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タイミングの精神生理学的研究

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Academic year: 2022

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博士(人間科学)学位論文 概要書

タイミングの精神生理学的研究

-時間情報処理と随伴陰性変動前期成分の関係に注目して-

A psychophysiological study on timing,

-focusing on the relationship between temporal information processing and the early component of contingent negative variation-

2008年7月

早稲田大学大学院 人間科学研究科

望月 芳子 Mochizuki, Yoshiko

研究指導教員: 山崎 勝男 教授

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タイミングは「反応のために有効な時間条件を創造する能力」である.多様な側面から研究が行わ れているが,精神生理学的な研究では随伴陰性変動(contingent negative variation; CNV)が指標 として用いられてきた.時間情報処理に関与するワーキングメモリや,注意資源配分に対応して前頭 部の CNV が増大することが報告されている.しかしながら,時間情報処理と反応運動の関係は未だ明 確に解明されていない.

従来のタイミング研究は foreperiod (WS-IS 間; FP)の間隔を操作してきた.しかしながら,本研究 は FP 間隔を固定して,試行間間隔(inter-trial interval; ITI)に操作を加え,ITI 効果(長 ITI 条 件の方が短 ITI 条件より RT が相対的に遅延する効果)を利用し,タイミングの難易条件を設定した.

CNV 振幅を時間情報処理,FP 中に出現する偏側性準備電位(lateralized readiness potential; FP- LRP)の立上り潜時を反応準備開始, LRP 立上り潜時を運動開始の指標に用いて,時間情報処理と反応 の時系列的関係を調べた.また,CNV を基にその機能的脳内発生部位について 3 次元脳内電流源密度 分析(low resolution brain electromagnetic tomography: LORETA)を行い,CNV の結果を検討した.

第 1 実験では,FP や ITI を操作して,継続的タイミング事態の時間間隔情報処理を CNV と RT の指 標から調べた.その結果,FP の記憶痕跡の減弱が反応の予期に影響し,痕跡の再構築が終わるまで,

キイ上げ運動を抑制したものと推察される.そのため,この抑制効果はワーキングメモリの記憶痕跡 の減弱に関係するものと考えた.

第 2 実験では,時間再生課題によって時間間隔情報処理や前期 CNV と,ワーキングメモリの関係を 調べた.第 1 実験では時間間隔のワーキングメモリと ITI 効果の関係を,充分に確認することができ なかった.しかしながら,第 2 実験では,前頭部の前期 CNV の振幅が,短い保持条件よりも長い保持 条件で増大したために,記憶痕跡の再構築に必要な注意資源の配分は前期 CNV と密接に関係している ことが明らかになった.

第 3 実験では,FP を 3 s に固定したまま ITI の長さに変化(3 s,4 s,6 s)を与えて,時間間隔 情報処理と前期 CNV の関係を調べた.第 1 実験,第 2 実験に使用した ITI と保持時間は 3 s ,9 s,

10 s であったが,ITI の効果と時間情報処理や前期 CNV との関係を調べるためには,3 s~9 s 間の ITI も調べる必要があったからである.実験の結果,6 s の ITI にも効果のあることが明らかになった.

ITI の 3s 条件よりも ITI の 6 s 条件では,時間間隔の検索に必要な注意資源の配分が増加する結果,

反応の準備や運動反応に必要な時間条件が変化して,タイミングの難易に影響したものと思われる.

第 4 実験では,CNV, LRP を指標にして,CNV のパラダイム遂行時における時間間隔の検索と運動準 備の関係を検討した.第 3 実験までの指標は CNV に限定していたために,運動の準備を明確に把握す ることができなかったからである.その結果,時間間隔の検索は FP の早期から生じていることが明ら かになり,時間間隔の情報処理の活動を大きく要求する条件は,運動準備の開始が早く,反応開始も 早期化することが明らかになった.また, LORETA の分析から,前期 CNV は時間情報処理に関与する 補足運動野,そして後期 CNV は楔前部,帯状回前部が推定された.

5実験では,若年群と中高年群を対象にして,前頭部の機能と時間情報処理の関係や,前期CNV と加齢効果の関係を調べた.その結果,RTに群間差はなかったにもかかわらず,中高年群の前頭部の 前期 CNV と後期 CNVは,若年群よりも増大していた.中高年群の前期 CNVの振幅増大は,前頭部 の認知情報処理の増大を示唆している.また,後期 CNV の振幅増大は動機づけといった心理的な要 因の高まりと考えることもできる.中高年群は前頭部の認知情報処理活動と,動機づけなどの心理的 要因があいまって,パフォーマンス補償の達成に大きく貢献したものと思われる.

総合考察では,以上の研究結果をまとめ,時間情報処理と反応運動の時系列的関係を考察した.本 研究では,CNV のパラダイムによって,タイミング反応の時間情報処理と反応情報処理の関係を検討 した.脳内の情報処理を調べた結果,時間情報の処理段階が運動情報の処理開始に影響を及ぼすこと や,「その時」まで適切に反応を抑制することが,重要であることも明らかになった.LORETA によっ て CNV の脳内発現領域を推定する手法は,本研究の CNV の現象を,さらに強化したものと思われる.

また,高年齢で前頭部の質量が低下した場合にも,パフォーマンスの低下を前頭部の活動が補償する ことから,補償メカニズムが機能すれば,当然前頭部の前期 CNV に反映するものと思われる.

参照

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