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正しい走査型電子顕微鏡の使い方

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Academic year: 2021

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(1)解 説. 正しい走査型電子顕微鏡の使い方 電子顕微鏡室 島田保昌.  最近研究材料の微細構造観察のために,光学顕微鏡に代わり走査型電子顕微鏡による 観察が普及してきた。本学でも簡易型から中級型までいろいろな機種が各研究室に設置さ れるようになってきた。.  走査型電子顕微鏡(SEM)の特徴は光学顕微鏡に比べ,  1.試料作りが簡便であること。.  2.数10倍から数100倍の分解能でしかも高倍域観察が可能であること。  3.試料に凹凸があっても焦点深度が大きいので微細構造が克明に観察できること。  4.比較的簡単な訓練で像の観察,写真撮影が可能であること。 などから,高度な研究開発用の高級機種から簡易型装置まで広く普及している。.  ところが,当室で時折参考資料として提示されるSEM写真は,はなはだお粗末なもの が多く,基本的にSEM装置を十分に理解していないのではないかと思われるので差し出 がましいことかも知れないが,より優れたSEM像が得られるようその使用に当たっての 留意すべき要点を述べて参考に付したい。.  (1)  電子銃(Electron Gun).    通常型のSEMでは細いタングステン線をヘアピン状に加工したものを熱陰極(フィ ラメント)とし,これを高真空中で加熱し熱電子を放出する。この電子に高いエネルギー. を持たせるため,フィラメントとアノード(陽極)間に高電圧をかける。またフィラメン ト,アノードの間にはウェーネルト(グリッドともいう)という制御電極をおきクロスオ. ーバーポイント(点光源)が得るようになっている。この点光源が集束レンズ(Condense rLenz)によってさらに縮小されいわゆる電子ビームとして観察試料面に照射される。こ の部分を電子銃部と呼ぶ。ここまでは機械的に設定されているが,装置の使用者が調整し なければならないのが,ウェーネルト先端とフィラメント先端の位置関係の設定である。. フィラメント交換時には使用書に基ずき出来るだけ正確に設定しなければいけない。不適 切な設定は電子ビームの発生に極端な過不足を生じ,装置の運転に支障を来すことがある。 また,見落としがちなことだが,フィラメントホルダー部分は,長時間使用によってカー ボン質の汚染が進み導電不良を生じ観察像(電子線電流)に変調を来すことがあるので, 劣化(汚染)が著しいものは交換する必要がある。. (2)    絞り  (Aperture).  SEM装置には2個の絞りが組み込まれている。 一3一.

(2) コンデンサー絞り(C.L. Aperture固定).  SEM装置上方には集束レンズ(Condenser Lenz)がある。その中に組み込まれて.  いる感奮数100μφの固定絞り 対物絞り(0.LAperture可動)  試料に近い方の対物レンズ(Objective Lenz)に組み込まれる絞りで一般的には.  数種類の異なった穴径を持ち真空外より穴径を任意に可変使用できるようになつ  ている。.   絞り(O.LAperture)の穴径は試料とその観察目的によって適宜裁量しながら.  最適なものを選ぶ。その大まかな目安としては高倍で分解能重視の場合は最小の.  もの,103倍範囲の程度で師範に滑らかさを求ある時は中位のもの,特に蘇る  さが欲しい場合には最大口径のものを使用する。破断面など凹凸の激しい試料面  の観察には小口径のものがよい。一般的には加速電圧を高くし,小口径の絞り穴  を用いると焦点深度はより大きくなる。. これらの絞りは常に電子線にさらされるため汚染が進行する。特に対物絞りは試料 から発生するガスなどにより汚染の度合いが著しい。後述する非点補正に影響する。 いずれにしてもどちらの絞りも消耗品的部品として定期的に交換することが装置の 保守上からも望ましい。.  最近の装置ではコンデンサー絞りの交換はメーカーによらねば難しいものもある が特に観察像の優劣に影響しやすい対物絞りはその交換はユーザーでも簡単にでき るので汚染が進んだものは惜しむ事なく交換した方がよい。. (3) 二次電子検出器.   SEMではシンチレーターと光電子増倍管(PMT)の組み合わせで,最終的に  二次電子を電気信号に変換し顕微鏡像としてブラウン管(CRT)に投影する。特  に試料室に置かれているシンチレーターは,試料表面から霧のように発生する二次  電子を捕捉する機能を有しているものでこの性能が劣化すると観察像にノイズが発  生したり脚質の低下につながる。永久的なものではないので装置の使用頻度にもよ  るが数年毎に交換する必要がある。シンチレーター表面は薄いアルミの蒸着膜で覆  われているのでその取り扱いは慎重にしなければならないが,ユーザーが交換でき  ないものではないので装置の状態を確認し必要なら交換する。. (4) ブラウン管.   装置によっては観察用ブラウン管と撮影用ブラウン管が兼用のものがあるが特に 撮影用の非残光性ブラウン管はカメラに隠れ普段はその汚れが見落とされがちだが,.  静電気などで汚れやすい。このまま写真撮影をすると写真上に影響が出る。時に試 料が有する組織と誤認することもあるので,出来る限り頻繁にレンズ磨き用の布等 一4一.

(3) で清浄に保っておく。.  いずれのブラウン管も永久的に使用できるものではない。観察像が暗くなって見 えるようになると交換の必要がある。. (5) 非点収差補正装置(St igmator).   一般的には対物レンズ近傍に二極一対のそれぞれXあるいはY方向のみに屈折力   をもったレンズを装備し,対物レンズの非点収差を取り除く装置である。.    ところで,非点収差があると観察像が一方向に流れる現象が生じる。例えば   真円の物体を観察するとフォーカスをいかに合わせてもその輪郭が捕らえきれ   ず特定の方向の縁辺のみに焦点が合う場合である。これは装置が持つ固有の収   差によるもので,これを除去するのが非点補正作業である。装置の使用に際し.   ユーザーが軽視し勝ちでかつSEM観察で最も重要なポイントである。最近の   装置は自動的に補正される機能が備えてあるが,高倍域(104領域)になると   その機能が十分に発揮できない場合があるので,基本的には手動で補正ができる.   よう訓練しておく必要がある。非点収差がある場合1000倍程度では明瞭に確   認できないこともあるが,1万倍以上になると補正が十分でないとはっきりと非   点が確認されるようになる。非点がある像は一方向のみ焦点が合った像になる。.   非点補正の目安は撮影(観察)倍率の1ケタ上の倍率像か1万倍以上の観察では   2∼3倍の倍率像で補正するとよい。理想的には加速電圧や試料が変わるごとに   補正する。ここで注意したいことは,どのように補正作業を行っても非点が除去   できないときは鏡筒の汚れ特に対物絞りの汚れに原因があることがあるので,こ.   の場合は鏡筒クリーニングや対物絞りの交換が必要となる。また試料が強磁性体   の場合でもこの現象が生じることがある。. (6)鏡筒クリーニング  フィラメントの交換時,あるいは対物絞りの交換時には電子銃室(ウェネルトを  含む)や絞りホルダーのクリーニングが必要である。この際,副成分を含んだ研  摩材を使い過ぎないこと。揮発性のよい溶剤で丁寧に清拭すること。  絞りは極端に汚れていなければ蒸着装置で再生が可能である。. (7)加速電圧の選択  理論的には,加速電圧が大きくなれば電子線の波長はより短波長となり分解能が.  向上する。SEMでは試料表面から発生する二次電子も加速電圧が高くなればそ  れに比例し増加する。試料面は微視的に見れば至る所に凹凸があり,二次電子の  発生メカニズムから垂直に入射する電子線と観察試料面の組織がなす角度が鋭角  であるほど,二次電子の発生が増幅される(エッジ効果)。その結果突起部周辺  の平滑な部分の構造は突起部の高コントラスト輝度によりその微細構造の観察能  力は低下する。従って,表面構造が複雑な試料や凹凸の激しい破断材料の観察に 一5一.

(4) は加速電圧10kV程度で十分である。もちろんこのような試料でもより高倍率 で局所的観察を目的とするときは最高の分解能を発揮し得る加速電圧を選択しな ければならない。一般的には高加速にすれば(同一一電流量の場合)像質はより滑. らかさと明るさをもつが,表面微細構造の見えが低下する。またチャージアップ とばれる試料面上で帯電現象が生じ正常な観察像が得られなくなることもある。.  肝要なことは,試料によって(電子線照射によって試料が変形あるいは変質し. ないか?低倍率でも試料表面の微細構造を明確に観察するのか?高倍率で局所 的な構造を観察するのか?)などにより適正な加速電圧を選択することである。. (8) 蒸着と試料台の固定.  SEM観察に供される試料は原則的に導電性がなければならない。金属のような  導電性試料はそのまステージに固定するが,もともと導電性のない試料はカーボ.  ンや金などの物質を蒸着しなければならない。蒸着膜の厚みは15∼20nm  程度で十分目ある。ときにエネルギ分散型X線分光器を用いて元素分析を行う.  場合にはカーボン蒸着を施しAu蒸着はしない。カーボン蒸着の試料は二次電子.  の発生効率がAuなどに比べ劣るので像質の低下は免れない。またAuの膜厚が  厚すぎると観察像に縞状構造を呈することがある。.  試料の試料台への固定は一般的には導電性接着剤(カーボン,銀ペースト)が使  用されるが試料がそれら接着剤よりも微粒子である場合は,見分けがっかなくな  るので接着剤の選択に工夫が必要である。. (9) その他.  よく遭遇することであるが,SEM写真=・高倍率写真と錯覚するきらいがある。  試料観察の要点として,先ず試料の全体的平均的観察を行いその特徴を捕らえて  から高倍率で観察することが必須で,観察初期からいたずらに高倍率でという思  考は避けねばならない。撮影する像は仮に異種組織が混在するものでも出来得る  限り一画面内にそれらの組織が同時に呈示できるようなものでなければ,第三者  に対して説得力あるものとは言えない、,.   最近のSEM装置は電子制御機能が進み,比較的簡単に操作することが可能に  なっている。それでも目的とした観察像を得ることが難しいのは,大部分試料作  成に起因する。見えたものがすべて正しい場合と,すべてが虚像である場合があ  ることを心しながら装置の操作にあたるのも大事なことがらである。. 一6一.

(5)

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