競争時代の介護サービス論 第10回 組織の見直し (1)
著者 岡田 耕一郎, 岡田 浩子
雑誌名 ふれあいケア
巻 5
号 2
ページ 78‑81
発行年 1999‑02‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1204/00000168/
競争時代の介護サー ビス論
第 叩 回
E E ある企業の組織図 (概略)
社 長
E B インフォーマル・グループ
Z﹂
力ワ
ワーカ‑G
E・
カ
ワ
μN
力ワ
主任
ワー力一A
ワー力一B
ワー力一C
ワー力一D
岡 田 耕
一郎(語学院大学経済学部助教授) 岡 田 浩 子
(社
会福
祉士
介護
福祉
士)
‑ は
じ め に
前固までは︑競争時代に求められるスタッフの資質
の一つとして︑戦略的発想を取り上げて簡潔に説明
しました︒今回は戦略から組織に目を移して︑介護
サー
ビス
論を展 開します︒
介護サービス提供機関には︑特別養護老人ホーム︑
デイ
サ
ービ
スセ
ンタ
ー︑
ホー
ムヘ
ルパ
ース
テー
ショ
ンな
どが
あります︒これらの機関は︑それぞれに独自の特徴を
持ち︑異なる環境の中で活動していますが︑いずれも
することができません︒そもそも個々の事業の現状を
熟知しているのは︑社長ではなく現場に近い事業部の
管理責任者です
︒し たがって︑彼らにはかなりの自由
裁量が認められ︑事業部自体も独立採算志向で経営
され
てい
ます
︒
その企業では︑事業部問で競争し︑個々の事業部
が努力することで︑企業全体が発展してきました︒
その結果として︑現在の繁栄があるの
です
︒
とこ
ろが
︑ 次第に﹁他の事業部のことはどうでもいいし︑この会社
もどうなってもかまわない︒うちの事業部が儲
かる
の であれば﹂という極端な発言が聞かれるようになりま
した︒他の事業部のことを顧みず︑会社のことも願み
ず︑ひたすら自分のことだけしか考えな
い利
己
的な行
動は︑悲しい企業社会の笑い話です︒会社がつぶれて
しまったら︑その事業部も存在できるはずはないので
すから︒
※ インフ才一マル・グループ
この事例の企業も︑最初は︑従業
員全員
が︑
お
客株
に喜ばれるような製品を作ろうと願い︑皆が力を合
わせてその製品を世に送り出す︑﹂とで徐々に
発展し
ていったはずです︒それにもかかわらず︑気がつけば︑
いつしか仲間同士で足を引っ張り合
って
いま
す ︒
この
よ
うにわれわれの夢を実現してくれるのも組織であり︑
信じられないような
問題を
起︑﹂すのも組織なのです︒
‑サービス提供機関も組織の一つ
他方︑サービス提供機関は︑企業とは異なるので︑
78
組織である点で共通しています︒
そし て
︑組織である
ために︑
さまざまな組織的問題を抱えながら
︑競
争 時代をどう乗り
切ればよいのか模索していますvそこ
で今回は
︑介
護サービス提供機関という﹁
組 織
﹂に注
目して︑スタッフと組織との関わりゃ﹄考えてみること
にしましょう︒
‑組織 の 難 し さ
﹁組織は難しい
﹂と
言わ
れることがあります︒まさ
しく
︑こ
の 言 葉
が端的に表現しているように︑↑つ
の組織をまとめあげるのは花大低の‑﹂とではありま
せん︒ここでは︑まず現代の組織を代表するものの
一つとして企業を取
りヒげ
︑そこに見られる﹁組織の
雌しさ﹂をみることにします︒
企業の中の利己的な部門が事例
1
引き起こす問題 多くの事業を展開
して
いる企業がありました︒そ
れぞれの事業
は︑
事 業部と
呼ばれる独
立採算性の高
い部門において行われていました︒図ー
を参
照すると︑
組織の上層には社長がおり︑事
業部はその
卜に置か
れ
てい るこ と
が分かります︒組織図の上ド関係から︑
社長が全ての事業の
制部 にま で
関与して命令してい
るように思いがちです
が︑
必
ずしもそうではありま
せん
︒なぜなら︑あらゆる事に関して︑卒業を打︑っ現
場がいちいち社長にお伺いを立てていては迅速に行動
前述のようなトラブルは起こらないと思われるかもし
れません︒しかし︑企業もサービス提供
機 関 も組
織
である以上︑どちらも組織に特有の問題を抱えてい
ます
︒そ
の
一つ
に
︑イ
ンフ
ォーマ
ル ・
グ
ルー
プ(非公式集
団)がもたらすトラブルがあります︒
どの
サー
ビ ス提
供機関
にも 共通す
ることですが︑ス
タッフは日常の仕事を通じて︑職場で人間関係を作
るとともに︑仕事の関係とは別の人間関係も山口然に 作りあげます
︒たとえば︑職場の中に円分と同じ極 味を持
った
人がいた場合︑仕事の凶係とは離れて遊び 仲間が
できた
り︑
あ
る
いは
単に気の合う人たちが集
まるだけでも自然とそのような仲間がで
きます
︒
これ
が
イン
フ ォ
ーマ
ル
・グ
ル ープと呼ばれる
集 団 であ り︑ どの
サービス提供機関でも見られるものです︒
リーダーが代わったことにより事例
2
変容したインフォ
ーマ
ル・
グループ
ベテランの主任
を中
心に
︑ 数名 のス タッ フを メン バー
とするイ
ンフ
ォー
マル
・グ
ル ープがありました(図
2
を参照
) ︒
その グル
ープには
︑メ
ン
バーが従うべき集団
のル
ー
ルがあり︑
それ がメ ンバ
ーの実際の行動をコントロ
ール
し
ていました︒たとえば︑自分だけがひどく怠けると︑
先輩スタッフがその機関の管理者に怒られるので怠け
すぎないこと︑逆に自分だけが一
生懸命に
働
き過ぎ ると
他のスタッフから良く思われないので︑少し手を抜
くこ と︑ など の暗 黙の ルー ルで
す匂
79
鏡争時代の介護サ ー ビス論
E 圃 組織を成り立たせている 3 要素
①コミュニケーション +一一一一 相互に意思を伝達できる人々がいる。
.おかだ こういちろう
1958年兵庫県生まれ。神 戸 商 科 大 学 大 学 院 修 了。
東北学院大学において経営組織論を担当している。
路設経営に関する執筆に、「サービス好価基準の単走路 的活用J(本誌・97年4月号)、「福祉築界に湾入される
後争原理か'めざすものJ(本詫・98年2月号)がある。 それらの人々が組織に貢献しようと
する意欲を持っている。
. お か だ ひ ろ こ
1962年兵庫県生まれ。介護福祉士。社会福祉士。
共通の目的の達成を目指している。
PROFILE
②貢献意欲(協働意志)←一一一
③ 共 通目的
干980‑8511 宮械県仙台市脅葉区土樋1・3‑1 東北学院大学経済学 部 商 学科 岡 図 研 究室 電子メール:okada@tscc̲tohoku‑gakuin.ac.jp
とこ
ろが
︑そ
の 主任が退職した後︑
グル
ープをまと
める役が代わりました︒すると︑同じグループであり
ながら︑雰囲気は一変しました︒
メン
バ
ー全
員に仕事
に対する積極的な姿勢が求められるようにな
った
の
です
︒新しいリーダーは︑これからの競争時代には ︑効
率よくケアサービスを提供できるようにならないと機
関の存続があぶないことを強く自覚していました︒介
護保険を目前にして︑管理者を敵対視し︑組織の口止
を引
っ張 る ことの無意味さに気づいたのかもしれませ
さて︑前述の集団のルlルが組織の目際と整合して ん ︒
いるならば︑組織の生産性は高まることになり
︑逆
に
整合性がなければ︑その組織は
うまく
機能しないこ
とは明らかです
集団のル│ルの内容には管理者のo p ︑
管理行動が大きな影響を及ぼしていますが︑管理者
と現場をつなぐ︑ベテランのスタッフの行動も重要な影
響要
因に
なっ
てい
るよ
︑つ
です
︒
‑ 組 織 と は
引私
たち
は︑
この
よう
な
﹁雌
しい
﹂組織に
M
して︑日
々
の介設を実践しています︒
した
がっ
て
︑介
泌
をより適
切に実践するためには︑その組織をうまく動かすこ
とが必要であり︑まず組織
臼 体
をしっ
かり
と印
刷附
し
なければなりません︒組織の本一位に注立を払
うべ き
なのです︒
ました︒
惑い
︑このような緊急の下
憎い
にも
迎切
に刈
応
してもらえるとのことで︑ホ
ーム
ヘル
パー
さん の 派泣が
受けられることになりました︒その後︑さらにポラン
‑写
ア活
動に関心があった
C
さんが加わり
︑
Aさ
ん
︑B
さん
︑ホ
lムへルパーさんの仕事を調幣しながら︑お年
寄りを介護支援するチlムは動き山しました︒
この事例の中で︑お年寄りをサポートするために
人 々 が 協 力 し 合 って働いている安が
﹁協
的 体 系
( n
苦
g
言
三︿
口間 三
g d
﹂)
と呼ばれるものです
︒組織の本
質を捉えた一つの有力な見方です︑
‑ 組 織 を 成 り 立 た せ て い る
3 要素
先ほどの事例をもう一度見てみましょう︒
そうす ることで︑協働体系である組織を成り立たせている
いくつかの条件が見︑えてきます︒
まず︑この事例に何人かの人が登場し︑彼らが
互い
に話し合いをしていること︑そして彼らがこの作業に
参加しようという意欲を持ち︑
実 際 にお年寄りを助 けるという目的を遂行していることに注目してくださ
︑ ︒
‑Vつま
り︑
組織
は︑
①
相互に意思を伝達
できる人々が
いて
︑
②それらの人々が組織に貢献しようとする立
欲を持ち︑③共通の目的の達成を目指す︑ときに成
立するのです(図
3
を参照
)︒
した
がっ
て
︑組織を成り
立
たせ
てい
る要
素
は︑
コミ
ュニ
ケ
ーシ
貢献立欲(協ョ ン ︑
とこ ろが
︑身近なものであるはずの組織について︑あ
らたまって﹁組織とは何か
﹂ と
問われると︑答えに附っ
てしまいます︒
ここ
で
︑組
織とは何なのか︑
今 . 度 維
認しておくことにしま
しょ う
︒
一人
特らしのお年寄り
を助けようとする近所の人々の事例をもとに説明し
ます勺
11 l
お年寄りを支援するグループにみる
2 4
:
組織の本
質
Aさんの近所に︑.人作らしのお年計りがいました
以前は
一人で身の川りのことができたのですが︑ぷ聞
でつ
まづいてけがをしてしま
い ︑
しばらくのあいだ
口い
物に山ることができなくなりました︒
そ
れを見かねた
Aさんは︑とりあえず'M分にでき
ることから助けてあげようと思い
︑代
わりに口い物に
行
っ て
あげることにしました︒しかしAさんは忙しい ので︑食事を作っ
てあげられそうにありませんそこ
で︑
友人
の
B
さんに屯話をかけ︑円
分
の代わりに段事
を 作 っ て
もらえ
ない
か︑
相
談を
持ちかけてみました8
さん は︑白分も.人H外らしなので
︑‑
人
分作
るの も ︑
‑
同人分作るのもe
じだ
と︑
. . つ 返 下
で引き受けてく
れました︒
これ
で︑
な
んとか中l山の川
叫に刈応
できましたが︑
いかんせんAさんとBさんどけでは必‑安な家下.切
を
判中
ー
できそうもありません︒
そこ
で︑
Aさんは
思い
切
っ て
在宅介護支抱センターに相
談を
持ちかけ
てみ
働ぷ
トぃ
心
)︑
比一
辿 日的
であるといえそう
です
これ
・り
の
3
必ぷを渦たさなけれ組織ば山 体
は靴
作
できませんが︑それは科弘ではありませんけ的は
人々の協働を統‑し︑日的がなければ
︑い
か
なる勿ね
が附々人に求められているのか︑予想することも
でき
ず︑その結果︑例人の組織に汁する氏献立欲は︑行き
場を失ってしまいます︒
そこで︑組織
H
的と口献立欲を持
つ間人とを結び
付けるもの︑すなわちコミ
ュ ニ
ケーシ
ョ ン
が.
小川欠
にな ります
︒コ
ミュ
ニケー
ショ
ンは
︑共通の日的を
組織
のメン
バーに伝達して︑それをもとにメンバーの合
則的
な立
思 決 定
を行わせるとともに︑側々の口献広欲
を雌
似
する働
きを
も
っ て
いま
す ︒
その
ぷ味
で︑
コ
ミュ
ニ
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ショ
ンの校術は︑屯.決な位世を山めて
いま
す︒
0 0 0
今回は介護サ
ービス悦供機闘の︑特に組織の側而
に日を向けて︑その本質を探
って み
ました︒日
私た ちは
︑
組織に属し︑
利 用 者
にサ
ービスを提供し
てい
ます
︒ス
タッフ本来のすばらしい能力を発陣し︑適切な介護サ
ービスを提供するには︑組織の本質をト分に型解し
て︑それに関
わっ てい かな
ければなりません︒
組織
をう
まく
動か
すと
いう
と︑
山川
け
で仲
良
くすれば
よい とだ け考えられがち
です
が︑克は︑問題の本質は
そこ には ない こと
もお分かりいただけたのではないでし
ょう
か次川は︑さらに組織について深く帰りド︒
げて
みましょう︒
子参考文 献『新tfT経営管理検j占部都美/白桃曾房 .1984 80 81