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(1)

カトレア

だより

Vol.38 2016年 春号

会員数 170名(2月17日現在)

カトレアの森特別講演会のまとめ

髙山 真

先生

平成27年11月14日、東京エレクトロンホール宮城601会議室に於いて、カトレア

の森総会並びに特別講演会が行われました。講演会では、東北大学病院総合地域

医療教育支援部副部長・准教授、漢方内科副科長・医局長・外来医長であられる

髙山真先生より「がんに負けない食生活・体つくりから、漢方によるサポートまで」

という実に興味深いお話をお伺いすることができました。

当日は72名もの方にご参加をいただき、誠に有り難うございました。

髙山先生のお話のダイジェスト版を、この会

報の後半にお付けしております。

どうぞご参考にしていただき、体力や体調の

維持・調整にお役立て頂ければ幸いです。

(2)

§漢方とは§

◎漢方の歴史

*漢方(かんぽう)の意味 ⇒ 「漢」=中国 「方」=医療 *漢方の源流は中国で、1500年程前に遣隋使・遣唐使派遣の開始により伝来し、その後は日本の気候風土に合った 独自の発展をとげる。 *明治時代以降は《西洋医学》が主流となったが、2000年頃から《東洋医学》と《西洋医学》を併用することで心 身共に健康を目指す『統合医療』という考え方がなされるようになる。医学部の授業にも「漢方」が組み込まれるよ うになった。

◎漢方医学の治療手段

*①漢方薬 ②薬膳(食養生) ③鍼灸(針・お灸) ④按摩(マッサージ) *漢方薬の種類 煎じ薬:症状に合わせて処方した数種類の生薬を水から煮出し、そのスープを1日2~3回に分けて 服用するもの。 エキス剤:1960年代に開発されたインスタントコーヒー製法で、製薬会社の大釜で煮出した煎じ薬を スプレードライして1包パックにしたもの。 その他:軟膏など

◎漢方医学の考え方

*人の身体を構成する成分⇒ 気(き)=エネルギー・血(けつ)=栄養成分・水(すい)=潤い成分 *「気・血・水」のバランスが正常であれば健康であり、乱れれば不調となり症状が出るものと考え、 体内の状態を診断する上での目安としている。 *「漢方薬」による治療は「気・血・水」の体内バランスを整えて健康を目指すものである。 ~気・血・水のバランスの乱れと症状・対処法~ 気・血・水の異常 主な症状 対処法 代表的な生薬(しょうやく) 気虚(ききょ)=気の不足 倦怠感/食欲不振など 気を増やす ニンジン・オウギ・ビャクジュツ・カンゾウ 気滞(きたい)=気の巡りが悪い イライラ/腹部膨満感など 気を巡らす サイコ・コウブシ・モッコウ・チンピ 血虚(けっきょ)=血の不足 乾燥感/不眠など 血を増やす トウキ・シャクヤク・センキュウ・ジオウ 血瘀(けつお)=血の巡りが悪い 痛みなど 血を巡らす トウニン・ボタンピ・コウカ 水滞(すいたい)=水の巡りが悪い 浮腫/めまいなど 水を巡らす ブクリョウ・タクシャ・チョレイ・ソウジュツ *漢方を使うタイミングは、病気が発症する以前の不調「未病」の時期→病気→回復→健康維持、という流れの中で、 どこからでも始められる。

◎漢方における味と香り

*五つの味と香りの組み合わせバランスの効果を食材として食べ、さらに心身への効果が高い食物が薬剤として使わ れるようなったのが漢方薬である。 ~五つの味と香りの意味~ 酸味(さんみ

苦味(くみ

甘味

かんみ

辛味

からみ

鹹味

かんみ

すっぱい にがい あまい からい しおからい 収斂作用 下降作用 補気作用 発散作用 軟潤作用 体を引締め、汗の出 すぎを止める 老廃物を排出する 熱を冷ます エネルギーを補い元 気にする 体を温め、汗を出さ せる 固いものをやわらか くする

芳香性

香りの良いもの

鎮静作用

気持が穏やかになる

(3)

◎漢方的な食養生

*東アジア圏(中国・韓国・日本)では、二千年前から食べ物が健康維持や病気の予防に役立つ効能があることが分か り、食養生として古い書物に記されている。

~体質別の症状と食養生~

胃腸が弱く、カゼをひきやすい(気の不足) 神経質でいらいらしやすい(気の滞り) 症状:疲れやすい・食欲、気力が無い・下痢しやすい 食材:穀類・芋類・豆類・キャベツなど 養生:甘いもの・冷たいもの・油もの・生ものを控える 症状:のぼせ・めまい・胸腹部の張り・怒りっぽい 食材:柑橘類・ジャスミン茶・陳皮茶(チンピチャ)等 養生:ストレスを溜めず、気分転換・リラックスをする 体が栄養されていない、貧血(血の不足) 痛みを生じやすい(血の滞り) 症状:こむら返り・目の疲れやかすみ・不眠・乾燥感 食材:にんじん・青菜類・レバー・落花生・ぶどう 養生:無理なダイエットや夜更かしをしない 症状:体の様々な痛み・外科手術後の痛み 食材:セロリ・ニラ・桃・紅花 養生:生もの・冷たいものを避け、身体をよく動かす 体が重く、むくみやすい(水の滞り) 乾燥しやすい 症状:頭や体が重だるい・むくみ・胃もたれ 食材:ハト麦・トウモロコシのひげ・あずき・スイカ 養生:水分・果物の摂り過ぎに注意・適度な運動をする 症状:皮膚などの乾燥・痩身・コロコロ便 食材:黒ゴマ・黒豆・ひじき・黒きくらげ 養生:辛いものを控える・過度の活動に気をつける *「冷え症」の原因 ⇒ 熱を作れない:食べられない/消化吸収できない/代謝出来ない 熱を運べない:血液が少ない/血液の流れが悪い 冷やされる:過剰な水分で冷やされる

※体を温めると様々な不調を取り除くことが出来る

◎漢方薬を使うには

*主治医に必ず相談する。⇒ 漢方薬併用することで副作用が出ることもあるので、内緒にしない。 *漢方専門医にかかりたい時は、紹介状を書いてもらう。⇒ 東北大学病院の漢方内科受診でも必要。 4月から、仙台赤十字病院でも外来予定。 *詳しい漢方の動画 ⇒ 東北大学病院の YouTube「TUHチャンネル」 『漢方三部作』→がんと漢方1/がんと漢方2/漢方薬の副作用について

§がんと漢方§

◎がんと食生活の関係

*日本人の死亡原因の第1位である「がん」は、食生活と関係あることが調査によってわかってきている。 *先進国での「がんの危険因子」の調査でも、原因理由の3分の1以上は食生活であると報告されている。 *日本人女性の「子宮体がん」の患者さん(宮城県)を対象とした食生活調査では、栄養の過不足により発生しやすい という研究報告がなされた。「子宮体がん」になりやすい女性の背景として、BMI値が高め・糖尿病/高血圧の既 往症・インスタント麺や食品/揚げ物の摂取が多かったということである。 *同時に比較調査した健常者の食生活においては、魚・卵・野菜・ピーナッツ・コーヒー・緑茶などをバランス良く摂 取している傾向があった。

~がんの発生リスク~

悪い因子 良い因子 肥満⇒中性脂肪を上げないようにする アルコール、塩分、不飽和脂肪酸の過剰摂取 熱い食べ物・焦げた肉 運動⇒1日30~40分のウォーキング 魚、果物、野菜などをバランス良く食べ、 ビタミン・ミネラル・カルシウムを摂取

(4)

◎がん治療と副作用

*「がん」の標準的治療は、外科手術・化学療法・放射線治療で、いずれの治療においても個人差はあるが体調を崩し てしまう副作用が出てしまう。 *西洋医学では対処し切れない症状に対して、漢方薬の効果があることが科学的にも証明され始めている。

~抗がん剤治療による副作用を緩和する漢方薬~

抗がん剤 副作用症状 漢方薬 シスプラチン 食欲不振 六君子湯(リックンシトウ) 吐き気 小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ) のどがつかえる 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ) 悪心、胸のつかえに腹部膨満感 茯苓飲合半夏厚朴湯(ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ) 下痢 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ) ※抗がん剤投与前に服用すると効果が得られやすい。 難治性の下痢 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)+真武湯(シンブトウ) 貧血 十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ) 帰脾湯(キヒトウ)・人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ) オキサリプラチン シスプラチン パクリタキセル 末梢神経障害 (手足のしびれや冷感) 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン) ※抗がん剤を使用する前から服用し始めると副作用が抑え られる効果が得られやすい。 分子標的薬 手足先の割れ、皮膚の発赤膨張 柴苓湯(サイレイトウ) 皮膚の角化色素沈着 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン) パクリタキセル 筋肉痛 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ) FOLFOX 療法 FOLFIRI 療法 ドキソルビシン 口内炎 舌が炎症で赤くなり痛む 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ) ※エキス剤を50cc のお湯に溶かし口に含み、うがいをし てから飲み込むと効果が得られやすい。

~がん手術後に用いられる漢方薬~

症状 漢方薬 効果 体力低下 倦怠感 補中益気湯(ホチュウエッキトウ) NK 細胞などの免疫機能の活性化と栄養状態の改善 十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ) 免疫賦活作用によるガン転移抑制や再発抑制などの期待 腸閉塞の予防 腹部膨満感 大建中湯(ダイケンチュウトウ) 血流を促進させて消化管を温め腸管を動かす 大建中湯+香蘇散(コウソサン) 大建中湯内服してもガスが溜まる時に動かす力を増強する 不安感 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ) うつ症状に効果がある のぼせ・ほてり 加味逍遥散(カミショウヨウサン) 子宮や卵巣摘出後の更年期障害症状に効果がある

(5)

“漢方”は漢方薬を使用することのほか、広い意味では、体全体のバランスを、マッサージ・鍼治療・

食事などの中で自分に合う方法を見出し、体調コントロールをするという漢方的指導をしておられるそ

うです。

先生の故郷では春になると山菜が芽吹き、新鮮な魚や野菜が朝市に並ぶそうです。山菜類の苦味は尿

の出を良くし、体内の老廃物を体外へ排出する作用があり、むくみもとれていくそうです。

このような自然の恵み豊かな環境でお育ちになり、医師という職業に就かれてからも、体に優しく、

自然を取り入れた治療が出来ればと思い、内科・循環器科に10年間勤務された後、”漢方”を勉強され、

現在に至ったということでした。お話は大変興味深く、まだまだ伺っていたい感じでした。自作のチン

ピ(みかんを食べた後、その皮を干しておくと、そのままチンピに変わる)にお湯を注ぐことで、家庭

でもチンピ茶を作ることが出来、そういったことでお腹の調子を整えることが出来るそうです。

抗がん剤などの副作用対策に漢方薬を使う場合は、症状が出る前から服用した方が、効力を発揮する

ものもあるそうですので、担当の先生にご相談し、症状の緩和をしていかれるとよいと思います。

化学療法の副作用である吐き気や嘔吐、末梢神経障害には鍼(はり)治療も効果があり、生活の質を上げ

るには、漢方治療・鍼治療、共に有効とのことでした。

漢方薬やサプリメントを使用している場合、それを他の診療科で内緒にしている患者さんが実は多い

そうですが、様々な治療をしていく上で薬の量が増えていくと、肝臓や腎臓に対する影響が高くなって

負担となってしまうことがあります。そうならないよう、かかっている先生にはきちんとお伝えし、薬

を減らすなど、過度な負担を身体に与えずに治療を続けることが重要であると仰っていました。

講演会前日まで、髙山先生はアラビア半島にあるアブダビにご出張されていたそうで、お疲れだった

にもかかわらず、貴重なお話をいただき、本当に有り難いことでした。

教えて頂いたことを治療や生活の質向上の為に取り入れ、「気・血・水」のバランスを良くして、より

快適に、健康に、過ごしたいですね。

~放射線治療後の副作用に用いられる漢方薬~

副作用症状 漢方薬 胸に照射して食道がヒリヒリする 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ) 照射した部位の皮膚がただれる 紫雲膏(シウンコウ)←塗り薬

~鎮痛薬(オピオイド/モルヒネ)による副作用に用いられる漢方薬~

副作用症状 漢方薬 いらいらする 落ち着かない 眠れない 抑肝散(ヨクカンサン) 柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ) 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)(便秘を伴う方)

*掲載記事の無断転用は固くお断りします

2015.11.14(土)カトレアの森特別講演会

「がんに負けない食生活・体つくりから、漢方によるサポートまで」より

講師:東北大学病院総合地域医療教育支援部副部長・准教授

漢方内科副科長・医局長・外来医長 髙山真先生

参照

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