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SEM 走査電子顕微鏡による水の観察 No.98057

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Academic year: 2021

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走査電子顕微鏡による水の観察 No.98057

キーワード:走査型電子顕微鏡、SEM、低真空、水、撥水性

概要

 光学顕微鏡はものの観察に光を用いるため、

その波長の半分より小さなものは観察できませ ん。可視光線でもっとも短い波長は 0.4μm(1 μm=0.001mm)ですから、光学顕微鏡では 0.2 μm より小さなものは、どんなにレンズの性 能を上げたとしても、観察できないのです。

 そこで、もっと小さなものを観察するために、

光よりずっと波長の短い「電子」を使った顕微 鏡、すなわち電子顕微鏡が開発されました。

 電子顕微鏡にはいくつかの種類があります が、試料作りや操作が簡単な、走査型電子顕 微鏡(Scanning Electron Microscope : SEM)が 近年飛躍的に普及してきました。ここでは、

水を観察できる特殊なSEMについてご紹介し ます。

電子顕微鏡とは

 SEMはできる限り細く絞った電子ビームを、

順次試料に照射し、そこから出てくる2次電 子の量を明るさに変換して画面に表示します。

試料にあたるビームの径が細いほど小さなも のを見ることができます。電子ビームの通り 道に空気が存在すると、ビームの散乱が起こ り、小さなものを見ることができなくなりま すので、通常のSEMは装置の内部を高真空に 保って観察を行います。試料も高真空下に置 かれますので、乾燥している必要があり、電 子線による帯電を防ぐため、導体であるか、

導体でなければ金などのコーティングを行っ て電気伝導性を持たせる必要があります。

 ところが、近年、水を含んだ試料を乾燥さ せず、自然な状態で観察したいという要求が 多くなり、低真空型のSEMが開発されました。

低真空型SEMは、電子線の通過経路のうち、

試料の周囲だけを低真空(数 Pa〜500Pa)に保 ったまま観察できる装置です。試料の周囲を 低真空に保つことで、試料の乾燥を防ぎ、よ り自然に近い状態で観察することができます。

また、試料周囲にわずかの空気が存在します ので、これに電子ビームや2次電子があたる ことで、空気を構成するガス分子の持ってい る電子がたたき出され、プラスの電荷をもち ます。これに対し試料には叩き込まれた電子 がたまりますが、これらが互いに影響し合い、

中性化されますので、不導体試料でも帯電が 起こりません。(図1) したがって、不導体 でもコーティングをせずに観察することが可 能となります。文化財のようにコーティング することが許されない試料でも、低真空 SEM なら観察することができます。

図1 低真空SEMにおけるイオンの動き

水の観察

 当研究所には、上で説明した低真空SEMよ りさらに大気圧に近い状態で観察が行える装 置が設置されています。この装置は、特殊な 検出機構により、従来の低真空SEMより一桁 低い真空度(10Pa〜2700Pa)で観察できます。

この結果、従来の低真空SEMの特徴に加えて、

試料表面に結露した水そのものが観察できる という特徴を持っています。

それではどのような環境下であれば水が存在 できるかを考えてみます。図2に温度と飽和 水蒸気圧の関係を示します。飽和水蒸気圧と は、その温度で水が蒸発せずに存在できる圧 力と考えてください。このグラフから、温度 が5℃のときの飽和水蒸気圧は約 850Pa であ ることがわかります。従って、試料の温度を 5℃にして、周囲の圧力を 850Pa 以上にする

(2)

と、試料の周囲だけに水が存在できるように なります。また、試料が冷却されているため に、試料室に水蒸気を流し込むと、表面に水 が結露します。同じ理由から、水を含んだ試 料でも温度を下げて、その温度における飽和 水蒸気圧付近で観察することで、試料に含ま れる水の蒸発を防ぐことができます。

図2 温度と飽和水蒸気圧の関係

観察例

 図3は低温プラズマ処理によって羊毛単繊 維表面の親水性がどのように変化するかを調 べた結果です。(a)は低温プラズマ処理を行っ ていない羊毛ですが、水が丸く玉のようにな っているのがわかります。いっぽう、低温プ ラズマ処理を行ってから観察した試料(b)は、

(a)に比べて水がはじかれず、表面で拡がった 様子が観察できます。この結果から、低温プ ラズマ処理によって羊毛表面の親水性が向上 するということがわかりました。

 このように、この装置を用いると、光学顕 微鏡では見ることのできないミクロンオーダ での撥水挙動を観察することができます。

図4は、アルミ板を十分に冷却してから水 を結露させ、結露すると同時に凍らせたもの です。美しい六角形の結晶がどんどん成長し、

隣の結晶とぶつかり合う様子を連続的に観察 することができます。このような動的な観察

はビデオに記録します。

 この他にも、多くの方が当研究所の機器利 用制度を活用して、水分を含んだ試料の観察 を行い、大きな成果をあげておられます。

 図3 羊毛単繊維に付着した水   (a) 未処理羊毛

  (b) 低温プラズマ処理(500W,10min) 羊毛

図4 アルミ表面に析出した氷の微結晶

作成者 生産技術部 高分子材料グループ 森田 均 Phone:0725-51-2581 発行日 1999年3月15日

参照

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