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アジア太平洋研究科 博士学位論文要旨

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Academic year: 2022

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アジア太平洋研究科 博士学位論文要旨 教員養成課程の改定が教員の質に与える影響について

―マラウイの初等教員養成政策を事例として―

国際関係学・4010S006-1 JUN KAWAGUCHI 川口 純 主査 黒田一雄教授

Keywords : 教育文化 教員養成機関 , 教員のモチベーション

[目的]

本研究の課題は、これまでのマラウイの初等教員養成課程の改定が 初等教育の質に与えた影響を検証し、教育の質低下の全体的なメカニ ズムを明らかにすることである。マラウイの初等教員養成課程は 1964年の独立以降、5度に渡り、改定されている。まず、それぞれ の教員養成課程が輩出してきた教員が、周囲(校長先生、初等教員ア ドバイザー)からどのような評価を受けているのか、明らかにする。

そして、当該教員養成課程の改定に対して既存教員や保護者は、いか なる影響を受け、どのような反応を示してきたのか、調査結果を基に 提示する。その後、5度に渡る教員養成課程の改定が、結果として初 等教育全体にどのような影響を与えてきたのか、全体的なメカニズム を示す。つまり、単に各教員養成課程の実施に対する個別の政策評価 を実施するのではなく、初等教育の質が変化していく構造を教員養成 課程という1つの軸を決め、国際援助機関、教育行政官、教員、保護 者、児童など複数の異なる観点から包括的に捉えて、調査と分析を実 施していく。そして、上記の分析結果を用いて初等教育の質低下の全 体的なメカニズムを明らかにする。最後に、今後のマラウイにとって 望ましい教員養成課程、並びに教員の質向上に資する政策提言を行う。

[研究の方法]

本研究の研究方法は、以下の4点に大別できる。1点目は、2次デ ータを用いた教育生産関数分析を主とした研究手法である。2点目は、

初等学校での質問紙調査を用いた教員の教授能力評価である。3点目 は、初等学校が保存している進級記録の調査である。最後の4点目は、

これまでのマラウイの教員養成政策や教員養成課程に対する評価調 査である。以上の4点は共通して、まず量的調査を実施し、その後、

関係者へのインタビュー調査を基にした質的調査を組み合わせると いう研究手法を採用した。いずれの調査においても、定量的な分析手 法と定性的な分析手法を組み合わせることにより、収集データの信頼 性を高め、調査結果に説得力を持たせた。特に中核をなすデータは、

2007年2月から2011年10月までの4年間で計7回、実施した現地 調査によって収集したインタビュー調査結果である。

[本論の構成]

本論は序章と終章を含めて9章から成る。まず1、2章で関連先行 研究を整理し、3章でSACMEQデータを用いた実証研究結果を示す。

4~6章で現地調査を基にした調査結果を示す。7章で調査結果の分 析、考察を実施し、終章でまとめとする。以下、各章の概要を示す。

まず、第1章では、本論の概念的フレームワークに関する先行研究 を踏まえたうえで、マラウイの初等教育と教員養成政策を概観する。

特に、独立以降のマラウイ社会の変動状況について簡単に説明をした 後、マラウイの初等教育の全体的な概要を示す。政策文書やマクロレ ベルでの研究成果のみならず、社会の中における初等学校の位置づけ や保護者と教員の関係性などミクロレベルからの視座も踏まえて整 理していく。そして、初等教員養成課程のこれまでの改訂状況につい て、改訂がなされた背景を踏まえつつ述べる。

第2章では、教員養成に関する先行研究を理論的フレームワークと して整理する。マクロレベル、アフリカ地域レベル、国レベルに分け、

これまで途上国において教員養成政策が実施されてきた背景や方針 について既存研究を概観する。また、教育開発の視点から、教員養成

政策の実施に当たり、いかなる研究・議論がなされた上で援助機関が 関わってきたのか、議論の内容について整理する。

第3章では、教員や児童に関わる大規模データ(SACMEQ)を用い て、マラウイの教員の教授能力や児童に与えている影響を客観的に示 す。まず教員や児童の学力を統計的に示す。その後、教育生産関数分 析を実施する。そして分析結果を基に、第2章で述べたマラウイの教 員養成改革が目指してきた方向の整合性を検証すると共に、第4章以 降での現地調査での着目点を導き出す。

第4章~6章では、現地調査の結果について述べる。まず、第4章 では、2007年からマラウイに計7回に渡り10カ月超滞在して、各 教員養成課程で教員免許を取得した教員が実施している授業を観察 した。そして、を対象に質問紙調査とインタビュー調査を実施した。

訪問した学校は、28校に上り、アンケート結果は、総計で200近く 収集した。調査結果の分析から、各教員養成課程から輩出された各教 員の対外評価と教育に対するモチベーションの度合いを析出した。

第 5章では教員が児童の進学に与えている影響に関する現地調査 結果を述べる。まず、349名の児童の通学記録を基に1人1人の児童 がどのような通学軌跡(進学、留年、退学、転校など)を辿ったのか、

経年変化を縦続的に追跡した。その後、全ての対象児童の家庭特性を 調べた。また、児童の家族に対してインタビュー調査を用い、児童の 進学に関する調査を実施した。そして、調査結果を基にデータベース を構築した。当該データベースに担任を受け持った教員を適合させ、

担任が児童の進学に与えている影響を抽出した。そして、各教員を教 員養成課程別に分け、教員のパフォーマンスを析出した。

第6章では、教員養成課程に対する関係者の評価について、インタ ビュー結果を示す。インタビューの対象は、政府関係者、学校関係者、

保護者の3つのレベルに分け、実施した。インタビューの方法は、政 府関係者と学校関係者に関してはこれまでの調査の対象者を活用し、

保護者に関しては雪だるま方式に、半構造化したインタビューを実施 した。質問内容は、これまでの教員養成課程に対する評価と教員に求 める資質、今後の望ましい教員養成についてである。

第7章では、これまでの研究結果を全て統合して、分析、考察を加 えた。5度に渡る教員養成課程の改定が初等教育の質にどのような影 響を与えてきたのか、全体的なメカニズムを明示した。さらに、今後、

起こり得る副次的影響についても推測する。そして、本研究で得られ た示唆を学術的な貢献と政策提言の2点に大きく分け、述べる。まず、

学術的な貢献としては、第1に、今日の教員養成政策の国際的な潮流 を教育的観点、かつ長期的な観点から捉え直す。そして、援助機関が 実施する教員養成プロジェクトに関する評価基準の改善点について も言及する。最後に、長期的な国家形成のための教員養成課程の重要 性と他の教育プロジェクトとの差別化の必要性を政策提言として述 べて、結びとする。

[主要参考文献]

Kunje.D and Lewin K (2000) The costs and Financing of Teacher Education in Malawi.MUSTER Discussion Paper 2. CIE:

University of Sussex.

Kunje, D. (2002) The Malawi Integrated In-Service Teacher Education Programme: An Experiment with Mixed-Mode Training, International Journal of Educational Development, Vol.22 n3-4 pp.305-320 Apr-Jul 2002.

参照

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