はじめに
今日、急激な社会構造の変化に伴い、家族 や世帯のありかたも大きく変化している。家 族類型別に世帯1)を見ると、親と子供、夫婦 のみで構成される核家族は58.4%と最も多く、
祖父母と同居する拡大家族世帯は13.6%と減 少し、一人暮らしの単独世帯は27.6%と増加 している。
また、食をとりまく環境の変化も大きく、
ファストフードやファミリーレストランなど の外食、お弁当や惣菜、レトルト食品などの 調理済み食品を購入し家庭で食べる中食な ど、食の外部化がすすみ、一人ひとり食べ物 が異なる個食が増えている。そして、一人で 食事をする孤食や、若年層の朝食の欠食率は 15〜19才で高くなり、20歳代女性で20.6%2)
の高い割合を示すなどの問題も見られる。
その一方で、自然派志向が高まり、手作り が見直され、スローフードが注目されるなど、
食生活に対する意識や価値観は多様化してい る。
このことから、一人暮らしや祖父母と同居 している拡大家族など、家族や世帯の構造に より、食生活に違いがあると思われる。本研 究では、欠食率の高い世代の女子学生の世帯 に着目し、今後の食教育の参考にすることを 目的に、食生活の実態・知識・理解について 調査した。
調査方法
1. 調査対象
本学、短期大学部健康栄養学科に在学する 学生142名とした。
2.調査時期
2003年9月に行った。
3.調査方法
(財)消費者教育支援センター発行「食生 活Q&A」3)、佐藤らが行った調査4)を参考に、
15項目からなる食生活アンケートと20項目の質 問からなる調査用紙を作成した(図1)。
食生活アンケートは年齢、出身地、高校の 専攻、家庭科(食生活)の履修状況、世帯
(一人暮らし、核家族または拡大家族)、欠食 状況、調理への参加、食事への関心や配慮、
食に関する情報源について訪ねた。
質問は四肢択一の正誤選択肢法とし、問題 グループは栄養・食品・調理からなる10問
(問題番号10〜19)と食環境(食品衛生・表 示・安全性・現状・文化・環境)からなる10 問(問題番号1〜9・20)とした。
4.分析方法
20項目の質問は、正答数を得点化し集計し、食 生活アンケートと合わせて比較検討した。統計 解析にはExcel2000およびExcel統計を使用した。
女子学生の世帯構成と食生活に関する理解について
佐 藤 さち子 五十嵐 美智恵
Female College Students’ Understanding in Dietary Life in Relation to Their Family Structure
Sachiko Sato Michie Igarashi
図1 調査用紙
結果
1.年齢分布
10代136名(95.8%)、20代3名(2.1%)、
30代1名(0.7%)、その他2名(1.4%)、合 計142名であつた。
2.得点の分布
最高点は17点、最低点は3点で、平均点は 10.3点であった(図2)。分布は正規分布を示 した。年齢による有意差はなかった。
3.問題別の回答率(図3)
平均正答率は51.6%であった。
最も正答率が高いのは、問20「箸を口の中 に入れてなめる無作法な箸使い」をたずねた 88.0%であった。次に正答率が高かったのは 問6「B S Eに感染した動物」83.1%、問9
「 マ ー ク を み て 特 定 保 健 用 食 品 を 答 え る 」 83.1%、問12「日本人の栄養摂取量で唯一不 足している栄養素」81.7%、問8「食物アレ ルギーの特定原材料にあてはまらない食品」
80.3%であった。
最も正答率が低いのは、問2「消費期限が 図2 得点の分布
図3 問題別回答率
ついている食品」18.3%、問1「消費期限の 日数」24.6%、問17「ビタミンAの吸収率が よいにんじんの調理法」28.2%、問19「塩分 濃度が最も高い調味料」30.3%、問16「1個 あたり、ビタミンCを多く含む食品」32.4%、
問5「傷のある手でおにぎりをにぎり発生す る食中毒の原因菌」33.1%であった。
問題グループ別の平均点は栄養・食品・調 理で4.8点、食環境で5.5点と食環境で高かった。
4.世帯別・祖父母との同居者数(表1)
一番多い世帯は核家族で94名(66.2%)で、
一人暮らしは22名(15.5%)、拡大家族は21名
(14.8%)で、その他が5名(3.5%)であった。
また、祖父母との同居を現在しているまたは 過去にしていた学生は54名(38%)で、した ことがない学生は88名(62%)であった。
世帯別に平均点をみると、一人暮らしの学
生は11.3点で核家族の10.1点(P<0.05)、拡大 家族の9.9点より有意に高かった(P<0.01)。
祖父母との同居を現在している、または過 去にしていた学生の平均点は10.2点で、した ことがない学生10.4点よりやや低い傾向を示 した。
5.欠食について(図4)
1日の食事回数は、3回が119名(83.8%)、 2回が13名(9.2%)、1回が4名(2.8%)で、
その他が6名(4.2%)であった。
また、朝食を毎日食べるが100名(70.4%)、 週に1〜2回食べないは29名(20.4%)、週に 3〜4回食べないは11名(7.7%)、毎日食べ ないは2名(1.4%)であった。
このことから、必ず1日3回食事をとる者 は91名(64.1%)であった。
食事回数別平均点は、3回が10.3点、2回
現在の世帯 人数 祖父母との同居
人 % している・過去にしていた % したことがない %
一人暮らし 22(11.3) 15.5 14 9.9 8 5.6
核家族 94(10.1) 66.2 20 14.1 74 52.1
拡大家族 21 (9.9) 14.8 18 12.7 3 2.1
その他 5 3.5 2 1.4 3 2.1
合 計 142 100.0 54 (10.2) 38.0 88(10.4) 62.0 表1.祖父母との同居からみた世帯別人数と平均点
図4 1日の食事回数と朝食の摂取
(平均点)
**
*
が10.1点、1回が9.8点、その他が10.8点であ った。食事回数が3回の者は1回の者より有 意に高い値を示した(P<0.05)。
6.夕食の用意と調理について(表2・図5)
夕食の用意で最も多く利用する方法として 手作りをあげた者は130名(91.5%)、おかず のみ購入3名(2.1%)、パン・お弁当類を購 入4名(2.8%)、外食は5名(3.5%)であっ た。平均点は手作りの者が10.2点と、おかず、
パンやお弁当類を購入する、外食をする者の 12.1点に比べ有意に低かった(P<0.01)。
手作りで用意すると答えた130名のうち、
自分で調理している者は21名で平均点10.8点 と、親や祖父母などが調理している109名の 平均得点10.1点に比べ有意に高かった(親
P<0.01、祖父母P<0.05)。また、自分で調理す
る者の74.2%が食べ物に興味があると答え、
他者が調理をしている者の61.3%より高い値 を示した。
夕食を自分で調理していると答えた者は30 名で、一人暮らしが22名、核家族が4名、拡 大家族が1名、その他が3名であった。平均 得点は一人暮らしが11.3点、その他が11.4点 と世帯構造による有意差は見られなかった。
また、一人暮らしで、夕食をおかず、パン やお弁当類を購入する、外食をする者の平均 得点は13.0点と、手作りの10.4点に比べ有意 に高かった(P<0.01)。
7.孤食について(表3)
夕食を一人で食べる孤食と答えた者は38名
世帯 一人暮らし 核家族 拡大家族 その他
調理者 本人 他者 本人 他者 本人 他者 本人 他者
全体平均点 10.3 11.3 12.0 11.8 10.1 8.0 10.0 12.0 10.0
人数 130 14 0 4 88 0 20 3 1
手作り % 91.5 9.9 0.0 2.8 62.0 0.0 14.1 2.1 0.7 平均点 10.2 10.4 ── 11.8 10.0 ── 10.0 12.0 11.0
人数 12 8 1 0 1 1 0 0 1
手作り以外 % 8.5 5.6 0.7 0.0 0.7 0.7 0.0 0.0 0.7 平均点 12.1 13.0** 12.0 ── 12.0 8.0 ── ── 9.0
表2.世帯と調理者から見た夕食の用意
図5 夕食を手作りで用意すると回答した調理者別にみた平均点
(26.8%)であった。孤食と答えた者の世帯構 成は一人暮らしが17名(44.7%)と一番多く、
次いで核家族が16名(42.1%)であった。
会食をする者は104名(73.2%)で、内訳は家 族 全 員 4 5 名 ( 3 1.7 % )、 き ょ う だ い 7 名
(4.9%)、親36名(25.4%)、友達8名(5.6%)、 その他8名(5.6%)であった。一人暮らしで ない者は家族との会食が最も多く、核家族で は75.5%の71名、拡大家族では71.4%の15名 であった。
平均点は友達と食べる者は11.3点と、その他
の平均得点10.3点に比べ有意に高く(P<0.01)、 孤食の10.8点より高い傾向を示した。
一人暮らしの者で、夕食を友達と食べると 回答した者の平均得点は11.8点で、かつ外食 で会食する者の平均得点は12.0点であった。
孤食と回答した者の11.2点、かつ手作りやお かず、パンやお弁当類を購入する者の11.1点 より高い傾向が示された。
8.料理の指導者と情報源
料 理 を 親 か ら 教 え て も ら う 者 が 9 5 名
孤食 会食
人数 ──── 家族 友だち その他
人数 % 平均得点 人数 % 平均得点 人数 % 平均得点 人数 % 平均得点 一人暮らし 22 17 12.0
11.2 0 0.0
─ 4 2.8
11.8 1 0.7 11.0
44.7 ─ 3.8 1.0
核家族 94 16 11.3
10.6 71 50.0
10.0 3 2.1
11.3 4 2.8 9.8
42.1 68.3 2.9 3.8
拡大家族 21 3 2.1
10.0 15 10.6
10.1 1 0.7
9.0 2 1.4 8.5
7.9 14.4 1.0 1.9
その他 5 2 1.4
11.0 2 1.4
12.5 0 0.0
─ 1 0.7 9.0
5.3 1.9 ─ 1.0
合計 142 38 26.8
10.8 88 62.0
10.1 8 5.6
11.3** 8 5.6 9.5
100.0 84.6 7.7 7.7
平均得点 10.3
表3.世帯別にみた孤食と会食
※斜体は孤食の中に占める割合 ※斜体は会食の中に占める割合
図6 料理の指導者と調理する人からみた平均点
(66.9%)と最も多く、教員が31名(21.8%)、
その他が12名(8.5%)、祖父母が4名(2.8%)
で、友だちやアルバイト先から教えてもらう 者はいなかった。
指導者別に見ると祖父母が11.7点と高い傾 向にあり、教員は9.9点と低い傾向にあった。本 人が調理している者に限定すると、教員では 11.7点で9.9点に比べて有意に高い値を示した
(P<0.01)。
料理の情報源はテレビ73名(51.4%)、授業 31名(21.8%)、新聞雑誌22名(15.5%)、親 10名(7.0%)、インターネット3名(2.1%)、
祖父母1名(0.7%)、その他2名(1.4%)で あった。調理者を本人に限定すると、新聞雑 誌では11.7点で10.4点に比べて有意に高い値 を示した(P<0.05)。
考察
今日、ファストフードやファミリーレスト ランなどにみられる外食、お弁当や惣菜、レ トルト食品などの調理済み食品を購入し家庭 で食べる中食など、食の外部化が進んでいる が、今回の調査では夕食を手作りで用意する 者が91.5%と多かった。おかずのみ購入は 2.1%、パン・お弁当類の購入は2.8%、外食 は3.5%と低かった。しかし、実際に自分で調 理している者は30名(21.1%)で、一人暮ら
しでは22名全員であるが、核家族が5名、拡 大家族が1名、その他で3名にすぎず、112 名(78.9%)は夕食の調理は同居の家族が行 っていた。このことから、一人暮らしでない 者で調理を行っているものはわずかである。
今回の調査では核家族が66.2%、一人暮ら し が 1 5.5 % 、 拡 大 家 族 が 1 4.8 % で あ っ た 。 2000年の国勢調査2)によると核家族世帯は 58.4%、その他の親族世帯は13.6%、単独世 帯は27.6%であることから、核家族世帯で生 活する学生が多いといえる。また、祖父母と の同居を現在しているまたは過去にしていた 学生は38%、したことがない学生は62%と、
佐藤ら4)の報告とほほ同じ値を示したことか ら比較的多いと考えられる。
世帯別に平均点をみると、一人暮らしの学 生は11.3点で、核家族の10.1点や拡大家族の 9.9点より有意に高かった。また、祖父母との 同居をしたことがない学生は10.4点と、現在 しているまたは過去にしていた学生の平均点 10.2点よりやや高い傾向を示した。
手作りの夕食を用意すると答えた130名の うち、自分で調理している者の平均得点は 10.8点と、親や祖父母などが調理している者 の平均得点10.1点に比べ有意に高かった(親
P<0.01、祖父母P<0.05)。また、本人が調理を
している場合、一人暮らしで平均点は11.3点、
図7 料理の情報源と調理する人からみた平均点
その他が11.4点であった。
このことから世帯形態による食理解に差は 見られず、核家族や拡大家族などの世帯形態 が食理解向上に関与しているとはいえない。
食理解は、本人が調理することと大きく結び ついていることが示された。
夕 食 を 一 人 で 食 べ る 孤 食 と 答 え た 者 は
26.8%で、会食をする者は73.2%であった。
孤食と答えた者の世帯構成は一人暮らしが 44.7%と一番多く、次いで核家族が42.1%で あった。女子学生の孤食の割合は朝食で半数 以上、夕食では1割との報告5)があるが、夕 食では明らかに上回っており孤食の学生が増 加していると考えられる。
一人暮らしでない者は家族との会食が最も 多く、核家族では75.5%、拡大家族では71.4%
であった。世帯形態に関わらず友達と会食す る者の平均点は11.3点と、平均点10.3点に比べ 有意に高く(P<0.01)、孤食の10.8点より高い 傾向を示した。特に、一人暮らしで、夕食を 友達と食べると回答した者の平均点は11.8点 で、かつ外食で会食する者の平均点は12.0点 であった。このことから、一人暮らしでは友 達との会食により食への興味や関心がわき、
食の理解もすすむと思われる。
また、一人暮らしで、夕食を自分で手作り する者の平均得点は10.4点だが、おかず、パ ンやお弁当類を購入する、外食をする者の平 均得点は13.0点であることから、中食や外食 を利用することは簡便さだけではなく、食事 をないがしろにしない食への興味や関心から の行動と考えられる。
1日の食事回数は、女性では15〜19才の 81.7%、20〜29才の71.5%が1日3食とってい る2)。今回の調査では3回が83.8%、2回が 9.2%、1回が2.8%で、その他が4.2%であっ た。朝食を毎日食べるが70.4%、週に1〜2 回食べないは20.4%、週に3〜4回食べない は7.7%、毎日食べないは1.4%であった。き ちんと1日3回食事をとる者は64.1%であっ た。佐藤ら4)の報告にくらべ、朝食を毎日食
べるものが減少し、欠食している者が増加し ていることがわかる。一日3食とっている者 はおよそ三人に二人で、週のうちで朝食や昼 食、又は夕食を1食程度摂取しないものがお よそ三人に一人程度いると考えられる。今回 の調査対象者は健康栄養学科であることか ら、欠食率はやや低い傾向7)だが、欠食率は 2000年以降増加していること2)や、朝食で 50%を超え、昼食で26%、夕食で33%との報 告5)があることから、さらに増加すると考え られる。食事回数別平均点でみると、食事回 数が3回の者は1回の者より有意に高い値を 示したことから、食事の摂食行動と食理解は 大きく関係している。1日1食、朝食のみの 者が4名いるが、欠食はエネルギー、カルシ ウム、鉄などの栄養摂取量が不足する6)こと から、るいそう、骨粗鬆症、貧血等の健康上 の問題が懸念される。
料理を教えてもらうのは親と回答した者が 6 6.9 % と 最 も 多 か っ た 。 つ い で 、 教 員 が 21.8%、その他が12名8.5%、祖父母が4名 2.8%で、友だちやアルバイト先から学ぶ者は いなかった。また、料理の情報源はテレビ 51.4%、授業21.8%、新聞雑誌15.5%、親 7.0%、インターネット2.1%、祖父母1名 0.7%、その他2名1.4%であった。佐藤ら4)
の報告に比べ、親から教えてもらう者が減り、
教員からが増加している。また、情報源とし て授業をあげた者が増加していることから、
親から子へ食に関する教育や文化の継承は困 難になっていると考えられる。そのため、学 校への期待が大きくなっていると考える。
指導者別に見ると、教員から学ぶ者は9.9点 と低い傾向にあったが、本人が調理を行う者 では料理に関する興味も高く、平均点も11.7 点という有為に高い値を示した。このことか ら、受身で授業を聞き、机上のみで終えるだ けでは食理解は進まず、学習したこと生かし ながら自発的に調理を実践することにより、
正しい知識と理解が見につくことが示唆され た。食教育に携わる者として、学生のやる気
を喚起させ、興味がもてる、わかりやすい授 業を心がけ、自ずから調理を行うように導い ていく必要がある。
また、家族と生活する者に比べ、一人暮ら しの学生の食事は洋風嗜好で、PFCバランス が崩れ、鉄やカルシウムが不足すると言われ ている9)ことから、正しい知識と理解を調理 に生かしていくことが課題である。そして、
母親からの料理の習得は充実感を強く感じる こと8)や、今回の調査でも祖父母が指導者の 場合平均点が11.7点と高い傾向を示すことな どから、学校での教育と家族とのコミュニケ ーションの中で家族の豊富な知識と技術を生 かして食理解がすすむよう指導していきたい。
謝 辞
本研究をすすめるにあたり、調査にご協力 いただいた調理学研究室のみなさまに厚く御 礼申し上げます。
参考文献
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