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2008年度 修士論文

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Academic year: 2021

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2008 年 度 修 士 論 文

短距離走でのハムストリングスの筋活動と

各種トレーニング

Muscular activity patterns of hamstrings during sprint running and

several different trainings.

早稲田大学 大学院スポーツ科学研究科

スポーツ科学専攻 スポーツ医科学研究領域

5006A065-5

村上 博之

MURAKAMI, Hiroyuki

研究指導教員: 福林 徹 教授

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短距離走でのハムストリングスの筋活動と

各種トレーニング

Muscular activity patterns of hamstrings during sprint running and

several different trainings.

スポーツ科学研究領域

5006A065-5 村上 博之

研究指導教員:福林 徹 教授

【緒言】 ハムストリングの肉離れは、瞬発的なダッシュ が要求される陸上競技の短距離種目や、ジャンプ、 カッティング動作などが要求される、サッカー、 ラグビーなどの球技で好発するスポーツ傷害の一 つである。ハムストリング肉離れに関する発生要 因や発生機序が明らかになりつつあり、傷害発生 予防を目的としたリハビリテーションプログラム や、よりランニング動作に近いリハビリテーショ ンプログラムが実施されるようになってきている。 しかし、ランニング動作とハムストリング肉離れ の具体的な関連や、ランニング動作に近いトレー ニング動作におけるリハビリテーションの有効性 や予防効果などの検討が別々に取り上げられてお り、これらの関連を主題にした研究は少ない。そ こで本研究では、陸上競技のスプリント走におけ る筋活動様式を明らかにし、リハビリテーション プログラムや予防トレーニングで用いられるトレ ーニング動作との関連と有用性を検討することと した。 【方法】 (実験 1)スプリント走における中間疾走及びゴ ール姿勢でのハムストリング各筋の筋活動様式を 検討した。対象は陸上競技短距離種目を専門とす る男子大学生 6 名とした。60m 地点を駆け抜ける スプリント走(以下、60m)と、60m 地点を体幹が 前傾したゴール姿勢で通過するスプリント走(以 下、60m-Finish)の 2 試技を行わせた。この試技 の 60m 地点を通過する 1 サイクル中の筋放電量を 大腿二頭筋長頭(以下、BF)、半腱様筋(以下、 ST)、半膜様筋(以下、SM)から直径 10mm の銀-塩化銀電極を用いてサンプリング周波数 1000Hz にて双極導出した。また、矢状面からハイスピー ドカメラにて動画撮影を行い、1 サイクル中の股 関節と膝関節の角度変化について検討した。 (実験 2)陸上競技におけるハムストリング肉離 れのリハビリテーションプログラム、予防トレー ニングプログラムの検討を行った。シザース動作、 バウンディング動作、Knee-bent-run 動作、連続 レッグランジ動作の 4 種類のトレーニング動作 を各 2 回ずつ実施した。トレーニング動作実施時 も実験 1 と同様の箇所の筋活動量を双極導出した。 矢状面から動画撮影を行い、カメラの前を通過し た各動作の 1 サイクル中の股関節、膝関節の角度 変化について検討した。 【結果】

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(実験 1)筋電図の生波形による検討では、BF、 ST、SM ともに swing 期後半から contact 期にかけ て高い筋放電が見られた。60m と 60m-Finish の 1 サイクル(左足接地から再び左足が接地するまで) における筋放電のピーク値が BF、ST、SM すべてに おいて60m よりも60m-Finish において高値を示し た。 図 2)60m と 60m-Finish の 1 サイクルにおける筋放電ピーク値の比較 60m、60m-Finish の両試技の BF、ST、SM におい てランニングの 1 サイクルにおけるピーク値の出 現時期と股関節屈曲角度に有意な相関関係が見ら れた。全ての試技においてピーク値は接地の直前 もしくは接地の直後に現れており、いずれも股関 節が屈曲しており、ハムストリングの張力を高め た こ と 、 筋 収 縮 形 態 が eccentric 収 縮 か ら concentric 収縮への切り替えしの瞬間の前後で あったことによる影響が大きいと考えられる。 (実験 2)4 種類のトレーニング動作の 1 サイクル における筋放電のピーク値を 60m のスプリント走 の際の各筋のピーク値を 100%として比較した。シ ザース動作においては BF、ST で、バウンディング 動作においては BF、ST、SM 全てにおいて 60m と比 較して有意差が見られた。Knee-bent-run 動作、 連続レッグランジ動作において有意差は見られな かった。 図 3)60m と各トレーニング動作の筋放電ピーク値の比較 【考察】 スプリント動作とトレーニング動作の関連を 検討するために同一被験者の同一筋を対象に実験 を行った。スプリント実験において 60m と比較し て 60m-Finish では体幹を前傾した姿勢の際の筋 活動を検討したために、股関節の屈曲角度が 60m より大きな値となる傾向にあった。疾走動作中の 股関節の屈曲角度が大きいことにより、ハムスト リングにより張力がかかり、ピーク値の増大につ ながったと考えられる。 筋放電のピーク値から検討した結果、リハビリ テーションプログラムとしては競技復帰前の機能 強化トレーニング期にシザース動作は BF、ST に有 効なトレーニング種目であるという指針を得るこ とができた。バウンディング動作は、ピーク値が BF、ST、SM すべてにおいて 60m のピーク値よりも 有意に高く、競技に完全復帰した後でのハムスト リング肉離れ予防のトレーングとして取り入れる ことが望ましい指針を得られた。Knee-bent-run 動作、連続レッグランジ動作については筋放電の ピーク値からの検討では 60m と比較して優位な差 が見られず、リハビリテーションプログラム導入 における有用な指針を得ることができなかった。 【まとめ】 本研究の結果より、スプリント走中に体幹を前 傾させることは、ハムストリングにより高い負荷 をかけることが示唆された。また、バウンディン グ動作はハムストリング肉離れの予防トレーニン グとして有用であるとの指針を得ることができた。

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目 次 第 一 章 緒 言 ・ ・ ・1 1. ハ ム スト リ ン グ の機 能 、 解 剖学 的 特 徴 につ い て ・ ・ ・2 2. 疫 学 的調 査 ・ ・ ・4 3. 発 生 要因 ・ ・ ・6 4. 発 生 機序 ・ ・ ・9 5. 予 防 とリ ハ ビ リ テー シ ョ ン ・・・10 第 二 章 陸 上 競 技 短 距 離 走 の 中 間 疾 走 時 に お け る ハ ム ス ト リ ン グ 各 筋 の 筋 活 動 様 式 に つ い て ・・・20 1. 方 法 ・・・20 2. 結 果 ・・・25 3. 考 察 ・・・36 第 三 章 陸 上 競 技 に 特 化 し た 各 種 ト レ ー ニ ン グ 動 作 の 解 析 ・・・39 1. 方 法 ・・・39 2. 結 果 ・・・43 3. 考 察 ・・・55 第 四 章 総 合 考 察 ・・・59 第 五 章 結 語 ・・・64 参 考 文 献 ・・・65 謝 辞 ・・・71

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第 一 章 緒 言 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ は 、 足 関 節 捻 挫 と 同 じ よ う に ス ポ ー ツ 動 作 で よ く み ら れ る 外 傷 の 一 つ で あ る 。 瞬 発 的 な ダ ッ シ ュ ・ ジ ャ ン プ ・ カ ッ テ ィ ン グ 動 作 な ど が 要 求 さ れ る 、 陸 上 競 技 の 短 距 離 種 目 ・ ハ ー ド ル 種 目 ・ 跳 躍 種 目 や 、 サ ッ カ ー ・ ラ グ ビ ー な ど の 球 技 で も 起 こ り や す い ス ポ ー ツ 傷 害 の 一 つ で あ る1)。ラ ン ニ ン グ 動 作 で の 肉 離 れ は 、 明 ら か な 外 力 が 加 わ ら な い 自 家 筋 力 に よ る 筋 の 損 傷 が 特 徴 で あ る が 、 さ ら に 介 達 外 力 に よ っ て 筋 が 受 動 的 に 過 伸 展 さ れ て 損 傷 を 受 け る 場 合 も あ る 。 受 傷 直 後 は 疼 痛 の た め に 歩 行 が ま ま な ら な い こ と も あ り 、 競 技 復 帰 ま で に 数 週 間 か ら 数 ヶ 月 を 要 す る 場 合 も あ る が 、大 部 分 は 保 存 療 法 で 軽 快 す る2)。そ の た め に 、 受 傷 し て も 医 療 機 関 を 訪 れ な い 場 合 が 多 く 、 医 学 の 対 象 疾 患 と さ れ る こ と は 少 な か っ た 。こ の よ う な 背 景 ゆ え に 、肉 離 れ の 病 態 に つ い て は 不 明 な 点 が 多 く 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 場 面 で は 、経 験 に 基 づ い て 対 処 さ れ る の が 一 般 的 で あ っ た 。 し か し 、 近 年 で は 医 療 に お け る 画 像 技 術 の 進 歩 に よ り 、 M R I に よ り 肉 離 れ の 病 態 を 視 覚 的 に 観 察 す る こ と が で き る よ う に な り 、 肉 離 れ の 病 態 が 明 ら か に な っ て き た 。 ま た 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 生 理 学 的 な 機 能 や 解 剖 学 的 な 特 徴 な ど に 関 す る 報 告 も さ れ る よ う に な っ て お り 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ の 発 生 要 因 ・ 発 生 機 序 を 解 明 す る た め の 有 用 な 知 見 と な っ て い る 。 ま た 、 こ れ ら の 研 究 を も と に 、 国 内 外 に お い て 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ 予 防 を 目 的 と し た ト レ ー ニ ン グ や 、 よ り ラ ン ニ ン グ 動 作 な ど の 受 傷 機 転 を 加 味 し た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム な ど が 実 施 さ れ る よ う に な っ て い る 。 そ こ で 第 一 章 で は 、ハ ム ス ト リ ン グ の 生 理 学 的 機 能 及 び 解 剖 学 的 機 能 に つ い て 、 ま た ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ に 関 す る 疫 学 的 調 査 、 発 生 要 因 、 発 生 機 序 、 予 防 へ の 取 り 組 み に つ い て 述 べ る こ と と す る 。

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1-1 ハ ム ス ト リン グ の 機 能、 解 剖 学 的特 徴 に つ いて ハ ム ス ト リ ン グ は 大 腿 後 面 に 位 置 す る 、 大 腿 二 頭 筋 長 頭 ( 以 下BF-L)、 大 腿 二 頭 筋 短 頭( 以 下BF-S)、半 腱 様 筋( 以 下 ST)、半 膜 様 筋( 以 下 SM)の 総 称で あ る 。 上 記 の う ち 、BF-L・ ST・ STは 二 関 節 筋 で あ り 、 坐 骨 結 節 か ら 起 始 す る 。 一 方 、 単 関 節 筋 で あ るBF-Sは 大 腿 骨 骨 幹 部 か ら 起 始 す る 。 BF-L、 BF-Sは 腓 骨 頭 に 停 止 し 、 股 関 節 の 外 旋 、 股 関 節 の 伸 展 、 膝 関 節 の 屈 曲 、 膝 関 節 の 外 旋 の 機 能 を 担 う 。 STは縫 工 筋 や 薄筋 と と も に浅 鵞 足 に 停止 し 、膝 関節 の 屈 曲 、膝 関 節 の 内旋 の 機 能 を 担 う 。SMは 脛 骨内 側 顆 に停 止 し 、 膝関 節 の 屈 曲、 膝 関 節 の内 旋 を 担 う 3) 筋 の 形 状 は そ れ ぞ れ の 筋 に よ っ て 異 な り 4)、身 体 運 動 に 関 わ る 四 肢 体 幹 の 筋 群 は 紡 錘 状 筋 と 羽 状 筋 が 大 部 分 を 占 め て い る 5)。 ハ ム ス ト リ ン グ も 例 外 で は な く 、 各 筋 は 紡 錘 状 筋 と 羽 状 筋 で 構 成 さ れ て い る 。 紡 錘 状 筋 は 筋 束 長 と 筋 長 が ほ ぼ 等 し く 、 大 部 分 の 筋 束 が 筋 の 長 軸 方 向 に 対 し て 平 行 に 配 列 さ れ て お り 、 筋 線 維 数 が 少 な い こ と が 特 徴 で あ る 。 一 方 、 羽 状 筋 は 、 筋 長 よ り も 短 い 筋 束 が 筋 を 斜 め に 配 列 し て い る6)。筋 線 維 長 が 短 い た め に 筋 線 維 数 が 多 い こ と が 特 徴 で あ る 。 力 発 揮 の 側 面 か ら 筋 を 観 察 す る と 、 紡 錘 状 筋 の 程 度 が 高 い ほ ど 筋 線 維 長 を 長 く す る こ と が で き 、 よ り 長 い 距 離 に わ た っ て 筋 を 収 縮 す る こ と が 可 能 と な る 。 一 方 、 羽 状 筋 は 筋 線 維 数 が 多 い こ と か ら 、 発 揮 す る 力 が 大 き く 要 求 さ れ る 部 位 に 位 置 さ れ て い る7)。 こ の よ う に 、 骨 格 筋 の 筋 形 状 特 性 は 、 科 せ ら れ る 機 能 的 要 求 に よ く 合 っ て い る8) 新 鮮 切 断 肢 を 用 い た 解 剖 に よ る 膝 関 節 屈 曲 筋 群 の 筋 形 態 測 定 を 行 っ た 研 究 に よ る と 、STは 紡 錘 状 筋 で あ り 、 BFと SMは 半 羽 状 筋 で あ っ た と 報 告 し て い る 9) 10) ま た 、筋 束 長 はSTが BF・SMに 比 し て 長く 、筋 に よる 差 が 大 きい と 報 告 して い る 9) 10)

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Figure 1 Photographs of the knee flexor muscles 9) 10)

Table1 Architectural features of knee flexor muscles 9) 10)

Muscle Muscle belly length(cm) Fiber length(cm) Pennation angle(deg) Fiber arrangement ST 26.8±3.6 23.8±1.8 0

G 24.9±2.4 24.3±1.9 0 SM 28.5±2.6 6.0±0.8 31±5 BF 31.2±5.2 7.3±1.3 28±4

Date are mean ±SD Parallel fibered muscle

Unipennate muscle

ま た 、MRIを 用 いた 研 究 で は、 100 本 の Australian rules football kicksの 前 後 で 支 持 脚 お よ び 蹴 り 脚 と も にSTのT2 値 ( Transvers relaxation times value) が 増 大 し た と の 報 告 が あ り 11)、 遠 心 性 収 縮 に 関 し てSTが 特 異 的 に 活 動 し て い る こ

と を う か が う こ と が で き る 。ハ ム ス ト リ ン グ と ひ と 括 り で 表 現 さ れ が ち で あ る が 、 個 々 の 筋 の 収 縮 特 性 や 、筋 活 動 様 式 は 各 運 動 動 作 に よ り そ れ ぞ れ 貢 献 度 が 異 な る 。

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1-2 疫 学 的 調 査 陸 上 競 技 に お け る 肉 離 れ の 発 生 件 数 に つ い て 、向 井 12) 1996 年 以 降 の関 東 学 生 陸 上 競 技 選 手 権 お よ び 日 本 学 生 陸 上 競 技 選 手 権 の 競 技 中 に 受 傷 し た 肉 離 れ に つ い て 調 査 可 能 で あ っ た 12 大 会 に つ いて 検 討 し、受 傷 数 が 76 件 で あ った と 報 告 し て い る 。 そ の う ち 短 距 離 ・ ハ ー ド ル 種 目 が 73 件 で 跳 躍 は 3 件 で あ っ た。 男 女 比 は 66 人 と 13 人 で 男 子 が 大き く 女 子 を上 回 っ た。受 傷 部 位 はハ ム ス ト リン グ が 70 件 で 大 腿 直 筋 が 6 件 で あ り、 ハ ム ス トリ ン グ の 受傷 筋 の 記 載の あ っ た 57 例 中 で はBFが 35 件 で あり 、内 側 ハム ス ト リ ング ス( STもし く は SM)が 22 件 で あ っ た と 報 告 し て い る 。 発 生 が 圧 倒 的 に 多 い 種 目 群 で あ る 短 距 離 ・ ハ ー ド ル の 種 目 別 発 生 件 数 は 100mが 17 件、200mが 14 件 、400mが 3 件 、シ ョ ー ト ハ ー ドル( 110mH も し く は 100mH)が 5 件 、 400mHが 4 件 、 4×100mリ レ ーが 23 件 、 4×400m リ レ ー が 7 件 と ショ ー ト ス プリ ン ト で の発 生 が 多 いこ と が 明 らか と な っ た。ま た 、 肉 離 れ の リ ス ク フ ァ ク タ ー に 「 以 前 の 既 往 」 が 挙 げ ら れ る 事 が 多 い が 、 両 リ レ ー 種 目 で は 既 往 の な い 競 技 者 の 発 症 が 70% 以 上 を 占め 、リ レ ー競 技 で は 個々 の 競 技 者 の 持 つ 能 力 以 上 の 力 を 出 し て い る 可 能 性 と 、 バ ト ン パ ス の 際 の 予 期 せ ぬ 動 作 の 乱 れ が あ る こ と が そ の 要 因 の 一 つ に 挙 げ ら れ る と 報 告 し て い る 。 冬 季 の ト レ ー ニ ン グ を 終 え て 競 技 シ ー ズ ン に 入 る 4・ 5 月 の 受傷 が 他 の 時期 よ り も 多 い と さ れ て お り 13)、そ の 原 因 と し て は 季 節 や ト レ ー ニ ン グ 区 分 が 発 生 に 影 響 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 比 較 的 走 行 速 度 の 低 い 冬 季 ト レ ー ニ ン グ か ら 、 気 温 の 上 昇 に 伴 っ て 高 速 走 行 が 可 能 に な っ て く る 時 期 で あ る と い う こ と 、 冬 季 ト レ ー ニ ン グ で 上 が っ た 体 力 に 走 行 技 術 が 対 応 で き て い な い こ と な ど を 挙 げ て い る 。 さ ら に 高 校 生 に と っ て は 8 月 に 行 わ れ る全 国 高 校 総体( イ ン ター ハ イ )への 地 区 予 選 の 時 期 で あ り 、 コ ン デ ィ シ ョ ン が 良 好 で な い 状 況 下 で も 自 己 の 持 つ 力 を 発 揮 し な け れ ば な ら な い 状 況 に な る こ と も 要 因 の 一 つ で あ る と 指 摘 さ れ て い る13) 奥 脇 14) 2001 年 10 月 から 2008 年 7 月 ま で に 国立 ス ポ ー ツ科 学 セ ン ター の ス

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ポ ー ツ ク リ ニ ッ ク を 訪 れ た 322 例 の 肉 離れ に つ い て、受 傷 し た競 技 種 目 は陸 上 競 技 と サ ッ カ ー が 多 か っ た と 報 告 し て い る 。 全 体 で は 48 の 筋 で肉 離 れ が 発生 し て お り 、 ハ ム ス ト リ ン グ ス が 全 体 の 41% と 最 も 多く ( う ち BFが 63% )、大 腿 四 頭 筋 が 13% 、 下 腿三 頭 筋 が 11% で あ った と 報 告 して い る 。 また 265 例 の ス ポ ー ツ 復 帰 時 期 を 確 認 し た と こ ろ 、MRI画 像 に高 信 号 領 域は あ る が 筋腱 移 行 部 損傷 の な い も の は 1.8 週 、 MRI画 像 に 高 信 号 領域 が あ り 筋腱 移 行 部 損傷 の あ る もの は 5.8 週 、損 傷 部 が 筋 腱 付 着 部 に 及 ぶ も の は 20.4 週 で 復帰 し て お り、肉 離 れ の予 後 は 筋 腱 移 行 部 の 損 傷 が あ る か 否 か で 大 き く 変 わ る と 指 摘 し て い る 。 サ ッ カ ー に お け るLysholm ら 15)の ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ の 発 生 率 に 関 す る 1987 年 の 報 告 では 、ハ ム スト リ ン グ の肉 離 れ は ラン ニ ン グ 中に 起 こ る 障害 の 7% を 占 め て い る と 報 告 し た の に 対 し 、 最 近 の 報 告 (Andersenら 16)2003、 Arnason ら17)2003)では 12~ 17% に 増 加 し て いる 。こ れ は近 代 サ ッ カー が 以 前 に比 し て 、 高 強 度 か つ ア グ レ ッ シ ブ な プ レ ー に よ り 身 体 的 負 担 が 高 ま っ た こ と や 、 試 合 数 の 増 加 が 原 因 と な っ て い る と 考 え ら れ る18) ラ グ ビ ー に お い て はBrooksら19)が ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ に 関 し て 、 ラ ン ニ ン グ 動 作 が 受 傷 機 転 の 68 % を 占 め た と 述 べ 、 発 症 率 は ト レ ー ニ ン グ 中 (0.27/1000players)よ り も試 合 中( 5.6/1000players)に 優位 に 高 く 、ま た 重 症 度( 競 技 復 帰 に 要 し た 時 間 で の 比 較 )は 新 鮮 例(14 日 )に 対 して 再 発 例( 25 日 ) が 優 位 に 高 い 値 を 示 し た と 報 告 し て い る 。

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1-3 発 生 要 因

ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ の 発 生 要 因 は 内 的 要 因 と 外 的 要 因 に 分 類 さ れ る 。 内 的 要 因 はAgre20) が 提 唱し た 以 下 の 6 つ が 多 方面 で 引 用 され て い る 。

Table 2 Etiological factors in hamstring injury20)

・ inadequate flexibility of the hamstring muscles

・ inadequate muscle strength and/or endurance of the hamstring muscles

・ dys-synergic muscle contraction of the hamstring muscles

・ insufficient warm-up and stretching before activity

・ awkward running style

・ return to activity before complete rehabilitation

ハ ム ス ト リ ン グ の 筋 腱 複 合 体 に タ イ ト ネ ス が あ り 伸 張 性 が 低 下 し て い る 状 態 に お い て は 、 ハ ム ス ト リ ン グ は swing phase の 後 半で 引 き 伸 ばさ れ る こ とに よ り 、 肉 離 れ を 発 症 す る 可 能 性 を 秘 め て い る 。筋 そ の も の の 柔 軟 な 動 き が 最 も 求 め ら れ 、 ま た 筋 に 大 き な 負 担 が 掛 か る ス プ リ ン ト 走 に お い て 最 も 起 こ り や す い と い わ れ て い る 。 左 右 の ハ ム ス ト リ ン グ の 筋 バ ラ ン ス の 崩 れ や 、 大 腿 四 頭 筋 と ハ ム ス ト リ ン グ の 筋 バ ラ ン ス の 崩 れ も 肉 離 れ の 可 能 性 を 促 す 。 ハ ム ス ト リ ン グ の 力 が 弱 い 状 態 で は 、swing phase で の 膝 伸展 筋 群 の 力に 耐 え う るこ と が で きず 、 ま た contact phase で の 股 関 節伸 展 筋 群 に対 し て も 十分 な 力 発 揮が で き な い。 ま た 、 swing 期 後 半 の 急 激 な eccentric 収 縮 から concentric 収 縮 への 切 り 替 えの 際 に 、 ハム ス ト リ ン グ 各 筋 が 協 調 運 動 を で き な い と 、 肉 離 れ が 起 き や す い と も 指 摘 さ れ て い る 。 運 動 前 の 不 十 分 な ウ ォ ー ミ ン グ ア ッ プ や ス ト レ ッ チ で は 十 分 な ウ ォ ー ミ ン グ ア ッ プ ほ ど 筋 組 織 を 温 め る こ と が で き ず 、 緊 張 が 取 れ て い な い 状 況 で あ る 。 ハ ム ス ト リ ン グ の 損 傷 は こ の タ イ ト ネ ス や 筋 の 協 調 運 動 が で き な い こ と に よ っ て 引 き 起

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こ さ れ る 。 不 適 切 な ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム と は 具 体 的 に 定 義 さ れ て は い な い が 、 ハ ム ス ト リ ン グ に 過 度 な ス ト レ ス の か か る 走 り 方 を し て い る 選 手 は 、 筋 損 傷 を 招 き や す い 。 ま た 、 筋 の 柔 軟 性 、 強 さ 、 持 久 力 や 協 調 性 が 完 全 で な い 状 況 で ス ポ ー ツ 活 動 に 復 帰 す る と 、 肉 離 れ の 再 発 の 可 能 性 が 高 ま る 。 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ は 高 い 確 率 で の 再 発 が 報 告 さ れ て お り 、 何 よ り も 予 防 に 努 め る こ と が 最 優 先 で あ る と さ れ て い る 。 肉 離 れ の 多 く は 微 細 な 筋 損 傷 や 、 軽 度 の 運 動 弊 害 が 起 き る も の で あ る が 、 こ の 際 に 適 切 な リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン が 施 さ れ ず に 不 完 全 な ま ま で 復 帰 す る 選 手 が 多 く 見 受 け ら れ る 。 そ の 状 態 で 復 帰 し 、 再 発 に 繋 が っ て い る 。 選 手 は 、 完 全 な リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 後 に 筋 力 、 柔 軟 性 な ど が 完 全 に 戻 っ た 状 態 で 復 帰 す べ き で あ る 。そ し て 、再 発 予 防 の た め に は 、運 動 は 腫 脹 が 除 去 さ れ た 状 態 で 開 始 し 、 初 期 段 階 で は 患 部 に 気 を 使 い 、 痛 み の な い 程 度 で の ス ト レ ッ チ か ら 開 始 す る こ と が 理 想 と さ れ 、 こ の 痛 み の な い レ ベ ル が 重 要 で あ り 、 全 て の 運 動 遂 行 に お い て 、 痛 み の な い レ ベ ル を 守 る こ と が リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 誤 り に よ る 怪 我 の 再 発 予 防 に 繋 が る 。 試 合 復 帰 の 目 安 に つ い て も 筋 の 柔 軟 性 、 強 さ 、 持 久 力 や 協 調 性 が 完 全 で あ る こ と が 条 件 と な る 。 こ れ ら の 要 素 が 不 足 し て い る 状 態 で の 試 合 復 帰 に は 再 発 の リ ス ク が 伴 う 。 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ に お い て 最 良 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム は 予 防 で あ る 。 柔 軟 性 、 筋 力 、 筋 持 久 力 を 高 め る た め の ト レ ー ニ ン グ が 必 要 と な る 。 持 久 力 の あ る 強 く て し な や か な 筋 が 最 も 怪 我 を し に く い 。 練 習 や 試 合 前 に 行 う 、 徐 々 に 負 荷 を 高 め て い く ウ ォ ー ミ ン グ ア ッ プ や ス ト レ ッ チ を 行 う こ と が 薦 め ら れ る 。 ク ー ル ダ ウ ン 時 の ス ト レ ッ チ も 同 様 に 重 要 で あ る 。 怪 我 を し て し ま っ た 選 手 は 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン を 完 全 に 遂 行 し た 上 で 競 技 復 帰 を す べ き で あ る 、 とAgre20)は 指 摘 し て い る 。 ま た 、 肉 離 れ の 外 的 要 因 を 挙 げ る 研 究 21)も 見 受 け ら れ 、 白 木 22)に よ り 以 下 の も の が 挙 げ ら れ て い る 。

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Table 3 External factors in hamstring injury 21) ・ 天 候 ( 温 度 ・ 湿 度 な ど ) ・ 運 動 を す る 場 所 の サ ー フ ェ ス ・ シ ュ ー ズ ・ ゲ ー ム ス ケ ジ ュ ー ル (1 シ ー ズ ン のゲ ー ム 予 定な ど ) ハ ム ス ト リ ン グ 各 筋 の 柔 軟 性 の 欠 如 、 不 適 切 な ウ ォ ー ミ ン グ ア ッ プ 、 既 往 歴 の 有 無 や 疲 労 な ど を 要 因 に 挙 げ る 研 究 は 数 多 く 見 受 け ら れ る23) 24) 25) 26) 27)が 、そ れ ら に は 確 か な 根 拠 が な い と 指 摘 す る 研 究28)も 報 告 さ れ て い る 。筋 力 に 関 す る 研 究 で は 抗 重 力 筋 で あ る 大 腿 四 頭 筋 と そ の 拮 抗 筋 で あ る ハ ム ス ト リ ン グ の 筋 力 比 (Hamstring/Quad 以 下 H/Q比 )に 関 す る 研 究 が多 く 報 告 され て お り 、H/Q比 が 60% 以 上 で ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ 予 防 が 可 能 で あ る と い う 報 告 が さ れ て い る 29)。 一 方 で は 、H/Q比 の 低 下 が 肉 離 れ の 発 生 に 影 響 す る と の 報 告30)も あ る 。 競 技 ス ポ ー ツ の 分 野 で は 膝 関 節 屈 曲 筋 力 と ス ポ ー ツ パ フ ォ ー マ ン ス と の 相 関 関 係 の 報 告 31)も あ り 、膝 関 節 屈 曲 筋 群 の 一 部 で あ る ハ ム ス ト リ ン グ に つ い て 興 味 を も た れ て い る 。 ラ ン ニ ン グ に お け る 肉 離 れ に 関 し て 、 筋 収 縮 形 態 が 遠 心 性 収 縮 の 際 に 受 傷 す る こ と が 明 ら か に な っ て き て お り 、 こ れ に 伴 い 、 遠 心 性 収 縮 筋 力 の 低 下 に つ い て 述 べ る 報 告 も 見 受 け ら れ る21)32)33)

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1-4 発 生 機 序

ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ の 発 生 は 、 膝 関 節 伸 展 と 股 関 節 伸 展 が 同 時 に 行 わ れ る 遊 脚 期 後 半20)34)35) 36)37)40)late forward swing phase)と 蹴 り 出し 期 37)40)push

off phase)に 起 こる と い わ れて い る 。ま た 、接 地 直後 の foot strike phase36)に 発

生 す る と の 報 告 も あ る 。 遊 脚 期 後 半 で は 、 股 関 節 屈 曲 と 膝 関 節 の 伸 展 に よ っ て 足 部 は 前 方 に 振 り 出 さ れ 、 そ の 後 、 股 関 節 は 伸 展 、 膝 関 節 は 屈 曲 に 転 じ る 。 す な わ ち ハ ム ス ト リ ン グ は 膝 関 節 の 伸 展 を 制 限 し 、 調 整 す る た め の ブ レ ー キ 動 作20)21) と し てeccentricに 収 縮 し た 後 、 concentricに 収 縮 す る 必 要 が あ る 。 こ の 遠 心 性 収 縮 に よ る ブ レ ー キ 動 作 は 疾 走 速 度 が 速 い ほ ど 大 き く な り38)、運 動 の 切 り 替 え し に お い て 肉 離 れ が 発 生 す る 。 ま た 、 蹴 り 出 し 期 で は 、 股 関 節 は 伸 展 し て い る の で ハ ム ス ト リ ン グ はconcentricに 収 縮 し て い る が 、 さ ら に 膝 関 節 が 伸 展 し よ う と す る た め 、逆 に ハ ム ス ト リ ン グ に はeccentricの 収 縮 が 加わ っ て 肉 離れ が 発 生 する 。foot strike phaseに お い て は 、 地 面 接 地 直 前 に 膝 関 節 が 最 も 伸 展 し た 状 態 か ら 一 瞬 で 短 縮 性 収 縮 に 転 じ (foot descent phase)、 さ ら に 接地 時 に は 地面 か ら の 大き な 反 力 に よ り 強 い 負 荷 を 受 け る こ と に な る 。 こ の 短 い 間 で 股 関 節 伸 展 筋 群 と 膝 関 節 屈 曲 筋 群 が 協 調 運 動 を す る こ と が 要 求 さ れ る36)38)39)が 、こ の バ ラ ン ス が 何 ら か の 要

因 で 崩 れ て し ま う と 筋 損 傷 が 起 こ る と 考 え ら れ て い る 。

take off phase forward swing phase

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五 輪 優 勝 者 を 含 む 一 流 ス プ リ ン タ ー の 中 間 疾 走 フ ォ ー ム を 分 析 し た 研 究 41) よ る と 、競 技 会 に お け る ラ ン ニ ン グ 動 作 に お い て は 、短 距 離 走 の 中 間 疾 走 局 面 で 、 1 サ イ ク ル 中 に 股関 節 に は 84.8±26.5 度 、膝 関 節 に は 140.6±7.4 度 の 角度 変 移 が あ る と 報 告 さ れ て い る 。 ラ ン ニ ン グ 動 作 に お い て は 非 常 に 短 い 時 間 で の 各 関 節 の 角 度 変 化 に よ り 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 筋 長 や 筋 張 力 が 随 時 変 化 す る こ と が 明 ら か で あ る 。 1-5 予 防 と リ ハビ リ テ ー ショ ン ス ポ ー ツ に お け る 障 害 予 防 プ ロ グ ラ ム を 作 成 す る に 当 た っ て は 、Bahrら 42) 示 し た 4 つ の ス テッ プ を 考 慮す る こ と が望 ま し い 。

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国 内 外 で は 各 競 技 団 体 に よ り 予 防 プ ロ グ ラ ム や 予 防 ト レ ー ニ ン グ の 実 施 や 普 及 が 広 ま っ て い る43)44)。予 防 プ ロ グ ラ ム や リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム は そ れ ぞ れ の ス ポ ー ツ 競 技 特 性 を 踏 ま え た も の が 多 く 、 総 合 的 に ス ポ ー ツ 障 害 を 予 防 す る 目 的 で 作 成 さ れ た も の や 、 特 定 の ス ポ ー ツ 障 害 を 特 化 し た も の も あ る 。 バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 女 子 日 本 リ ー グ 機 構 、 日 本 女 子 サ ッ カ ー リ ー グ 、 日 本 テ ニ ス 協 会 医 事 委 員 会 、 全 日 本 ス キ ー 連 盟 、 浦 和 レ ッ ド ダ イ ヤ モ ン ズ な ど が 障 害 予 防 プ ロ グ ラ ム の DVD を 作 成 して い る 。 女子 バ ス ケ ット ボ ー ル と女 子 サ ッ カー は そ れ ぞ れ の 競 技 で の 総 合 的 な 障 害 予 防 を 取 り 上 げ 、 テ ニ ス 協 会 ・ ス キ ー 連 盟 は 下 肢 、 浦 和 レ ッ ド ダ イ ヤ モ ン ズ は 鼠 径 部 痛 症 候 群 に 特 化 し た 予 防 プ ロ グ ラ ム を 取 り 上 げ て る 。 ハ ム ス ト リ ン グ に 注 目 す る と 、 女 子 バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 44)で は バ ラ ン ス 、 筋 力 、 ジ ャ ン プ 、ス キ ル の 4 項 目 が 3 段 階 の レベ ル( ベ ーシ ッ ク 、スタ ン ダ ー ド、ア ド バ ン ス ) に 分 け ら れ て お り 、 ハ ム ス ト リ ン グ 強 化 プ ロ グ ラ ム で あ る ノ ル デ ィ ッ ク ハ ム ス ト リ ン グ ス が 取 り 入 れ ら れ て い る 。 ま た 、FIFAの The 11 43)に お い て は ハ ム ス ト リ ン グ の 障 害 予 防 プ ロ グ ラ ム と し て 同 じ く ノ ル デ ィ ッ ク ハ ム ス ト リ ン グ ス が 取 り 入 れ ら れ て い る 。 ま たBahr18)ら は 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ 予 防 ト レ ー ニ ン グ と し て ハ ム ス ト リ ン グ に 伸 張 性 収 縮 を 行 わ せ る ノ ル デ ィ ッ ク ハ ム ス ト リ ン グ ス エ ク サ サ イ ズ を 実 施 し 、 主 要 な 因 子 と 考 え ら れ る 伸 張 性 収 縮 筋 力 が 優 位 に 増 加 し た と 報 告 し た 。 こ の よ う に 、 競 技 団 体 ご と に 障 害 予 防 プ ロ グ ラ ム が 作 成 さ れ つ つ あ る 状 況 で あ る が 、 ラ ン ニ ン グ 動 作 で 頻 発 す る ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ に つ い て 、 ラ ン ニ ン グ の 観 点 か ら 作 成 さ れ た 予 防 ト レ ー ニ ン グ は ま だ 確 立 さ れ て い な い 。 肉 離 れ は 競 技 ス ポ ー ツ 選 手 の 2 割 程 度 が 経験 す る 傷 害と い わ れ てい る 39)。ま た 、ス ポ ー ツ 医 学 の 分 野 で は 、 肉 離 れ の 診 断 時 や 回 復 過 程 に お い て 筋 力 評 価 の 為 に 様 々 な 関 節 角 度 で の 徒 手 筋 力 検 査 や 、 遂 行 可 能 な 運 動 か ら 簡 便 に 重 症 度 を 推 測 す る こ と が ス ポ ー

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ツ 現 場 で は 日 常 的 に 行 わ れ て い る45)。し か し 、こ れ ら の 評 価 は 現 場 の 医 師 や ア ス レ テ ィ ッ ク ト レ ー ナ ー の 経 験 に 基 づ い て 実 施・判 断 さ れ る こ と が ほ と ん ど で あ る 。 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン や 予 防 に 関 し て も 、 ト レ ー ニ ン グ 負 荷 の 設 定 や 可 動 範 囲 の 決 定 な ど は 、 選 手 の 主 観 的 な 感 覚 や 、 ア ス レ テ ィ ッ ク ト レ ー ナ ー の 客 観 的 判 断 に 頼 る こ と が 多 い 現 状 で 、 再 受 傷 に 対 し て 多 大 な る 注 意 を 払 う 必 要 が あ る 。 陸 上 競 技 を は じ め 、 様 々 な 競 技 の ラ ン ニ ン グ 局 面 で 多 く 発 生 し て い る ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ で あ る が 、Agre の 研 究以 降 、新 し い 知 見 が 得ら れ て お らず 、現 状 の 打 開 に は こ れ ま で 実 施 さ れ て い な い よ う な 新 し い 取 り 組 み が 必 要 に な る と 考 え ら れ て い る 。 陸 上 競 技 の ス タ ー ト ダ ッ シ ュ や 中 間 疾 走 に お い て の ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ の 報 告 は 多 く 見 ら れ 、 そ の 発 生 要 因 と し て は 、 解 剖 学 的 特 性 に よ り 脆 弱 部 分 の 存 在 、 筋 の 不 均 衡 な 発 達 、 筋 の 同 時 収 縮 の 失 調 、 筋 の 急 激 な 過 度 な 伸 展 、 柔 軟 性 の 欠 如 、 不 適 切 な フ ォ ー ム 、 不 十 分 な リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン と 身 体 的 要 因 ( 内 的 要 因 ) と 寒 冷 、 グ ラ ウ ン ド コ ン デ ィ シ ョ ン の 不 良 な ど の 要 因 ( 外 的 要 因 ) と が 指 摘 さ れ て い る 。 し か し 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ と そ の 発 生 要 因 に 関 す る 実 験 的 な 研 究 は 少 な く 、 筋 力 あ る い は 筋 持 久 力 と の 関 係 を 検 討 し た も の は 見 受 け ら れ る が 、 ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム と の 関 連 に つ い て 検 討 し た も の は あ ま り 見 ら れ な い 。 肉 離 れ と ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム と の 関 連 を 明 ら か に す る た め に は 、 肉 離 れ が 多 く 発 生 し や す い 局 面 と し て 指 摘 さ れ て い る 3 局 面;ス タ ート ダ ッ シ ュ時 、中 間 疾走 局 面、ゴ ー ル 直 前 の 各 局 面 に お け る ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム と の 関 連 を 検 討 す る こ と が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 一 方 で 、 筋 出 力 の 観 点 か ら の 先 行 研 究 で は 、 筋 電 図 を 用 い て 最 大 下 走 46)47)48) や 疾 走 中49)50)の 筋 活 動 を 調 べ 、筋 が 疾 走 動 作 の ど の 局 面 で 働 く か を 明 ら か に し た 。 ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お い て は 、 膝 関 節 屈 曲 筋 群 の 機 能 に 関 す る 研 究 が 十 分 で な い た め に 、 肉 離 れ の 診 断 時 や 回 復 過 程 に お い て 、 筋 力

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評 価 の た め の 指 標 は 医 師 や ア ス レ テ ィ ッ ク ト レ ー ナ ー の 経 験 に 基 づ い て 実 施 さ れ る こ と が 多 く 見 受 け ら れ る 。 ウ ォ ー キ ン グ や ラ ン ニ ン グ 開 始 後 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お い て も 、 ト レ ー ニ ン グ 負 荷 の 設 定 や ト レ ー ニ ン グ 種 目 の 決 定 、 動 作 範 囲 の 決 定 な ど は 、 成 書 に は 記 載 が な い た め に 、 選 手 や ト レ ー ナ ー の 感 覚 を 頼 り に す る こ と が 多 く 、 再 受 傷 の リ ス ク 管 理 に 細 心 の 注 意 を 払 わ な け れ ば な ら な い 。 大 腿 屈 筋 群 の 肉 離 れ の 際 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム の 時 間 軸 に 沿 っ た 流 れ と し て 代 表 的 な も の 51)を 下 記 に 示 す 。

Table 4 Example of rehabilitation program of hamstrings injury.

段階  トレーニングの目標 受傷後第1週目 アスレティックリハビリテーション開始前のテスト (関節可動域・生体計測・徒手筋力テスト・筋力測定(可能であれば)) 第1段階(受傷後2~3週) 可動域の改善 (保護期) 疼痛の緩和 (可動域トレーニング) 腫脹の除去 筋萎縮の改善 第2段階(受傷後3~4週) 可動域の改善 (訓練・前期) 筋力の増強 (安定性トレーニング) 筋持久力の増強 筋機能の安定化 受傷後4週目 アスレティックリハビリテーション中間評価のテスト (関節可動域・周囲径計測・徒手筋力テスト・筋力測定・各種ジャンプテスト・全身持久力テスト) 第3段階(受傷後4~5週) 運動性の増大 (訓練・後期) 筋力・筋持久力の強化 (機能性トレーニング) 全身持久力の強化 協調性・巧緻性の改善 第4段階(受傷後5~6週) 制限なしの筋負荷トレーニング (復帰期) 筋力・筋持久力の増大 (機能強化トレーニング) スピードの増強 協調性・巧緻性の最適化 専門種目への適応 受傷後6週目 アスレティックリハビリテーション終了時のテスト (関節可動域・周囲径計測・徒手筋力テスト・筋力測定・各種ジャンプテスト ランニングタイムトライアル・全身持久力テスト) 第5段階(受傷後6週目以降) 制限なしの筋負荷トレーニング (復帰後の強化期) 筋力・筋持久力の増大 (予防的機能強化トレーニング) 全力スピードの獲得 協調性・巧緻性の向上 専門種目への復帰 再発の予防 大腿屈筋群肉離れのアスレティックリハビリテーションの全体的流れと評価テストの時期

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受 傷 直 後 の 処 置 に 関 し て は 、 ス ポ ー ツ 外 傷 の 一 般 的 処 置 が と ら れ 、 そ の 後 ア ス レ テ ィ ッ ク リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に 進 み 、 競 技 復 帰 と な る が 、 こ の 外 傷 は 、 不 可 抗 力 と い う よ り も 、 コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ を 適 切 に 行 う こ と が 予 防 に つ な が る の で 、 日 頃 の ト レ ー ニ ン グ に ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ の 予 防 メ ニ ュ ー を 組 み 入 れ る こ と に 注 意 が 向 け ら れ て い る こ と が 特 徴 で あ る 。 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 遂 行 に あ た り 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 期 間 中 に 、 白 木 ら は 少 な く と も 3 回 は 評価 テ ス ト を行 う こ と が必 要 と し てい る 。① ~ ④は リ ハ ビリ テ ー シ ョ ン 全 期 間 に お い て 定 期 的 に 、 ⑤ ~ ⑦ は ラ ン ニ ン グ 開 始 後 に 適 宜 行 う こ と が 理 想 と さ れ る 。

Table5 Estimation during rehabilitation.

①関節可動域測定 股関節・膝関節 ②周囲径計測 左右の大腿囲(近位、最大位、遠位) 左右の下腿最大位 ③徒手筋力テスト 股関節の運動(屈曲・伸展・内旋・外旋・内転・外転) 膝関節の運動(屈曲・伸展) ④筋力測定(等速性筋力測定装置などの使用) 股関節の運動(屈曲・伸展 特に必要な場合は内旋・外旋・内転・外転) 膝関節の運動(屈曲・伸展) 以上の測定を健患側両側行う ⑤ジャンプテスト 両足垂直とびテスト 両足立ち幅とびテスト 片足垂直とびテスト 片足立ち幅とびテスト ⑥走能力テスト(リハビリテーション後期) ダッシュタイムトライアル(30m、50mなど) 中間疾走タイムトライアル(70m、80m、100m) シャトルランタイムトライアル ジグザグランタイムトライアル ⑦全身持久力テスト 最大酸素摂取量 無酸素性作業閾値などの測定

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こ れ ら を 記 録 し 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 段 階 に お い て の 回 復 程 度 を 分 析 し な が ら リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム を 遂 行 す る こ と が 理 想 と さ れ る 。

Table 6 Example of rehabilitation before and after running.

トレーニング目標 エクササイズ 物理療法 補装具 第1段階 可動域の改善 スタティックストレッチング 温熱療法 テーピング (保護期) 疼痛の緩和 アイソメトリックトレーニング エクササイズ後のアイシング サポーター (可動性トレーニング) 腫脹の除去 マットトレーニング 超音波療法 筋萎縮の改善 徒手抵抗エクササイズ 低周波治療 チューブエクササイズ マッサージ 単関節エクササイズ アッパーボディーサイクル 第2段階 可動域の改善 スタティックストレッチング 温熱療法 テーピング (訓練・前期) 筋力の増強 ダイナミックストレッチング エクササイズ後のアイシング サポーター (安定性トレーニング) 筋持久力の増強 マットトレーニング 超音波療法 筋機能の安定化 アイソキネティックトレーニング 低周波治療 各種マシントレーニング マッサージ バイクエクササイズ 複合関節エクササイズ トレーニング目標 エクササイズ 物理療法 補装具 第3段階 運動性の増大 ダイナミックストレッチング 温熱療法 テーピング (訓練・後期) 筋力・筋持久力の強化 PNFストレッチング エクササイズ後のアイシング サポーター (機能性トレーニング) 全身持久力の強化 各種マシーントレーニング 超音波療法 協調性・巧緻性の改善 ジョギング・ランニング 低周波治療 クローズドキネティックエクササイズ マッサージ バランスエクササイズ 各種ステップ 第4段階 制限なしの筋負荷トレーニング ダイナミックストレッチング 温熱療法 テーピング (復帰期) 筋力・筋持久力の増大 各種マシーントレーニング エクササイズ後のアイシング サポーター (機能強化トレーニング) スピードの増強 フリーウエイトトレーニング 超音波療法 協調性・巧緻性の最適化 スピードを高めたランニング 低周波治療 専門種目への適応 スピードを高めたステップ・ダッシュ マッサージ プライオメトリック系ジャンプ 専門種目のトレーニング 第5段階 制限なしの筋負荷トレーニング ダイナミックストレッチング 物理療法 テーピング (復帰後の強化期) 筋力・筋持久力の増大 各種マシーントレーニング 温熱療法 サポーター (予防的機能強化トレーニング) 全力スピードの獲得 フリーウエイトトレーニング エクササイズ後のアイシング 協調性・巧緻性の向上 全力ランニング 超音波療法 専門種目への復帰 全力ステップ・ダッシュ 低周波治療 再発の予防 プライオメトリック系ジャンプ マッサージ ランニング開始後のリハビリテーション内容 ランニング開始前のリハビリテーション内容 専門種目のトレーニング ラ ン ニ ン グ が 可 能 か 否 か を 判 断 基 準 と し た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン メ ニ ュ ー に お い て 、い わ ゆ る ス プ リ ン ト 動 作 を 行 う の は 第 4 段 階 に入 っ て か らで あ る 。スプ リ ン ト 動 作 導 入 に あ た り 、ま ず は 直 線 で の ジ ョ ギ ン グ か ら 開 始 し 、徐 々 に ス ト ラ イ ド 、 ピ ッ チ を 上 げ て ラ ン ニ ン グ ス ピ ー ド を 増 し て い く 。全 力 疾 走 の 50% 程 度の ス ピ ー ド で ラ ン ニ ン グ が 可 能 に な っ た 時 点 で 、 カ ッ ト ラ ン ニ ン グ や ジ グ ザ グ ラ ン ニ ン グ を 行 い 、 最 終 的 に 全 力 で の ラ ン ニ ン グ に つ な げ て い く こ と を 目 標 と す る 。 特 に 、 キ ッ ク 動 作 に 意 識 を 傾 け 、 キ ッ ク の 際 の 力 が 地 面 に 有 効 に 伝 わ る よ う に 、 ま た キ ッ ク 後 の 脚 が 後 方 に 流 れ な い よ う な ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム を 意 識 さ せ 、 再 発 の 防 止

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に 注 意 を 払 う 必 要 が あ る 。 ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ の 発 生 要 因 に は 競 技 者 の コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ や 、 ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム に 比 重 が 置 か れ て い る 。 特 に 、 ラ ン ニ ン グ フ ォ ー ム を 改 善 す る こ と に よ り 、 肉 離 れ の 予 防 に 繋 が る と 考 え ら れ る 。 ラ ン ニ ン グ の 接 地 の タ イ ミ ン グ は 、 ラ ン ニ ン グ の 速 度 に よ り 異 な る 。 ラ ン ニ ン グ ス ピ ー ド が 遅 い 場 合 に は 接 地 の タ イ ミ ン グ は ほ ぼ 重 心 の 真 下 に く る よ う に 、 一 方 、 ラ ン ニ ン グ ス ピ ー ド が 速 い 場 合 に は 接 地 の タ イ ミ ン グ を 重 心 よ り や や 前 に 置 く こ と で 股 関 節 の 伸 展 動 作 が 有 効 に 働 き 、 脚 筋 力 を 有 効 に 活 用 す る こ と が で き 、 受 傷 の リ ス ク を 軽 減 す る こ と が で き る 。 ま た キ ッ ク 後 の 下 腿 の 巻 き 込 み 動 作 の 遅 れ に よ り 、い わ ゆ る 脚 の 流 れ る フ ォ ー ム に な り 、ハ ム ス ト リ ン グ に 負 荷 が か か り 、 肉 離 れ の 発 生 し や す い フ ォ ー ム で あ る と 認 識 さ れ て い る 。 こ の 動 作 の 理 想 は 、 キ ッ ク 後 に 素 早 く 膝 関 節 の 屈 曲 が 始 ま り 、 こ れ と 同 時 に 股 関 節 の 屈 曲 が 起 こ り 、 膝 が 前 上 方 に 素 早 く 移 動 し 、 次 の 接 地 の 準 備 が で き て い る こ と で あ る 。 ス プ リ ン ト ド リ ル 動 作 に お い て も 、 脚 の 後 方 へ の 流 れ を 起 こ さ な い 様 な フ ォ ー ム で 行 う こ と が 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 陸 上 競 技 に お い て は 、 短 距 離 走 、 障 害 、 跳 躍 と い っ た 種 目 で は 全 力 疾 走 、 ま た は 全 力 疾 走 に 近 い ス プ リ ン ト 能 力 の 再 獲 得 が 競 技 復 帰 へ の 大 き な キ ー ポ イ ン ト と な る 。 ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ か ら の 復 帰 に 関 し て は 、 ジ ョ ギ ン グ か ら ラ ン ニ ン グ へ の 移 行 、 ラ ン ニ ン グ か ら ス プ リ ン ト 走 ( 加 速 走 ) へ の 移 行 の そ れ ぞ れ の ダ イ ン 会 の 各 局 面 に お い て 再 受 傷 し な い よ う に 十 分 に 注 意 す る 必 要 が あ る 。 ま た 、 陸 上 競 技 で は 、 競 技 用 ス パ イ ク 装 着 時 期 も 外 傷 、 障 害 を 再 受 傷 さ せ な い た め の 重 要 な 要 素 で あ る 。 特 に 、 ス プ リ ン ト 動 作 で は concentric 収 縮 か ら eccentric 収 縮 、 eccentric 収 縮 か ら concentric 収 縮 など 様 々 な 筋活 動 様 式 が考 え ら れ るの で 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム に お い て は 筋 活 動 様 式 も 考 慮 し た ト レ ー ニ ン グ 方 法 を 取 り 入 れ る 必 要 が あ る 。 陸 上 競 技 の 復 帰 直 前 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の ト レ ー ニ

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ン グ の ポ イ ン ト と し て 、 ① 体 幹 か ら 股 関 節 、 ハ ム ス ト リ ン グ へ と 連 動 す る 筋 力 ト レ ー ニ ン グ 、 ② ラ ン ニ ン グ 動 作 に 類 似 し た 筋 力 ト レ ー ニ ン グ 、 ③ 様 々 な 筋 収 縮 様 式 を 選 択 し て の ト レ ー ニ ン グ 、 ④ ラ ン ニ ン グ 、 特 に ス プ リ ン ト 動 作 へ 移 行 す る 段 階 へ の 配 慮 、 ⑤ ス パ イ ク シ ュ ー ズ の 装 着 の 見 極 め 、 ⑥ 正 し い フ ォ ー ム ( ス プ リ ン ト 、 跳 躍 、 投 擲 動 作 ) の 習 得 、 の 6 つ が 挙 げ ら れて い る 。 Table4 中 の 第 4 段 階 の 、機 能 強 化 トレ ー ニ ン グ期 に お い ては ス ピ ー ド増 加 や 、 動 き の 巧 み さ が 必 要 と さ れ る 。 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お い て は ど の 競 技 ・ 種 目 で あ っ て も 陸 上 競 技 短 距 離 ラ ン ナ ー の ア ス レ テ ィ ッ ク リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 方 法 に 準 じ る の が 望 ま し い と さ れ て い る こ と か ら も 、 や は り ラ ン ニ ン グ 動 作 に 着 目 し た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン メ ニ ュ ー の 考 案 が 必 要 と 考 え ら れ る 。 筋 は 身 体 運 動 を 生 み 出 す 最 も 直 接 的 な 組 織 で あ る が 、 同 じ 筋 で あ っ て も そ の 機 能 は 一 定 で は な く 、 筋 長 、 モ ー メ ン ト ア ー ム 、 動 作 速 度 、 大 脳 の 興 奮 状 態 な ど の 要 因 に よ っ て 筋 力 や 各 筋 の 筋 活 動 動 態 と い っ た 筋 機 能 が 変 化 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 特 に 、 筋 長 は 関 節 角 度 を 変 化 さ せ る こ と に よ り 容 易 に 変 わ る 要 素 で あ る 。 ハ ム ス ト リ ン グ 各 筋 の 多 く は 股 関 節 と 膝 関 節 を ま た ぐ 二 関 節 筋 で あ り 、股 関 節 、 膝 関 節 の 角 度 変 移 の 影 響 を 多 く 受 け る と 考 え ら れ る 。 肉 離 れ の 受 傷 局 面 に 関 し て も 設 置 直 前 の 股 関 節 屈 曲 時 に 起 こ る と い う 報 告 と 、 キ ッ ク 動 作 後 の 股 関 節 伸 展 時 に 起 こ る と い う 報 告 が あ り 、 関 節 角 度 の 変 化 に 伴 う 筋 機 能 の 変 化 、 筋 活 動 様 式 の 変 化 を 検 討 す る こ と は 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 上 記 の よ う に 、 多 く の 要 因 が 重 な り 発 生 す る と さ れ る ハ ム ス ト リ ン グ の 肉 離 れ で あ る が 、 疾 走 フ ォ ー ム と リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム が 別 々 に 取 り 上 げ ら れ て お り 、 こ れ ら を 関 連 付 け た 研 究 は あ ま り 見 受 け ら れ な い 。 陸 上 競 技 会 に お い て 多 く 見 受 け ら れ る 中 間 疾 走 時 の ハ ム ス ト リ ン グ 各 筋 の 筋 活 動 様 式 を 競 技 成 績 の 高 い 選 手 を 選 定 し 明 ら か に す る こ と で 、 ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ 発 生 要 因 を 検 討 す る こ と と し た 。

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さ ら に 、 陸 上 競 技 の 種 目 特 性 や ス プ リ ン ト 動 作 の 特 性 を 踏 ま え た 上 で 、 ト レ ー ニ ン グ に お い て 多 く 実 施 さ れ て い る ス プ リ ン ト ド リ ル 種 目 、 特 に ハ ム ス ト リ ン グ の 筋 活 動 に 重 点 を 置 い て い る 種 目 ( シ ザ ー ス 動 作 、 バ ウ ン デ ィ ン グ 動 作 、 Knee-bent-run 動 作 、 連 続 レッ グ ラ ン ジ動 作 ) に 着目 し た 。 シ ザ ー ス 動 作 は 、 ラ ン ニ ン グ に お け る 脚 の 挟 み 込 み 動 作 を 強 調 し た ト レ ー ニ ン グ 種 目 で あ り 、 よ り 素 早 い 挟 み 込 み 動 作 習 得 の た め の ト レ ー ニ ン グ 種 目 と し て 取 り 入 れ ら れ て い る 。 さ ら に 、 地 面 を キ ッ ク す る 際 に 後 方 に あ る 脚 を 前 方 へ 素 早 く 移 動 す る 際 に 、 ハ ム ス ト リ ン グ に 負 荷 が か か る こ と 、 ま た ス ピ ー ド の 増 減 や ジ ャ ン プ の 高 低 に よ り 負 荷 を 調 整 で き る こ と か ら も リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 機 能 強 化 ト レ ー ニ ン グ 期 に お け る 種 目 の 一 つ と し て 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。 バ ウ ン デ ィ ン グ 動 作 は プ ラ イ オ メ ト リ ッ ク ト レ ー ニ ン グ の 一 種 と と ら え ら れ 、 下 肢 筋 へ の 負 荷 と 全 身 の 協 調 運 動 を 習 得 す る 目 的 で ト レ ー ニ ン グ 種 目 と し て 活 用 さ れ て い る 。 滞 空 時 間 が ラ ン ニ ン グ よ り も 長 く 、 接 地 の 際 に 脚 全 体 に ラ ン ニ ン グ よ り も 大 き な 負 担 が か か る こ と が 予 想 さ れ 、 下 肢 筋 の 強 化 に 繋 が る ト レ ー ニ ン グ 動 作 で あ る と 考 え ら れ る 。 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お い て は 、 競 技 復 帰 直 前 の 機 能 強 化 ト レ ー ニ ン グ や 、 競 技 復 帰 後 の 予 防 的 機 能 強 化 ト レ ー ニ ン グ の 一 種 と し て 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。 Knee-bent-run 動 作 は Knee-bent-walk を 変 形 させ 、 よ り 強い 負 荷 の かか る 取 れ ニ ン グ 種 目 で あ る 。 体 幹 を 前 傾 さ せ 、 ハ ム ス ト リ ン グ の 伸 張 性 を 高 め た 上 で 行 う 動 作 で あ り 、 ラ ン ニ ン グ 動 作 に よ り 近 い 動 作 で の ト レ ー ニ ン グ が 可 能 で あ る 。 脚 が 後 方 へ 流 れ な い よ う に 留 意 し 素 早 く 前 方 へ 振 り 出 す 動 作 に よ り 、 ハ ム ス ト リ ン グ へ の 負 荷 も 高 ま る こ と が 考 え ら れ る 。 ス ピ ー ド を 変 化 さ せ 、 体 幹 の 前 傾 角 度 を 変 化 さ せ る こ と に よ る 負 荷 の 調 整 が 可 能 で あ り 、 ト レ ー ニ ン グ 種 目 と し て 活 用 さ れ て い る 。 連 続 レ ッ グ ラ ン ジ 動 作 は 、 ス プ リ ッ ト ジ ャ ン プ 動 作 を 変 形 さ せ た も の で あ り 、

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下 肢 筋 の 協 調 運 動 の 習 得 を 目 的 と し て ト レ ー ニ ン グ 種 目 と し て 用 い ら れ て い る 。 下 肢 を 前 後 に 素 早 く 移 動 さ せ る こ と か ら 、 筋 収 縮 形 態 の 素 早 い 変 化 が 要 求 さ れ 、 下 肢 の 各 筋 に 負 荷 を か け る こ と が 期 待 さ れ て い る 。 脚 の 切 り 替 え 時 間 の 増 減 や 体 の 沈 み こ み 具 合 に よ り 負 荷 の 調 整 が 可 能 で あ り 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お い て は 復 帰 期 の 機 能 強 化 ト レ ー ニ ン グ と し て 用 い ら れ て い る 。 上 記 4 種 目 の ド リル 動 作 中 に 、ハ ム ス トリ ン グ 各 筋が い か な る筋 活 動 を 行っ て い る か を 明 ら か に す る こ と で 、 そ れ ぞ れ の ス プ リ ン ト ド リ ル 動 作 と ハ ム ス ト リ ン グ 各 筋 の 筋 活 動 の 関 連 、 ス プ リ ン ト 動 作 に お け る 筋 活 動 と ス プ リ ン ト ド リ ル 動 作 に お け る 筋 活 動 の 関 連 や ハ ム ス ト リ ン グ 肉 離 れ の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム に お い て ど の タ イ ミ ン グ で の 実 施 が 望 ま し い か 、 を 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。

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第 二 章 【 実 験 1】陸 上 競技 短 距 離 走の 中 間 疾 走時 に お け るハ ム ス ト リン グ 各 筋 の 筋 活 動 様 式 に つ い て 2-1 対 象 男 子 陸 上 短 距 離 選 手 6 名 ( 年 齢 20.6±0.7 歳 、 身 長 172.5±2.9cm、 体 重 62.7 ±2.6kg、競 技 年 数 9.3±2.2 年 、100m ベ ス ト タ イ ム 10”64±0”25;平 均 値±標 準 偏 差 ) を 対 象 と し た 。 対 象 者 は 下 肢 に 運 動 に 支 障 を き た す 外 傷 、 神 経 疾 患 を 有 さ な い 者 と し た 。 対 象 者 に は 研 究 概 要 の 説 明 を 文 書 及 び 口 頭 に て 行 い 、 実 験 参 加 へ の 同 意 を 得 た 。 実 験 に 際 し 、 早 稲 田 大 学 の 人 を 対 象 と す る 研 究 等 倫 理 審 査 委 員 会 の 承 認 を 受 け た 。 2-2 動 作 課 題 動 作 課 題 は 全 天 候 型 陸 上 競 技 場 に て 60m の 全 力 疾走 ( 以 下 、 60m) を 行っ た 。 対 象 者 は 十 分 な ウ ォ ー ミ ン グ ア ッ プ を 行 っ た 後 に 、 動 作 解 析 の た め の マ ー カ ー お よ び 、 筋 電 図 の 電 極 を 身 体 に 貼 付 さ れ た 後 に 、 全 天 候 型 陸 上 競 技 用 ス パ イ ク の イ ン ソ ー ル 部 分 に フ ッ ト ス イ ッ チ を 装 着 さ れ た 上 で 、 ス タ ー ト ブ ロ ッ ク を 使 用 し た ク ラ ウ チ ン グ ス タ ー ト に よ り 全 力 疾 走 を 2 本 行 っ た 。疾 走 前 には 全 力 疾 走を 行 う よ う に 教 示 し た 。 1 本 目 は 60m 地点 に 貼 付 さ れた ゴ ー ル ライ ン を 駆 け抜 け 、70m 地 点 ま で の疾 走 を 行 っ た ( 以 下 、60m-Finish)。 十 分 な休 息 の 後 、被 験 者 の 同意 を 得 た 上で 2 本 目 の 試 技 を 行 っ た 。2 本 目 は 1 本 目 と 同様 に ク ラ ウチ ン グ ス ター ト に よ り全 力 疾 走 を 行 い 、60m 地 点 で フ ィ ニッ シ ュ 姿 勢( ゴ ー ル の際 に 体 幹 を前 方 へ 押 し出 す 姿 勢 ) を 取 ら せ た 。

(25)

2-3 動 作 測 定 対 象 者 の 4 箇 所に マ ー カ ーを 貼 付 し た。 貼 付 位 置は 全 て 体 の左 側 と し 、肩 峰 、 大 転 子 、 膝 関 節 裂 隙 、 外 果 と し た 。 動 作 撮 影 は ハ イ ス ピ ー ド カ メ ラ ( 朋 栄 社 製 VFC-1000,Japan)を 用 い て行 っ た。カ メ ラ 位 置 は 60m 地点 の レ ー ン 内側 ラ イ ン か ら 進 行 方 向 左 側 の 10m 地 点 と し 、被 験者 の 矢 状面 か ら の 撮影 を 行 っ た 。シ ャ ッ タ ー ス ピ ー ド は 1/125 秒 で 250Hz と し た 。撮 影 はス タ ー ト から ラ ン ニ ング 終 了 時 点 ま で 記 録 し た が 、解 析 に は 対 象 と し た 60m 地点 付 近 の 1 サ イ ク ル に 相当 す る 画 像 を 使 用 し た 。 ま た 、 筋 電 図 記 録 と の 同 期 は 左 足 の 足 底 に 設 置 し た フ ッ ト ス イ ッ チ の 信 号 を ホ ル タ ー 筋 電 計 ME6000( MEGA Electronics 社 製 ,Finland) に 記 録 す る こ と に よ り 行 っ た 。

(26)

2-4 表 面 筋 電 図 測 定

動 作 測 定 と 同 時 に 表 面 筋 電 位 を 測 定 し た 。筋 電 位 測 定 の 対 象 は BF-L、ST、SM、 大 腿 直 筋( 以 下 RF)と し た。電 極 貼 付部 の 皮 膚 抵抗 を 下 げ るた め に 剃 毛を 行 い 、 そ の 後 ア ル コ ー ル 綿 で 皮 脂 を ふ き 取 り 前 処 理 を 行 っ た 。そ の 後 、直 径 10mm の 銀 - 塩 化 銀 電 極 (Blue Sensor M,Ambu,Denmark) を 用 い て電 極 間 距 離 20mm に て 双 極 導 出 し た 。 電 極 貼 付 位 置 は Delagi ら の 方法 に 準 じ た。 大 腿 直 筋は 大 腿 前 面 で 膝 蓋 骨 上 縁 と 上 前 腸 骨 棘 を 結 ん だ 線 中 間 点 を と し た 。 大 腿 二 頭 筋 長 頭 は 坐 骨 結 節 と 腓 骨 頭 を 結 ん だ 線 分 の 中 点 と し た 。 半 腱 様 筋 は 、 大 腿 骨 内 側 上 顆 と 坐 骨 結 節 を 結 ん だ 線 分 の 中 点 と し た 。 半 膜 様 筋 は 、 大 腿 後 面 下 部 の 半 腱 様 筋 と 大 腿 二 頭 筋 と の 間 に で き る 逆 V 字 型 の頂 点 と し た。全 て の 筋に お い て、被 験 筋 を 軽く 収 縮 さ せ 、 筋 腹 の 位 置 を 確 認 し た 上 で 貼 付 位 置 を 決 定 し た 。 筋 電 位 の 導 出 は ホ ル タ ー 筋 電 計 ME6000 を 用 い 、内 蔵 の メ モ リー カ ー ド にデ ー タ を 保存 し 、実 験 終 了 後 に PC に デ ー タ を 転 送 し 、 解 析 ソ フ ト Megawin v.2.4 ( MEGA Electronics 社 製,Finland)に て raw デ ー タを 保 存 し た 。こ の 際 のサ ン プ リ ング 周 波 数 は 1000Hz と し た 。 実 験 に 際 し 、 モ ー シ ョ ン ア ー チ フ ァ ク ト に よ る ノ イ ズ の 混 入 を 最 小 限 に 抑 え る た め に 、電 極 コ ー ド を 可 能 な 限 り 伸 縮 性 テ ー プ に て 体 表 に 固 定 し た 。ま た 、 筋 電 計 自 体 も 被 験 者 の 腰 部 に ベ ル ト に て で き る 限 り 強 く 固 定 を し 、 走 運 動 の 妨 げ と な ら な い よ う に し た 。 得 ら れ た 結 果 の 筋 放 電 の ピ ー ク 値 は 、MMT の 肢 位 で 行 っ た 5 秒 間 の 等 尺 性 最 大 収 縮 時 の 筋 電 図 の 中 間 の 1 秒 間 の 平 均 RMS 値 を 100%と し て 、 相 対 値 化 し た 。

(27)

Figure5 Placement of reflective markers and electrodes

2-5 デ ー タ 解 析

60m地 点 で 得 ら れた 画 像 の うち 、Slocumら 52)、Williamら の 報 告 を 参 考に 、左

脚 が 接 地 し 、 そ の 後 離 地 、 そ し て 次 の 左 脚 接 地 ま で を 1 ス ト ライ ド と 定 義し 、さ ら に 1 ス ト ラ イ ド を 2 期 5 相 に 分 類 し た( Table7、Figure6)。

Table 7 The five phase of the sprint running cycle

contact phase

・ early contact phase foot strikeから膝関節最大屈曲位まで ・ late contact phase 膝関節最大屈曲位からtoe offまで

swing phase

・ early swing phase toe offから膝関節最大屈曲位まで

・ middle swing phase 膝関節最大屈曲位から股関節最大屈曲位まで ・ late swing phase 股関節最大屈曲位からfoot strikeまで

(28)

Figure 6 The five phase of the sprint running cycle

動 作 解 析 は 動 作 解 析 シ ス テ ム (Frame Dias System DKH 社 製 ,Japan) を 用い て 行 っ た 。 ラ ン ニ ン グ 動 作 時 の 接 地 と 離 地 の タ イ ミ ン グ の 同 定 を 行 い 、1 ス ト ラ イ ド に お け る 股 関 節 角 度 及 び 膝 関 節 角 度 の 時 系 列 変 化 を 算 出 し た 。

角 度 定 義 に は 、 身 体 に 貼 付 し た 4 つ のマ ー カ ー (肩 峰 、 大 転子 、 膝 関 節裂 隙 、 外 果 ) を そ れ ぞ れ 結 ぶ 二 直 線 の な す 角 度 を 用 い て 関 節 角 度 と し た 。

Figure 7 The hip angle( θ 1) and the knee angle( θ 2) during sprint running.

(29)

股 関 節 角 度( θ1):肩 峰 - 大転 子 を 結 ぶ直 線 の 地 面へ の 延 長 線と 大 転 子 -膝 関 節 裂 隙 を 結 ぶ 直 線 と が 作 る 角 度 。 進 行 方 向 へ の 角 度 を 正 と し 、 こ の 角 度 を 股 関 節 屈 曲 角 度 と し た 。 肩 峰 - 大 転 子 を 結 ぶ 直 線 の 地 面 へ の 延 長 線 よ り 負 の 方 向 で 大 転 子 - 膝 関 節 裂 隙 を 結 ぶ 直 線 と 作 る 角 度 を 股 関 節 伸 展 角 度 と し た 。 な お 、 伸 展 角 度 は マ イ ナ ス で 表 記 し た 。 膝 関 節 角 度( θ2):大 転 子 -膝 関 節 裂 隙を 結 ぶ 直 線の 膝 関 節 裂隙 へ の 延 長線 と 膝 関 節 裂 隙 - 外 果 の 作 る 角 度 を 膝 関 節 屈 曲 角 度 と し た 。 2-6 統 計 処 理 基 本 的 統 計 量 は 平 均 値 (mean) 標 準 偏差 ( SD) に て 表 し た。 60m 及 び 60m-Finish の ハム ス ト リ ング 各 筋 の 筋放 電 ピ ー ク値 ( % RMS)、 股 関 節 屈 曲 角 度 、膝 関 節 屈 曲 角 度 、筋 放 電 ピ ー ク の 時 期( % )に お い て Pearson の 相 関 係 数 を 用 い た 。有 意 水 準 は 5% 未 満と し た 。ピ ー ク 値 は 1000 分 の 1秒 に お け る RMS 値 で 比 較し た 。 2-7 結 果 2-7-1 60m figure 8 に 60m の 試 技 にお け る 1 サ イ ク ル の 一例 の 連 続 写真 を 示 す 。使 用 し た 画 像 は 被 験 者 が 60m 地 点 に 設 置 し た ハ イ ス ピ ー ド カ メ ラ の 前 を 通 過 し た 際 に 得 ら れ た 1 サ イ クル 分 の 画 像で あ る 。

赤 の 塗 り つ ぶ し は early contact phase を 、 緑 の 塗 り つ ぶ し は late contact phase を 、 水 色 の 塗 り つ ぶ し は early swing phase を 、 ピ ン ク の 塗 り つ ぶ し は middle swing phase を 、 灰色 の 塗 り つぶ し は late swing phase を 意 味す る 。

(30)

⑤ toe off ④ ③ ② ① foot strike

⑩ ⑨ ⑧ ⑦ ⑥

(31)

⑳ ⑲ ⑱ ⑰ ⑯

25

24

23

22

21

28 foot strike

27

26 Figure 8 Typical example of the continuous pictures in one cycle of 60m sprint running

(32)

Figure 9 に 60m の ス プ リン ト ラ ン ニン グ 中 間 疾走 局 面 に おけ る 1 サ イ ク ル の 股 関 節 、 膝 関 節 の 関 節 角 度 変 化 パ タ ー ン 、BF-L・ ST・ SM の 筋 電 図 を 示す 。

Figure 9 Typical example of the relation between joint degree and EMGs in one cycle of 60m sprint running.

Table8 %RMS during spriting

60m dash 60m finish p BF 178.7 (23.7) 204.5 (47.8) .086 ST 139.3 (20.7) 172.7 (28.8) .006 ※※ SM 144.7 (32.2) 181.8 (45.6) .050 ※ Average(SD) n=6 ※※:p<.01 ※:p<.05

(33)

Figure10 %RMS during sprinting. (※ ※:p<.01 ※ :p<.05)

Table8 と Figure10 に 60m と 60m-Finish に お け る % RMS 値 を表 記 し た 。 Figure10 の 赤 いグ ラ フ は 60m 走 を 行っ た 際 の 1000 分 の 1 秒 に お け るピ ー ク 値 を 相 対 値 化 し た も の で あ る 。ま た 、青 い グ ラ フ は 60m-Finish を 行 っ た 際 の 1000 分 の 1 秒 に お け るピ ー ク 値 を相 対 値 化 した も の で ある 。 統 計 処 理 に は 各 筋 に お い て 、 対 応 の あ る T 検 定 を 用 い て 検 定 し た 。 い ず れ も 有 意 水 準 は 5% 未 満と し た 。 60m に 比 べ て 60m-Finish で は ST、SM に お い て ピー ク 値 が 有意 に 高 値 とな っ た 。ま た BF に おい て は 60m に 比 べ て 60m-Finish で は ピ ーク 値 が 高 く出 る 傾 向 が 見 受 け ら れ た 。 60m ダ ッ シ ュの 試 技 に おい て 、 ス ター ト 地 点 か ら 60m 地 点 ま で の 6 名 の 被 験 者 の 平 均 タ イ ム は 7.22±0.27 秒 で あ った 。 ま た 、分 析 の 対 象と し た 60m 地 点 前 後 の 平 均 ピ ッ チ 数 は 4.17±0.21 歩/秒 で あ っ た 。ま た 、 股 関節 最 大 屈 曲角 度 の 平 均 値( 標 準 偏 差 )は 62.0±3.1 度 、膝 関 節 最 大 屈 曲角 度 の 平 均値 は 135.5±5.0 度 で あ っ た 。 60m 時 の BF、 ST、 SM 各 筋 の % RMS 値 、 ピ ーク 値 の 時 期、 股 関 節 屈曲 角 度、

(34)

膝 関 節 屈 曲 角 度 の 関 係 を 以 下 に 示 す 。

Table9 Relation between hamstring muscles and %RMS,the peak time of %RMS,hip angle and knee angle during 60m sprint running.

平均値 標準偏差 1 %RMS(%)a 178.67 25.96 2 ピーク値の時期(%)a 46.5 47.7 .350 3 股関節屈曲角度(deg)a 53 15.5 .734 .824 4 膝関節屈曲角度(deg)a 51 19.1 .834 ※ -.133 .430 注)a :n=6 :※p<.05 60m BF 相関係数 変数 1 2 3 平均値 標準偏差 1 %RMS(%)a 139.33 22.72 2 ピーク値の時期(%)a 32.8 46.3 -.782 3 股関節屈曲角度(deg)a 48 11.8 -.817 ※ .930 ※※ 4 膝関節屈曲角度(deg)a 48 7.2 .438 -.816 ※ -.584 a 注) :n=6 ※※:p<.01 ※:p<.05 60m ST 相関係数 変数 1 2 3 平均値 標準偏差 1 %RMS(%)a 144.67 35.26 2 ピーク値の時期(%)a 31.6 43.9 -.203 3 股関節屈曲角度(deg)a 50 14.8 -.224 .873 ※ 4 膝関節屈曲角度(deg)a 52 14.4 -.255 .070 .539 a 注) :n=6 ※:p<.05 60m SM 相関係数 変数 1 2 3

(35)

60m の BF に お い て は % RMS 値 と 膝関 節 屈 曲 角度 に 優 位 な相 関 関 係 が見 ら れ た (P<0.05)。 ま た 、 ピ ー ク 出 現 の 時 期 と 股 関 節 屈 曲 角 度 に も 有 意 な 相 関 関 係 が 見 ら れ た (P<0.05)。 ST にお い て は% RMS 値 と 股 関 節 屈曲 角 度 に (P<0.05)、 ピー ク 値 の出 現 時 期 と 股 関 節 屈 曲 角 度 (P<0.01)、 膝 関 節 屈 曲 角 度 ( P<0.05) に も 優 位 な 相 関 関 係 が 見 ら れ た 。 SM で は ピ ー ク 値 の 出 現 時 期 と 股 関 節 屈 曲 角 度 に 有 意 な 相 関 関 係 が 見 ら れ た (P<0.05)。 2-7-2 60m-Finish Figure 11 に 60m-Finish の 1 サ イ ク ルの 一 例 の 連続 写 真 を 示す 。

赤 の 塗 り つ ぶ し は early contact phase を 、 緑 の 塗り つ ぶ し は late contact phase を 、 水 色 の 塗 り つ ぶ し は early swing phase を 、ピ ン ク の 塗り つ ぶ しは middle swing phase を 、 灰 色 の 塗 りつ ぶ し は late contact phase を 意 味 す る 。

(36)

⑩ ⑨ ⑧ ⑦ toe off ⑥

⑮ ⑭ ⑬ ⑫ ⑪

⑳ ⑲ ⑱ ⑰ ⑯

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30 foot strike

29

28

27

26 Figure 11 Typical example of the continuous pictures in one cycle of 60m sprint running( finish motion is forward-bent posture.)

Figure 12 に 60m 地 点 で フィ ニ ッ シ ュ姿 勢 で ゴ ール し た ス プリ ン ト ラ ンニ ン グ 中 間 疾 走 局 面 に お け る 1 サ イ ク ル の股 関 節 、 膝関 節 の 関 節角 度 変 化 パタ ー ン 、 BF-L・ ST・ ST の 筋 電 図 を示 す 。

(38)

Figure 12 Typical example of the relation between joint degree and EMGs in one cycle of 60m sprint running( finish motion is forward-bent posture) .

60m-Finish に お いて 、ス ター ト 地 点 か ら 60m 地 点 ま で の 6 名 の 被 験 者の 平 均 タ イ ム は 7.28±0.21 秒 で あっ た 。 ま た、 分 析 の 対象 と し た 60m 地 点 前後 の 平 均 ピ ッ チ 数 は 4.15±0.21 歩/秒 で あ っ た。 ま た 、 この 試 技 に おけ る 股 関 節最 大 屈 曲 角 度 の 平 均 値 は 70.6±4.6 度 、膝 関 節 最大 屈 曲 角 度の 平 均 値 は 134.9±4.8 度 で あ っ た 。 60m-Finish 時 の BF、 ST、 SM 各 筋 の% RMS 値、 ピ ー ク 値の 時 期 、 股関 節 屈 曲 角 度 、 膝 関 節 屈 曲 角 度 の 関 係 を 以 下 に 示 す 。

Figure 1    Photographs of the knee flexor muscles  9) 10)
Table 3    External factors in hamstring injury 21) ・           天 候 ( 温 度 ・ 湿 度 な ど )   ・           運 動 を す る 場 所 の サ ー フ ェ ス   ・           シ ュ ー ズ   ・           ゲ ー ム ス ケ ジ ュ ー ル ( 1 シ ー ズ ン のゲ ー ム 予 定な ど )    ハ ム ス ト リ ン グ 各 筋 の 柔 軟 性 の 欠 如 、 不 適 切 な ウ ォ
Figure 3    Four step sequence of injury prevention research 42)
Table 4 Example of rehabilitation program of hamstrings injury.
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