん
︵お よび 子宮 がん
︶に 関与 する 遺伝 子の 変異 が認 め られ 26た 歳の 女性 の乳 房切 除︵ およ び︑ もし くは 卵巣
疑 同 盟
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︵ハ ーバ ード 公衆 薗生 大¥ 麿
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︑摘山 むを 行う べき か︑ それ とも 費用 と手 聞は かか る が精 密検 査を 練り 返す べき かっ
・﹄ など
︑臨 床上 の対 応に 必要 な決 断分 析の ほか
︑﹃ 火事 によ る犠 牲者 を 防ぐ ため に︑ 地域 に火 災報 知模 を取 り付 ける
ζと ︑
安全 教育 を行 うと とや 火災 予防 のた めの 厳し い条 例 を設 ける
ζと
︑消 防署 の体 制を 強化 する こと など が 考え られ るが
︑限 られ た自 治体 の予 算の 中で どの 手 段を 組み 合わ せて 実施 すべ きか
?﹄ とか
︑﹃ 南米 の 茶園 では 飲料 水中 のコ レラ 等︑ 病原 性微 生物 によ る 中毒 が原 因で 毎年 多く の国 民が 死亡 して いる
︒あ な たは 上水 道の 設備 に関 する コン サル
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テショ ンを 求 めら れて いる が︑ 同国 の某 団体 より 塩素 消毒 され た 水の トリ ハロ メタ ン生 成に よる
︿ペ ンぜ ンの
﹀発 ガ ンの 危険 性老 理由 に反 対圧 力が 泌る 中︑ いか に根 拠 ある リス クの 事実 を提 示す るか
?﹄ など
︑環 境保 樟 およ び公 衆衛 生上 の問 題対 応の ため の決 断分 析な ど につ いて 取り 上げ られ た︒
﹁決 断科 学は 不確 実性 の 下で
︑意 思決 定ヘ 向け て明 示的 で体 系的 なア プロ ー チを 行う
ζと
﹂と いわ れ︑ リス クト レー ドオ フや 費
用対効果についても考慮して︑いくつものパターンで
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﹃円︒
︒や 表を 描き
︑多 くの 確率 計算 を行 った
ζ
とは いう まで もな い︒ いず れに せよ
︑目 標と なる のは
﹁人 の健 康︵ 命︶
﹂で あり
︑こ れに 関し て最 大の 効巣 を目 指す
︑と いう 点で 考 える のは 難し くな かっ た︒ 多く の確 率計 算の 根拠 とし て 人の 健康
︵命
︶を 使っ たが
︑こ れも
﹁全 くの 健康 H
1﹂
﹁ 死
亡HO
﹂﹁ 隙害 が残 る
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﹂な どな ど︑ 数値 に置 き換 えて 評価 した
︒様 々な 場面 で人 の健 康や 命を 最優 先さ せ る日 本的 考え 方を もっ た自 分に とっ て︑ 命を 数値 化す る
︵も しく は命 に価 格を つけ る︶ こと が︑ あま りに あっ さ りと なさ れて いる 彼の 園の 合理 的態 度に 感心 した のを 覚 えて いる
︒ また
︑決 断の 対象 につ いて も﹁ 個人
﹂対
﹁集 団﹂
︑お よび 一国 や地 域﹂ 対﹁ 地球 規模
﹂な どの 視点 につ いて も 強調 され た︒
ζれ
はつ まり
︑一 部分 の利 益が 全体 の利 益 に必 ずし も結 びつ かな いと とが ある
︑と いう 考え 方で あ る︒ 目の 前の 病人 の治 療も 大事 だが
︑ま だ病 気の 診断 が つか ない 人へ 対す る予 防活 動も 重要 であ る︑
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の例 で
ある
︒後 者の 例で 言え ば︑ ある 国や 地域 の経 済発 展は そ この 人々 の生 活が 快適 にな り喜 ばし いこ とか もし れな い が︑ それ が他 国の 労働 力を 搾取 した 結果 成り 立っ てい た り︑ 経済 活動 によ り大 震の 温室 効果 ガス や微 小粒 子状 物 質を 国境 の無 いも 人気 中に 放出 して いる 可能 性が あっ たり する 場合 は手 放し では 喜ん でい られ ない
︑と いう
ζと
で ︑
この 手の 話は 医学 分野 に屈 ない 人で も聞 いた こと のあ る 話で あろ う︒ 別の 講義 とし て︑ いわ ゆる 医学 や公 衆衛 生 学に おけ る倫 理学 の科 目も あっ たが
︑い ずれ も﹁ 限ら れ た資 源︵ 人︑ 金︑ 物︶ で優 先す べき 乙と を考 える
﹂と い う点
︵し かし
︑実 際に は多 くの ジレ ンマ があ る︑ 少数 の 命を 救う ため に大 多数 の健 康を 少々 損な う場 合は どう す るの か? な戸
﹂︶ は同 じよ うに 繰り 返さ れた
︒な お︑ とと でも 一応
︑目 的は
﹁よ り多 くの 人の 健康
︵命 どで あっ た︒
現在︑当プログラムの扱う一決断科学﹂では︑持続
可能 な社 会を 目指 した 決断 科学 のあ り方 に向 かっ て取 り 組ん でお り︑ 興味 深い もの の難 しさ も感 じる
︒こ こで は 学際 性が 強調 され てい るよ うに
︑持 続可 能な 社会 とい う 目的 のた めに ター ゲッ トと すべ き効 果の 対象 が︑ 必ず し
も健 康科 学で 捉え るよ うな
﹁人 の健 康や 命﹂ と同 じで は ない から であ る︒ いずれの科学研究であっても︑多くの場合目的を突 き詰 めれ ば人 の健 康や 命に なる のか もし れな いが
︑ゴ ー ルの 種類 もし くは ゴー ルの タイ ミン グの 捉え 方次 第で は その よう に見 えな いと とも ある ロ例 えば 社会 科学 では
︑ その 国の 政治 的な 状況 や国 際的 な発 展状 況を 目指 すべ き
ゴ
1
ルと する かも しれ ない
︒そ の場 合︑
ゴ
1
ルを 図る も のと して
︑例 えば 人類 繁栄 の指 標と して
﹁人 口の 増減
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命
号死亡0
1﹂老 設足 する とと がで きる だろ う︒ さら に︑ 人の 命を 身体 的な もの だけ では なく
︑そ の社 会に おけ る 精神 的な 生き やす さや 暮ら しゃ すさ とし てと らえ るよ う なゴ
1
ル設定
−も する だろ う︒ この 点に つい ては
﹁健 康
寿命﹂きや
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平均 寿命 と健 麗寿 命︷ 厚生 胃働 省黄 輯︺
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︵ 図
1
︶な どの 健康 指標 や︑ 健康 の上 位概 念
である﹁幸福度﹂ぎなどで評価されており︑理解しに
くい ばか りで はな い︒
自然科学の分野において︑人が心地よさを感じる景
観や自然のあり方とそがゴ
1
ルのポイントと考えるなら︑ 樹木 がど の程 度必 要か
︑そ こに 生存 する 動物 や虫 な どの 生き 物の 多様 性や バラ ンス
︿比
︶︑ それ らの 存続 可 能な 数な どを 指標 にす るか もし れな い︒ とれ は一 見︑ 人 の命 の数 で表 現で きな いと との よう であ るが
︑よ く考 え て変 換す れば
︑単 純で はな いが やは り質 を考 慮し た健 康 指標 や幸 福度 のよ うな 指標 へと 変換 して 評価 でき るの か もし れな い︒ 私が
ζの学際分野で﹁決断﹂をとらえる際に難しく
感じ るの は時 間軸
︑つ まり
I
ゴルの タイ ミン グの 方で あ る︒ 人の 健康 や命 を目 標に した 場ム
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健康 科学 の分 野で は我 々の 感覚 的な 時間 軸︵ 人の 一生 を
70
年と すれ ば︑ その 期間︶を 中心 に考 えれ ばい い︒ 杏︑ 極端 なと とを い えば
︑こ の数 日か ら数 ヶ月 の健 康状 態や
︑後 数年 の余 命
効用値一 一
I 1
=完全な健康状態0
=死亡時間(t)
。
図2.倣LYの綴念
・生移隼と生活の,I{QOU の双方唱t司t•す~.
•QOL については、 1 f;殉企な・a、 o~死亡とする『富島周姐』 f:lllぃ6.
のζ
とし か考 えな いと とも ある
︒し かし
︑地 球環 境や 人 類﹁ 種﹂ の持 続可 能性 を目 標に する と︑ どの 時点 もし く
はどの程度の期聞を目標にすべきなのか?と︑先が速
くて ゴー ルが 見ゆ えに くい ので ある
︒医 学や 公衆 衛生 学な ど︑ 健康 科学 の範 購で 考え る決 断科 学は
︑せ いぜ い各 人 の人 生が 終わ るま での 数十 年老 考え れば よく
︑そ のあ た りが 単純 であ ると 改め て思 い知 らさ れる
︒
もちろん︑さまざまな情報が記録され︑過去の状態
も分 析で き︑ ぞと から ある 程度 の将 来を 推測 する とと も 可能 にな って きた 今日
︑自 分の 人生 の関 係す る数 十年 だ けを 巨視 的に 見て いる ので は役 に立 たな いだ ろう
︒個 人 的に は︑ ヒト 生物 中心 に考 えて
︑遺 伝情 報を 引き 継い だ 親世 代︿ 前の 世代
﹀か ら︑ 自分 の状 態が 影響 する だろ う 次世 代く らい まで を捉 え策 を講 じる
ζと
がで きれ ばよ い のか もし れな い︑ と︑
1世
紀ち ょっ との 感覚 で物 容を 捉 えよ うと して いる
︒し かし
︑1 世紀 そ
ζら
の時 間で は伝 統的 な価 値観 はそ んな に変 化し ない し︑ 地球 の表 面の 形 もそ う変 化し ない
︒そ れぞ れの 専門 分野 に携 わる 皆さ ん
は︑ どの くら いの スパ ンも しく はゴ
1
ルのタ イミ ング を 持続 可能 な社 会と して の訣 暫中 イン トと して 考え てい る だろうか?そのあたりを話し合うと学際分野での互い の理 解が 進み
︑少 々種 然と した
﹁決 断﹂ の将 来が 少し 明 るく 見え てく るよ うな 気が する
︒
まりと にしきたに 錦谷まりと
九州大学准教担持続可也な社会のための決断科学センター健康モジュール
山口県生:I:れ.食物構学や公察衛生学を専門とし、社会における健康格差に蝿速した研軍司1‑L従事、
2014年より現恥省・に「非正規雇用と猶働者の健康』@槽)ほか.