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木版を併用した銅版画の制作研究 一『循環』を主題として一
教科・領域教育専攻 芸術系(美術)コース 高 倉 直 子
はじめに
筆者はこれまで, 循環"というテーマを広い意味で 捉え,主題として展開してきた。
自然界のおりなす循環には,人聞が見ることの出来 ない莫大な数の生命が存在している。地中で熱く潜め ているマグマ,それによって起こる生娘霊,天から降り そそがれる雨,何もかもを援ってしまう台風など,地 球には大きなエネルギーをも形を変えて相生している。
また,人間の中に存在する感情も循環するのではな いかと考える。
地球に存在する大きなエネルギーや生命力,人間の もつ多くの感情による表れなど乙,
界観をテ一マとしている。
1 .研究の経緯と課題
銅版画特有の味わいに惹かれ,それでしか得られな い表現を模索していくうち,表現の幅を広げたいと思 うようになった。銅版画を布に摺り,インスタレーシ ョン作品としての発表も行った(2006年3月 卒 業 制 作 京都市美林瀧)。布は切ったり縫ったりすることで立体 的にはなるが,インクののりや発色の良さには欠ける 点があった。平面作品としての版画を制作し直し,自 分の中の版画がどのようなものであるか,それがどの
ような方向性を示しているのか整謹することにした。
そこで必要となったのが表現と技法の両面でのオ リジナリティである。
表現の面では,色彩の幅を広げることが必要となっ た。銅版ではインクを凹部に詰めると,インクが銅と
指 導 教 員 武 市 勝
酸化し,多少濁る。白インクではその濁りが激しく,
ムラのあるグレーになってしまう。このことは自を使 ったヒ。ンク明
k
色などの混色でも言える。画面を作り上げていく上でまた表現におけるオリ ジナリティを求めていく上で色の構成は重要である と考える。
色相や彩度の問題を改善しつつ,木版と併用すると いう独自の表現スタイルの確立を課題とする。
ll.併用のねらい
木版部分で水性と油性の両方を一つの作品上で使用 し,それぞれの性質の違いを生かした表現を求めてい る。以下の項目より,取り入れた木版技法,銅版との 併用によって得られる効果やねらいについて明確にす
る。
1.水↑合ド版凹版の効果
一版目に摺られているのが,アクリルガッシュを使 用した水f封て版凹版である。ニスを塗ったシナベニア に,彫刻刀で凹部を彫り,その凹部に絵具を詰め,余 分な絵具をスキージで掻き取る。そしてその版に湿ら せた紙を乗せ,圧を強めにしたプレス機で摺る。そう すると,ニスを塗った部分は絵具を弾き,凹部の絵具 が紙に染み込む。凹部に溜まった絵具と,圧で溢れ出 た絵具が,同色のコントラストとなって紙に表れ,色 彩の広がりと深みを与えている。水↑録会具は油性イン
クを弾くため,一番下の版に使用する。
2.油'rDド版凸版の効果
二版目,三版目は木目を活かしたグラデーションの
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ベタ版である。波紋のように写るシナベニア,荒い線 が鞘致的なラワンベニアの両方を使い,それぞれの木 目の違いを活かしながら,表現に応じて取り入れてい る。木目の存在するグラデーションが,水十生絵具の淡 い色合いと組み合わせることで,空間的な繋がりを与 え調和を持たせている。また一方向に流れている木目 を,二版目と三版目の刷る方向を変えて十字に摺るこ とで,広がりや奥行きを得ることができる。
3.併用による表現
水
tD
ド版凹版による紙に染み込んたヨ参み,その上に 乗せられる油,tT
ド版のベーノレ,一番上には多様な技法 ーを施した銅版が画面を引き締める(図 1) (図 2)。水 性絵具は紙に染み込み,鑑賞者を引き込む。油性は紙 の上に絵具がのり,鑑賞者に向かってくるような表現 となるD 二つの版種を併用したことで,技法面におけ る制作三スタイノレを得ることができた。4.色彩について
銅版とは違って濁ることのない木版で,水性と油性 のインクを使用することで,透明感から鮮やかさ、強 さまで,多くの色の階調や質感が表せる。アクリルガ ッシュのパレットで、作ったそのまま混色ム銅版の力 強い油性インクが,素朴さと甘みと締まりのある空間 を生み出している。
(図 1) (図 2)
m .
修了作品 『瞬 m~地球には,人間の自には見えない生命やエネノレギー が多く存在している。それは何かに影響され,動き,流 れ"~益れ出す。一瞬の出来事が,今を作り出し,新たな
何かを生み出す。そのような循環の中に潜む,一瞬を 表現することを考えた。
黒の塊と線摘が銅版,背景のオレンジと赤みのベー ジュのグラデーションが油
f
射て版凸版,青と緑の噴出 部分が水tt
ド版凹版となっている。銅版の技法は,エ ッチング, ドライポイント,アクアチントを取り入れ ている。水,tT
ド版の色の淡さと甘さの中に,鋭く太い 曲線,深みのある大きな塊が柄主し,木目のあるグラ デ、ーションがそれらを引き立たせるようにした。二つ の版種の味わいから1
静iJさキ叙情,詩情が表現される のではないかと考えている。? 2 ω c . ぽ 必 ・ d (j
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『瞬 m~
50X50(cnV銅版1色1版 木 版6色3版 ed.5 ベランアルシュ
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今後の課題今後の課題として上げられるのは,限られた画面の 中で,エネノレギーや生命力といった強さを表現しつつ,
意図するものと意図せざるものの融合を図った表現で、
ある。
画面の大きさを検討しながら素材や技法を考え直し,
計画せざることころに生まれる遊びゃ崩しを与え,全 体にまとまりのある画面を求めていきたい。
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