第
6 章
社会的属性と交際
菅野 剛1
社会的属性と交際
前章では、交際の指標の妥当性を確認する分析を行った。ここでは、交際について、性別や年 齢、学歴、収入、職業との関連について分析する。2
交際の男女差
2.1 女性の社会進出と交際
男と女とでは、人との交際の特徴が異なると言われることがある。例えば、男性はチームを組 んで、リーダーを抱くつきあい方をする、何かを達成するためにグループを組む、達成のために は少しぐらいの人間関係のいざこざなど気にしていられない、としばしば言われる。他方で、女 性はお話が好きで、コミュニケーションを大事にし、何事かを成し遂げるよりもお互いの関係そ のもの自体に、最大の価値を見出していると言われることがある。実際、私たちは、典型的なそ のような例を目の当たりにすることもあるが、科学的には、男性と女性で交際に差が存在するの だろうか? 2000年は、女性の社会進出がしばしば目立つ年であった。例えば、21世紀初めの政権の枠組み を決める第42回総選挙での女性の政界進出(投票日2000年6月25日) 。候補者1396人のうち女 性候補は過去最多の202人で、衆院選では現行憲法下では最多の三十五人の女性が当選した。ま た、新幹線で初めての女性運転士も登場した。そして、2000年11月14日に出発の日本の南極観 測隊でも、隊員60人のうち女性は過去最多の5人が選ばれた。このように、産業構造が大きく変 化し、男女雇用機会均等法が成立し、女性の国会議員、市長、経営者などが実際に活躍している。 しかしこのような報道が華々しくなされる背後には、厳しい現状も横たわっており、社会におけ る女性の位置の改善にはまだ改善が望まれる。例えば、解散前の衆院に参院を加えた全国会議員 に占める女性の比率は9.0%に過ぎなかった。この数字は、先進二十四カ国の中で、二十三位とい う低さであったという。また総理府によると、「男女共同参画社会に関する世論調査」では、この 社会が全体として「男性の方が優遇されている」と感じる人が77%に上ることが分かった。この 比率は5年前と比べてほとんど変わっていない。「男性優遇」の理由としては、「日本社会は仕事 優先、企業中心の考えが強く、それを男性が支えているという意識が強い」が最多の62.1%だっ た。1999年6月に男女共同参画社会基本法が施行されたが、効果が実感できるほどにはなってい ないようである。このような中で、女性の社会進出の一つの目安として、女性の交際のあり方に注目することが できる。男性の交際のあり方と、どのように異なっているのだろうか? まず、交際の多さ(=ネッ トワーク・サイズ)に男性と女性の差(=男女差)があるのか、調べてみる。社会学では、男性と女 性の様々な差は単に生物学的な差に還元されるだけではなく、生まれてからのしつけや教育、周 囲の人々の反応などによって、男らしさや女らしさが培われ、“男女差”が形成されるようになる と考えることが多い。交際のあり方の男女差(マクファーソン他[2]、ムーア[3]、安田[7] )や、サ ポートのネットワークの男女差( 大和[4, 5]、野辺[1] )については様々な形で分析がされてきた。
2.2 男女ごとのプロフィール
そこでまず、男女ごとの交際のあり方について、度数分布表と、平均、標準偏差、歪度、尖度、 最大値、最小値を一つの表にまとめたのが、表1である。 男性のプロフィール 男性の交際では、近所と友人に比べて親戚では、社長の知り合いが一人も いない(0)という人は低めであることが分かる。また、近所と友人に比べて親戚では、労働者の知 り合いが一人もいないという人も低めであることも分かる。同様に、近所と友人に比べて親戚で は、農漁業の知り合いが一人もいないという人も低めである。図より、男性においても、親戚に おける方が、近所や友人よりもいろいろな職業とのつきあいが広がりやすいという全体サンプル と類似した傾向が見られた。 女性のプロフィール 女性のプロフィールでは、まず、近所と友人に比べて親戚では、社長の知り 合いが一人もいないという人は低めであることは男性と同様である。また、近所と友人に比べて 親戚では、労働者の知り合いが一人もいないという人も低めであることも分かる。同様に、近所 と友人に比べて親戚では、農漁業の知り合いが一人もいないという人も低めである。ただし、一 部の職業とのつきあいについては、男性ほどには有していないことも明瞭に読みとれる。近所と 友人に比べて親戚では、一般サラリーマンの知り合いが一人もいない(0)という人も低めとなって いる。いずれにせよ、大まかには全体での場合や、男性と似ており、近所や友人に比べて、親戚 の方がいろいろな職業とのつながりが広がりやすいことが分かる。2.3 交際の男女ごとのプロフィール
家族・親戚、近隣、友人ごとに、交際の男女差を表にした。表2から分かるように、多くの項 目において、男性の方が交際が多い。特に、いわゆる男性化している職業とのつきあいは、男性 において交際が多い1) 。これは1995年SSM調査データでの知見と同様である。2.4 交際の男女差についての構造方程式モデリングによる MANOVA
次に、表2の情報をより正確に把握することを行った。家族・親戚との交際(図1)、近隣との交 際(図2)、その他の友人・知人との交際(図3)、に対して、男女差が見られるのかどうかを明らか 1)ここで示唆されるのは、職業の男性・女性の就業比率である。極端な話としては、男性しか就いていない職業の場 合、その職業の友人を持つ際に、女性に比べて男性の方が持ちやすいだろう。表 1: 男女ごとの交際のプロフィール 男性 3 人 回答 平均 標準 最小 最大 親戚 いない 1 人 2 人 以上 なし 人数 偏差 歪度 尖度 人数 人数 専門職 163 45 23 19 0 0.59 0.94 1.45 0.90 0 3 社長 99 60 38 53 0 1.18 1.17 0.45 -1.30 0 3 議員 222 21 5 2 0 0.15 0.46 3.67 14.98 0 3 役人 180 33 19 18 0 0.5 0.92 1.73 1.73 0 3 店主 135 60 22 33 0 0.81 1.06 1.05 -0.25 0 3 サラリーマン 15 6 19 210 0 2.7 0.79 -2.67 5.98 0 3 労働者 132 34 25 59 0 1.04 1.26 0.64 -1.31 0 3 農漁業 149 26 23 52 0 0.91 1.23 0.84 -1.03 0 3 組合役員 233 9 1 7 0 0.13 0.54 4.64 21.33 0 3 親戚全体 8.01 4.41 1.04 1.24 0 24 n=250 近隣 3 人 回答 平均 標準 最小 最大 いない 1 人 2 人 以上 なし 人数 偏差 歪度 尖度 人数 人数 専門職 166 38 19 22 5 0.58 0.97 1.52 1.00 0 3 社長 152 30 21 42 5 0.81 1.17 1.04 -0.59 0 3 議員 193 31 10 11 5 0.34 0.76 2.37 4.89 0 3 役人 179 24 18 24 5 0.54 0.99 1.64 1.18 0 3 店主 136 37 25 47 5 0.93 1.19 0.82 -0.98 0 3 サラリーマン 52 12 15 166 5 2.2 1.24 -1.07 -0.70 0 3 労働者 160 21 16 48 5 0.8 1.21 1.05 -0.67 0 3 農漁業 218 6 5 16 5 0.26 0.79 2.93 7.06 0 3 組合役員 226 8 1 10 5 0.16 0.63 4.02 15.15 0 3 近隣全体 6.63 5.71 1.21 1.41 0 27 n=245 3 人 回答 平均 標準 最小 最大 友人 いない 1 人 2 人 以上 なし 人数 偏差 歪度 尖度 人数 人数 専門職 156 31 22 34 7 0.73 1.11 1.18 -0.19 0 3 社長 129 31 23 60 7 1.06 1.27 0.62 -1.36 0 3 議員 200 21 10 12 7 0.32 0.77 2.52 5.37 0 3 役人 168 21 24 30 7 0.65 1.08 1.32 0.12 0 3 店主 126 35 26 56 7 1.05 1.25 0.63 -1.30 0 3 サラリーマン 27 10 17 189 7 2.51 1 -1.84 1.78 0 3 労働者 144 28 16 55 7 0.93 1.25 0.84 -1.06 0 3 農漁業 191 15 7 30 7 0.49 1.03 1.85 1.70 0 3 組合役員 213 10 7 13 7 0.26 0.76 2.93 7.31 0 3 友人全体 8 5.89 1.11 0.82 0 27 n=243 全体 22.28 13.24 1.18 1.63 0 78 n=250 女性 3 人 回答 平均 標準 最小 最大 親戚 いない 1 人 2 人 以上 なし 人数 偏差 歪度 尖度 人数 人数 専門職 198 54 34 38 3 0.73 1.06 1.16 -0.09 0 3 社長 135 77 48 64 3 1.13 1.16 0.52 -1.22 0 3 議員 281 32 9 2 3 0.17 0.49 3.17 10.72 0 3 役人 248 41 16 19 3 0.4 0.83 2.11 3.43 0 3 店主 185 76 30 33 3 0.73 1 1.19 0.18 0 3 サラリーマン 14 17 25 268 3 2.69 0.76 -2.49 5.18 0 3 労働者 192 56 26 50 3 0.8 1.12 1.08 -0.39 0 3 農漁業 224 25 25 50 3 0.69 1.14 1.25 -0.14 0 3 組合役員 293 22 6 3 3 0.13 0.46 4.04 17.92 0 3 親戚全体 7.47 3.56 1.19 3.31 0 26 n=324 近隣 3 人 回答 平均 標準 最小 最大 いない 1 人 2 人 以上 なし 人数 偏差 歪度 尖度 人数 人数 専門職 203 53 26 33 12 0.65 1.01 1.36 0.47 0 3 社長 187 49 30 49 12 0.81 1.13 1.02 -0.53 0 3 議員 253 41 12 9 12 0.29 0.68 2.57 6.32 0 3 役人 250 33 15 17 12 0.36 0.81 2.28 4.16 0 3 店主 188 44 35 48 12 0.82 1.14 0.99 -0.61 0 3 サラリーマン 57 13 30 215 12 2.28 1.17 -1.24 -0.22 0 3 労働者 233 31 20 31 12 0.52 0.98 1.70 1.41 0 3 農漁業 293 8 5 9 12 0.14 0.57 4.23 17.16 0 3 組合役員 298 10 2 5 12 0.09 0.44 5.48 31.34 0 3 近隣全体 5.97 4.65 1.23 2.28 0 27 n=315 3 人 回答 平均 標準 最小 最大 友人 いない 1 人 2 人 以上 なし 人数 偏差 歪度 尖度 人数 人数 専門職 202 47 16 25 37 0.53 0.94 1.70 1.63 0 3 社長 202 47 11 30 37 0.55 0.97 1.69 1.51 0 3 議員 266 15 4 5 37 0.13 0.5 4.39 20.14 0 3 役人 254 14 13 9 37 0.23 0.67 3.02 8.26 0 3 店主 198 43 19 30 37 0.59 1 1.52 0.92 0 3 サラリーマン 69 10 23 188 37 2.14 1.27 -0.96 -0.93 0 3 労働者 239 21 11 19 37 0.34 0.84 2.40 4.48 0 3 農漁業 263 11 4 12 37 0.19 0.66 3.62 12.12 0 3 組合役員 269 8 5 8 37 0.14 0.57 4.18 16.88 0 3 友人全体 4.85 4.32 1.75 4.45 0 26 n=290 全体 17.61 9.82 1.66 4.64 1 70 n=324
表2: 性別と交際 性別 男性 女性 親戚 専門職 0.59 0.73 社長 1.18 1.13 議員 0.15 0.17 役人 0.50 0.40 店主 0.81 0.73 サラリーマン 2.70 2.69 労働者 1.04 0.80 近隣 専門職 0.58 0.65 社長 0.81 0.81 議員 0.34 0.29 役人 0.54 0.36 店主 0.93 0.82 サラリーマン 2.20 2.28 労働者 0.80 0.52 友人 専門職 0.73 0.53 社長 1.06 0.55 議員 0.32 0.13 役人 0.65 0.23 店主 1.05 0.59 サラリーマン 2.51 2.14 労働者 0.93 0.34 全ネットサイズ27 22.28 17.61 にするために、構造方程式モデリングによる分散分析( MANOVA ) を行った2) 。 分析の結果、親戚では、有意な男女差は見られない。また、近隣では、「役人」との交際のみ、 男性の方が有意に多いと示されている(-0.10、5%有意)。そして友人では、全ての質問項目におい て男性の方が有意に多いということが示されている(図3、全て5%有意)。こうして、いくつかの 職業との交際において、女性に比べて男性の方が有意に高い値であることが分かった。SSM デー タを用いての類似の分析結果は既に示されているが、そこでのネットワーク指標は0 か1の値を とるダミー変数であり、情報としては、特定の職業との交際の有無の割合の男女差を見ているこ とになる。本研究での指標は交際の量そのものであり、つきあいの数という量的な変数における 男女差について、統計的に明らかにすることができた。 男性で多い「友人」との交際 以上をまとめると、平均を見る限りでは、「近隣」や「家族・親戚」 では、女性の方が若干大きなネットワークを有しているようだが、有意差には至っていない。他 方、「友人」は、男性の方が有意に大きな値となっている。男性において友人ネットワークが大き いことが確認できる。 男性で多い「専門」「社長」との交際 特に、「専門」「社長」などは、男性の方が有意に大きい。 ただし、「専門」、「自営」、「一般」においては、男女に有意な差は見られない。こうして、「友人」 という領域における交際や、専門職や社長という特定の職業との交際において、男女差が顕著で 2)男性は0、女性は1の値をとる。男女の変数は交際の観測変数の共分散を説明するのではなく、あくまでも平均 の構造を表しているに過ぎないので、観測変数同士の相関関係を誤差相関という形でモデルに認めている。なお、ここ での分析では分散の等質性を仮定していないモデルを示してある。
ジェンダー 0.14 -0.05 -0.10 -0.09 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 -0.01 専門の親戚 社長の親戚 役人の親戚 自営の親戚 一般の親戚 E22 E23 E25 E26 E27 0.43* 0.24* 0.14* -0.05 0.19* 0.26* 0.05 0.14* 0.08* 0.10* 図1: 親戚との交際の構造方程式モデリングによる MANOVA ジェンダー 0.03 0.00 -0.10* -0.05 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 0.03 専門の近隣 社長の近隣 役人の近隣 自営の近隣 一般の近隣 E31 E32 E34 E35 E36 0.47* 0.38* 0.33* 0.32* 0.31* 0.42* 0.19* 0.34* 0.25* 0.23* 図2: 近隣との交際の構造方程式モデリングによる MANOVA ジェンダー -0.10* -0.22* -0.23* -0.20* 1.00 0.98 0.97 0.98 0.99 -0.16* 専門の友人 社長の友人 役人の友人 自営の友人 一般の友人 E40 E41 E43 E44 E45 0.47* 0.43* 0.37* 0.21* 0.32* 0.47* 0.18* 0.25* 0.19* 0.16* 図3: 友人との交際の構造方程式モデリングによる MANOVA
あることが分かった。
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年齢と交際
次に、年齢と交際について分析を行った。一般に、生きている年数が長くなるほど、様々な人 と出会うチャンスが高くなり、交際の選択肢の幅も広がると考えられる。表3を見ると、実際、多 くの項目において、年齢が高くなるほどつきあいが増える項目が見られる。 まず、親戚においては、年齢が高くなるほど、社長、役人との交際が増加する傾向が見てとれ る。また、25-34歳においては若干異なるが、他の年齢層においては専門職においても同様の傾向 が見られる。 近隣においては、25-34歳の層が、どの職業とも交際が目立って少ない点が特徴的である。これ は、若年層ではまだ生活が地域に根付いていないことを示唆している。また、議員や役人との交 際においては、45-54歳の層がもっとも交際が多い。 友人においては、年齢が高くなるにつれて、社長、議員、役人、店主との交際が増加し、一般 のサラリーマンや労働者との交際が減少する傾向が見られる。 以上のような年齢と交際の関連については、生きている期間を表す年齢そのものの効果である のか、あるいは他の変数の擬似効果であるのか、今後更に分析を進める必要があると言える。 表 3: 年齢ごとに見る交際の平均値 年齢10年ごと 25-34 35-44 45-54 55-65 親戚 専門職 0.75 0.55 0.61 0.76 社長 0.94 0.93 1.19 1.39 議員 0.10 0.12 0.19 0.20 役人 0.31 0.41 0.52 0.48 店主 0.78 0.69 0.79 0.77 サラリーマン 2.82 2.79 2.63 2.61 労働者 1.19 0.85 0.76 0.89 近隣 専門職 0.36 0.66 0.65 0.75 社長 0.46 0.91 0.88 0.93 議員 0.15 0.29 0.43 0.32 役人 0.30 0.38 0.55 0.46 店主 0.57 0.94 0.98 0.92 サラリーマン 1.98 2.33 2.30 2.32 労働者 0.55 0.60 0.78 0.58 友人 専門職 0.64 0.58 0.58 0.68 社長 0.40 0.75 0.75 1.15 議員 0.07 0.17 0.25 0.32 役人 0.15 0.29 0.55 0.58 店主 0.61 0.66 0.91 0.90 サラリーマン 2.74 2.40 2.17 2.06 労働者 0.75 0.63 0.58 0.51 全ネットサイズ27 18.06 18.84 20.29 20.524
社会階層と交際
中国では、昔から食客という言葉がある。大勢のいろいろな人を養い、いざというときに活躍 する潜在可能性を秘めておく。この場合、まず何といっても、社会的資源としては人数が重要で ある。ここでは、社会階層と交際について分析をする。社会階層とネットワークサイズについて は、従来から様々な研究がなされてきた。 それらの多くの先行研究では、まず親しい友人、近隣、親戚、の数名を特定して、その上で、そ れらの諸社会的属性を尋ね、詳細な測定をしている。本稿においては、職業に重点をおいて測定 したネットワークサイズについて、社会階層との関連について探ることとしたい。4.1 交際の事例分析
分析にあたって、まず、交際が多い人少ない人を個別にとりあげ、大まかな傾向の描写を行う ことにする。交際を三人以下と答えた人は、11 人いた。 そのうち、どの質問項目に対してもまったく交際がないと答えた男性 A さんは、50 代で、建 築・土木技術者、自分一人で自営業を営んでいる。世帯収入は 600∼800万円未満、階層帰属意識 は低めである。50 代の男性Bさんは、二人との交際がある。無職だが、世帯収入は200∼300万 未満 、階層帰属意識は低い。三人と交際があると答えた50 代女性のCさんは、無職で、世帯収 入は400∼600万円未満である。30代女性の D さんも交際は三人で、100∼999人の規模の会社 にて、役職なしの一般事務員の派遣社員として働いている。世帯収入は100∼200万円未満で、階 層帰属意識は低い。同様に三人と交際のあるE さんは、 51 歳女性で、無職で世帯収入は 800∼ 1000万円である。50代女性のFさんも交際は三人で、2∼4人の規模の会社で家族従業者として 販売店員をしている。役職はなく、世帯収入は800∼1000万円である。 次に、交際が多い人に目を転じてみよう。交際を最も多く答えたのは、234人以上と回答した 40 代男性の Gさんである。ほぼ全ての質問項目において3 人以上の交際がある。最終学歴は大 学、10∼99人の規模の会社の経営者・役員である。世帯収入は 2000万以上で、階層帰属意識も 生活満足度も高めである。また、216人以上と答えた30代男性のH さんは、1000人以上の大企 業に営業・販売事務員として勤めている。最終学歴は大学、そして世帯収入は1000∼1500万円未 満と高めで、階層帰属意識も高めである。また、183 人以上と答えた30代男性の I さんは、100 ∼999人の大企業で営業・販売事務員として勤めており、部長、部長相当職である。そして、171 人以上と答えた30代男性のJさんは、官公庁に郵便・通信事務員として勤めており、課長相当職 である。また、50 代女性のKさんは 210人以上と回答している。無職だが、世帯収入は 1500∼ 2000万円未満と高い。 このように、交際のあり方は、人それぞれでまちまちだが、大まかな傾向として、職業に就い ており、より高い役職ポストを持ち、世帯収入が高いほど、交際が多い傾向が見られることが分 かる。表 4: 学歴ごとに見る交際の平均値 学歴 初等 中等 高等 親戚 専門職 0.32 0.59 0.84 社長 0.93 1.11 1.26 議員 0.16 0.16 0.16 役人 0.34 0.47 0.43 店主 0.68 0.79 0.74 サラリーマン 2.21 2.71 2.78 労働者 1.18 1.06 0.68 近隣 専門職 0.62 0.60 0.63 社長 0.58 0.81 0.87 議員 0.45 0.33 0.27 役人 0.32 0.51 0.39 店主 0.91 0.97 0.77 サラリーマン 2.02 2.33 2.20 労働者 0.94 0.81 0.41 友人 専門職 0.19 0.45 0.87 社長 0.32 0.76 0.90 議員 0.40 0.19 0.21 役人 0.21 0.42 0.47 店主 0.53 0.92 0.74 サラリーマン 1.51 2.25 2.55 労働者 0.51 0.76 0.48 全ネットサイズ27 16.30 20.24 19.88
4.2 平均値による比較
学歴と交際 次に、学歴と交際の関連を見る。親戚と友人においては、学歴が高いほど、専門職、 社長、一般のサラリーマンとの交際が増加し、労働者との交際が減少する傾向が見られる。他方、 近隣においては、あまりはっきりした傾向が見られない。 世帯収入と交際 次に、収入と交際の関連についてみる。親戚においては、世帯収入が高いほど 社長と専門職との交際が増加し、労働者との交際が減少する傾向が見られる。 近隣においては、世帯収入が高いほど、労働者との交際が減少する傾向が見られる。また、世 帯収入が1500万以上において専門職、社長、議員との顕著であることが特徴である。 友人においては、世帯収入が高いほど、社長、専門職、議員、役人との交際が増加する大まか な傾向が見られる。 職業威信と交際 次に、職業威信と交際の関連について見る。 親戚については、職業威信が高くなるほど、専門職と社長との交際が増加する傾向が見られる。 そして、専門職と社長との交際については、無職は、職業威信50-60の層の交際と類似している。 近隣については、あまり明瞭な関連は見出されない。 友人については、職業威信が高いほど、社長、専門職、役人、一般のサラリーマンとの交際が 増加する傾向が見られる。 以上をまとめると学歴、職業威信、世帯収入といった社会階層的な変数との関連において、近 隣との交際はあまり明瞭な関連は見られなかった。親戚においては、学歴、世帯収入、職業威信表 5: 世帯収入ごとに見る交際の平均値 世帯収入 450万 400- 800- 1500万 未満 -800万 1500万 以上 親戚 専門職 0.60 0.54 0.75 0.98 社長 1.07 1.06 1.11 1.69 議員 0.16 0.13 0.16 0.21 役人 0.46 0.33 0.55 0.47 店主 0.83 0.73 0.71 0.82 サラリーマン 2.23 2.81 2.77 2.81 労働者 0.97 1.08 0.78 0.65 近隣 専門職 0.65 0.52 0.56 1.08 社長 0.76 0.73 0.72 1.34 議員 0.25 0.27 0.32 0.52 役人 0.45 0.36 0.48 0.52 店主 1.13 0.87 0.77 0.81 サラリーマン 1.98 2.32 2.26 2.32 労働者 0.87 0.73 0.53 0.45 友人 専門職 0.42 0.55 0.74 0.89 社長 0.58 0.70 0.85 1.21 議員 0.21 0.15 0.23 0.43 役人 0.35 0.32 0.55 0.61 店主 0.73 0.85 0.80 0.77 サラリーマン 1.78 2.43 2.38 2.49 労働者 0.70 0.68 0.52 0.52 全ネットサイズ27 18.06 19.19 20.09 23.66 表 6: 職業威信ごとに見る交際の平均値 職業威信 40- 50- 無職 40未満 50未満 60未満 60以上 親戚 専門職 0.75 0.56 0.54 0.77 0.85 社長 1.16 0.98 1.30 1.12 1.32 議員 0.18 0.12 0.22 0.14 0.17 役人 0.45 0.35 0.46 0.50 0.50 店主 0.62 0.99 0.84 0.77 0.76 サラリーマン 2.67 2.51 2.72 2.74 2.89 労働者 0.74 1.21 1.02 0.77 0.94 近隣 専門職 0.59 0.55 0.59 0.58 0.82 社長 0.87 0.74 0.94 0.72 0.75 議員 0.26 0.30 0.46 0.25 0.34 役人 0.31 0.35 0.57 0.49 0.58 店主 0.74 1.10 1.04 0.74 0.86 サラリーマン 2.23 2.26 2.28 2.22 2.34 労働者 0.39 0.91 0.90 0.55 0.57 友人 専門職 0.46 0.51 0.55 0.61 1.28 社長 0.60 0.65 0.90 0.69 1.28 議員 0.12 0.27 0.19 0.22 0.39 役人 0.30 0.33 0.50 0.40 0.75 店主 0.56 0.70 1.11 0.79 0.97 サラリーマン 2.03 2.04 2.48 2.51 2.69 労働者 0.31 0.64 0.95 0.62 0.50 全ネットサイズ27 16.60 19.41 22.47 19.90 23.18
等と、専門職、社長との交際において、ある程度の関連が見出された。さらに、友人との交際に おいては、学歴、職業威信、世帯収入、等と専門職、社長、役人、一般のサラリーマンとの交際 において、比較的はっきりした関連が多く見られた。
社会階層と領域ごとのネットワークサイズの MIMIC モデル 次に、家族・親族、近隣、友人の 三つの個別ネットワークサイズについて、MIMICモデルを適用した。MIMIC モデル(Multiple
Indicator Multiple Cause Model)は構造方程式モデリングの中でもシンプルなモデルであり、構
成される潜在変数がどのような変数によって影響を受けるのか、潜在変数を構成している個別の 観測変数がどのような経路で外生変数の影響を受けるのかが一目瞭然である。このため従来から 予測などの目的に適しているとされ、しばしば用いられてきた。その際に、MTMMモデルを扱っ た5 章の分析結果を参考にして、ネットワーク指標の変数選択を行った。具体的には、それぞれ において、専門職、社長役員、部課長以上の役人、自営店主、一般、の五つを用いることとした。 説明変数としては、年齢、居住年数、学歴年数、世帯収入を用いている。また、以後の分析では、 職業や社会階層の影響が強く表れる男性を対象としている。女性の分析については今後の課題で ある。 それぞれのモデルの適合度について述べると、親戚ネットワークサイズでは、CFAモデルでは、
CFI = 0.951 (分析は省略)、MIMIC モデルにおいても CFI = 0.902であり、適合度はよいとい
える (図4)。ここでは、年齢と学歴、世帯収入が親戚のネットワークを広げる正の効果を持って いる。 近隣ネットワークサイズにおいては、CFA モデルで 0.980 (分析は省略)、MIMICモデルにお いても 0.969であり、適合度はかなりよい(図5)。ここでは、(他の要因をコントロールした場合 に)年齢のみが近隣のネットワークを広げる正の効果を持っている。一般に、社会階層的な要因は 社会生活の様々な側面において効果を及ぼしているが、ここでのモデルでは、学歴や世帯収入な どは近隣のネットワークへの効果は見出されなかった。 友人ネットワークサイズの適合度は、CFAモデルだとCFI = 0.979であり、かなりよい (分析 は省略)。だが、友人ネットワークサイズの MIMIC モデルにおいては、GFI = 0.952, AGFI =
0.897, RMSEA = 0.099、であり、適合度が下がってしまう (図6)。ここでは、年齢と学歴、世帯 収入がネットワークを広げる正の効果を持っており、(他の要因をコントロールした状況では) 居 住年数は負の効果を有している。 また、図において、交際のあり方とネットワークの特徴を表すため、潜在変数から観測変数へ のパスの値が大きいほど(関連が強いほど) 潜在変数と観測変数を近く配置し、パスの値が小さい ほど (関連が弱いほど)観測変数が潜在変数から遠ざかるように配置している。親戚、近隣、友人 のどの領域のネットワークサイズにおいても、サラリーマンとの人づき合いの項目の関連が弱い ことが分かる。また、親戚ネットワークサイズにおいては、自営店主との人づき合いの項目の関 連も弱い。 社会階層によるモデルの決定係数の低さについて ただし、これらの MIMICモデルにおける決 定係数は、現段階ではさほど高くない。それでも、モデルは非常にシンプルであり、改善は十分
年齢 居住年数 学歴 世帯収入 0. 48* -0. 19* 0. 32* -0. 30* -0. 06 -0. 07 ネット親族 0. 67* 0.85 0.74 0.96 0.98 D1 0.96 -0. 01 0. 17* 0.53 0. 39* 0. 27* 0. 18* 0. 19* 0. 16* 0.92 専門職 E22 社長役員 E23 役人 E25 自営店主 E26 サラリーマン E27 図 4: 家族・親族ネットワークサイズのMIMICモデル 年齢 居住年数 学歴 世帯収入 0. 48* -0. 20* 0. 30* -0. 29* -0. 06 -0. 06 ネット近隣 0. 73* 0.79 0.68 0.81 0.92 D1 0.97 0.11 0.06 0.61 0. 54* 0. 59* 0. 39* 0. 15* 0.09 0.84 専門職 E31 社長役員 E32 役人 E34 自営店主 E35 サラリーマン E36 図5: 近隣ネットワークサイズのMIMICモデル 年齢 居住年数 学歴 世帯収入 0. 47* -0. 19* 0. 32* -0. 28* -0. 04 -0. 03 ネット友人 0. 82* 0.82 0.57 0.81 0.96 D1 0.92 -0. 17* 0. 23* 0.57 0. 59* 0. 58* 0. 29* 0. 34* 0. 12* 0.80 専門職 E40 社長役員 E41 役人 E43 自営店主 E44 サラリーマン E45 図6: 友人ネットワークサイズのMIMICモデル
に期待できる3)。 特に、ネットワークサイズに対して、社会階層の説明力が非常に小さいと指摘されることがあ る。例えば、社会階層変数を説明変数として用いる重回帰分析等でネットワークサイズの決定係 数が非常に小さく、社会階層だけが規定因ではないと主張されることがある。 他方で、1975年・1995年SSM調査において、ネットワークの多様性や勢力性の決定係数が0.10 ∼0.30程度である分析結果も示されている。また、SSMデータにおけるネットワークサイズの重 回帰分析においても、決定係数はそれほど低いわけではない。このような分析結果の違いは、ど うして生じるのだろうか? 測定手法の違い 一つには、ネットワークサイズの指標の構築の違いにある。SSM 方式では、職 業からネットワークを尋ねている。今回の吹田調査においてもしかりである4)。 他方で、関係領域ごとに個別の相手との交際を尋ねる質問項目では、収集される個別情報は非 常に正確であるが、代わりに回答者にかかる負担も大きい場合がある。このため、回答者は、自 分の膨大な多くの関係者をあげることができるとは限らない可能性がある。 測定項目(友人と知人)の違い また、幅広く広がる浅い関係のネットワークを探るには、指標が 知人ネットワークや職業で測定したものであることが多い。これらにおいては、社会階層との関 連がはっきり出る傾向がある。このことが、社会階層とネットワーク特性の関連を強めている可 能性がある。 他方で、身近な、親密な友人との密接なネットワークを探ると、社会階層との関連が明瞭には 生じにくい場合がある。その際には、親しい数人を尋ねた指標であることが多く、このことが、社 会階層とネットワーク特性の関連を弱めている可能性がある。つまり、身近な絆は社会階層の効 果が比較的弱く、広がるコネやツテは社会階層の効果が比較的強く表れやすい場合があり、状況 によってはこれらが分析結果に反映している可能性がある。 指標の違い また、分析に用いている指標の違いも考えられる。例えば、今回の調査における項 目の中では、専門職との交際において、社会階層の効果が強く表れることを確認することが出来 る。社会階層と専門職との交際について、多重指標モデルで分析をしたところ、社会階層との関 連が強く表れ、決定係数は 0.17であった(図7)5)。ここでは、学歴、世帯収入、職業威信で表さ れる社会階層という潜在概念と、親戚・近隣・友人の専門職との交際で表される専門職ネットワー クという潜在概念の間の因果関係をモデル化している。 ネットワークには様々な測定項目があるが、この中でも年齢、学歴や収入と正の関連にある交 際や、逆に、負の関連にある交際などが、一定の傾向を持ちながら混在しており、これらの交際 をまとめる場合には注意をする必要がある(菅野[6])。このため、社会階層という視点から分析を する際には、社会階層を軸にしながらネットワークの指標と分析を構築することが重要といえる。 3)分析は省略するが、年賀状ネットワークを社会階層で説明するモデルの決定係数は高い。これは、社会階層による 説明力が、ネットワーク特性によって異なっていることを示している。 4)当然ながら調査実施範囲の違いの影響も考えられる。 5)適合度は、χ2 = 9.03, d.f. = 8, p値= 0.3395, CFI = .992,であり、データとモデルの適合度はよい。
社会階層 世帯収入 学歴 職業威信 E111 E160 E205 0.51* 0.51* 0.72* 0.86 0.86 0.69 専門職 ネット 親戚 近隣 友人 E22 E31 E40 0.48 0.48* 0.77* 0.88 0.88 0.64 0.41* D2 0.91 図7: 社会階層と専門職ネットワークサイズの多重指標モデル
5
交際の男女差に潜む社会階層の男女差
本研究では、性別、年齢、学歴、世帯収入、職業威信等の社会的属性と、交際のあり方につい て分析を行ってきた。 結論として、まず、男性と女性とで確かに交際に違いが見られた。特に、友人とのつきあいに おいて、男性の方が多く、女性の方が少ないことが判明した。なお、日本全国を対象とした 1995 年SSM調査では、ここで用いられているような複数の職種との多くにおいて、女性に比べて男性 の方がつきあいが多いという傾向が分析で示されている。(安田[7]、菅野[6])。これに対して、今 回の調査データと分析では、友人においては該当したが、親戚や近隣においては必ずしもそうで はなかった。これは、1995年 SSM調査では「親戚や知人」を合わせる形で交際の有無を尋ねて いるが、男女差が強く見られる友人との交際と、男女差があまり見られない親戚・近隣との交際 の傾向が混ざっていたからと考えられる。交際全体としては、男性の方が多く女性が少ない傾向 があるという知見は同様に支持されたので、交際の概略を調べるという意味では1995年SSM 調 査での知見は妥当であるが、細かく見ていくと、家族や親戚、近隣では男女差はあまり見られな いが友人・知人において男女差が強く見られる、ということになる。ただし、この男女差は、環 境によって構成された後天的なものである可能性がある。交際のあり方の男女差の背景には、例 えば社会階層や就業状況の男女差が横たわっているということも考えられる。今回の調査データ では、さらに詳細な分類による分析のためにはサンプル数が十分ではないため、これ以上の分析 は今後の課題となるが、交際の男女差の確認にとどまらず、さらに因果関係を解明することが重 要と言える。 また、本研究では平均値で確認したが、学歴、世帯収入、職業威信などの社会階層との関連に おいて、交際のすべての項目が正の関連を持っているわけではない。このため、交際の項目を用 いて合成変数を作成したり、尺度化を行ったりする場合には注意をする必要がある。 特に、近隣においては、社会階層と交際においてあまり明瞭な関連が見出されない場合があっ た。個別の項目の分析によって明らかになる細かな側面と、情報の縮約を行うことによって明らか になる大きな側面の両方からの分析を実施し、これらから得られる知見に横たわっている一定の傾向や特徴を把握して、社会階層と交際の関連を今後更に明らかにしていくことが重要といえる。
参考文献
[1] 野辺政雄. 1999. 「高齢者の社会的ネットワークとソーシャルサポートの性別による違いについて」. 『社会学評 論』, Vol. 50, pp. 375–392.
[2] McPherson, J. Miller and Lynn Smith-Lovin. 1982. “Women and Weak Ties: Differences by Sex in the Size of Voluntary Organizations”. American Journal of Sociology, Vol. 87, pp. 883–904.
[3] Moore, G. 1990. “Structural Determinants of Men’s and Women’s Personal Networks”. American Sociological
Review, Vol. 55, pp. 726–735. [4] 大和礼子. 1996. 「中高年男性におけるサポート・ネットワークと『結びつき志向』役割との関係」. 『社会学評 論』, Vol. 47, pp. 350–365. [5] 大和礼子. 2000.「“社会階層と社会的ネットワーク”再考」. 『社会学評論』, Vol. 51, pp. 235–250. [6] 菅野剛. 1998.「女性と社会的ネットワーク」. 白倉幸男(編),『1995年SSM調査報告シリーズ17社会階層と ライフスタイル』, pp. 309–322. [7] 安田雪. 1998.「職業アスピレーション: 教育かネットワークか」. 岩本健良(編),『1995年SSM調査シリーズ 9教育機会の構造』, pp. 95–112.