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集英社の『自選集』と『日本文学全集』

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Academic year: 2021

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一 、 は じ め に 小 学 館 の 一 ツ 橋 グ ル ー プ の 中 核 で あ る 集 英 社 注 一 ︶ は 、 雑 誌 や 娯 楽 路 線 中 心 の イ メ ー ジ が あ る が 、 手 堅 い 文 芸 も の で も 多 く の す ぐ れ た 出 版 を 手 掛 け て い る 。 ま た 若 年 層 に タ ー ゲ ッ ト を っ た 書 籍 、 文 庫 、 雑 誌 の 野 で は 常 に 先 頭 集 団 の 中 で 走 り 続 け て い る 。 そ の 集 英 社 は 、 か つ て 矢 崎 進 也 が 喝 破 し た ご と く 、 世 界 文 学 全 集 の 野 で も 、 後 発 の 出 版 社 で あ っ た が 、 そ の 刊 行 で は 最 も 熱 心 な 出 版 社 注 二 ︶ ﹂ な の で あ る 。 実 際 、 世 界 文 学 全 集 の 刊 行 が ピ ー ク に 達 し た 六 〇 年 代 半 ば に ﹃ 二 〇 世 紀 の 文 学 世 界 文 学 全 集 ﹄ で 参 入 し た と き は 、 や や 遅 き に 失 し た 観 も あ っ た が 、 そ の 後 、 小 型 の デ ュ エ ッ ト 版 ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ 六 六 巻 、 大 型 の 愛 蔵 版 ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ 四 五 巻 、 中 型 の ﹃ 世 界 の 文 学 ﹄ 三 八 巻 、 同 じ く 中 型 の ベ ラ ー ジ ュ ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ 八 八 巻 な ど を 立 て 続 け に 世 に 問 い 、 文 学 全 集 離 れ の 進 む 、 七 、 八 〇 年 代 を 支 え 続 け た 。 八 〇 年 代 末 、 年 号 は 平 成 に 移 っ た 後 も ﹃ ギ ャ ラ リ ー 世 界 の 文 学 ﹄ を 刊 行 、 唯 一 の 世 界 文 学 全 集 を 提 供 し て い る 功 績 は 特 筆 す る に 値 す る 。 世 界 文 学 の 野 に 比 べ る と 、 日 本 文 学 全 集 の 野 で は 地 味 な 動 き で あ る が 、 そ れ で も 全 八 八 冊 の 全 集 を 刊 行 し た り 、 署 名 入 り の 自 選 集 や 、 純 文 学 と 大 衆 文 学 の 境 界 を 払 っ た よ う な 全 集 を 出 し た り 、 積 極 的 な 動 き を し て い る 。 全 八 33 福 岡 女 子 大 学 文 学 部 紀 要 文 藝 と 思 想 ﹂ 三 三 ∼ 五 二 頁 第 七 一 号 二 〇 〇 七 年 二 月

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八 冊 の 大 部 の 全 集 は 、 改 装 版 と い う こ と を え る と き に も 、 面 白 い 問 題 を 提 起 す る よ う で あ る 。 本 稿 で は 、 こ の 集 英 社 の 日 本 文 学 の 全 集 に つ い て 察 を 行 う 。 二 、 一 九 六 一 年 か ら 六 二 年 に か け て 集 英 社 の 文 学 全 集 を え る と き 、 一 九 六 二 年 ︵ 昭 和 三 七 年 ︶ と い う 年 は 逸 す る こ と が で き な い 。 こ の 年 、 集 英 社 は ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄﹃ 世 界 短 篇 文 学 全 集 ﹄ と い う 二 つ の 叢 書 の 刊 行 を 始 め る 。 と も に 後 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ と ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄・ ﹃ 世 界 の 文 学 ﹄ の 母 胎 と な っ た も の と え て よ い 。 い わ ば 、 プ レ ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ と い っ て よ い が 、 こ の 二 つ の 叢 書 の 淵 源 を に れ ば 、 前 年 一 九 六 一 年 の 企 画 に 到 達 す る 。 集 英 社 が 、 グ ル ー プ 帥 の 小 学 館 と 同 様 に 、 児 童 対 象 の 書 籍 や 雑 誌 の 野 で 他 の 出 版 社 を 引 き 離 し た 力 を 持 っ て い る の は 周 知 の こ と で あ る が 、 全 集 も の へ の 参 入 に 際 し て も 、 こ の 得 意 野 で の 実 績 を ひ っ さ げ て の こ と で あ っ た 。 そ れ が 、 業 三 五 周 年 記 念 事 業 の ﹃ 少 年 少 女 日 本 歴 全 集 ﹄ と ﹃ ひ ろ す け 幼 年 童 話 文 学 全 集 ﹄ で あ る 。 こ の 二 つ は 、 集 英 社 の 社 で あ る ﹃ 集 英 社 七 〇 年 の 歴 ﹄ で も 言 及 さ れ て お り 、 と く に 後 者 は 大 き く 取 り 上 げ ら れ て 、 業 界 の 予 想 を は る か に 上 回 る 大 ヒ ッ ト 企 画 ﹂ と な っ た こ と 、 ﹁ 最 終 的 に は 四 〇 〇 万 部 を 越 え る だ ろ う ﹂ と 推 測 さ れ た こ と な ど が 記 さ れ て い る 。 こ こ で は 、 社 で は 記 述 の 少 な か っ た 前 者 に つ い て 簡 単 に 見 て お こ う 。 ﹃ 少 年 少 女 日 本 歴 全 集 ﹄ は 、 全 一 二 巻 。 菊 判 の た っ ぷ り と し た 判 型 に 、 上 下 二 段 に ゆ っ た り と 版 組 が な さ れ 、 漢 数 字 を 除 い て ル ビ で 年 少 者 に も 読 み や す い も の で あ っ た 。 沢 田 重 隆 の 装 本 や 、 佐 多 芳 郎 、 川 田 清 実 、 下 高 原 千 歳 ら の 挿 絵 も 美 し く か つ 親 し み や す く 、 定 評 の あ る 小 学 館 ﹃ 図 説 日 本 文 化 大 系 ﹄ な ど に 拠 っ て い る 図 版 も す ば ら し か っ た が 、 な ん と い っ て も 、 尾 崎 士 郎 ・ 和 歌 森 太 郎 ら 編 著 者 の 文 章 の 力 で あ る 。 高 度 の 内 容 を 平 易 に 書 き な が ら 、 圧 倒 的 な 筆 力 で 年 少 の 読 者 を ぐ い ぐ い と 引 き 込 ん で 放 さ な か っ た 。 こ の シ リ ー ズ に よ っ て 歴 好 き に な っ た 少 年 少 女 は 多 か っ た に 違 い な い 。 組 版 が 面 倒 な 系 図 な ど は 、 時 に 手 書 き で 挿 入 さ れ て い る 注 四 ︶ の が 、 当 時 を 偲 ば せ て ほ ほ え ま し い 。 本 編 の 読 み 物 と し て の 楽 し さ 、 人 間 ド ラ マ ・ 物 語 と し て の 面 白 さ と 、 相 互 補 完 す る よ う に 、 適 宜 挿 入 さ れ る ﹁ し お り ﹂ で 歴 の 流 れ に つ い て 深 く 学 べ る よ う に な っ て い た 。 相 当 幅 広 い 年 齢 層 の 少 年 少 女 が 満 足 で き る よ う な 本 作 り で あ っ た 。 幅 広 い と い え ば 、 指 導 さ れ る 方 の た め に ﹂ と い う 副 題 の 付 い た ﹁ あ と が き ﹂ が あ っ た り 、 こ の 種 の 本 と し て は 珍 し い ほ ど の き ち ん と し た ﹁ さ く い ん ﹂ な ど 、 教

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師 の 副 読 本 的 な 役 割 も 持 っ て い た の か も し れ な い 。 小 学 の 先 生 な ど を 通 し て 、 知 ら ず 知 ら ず の う ち に こ の 本 の 内 容 に 触 れ て い た 少 年 達 も い た の で は な い か 。 も う ひ と つ こ の 叢 書 の 特 色 と し て 、 冊 ご と の 印 象 的 な タ イ ト ル が あ る 。 外 函 に は 大 き く ﹁ 少 年 少 女 ︵ 角 書 き ︶ 日 本 歴 全 集 ﹂ と 刻 印 さ れ 、 冊 ご と の タ イ ト ル は 小 さ く 記 載 さ れ る だ け で あ る が 、 書 物 本 体 の 背 表 紙 に は ﹁ 貴 族 の 黄 金 時 代 ﹂ 南 北 朝 の 悲 劇 ﹂ あ ら し を よ ぶ 幕 末 ﹂ な ど の 魅 力 的 な 冊 ご と の 編 名 が 大 書 さ れ て い る 。 こ れ ら の 惑 的 と も い え る タ イ ト ル に 惹 か れ て 、 書 物 を 手 に 取 っ た 子 供 た ち も 少 な く な か っ た ろ う 。 巧 妙 な キ ャ ッ チ コ ピ ー は こ の 出 版 社 の 得 意 と す る と こ ろ で も あ っ た 。 こ の コ ピ ー の 力 が 遺 憾 な く 発 揮 さ れ た の が 、 六 二 年 の ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 内 容 見 本 で あ る 。 別 稿 で も 述 べ た が 紀 田 順 一 郎 の ﹃ 内 容 見 本 に み る 出 版 昭 和 ﹄ は 内 容 見 本 か ら 出 版 文 化 を 浮 か び 上 が ら せ る 好 著 で 注 五 ︶ 、 面 白 い 内 容 見 本 が 数 多 く 取 り 上 げ ら れ て い る が 、 そ の 中 で も 五 ペ ー ジ に 亘 っ て 紹 介 さ れ て い る ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ の そ れ は 異 色 中 の 異 色 で あ る 。 五 五 人 の 作 家 へ の 電 話 ︵ テ レ ︶ イ ン タ ビ ュ ー ﹂ で は ﹁ 月 最 高 の 執 筆 量 ﹂ ﹁ ひ い き の プ ロ 野 球 球 団 ﹂ ふ と し た 時 口 ず さ む 歌 ﹂ な ど 一 風 変 わ っ た 項 目 ば か り で あ る 。 内 容 見 本 と し て は め ず ら し く 、 構 成= 沢 田 重 隆 ・ 鈴 木 康 行 、 コ ピ ー= 西 尾 忠 久 ら の 制 作 ス タ ッ フ 名 が 記 さ れ て い る 注 六 ︶ ﹂ よ う に 、 集 英 社 は 広 報 の 重 要 性 に 早 く か ら 気 づ い て い た 。 沢 田 重 隆 は 上 述 の ﹃ 少 年 少 女 日 本 歴 全 集 ﹄ の 装 丁 担 当 で も あ っ た 。 さ て 、 こ の ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ は ﹁ 若 い 世 代 の た め に 、 初 め て 編 集 さ れ た 、 戦 後 文 学 の ベ ス ト セ ラ ー 集 ﹂ 戦 後 の 文 学 の 動 き 、 流 れ を 作 家 単 位 に 系 統 付 け た 新 編 集 注 七 ︶ ﹂ と 記 さ れ る ご と く 、 阿 川 弘 之 ・ 庄 野 潤 三 の 第 一 巻 か ら 、 吉 行 淳 之 介 の 第 三 八 巻 ま で 、 戦 後 派 の 作 家 を ず ら り と 並 べ た も の で 、 五 味 康 祐 、 柴 田 錬 三 郎 、 南 条 範 夫 ら の 時 代 小 説 、 高 木 彬 光 、 島 田 一 男 、 多 岐 川 恭 、 佐 野 洋 ら の 推 理 小 説 な ど 、 大 衆 的 な 人 気 の 高 い 作 家 や 作 品 を 集 め て い る と こ ろ に 特 徴 が あ る 。 も ち ろ ん そ の 一 方 で 、﹃ 野 火 ﹄﹃ 俘 虜 記 ﹄ の 大 岡 昇 平 、﹃ 真 空 地 帯 ﹄﹃ 暗 い 絵 ﹄ の 野 間 宏 を は じ め 、 梅 崎 春 生 ﹃ 桜 島 ﹄、 田 宮 虎 彦 ﹃ 足 摺 岬 ﹄、 堀 田 善 衛 ﹃ 広 場 の 孤 独 ﹄、 大 江 三 郎 ﹃ 飼 育 ﹄、 島 尾 敏 雄 ﹃ 死 の 棘 ﹄ な ど 、 戦 後 の 文 学 を 語 る 上 で は ず す こ と の で き な い 作 家 や 作 品 は き ち ん と 押 さ え ら れ て い る 。 五 九 年 二 月 の ﹃ 井 上 靖 集 ﹄ か ら 配 本 を 開 始 、 三 月 の ﹃ 三 島 由 紀 夫 集 ﹄、 四 月 の ﹃ 源 氏 鶏 太 集 ﹄ と 順 調 に 滑 り 出 し た 。 配 本 開 始 時 点 で 新 作 長 編 と の み 記 さ れ 収 載 作 品 が 未 決 定 で あ っ た 本 清 張 は 、 六 五 年 一 月 の 三 六 回 配 本 で ﹃ あ る ﹁ 小 倉 日 記 ﹂ 伝 ﹄﹃ 張 込 み ﹄﹃ 球 形 の 荒 野 ﹄ な ど が 収 録 さ れ た 。 35

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こ の 全 集 は 月 報 に 到 る ま で 十 に 楽 し め る も の で あ っ た 。 第 一 巻 の ﹁ 阿 川 弘 之 の 美 し い 奥 さ ん の こ と ﹂ 藤 原 審 爾 、 月 報 二 二 、 第 二 二 回 配 本 ︶ を は じ め 、 遠 藤 狐 狸 庵 先 生 の こ と ﹂ 三 浦 朱 門 、 月 報 二 六 ︶、 牛 若 丸 朱 門 ﹂ 進 藤 純 孝 、 月 報 三 四 ︶ な ど 傑 作 揃 い で あ る 。 ク モ ノ ス 城 ﹂ の あ る じ ﹁ 蓼 科 大 王 ﹂ こ と 梅 崎 春 生 に つ い て 語 る 抱 腹 絶 倒 の ﹁ 練 馬 王 に つ い て ﹂ 遠 藤 周 作 、 月 報 一 八 ︶ や 、 曾 野 綾 子 の 一 面 を 見 事 に 浮 き 彫 り に し た 、 ﹃ 遠 来 の 客 達 ﹄ の 頃 ﹂ 山 川 方 夫 、 月 報 二 三 ︶ な ど 、 月 報 で 一 冊 の 本 を 編 み た い ほ ど で あ る 。 読 み 物 と し て の 面 白 さ 満 載 の 記 事 が あ る 一 方 で 、 資 料 性 の 横 溢 し た 瀬 沼 茂 樹 ﹁ 戦 後 文 学 編 年 ﹂ も 連 載 さ れ て お り 、 そ の あ た り の バ ラ ン ス も 絶 妙 で あ っ た 。 六 二 年 に や は り 配 本 を 開 始 し た ﹃ 世 界 短 編 文 学 全 集 ﹄ の 成 功 が 六 五 年 か ら の ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ に つ な が っ て い く よ う に 、 こ の ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 取 り 組 み が 、 六 六 年 か ら の 全 八 八 巻 の 大 が か り な ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 下 地 作 り と な っ た こ と は 間 違 い な い 。 ち な み に 、 ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ と ﹃ 世 界 短 編 文 学 全 集 ﹄ は 、 共 に き ら び や か な シ ル バ ー グ レ イ の 函 が 極 め て 印 象 的 で 、 こ の 年 日 本 と 世 界 の 文 学 全 集 の 野 に 鮮 や か に 躍 り 出 た 集 英 社 を 象 徴 す る よ う な 、 明 る い 鮮 や か な 造 本 で あ っ た 。 三 、 自 選 集 ﹂ シ リ ー ズ の 骨 格 ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ も 三 の 二 の 配 本 を 終 え た 頃 、 一 九 六 四 年 二 月 刊 行 の 第 二 九 巻 ﹃ 福 永 武 彦 ・ 安 部 房 集 ﹄ の 挟 み 込 み チ ラ シ に 目 を 引 く 一 つ の 広 告 が 載 っ て い る 。 豪 華 限 定 版 ﹂ 著 者 直 筆 サ イ ン 入 り ﹂ の ﹁ 文 学 自 選 集 ﹂ の シ リ ー ズ の 企 画 が そ れ で 、 第 一 回 配 本 と し て ﹃ 石 坂 洋 次 郎 自 選 集 ﹄ が 予 告 さ れ 、 第 一 回 配 本 三 月 下 旬 以 下 三 か 月 に 一 冊 ず つ 配 本 限 定 版 一 〇 〇 〇 部 ナ ン バ ー 入 り 特 装 菊 判 変 型 ・ 革 装 四 〇 〇 ペ ー ジ 各 巻 二 八 〇 〇 円 注 八 ︶ ﹂ と 記 さ れ て い た 。 第 一 線 で 活 躍 中 の 大 家 ・ 文 豪 十 余 人 に 自 作 を 選 ん で も ら い 、 肉 筆 の 署 名 を 入 れ 、 革 装 で 天 金 を 施 す な ど 豪 華 な 装 丁 で 、 一 〇 〇 〇 部 限 定 出 版 の 特 製 本 の シ リ ー ズ を 企 画 し た の で あ る 。 判 型 や ペ ー ジ 数 の 近 い ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ が 三 九 〇 円 の 時 代 に 、 定 価 二 八 〇 〇 円 で あ る か ら か な り 高 額 な 値 段 設 定 で あ る が 、 そ れ で も 高 嶺 の 花 と ま で は い か ず 、 多 少 無 理 を す れ ば 手 の 届 く 範 囲 と い っ た と こ ろ で あ ろ う か 。 一 〇 〇 〇 部 と い う 部 数 も 、 限 定 本 と し て は 異 色 の 多 さ で あ る 。 や や 矛 盾 し た 言 い 方 で あ る が 、 限 定 本 の 普 及 版 、 特 製 本 の 普 及 版 を 目 指 し た の で あ ろ う 。 東 京 オ リ ン ピ ッ ク の 年 、 黄 金 の 六 〇 年 代 を 象 徴 す る 年 に 、 正 に 相 応 し い 企 画 で

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あ っ た 。 後 に 、 二 見 書 房 の ﹃ 自 選 作 品 ﹄ シ リ ー ズ が 企 画 さ れ る な ど 、 追 随 す る も の も 出 て い る ほ ど で あ る 注 九 ︶ 。 こ の 集 英 社 の 自 選 本 シ リ ー ズ は 現 在 で も 一 定 の 評 価 を 保 ち 、 人 気 の ﹃ 三 島 由 紀 夫 自 選 集 ﹄﹃ 川 端 康 成 自 選 集 ﹄ は 、 保 存 の 良 い も の で あ れ ば 一 〇 万 円 前 後 の 古 書 価 が 付 い て い る 。 た だ 一 〇 〇 〇 部 と い う 部 数 の 多 さ は あ っ て も 、 特 製 本 ・ 限 定 本 と い う 性 格 上 、 全 冊 を 揃 え て い る 大 学 図 書 館 や 立 図 書 館 は な い 。 納 本 制 度 に 支 え ら れ て い る 国 会 図 書 館 で も 全 一 四 冊 の う ち 、 一 〇 冊 し か 所 蔵 し て い な い 。 ま た 国 会 図 書 館 の 一 〇 冊 の う ち 、 内 容 細 目 ︵ 所 収 作 品 ︶ ま で 含 め た 詳 細 な 書 誌 が 作 成 さ れ て い る の は 六 冊 の み で あ る 。 上 述 し た よ う に 、 大 学 図 書 館 ・ 立 図 書 館 の 所 蔵 も 少 な い の で 、 こ の シ リ ー ズ の 全 体 像 を 示 し て お こ う 。 発 行 年 月 、 ペ ー ジ 数 、 解 説 担 当 、 署 名 の 形 式 に 加 え て 、 N D L | O P A C に 内 容 細 目 が な い も の に つ い て は 全 作 品 名 を あ げ た 。 一 、 石 坂 洋 次 郎 自 選 集 ︵ 六 四 年 三 月 一 〇 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 有 三 九 七 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 亀 井 勝 一 郎 、 署 名 ・ 石 坂 洋 次 郎 所 収 作 品 草 を 刈 る 娘 、 若 い 川 の 流 れ 、 麦 死 な ず 他 二 、 三 島 由 紀 夫 自 選 集 ︵ 六 四 年 七 月 一 〇 日 ︶ 国 会 無 三 九 八 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 橋 川 文 三 、 署 名 ・ 三 島 由 紀 夫 所 収 作 品 潮 騒 、 美 徳 の よ ろ め き 、 金 閣 寺 、 憂 国 、 百 万 円 煎 餅 、 沈 め る 滝 、 大 障 碍 、 ワ ッ ト オ の シ テ エ ル へ の 出 三 、 源 氏 鶏 太 自 選 集 ︵ 六 四 年 一 一 月 一 〇 日 ︶ 国 会 無 三 九 七 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 小 伸 六 、 署 名 ・ 源 氏 鶏 太 所 収 作 品 た ば こ 娘 、 木 石 に 非 ず 、 初 恋 物 語 、 随 行 さ ん 、 台 風 さ ん 、 英 語 屋 さ ん 、 後 妻 の 話 、 お 妾 さ ん 、 も う 手 遅 れ 会 、 無 給 嘱 託 室 解 散 、 波 、 帽 子 、 流 氷 、 天 衣 無 縫 、 そ ろ ば ん 侍 、 印 度 紗 、 喧 嘩 太 郎 、 子 等 が た め 、 精 力 絶 倫 物 語 、 最 後 の 芸 者 、 鬼 課 長 、 東 京 一 淋 し い 男 四 、 獅 子 文 六 自 選 集 ︵ 六 五 年 三 月 一 〇 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 有 四 一 四 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 河 盛 好 蔵 、 署 名 ・ 獅 子 文 六 所 収 作 品 南 の 風 、 達 磨 町 七 番 地 、 て ん や わ ん や 他 五 、 井 上 靖 自 選 集 ︵ 六 五 年 七 月 一 〇 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 有 四 〇 六 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 福 田 宏 年 、 署 名 ・ 井 上 靖 所 収 作 品 天 平 の 甍 、 猟 銃 、 姨 捨 、 楼 蘭 、 洪 水 、 詩 他 六 、 志 賀 直 哉 自 選 集 ︵ 六 五 年 一 一 月 一 〇 日 ︶ 37

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国 会 蔵 ・ 細 目 有 、 三 八 〇 〇 円 四 三 〇 部 三 九 八 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 瀧 井 孝 作 、 署 名 ・ 直 哉 所 収 作 品 暗 夜 行 路 、 城 の 崎 に て 、 赤 西 蠣 太 、 灰 色 の 月 他 七 、 川 端 康 成 自 選 集 ︵ 六 六 年 四 月 一 〇 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 無 三 九 九 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 山 本 吉 、 署 名 ・ 川 端 康 成 所 収 作 品 十 六 歳 ︵ 十 四 歳 ︶ の 日 記 、 伊 豆 の 踊 子 、 抒 情 歌 、 二 十 歳 、 禽 獣 、 田 舎 芝 居 、 日 雀 、 雪 国 、 千 羽 鶴 、 岩 に 菊 、 山 の 音 、 弓 浦 市 、 眠 れ る 美 女 八 、 武 者 小 路 實 篤 自 選 集 ︵ 六 六 年 七 月 一 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 無 三 九 八 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 河 盛 好 蔵 、 署 名 ・ 實 篤 所 収 作 品 そ れ か ら ﹂ に 就 い て 、 お 目 出 た き 人 、 雑 感 、 自 己 の た め ﹂ お よ び そ の 他 に つ い て 、 幸 福 者 、 友 情 、 人 間 万 歳 、 桃 源 に て 、 だ る ま 、 マ チ ス ・ ル オ ー ・ ド ラ ン ・ ピ カ ソ 訪 問 記 、 愛 と 死 、 馬 鹿 一 、 真 理 先 生 、 詩 九 、 谷 崎 潤 一 郎 自 選 集 ︵ 六 六 年 八 月 三 〇 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 無 三 九 八 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 江 藤 淳 、 署 名 ・ 谷 崎 潤 一 郎 ︵ 代 筆 ︶・ 雪 後 庵 ︵ 落 款 ︶ 所 収 作 品 刺 青 、 幇 間 、 小 さ な 王 国 、 母 を 恋 ふ る 記 、 お 国 と 五 平 、 卍 、 吉 野 、 武 州 秘 話 、 春 琴 抄 、 少 将 滋 幹 の 母 、 鍵 一 〇 、 山 本 有 三 自 選 集 ︵ 六 七 年 二 月 二 〇 日 ︶ 国 会 無 三 九 八 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 浦 佐 美 太 郎 、 署 名 ︵ 一 部 ︶・ 有 三 所 収 作 品 兄 弟 、 子 役 、 チ ョ コ レ ー ト 、 ふ し ゃ く し ん み ょ う 、 こ ぶ 、 無 事 の 人 、 嬰 児 ご ろ し 、 同 志 の 人 々 、 女 人 哀 詞 、 道 し る べ 、 芸 術 は ﹁ あ ら わ れ ﹂ な り 、 空 外 飛 行 、 す わ り 、 正 方 形 と 円 、 途 上 、 一 即 多 、 い ず こ に 訴 え ん 、 隠 れ た る 先 覚 者 ・ 小 林 虎 三 郎 、 竹 、 ロ ハ ス 大 統 領 と 神 保 中 佐 、 銀 河 ﹂ の 初 め に 、 戦 争 放 棄 と 日 本 、 ア メ リ カ と 直 線 、 文 化 の 日 ﹂ が き ま る ま で 、 紀 元 節 に つ い て 、 母 の 思 い 出 、 閑 居 吟 一 一 、 丹 羽 文 雄 自 選 集 ︵ 六 七 年 一 〇 月 一 五 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 無 三 九 七 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 浅 見 淵 、 署 名 ・ 丹 羽 文 雄 所 収 作 品 鮎 、 贅 肉 、 煩 悩 具 足 、 菜 の 花 時 ま で 、 南 国 抄 、 隣 人 、 再 会 、 怒 濤 、 夢 想 家 、 厭 が ら せ の 年 齢 、 天 童 、 洗 濯 屋 、 盛 粧 、 砂 地 、 こ お ろ ぎ 、 爛 れ た

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月 、 劇 場 の 廊 下 に て 、 柔 媚 の 人 、 崖 下 、 も と の 顔 、 う な ず く 、 お 吟 、 水 溜 り 、 あ る 青 年 の 死 、 蛾 一 二 、 舟 橋 聖 一 自 選 集 、 六 八 年 二 月 一 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 有 三 九 七 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 長 谷 川 力 、 署 名 ・ 舟 橋 ︶ 聖 一 所 収 作 品 木 石 、 篠 笛 、 老 茄 子 、 鵞 毛 、 た か 女 覚 書 他 一 三 、 石 川 達 三 自 選 集 ︵ 六 八 年 五 月 一 〇 日 ︶ 国 会 蔵 ・ 細 目 有 四 〇 六 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 久 保 田 正 文 、 署 名 ・ 石 川 達 三 所 収 作 品 頭 の 中 の 歪 み 、 三 代 の 衿 恃 、 風 雪 他 一 四 、 井 伏 鱒 二 自 選 集 ︵ 七 八 年 一 〇 月 一 〇 日 ︶ 国 会 無 四 七 六 ペ ー ジ 、 解 説 ・ 小 坂 部 元 秀 、 署 名 ・ 井 伏 鱒 二 ︵ 鱒 二 の 落 款 ︶ 所 収 作 品 黒 い 雨 、 鯉 、 屋 根 の 上 の サ ワ ン 、 白 毛 、 追 剥 の 話 、 中 込 君 の 雀 、 軍 歌 ﹁ 戦 友 ﹂ ど の 作 家 も 、 四 〇 〇 ペ ー ジ ︵﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ は 除 く 、 次 節 参 照 ︶ と い う 紙 幅 の 制 限 が あ る か ら 、 自 身 の 代 表 作 の 中 か ら ど の 作 品 を 収 録 す る か 苦 慮 し た で あ ろ う 。﹃ 細 雪 ﹄ が 収 録 不 可 能 は 谷 崎 は 、﹃ 刺 青 ﹄﹃ 春 琴 抄 ﹄﹃ 少 将 滋 幹 の 母 ﹄ ﹃ 鍵 ﹄ な ど 戦 前 ・ 戦 後 の 代 表 作 を バ ラ ン ス 良 く な ら べ て い る 。﹃ 若 い 人 ﹄ を 収 載 で き な か っ た 石 坂 洋 次 郎 は そ の 替 わ り と い う 意 識 で ﹃ 麦 死 な ず ﹄ を 末 尾 に お さ め た の で は な い か 。 こ の 企 画 と 、 代 表 作 が ぴ た り と 一 致 し た 作 家 は ﹃ 暗 夜 行 路 ﹄ と 好 短 篇 の ほ と ん ど を 収 録 で き た 志 賀 直 哉 、﹃ 伊 豆 の 踊 子 ﹄﹃ 雪 国 ﹄﹃ 千 羽 鶴 ﹄﹃ 山 の 音 ﹄ を す べ て 収 載 で き た 川 端 康 成 で あ っ た だ ろ う 。 三 島 由 紀 夫 の 場 合 も 、﹃ 潮 騒 ﹄ ﹃ 金 閣 寺 ﹄ と 一 般 読 者 に 人 気 の 高 い 作 品 に 、 三 島 自 身 が 是 非 と も 収 載 し た か っ た は ず の ﹃ 憂 国 ﹄ と 、 平 衡 感 覚 に す ぐ れ て い る 。 武 者 小 路 実 篤 の よ う に 短 編 中 心 の 作 家 は 作 品 選 定 も 困 難 で は な か っ た が 、 山 本 有 三 の よ う に 長 編 の 成 長 小 説 に 本 領 を 発 揮 す る 作 家 は 多 少 苦 し い 選 択 と な っ た 。 山 本 の 場 合 ﹃ 波 ﹄﹃ 真 実 一 路 ﹄﹃ 女 の 一 生 ﹄﹃ 路 傍 の 石 ﹄ い ず れ も 収 録 で き ず 、﹃ ふ し ゃ く し ん み ょ う ﹄﹃ 無 事 の 人 ﹄﹃ 嬰 児 ご ろ し ﹄ な ど で 気 を 吐 い た 。﹃ 三 等 重 役 ﹄ を 収 載 で き な い 源 氏 鶏 太 も 、 直 木 賞 受 賞 の ﹃ 英 語 屋 さ ん ﹄ な ど ﹁ ∼ さ ん ﹂ シ リ ー ズ を 中 心 に 自 選 し て い る 。 井 伏 鱒 二 は ﹃ 山 椒 魚 ﹄ も ﹃ ジ ョ ン 万 次 郎 漂 流 記 ﹄ も ﹃ 本 日 休 診 ﹄ も 収 載 せ ず に 、﹃ 黒 い 雨 ﹄ を 中 核 に 据 え る 思 い 切 っ た 構 成 で あ る 。 こ の よ う に 、 そ れ ぞ れ の 収 録 作 品 に 作 家 自 身 の 強 い 思 い 入 れ も 窺 わ れ る 面 白 い シ リ ー ズ で あ る と い え よ う 。 39

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四 、 自 選 集 ﹂ シ リ ー ズ の 諸 問 題 前 節 で ま と め た 自 選 集 の 一 四 冊 を 見 る と 、 最 後 の ﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ の み が 、 他 の 作 家 と 比 べ て 刊 行 年 月 が 大 き く 隔 た っ て い る こ と が 注 目 さ れ る 。 そ れ 以 前 の 一 三 冊 が 、 一 九 六 四 年 か ら 六 八 年 の 五 年 間 に 集 中 し て 出 さ れ て い る の に 比 べ て ﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ の み が 一 九 七 八 年 の 刊 行 な の で あ る 。 実 際 こ の 一 冊 だ け は 装 丁 が 全 く 異 な る 。 一 三 冊 は 、 金 を 多 用 し た 伊 藤 憲 治 の 鮮 や か な 装 丁 で 、 色 変 わ り の 表 紙 注 一 〇 ︶ が 鮮 明 な 印 象 を 残 す の で あ る が 、﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ の 川 島 羊 三 の 装 丁 は 表 紙 の 平 や 背 文 字 に 金 文 字 を 用 す る も の の 極 め て シ ン プ ル な デ ザ イ ン で あ る 。 組 版 も 一 三 冊 が 二 段 組 で あ る の に 対 し て 、 井 伏 の み 一 段 で ゆ っ た り と 組 ん で い る 。 そ の た め か 他 の 一 三 冊 が 四 〇 〇 ペ ー ジ 内 外 で 平 し た 厚 さ で あ る が 、 こ の 冊 の み 四 七 六 ペ ー ジ と 厚 冊 で あ る 。 判 型 も 井 伏 の も の の み 天 地 が 数 ミ リ 小 振 り で あ る 。 限 定 番 号 を 記 す 検 印 紙 の デ ザ イ ン も 書 式 も 井 伏 の 冊 の み 異 な る 。 定 価 も 、 後 述 す る ﹃ 志 賀 直 哉 自 選 集 ﹄ 以 外 は 二 八 〇 〇 円 で あ っ た の 対 し て 、﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ だ け が 八 五 〇 〇 円 と 大 き く 隔 た る 。 同 一 の シ リ ー ズ の 一 冊 で は あ る が 、 刊 行 時 期 が 大 幅 に 遅 れ た た め に 、 装 丁 ・ 組 版 ・ 判 型 ・ 定 価 な ど 大 き く 異 な っ て し ま っ た の で あ っ た 。 猶 、 こ れ ら 一 四 作 品 は 、 い ず れ も 二 重 函 入 り で 、 外 函 は 三 重 枠 内 に ﹁ 川 端 康 成 自 選 集 ﹂ な ど と 二 行 書 き 、 そ の 下 に ﹁ 一 千 部 限 定 ﹂ 著 者 直 筆 サ イ ン 入 り ﹂ と 二 行 書 き で 記 さ れ た 紙 片 を 貼 付 す る 。 装 丁 の 異 な る ﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ も 外 函 の 形 式 は 同 一 で あ る 。 井 伏 の 冊 の 段 階 ま で 紙 片 の 書 式 が 残 さ れ て い た の で あ ろ う 。 外 函 の 記 載 は 、﹃ 志 賀 直 哉 自 選 集 ﹄ の み ﹁ 四 三 〇 部 限 定 ﹂ と 記 さ れ 、 他 冊 と 異 な る 。 す な わ ち 当 初 の 一 三 冊 の う ち 、﹃ 志 賀 直 哉 自 選 集 ﹄ の み が 、 四 三 〇 部 と 部 数 を り 込 み 、 定 価 も 三 八 〇 〇 円 と 割 高 で あ る こ と が 目 を 引 く 。 部 数 と 定 価 と の 間 に は 相 関 関 係 が あ ろ う が 、 限 定 一 〇 〇 〇 部 が 原 則 の シ リ ー ズ で あ っ た か ら 、 こ の 当 時 志 賀 直 哉 は 別 格 で あ っ た と い う こ と だ ろ う 。 こ の シ リ ー ズ の セ ー ル ス ポ イ ン ト は 、 著 者 自 身 が 自 作 を 選 ん だ こ と や 豪 華 な 装 丁 、 限 定 版 な ど の 要 素 も あ っ た が 、 何 と 言 っ て も 著 者 の 肉 筆 署 名 入 り と い う こ と が 大 き か っ た 。 扉 の 後 、 目 次 の 前 に 著 者 の 近 影 が 挟 ま れ て い る 注 一 一 ︶ が 、 そ の 写 真 に 薄 様 が 重 ね ら れ 、 そ の 薄 様 紙 の 下 の 左 端 に ﹁ 著 者 直 筆 サ イ ン ﹂ と 小 さ く 印 刷 さ れ て い る 。 第 一 回 配 本 の ﹃ 石 坂 洋 次 郎 自 選 集 ﹄ と 、 装 丁 の 異 な る ﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ と に は 、 こ の 文 字 が な い 。﹃ 谷 崎 潤 一 郎 自 選 集 ﹄ は 、 谷 崎 が 自 選 集 刊 行 前 の 一 九 六 五 年 七 月 に 逝 去 し て 、 没 後 の 刊 行 に な っ た か ら 、 谷 崎 潤 一 郎 夫 人 サ イ ン ﹂ と 印 刷 し た 上 で

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子 夫 人 の 代 筆 で ﹁ 谷 崎 潤 一 郎 ﹂ と 署 名 、 雪 後 庵 ﹂ の 落 款 が 押 さ れ る 。 大 部 の 署 名 は 、 著 者 直 筆 サ イ ン ﹂ の 印 字 に 近 い あ た り 、 下 半 の や や 左 寄 り に 記 さ れ る こ と が 多 い が 、 三 島 由 紀 夫 の よ う に 紙 い っ ぱ い に 大 書 し て い る 例 も あ り 、 作 家 の 個 性 が 伺 わ れ て 面 白 い 。 石 坂 洋 次 郎 ﹂ 井 上 靖 ﹂ の 二 人 は ペ ン 書 き 、 そ れ 以 外 は 墨 書 で あ る 。 基 本 的 に フ ル ネ ー ム で あ る が ﹁ 直 哉 ﹂ 實 篤 ﹂ 有 三 ﹂ の 三 人 は 名 前 の み で あ る 。 ま た 舟 橋 聖 一 は フ ル ネ ー ム と ﹁ 聖 一 ﹂ と 名 前 だ け の 形 式 が 混 在 す る 。 猶 ﹃ 山 本 有 三 自 選 集 ﹄ の み は 、 署 名 入 本 ・ 無 署 名 本 の 両 方 が あ る 。 福 岡 女 子 大 学 所 蔵 四 二 三 番 本 は 無 署 名 本 で あ る 。 手 許 の 資 料 で は 、 一 三 五 番 本 は 署 名 が あ る が 、 二 二 〇 番 本 は 無 署 名 で あ る 。 無 署 名 本 は 薄 様 紙 も 差 し 替 え ら れ た ら し く ﹁ 著 者 直 筆 サ イ ン ﹂ の 文 字 が な い 。 署 名 が 終 わ ら な い う ち に 山 本 の 体 調 不 良 と い う こ と に な り 、 二 〇 〇 番 前 後 か ら 無 署 名 本 と な っ た の で あ ろ う 。 因 み に 、 二 二 〇 番 本 に は ﹁ 種 々 の 事 情 に よ り 、 発 行 の 期 日 に 遅 れ ま し た こ と を 、 ふ か く お 詫 び い た し ま す 。 文 学 自 選 集 編 集 部 ﹂ と い う 紙 片 が 挿 入 さ れ て お り 、 こ の 間 の 事 情 が 伺 わ れ る 。 最 後 に こ の シ リ ー ズ の 冊 数 に つ い て え て み た い 。﹃ 集 英 社 の 七 〇 年 ﹄ 第 二 部 年 表 の 三 二 二 ペ ー ジ 、 昭 和 三 九 年 ︵ 一 九 六 三 ︶ 三 月 一 〇 日 の 項 に は 、 革 装 の 著 者 サ イ ン 入 り 豪 華 限 定 本 ﹃ 石 坂 洋 次 郎 自 選 集 ﹄ 二 八 〇 〇 円 ︶ 刊 行 。 以 後 七 月 刊 の ﹃ 三 島 由 紀 夫 自 選 集 ﹄ か ら 四 〇 年 の 志 賀 直 哉 、 四 一 年 の 谷 崎 潤 一 郎 を へ て 、 五 三 年 一 一 月 刊 の ﹃ 井 伏 鱒 二 自 選 集 ﹄ ま で 文 壇 巨 匠 の 自 選 集 を 逐 次 企 画 、 一 五 巻 を 刊 行 す る ﹂ と 記 さ れ て い る 。 と こ ろ が 、 現 在 ま で に 確 認 で き た の は 、 一 覧 表 に 示 し た ご と く 一 四 人 の 作 家 の 自 選 集 で あ っ た 。 筆 者 の 調 査 漏 れ の 可 能 性 は あ ろ う が 、 こ の 一 四 人 以 外 の も の は 、 国 会 図 書 館 に も 、 主 要 大 学 に も 、 主 要 立 図 書 館 に も 一 冊 も 所 蔵 さ れ て い な い し 、 書 籍 目 録 の 類 に も ま っ た く 出 て こ な い 。 も う 一 人 の 作 家 の 自 選 集 が あ る 可 能 性 は 極 め て 低 か ろ う 。 一 五 巻 ﹂ と い う の は 、 一 五 人 ﹂ の 作 家 の 自 選 集 で は な く て 、 一 五 冊 ﹂ の 自 選 集 で は な い だ ろ う か 。 実 は 、 川 端 康 成 の み が 集 英 社 か ら 二 種 類 の 自 選 集 を 出 し て い る の で あ る 。 一 つ は 、 前 掲 の デ ー タ の 中 に 示 し た 、 六 六 年 四 月 一 〇 日 発 行 の 三 九 九 ペ ー ジ の も の で あ る 。 そ し て 、 全 く 同 一 書 名 の ﹃ 川 端 康 成 自 選 集 ﹄ が 同 じ 集 英 社 か ら 、 一 九 六 八 年 一 一 月 二 九 日 に 刊 行 さ れ て い る 。 こ ち ら は 四 一 二 ペ ー ジ で 、 装 丁 も 全 く 異 な る 。 こ れ は 、 川 端 の ノ ー ベ ル 文 学 賞 を 記 念 し て 作 ら れ た も の で 注 一 二 ︶ 、 の ち 市 販 さ れ た 。 六 六 年 の 限 定 版 の 自 選 集 に 、 ド ナ ル ド ・ キ ー ン の ﹁ 川 端 文 学 に み る 普 遍 性 と 日 本 的 特 徴 ﹂ と い う 解 説 ︵ 和 文 、 朝 日 新 聞 社 ﹃ 世 界 の 中 の 41

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日 本 文 学 ﹄ よ り 転 載 ︶ と 、 川 端 の 作 品 と 翻 訳 の 問 題 を 論 じ た サ イ デ ン ス テ ッ カ ー の 解 説 ︵ 英 文 ︶ 合 計 一 〇 ペ ー ジ を 末 尾 に 付 載 し た 。 装 丁 は 、 自 選 集 シ リ ー ズ と は 異 な る も の と し 、 装 丁 装 画 は 東 山 魁 夷 、 題 は 宮 田 遊 記 、 表 紙 は 人 間 国 宝 中 村 勇 二 郎 の の 伊 勢 型 小 紋 で あ っ た 。 函 に 用 さ れ た 東 山 魁 夷 の 竹 林 の 下 絵 は 殊 に 川 端 の 気 に 入 っ た も の で あ っ た 注 一 三 ︶ 。 猶 、 口 絵 の 写 真 も 、 元 版 は 六 五 年 の 伊 豆 の 踊 子 文 学 碑 除 幕 式 の も の で あ っ た が 、 ノ ー ベ ル 文 学 賞 発 表 の 日 深 夜 、 書 斎 で ﹂ ほ か 一 葉 ︵ 撮 影 米 津 孝 ︶ に 改 め ら れ て い る 。 市 販 の 定 価 は 、 シ リ ー ズ の も の と 同 じ く 二 八 〇 〇 円 で あ っ た が 、 た だ 部 数 の 限 定 は せ ず 、 著 者 の 署 名 も 付 け な か っ た 。 と こ ろ が 、 書 名 が ﹃ 川 端 康 成 自 選 集 ﹄ と 同 一 で あ り 、 発 行 時 期 も 近 か っ た た め に 、 社 作 成 の 際 に 混 同 し て し ま っ た の で は な い か 。 定 価 が 同 じ で あ っ た こ と も 混 乱 に 拍 車 を 掛 け た か も し れ な い 。 そ う い っ た 事 情 で あ る と す れ ば 、 六 八 年 の 川 端 康 成 自 選 集 は こ の シ リ ー ズ と は 別 物 で あ る か ら 、 自 選 集 シ リ ー ズ は ﹁ 一 四 巻 ﹂ と し た 方 が 、 誤 解 を 招 か ず に す む か も し れ な い 。 五 、 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 生 ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ や 豪 華 自 選 集 シ リ ー ズ な ど で 蓄 積 し た 編 集 ・ 営 業 の ノ ウ ハ ウ を も と に 、 文 芸 部 門 の 力 を 結 集 し て 、 合 的 な ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ を 集 英 社 が 世 に 送 っ た の は 、 一 九 六 六 年 の こ と で あ る 。 編 集 委 員 に 伊 藤 整 ・ 井 上 靖 ・ 中 野 好 夫 ・ 丹 羽 文 雄 ・ 平 野 謙 ら を ず ら り と そ ろ え 、 作 家 の 選 定 、 作 品 の 選 択 、 解 説 な ど 充 実 し た 極 め て オ ー ソ ド ッ ク ス な 全 集 で あ る 。 小 B 六 判 な が ら 全 八 八 冊 の 堂 々 た る 全 集 で あ っ た 。 冊 数 だ け で 言 え ば 、 五 〇 年 代 に 刊 行 を 始 め た 筑 摩 書 房 ﹃ 現 代 日 本 文 学 全 集 ﹄ や 講 談 社 ﹃ 日 本 現 代 文 学 全 集 ﹄ に 次 ぎ 、 先 行 す る 新 潮 社 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ や 中 央 論 社 ﹃ 日 本 の 文 学 ﹄、 雁 行 す る 文 藝 春 秋 ﹃ 現 代 日 本 文 学 館 ﹄、 最 も 競 合 し た と 思 わ れ る 河 出 書 房 の 各 種 日 本 文 学 全 集 を し の ぐ 、 規 模 の 大 き な 全 集 で あ っ た 。 ﹃ 集 英 社 の 七 〇 年 ﹄ の 記 述 す る と こ ろ に よ れ ば 、 文 学 全 集 の ブ ー ム は す で に 峠 を こ え て い た ﹂ と い う 認 識 に も 関 わ ら ず 、 従 前 の 全 集 の 購 買 層 よ り も 下 の ﹁ 高 生 に 目 標 を し ぼ り ﹂ 定 価 を 思 い 切 っ て 下 げ ﹂、 毎 月 二 冊 を 同 時 配 本 し て 採 算 を 計 る ﹁ ペ ア 配 本 の 奇 策 ﹂ で 、 こ の 野 に 参 入 、 大 成 功 を 収 め た の で あ る 注 一 四 ︶ 。 も う 一 つ こ の 全 集 で 忘 れ て な ら な い の は 、 第 一 巻 ﹃ 坪 内 逍 遥 ・ 二 葉 亭 四 迷 集 ﹄ 第 二 巻 ﹃ 尾 崎 紅 葉 ・ 泉 鏡 花 集 ﹄ に 始 ま り 、 八 六 ・ 八 七 ・ 八 八 巻 の ﹃ 名 作 集 ︵ 一 ︶ ∼ ︵ 三 ︶﹄ ま で 、 明 治 ・ 大 正 ・ 昭 和 三 代 の 日 本 文 学 を バ ラ ン ス よ く 収 載 し て い る こ と で あ る 注 一 五 ︶ 。 高 生 対 象 と い っ て も 、 決 し て 読 み や す

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い 、 口 当 た り の 良 い 作 品 ば か り で は な い 。﹃ 西 善 蔵 ・ 嘉 村 礒 多 集 ﹄﹃ 葉 山 嘉 樹 ・ 黒 島 伝 治 ・ 伊 藤 永 之 介 集 ﹄ な ど 地 味 だ が 近 代 文 学 を 語 る 上 で 欠 か せ な い 作 家 や 作 品 を き ち ん と 押 さ え て い る こ と 、 散 文 の み な ら ず 韻 文 に も 目 配 り が な さ れ て い る こ と な ど 、 実 に 行 き 届 い た 全 集 で あ る 。 集 英 社 が 立 案 実 行 し た ﹁ 高 生 の た め の 文 化 講 演 会 注 一 六 ︶ ﹂ が 、 こ の 全 集 の 売 れ 行 き を 支 え た こ と も ま た 間 違 い な い が 、 体 系 性 ・ 合 性 と い う 全 集 そ の も の 自 力 ・ 底 力 こ そ 、 第 一 に 指 を 屈 す べ き で あ ろ う 。 と も あ れ 、 文 化 講 演 会 と こ の 全 集 が 、 高 生 の 文 化 や 文 学 ・ 教 養 を 下 支 え し た 功 績 は 極 め て 大 き い と 思 わ れ る 。 配 本 に も 、 高 生 を 意 識 し た 選 定 が な さ れ た 。 第 一 回 配 本 は 二 三 巻 ﹃ 武 者 小 路 実 篤 集 ﹄ 五 八 巻 ﹃ 石 坂 洋 次 郎 集 ﹄ で あ っ た 。 言 う ま で も な く 武 者 小 路 は 当 時 の 高 生 に 最 も 良 く 読 ま れ た 作 家 の 一 人 で 、 代 表 作 ﹃ 友 情 ﹄ は 、 高 生 の 、 い わ ゆ る 洗 礼 本 の 、 第 一 位 と 見 做 す こ と も で き る 注 一 七 ︶ 。 当 時 の 武 者 小 路 が 中 高 生 に 集 中 す る 形 で 支 持 を 集 め て い た の に 対 し て 、 石 坂 洋 次 郎 の 方 は 、 そ れ ほ ど 強 固 な 信 者 は 少 な か っ た か も し れ な い が 、 そ の か わ り も う す こ し 幅 広 い 年 齢 層 の 若 者 に 読 ま れ て い た 。 ま た 石 坂 の 場 合 は 映 像 の 影 響 も 大 き か っ た 。 五 〇 年 代 か ら 六 〇 年 代 半 ば に 掛 け て は 映 画 の 最 盛 期 で あ る が 、 一 九 五 〇 年 か ら 六 九 年 ま で の 二 〇 年 間 、 石 坂 作 品 が 一 度 も 映 画 化 さ れ な か っ た 年 は な い の で あ る 。 特 に ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 刊 行 の 始 ま っ た 六 六 年 ま で の 四 年 間 に は 二 〇 本 近 く の 石 坂 作 品 が 映 画 化 さ れ て お り 一 つ の 頂 点 で あ っ た 。 五 八 巻 ﹃ 石 坂 洋 次 郎 集 ﹄ の 収 載 作 品 は 長 編 ﹃ 陽 の あ た る 坂 道 ﹄ と 中 編 ﹃ 若 い 川 の 流 れ ﹄ を 中 核 に 据 え て い る が 、 こ の 二 作 品 は 石 原 裕 次 郎 ・ 北 原 三 枝 ・ 芦 川 い ず み で 人 気 を 博 し た 、 当 時 の 日 活 を 代 表 す る 作 品 で も あ る こ と は 周 知 の 通 り で あ る 。﹃ 石 坂 洋 次 郎 集 ﹄ で は 、 ほ か に 二 〇 ペ ー ジ 前 後 の 小 品 四 作 品 が 取 ら れ て い る 。 中 で ﹃ 草 を 刈 る 娘 ﹄ は 、 前 節 で 述 べ た ﹃ 石 坂 洋 次 郎 自 選 集 ﹄ に も 収 載 さ れ 、 戦 後 の 純 粋 造 本 の 代 表 格 で あ る 細 川 叢 書 注 一 八 ︶ の 第 一 〇 冊 目 に 起 用 さ れ た 、 文 字 通 り 牧 歌 的 な 作 品 で あ る が 、 六 六 年 当 時 に は や や 古 め か し い 印 象 で は な か っ た か 。 こ の 作 品 を 収 載 し た の は 作 品 自 体 の 良 さ も 勿 論 あ る が 、 日 活 の も う 一 つ の 黄 金 の 組 み 合 わ せ で あ る 吉 永 小 百 合 ・ 浜 田 光 夫 で 映 画 化 さ れ て い た こ と も 関 わ っ て い る か も し れ な い 。 い さ さ か 長 く 映 像 と 文 学 の こ と に 拘 泥 し た の は 、 翌 月 六 六 年 七 月 の 第 二 回 配 本 に も そ れ が 現 れ て い る の で は な い か と 推 測 さ れ る か ら で あ る 。 第 二 回 配 本 は 第 四 八 巻 ﹃ 林 芙 美 子 集 ﹄ 第 八 三 巻 ﹃ 井 上 靖 集 ﹄ で あ る 。 こ の 全 集 の 編 集 委 員 の 一 人 で も あ り 、 第 二 節 で 述 べ た ﹃ 新 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 第 一 回 配 本 に も 起 用 さ れ た 井 上 靖 注 一 九 ︶ の 場 合 は 当 然 の 選 択 で も 43

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あ っ た だ ろ う が 、 鷗 外 ・ 漱 石 ・ 藤 村 ・ 芥 川 ・ 太 宰 ・ 谷 崎 ・ 川 端 ら を 抑 え て 林 芙 美 子 を 第 二 回 配 本 に 持 っ て き た の は 思 い 切 っ た 抜 で あ っ た 。 第 四 八 巻 ﹃ 林 芙 美 子 集 ﹄ は ﹃ 放 浪 記 ﹄ を 巻 頭 に 据 え ﹃ 風 琴 と 魚 の 町 ﹄﹃ 晩 菊 ﹄﹃ 浮 雲 ﹄ ら で 構 成 さ れ て い る 。 林 文 学 と 映 像 の 関 係 で す ぐ に 思 い 起 こ さ れ る の は 成 瀬 巳 喜 男 の 仕 事 で あ る 。 成 瀬 は 一 九 五 一 年 林 芙 美 子 の 没 後 ま も な く 、 絶 筆 と な っ た ﹃ め し ﹄ を 映 画 化 す る が 、 こ の 作 品 は ﹁ 戦 後 の 成 瀬 映 画 を 決 定 し た と い っ て よ い 注 二 〇 ︶ ﹂ 作 品 で 、 そ の 後 も 、 ﹃ 稲 妻 ﹄﹃ 晩 菊 ﹄﹃ 浮 雲 ﹄ と 五 〇 年 代 に 林 文 学 を 次 々 と ス ク リ ー ン に 甦 ら せ た 注 二 一 ︶ 。 六 二 年 に は ﹃ 放 浪 記 ﹄ も 映 画 化 し て い る 。 し か し 極 め て 陰 影 の 深 い 成 瀬 の 作 品 と 、 若 年 層 を 対 象 と し た 今 回 の 全 集 と の 関 係 性 を 問 う の は 難 し か ろ う 。 林 芙 美 子 を 第 二 回 配 本 に 持 っ て き た の は 映 画 で は な く 、 テ レ ビ 映 像 に よ る も の で あ っ た だ ろ う 。 N H K の 朝 の 連 続 テ レ ビ 小 説 ﹃ う ず 潮 ﹄ が そ れ で あ る 。 一 九 六 四 年 か ら 六 五 年 三 月 ま で 放 映 さ れ た こ の 番 組 は 、 多 く の 視 聴 者 の 支 持 を 得 て 、 翌 々 年 の ﹃ お は な は ん ﹄ と 並 ん で こ の シ リ ー ズ を 根 付 か せ た 功 績 の 大 き い も の で あ る 。 集 英 社 の ﹃ 林 芙 美 子 集 ﹄ が 刊 行 さ れ た 六 六 年 に 高 生 で あ っ た 世 代 は 、 連 続 テ レ ビ 小 説 ﹃ う ず 潮 ﹄ 放 映 時 に は 中 学 二 年 生 か ら 高 一 年 生 で あ り 、 夏 休 み な ど に は こ の ド ラ マ に 夢 中 に な っ て い た の で は な か ろ う か 。 そ の あ た り の 計 算 に 基 づ き 、 集 英 社 は ﹃ 林 芙 美 子 集 ﹄ を 第 二 回 配 本 に 抜 し た の で あ ろ う 。 な お 、 こ の 頃 は 大 当 た り し た 連 続 テ レ ビ 小 説 は す ぐ に 映 画 化 さ れ た 。﹃ う ず 潮 ﹄ は 齋 藤 武 市 監 督 、 主 演 は 吉 永 ・ 浜 田 の 黄 金 コ ン ビ で あ っ た が 、 テ レ ビ の 林 美 智 子 ・ 津 川 雅 彦 の 組 み 合 わ せ の 印 象 が 強 か っ た の で や や が 悪 か っ た か も し れ な い 。 上 述 し た ﹃ お は な は ん ﹄ も 、 今 日 で は 岩 下 志 麻 の 竹 映 画 よ り も 、 樫 山 文 枝 の テ レ ビ 版 の 記 憶 を 持 っ て い る 人 の 方 が 圧 倒 的 に 多 か ろ う 注 二 二 ︶ 。 そ れ は 、 映 画 か ら テ レ ビ へ の 代 期 と も 一 致 し て い る と 思 わ れ る 。 こ う し て 映 像 の 影 響 も 含 め 、 当 時 の 高 生 世 代 に 影 響 力 の 強 い 作 家 や 作 品 を 初 期 の 配 本 に 投 入 す る こ と に よ っ て 、 集 英 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ は 順 調 な 出 を し た 。 第 三 回 配 本 に は 川 端 ・ 谷 崎 と い う 文 豪 を 登 場 さ せ て 多 少 変 化 を 持 た せ 、 第 四 回 配 本 に は 女 子 学 生 に 人 気 の 堀 辰 雄 と 、 中 学 ・ 高 生 に 支 持 の 多 い 山 本 有 三 を 起 用 し た 。 文 学 全 集 の 定 番 と も 言 う べ き 芥 川 は 第 五 回 配 本 、 漱 石 を 第 六 回 配 本 と 、 本 格 的 な 全 集 を 指 向 す る 方 向 性 と 、 親 し み や す さ ・ 入 り や す さ を 希 求 す る 方 向 性 の 、 見 事 な 調 和 で あ っ た 。 第 一 回 配 本 の 武 者 小 路 実 篤 、 石 坂 洋 次 郎 の 二 冊 が ﹁ そ れ ぞ れ 四 〇 万 部 の 累 計 部 数 に 達 す る 注 二 三 ︶ ﹂ と い う 好 ス タ ー ト を 切 っ た こ の 全 集 は 、 そ の 後 も 順 調 に 配 本 を 重 ね 、 七 〇 年 四

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月 に 全 八 八 冊 の 刊 行 を 終 え る こ と と な る 。 六 、 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 影 響 と 改 変 集 英 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 発 刊 時 の 爆 発 的 な 売 れ 行 き は 、 同 様 の シ リ ー ズ を 刊 行 中 の 他 社 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。 六 六 年 六 月 頃 、 刊 行 中 の 日 本 文 学 の 全 集 は 、 筑 摩 書 房 ﹃ 現 代 文 学 大 系 ﹄、 中 央 論 社 ﹃ 日 本 の 文 学 ﹄、 文 藝 春 秋 ﹃ 現 代 日 本 文 学 館 ﹄ な ど が あ っ た が 、 比 較 的 読 者 年 齢 の 高 か っ た こ れ ら の 叢 書 に 比 べ て 、 年 齢 的 に 重 複 す る 部 が 大 き か っ た の は 豪 華 版 や カ ラ ー 版 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ を 刊 行 中 の 河 出 書 房 で あ っ た 。 河 出 書 房 は 六 六 年 中 に 完 結 し た ﹃ 現 代 の 文 学 ﹄ を は じ め 、 読 み や す さ と 、 面 白 さ の 追 求 に も 余 念 が な か っ た か ら 、 共 通 す る 部 が か な り 多 か っ た の で あ る 。 し か も 、 集 英 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 判 型 は 、 河 出 書 房 の ロ ン グ セ ラ ー で あ っ た グ リ ー ン 版 ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ と 同 じ で 、 グ リ ー ン 版 が 函 も 表 紙 も 印 象 的 な 緑 色 で 統 一 す る の に 対 し て 、 集 英 社 の 全 集 は 函 や 表 紙 に 鮮 や か な 赤 を 用 し て 、 叢 書 を 象 徴 す る シ ン ボ ル カ ラ ー を 設 定 す る と い う 点 で も 共 通 し た 。 さ ら に グ リ ー ン 版 は 本 冊 に 横 方 向 に 溝 の 走 る 独 特 の ビ ニ ー ル カ バ ー を 掛 け て 清 新 な 印 象 を 与 え た が 、 多 少 デ ザ イ ン こ そ 違 え 、 集 英 社 版 も 同 じ 横 縞 の ビ ニ ー ル カ バ ー を 用 い て い る の で あ る 注 二 四 ︶ 。 河 出 書 房 は 世 界 文 学 全 集 の 野 で 、 グ リ ー ン 版 、 カ レ ッ ジ 版 、 ポ ケ ッ ト 版 、 キ ャ ン パ ス 版 と 小 型 版 の 全 集 を 相 次 い で 刊 行 し て 若 年 層 の 開 拓 を 図 っ て い た か ら 注 二 五 ︶ 、 日 本 文 学 の 野 で も 集 英 社 に 席 巻 さ れ て ば か り は い な か っ た 。 集 英 社 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 発 刊 か ら 一 年 後 に 、 グ リ ー ン 版 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 刊 行 を 開 始 す る 。 こ の グ リ ー ン 版 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ は 、 集 英 社 版 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ と 内 容 的 に 通 底 す る 部 が あ り 、 集 英 社 版 を 研 究 し た の で は な い か と も 思 わ れ る 。 た と え ば 、 グ リ ー ン 版 は 全 五 二 冊 で あ る が 、 こ の う ち 一 人 の 作 家 で 二 冊 を 占 め て い る の は 、 漱 石 ・ 藤 村 ・ 谷 崎 ・ 武 者 小 路 ・ 石 坂 ・ 湖 人 ・ 有 三 で あ っ た 。 漱 石 以 下 の 三 人 は 、 こ の よ う な 企 画 で 複 数 冊 を 占 め る の が 定 番 と な っ て い る 大 文 豪 で あ る が 、 武 者 小 路 以 下 の 四 人 は や や 異 質 で あ る 。 こ の 四 人 は 高 生 あ た り に 人 気 の あ る 作 家 で あ っ た こ と が 最 大 の 理 由 で あ ろ う 。 さ ら に 武 者 小 路 実 篤 と 石 坂 洋 次 郎 の 二 人 は 、 四 〇 万 部 を 売 り 上 げ た 集 英 社 の 第 一 回 配 本 コ ン ビ で も あ っ た 。 な ら ば 河 出 と し て は 、 二 冊 に ふ く ら ま せ 集 英 社 版 で は 読 め な い 作 品 も と え た の で は な か っ た か 。 配 本 冊 数 も 集 英 社 版 と 同 じ く 二 冊 ず つ の 同 時 配 本 で ス タ ー ト し た 。 集 英 社 版 に は 収 載 さ れ な か っ た 下 村 湖 人 ﹃ 次 郎 物 語 ﹄ の 二 冊 を 第 一 回 ・ 第 二 回 に 配 本 し て 差 異 性 を 強 45

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調 す る と 共 に 、 第 一 回 で は ﹃ 坊 っ ち ゃ ん ﹄ の 漱 石 、 第 二 回 で は ﹃ 友 情 ﹄ の 武 者 小 路 と 、 手 堅 い 布 陣 で あ っ た 。﹃ 次 郎 物 語 ﹄ は 、 中 学 生 あ た り の 読 書 調 査 で は 毎 年 上 位 に 来 る も の の 、 高 生 に な る と や や 失 速 気 味 で あ る が 注 二 六 ︶ 、 恐 ら く こ の 調 査 で あ げ ら れ て い る ﹃ 次 郎 物 語 ﹄ と は 少 年 少 女 向 き に 第 一 部 ・ 第 二 部 あ た り で ま と め た も の と 思 わ れ る 。 河 出 書 房 と し て は 全 五 部 を 読 め る 形 に す る こ と で 、 学 年 が 上 の 読 者 を 掘 り 起 こ そ う と し た も の だ ろ う 。 集 英 社 ・ 河 出 書 房 競 い 合 う 形 で 、 若 年 層 向 け の 全 集 が 刊 行 さ れ 、 読 者 の 選 択 の 幅 は 広 が っ た が 、 六 八 年 の 河 出 書 房 の 倒 産 騒 動 で 、 二 つ の 全 集 が 雁 行 す る 形 は あ っ け な く 終 焉 を 迎 え る 。 そ れ で も 再 後 の 河 出 書 房 は グ リ ー ン 版 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ を 完 結 さ せ 、 学 年 別 雑 誌 を 刊 行 し て い る 学 習 研 究 社 と 旺 文 社 が ﹃ 現 代 日 本 の 文 学 ﹄﹃ 現 代 日 本 の 名 作 ﹄ を 刊 行 す る な ど 注 二 七 ︶ 、 高 生 あ た り を 中 心 読 者 と す る 企 画 が 後 続 す る こ と と な っ た 。 こ の よ う に 集 英 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 果 た し た 役 割 は 大 き か っ た が 、 も と も と 体 系 的 な 合 的 な 全 集 で あ っ た か ら 、 高 生 以 上 の 、 多 少 年 齢 が 高 い 読 者 層 の 大 き な 支 持 も 得 て い た 。 そ こ で 装 丁 を 改 め 、 判 型 を 大 き く し て 愛 蔵 す る に 足 り る 装 本 と し て 、 さ ら に 幅 広 い 年 齢 層 に 受 け 入 れ ら れ る こ と を ね ら っ て 、 改 装 版 を 刊 行 す る こ と と な っ た 。 元 版 の 完 結 の 翌 年 、 一 九 七 一 年 の こ と で あ る 。 元 版 は 小 B 六 判 、 手 軽 に 持 ち 運 べ る コ ン パ ク ト サ イ ズ で あ り 、 若 年 層 へ の 普 及 を え た た め に 、 定 価 も 抑 え て 一 冊 二 九 〇 円 で あ っ た 。 そ の た め 、 外 函 は や や 簡 易 な 紙 函 で あ り 、 長 く 愛 蔵 す る に 足 り る と い う 本 造 り で は な か っ た 。 今 回 は 判 型 を 四 六 版 に 改 め 、 外 函 も 堅 牢 な 貼 函 に し 、 表 紙 の ク ロ ス も よ り 上 質 な も の に 、 月 報 の ペ ー ジ も 倍 増 さ せ た 。 愛 蔵 版 ﹂ と い う 新 し い 名 称 に 相 応 し い も の で あ っ た 。 一 体 、 こ の よ う な 全 集 の 場 合 、 元 版 を 改 装 し た り 、 改 編 し た り し て 新 た な 版 を 作 る こ と は 珍 し い こ と で は な い 。 特 に 元 版 の 評 価 が 高 か っ た り 、 高 い 発 行 部 数 で あ っ た り し た 場 合 、 多 少 の モ デ ル チ ェ ン ジ で 新 し い 購 買 層 を 開 拓 し よ う と す る 試 み が な さ れ る こ と が 多 い 。 そ の 一 例 と し て 、 集 英 社 の こ の 全 集 を え て み た い 。 本 節 の 見 出 し で は ﹁ 改 変 ﹂ と い い 、 今 ﹁ 改 装 ﹂ 改 編 ﹂ の 語 を 用 し た が 、 論 述 の 正 確 を 期 す る た め に 、 こ れ ら の 言 葉 に つ い て 、 具 体 例 を 挙 げ な が ら 稿 者 な り の 定 義 を 与 え て お き た い 。 改 変 ﹂ の 例 は 世 界 文 学 の 全 集 の 方 が 豊 富 で あ る の で 、 そ れ ら を 主 に 用 す る 。 ① 改 装 ⋮ ⋮ 判 型 を 改 め ず に 、 装 丁 を 改 め る こ と 。 河 出 書 房 が 、﹃ 決 定 版 世 界 文 学 全 集 ﹄ 一 九 五 三 年 刊 行 開 始 、 紙 函 入 、 装 丁 恩 地 孝 四 郎 ︶ を 、﹃ 特 製 豪 華 版 世 界 文 学 全 集 ﹄︵ 一 九 六 一 年 、 貼 函 入 、 装 丁 原 弘 ︶ に 改 装 。 判 型 は

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菊 判 、 冊 数 は 八 〇 冊 共 に 変 化 が な い が 、 恩 地 孝 四 郎 の 明 る い 装 丁 か ら 、 黒 を 基 調 と し た 落 ち 着 い た も の に が ら り と 変 わ っ て い る 。 筑 摩 書 房 ﹃ 現 代 文 学 大 系 ﹄︵ 一 九 六 三 年 刊 行 開 始 、 装 丁 真 鍋 博 ︶ を 、﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄︵ 一 九 七 〇 年 ︶ と し た も の は 、 箱 や 表 紙 の デ ザ イ ン は 同 じ で 色 違 い で あ る だ け だ が 、 叢 書 名 が 異 な る の で 、 こ の 範 疇 に 含 め ら れ る 。 ② 改 判 ⋮ ⋮ 判 型 を 改 め る も の 。 通 常 装 丁 の 変 化 も 含 む 。 稿 者 の 造 語 で あ り 、 同 音 の ﹁ 改 版 ﹂ と 意 味 の 混 同 に 注 意 す る 必 要 が あ る 。 河 出 書 房 が 、 小 B 六 判 の グ リ ー ン 版 ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ 一 九 五 九 年 刊 行 開 始 、 装 丁 原 弘 ︶ を 、 四 六 判 の ﹃ 河 出 世 界 文 学 大 系 ﹄ 一 九 八 〇 年 、 装 丁 広 瀬 郁 ︶ に 改 判 。 判 型 が 大 き く な っ て 四 周 が ゆ っ た り と し て い る 。 こ の 場 合 は 装 丁 の 変 化 を 含 む の で 改 装 改 判 版 と 呼 ぶ 。 装 丁 の 変 化 を 含 ま な い 改 判 も な い わ け で は な い 。 文 学 全 集 の 例 で は な い が 中 央 論 社 が 、 A 五 判 の ﹃ 谷 崎 潤 一 郎 新 々 訳 源 氏 物 語 ﹄ 全 一 一 巻 、 一 九 六 三 年 刊 行 開 始 、 安 田 彦 装 丁 ︶ を 、 同 じ 材 質 同 じ デ ザ イ ン の 上 製 本 ・ 貼 函 入 で 、 判 型 だ け 小 型 に し た 新 書 版 ︵ 一 九 九 七 年 ︶ に 改 め た の も の な ど が そ れ で あ る 。 ③ 改 編 ⋮ ⋮ 全 集 骨 格 は 不 変 だ が 、 冊 数 や 一 部 内 容 の 変 化 を 伴 う も の 。 売 れ 行 き の 良 い 巻 に っ た り 、 時 に 追 補 の 巻 が あ る こ と が あ る 。 新 潮 社 が 、 小 B 六 判 の ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ 一 九 六 〇 年 刊 行 開 始 ︶ を 、 判 型 は そ の ま ま で 、 四 〇 冊 版 ︵ 一 九 六 九 年 ︶、 四 五 冊 版 ︵ 一 九 七 一 年 ︶ な ど に 改 め た 例 。 改 編 版 の 場 合 は 、 装 丁 や 判 型 の 変 化 を 伴 う か ら 、 改 装 改 編 版 ま た は 改 判 改 編 版 と 呼 ぶ こ と に す る 。 こ の 例 は 、 改 装 改 編 版 で あ る 。 同 じ 新 潮 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ は 七 二 冊 、 五 〇 冊 、 四 〇 冊 、 四 五 冊 と 、 さ ら に 改 編 の 幅 が 大 き い 。 ④ 改 変 ⋮ ⋮ 節 題 に 用 い た ﹁ 改 変 ﹂ と は 、 こ れ ら 、 改 装 ・ 改 判 ・ 改 編 の 称 で あ る 。 集 英 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ は 冊 数 の 変 化 を 伴 わ ず 、 装 丁 と 判 型 を 改 め た も の で あ る か ら 、 改 装 改 判 版 で あ る 。 こ の 全 集 の よ う な 冊 数 の 多 い 日 本 文 学 全 集 の 改 変 の 例 と し て は 、 す ぐ 間 近 に 、 先 行 す る 好 例 が あ っ た 。 講 談 社 の ﹃ 日 本 現 代 文 学 全 集 ﹄ で あ る 。 こ れ は 一 九 六 〇 年 か ら 約 一 〇 年 の 歳 月 を 掛 け て 完 成 さ せ た 一 〇 八 巻 の 元 版 を 、 一 九 六 九 年 に ﹃ 日 本 現 代 文 学 全 集 ﹄ 豪 華 版 と し て 再 構 成 し た の で あ る 。 判 型 は 元 版 と 同 じ A 五 判 で あ る が 、 装 丁 を が ら り と 変 え ﹁ 厚 表 紙 カ ー フ 張 り 四 色 箔 押 し ﹂ の 豪 華 な 装 丁 と し た 。 装 丁 以 上 の 大 き な 変 化 は 、 一 〇 八 冊 を 三 八 冊 に り 込 ん だ と い う こ と で あ る 。﹃ 日 本 現 代 文 学 全 集 ﹄ は 、 評 論 や 韻 文 に も 非 常 に 手 厚 い 布 陣 で 、 玄 人 受 け の す る 編 集 で あ っ た か ら 、 小 説 中 心 の 売 れ 筋 の 巻 に 思 い 切 っ て り 込 ん だ の 47

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で あ る 。 講 談 社 の 豪 華 版 の 刊 行 の 翌 年 、 一 九 七 〇 年 に 完 結 し た 集 英 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ は 、 体 系 だ っ た と い っ て も 、 一 方 で は 高 生 に も 親 し め る 部 を 希 求 し て い た か ら 、 講 談 社 の 全 集 の よ う に 冊 数 を り 込 む の は 得 策 で は な い 。 そ こ で 、 全 冊 を 改 装 す る こ と を え た の で は な い か 。 冊 数 に 違 い が な い 以 上 、 購 買 者 に 変 化 を 実 感 さ せ る た め に は 、 判 型 ・ 装 丁 の 思 い 切 っ た 改 変 が 必 要 で あ る 。 か く し て 、 改 装 ・ 改 判 版 の 計 画 が 日 程 に 上 る こ と に な る 。 元 版 と 冊 数 が 同 じ で あ る か ら 、 ど の 作 家 を 残 す か 頭 を 痛 め る 必 要 が な か っ た 、 細 部 に 到 る ま で 行 き 届 い た 、 改 変 作 業 が な さ れ た よ う で あ る 。 豪 華 版 の 第 一 回 配 本 で あ る ﹃ 川 端 康 成 集 ︵ 一 ︶﹄ 一 九 七 一 年 一 〇 月 、 四 四 四 ペ ー ジ 、 五 九 〇 円 ︶ で 、 先 に 完 結 し た 元 版 ︵ 小 型 版 ︶ と 比 べ て み よ う 。 猶 、 今 回 は ノ ー ベ ル 文 学 賞 受 賞 の 川 端 を 第 一 回 配 本 に 起 用 し て い る 。 集 英 社 の 二 つ の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ を 比 較 し て み る と 、 収 載 作 品 や そ の 配 列 が 完 全 に 一 致 す る の は も ち ろ ん で あ る が 、 本 文 部 の 組 版 も 前 回 の も の を ほ ぼ 踏 襲 し て い る よ う で あ る 。 ペ ー ジ も 本 文 部 は 完 全 に 一 致 す る 。 た だ し 、 完 全 な 版 面 利 用 で は な く 、 新 た に 版 組 し て い る の で 、 句 読 点 の 送 り な ど の 関 係 で 、 一 字 が 前 後 の 行 に 移 動 す る と こ ろ が 散 見 す る 。 作 品 の 末 尾 に 付 け ら れ て い た 初 出 年 次 は 削 除 さ れ て い る 。 挿 絵 も 同 じ も の を っ て い る が 、 数 ペ ー ジ 前 後 す る 場 合 が あ る 。 年 譜 と 、 小 田 切 秀 雄 作 成 の 注 解 は 、 小 型 版 で は 三 段 組 で あ っ た の が 、 二 段 組 に 改 め ら れ て 読 み や す く な っ て い る 。 も ち ろ ん 注 解 に は 手 が 入 れ ら れ て い る か ら 項 目 の 出 入 り が あ る し 、 同 じ 項 目 で も 書 き 改 め ら れ て い る 場 合 が あ る 。 注 解 は 三 ペ ー ジ 増 と な っ て い る 。 解 説 は 元 版 の も の を 利 用 す る が 、 注 解 の 増 ペ ー ジ に 伴 い 、 右 ペ ー ジ 起 こ し の 元 版 の 解 説 が 左 ペ ー ジ か ら と な る 。 た だ し 、 解 説 中 の 写 真 の 位 置 は 、 見 開 き に し た と き の バ ラ ン ス か ら か 、 元 の 位 置 に 留 め て い る 。 写 真 と い え ば 、 巻 頭 の 著 者 の 写 真 は 、 元 版 で は 刊 行 の 年 、 一 九 六 六 年 撮 影 の も の が わ れ て い た が 、 豪 華 版 で は 一 九 七 〇 年 の 近 影 に 改 め ら れ て い る 。 従 来 、 改 装 版 や 改 編 版 の 場 合 、 著 者 の 写 真 な ど は 元 版 の も の を う こ と が 多 く 、 そ の た め 現 役 の 作 家 の 場 合 や や 違 和 感 を 覚 え る の だ が 、 集 英 社 の 豪 華 版 で は 写 真 を 差 し 替 え る 繊 細 さ で あ る 。 川 端 康 成 は こ の 全 集 で は 二 冊 で あ っ た か ら 、 第 一 冊 の 年 譜 は も と も と 昭 和 一 九 年 ま で で あ っ た 。 第 二 冊 の 年 譜 は 、 元 版 で は 刊 行 時 の 一 九 六 六 年 ま で で あ っ た が 、 豪 華 版 の ﹃ 川 端 康 成 集 ︵ 二 ︶﹄ で は 七 二 年 六 月 の 発 行 で あ る か ら 、 同 年 四 月 の 川 端 の 死 ま で 年 譜 が 補 わ れ て い る 。 こ の よ う に 豪 華 版 は 、 注 解 ・ 写 真 ・ 年 譜 の よ う な 細

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か な と こ ろ に 配 慮 を し た 改 装 改 判 版 で あ っ た 。 最 後 に 豪 華 版 の 配 本 に つ い て 簡 単 に 触 れ て お け ば 、 第 一 回 配 本 は ﹃ 川 端 康 成 集 ︵ 一 ︶﹄ と ﹃ 石 坂 洋 次 郎 集 ﹄ で 、 第 二 回 配 本 は ﹃ 武 者 小 路 実 篤 集 ﹄ と ﹃ 三 島 由 紀 夫 集 ﹄ の 同 時 配 本 で あ っ た 。 石 坂 ・ 武 者 小 路 と い う 元 版 の コ ン ビ を 生 か し つ つ 、 川 端 ・ 三 島 と い う 没 後 も 人 気 の 高 い 作 家 を 組 み 合 わ せ た あ た り 、 絶 妙 の 判 断 で あ っ た と い え よ う か 。 七 、 お わ り に 最 初 に 述 べ た よ う に 、 集 英 社 は 世 界 文 学 の 全 集 の 野 で は 、 二 〇 世 紀 の 最 末 期 ま で 新 た な 企 画 を 出 し 続 け る が 、 日 本 文 学 の 全 集 の 野 と の 関 わ り は 短 く 、 七 一 年 か ら 七 五 年 に か け て の 豪 華 版 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ が 最 後 で あ っ た 。 現 代 と か 、 二 十 世 紀 と か 、 ラ テ ン ア メ リ カ と か 、 さ ま ざ ま な 切 り 口 が 可 能 で 、 新 味 を 追 求 す る 余 地 の あ っ た 世 界 文 学 の 全 集 の 野 に 比 べ 、 日 本 文 学 全 集 に は も は や そ の よ う な 工 夫 も 望 め な い と い う こ と で あ ろ う か 。 あ る い は 、 こ の 野 の 購 読 者 層 が 急 速 に 消 滅 し て い く こ と を 敏 感 に 察 知 し て い た の で あ ろ う か 。 最 後 に 、 集 英 社 文 庫 の 果 た し た 役 割 に つ い て 簡 単 に 触 れ て お く 。 一 九 七 七 年 に 川 端 ﹃ 伊 豆 の 踊 子 ﹄ 井 上 靖 ﹃ 白 い 牙 ﹄ な ど で 本 格 的 な ス タ ー ト を 切 っ た 集 英 社 文 庫 で あ る が 、 文 庫 供 給 過 剰 気 味 の 現 在 ま で 、 文 庫 戦 線 で 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。 特 に 恒 例 と な っ た 各 社 の 夏 の 文 庫 フ ェ ス テ ィ バ ル で は 、 老 舗 の 新 潮 文 庫 の 夏 の 百 冊 よ り 低 い 年 齢 層 に タ ー ゲ ッ ト を り 、 見 事 な 棲 み け を 果 た し て い る 。 ナ ツ イ チ と い う 独 特 の キ ャ ッ チ フ レ ー ズ も 、 第 二 節 で 見 た こ の 出 版 社 の コ ピ ー の す ば ら し さ と 通 じ て い る 。 日 本 文 学 の 名 作 が 、 若 者 か ら 次 第 に 遠 い 存 在 に な り つ つ あ っ た 一 九 九 〇 年 代 に は 、 島 崎 藤 村 の 作 品 を ﹃ 初 恋 ﹄ と い う 書 名 で 、 高 村 光 太 郎 の 作 品 を ﹃ レ モ ン 哀 歌 ﹄ と い う 書 名 で 文 庫 化 し て い る 注 二 九 ︶ 。 詩 集 の 中 の 一 編 を 書 名 に 用 い た の で あ る 。 島 崎 藤 村 詩 集 ﹂ 高 村 光 太 郎 詩 集 ﹂ と い う 旧 来 の 名 称 で は な く 、 こ の よ う な 書 名 を 採 用 す る 感 性 が 、 多 少 な り と も こ れ ら の 作 品 を 若 者 に 近 づ け た の で は な か っ た だ ろ う か 。 高 生 の た め の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ を 企 画 し た 集 英 社 の 伝 統 は 形 を 変 え て 生 き 続 け て い る の で あ る 。 注 ︵ 一 ︶ 集 英 社 の 二 〇 〇 六 年 五 月 末 の 決 算 で は 売 上 高 約 一 四 〇 〇 億 円 、 小 学 館 単 体 の 約 一 五 〇 〇 億 円 に 次 ぎ 、 額 四 〇 〇 〇 億 円 の 売 り 上 げ を 誇 る こ の グ ル ー プ の 屋 台 骨 を 支 え る 。 49

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︵ 二 ︶ 矢 崎 進 也 ﹃ 世 界 文 学 全 集 ﹄ ト パ ー ズ プ レ ス 、 一 九 九 七 年 刊 。 ︵ 三 ︶ ﹃ 集 英 社 七 〇 年 の 歴 ﹄ 一 九 九 七 年 八 月 刊 、 七 七 ペ ー ジ 。 ︵ 四 ︶ 第 三 巻 七 〇 ペ ー ジ ﹁ 藤 原 氏 の 一 族 ﹂ 一 六 七 ペ ー ジ ﹁ 道 長 を め ぐ る 人 々 ﹂ な ど 。 ︵ 五 ︶ 田 坂 ﹁ 角 川 書 店 ﹃ 昭 和 文 学 全 集 ﹄ の 変 化 ﹂﹃ 文 藝 と 思 想 ﹄ 六 九 号 、 二 〇 〇 五 年 三 月 、 参 照 。 紀 田 順 一 郎 ﹃ 内 容 見 本 に み る 出 版 昭 和 ﹄ は 、 本 の 雑 誌 社 、 一 九 九 二 年 刊 。 後 ﹃ 紀 田 順 一 郎 著 作 集 ﹄ 一 九 九 八 年 、 三 一 書 房 、 第 八 巻 に 収 載 、 若 干 の 補 注 が あ る 。 ︵ 六 ︶ 紀 田 注 ︵ 五 ︶ 書 。 ︵ 七 ︶ 刊 行 開 始 時 に 準 備 さ れ た 二 つ 折 り の 内 容 見 本 に よ る 。 紀 田 注 ︵ 五 ︶ 書 が 引 用 す る 、 大 部 の 内 容 見 本 と は 異 な る も の か ら 引 用 し た 。 ︵ 八 ︶ 挟 み 込 み チ ラ シ ﹁ 集 英 社 出 版 目 録 三 一 九 六 四 ﹂ に よ る 。 ︵ 九 ︶ 二 見 書 房 の ﹃ 自 選 作 品 ﹄ は 七 一 年 か ら 七 六 年 に か け て 刊 行 さ れ た 。﹃ 内 田 百 の 自 選 作 品 ﹄︵ 現 代 十 人 の 作 家 1 ︶ を 例 に 取 れ ば 、 一 九 七 二 年 刊 行 、 限 定 二 〇 〇 〇 部 、 こ の シ リ ー ズ に 収 載 さ れ た 作 家 は ほ か に 石 川 淳 、 井 上 靖 、 井 伏 鱒 二 、 吉 行 淳 之 介 ら が い る 。 地 味 な 装 丁 と 発 行 部 数 の 多 さ の た め か 、 古 書 市 場 で の 人 気 は 今 ひ と つ の よ う だ 。 現 代 の 女 流 作 家 シ リ ー ズ の ﹃ 平 林 た い 子 の 自 選 作 品 ﹄ は 、 作 者 の 逝 去 の た め 、 署 名 紙 の 残 さ れ た 四 五 一 部 に 限 っ て の 刊 行 と な っ た 。 同 書 に は 、 一 九 七 二 年 ﹁ 二 月 十 七 日 未 明 ﹂ の 平 林 の 逝 去 と 、 残 さ れ た 署 名 に つ い て 記 す 一 枚 刷 の ﹁ 謹 記 ﹂ ︵ 同 年 三 月 付 ︶ が 挿 入 さ れ て い る 。 集 英 社 版 ﹃ 山 本 有 三 自 選 集 ﹄ の 場 合 と 似 た よ う な 事 情 で あ る が 、 平 林 の 方 は 無 署 名 本 は 刊 行 さ れ な か っ た 。 ︵ 一 〇 ︶ 表 紙 は 一 三 冊 す べ て が 色 違 い で は な い 。 源 氏 鶏 太 ・ 川 端 康 成 ・ 舟 橋 聖 一 は 藍 色 、 志 賀 直 哉 ・ 谷 崎 潤 一 郎 は 緑 色 、 石 坂 洋 次 郎 が 赤 紫 色 で あ る が 、 薄 茶 色 ・ 栗 皮 色 な ど 茶 系 の も の が 多 い 。 見 返 し の 色 も 黒 ・ 薄 緑 色 ・ 緑 色 ・ 海 老 茶 色 な ど 様 々 で あ る 。 函 は 濃 淡 は あ る も の の 灰 色 地 が 多 い が 舟 橋 聖 一 の よ う に 薄 い 桃 色 の も の も あ る 。 ︵ 一 一 ︶ 第 二 回 配 本 の 源 氏 鶏 太 の よ う に ﹁ 撮 影 三 木 淳 ﹂ 一 九 六 四 年 四 月 東 京 駒 場 の 自 宅 に て ﹂ な ど と 、 撮 影 者 ・ 日 時 ・ 場 所 が 記 さ れ た も の が 基 本 型 で あ る が 、 撮 影 者 に つ い て は 志 賀 ・ 川 端 ・ 谷 崎 ・ 舟 橋 な ど 記 載 さ れ な い 場 合 も 多 い 。 撮 影 者 は 、 三 木 の ほ か 榊 原 和 夫 ︵ 武 者 小 路 実 篤 、 獅 子 文 六 ︶、 木 村 伊 兵 衛 ︵ 山 本 有 三 ︶ な ど で 錚 々 た る 顔 ぶ れ で 、 中 扉 の 裏 側 に 装 丁 者 の 伊 藤 憲 治 と 並 ん で 明 記 さ れ る が 、 丹 羽 文 雄 の よ う に 奥 付 に ﹁ 写 真 ・ 株 式 会 社 婦 人 画 報 社 ﹂ と 記 載 さ れ る 場 合 も あ る 。 ほ と ん ど が 自 邸 で の 写 真 で あ る が 、 三 島 由 紀 夫 ﹁ N T V ス タ ジ オ に て ﹂、 獅 子 文 六 ﹁ 日 生 劇 場 ﹂、 川 端 康 成 ﹁ 伊 豆 湯 ヶ 野 温 泉 ⋮ ⋮ 伊 豆 の 踊 子 文 学 碑 除 幕 式 ﹂ な ど も あ る 。 石 坂 洋 次 郎 の 写 真 だ け は 撮 影 者 ・ 日 時 ・ 場 所 な ど の 記 載 が 一 切 な い が 、 第 一 回 配 本 の た め 、 様 式 が 確 定 し て い な か っ た の で あ ろ う 。

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︵ 一 二 ︶ ﹁ ス ウ ェ ー デ ン で の 授 賞 式 に 持 参 す る 献 本 用 と し て 本 社 既 刊 の ﹃ 川 端 康 成 自 選 集 ﹄ が 選 ば れ 、 、 東 山 魁 夷 装 幀 の 特 装 版 を 制 作 す る ﹂ 注 ︵ 三 ︶ 書 三 三 三 ペ ー ジ 。 ﹃ 川 端 康 成 と 東 山 魁 夷 響 き あ う 美 の 世 界 ﹄ 求 龍 堂 、 二 〇 〇 六 年 九 月 刊 ︶ 八 九 ペ ー ジ に は 、 受 賞 記 念 と し て 作 ら れ た 今 回 の 自 選 集 に 添 え ら れ た 挨 拶 状 が 掲 載 さ れ て い る 。 ︵ 一 三 ︶ 川 端 は 六 八 年 一 一 月 一 〇 日 付 け の 東 山 宛 の 書 簡 で 、 竹 林 の 下 絵 を 無 心 し て い る 。 注 ︵ 一 二 ︶ 書 参 照 。 ︵ 一 四 ︶ 注 ︵ 三 ︶ 書 九 五 ペ ー ジ 。 ︵ 一 五 ︶ 判 型 ・ 冊 数 ・ 巻 序 を 合 的 に え れ ば 、 新 潮 社 ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ の 七 二 冊 版 が 最 も 近 い か も し れ な い 。 あ れ は 第 一 巻 ﹃ 二 葉 亭 四 迷 集 ﹄ 第 二 巻 ﹃ 尾 崎 紅 葉 ・ 幸 田 露 伴 集 ﹄、 末 尾 の 四 冊 が 名 作 集 で あ っ た 。 判 型 は 集 英 社 の こ の 全 集 と ほ ぼ 同 じ 大 き さ で 、 冊 数 も 近 い 。 ︵ 一 六 ︶ 注 ︵ 三 ︶ 書 九 六 ペ ー ジ 。 ︵ 一 七 ︶ 現 代 図 書 館 学 講 座 第 七 巻 ﹃ 青 少 年 の 読 書 と 資 料 ﹄ 東 京 書 籍 、 一 九 八 三 年 九 月 刊 ︶、 第 三 章 読 書 指 導 ﹂ の 付 表 一 三 、 一 四 に 、 一 九 六 三 年 か ら 七 九 年 ま で の 高 生 ﹁ 洗 礼 本 ﹂ の ベ ス ト 二 〇 入 選 回 数 を 毎 日 新 聞 社 が 集 計 し た デ ー タ が あ る 。 学 年 別 で は 、 一 、 二 年 生 で は 男 女 と も ﹃ 友 情 ﹄ が 第 一 位 、 三 年 生 で は 男 子 が ﹃ こ こ ろ ﹄ に 次 い で 第 二 位 、 女 子 で は ﹃ 女 の 一 生 ﹄︵ モ ー パ ッ サ ン ︶ に 次 い で 第 二 位 で あ る 。 全 学 年 を 集 計 す る と 、 男 子 で は ﹃ 友 情 ﹄ が 三 九 回 で 、 三 五 回 の ﹃ こ こ ろ ﹄ を 押 さ え て 第 一 位 、 女 子 で も 三 七 回 の ﹃ 女 の 一 生 ﹄ を 押 さ え て ﹃ 友 情 ﹄ が 四 一 回 で 第 一 位 で あ る 。 ︵ 一 八 ︶ 細 川 叢 書 や 細 川 書 店 本 に つ い て 愛 書 家 の 発 言 は 多 い が 、 書 誌 情 報 に す ぐ れ た も の と し て 、 曽 根 博 義 ﹃ 岡 本 芳 雄 ﹄ E D I 、 一 九 九 七 年 二 月 刊 、 川 元 榮 一 ﹃ 細 川 書 店 本 書 誌 ﹄ 胡 蝶 掌 本 二 〇 〇 六 年 一 〇 月 刊 、 な ど が あ る 。 ︵ 一 九 ︶ 井 上 靖 は 早 く 一 九 五 九 年 の 新 潮 社 の ﹃ 日 本 文 学 全 集 ﹄ で も 第 一 回 配 本 に 起 用 さ れ て い る 。 田 坂 ﹁ 新 潮 社 の 日 本 文 学 全 集 の 動 静 ﹂﹃ 香 椎 潟 ﹄ 四 九 号 、 二 〇 〇 三 年 六 月 。 ︵ 二 〇 ︶ 中 古 智 ・ 蓮 實 重 彦 ﹃ 成 瀬 巳 喜 男 の 設 計 ﹄ 筑 摩 書 房 、 リ ュ ミ エ ー ル 叢 書 七 、 一 九 九 〇 年 、 一 三 三 ペ ー ジ 。 ︵ 二 一 ︶ ﹁﹃ 山 の 音 ﹄ と ﹃ 晩 菊 ﹄ が 、 一 九 五 四 年 、 そ し て そ れ に 続 い て ﹃ 浮 雲 ﹄ が 翌 年 撮 ら れ る わ け で す が 、 こ の 時 期 は 戦 後 の 日 本 映 画 と し て も 、 成 瀬 巳 喜 男 監 督 と し て も 最 盛 期 と い っ て よ い ﹂ 注 ︵ 二 〇 ︶ 書 、 一 九 七 ペ ー ジ 。 ︵ 二 二 ︶ 視 聴 者 の 要 望 で N H K ア ー カ イ ブ ス 二 〇 〇 三 年 一 〇 月 五 日 で 取 り 上 げ ら れ た 。 ︵ 二 三 ︶ 注 ︵ 三 ︶ 書 三 二 八 ペ ー ジ 。 ︵ 二 四 ︶ グ リ ー ン 版 に つ い て は 、 河 出 書 房 グ リ ー ン 版 の 生 ﹂ ﹃ 文 藝 と 思 想 ﹄ 七 〇 号 、 二 〇 〇 六 年 二 月 、 な ど で 述 べ た 。 ︵ 二 五 ︶ こ れ ら の 全 集 に つ い て は 田 坂 ﹁ 文 学 全 集 か ら 見 た 河 出 事 件 の 背 景 ﹂﹃ 香 椎 潟 ﹄ 五 一 号 、 二 〇 〇 五 年 一 二 月 、 参 照 。 ︵ 二 六 ︶ 毎 日 新 聞 社 調 査 ﹁ 五 月 一 か 月 間 に 読 ん だ 本 ︵ 中 学 生 ・ 高 生 ︶﹂ に よ る と 、 六 六 、 六 七 年 で は 、 六 六 年 中 一 女 子 で 一 位 、 六 六 年 中 一 中 三 男 子 ・ 六 七 年 中 一 男 子 で 二 位 、 51

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