• 検索結果がありません。

Working Women: Japan vs. Britain

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "Working Women: Japan vs. Britain"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

Working Women: Japan vs. Britain

遠藤, 雄二

https://doi.org/10.15017/4493003

出版情報:經濟學研究. 56 (5/6), pp.131-143, 1992-04-10. Society of Political Economy, Kyushu University

バージョン:

権利関係:

(2)

日本とイギリスの女性労働者

、 土

退

藤 雄

1節 は じ め に 労働力の女性化,男女賃金格差等を中心とした 指標,雇用平等法の内容を取り上げることにし

「経済大国」日本の労働者は決して豊かとは いえない。欧米から「働き蜂」と蔑まれ,住む 家を「ウサギ小屋」と批判されてから久しい。

労働者の権利水準は国際的に極めて低<,

ILO 

条約の批准数は戦後も戦前と同じく年平均0.7 である叫労働者は経済力に比べて豊かでない から,その中の女性の地位も低い。数年前アメ リカの人口危機委員会は世界99か国の男女平等 度のランキングを発表したが,それによれば日 本は欧米諸国の全てと東欧のほとんどの国に遅 れをとり,先進国で最下位の34位であった(2)

日本の女性労働者はなぜこのような後進的地 位に甘んじているのだろうか。本稿ではイギリ スの女性労働者との比較を通してこの点を考察 することにしたい。イギリスと比較するのは,

日本と同様に年齢別労働力率が先進国で珍しく

M

字型を描いており,またイギリスの雇用平等 法の実施が日本の男女雇用機会均等法より11年 早くその実効性が日本よりはるかに高いにもか かわらず,この国の男女平等化の道のりはなお 険しいものと思われるからである。

日英の比較に際しては,女性労働者の増加と

(1)  中山和久『ILOと日本』岩波書店, 1983 11 ージ。

(2)  『日経新聞』 1988627日付,夕刊。

たい。

2

節 女 性 労 働 者

1 女性労働者の増加と雇用労働者の女性化 表

1

から日本とイギリスの女性労働者のここ 20年の動向を見ると,女性労働者が増加し,労 働者が女性化したことがわかる。日本の労働力 人口は1965年の1903万人から増加し, 1975年に は一時減少したものの1984年には2347万人とな り1.23倍となった。イギリスの場合も1965年の 867万人から増加し,1984年には1084万人となり 1.25倍となった。このように日本とイギリスの ここ20年間の労働力増加率はほぼ同一であるが,

全労働力人口中の女性の割合と女性労働力率と は日英異なった推移を示している。全労働力人 口中の女性の割合は,日本の場合1975年に2ポ イント強落ちこんでいるものの20年間ほとんど 変化がなく, 40%弱のままである。イギリスは 65年の34.0%から着実に労働力の女性化が進行 し, 84年には40.1%になった。日本では労働力 の女性化は進展しなかったのである。女性労働 力率は日本の場合75年に第一次オイルショック の影響を大きく受けて

4

ポイント下がったが,

84年には57.2%となり65年の55.8%に比してわ ずかに増加した。イギリスでは65年から85年ま

(3)

経 済 学 研 究 第 56巻 第5・6 1 日英女性労働基本指標

1965 1970 1975 1980 1984 1903  2024  1987  2185  2347  1. 労働力人口 (万人)

867  894  972  1050  1084  2. 全労働力人口中の女性の 39.8  39.3  37.3  38.7  39.6  割合   34.0  35.3  37.5  39.2  40.1  3. 労働力率 55.8  55.4  51. 7  54.9  57.2 

 

49.0  50.7  55.1  58.3  58.5  4. 就業者数 1878  2003  1953  2142  2282 

(万人)

858  884  956  1005  991  5. 雇用労働者数 913  1096  1167  1354  1518 

(万人)

822  847  917  967  932  6. 就業者中の雇用者比率 48.6  54.7  59.8  63.2  66.5 

  95.8  95.8  96.0  96.2  94.1  7. 雇用者中の女性の割合 31. 7  33.2  32.0  34.1  35.6 

  35.6  37.7  40.4  42.1  44.0 

(出所) OECD, Labour Force Statistics  1964‑1984, 1986. 

(1)  労働力率は労働力人口/15,....̲̲,64歳人口XlOO (2)  イギリスの就業者には軍隊を含まない。

で着実に増加し, 49.0%から58.5%となった。

次に雇用労働者を見ると日英とも増加してい るが,増加率には大きな開きがある。日本では 65年の913万人から84年には1518万人となり,

1.66倍となった。イギリスでは822万人から932 万へと20年間で1.13倍となっており,増加率は

日本より随分と低い。就業者中の雇用者比率の 日英の相違は周知のことであるが,その開きは あまりにも大きい(もっともイギリスの統計で は家族従事者は計上されていないので単純に比 較はできない)。日本の65年の雇用者比率は48.6

%で同年のイギリスの半分にも満たない。イギ リスの雇用者比率はもともと非常に高かったの で, 20年間ほとんど変化がない。 80年から84年 にかけて1.9ポイント減少しているが,これはサ ッチャー政権下での失業率の上昇(80年の4.7%

から84年の9.3%へ)の影響というよりはこの4 年間の自営業者の増大のためであろう。日本の

比率は初めが非常に低かったのでその後の増加 幅も大き<,84年には就業者3人中2人が雇用 者となったが,それでもイギリスとの格差は30

ポイント近くある。雇用者中の女性の割合は日 本では65年の31.7から84年の35.6と3.9ポイン ト増え,イギリスでは35.6から44.0と8.4ポイン ト増えて増加ポイントで日本の

2

倍以上となっ ている。日本の女性雇用労働者の増加率はイギ リスよりも相当高いにもかかわらず雇用者比率 ではイギリスの方が大きく伸びたのは,男性雇 用労働者の日本での大幅な増加とイギリスでの 相当な減少による。イギリスの男性麗用労働者 は1971年を100とすると84年には86.5にまで下 がっているのである叫

近年,日本でも女性化ということが謳われる ようになってきたが,表

1

2 , 7

が示してい るように女性化はイギリスほど顕著ではない。

確かに日本の女性の労働力人口も雇用労働者も

(4)

急増したが,女性化したのは労働力ではなく雇 用労働者であり,この女性化も絶対数の増加に 比べれば大きいものではない。高度成長期以後 も持続する日本経済の拡大は,女性労働者を大 幅に増やしたが同時に男性労働者も増やしたの であり,現段階では女性化を大きく促進したと

はいえない。

日英とも女性労働者が増加したが, これを結 婚の有無別にみると増加したのは有配偶の労働 者である。未婚の女性労働者の方はイギリス(就 業者)では1961年の316万人から81年の267万人 へとむしろ減少し,日本(雇用労働者)では62 年の407万人から70年には529万人と大きく増加

したが,80年には減少して440万人となり62年と 比べてわずかに増えただけである。有配偶の女 性労働者を見ると,日本の場合62年の241万人か ら80年の777万人へと3.2倍になりイギリスでは 61年の387万人から81年の621万人へと1.6倍に なっている。このように有配偶が大きく増加し,

未婚の方はわずかばかりの増加あるいは減少だ から,日英とも女性労働者の構成はこの間に随 分と変化した。とりわけ日本の構成の変化は劇 的である。表

2

から日本の女性雇用労働者の構 成の変化を見ると,未婚は62年には55.2%を占

2 日本の女性雇用労働者の構成   1962 1970 1980 55.2  48.3  32.5  有 配 偶 32.7  41.4  57.4  離 ・ 死 別 12.0  10.3  10.0 

(資料)労働省「労働力調査」

(出所)労働省『婦人労働の実情』各年版

(3)  Humphries, 

J .  

and 

J .  

Rubery, "Recession and  Exploitaition : British  Women in  a Changing  Workplace, 1975‑85",Jenson, J., E. Hagen and C.  Reddy, (eds.), Feminizaition of the Labour Force,  Polity, 1988, p. 90. 

めていたが,70年には半数を割り,80年には32.5

%と

3

分の

1

以下になった。逆に有配偶の割合 は増加し, 62年の32.7%から80年には57.4%に まで上った。この18年間で未婚と有配偶の比率 はほぼ逆転したのである。表3からイギリスの 女性就業者の構成変化を見ると,未婚は61年に 41. 7%とすでに過半数を割っており, 81年には 27.4%にまで減少した。有配偶は61年で51.0%

と過半数を占め, 81年には64.0%にまで増えた。

こうして日英とも職場の女性の

6

割前後は結婚 している者が占めるようになってきたのである。

2 M

字型一年齢別労働力率

日本の年齢別女性労働力率が

M

字型のカー ブを描くことはよく知られている。図

1

を見る と, 1955年の折れ線は右側の山が低くなってい るとはいえそれでも M字型を示し,70年と78年 のカーブはきれいな

M

字型を描いている。イギ リスの年齢別女性労働力率の方は(図

2

参照)

1951年には年齢が高くなるにしたがって労働力 率が下がっていたが, 71年と79年には日本と同 じようなM字型を示している。このようなM 字型は先進国の中で珍しく,最近では日本以外 にイギリスに見られるだけである。 Employ‑

ment Outlook (1988年)は1967年, 72年, 77年, 82年, 87年の先進15か国の年齢別女性労働力率

を図示しているが(4),これを見ると日本とイギ

3 イギリスの女性就業者の構成   1961

離 ・ 死 別

: ロ

7.3  1967371...974  

(資料) Census of Population. 

1981 27.4  64.0  8.6 

(出所) A. T. Mallier  and  M. 

J .  

Rosser,  Women  and Economy : A Comparative Study  of  Britain and the  USA, Macmillan, 1987, p.  60より計算して作成。

(5)

経 済 学 研 究 第 56巻 第5・6

%  80  10  60  50  40  30 

20 

t ‑

1978  0

0  

1519  20‑24  25‑29  30‑34  35‑39  40‑44  45‑49  50‑54  5559  60‑64  歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 65以上

歳 歳

図 1 日本の年齢別女性労働力率

(出所) A. T. Mallier and M. 

J .  

Rosser, op. cit.,  P 174 

% 9 0 8 0 7 0 6 0 5 0 4 0 3 0 2 0 1 0 0  

1951 

1979 

1519  20‑24  25‑29  30‑34  35‑39  40‑44  45‑49  50‑54  5559  60‑64  65、

歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 歳 以 上

2 イギリスの年齢別女性労働力率

(出所)図1のp.177

(1)1951年と1971年はイングランドとウェールズのみ。

(2)1979年の15‑‑‑‑‑‑19歳 は14‑19歳を示す。

リスは一貫して

M

字型を描いている。この

2

か 国以外にぼんやりとであれ

M

字型を示してい るのは

6 7

年のフランス,カナダ,アメリカ,ス ウェーデン,

7 2

年のアメリカだけである。

(4)  OECD, Employment Outlook, 1988, pp. 132‑3. 

このように先進国の中で

M

字型を描いてい るのは今では日本とイギリスだけであるが,年 とともにその

M

字型も変化してきている。日本 の年齢別女性労働力率の78年と 88年を比べてみ ると,

z o , . . . . ̲ ̲ , 5 4

オ各年齢層で上昇し,特に

z 5 , . . . . ̲ ̲ , z 9

才層では

1 1 . 6

ポイントと大幅に上昇,ついで

(6)

4 5 , ‑ . . ̲ ̲ , 4 9

オ層が

5 . 4

ポイントと大きく伸びている。

この結果

M

字型の底は

7 8

年の

z 5 , . . . ̲ ̲ , 3 4

オ層から

8 8

年の

3 0 , ‑ . . ̲ ̲ , 3 4

オ層に変化してきている(5)。イギ リスの場合は

6 7

年から

8 7

年にかけて

3 0

オ代,

4 0

オ代の労働力率が

2 0

ポイント前後高まり,これ

5 0

オ代の上昇が続いている。

2 0

年間で

M

字型 の底の部分が非常に高くなったが

2 0

オ代の上昇 は少なかったために,

8 7

年のカープは

M

字型が やがて消えそうな状況を示している。

パートタイム労働者

次に日英の女性パートタイム労働者を比較し てみよう(日本の場合は便宜的に短時間雇用者 を取り上げる)。表

4

から日本の女性短時間雇用 者を見ると,その数は

7 0

年の

1 3 0

万人から増加し

続け,

8 5

年には

3 3 3

万人となり,

1 5

年間で

2 . 6

倍 にもなっている。女性雇用者中の比率も

7 0

年の

12.2%

から増え続け,

8 5

年には

22.0%

になって いる。総務庁「就業構造基本調査」

( 1 9 8 7

年)は 短時間雇用者ではなく実際のパートタイムの数 を示しているが,それによると,

8 7

年の女性雇 用者中のパートの比率は

4

分の

1

をこえ,

2 6 . 3

%に上がっている(6)。短時間雇用者中の女性率 も増え,

7 0

年の

60.2%

から

8 5

年の

7 0 .7%

になっ ている。

5

を見るとイギリスでは日本よりはるかに 女性パートタイムの割合が高いことがわかる。

まず女性パート雇用者は

7 1

年の

2 7 6

万人から

8 1

年には

3 7 6

万人と増加し,

1 0

年間では

1 . 4

倍にな

っている。女性雇用者中のパートの比率は,

7 1

4 日本の短時間雇用者

1970 1975 1980 1985 全短時間雇用者 (万人) 216  353  390  471  雇用者中の比率   6.7  9.9  10.0  11 女性短時間雇用者 (万人) 130  198  256  333  女性雇用者中の比率   12.2  17.4  19.3  22.0  短時間雇用者中の女性率   60.2  56.1  65.6  70.7 

(資料)総務庁「労働力調査」

(出所)労働省『婦人労働の実情』 1987年,付37ページ。

(注)短時間雇用者とは週当りの就業時間が35時間未満の者で,季節的・不規則的雇用者 を含む。

5 イギリスのパートタイム雇用者

1971 1974 1977 1981 全パート雇用者数 (万人) 334  411  430  450  雇用者中の比率   15.4  18.4  19.4  21.3  女性パート雇用者数 (万人) 276  342  362  376  女性雇用者中の比率   33.5  38.3  40.0  41. 7  全パート雇用者中の女性率   82.5  83.2  84.2  83.6 

(資料) Census of Employment 

(出所) A. T. Mallier and M. 

J .  

Rosser, op. cit.,p. 136. 

(5)  労働省『婦人労働の実情』1989年版,付3ページ 参照。

(6)  総務庁『就業構造基本調査』 (1987年)全国編,

46‑7ページより算出。なお,パートにアルバイト93 2千を加えた雇用者中の比率は31.7%となる。

(7)

経 済 学 研 究 年でも

33.5%

にのぼり,日本と比べて相当高い。

そしてこの比率はさらに増え続け,

8 1

年には

41.7%

にもなっている。全パート雇用者中の女 性の割合も日本より高く,

1 0

年にわたって

8

割 強を占めている。

年齢別に女性雇用者中のパートタイム労働者 の比率を見ると,日英とも中高年でその割合が 高くなっている。日本では

1 9 8 7

年に

3 5 , ‑ ‑ . . . . , 3 9

オで

39.1%,  4 0 , ‑ ‑ . . . . , 4 4

オで

4 1 .7%,  4 5 , ‑ ‑ . . . . , 4 9

オで

39.0%, 5 0 , ‑ ‑ . . . . , 5 4

オで

32.3%

になっており,

3 5 , ‑ ‑ . . . . , 4 9

オの層 でほぼ

4

割がパートタイムである(7)。イギリス では

8 1

年に

3 5 , ‑ ‑ . . . . , 4 4

オで

51.6%, 4 5 , ‑ ‑ . . . . , 5 4

オで

4 7 . 0

%, 5 5 , ‑ ‑ . . . . , 5 9

オで

42.7%

をパートタイムが占めて いる。特に結婚している女性のパート比率は高

< ,   2 5 , ‑ ‑ . . . . , 3 4

オ で

4 9 .2%,  3 5 , ‑ ‑ . . . . , 4 4

オ で

5 6 .9%,  4 5 , ‑ ‑ . . . . , 5 4

オで

52.1%, 5 5 , ‑ ‑ . . . . , 5 9

オで

54.2%

と,これ らの年齢層で結婚している女性労働者の半数は パートタイムとして働いている(8)0

このように日本のパートタイム労働者は近年 急増し,

8 7

年には女性雇用者中のパートの比率 が

26.3%

までに上り,イギリスのその比率に近 づきつつあるが,イギリスと比べて際立ってい るのは日本のパートタイムの労働時間が長いこ とである。 表

6

から日本とイギリスのパート タイム労働者の週実労働時間を見ると,産業計 でイギリスの

2 1

時間に対して日本は

3 2 . 2

時間で,

イギリスの

1 . 5

倍以上となっている。製造業にお いては

3 5 . 9

時間と正規従業員の労働時間に近い。

平均労働時間でこれだけ長いのだから,いわゆ る「フルパート」と呼称される正規従業員並に 働くパートも多い。総務庁「労働力調査特別調 査」(昭和

5 6

年)によれば,女性パートタイム労 働者のうち正規従業員と比べて「時間・日数と

(7)  同上, 172‑3ページより算出。

(8)  Mallier, A. T. and M. T. Rosser, op. cit., p. 139. 

第 56 巻第 5•6

6 女性パートタイム実労働時間

(週あたり時間)

日本 (1980 イギリス(1977 製 造 業 35.9  21. 5  卸 売 ・ 小 売 32.2 

サ ー ビ ス 26.8  18. 7  産 業 計 32.2  21.0 

(資料) Dゅartmentof Employment Gazette,  金構造基本調査』

(出所)篠塚英子『日本の女子労働』東洋経済新報 1982 102ページ。

も同じ」だけ働くものが

22.2%

に上っている。

この割合は特に製造業で多く,

31.9%

にもなっ ている(9)。また『東京の婦人労働事情』(昭和

6 1

年版)を見るとパートタイムのうちフルパート が

29.3%

にも上っている(10)。さらに,新日本婦 人の会「第3回パートタイマーについてのアン ケート」

( 1 9 8 9

年)によれば,労働時間が正社員 並の「

7

時間以上」というものが

33.8%

に上り,

1

週間の労働日数も,

6

日が

49.6%

と半分近く になっている。この調査の対象となっているパ ートの実に半数以上(週労働日数が

7

日と答え た人の

2.5%

を含めて)が週休

2

日制と無縁なの である。女性パートタイム労働者のうち残業を 行なっている者もきわめて多く,

1 9 8 7

1 0

月の 残業実施者比率は実に

83.0%

にも上り,残業時 間の平均は月

4 . 8

時間となっている(11)

この様に日本のパートタイムは労働時間が非 常に長く労働日数も多いが,同時にその雇用は イギリスと比して随分と不安定である。日本で はパートタイマーのうち一時的雇用(他は常用 雇用)が

42.3%

を占め,イギリスの一時的雇用

16%

と相当な開きがみられる(12)0 

(9)  労働省『労働白書』 1989 236ページ。

(10)  『労政時報』 19877月24日号。

(11)  『労働白書』 1989 241ページ。

(8)

3

節 男 女 賃 金 格 差

1 日英の男女賃金格差

2

節で日英の女性労働者を概観してきたが,

次に日本とイギリスの男女平等度がどこまで進 展してきたか,「婦人解放の最重要な指標」(13)と 考えられる男女賃金格差を取り上げることによ って検討してみよう。

7

からイギリスの雇用労働者の時間あたり 男女賃金格差をみると, 1970年から77年にかけ て格差が大幅に縮小してきたことがわかる。イ ギリスの同一賃金法

( E q u a lPay Act)

が成立

した70年には男性を100として女性は63.1であ ったが,この法律が完全実施された75年には 72.1にまで急激に上昇し, 77年にはピークの 75.5にまでなった。しかしその後はこの勢いが 止まり, 81年には74.8, 85年には74.0となって 格差はわずかばかり拡大してきている。表8の 週あたり賃金格差も時間あたり格差とほぼ同じ ような推移を示しているが,男性の労働時間の 方が女性より長いから時間あたりよりも格差は 大きくなっている。すなわち,ここでも75年に かけて格差は大きく縮小し, 77年には65.1にま でなったが,それ以後は停滞して男性の3分の

2

に満たないままである。

「賃金構造基本統計調査」の「きまって支給 する現金給与額」によって日本の賃金格差の推 移をみると, 1960年の45%から格差が縮小し続 け,最近では57%ぐらいになっている。もっと もこれにはボーナスが含まれていないので正確 な男女賃金格差とはいえない。そこでボーナス も含めた月間給与総額の男女格差をみると表

9

(12)  労働省『婦人労働の実情』 1988年,付117ページ。

(13)  藤本武『国際比較 日本の労働条件』新日本出版 1984 128ページ。

の上段のようになる。 1960年には41.8と女性の 賃金は男性の4割強にしか満たない。 75年まで 格差は縮小し続けて55.8にまでなったが,その 後はむしろ拡大して85年に51.8,  88年に50.7と なり,女性労働者の賃金は男性の

5

割そこそこ まで低下した。次にこの給与総額を月間実労働 時間で割って時間あたりの賃金格差を算出して みると,この表の下段のようになる。月間実労 働時間は女性の方が少ないために格差はこちら の方が少ない。 60年の50.0から75年には10ポイ ント格差が縮小して60.2にまでなったが,その 後わずかばかり格差が拡大して88年には57.7で ある。このように75年から88年にかけて時間あ たり格差も月間給与総額格差も拡大しているが,

格差の拡大幅は給与総額の方が大きい。これは この間に女性の実労働時間は減少し,男性は逆 に拡大したためである(女性2時間減,男性 8 時間増)。

以上の日本とイギリスの男女賃金格差を比べ てみると,日本の格差がいかに大きいか歴然と

7 イギリスの雇用労働者の男女賃金格差

(時間あたり)

70  74  75  77  79  81  83  85 63 .1  67. 4 72 .1  75. 5 73. 0 7 4. 8 7 4. 2 7 4. 0 

(資料) EOC,  Women & Men in  Britain,  HMSO, 1985. 

(出所)浅倉むつ子「イギリスの平等二法をめ ぐる新しい動き」日本婦人団体連合会 編『婦人白書』 1988 76ページ。

(注)男=100, 18歳以上のフルタイム労働者,

時間外手当を除く。

8 イギリスの雇用労働者の男女賃金格差

(週あたり)

72  7 4  75  77  79  81  83年 55.8  56.6  61.8  65.1  62.6  65.4  65.3 

(出所) Department of Employment, Employment  Gazette, 各年版より計算。

(注)男=100,男は21歳以上,女は18歳以上のフルタ イム労働者,各年4月,全産業。

‑137‑

(9)

経 済 学 研 究 第56巻 第5・6 9 日本の雇用労働者の男女賃金格差

60  65  70  75  80  85  88年

は芯竺:~:

: こ : 芯 : 芯 : : 2 : 芯 2 ] 芯 : 盆 : 芯 : ; :

(資料)労働省「毎月勤労統計調査」

(出所)労働省,『婦人労働の実情』各年版

(注)男=100。事業所規模30人以上, 70年以降はサービス業を含む。時間あたり賃金の男 女格差は男女の月間現金給与総額を月間実労働時間で除して算出。

している。もっとも,対象となっている労働者 が日英違うので単純に比較することはできない。

例えば,イギリスではフルタイム労働者の格差 を取っているが,日本では事業所規模30人以上 の常用労働者を対象としているため, 30人以上 という点では格差は実際より少なめにでてお り(14),常用労働者には一部のパートタイマーも 含まれているという点では格差は多めにでてい る。これらの不十分な点はあるが,時間あたり 格差によって日英の違いをだいたい把握するこ とはできるし,また両国の賃金格差の推移に関 してほぼ正確につかむことができる。イギリス の女性労働者の時間あたり賃金は男性の

4

分の 3にまでなったのに対して,日本は 6割にも満 たない。しかも,イギリスでは同一賃金法が成 立した1970年以降に格差は急速に縮小して10ポ イント以上の改善が行われたが,日本は今日で も70年の水準のままである。労働基準法第

4

条 には「使用者は,労働者が女子であることを理 由として,賃金について,男子と差別的取扱を してはならない」と明記してあるが,これがほ とんど実効性を持たなかったといえよう。もっ とも日本の場合も60年から75年にかけて格差は 10ポイント縮小している。しかし,これはこの 15年間に女性の勤続年数が4.0年から5.8年へと

(14)  全雇用者中事業所規模30人以上の雇用者の割合 は男性でほぼ7割,女性でほぼ6割である(『婦人 労働の実情』参照)。

大きく伸びたことが影響していると考えられる。

イギリスの雇用平等二法と男女賃金格差 イギリスでは男女の賃金格差の是正を目指し て1970年に同一賃金法が, 1975年に性差別禁止 法

( S e xD i s c r i m i n a t i o n  A c t )

が成立し, 75年 の12月から完全実施された。同一賃金法は先に みてきたように,男女賃金格差縮小のために効 力を発揮した。しかし,この法律の下で組合の 交渉やストライキを通じて同一賃金を獲得した 女性もいたが,多くの女性は依然として低い賃 率の「女性の職務」についており(15), 77年以降 は格差は縮小しないままである。したがってこ の法律だけでは格差是正に限界があり,高賃金 で上級の男性職種に女性を就かせて男女の職業 分布の平等化を促進する必要がある。これが性 差別禁止法のねらいである。

以下二法の主な内容をみると(16),同一賃金法 は同一あるいは類似の労働に就いている場合の 賃金差別を禁止し,さらに職務評価によって同

(15)  Cook, A. H., V. R. Lorwin and A. K. Daniels,  Women and Trade Unions in Eleven Industrial‑ ized Countes,TempleUniversity Press, 1984, p.  146. 

(16)  同一賃金法と性差別禁止法の内容については,本 多淳亮『男女雇用平等法とはなにか― 先進国ニッ ポン の条件』ダイヤモンド社, 1984年,柴山恵美 子編『世界の女たちはいまー各国にみる男女平等の 波』学隔書房, 1984年,高島道枝「イギリスにおけ る雇用平等への道」(上)(下)『日本労働協会雑誌』

19842月号, 3月号, を参照。

‑138‑

(10)

一価値労働と査定された場合の賃金差別も禁止 している。ただし,比較できる男女労働者は同 じ雇主に雇われている場合に限られ,他企業の 同一職務との比較はできない。また男女が同一 労働に従事していても,勤続年数,年齢,経験,

資格などの違いのために賃金格差が存在し,し かもその格差が性差別でないと認められた場合 には,同一賃金を要求できない。このように同 一賃金法には大きな制約があるが,それでも具 体的規定のない日本の労基法

4

条と比べれば格 段の相違がある。

性差別禁止法は雇用分野においで性や結婚を 理由として直接的差別を禁止するとともに,形 式的には差別でないが結果として女性に不利益 となるような職務要件を間接的差別として禁止 している。直接的差別とは,例えば女性がトラ ック運転手の仕事を遂行する能力も資格もある のに,この職務に就くことを拒否されるという ような場合である。間接的差別とは,その職務 の要件が形式的には男女平等にみえても,結果 的にはそれを満たす女性の割合が男性よりも少 なくなり,しかもその要件が正当であることを 示すことができない場合,例えば年齢28オ未満 とか,身長

1 7 0

センチ以上,体重

5 6

キロ以上とい った職務の遂行に必要でない資格要件を使用者 が職務に課している場合をいう(17)。この法律で 禁止される差別の範囲は非常に広く,募集,採 用,昇進,訓練から労働組合が行う女性組合員 に対する差別まで含み,また教育分野での性差 別,公衆のための施設やサービスの提供に関す る性差別,広告での性差別も禁止されている。

性差別禁止法はさらに雇用平等二法の実施を監

(17)  Cf.,  Ruggie,  M.,  The  State  and  Working  Woman: A Comparative Study  of Btainand  Sweden, Princeton University Press, 1984, p. 119. 

視し,雇用平等を促進する独立の機関として機 会均等委員会を設置し,公式調査権,差別停止 通告権,裁判所への差止命令請求権を与えてい

る。

このように性差別禁止法は差別の禁止範囲が 非常に広く,また直接的差別だけでなく間接的 差別も禁止し,さらに公式調査権を持つ独立の 行政機関を有しており,差別是正のための実効 性は日本の男女雇用機会均等法よりもはるかに 大きい。しかし,性差別禁止法は男女平等を促 進するために弱点を持っていることも事実であ る。例えば,年金に関する差別はこの法律から 除外されており,また差別の是正・救済の申し 立ての場合に挙証責任は裁判所に提訴する女性 側におかれている。さらに,機会均等委員会の 権限も弱く,雇用における差別のパターンに大 きな変化をもたらしていないことなどが指摘さ れている(18)

イギリスの男女賃金格差は

7 0

年から

7 7

年にか けて急速に縮小し,その後は停滞したままであ った。雇用平等二法の実施にもかかわらず,な ぜ賃金格差はこれ以上是正されないのであろう か。男女の賃金格差を考える場合に,まず男女 同一価値労働同一賃金の原則がどれだけ守られ ているかを問題としなければならないが,機会 均等委員会は

7 7

年に同一賃金法が賃金格差是正 に果す能力はここまでが

( 7 5 . 5 % )

限界だと判 断したといわれている(19)。したがって,賃金格 差の是正が進まなかったのは格差のもう一つの 要因である職務分離の解消が進展しなかったた めだと考えられる。

この職務分離には水平的職務分離と垂直的職 務分離がある。水平的職務分離とは男性は「男

(18)  Cook, A. H., et.  al.,  op.  cit., pp. 149‑50.  (19)  高島,前掲書, 2月号, 26ページ,参照。

‑139‑

(11)

経 済 学 研 究 性の職業」に,女性は「女性の職業」に就くと

いうように,男女が異なったタイプの職種で働 いている場合をいう。垂直的職務分離とは男性 と女性が同じ職種で働いているけれども,男性 は熟練・責任度が高くて高級の職務に就いてい る場合を指す。ハキムは労働力調査の分析から 水平的職務分離の状況は

7 0

年代を通じてほとん ど変化しなかったと述べている。すなわち,全 職種の

4

分の

1

は典型的な女性の職種(ここで はその職種における女性比率が全就業者中に占 める女性比率より多いものを指す), 4分の 3は 典型的な男性の職種(この場合も同様)であっ て

7 0

年代を通じてこの状況に全く変化がなかっ た。さらにもっと詳しくみると, 1979年には全 女性就業者のうち27%が女性占有率90%以上の 職種に就き,全男性就業者のうち58%が男性占 有率90%以上の職種に就いていて, 71年の状況

56巻 第5・6

て い る ) と ほ と ん ど 変 化 が な い ま ま で あ っ

t.,.(20) 

<

.... 

このように水平的職務分離の状況は

7 0

年代を 通じてほとんど改善されず,このために男女賃 金格差の縮小が77年以来進展しなかったと思わ れるが,垂直的職務分離の方はどうであろうか。

1 0

は事業所レベルの職務分離を示したもので あるが,これをみると男性は上級の職種に,女 性は下級の職種に就いており,水平的・垂直的 職務分離がはっきりしている。即ち,職長・監 督の91%,雇主・マネージャーの77%は男性だ けが就いている職務であり,また個人サービス の62%は女性だけが就いている職務である。図 3は公務員の職階別女性比率を示しているが,

(女性は25%,男性は53%が同上の職種に就い

女性は下位職務に集中しており,垂直的職務分 離現象をはっきりみてとれる。また教師の場合 はこれほど顕著ではないが,垂直的職務分離の 状況は74年から 82年にかけてほとんど改善され

10 各職種の性別構成

女就い性てだいるけ職務 男就い女ていると職務 ノンマニュアル職種

雇主・マネージャー 7  17 

専門職・科学 3  48 

中間職 7  66 

下級職 36  54 

個人サービス 62  38  マニュアル職種

職長・監督 2  6 

熟練工 5  14 

半熟練工 27  44 

不熟練工 29  30 

全職種 21  33 

(職務実数) (500)  (777) 

(資料) IFF Research Ltd,  Women at  Work, Vol.  1,  pp. 24‑5. 

(出所) Hakim, C.,  op. cit.,p. 526. 

(注)*は0.5%以下。調査対象は規模11人以上の764事業所。

(1979年,%)

男就い性てだいるけ職務

77  49  28  6 

* 

91  81  29  42  45  (1071) 

(20)  Hakim,  C.,  "Job  Segregation : trends  in  1970s", Employment Gazette, Dec. 1981, pp. 523‑4. 

‑140‑

(12)

Permanent  Secretary  Deputy  Secretary  Under  Secretary  Principal  Senior Executive  Officer  Higher Executive  Officer  Executive  Officer  Clerical  Officer  Clerical 

Assistant  74.9 

0  10  20  30  40  50  60  70  80  90  100  図 3 公務員の職階別女性比率 (1985

(資料) EOC, Women & Men in Btain,1985. 

(出所)浅倉むつ子,前掲書, 78ページ。

ていない(21)

同一価値労働同一賃金の原則が確立されてい ても,女性が男性と同じ職種・職務に就いてい なければ,すなわち水平的・垂直的職務分離が 解消されて行かなければ男女賃金格差は是正さ れない。 70年代後半以降,男女賃金格差の縮小 は進展しないままであったが,それは以上検討 してきたように職務分離の状況がなかなか解消 されないことによるものと思われる。

3 日本の均等法と男女賃金格差

日本の男女賃金格差の要因としては企業規模,

勤続年数,学歴,職種等の違いがあげられる。

まず企業規模については,女性雇用者は男性よ り小規模企業に勤める割合が多い。 1970年に1

, . . . ̲ ̲ , z g

人規模企業に勤める女性の割合は

3 7.1%, 

男性は

30.1%

であったが,この割合は

8 8

年まで 男女ともほとんど変わっていない。表

9

の時間

(21)  高島,前掲書, 3月号, 34ページ, Mallier,A. T.  and M. T. Rosser, op.  cit., p. 119, 参照。

11 男女別勤続年数別時間給格差 勤 続 年 数

I  o

1,....̲, 2

I

3 ,....̲,  4 男性労働者

女性労働者

973  699 

1026  748 

1094  793  格差(男性=100) I 

n  .  s 

I 72 . 9 I 72 . 6 

(資料)労働省「賃金構造基本統計調査」 (1987

(出所)労働省『労働白書』 1989年,参110ページ。

(注)一般労働者。時間給は月所定内給与を月所定内 実労働時間で除したもの。

あたり賃金格差には規模

2 9

人以下の企業は含ま れていないから,実際の格差はもっと大きい。

次に勤続年数の違いをみると

8 8

年で男性は

1 2 . 2

年,女性は7.1年である。女性の勤続年数は60年 から71年にかけて伸び率で男性を大きく上回り

(女性は

1 . 4 5

倍,男性は

1 . 2 9

倍)この間の賃金 格差を一定程度縮小することになったが,その 後

8 8

年にかけて伸び率は低下して男性と同じに なり,男女の勤続年数の差は依然として大きい ままである。しかし勤続年数が同じでも賃金格 差はある。表

1 1

から勤続

5

年未満の一般労働者

(13)

経済学研究第 56 巻第 5•6 12 男女別年齢別時間給格差

13 ‑‑‑‑.,  2 0  2 5  3 0  3 5  4 0 

4 5  5 0 

5 5 

6 0  6 5  19 ,..̲̲.z4 ,..̲̲.z9  ,..̲̲̲,.34  ,..̲̲̲,.39  ,..̲̲̲,.44  ,..̲̲̲,.49  ,..̲̲̲,.54  ,..̲̲̲,.59  """64 男性労働者 698  852  1063  1306  1528  1731  1819  1776  1536  1223  1132  女性労働者 643  772  897  940  940  938  907  906  948  923  932  格差(男性=100) 92.1  90.6  84.4  72.0  61.5  54.2  49.9  51.0  61. 7  75.5  82.3 

(単位円)

(資料)表11と同じ。

(出所)表11と同じ。

(注)一般労働者。

の男女賃金格差をみると,勤続

0

年,

1 ‑ ‑ ‑ . . . ,   2

年, 3 ,...̲̲,  4年いずれの場合も女性の賃金は男性の 7 割強にしかすぎない。この表は勤続

5

年未満の 比較であるから男女の昇進状況の違いによる賃 金格差はほとんど現れてこない。したがって,

格差が生じているのは女性が低賃金の職種に集 中しているためである。

日本の賃金は年齢・勤続とともに上昇する年

働者では45,,....̲̲,49オまで賃金が上昇し,この年齢 では18,,....̲̲,19オの2.6倍となっている。女性労働者 では上昇するのは30,,....̲̲,34オまででそれ以後は横 ばいとなる。しかも18,,....̲̲,19オから30,,....̲̲,34オまで の上昇率も男性よりはるかに少ない。したがっ て,男女の賃金格差は年齢とともにますます開 いている。男性の賃金を 100とした女性の賃金は zo,,....̲̲,z4オで90.6, 30,,....̲̲,34オで72.0, 40,,....̲̲,44オで 54.2と格差は広がり,男性のピークの45,,....̲̲,49オ では49.9と半分を割っている。このように年齢 が上がるにしたがって格差が大きくなっている のは男女の職種の違い以外に,女性は学歴が低 いために昇進が遅いこと,結婚,出産,育児に より仕事を中断するために年功上の不利益を被

100 

92.3  90  80 

70 

68.5  ‑‑ 70.0  60 

50 

〜 ‑‑‑ 功賃金であると言われ,それが「日本的労使関

係」の三種の神器の一つに数えられてきた。近 年,この年功賃金にも修正が加えられてきてい るが,表12をみると年功賃金とは男性にのみあ てはまる賃金であることが明瞭である。男性労

5 0 S 5 4   4 5 s 4 9   4 0 s 4 4   3 5 s 3 9   3 0 s 3 4   2 5 S 2 9   2 0 S 2 4   1 8 S 1 9 オ

4 標準労働者の年齢別男女賃金格差

(資料)労働省「賃金構造基本統計調査」

(19866月)

(出所)労働省『婦人労働の実情』 1987 付64ページより作成。

=100,標準労働者とは学卒後ただ ちに企業に就し,同一企業に継続勤 務している労働者をいう。ここでは,

旧中・新高卒のみ。

っていること等があげられる。では学歴と勤続 が男女同じ場合,賃金格差はないのであろうか。

高卒後就職し,そのまま同一企業に継続勤務し ている標準労働者の賃金を比べてみると図

4

の ようになる。初任給から差があり,年齢ととも に格差は開いている。これは手当,職種,管理 職への昇進状況の違いによるものと思われる。

ちなみに,管理職のうち女性の占める割合は最 近でも極端に低く,上場企業のうち女性管理職

‑142‑

(14)

(係長・課長代理相当職以上)の割合は

1.1%

に すぎない(22)

男女賃金格差については女性パートタイム労 働者の賃金にも触れておかなければならない。

女性一般労働者を100としたパートタイム労働 者の時間給は

1 9 8 7

年において

71.9%

にしかすぎ ず,イギリスの場合(生産労働者で

88.8%)

と 比べてはるかに低い。しかも表

1 3

のように一般 労働者との格差は近年拡大してきており,この ことが

7 5

年以降の男女賃金格差の増加に結びつ いているのである。

86年 4月から男女雇用機会均等法が施行され たが,この法律は以上のような男女賃金格差の 状況を改善するのに一体どれだけの効力を持っ ているのであろうか。『労働白書』

( 1 9 9 0

年版)

は「

6 0

年以降男女間格差が縮小に向かった背景 には

6 0

6

月のいわゆる男女雇用機会均等法の

13 女性の一般労働者とパートタイム労働者の賃 金格差の推移

1976 80 83 so.6  I 76.2  I 75.3 

(資料)表11と同じ。

(出所)表11の付134ページ。

(注)一般労働者=100,時間給。

87 71.9 

(22)  日本経済新聞社編『ウーマン・フロンティア』日 本経済新聞社, 1988 12ページ。

制定等の効果もあったとみられる」(23)と述べて いるが,表

9

をもう一度みればわかるように,

事実は均等法以降も格差が拡大しているのであ る。周知のように,均等法は募集・採用ならび に配置・昇進については努力義務とした。また,

「男子と差別的取扱いをしてはならない」とし た教育訓練から

OJT

は除外した。これでは男 女格差縮小の「効果」は薄くならざるをえない。

とはいえ,均等法によって女性も能力と意欲 があれば男性並に働く可能性が開けてきた。そ して総合職として採用される

4

大卒女性も増え てきた。しかしながら,総合職女性も女性のみ に家庭責任を押しつける伝統的役割分担という 厚い壁に阻まれ,その前途は険しい。コース別 管理に関する初の総合的調査によれば,

8 7

9

月から

8 9

5

月の間に退職した女性が総合職

A

1 1 . 4 % ,

総合職

B

(基幹的業務に従事する が転居を伴う転勤はない)では

35.6%

にも上っ ているのである(24)。均等法の下ではよほど家庭 環境に恵まれるか,あるいは家庭を放棄しない 限り,能力は活かされないというべきであろう。

そして,男女賃金格差縮小のために均等法改正 も含めてさらに数段の努力が必要であろう。

(23)  『労働白書』 1990 162ページ。

(24)  女性職業財団「コース別雇用管理に関する研究会 報告書」 19906 44ページ。

参照

関連したドキュメント

あいまいさに対する不寛容 と政治的態度 との関係 は性 によって異なることを示 し ,男 子 の場合 にのみ 文脈説 &#34;が 適合することを指摘 している。 また ,原 田

political Economy of Patent Protection and Economic Growth.

*  A lecturer at Kanto Gakuin University and Kokushikan University, and researchr belongs to project of BDKE(Bibliographical Database of Keio Economists) at The Keio

throughnegotiationsbetweenlabourunionsandindustrialistsorwiththestate・That

tion,wassoonreplacedwithModemjmsj,orModemization・Thepolicyof

tion(Komiyal988).Hisdefinitionofindustrialpolicystandsonthe

The Honeyford Affair and the Rushdie Controversy” (27 November 2004), (4) Akira Ohira (Waseda University), “The Structure of ‘Industry Novels’ in David Lodge’s Nice

While single children share most of their income with their parents, when married, people usually spend their income for their own family and rarely share it with their