医 共 様 式 1
学 位 請 求 論 文 の 内 容 の 要 旨
論 文 提 出 者 氏 名 総合医療・健康科学領域 スポーツ健康科学教育研究分野 氏名 伊東 良
( 論 文 題 目 )
相 撲 競 技 者 に お け る 朝 食 摂 取 の 有 無 が 好 中 球 機 能 に 及 ぼ す 影 響
( 内 容 の 要 旨 )
【 背 景 】
相 撲 競 技 は 、土 俵 と い う 比 較 的 狭 い 競 技 ス ペ ー ス で 取 り 組 み を 行 う 無 酸 素 性 運 動 の ス ポ ー ツ で あ り 、 日 々 高 強 度 、 高 頻 度 の ト レ ー ニ ン グ を 実 施 し て い る 。 ま た 、 プ ロ の 大 相 撲 に お い て は 、 朝 早 く 起 き て 朝 食 を 摂 ら ず に 稽 古 を 行 い 、 稽 古 終 了 後 に 昼 食 を 朝 食 の 分 ま で 食 べ る と い う 伝 統 的 習 慣 が あ り 、 ア マ チ ュ ア 相 撲 で も こ れ を 踏 襲 す る こ と が 多 い 。 し か し 、稽 古 前 に 食 事 を 摂 ら な い こ と が 稽 古 後 の 免 疫 機 能 に 関 連 し て い る か ど う か 調 べ た 研 究 は み ら れ な い 。そ こ で 本 研 究 は 相 撲 競 技 者 に お け る 朝 食 摂 取 の 有 無 が 稽 古 後 の 好 中 球 機 能 の 変 化 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 調 査 し た 。
【 方 法 】
A 大 学 の 男 子 相 撲 部 員 25 名 を 対 象 と し た 。 調 査 日 の 朝 食 摂 取 の 有 無 に よ り 、 朝 食 摂 取 群 、 非 朝 食 摂 取 群 の 2 群 に 分 類 し 解 析 を 実 施 し た 。 対 象 者 の 内 訳 は 朝 食 摂 取 群 10 名
( 平 均 年 齢 19.4 歳 )、 朝 食 非 摂 取 群 15名 ( 平 均 年 齢 20.0 歳 ) で あ っ た 。
調 査 測 定 項 目 は 、 身 体 組 成 値 、 調 査 前 3 日 間 の 栄 養 摂 取 状 況 ( 自 記 式 栄 養 調 査 + イ ン ス タ ン ト カ メ ラ 撮 影 )、血 液 生 化 学 検 査( 白 血 球 数 、好 中 球 数 、筋 逸 脱 酵 素(CK、AST、 ALT、LDH) 血 糖 、 中 性 脂 肪 、 遊 離 脂 肪 酸 )、 免 疫 グ ロ ブ リ ン (IgG) 及 び 補 体 (C3) で あ っ た 。 ま た 、 好 中 球 機 能 と し て 、 活 性 酸 素 (ROS、reactive oxygen species) 産 生 能 及 び 貪 食 能(PA、phagocytic activity)、血 清 オ プ ソ ニ ン 化 活 性( 発 光 剤 に ル シ ゲ ニ ン と ル ミ ノ ー ル を 使 用 ) を 測 定 し た 。
【 結 果 】
筋 逸 脱 酵 素 は 、 両 群 で 稽 古 後 に 有 意 な 上 昇 が 見 ら れ た が 、 両 群 間 に 差 は み ら れ な か っ た 。 し た が っ て 両 群 は ほ ぼ 同 じ 負 荷 の 稽 古 を し た と 考 え ら れ た 。
血 糖 は 、 朝 食 摂 取 群 で 稽 古 後 に 有 意 な低 下が み ら れ た (p<0.01) が 、 朝 食 非 摂 取 群 で は み ら れ な か っ た 。
中 性 脂 肪 は 、 両 群 で 稽 古 後 に 有 意 な低 下が み ら れ た ( 朝 食 摂 取 群:p<0.01、 朝 食 非 摂 取 群:p<0.05) が 、 両 群 間 に低 下 率で 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た 。
遊 離 脂 肪 酸 は 朝 食 摂 取 群 で 有 意 な 上 昇 が み ら れ た(p<0.01)が 、朝 食 非 摂 取 群 で は み ら れ な か っ た 。
IgG、C3 は 、朝 食 非 摂 取 群 で 稽 古 後 に 有 意 な増 加が み ら れ た(IgG:p<0.01、C3:p<0.05)
が 朝 食 摂 取 群 で は み ら れ な か っ た 。
好 中 球 数 は 、 朝 食 摂 取 群 で 有 意 な 上 昇 が み ら れ た (p<0.05) が 、 朝 食 非 摂 取 群 で は み ら れ な か っ た 。
平常 時 ROS 産 生 能 は 、 朝 食 摂 取 群 で は 上 昇 、 朝 食 非 摂 取 群 で は低 下の 変 動パタ ー ン を示し た(p<0.05)。異 物 投 与 時 ROS 産 生 能 は 、両 群 で 稽 古 後 に低 下し た が 、摂 取 群 に
比 べ 非 摂 取 群 で顕 著な傾 向を示し た 。貪 食 能 は 非 摂 取 群 で 有 意 に低 下し た(p<0.01)が 、 摂 取 群 で 有 意 な 変 化 は み ら れ な か っ た 。
血 清 オ プ ソ ニ ン 化 活 性 で は 、 ル ミ ノ ー ル (Peak Height) は 朝 食 摂 取 群 で 有 意 に 上 昇
(p<0.01) し た が 、 朝 食 非 摂 取 群 で は逆に 有 意 に低 下(p<0.01) し た 。
【 考察】
本 対 象 に お い て 、 朝 食 摂 取 群 で は 稽 古 後 に 、 血 糖 値 が 有 意 に低 下し 、 遊 離 脂 肪 酸 は 有 意 に 上 昇 し た が 、 朝 食 非 摂 取 群 で は そ の よ う な傾 向は み ら れ な か っ た 。 し た が っ て 、 朝 食 非 摂 取 群 で は 糖質 や脂質 由 来のエ ネルギー供 給が不 十分 で あ っ た と 考 え ら れ た 。
ま た 、 朝 食 摂 取 群 で は 稽 古 後 に 好 中 球 数 が増 加す る と い う通 常の反 応が み ら れ た が 、 朝 食 非 摂 取 群 で は み ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 運 動 に よ る炎 症 反 応に 対 し て 好 中 球 の 動 員 が抑 制 され て い た可能 性 が 考 え ら れ た 。
好 中 球 機 能 で は 、 朝 食 摂 取 群 で は 稽 古 後 に ROS 産 生 お よ び オ プ ソ ニ ン 化 活 性 が 上 昇 し 、 貪 食 能 が低 下す る傾 向を示し た 。一方 、 朝 食 非 摂 取 群 で は 稽 古 後 に 3機 能 す べ て が 低 下の傾 向を示し た 。 こ の こ と か ら 、 運 動 の 内 容や負 荷 強 度 は 両 群 で 同程度 で あ っ た に も か かわら ず 、朝 食 を 食 べ な か っ た選 手で は 、糖質か ら のエ ネルギー供 給が十分 で な く 、 運 動 負 荷 に 対 し て 好 中 球 機 能 が適 正に反 応で き ず 、運 動 負 荷 後 に 好 中 球 機 能 が抑 制 され て い た と 考 え ら れ た 。加え て 、 脂質か ら のエ ネルギー供 給も十分 で な く 、 そ の供 給スピ ードも遅か っ た こ と が原 因の一つ と 考 え ら れ た 。
相 撲選 手は 連 日 の 稽 古 と過 密な試合 日程を余 儀な くされ る ため、日 々 の 稽 古 に よ る 免 疫 機 能 の保 持は 体 調管 理の点で重要 で あ る 。 そ の点か ら も 、 相 撲選 手に よ る 朝 食 摂 取 の 重要 性 が示 唆 され た 。