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チーム効力感の形成条件に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)チーム効力感の形成条件に関する研究 キーワード:チーム効力感,チームワークモデル,学習志向性. 問題 企業などの組織では,成果を上げるために,チーム. 所. 属:. 行動システム専攻. 氏. 名:. 藤下. 卓也. なるからである。 チーム力. を作り,目標の設定や役割分担を行って,効率的な成. チームワークは,メンバーの相互作用の深化によっ. 果達成を図る。チーム内では,役割を固定化する,情. て発達する。その過程を示したのが「チーム力」 (古川,. 報伝達ルートの確立など,システムの構造化や標準化. 2004)である。チーム力とは, 「環境や課題の変化を意. を行うことでさらに効率化を進める。. 識した上でチームの成果の実現につながるチーム活動. しかし,これらの活動は,チームを取り巻く環境が. の状態を表すもの」である。このチーム力は,チーム. 安定的で,取り組む課題が継続的であることを前提と. が取り組む課題の変化に必要とされるチーム活動の内. している(Burke, Stagl, Salas, Pierce, & Kendall,. 容から,3つのレベルで示されている。. 2006)。今日では,顧客ニーズの変化等が及ぼす,急激. レベル1では,安定した課題においては期待された. な変化にチームが晒されており,十分な成果を上げら. 成果を上げることができるが,環境の変化が生じた場. れず,活動の変化を余儀なくされる状況も予想される。. 合の柔軟な対応は難しいとされるが,レベル3になる. そこで必要とされるのが,変化する環境への適応の. と新規の課題にも柔軟に対応できるだけでなく,チー. ためのチーム改革である。しかし,システムの再構築. ムとしての理想の状態にむけてチームが自律的に自己. にコストがかかること,慣れた活動やシステムを捨て. 改革や改善ができる能力をもち,メンバー相互に知的. ることに対するメンバーの心理的抵抗が働き,変革が. 刺激を提供する,情報の練り上げなどの創発性が生み. うまくいかないことが多々ある。また,環境の変化に. 出される。. 翻弄され,変化が必要でない状況でも変革を推し進め,. チームワークモデルと2つの側面. これまでの成果見込みを減らすリスクもある。. チームワークの重要性は,チーム・コンピテンシー. このような状況や実態においても,継続的に成果を. やチーム力からも明らかだが,山口(2008)は,チー. 上げるチームは存在している。そこで本研究では,継. ムワークを「チーム全体の目標達成に必要な共同作業. 続的に成果をあげることができるチーム特性および形. を支え,促進するためにメンバー間で交わされる対人. 成条件を明らかにする。. 的相互作用であり,その行動の基礎となる心理的変数. チーム・コンピテンシー. を含む概念である」と定義しており,山口(2009)は,. チーム成果についての研究として上げられるのが, チーム・コンピテンシーである。 チーム・コンピテンシーは,目標達成への明確な道. チームワークは,メンバー間で相互作用が行われる行 動的側面と,その活動を支える心理的側面の2つを含 む概念であると述べている。. 筋と戦略,適切な能力を持つ人的資源の確保と配置,. チームワークの行動的側面の代表的なものは,他メ. チームワークの3要素から成る(山口,2007)。この中. ンバーとの連携や協力など,チーム力にあるような行. で特に重要とされているのがチームワークである。他. 動である。心理的側面の代表的な概念は,チーム効力. 2要素は,現実的な困難さや不確実性から,成果に結. 感,チーム凝集性,チームメンタルモデルである。. び付くとは必ずしも言えず,メンバー同士の相互作用. この心理的側面でも,チーム全体として活動に着手. によって生み出されるチームワークは相対的に重要と. するための実行機能をもつチーム効力感は,チームが.

(2) 成果を上げるのに効果のある行動を喚起する要因とし. チームの長期的展望であり,この表明は,チームパフ. て注目すべきであるといえる。. ォーマンスに好影響を持つことが示されている. しかし,チーム力など行動的側面における実証研究. (Barling, Weber, & Kelloway, 1996;他)。. は様々な形で行われているのに対し,実行機能として. このビジョンの明示において,目標設定の明確さや. のチーム効力感の役割および形成については看過され. プロセスの明示は,チーム効力感の形成条件に影響を. てきたのが現状である。. 与えると考えられる。目標達成に必要な時間や能力が. そこで本研究では,チーム効力感を形成する条件を 検証する。 まず,形成の条件と考えられるのが,過去の実績の 好ましい認知である。人は課題を達成し成功すること. 明確に示されていると,課題遂行のための方略も明確 になり,課題遂行に前向きな姿勢がある学習志向性を もつチームは,チーム効力感の形成を促進することが 考えられる。. で,次の課題を達成することへの期待を高める(和田,. 同様に,課題の特徴を明らかにすることで,今現在. 1992)。チームとしても,過去にチームが上げた実績を. 必要な方略などを作るため,過去の経験をより振り返. 好ましく認知することで,チーム効力感を構成すると. るようになると考える。. 考えられるチームの自信を形成すると考えられる。. 仮説4:チームビジョンが明確に示されているチーム. 仮説1:過去の実績を好ましく認知しているチームは, チーム効力感が高いであろう。. は,学習志向性および経験の振り返り頻度が 高いほど,チーム効力感を高めるであろう。. また,形成条件として考えられるものにチーム学習 (古川,2010)がある。この中の,成功や失敗の結果 やフィードバックを通した振り返りが,効果があると. 方法 調査概要 一般企業で働く社会人男性 85 名,女性 18 名の計 103. 考える。成功原因や失敗原因から,成功原理や教訓を. 名に,質問紙によるアンケート調査を行った。. 得ることができるからである。これらは課題達成の手. 質問紙の構成. がかりとなるため,より多く振り返ることが,課題達. 全ての質問に対し,5件法にて回答を求めた。リー. 成への自信を高めると考えられる。. ダーのビジョンの明確性を除いた質問に関しては,個. 仮説2:経験の振り返りの頻度が高いチームは,チー. 人の認知に基づいたチームの傾向をもって検討した。. ム効力感が高いであろう。. チーム効力感. さらに,チームの志向性にも注目する。チーム効力. チーム効力感を,独自作成の9項目を使用して測定. 感の形成条件として考えられるのが,目標志向性であ. した。因子分析の結果, 「課題達成や成果への自信」と. る。目標志向性は自分の能力を高めようと望む傾向を. 「課題成果への不安の少なさ」の2因子が抽出された。. 指す「学習志向性」と他者に自分の能力を示し,好ま. 過去の実績の好認知. しい評価を受けることを求める傾向を指す「パフォー. 現在までのチームの実績をどの程度好ましく認知し. マ ン ス 志 向 性 」 に 分 類 さ れ る (Farr, Hofmann, &. ているかを,独自作成の6項目を使用して測定した。. Ringenbach, 1993)。このうち,学習志向性は,努力の. 因子分析の結果, 「過去の実績の好認知」の1因子が抽. 意味づけに関して,努力量を,課題を遂行するための. 出された。. 能力と捉える傾向にある(Dweck, 1989)ことから,課. 振り返りの頻度. 題遂行に対し前向きな姿勢がある学習志向性をもつチ. チームの振り返りの頻度を測定した。成功経験の振. ームほど,チーム効力感が高いことが予想される。. り返りと失敗経験の振り返りの2側面の内容を各4つ,. 仮説3:学習志向性が高いチームは,チーム効力感が. 独自作成のものを使用した。. 高いであろう。. チームの志向性. これらの条件に影響をもつと考えられるのが,リー. チームの志向性を,柳澤(2007)の目標志向性尺度を参. ダーのチームビジョンである。ビジョンとは,組織や. 考に,一部改変した学習志向性6項目とパフォーマン.

(3) ス志向性6項目の計 12 項目を使用して測定した。因子. を持ち合わせていることが,チーム効力感を形成する. 分析の結果, 「学習志向性」と「パフォーマンス志向性」. 一番の条件であることが明らかとなった。 Table.1. の2因子が確認された。. チーム効 力 感 の形 成 条 件 に関 する 重 回 帰 分 析 の結 果. リーダーのビジョンの明確性 リーダーのビジョンの明確性を,独自作成の7項目 を使用して測定した。因子分析の結果, 「ビジョンの明 確性」の1因子が抽出された。 環境変化時の対応 チーム効力感が,環境変化に伴う新規課題や未経験. 説明変数. 課 題 成 果 への 不 安 の少 なさ. .38**. 過 去 の実 績 の好 認 知. -.08. 成 功 経 験 の振 り返 り. -.20†. 失 敗 経 験 の振 り返 り. .21*. .02. 学習志向性. .50**. -.18. パフォーマンス志 向 性. .02. .05. R(adjusted). .51. -.02. 22.5**. F †. 課題に直面した際にも,課題遂行に効果的に働くこと. 課題達成や 成 果 への自 信. p<.10,. *. p<.05,. **. Table.2. を検証するために測定した。独自作成の8項目を使用. .05. .704. p<.01. 課 題 達 成 や成 果 への自 信 の形 成 しやすさに 関 する重 回 帰 分 析 の結 果. した。因子分析の結果, 「環境変化へのポジティブな思 考」の1因子が抽出された。 結果 1.チーム効力感の形成条件の検証. 説明変数 過 去 の実 績 の好 認 知 ×失 敗 経 験 の振 り返 り. 課題達成や 成 果 への自 信 -.05. 失 敗 経 験 の振 り返 り×学 習 志 向 性. .25*. 過 去 の実 績 の好 認 知 ×学 習 志 向 性. .56**. R(adjusted). .51 35.8**. F. チーム効力感の形成条件を明らかにするため,重回 帰分析を行った。. 2.リーダーのビジョンの明確性が及ぼす影響の検証. チーム効力感の「課題達成や成果への自信」には,. リーダーのビジョンの明確性が,学習志向性と課題. 過去の実績の好認知(β=.38, p<.01),失敗経験の振り. 達成や成果への自信の関係に影響を及ぼすかについて. 返り(β=.21, p<.05),学習志向性(β=.50, p<.01)が正. 検討するため,リーダーのビジョンの明確性と学習志. の関係性を示した。成功経験の振り返りは負の関係性. 向性および(ともに高群・低群の2水準)を独立変数,. を示していた(β=-.20, p<.10)。パフォーマンス志向性. 課題達成や成果への自信を従属変数とする2要因の分. (β=.02, n.s.)は有意な影響を与えていないことが示さ. 散分析を行った。. れた。また,チーム効力感の「課題遂行への不安」に. その結果,リーダーのビジョンの明確性と学習志向. は,いずれの変数も,有意性をもつ程の影響を与えて. 性の交互作用が有意であった( F(1,99)=4.58, p<.05) 。. いないことが示された(Table.1 を参照)。. (Figure.1 を参照) 。. また,チーム効力感の形成をより効果的にするメカ. リーダーのビジョンの明確性が,経験の振り返りと. ニズムを明らかにするため,チーム効力感の形成条件. 課題達成や成果への自信の形成の関係に影響を及ぼす. として明らかになった3つの要因について,どの組み. かについては,有意性が見られず(F(1,99)=.204, n.s.),. 合わせが最も影響を及ぼすかについて検討した。. 認められなかった。. 失敗経験の振り返り頻度と学習志向性の組み合わせ. これらの結果,リーダーのビジョンの明確性は,学. (β=.25, p<.05)と,過去の好業績の認知と学習志向性. 習志向性と課題達成や成果への自信の関係にのみ影響. の組み合わせ(β=.56, p<.01)が,正の関係性をもつこ. を及ぼすことが明らかとなった。. とが示された。過去の好業績の認知と学習志向性の組. 3.環境変化時のチーム効力感の効果の検証. み合わせ(β=-.05, n.s.)は,有意な影響を与えていな いことが示された(Table.2 を参照) 。 過去の実績の好認知と失敗経験の振り返りと学習志 向性の組み合わせは,課題達成や成果への自信に正の 関係性をもつことが示された(β=.69, p<.01)。 これらの結果は,過去の実績の好認知と学習志向性. 課題達成や成果への自信が,環境変化へのポジティ ブな思考と正の関係性を示していた(β=.39, p<.01)。課 題成果への不安の少なさは有意な関係性が示されなか った(Figure.2 を参照)。 この結果,チーム効力感は,新規課題への直面に際 して,効果的に働くことが明らかとなった。.

(4) 影響力が認められなくなった。このことから,チーム. 3.70. 効力感の形成に関し,振り返りは、その後行動に取り. 3.50 課 題 達 3.30 成 や 成 3.10. 学習志向性・低. 組むためのモチベーションを向上させる(Markman 他,. 学習志向性・高. 2008)ポジティブ要素と,失敗を想起することで,課 題に対する姿勢や実績の好認知の効果を打ち消すよう. 果 へ 2.90 の 自 信 2.70 得 点 2.50. なネガティブ要素の両面をもっていると考えられる。 リーダーのビジョンの明確性は,チーム効力感を形 成する根幹に直接影響を及ぼす要因といえる。ビジョ ビジョンの明確性・低. ンが明確に示されており,学習志向性が高いチームほ. ビジョンの明確性・高. Figure.1 課題達成や成果への自信の形成度. どチーム効力感を形成することがうかがえる。 これらを総合すると,環境変化時の適応に効果的で. 課題達成や. .39**. 成果への自信. あるチーム効力感が高まるには,チームの学習志向性 環境変化への. 課題成果への. ポジティブな思考. が高いことが基本条件であり,リーダーのビジョンが. R2=.16, **p<.01. 明確であるとより高まる。さらにチーム効力感が高ま. 不安の少なさ. るには,過去の実績を好ましく認知していることが必. Figure.2 チーム効力感の効果に関する重回帰分析結果. 要である。他方,失敗経験をより多く振り返ることは, チーム効力感の形成に一定の効果があるが,他の要因. 考察 課題に取り組む際のチーム効力感は,課題達成や成 果への自信と,課題成果への不安の少なさから構成さ. により効果が高まっている時には,阻害要因として働 いてしまう。 今後の研究展望. れていることが示された。また,過去の実績の好認知,. チームワークモデルの行動的側面と心理的側面両方. 失敗経験の振り返り,学習志向性の3つが,チーム効. を扱った統合的な調査が望まれる。行動的側面への影. 力感の,課題達成や成果への自信を形成するものとし. 響を含めた調査を行うことで,チームワークモデルの. て示された。この中で,過去の実績の好認知と学習志. さらなる体系化が期待できると思われる。. 向性の組み合わせが,最も強い影響力を示した一方で,. また,経験の振り返りは,振り返りの頻度だけでな. 失敗経験の振り返りは,他要因の影響力を打ち消すこ. く,どのような振り返りを行ったかによっても,チー. とが示された。そして,リーダーのビジョンが明確に. ム効力感への影響が変化すると考えられる。. 示されているチームは,チームの学習志向性が高いほ. そして,チーム効力感が,環境変化による新規課題. ど,チーム効力感を形成することが示された。. 直面という場面において,効果的に働くか否かの検証. チーム効力感のメカニズム. は,実際に想定通りに行動できたか,が最も重要であ. チーム効力感は課題遂行に対する自信であり,これ. るため,ケース研究等で検証をすることが望まれる。. を形成するベースとなるのが,チームの学習志向性で. 主要引用文献. ある。他の形成要因との組み合わせや,要因単体とし. Burke,C.S., Stagl,K.C. Salas,E., Pierce,L., & Kendall,. ても影響力が強いことから,その重要性がうかがえる。. D.L.(2006). Understanding team adaptation: A. また,チーム効力感の形成を促進する要因として過. conceptual analysis and model. Journal of Applied. 去の実績の好認知が挙げられる。チームが学習志向性 をもち,過去の実績の好認知を行っていると,チーム 効力感が最も形成されやすいからである。他方,失敗 経験の振り返りは,単体では、チーム効力感の形成に 効果をもっているが,他2つの形成要因と共にあると,. Psychology, 91. 1189-1207. 古川久敬. (2010). 人的資源マネジメント―「意識化」. による組織能力の向上 山口裕幸. (2009). ントの心理学. 白桃書房. コンピテンシーとチーム・マネジメ 朝倉書店.

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参照

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