• 検索結果がありません。

多義的な関心か ら表現の意味をつ くる子の育成

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "多義的な関心か ら表現の意味をつ くる子の育成"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

多義的な関心か ら表現の意味をつ くる子の育成

一自他の違いを語 り合 う実践の考察か ら‑

立川 泰史

l.教科テーマについて ( 1 ) 学習指導要領 の読み と課題

図画工作科の学習で重視 され る 「 造形的な創造活動」 と 「 つ くりだす喜び 」 といった文言の背景 には、 この教 科 が単 に 「ものづ くり」や 「 知識 を活用す る見方」 を目的 とす るものではない とい う教育観がある。

それは、表現や鑑賞の活動はそれぞれ一体的 に補い合 って高 ま り、そ こに境 目な く働 く子 どもの感性や感覚 を 培 うとい う視座 ( 平成 20 年公示学習指導要領解説)か らも明 らかである。 しか し、感性 。情操 の教育 とい う巨視 的な教科観だけでは,か えって感覚 ・感性が 「自然 に培われ る」 もの と捉 え られた り, 「 授業 は造形的な体験 を 楽 しむだけの時間」 になった りす る事態 も招 きかねない。反対 に, 「 共通事項」 に示 された 「 形や色 を基 に自分 のイ メージをもつ」姿 を到達度規準 にした微視的な指導 ・評価観だけでは,表現 された成果か ら教師が授業改善 を方 向づ けることはで きて も, 「 本 当に子 どもが学 んだ ことは何 か」 とい う個別 な事実が記述 され ることにな ら ない。教科 目標 に示す 「 感性 ・情操」 と平素の学習活動で働 く 「 創造活動な基礎的な技能」 が どのよ うに関連 し てい くのか,両者 を結ぶ 「も う一つ他 の観点」が本来 の表現 ・鑑賞学習 の価値 を明確 にし,新 しい可能性 を際立 たせ ると考 えてみたい。 このよ うに考 えると,大枠 な教科観 と微細 な指導観 の距離 を結ぶ観点の土壌 として,活 動 を構成する授業者 の題材観が大 き くかかわ って くる。

( 2) 思考 の道筋 を 「 見 え,聴 こえる」 もの にす るために

こ うした実践的な課題 を解決 してい く観点 に向か う一つ の ヒン トは, 「 形や色な どによるコ ミュニケーシ ョン を通 して, ( 中略)生活 を美 しく豊かにす る造形や美術の働 きを実感 させ るよ うな指導 」 ( 平成 20 年公示学習指導 要領解説 「2 図画工作科改訂 の基本方針 ( i )第三項 」) とい うものだろ う。 「自分 の思 いや価値意識 」 をもって 語 り合 うことが,身近 にあるもの‑の美的な関心 を広 げてい くとい う道筋が ここに想定 されていると捉 えること ができる。 これは,作品のつ くり手や受 け手 としての子 ども像 のも う一つ先 に,美的な意味の運 び手 として文化 的社会 に参加す る姿 を描 く学習観 と言 える。 ただ し,参加す る学習 とは 「 できたもの ・みた もの」 について単 に 目にした事実 を並べて述べ ることだけでは実現す るとは考 えに くい。具体的な形や色の よさや美 しさを伝 えるに は,子 どもがそれ らを どんな意味 に感 じ考 えたか とい う固有な思考判断 のプロセスを自分 の言葉 で語 ることが求 め られ る。試行錯誤 とい う実技的な技能 の解 きほ ぐし過程 で,形や色 な どが変化 してい く様子 は目にできる。が, 思考の道筋 は内的な判断であ り直接観察できるものではない。そ こで,その都度捉 え直 されてきた意味が語 られ

ることで より豊かに伝わ り, 自他 の関心 を広 げる学習 に参加す ることを容易 にす る と考 えてみたい。 これは,立 ち上がる表現や子 どもの所作だけでな く,固有 な 「 意味」の生成過程 に着 目しよ うとす る観点である。 また, 冒 に見 えない思考 の道筋 を見 え聴 こえるものにしなが ら自他の学習参加 を促そ うとす る試みで もある。 ここでは, 独 自に捉 えてきた意味 の成 り立 ちや変化のエ ピソー ドを トピックに分節 しなが ら, 「 物語」 として談話場面 に搬 入す る態度 を 「 創造的活動 の基礎的な技能」 の一つ として位置付 けて期待 してい く。

‑1 1 9‑

(2)

2. 図画工作科における 「 深 く考える」 とは ( 1 ) み る ・つ くる活動 にお ける思考 ( 意味 づ くり)

表現 と鑑賞 の活動 が境 目な く往還 し, そ こに共通 して働 く感性や感覚 を大切 に してい くには,表現 と鑑賞 を

「 指導す る内容 の領域」 として捉 えるだけでな く, 「 み る 。つ くる ・み る」 といった 自然 な 「 吟味 ・操作」のサ イクル と捉 える必要があるだろ う。手 に取 った材料や場所 の特徴 に気付 く鑑賞力は,体で実感 した風や光の具合 を感覚的 に判断 した り,それ らを生かす表現 に向けて発想 ・構想 した りす る技能 と一体 となって働 く。 こ うした 創造経験 は,語 り得ぬものか らの問いかけを聴 き形や色 に落 とし込 んでい く作業 と言 えるものだが,子 どもが こ れを自然 に行 えるのは体で感 じる感覚 に素直なこと以外 にも理由がある。それは,感覚 した事柄 を生活 に根 ざし た経験 と照 らし合わせた り,子 どもらしい物語世界 を広 げてテーマを筋立てた りす ることができるか らであるよ うに見 える。いわば,子 どもの 「 意味づ くり」 とは, こ うした生活経験か らの見立てや物語 の展開 に見合 うもの として形や色 を性格付 け, またその役柄 を問い直 してい く過程であると言 うことができる。 この よ うに考 える と, 表現 ・鑑賞活動 における思考 は,問い続 けることを可能 にす る 「 関心の広 さ」や試行錯誤 に伴 う 「 操作 」 と切 り 離す ことはで きないもの として捉 えられて くる。

( 2) 多義的な理解 を支 える 「 比職 の思考

ここでは,表現 ・鑑賞 にかかわ る思考 の側面である 「 関心 の広 が り」や感覚的 。技能的な 「 操作」 を支 えるも のを検討 しなが ら,図画工作科 における 「 深 く考 える」 ことについて考察 していきたい。

「 関心 の広 が り」 を支 えるものには, 日常の生活経験 か ら得 る身体的な理解が挙 げられ る。 これは,生活感覚 や記憶 を基 に新 しい対象 を別 なものに見立てた り差異 を見極 めた りしなが ら理解 してい く道筋である。 とともに, 実感 をもって新 たな対象 に働 き返 してい く 「 操作」 を呼び起 こしてい く契機 となるもので もあるだろ う。では, 子 どもは実際感覚 した事柄や ば らば らに点在す る記憶 を検索す るだけで 自然 に関心 を広 げているだろ うか。子 ど もは実感 に基づ く理解 をある時は飛躍 させた り,隠れた特徴 を暗示する観点 を次々 と兄いだ した りす ることも稀 ではない。手 を動か し見方 を変 え, 向かい合 う対象 とは異なるもの と結びつ けた り,保留 していた不可解 な事柄 を再び引き出 した りしなが ら新 しい理解‑進む姿が見 えるの も事実である。 こ うした多義的な理解 は一義的な正 解‑向か うとい うより, より多義的 な理解 に向けて関心 を広 げる姿 と捉 える ことができる。 「 意味 」 は一見脈略 な く編み直 され,主題 は当初考 えなかった物語 に鋳直 されてい くようである。本考察では, この多義的な理解 を 支 えるもの として 「 比橡的な思考」 に着 目した。 ここでい う比晩的理解 とは,対象 に隠れている特徴 を部分 と全 体 の関係 で例 え る 「 提 喰 (シネ ク ドキ : s y ne c doc he) 」, 関係 す る もので置 き換 え る 「 換 喰 (メ トニ ミ一 me t o ny my) 」,直接他 のもので暗示す る 「 隠瞭 ( メタファー : me t a pho r ) 」 な どを使 った事象理解 の仕方 を指す。

特 に, 「 隠

喰 」

による事象理解 のアプローチが,単 なる 「 言葉 の綾」ではな く,視 覚的なイメージや想像 力 にも 深 く関係 している事実 を観察す ることで,深 く考 える場面 を検討 してい くことにした。

( 3) 図画工作科 にお ける 「 深 く考 える」子 どもの姿 ‑

上述 した観点か ら,図画工作科 にお ける 「 深 く考 える」子 どもの姿 とは,「 多義的な解釈か ら経験や理解 を広 げ,新たな意味の解 き結びに進む こと」 を楽 しみ,そのプロセスを伝 え合 う姿 として想定 した。 また, こ うした 観点か ら見 る具体像 は,相互主体的 に自他 の異なる見方 ・感 じ方 を導 き出す共在感か ら芽吹 くものである。 また, 教師が どのよ うに共有す る主題 を提示 して活動 を構成す るか といった 「 題材観」が深 く関係す るもの として捉 え ている。

‑1 2 0‑

(3)

3. 育てたい子 ども像

これまでの研究の経緯か ら今年度 の研究では,下記の よ うに 「 育てたい子 ども像」 を設定 した。

・多義的多元的な理解 を広 げてかかわ り,意味づ くりを楽 しむ子

・意味づ くりの編み直 しを自分 の固有な物語 として語 り合 う子

・自他の違いか ら新 たな見方感 じ方 を導 き,伝 え合 う子

4. 研究の視点 。深 く考えるための手立て

経験や理解 を比橡的な解釈 を基 に広 げ,新 たな意味の解 き結 びに進む ことを助 ける手だてを, ここでは次の よ うな視点 を基 に想定 した。

( 1 ) 多義的な理解 を広 げる題材観 の捉 え直 し

多義的な理解 とは, 「 一つの語や表現が多 くの意味 をもっているさま」 を基 に理解 を広 げることと定義 できる。

これは様々な ものがそれぞれ違 うのか同 じなのかを問わない多様性 とは異な り,今 向かい合 う対象や事柄 につい て 「 隠れている特徴や見方」 を照 らし出す関心の広 が りを支 えるものである。 こ うした 「 一義的な方向に向かわ ない自由な思考活動 」 を実践するには,教師が どの ように共有主題 を提示するか とい う題材観が大切 となる。例 えば,特定な画家の様式 を用 いて表現 を導いた り,宣言的な知識や事実 を資料 として鑑賞す る作品の見方 を指 向 させた りする 「 命題型 の提案」か ら多義的な理解が産 まれて くるとは考 えにくい。注 目す る材料や場所 の特徴‑

の着 目を指示す る一方で,そ こか ら紡 がれ る主題や意味構成が子 どもに委ね られてい くといった 「 非命題型 の題 材提案」が望 ま しい と考 えられ る。

( 2) 日常の経験 を資材 と しなが ら,比倫 的な解釈 を基 に関心 を広 げる教材 と活動形態

子 どもが よ く知 るものであ りなが ら,場所や状況 が変化す ることで他 の出来事 を象徴す る性格 をもつ もので あった り,他 に置 き換 えて考 えた りできるよ うに,比晩的な解釈 を呼び起 こす教材 の精選 が大切 となる。 また, そ うした思考過程 を 「 プライベー トな履歴 として されない活動形態」が重視 され るべ きだろ う。

( 3) 「 意味 づ くりの道筋 を物語 と して語 り合 う機 会」の設定 と活動 を自己モニ ターす る道具 の用意

活動形態が工夫 されて も,固有な意味づ くりの筋道が漠然 とした記憶の束 になっていては物語 として語 り合 う ことは難 しい。 「 物語 る 」 とは,二つ以上 の事柄 に関係 を兄いだす ことで もある。そのためにも話 し合いの機会 を設 けるだけでな く,活動 の詳細な トリックを記録する道具が必須であると推測できる。逆 にいえば,モニター I す る道具 によって 「 表現す る意味を最初 に鑑賞す るのは自分 自身である」 とい う意識 は,表現す る意欲 の高 ま り にもつなが り,それ を語 り合 う場面‑の参加 をも容易 にす ると考 えたい。

( 4) 自他 の違 いに気付 き,新 たな見方や感 じ方 を伝 え合 うための環境 とイ ンタ‑ フ ェイス

固有な意味づ くりのエ ピソー ドを物語 として伝 え合 うとき,単独な事例か らす ぐに新 しい見方や感 じ方が案出 され るのは容易な ことではない。 ここでは,互いの差異 に気付 き多元的な観点か ら比較 して語れ るよ うモニター 機材 を用意す ることにした。 目に見 えない思考過程 を言葉 にす るには,視覚的な情報 を得 て 自分 たちが捉 えた ト

ピックを用いて話 し合 うことが望 ま しい と考 える。

‑1 2 1‑

(4)

5. 研究の成果 と課題 ( 1 ) 研 究の成果

多義的な解釈 ( 特 に,比境的イ メージの活用) を意識 した 「 題材提案」 による実践 か ら得 られた可能性 と課題 をま とめると次のよ うになる。

第一 に,命題的でない題材提案 は,始 ま りと終わ り, 「 思考操作の対象

と 「 有意 な活動 目標」 の二つが明 ら かな ら,子 どものイメージが広 がる幅広 い領域 を保障す る。 これ により,見方 ・感 じ方 を豊かにす る可能性が高 まってい くのではないか。特 に,主題 の対象 は,子 どもが よく知 るもの,発送の方 向や意味を限定 しない ものが 望 ま しい。

第二 に,身体的経験 に基づ く理解 と比橡的イメージの活用 を促す実践 は,対象 が直接指示す るシンボ リックな イ メー ジ ( 例 えば太陽は赤,赤は太陽) の枠組みか ら子 どもの関心 を開放す る。結果,それまで照 らし出 され る ことのなかった事項間の意味的な結びつ きを新 たに生成す る可能性が高まる。

( 2) 研 究の課題

研究 の 「 課題」 としては,次の 3 点が捉 え られた。

第一 に,命題的でない提案 は,子 どもの柔い理解や試 しなが ら技能 を方向づ けてい く造形操作 を子 どもに求め る。 しか し,試行錯誤す る取 り組み ( 先が見 えに くい活動) が苦手な子 どもには, 「 発想 の滞 りとなる場面」が 見 られ る.題材 の導入部分か らプライベー トな個人活動 にせず,全体での談話活動 を利用 して 「 主題観 について のアイ ドリング ( 自他 によるころが し) 」 が必要 となる。その よ うな話 し合 いでは,臨機応変 な応答 が指導者の 大 きな課題 となる。

第二 に,表現 と鑑賞の一体的 ( 往来的な)扱い とい う問題解決 を,子 どもの自然 な 「 操作 と吟味」 といった微 細な循環思考 の充実 に求めた。 しか しなが ら,一方では学校教育の枠内である限 り評価 の問題が控 えてお り,そ の観点 を明確 にす ることも必要である。微細な思考 を評価す る際の現実的な問題 について具体的な手だてを案出 す るといった課題 が残 ると考 えられ る。

第三 に,発想 の方向を位置付 けない提案は,抽象的な思考 ( ここでい う隠橡や換橡な ど,意味 を置 き換 える理 解 の広 げ方)ができる学年 の傾向を配慮する必要がある とい う課題である。低学年では, ある程度 の発想の足場 や意図の表 し方 を提示 しなければな らい場合 もある と想定できる。形や色だけでな く,動 きや 自然 の状況 な ど, 向き合 う対象 を取 り巻 くものか ら特徴 を捉 え, 「 意味 」 を読 み変 えてい くことについては高学年 が望 ま しいので はないだろ うか。 中学年では, どんな主題が提示 されて も, 自分の好 きな こと ( スポーツや ゲーム等) に引き寄 せて主題展開 を済ませ る傾 向が多 くある。 こ うした学年 ごとの傾 向については今後比較検討する考察事例 が必要 であろ う。

‑1 2 2‑

参照

関連したドキュメント

現実感のもてる問題場面からスタートし,問題 場面を自らの考えや表現を用いて表し,教師の

わかうど 若人は いと・美これたる絃を つな、星かげに繋塞こつつ、起ちあがり、また勇ましく、

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

   がんを体験した人が、京都で共に息し、意 気を持ち、粋(庶民の生活から生まれた美

海なし県なので海の仕事についてよく知らなかったけど、この体験を通して海で楽しむ人のかげで、海を

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に