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48 大谷拓哉 雄賀多聡 三和真人形態 機能第 15 巻第 2 号 < 原著論文 > 転子果長測定における大転子測定点に関する調査 - 理学療法士を対象として - 大谷拓哉 1) 雄賀多聡 1) 1) 三和真人 1) 千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 ( 受付 :2

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<原著論文>

転子果長測定における大転子測定点に関する調査

-理学療法士を対象として-

序 文

 下肢長測定は骨折や関節拘縮のような下肢長の短縮が 予想される場面で実施される基本的測定の一つである。 下肢長には転子果長と棘果長の2種類があり、転子果長 は大転子から外果までの距離である1)。理学療法士は医 療専門職の中で転子果長を測定する機会の多い職種の一 つであり、理学療法士養成校で用いられている評価法に 関するテキスト1-8)には転子果長の測定法が記載されて いる。転子果長測定時には大転子および外果の中の特定 の1点を測定点とし、この測定点間の距離を測定するこ とになる。大転子は生体の骨ランドマークの中でサイズ が大きいものの一つであり、大転子のどの部位に測定点 を設定するかで転子果長の数値が変動する。つまり転子 果長測定において大転子の測定点をどこに設定するかは 重要なポイントであるが、先述した評価法のテキストに は転子果長測定時の大転子測定点の部位について明確に 記載されていないものが多い(表1)。テキストに掲載 されている図から測定点の大まかな部位を判断できるも

大谷拓哉

1)

、雄賀多聡

1)

、三和真人

1) 1)

千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻

(受付:2016 年7月 25 日、採択:2016 年 10 月 14 日)

要 旨

 本研究の目的は、理学療法士が転子果長測定時にランドマークとする大転子のどの部位を測定点としているかを明ら かにすることである。対象は6か所の医療施設に勤務する理学療法士33名とした。大腿骨模型を用いて、転子果長測定 時に大転子の中で測定点とする部位にマーカーを貼付してもらった。マーカーをデジタルカメラで撮影し、画像解析ソ フトを用いてマーカー座標を同定した。分析の結果、多くのマーカーが大転子の最外突出部付近に存在したが、大転子 の上端部、下部、後部にもマーカーが存在し、全体として広範囲な分布が認められた。転子果長測定における検者間信 頼性向上のためには大転子測定点の統一が必要と考えられる。

キーワード

転子果長、大転子、測定点 のもあるが、これらも大転子の最上端付近を測定点とす るテキストと最外突出部付近を測定点とするテキストに 二分される。  このように、養成校で用いられるテキストにおいても 転子果長測定時の大転子の測定点の部位は統一されてい ない。従って、転子果長を測定する測定者間で大転子測 定点が異なる可能性があるが、測定者が大転子のどの部 位を測定点として転子果長を測定しているかについては これまで調べられておらず不明である。転子果長測定時 に大転子のどの部位を測定点に設定し、測定点がどのよ うに分布するのかに関する情報は、大転子測定点の統一 の必要性を判断したり、統一した大転子測定点を検討し たりする際の有用な参考データになると考えられる。  そこで本研究では転子果長を測定する機会の多い理学 療法士を対象とし、転子果長測定時にどの部位を大転子 の測定点としているのかを明らかにすることを目的とす る。

研究方法

1. 研究の概要  本研究では理学療法士を対象とし、大腿骨の模型を用 いて、転子果長測定時に大転子の中で測定点としている 部位にマーカーを貼付してもらった。貼付したマーカー 著者連絡先:大谷拓哉        千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻        260-0801 千葉県千葉市中央区仁戸名町645-1        TEL 043-305-2125 FAX 043-305-2128        E-mail: [email protected]

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をデジタルカメラで撮影し、パーソナルコンピュータに 取り込んだ画像からマーカーの座標を同定した。生体を 対象とした場合、マーカー座標を同定するための原点や 座標軸を正確に設定することが困難であったため、本研 究では骨模型を用いた。  本研究ではマーカーの撮影からマーカー座標の同定ま での工程を1名の研究者が担当した。そこで上記実験に 先立ち、この研究者のマーカーの撮影からマーカー座標 の同定までの工程に関する検者内信頼性を級内相関係数 (intraclass correlation:以下、ICC)を用いて検証した。  なお、本研究は著者が所属する機関の研究等倫理審査 委員会の承認を受け実施した(申請番号2012-016)。 2. マーカー撮影とマーカー座標同定に関する検者内信 頼性の検証(実験1) 1)方法  右大腿骨模型(A35/1R、日本スリービー・サイエンティ フィック)を、骨頭が上で大腿骨長軸が外側に5°傾斜 するように石膏を用いて台座に固定した(図1)。本模 型はヨーロッパ人の40歳代男性の骨格標本から型を とって作製されたものである9)  大腿骨模型の大転子の中の任意の8か所にマーカー (直径3mm)を貼付し、デジタルカメラを用いて各マー カーを2回撮影した(図2)。2回の撮影は24時間以上 の間隔をあけて実施した。撮影時のカメラレンズと大転 子までの距離は6cm に統一した。撮影したマーカー画 像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像解析ソフ ト ImageJ 1.45s(National Institute of Health) を 用 い てマーカーの中心座標を同定した(図3)。8か所に貼 付したマーカーの撮影1回目と2回目の中心座標データ を用いて ICC(1, 1)10)を算出した。 3. 転子果長測定時の大転子測定点の同定(実験2;本 実験) 1)対象  対象は6か所の医療施設に勤務する理学療法士33名 とした。各施設の理学療法部門責任者より紹介された理 学療法士に対し研究内容の説明を行い、研究参加につい て同意を得られたものを対象とした。実験に先立ち、対 図1 図1 大腿骨模型  大腿骨模型の骨頭が上で大腿骨長軸が外側に5°傾斜するよ うに石膏を用いて台座に固定した。 象者からは研究参加に関する同意書を得た。各医療施設 の種類と対象者数および対象者の臨床経験年数を表2に 示した。 2)方法  各被験者に実験1で用いたものと同じ大腿骨模型を提 示し、転子果長を測定する際に大転子の中で測定点とす る部位にマーカーを貼付するよう指示した。この際、被 験者には模型に自由に触れることを許可した。マーカー が貼付された大腿骨模型をデジタルカメラを用いて撮影 した。撮影した画像をパーソナルコンピュータに取り込 表1  転子果長測定法が記載されている各テキストにおける大転子測定 点の部位 表1 テキストA2) 最上端 テキストB3) 明確な記載なし。図から判断すると最上端か? テキストC4) 明確な記載なし。図から判断すると最上端か? テキストD1) 明確な記載なし。図から判断すると最外突出部か? テキストE5) 明確な記載なし。図から判断すると最外突出部か? テキストF6) 明確な記載なし。図から判断すると最外突出部か? テキストG7) 明確な記載はなく、図からも判断困難 テキストH8) 明確な記載はなく、図からも判断困難

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デジタルカメラ 大転子 大腿骨模型 カメラスタンド 外側顆の中心と内側顆の中心を 通る直線 図2 撮影 図2 マーカー撮影  大転子に貼付されたマーカーを、デジタルカメラを用いて撮影した。カメラは、大腿骨模型の外側顆 の中心および内側顆の中心を通る直線に垂直になるよう設置した。外側顆と内側顆の中心を通る直線は 模型を石膏で固定する前に確認した。大転子とカメラレンズまでの距離は6cm とした。 み、ImageJ 1.45s を用いて各マーカーの中心座標を同定 した。また、各被験者に対し「マーカーを貼付した部位 は、言葉で表現するとどのような部位か」という質問を し、回答を得た。マーカー撮影条件およびマーカー中心 座標同定の工程は実験1と同じとした。マーカーの分布 を定量化するために、すべてのマーカーが内包される枠 を撮影した画像上に描き、その枠を25分割して各マス目 に含まれるマーカー数をカウントした(図4)。  大転子測定点の部位と臨床経験年数との関係を検証す るために、マーカーの横軸・縦軸座標と臨床経験年数と の相関についてスピアマンの順位相関係数を用いて検証 した。さらに各施設間で大転子測定点の部位に差異があ るかどうかを検証するために、各施設間のマーカーの横 軸・縦軸座標を一元配置分散分析を用いて比較した。な お、施設 D の被験者は1名であったため、マーカー座標 の施設間の差異の検証については施設 D を除く5施設の データを用いた。統計学的解析には R2.8.1を用いた。統 計学的解析の有意水準は5%未満とした。

結 果

1. マーカー撮影とマーカー座標同定に関する検者内信 頼性の検証(実験1)  大転子の8か所に貼付したマーカーについて、撮影1 回目と2回目の中心座標は表3のとおりであった。この データを用いて横軸座標および縦軸座標のそれぞれにつ いて ICC(1,1)を算出したところ、横軸座標について は ICC(1,1)=0.999(95%信頼区間:0.997-0.999)、 縦軸座標については、ICC(1,1)=0.999(95%信頼区間: 0.999-0.999)であった。

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表2 各施設の種類と対象者数および対象者の臨床経験年数 対象者の臨床経験年数は平均値±標準偏差(範囲)で示した。 表2 種類 対象者数(人)と 性別 対象者の臨床経験年数 (年) 全施設(6 施設) 33(男 20、女 13) 4.6 ± 4.1 (1~22) 施設A 病院 11(男 6、女 5) 2.6 ± 1.8 (1~6) 施設B 病院 6(男 3、女 3) 4.7 ± 2.6 (2~9) 施設C 病院 5(男 5、女 0) 7.8 ± 8.6 (1~22) 施設D 病院 1(男 1、女 0) 3.0 ± 0.0 (3~3) 施設E クリニック 6(男 4、女 2) 4.3 ± 1.9 (2~7) 施設F クリニック 4(男 1、女 3) 6.8 ± 3.3 (3~11) 0 1000 2000 3000 縦軸座 標 0 1000 2000 3000 4000 横軸座標 図3 図3 マーカー中心座標の同定  Image J を用いて各マーカーの中心座標を同定した。図に示すように、横軸座標についてはマー カーの左辺と右辺の座標の平均値を、縦軸座標についてはマーカーの上辺と下辺の座標の平均値 を採用した。8か所に貼付したマーカーそれぞれについて中心座標を算出した。横軸座標、縦軸 座標は、マーカーの中心が左上の角(原点)から何番目のピクセルに存在するかを示している。 本研究では4896×3672の画素数で写真を撮影しているため、写真の左上の角のピクセルが座標 (1, 1)、右下の角のピクセルが座標(3672, 4896)となる。距離に変換すると1pixel =0.02406 mm であった。 2. 転子果長測定時の大転子測定点の同定(実験2;本 実験)  大転子に貼付されたマーカーは大転子の広範囲に分布 していた(図4(a))。25分割したマス目に含まれるマー カー数を表4に示した。最もマーカー数が多かったのは D3(大転子の中心部よりやや下部)のマス目で10個で あった。これは全マーカーの約30.3%(10/33個)にあ たる。D3の周囲のマス目には2~4個のマーカーが存 在した。大転子の上端部(A2、A3、A5)や大転子の下 部(E3、E4、E5)、大転子の後部(C1)などにもマーカー が存在した。最も上部に位置したマーカー(A3のマー カー)と、最も下部に位置したマーカー(E3の2つのマー カーのうち下位のもの)の垂直距離差を測定したところ、 約3.7cm であった(図5)。  マーカーの横軸座標および縦軸座標と臨床経験年数と の相関関係についてスピアマンの順位相関係数を用いて 検証したところ、横軸座標と臨床経験年数ではσ= 0.036、p =0.844であり有意な相関は認められなかった。 縦軸座標と臨床経験年数についてもσ=-0.334、p = 0.057であり、有意な相関は認められなかった(図6)。

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図4 マーカーの分布と枠の描画 (a)実際のマーカー分布。 (b) すべてのマーカーが内包される枠を画像上に描き、それを25分割した。各マス目に含まれるマーカー数をカウントした。 各マス目の大きさは縦7.4mm、横3.88mm であった。 (a) (b) 図4 1 2 3 4 A B C D 5 E 表3 8か所に貼付した各マーカーの中心座標 横軸座標、縦軸座標は、マーカーの中心が写真の左上の角(原点)から何番目の ピクセルに存在するかを示している。本研究では4896×3672の画素数で写真を 撮影しているため、写真の左上の角のピクセルが座標(1, 1)、右下の角のピクセ ルが座標(3672, 4896)となる。距離に変換すると1pixel =0.02406mm であった。 表3 撮影1回目 撮影2回目 撮影1回目 撮影2回目 1 2128.5 2123.5 1194 1205.5 2 2682.5 2665.5 1474 1474 3 2139.5 2137 1712.5 1712.5 4 2578.5 2570 2150.5 2142.5 5 2800 2797.5 1008 1005.5 6 2433 2433 1106.5 1109.5 7 2271.5 2279.5 1443.5 1452 8 1890.5 1912.5 1942.5 1942 横軸座標 縦軸座標 マーカーNo.  一元配置分散分析を用いて各施設間のマーカー横軸・ 縦軸座標を比較したところ、横軸座標については p = 0.747、縦軸座標については p =0.174であり、どちら も施設間で有意差は認められなかった。  「マーカーを貼付した部位はどのような部位か」とい う質問に対する回答は表5の通りであった。最も多かっ たのが “最も突出した部位” という回答であり、18名が そのように回答していた(表現は異なるがほぼ同じ意味 の回答を含む)。次に多かったのが “遠位から触診してぶ つかる部位、引っかかる部位” というものであり、8名 であった。それ以外では、“触診しやすい部位” という回 答や上端部を示す回答(“最上端”“上端で体表から触りや すい中点”“近位から触診し、最初にぶつかる部位”)など が認められた。

考 察

 本研究では、マーカーの撮影からマーカー座標同定ま でを一人の研究者が担当した。そこで、この研究者の上 記工程における検者内信頼性を ICC(1, 1)を用いて検 証した。その結果、横軸座標、縦軸座標ともに ICC(1, 1) で0.99以上となり、高い信頼性があることが確認できた。  マーカーは D3のマス目に最も多く存在し、その周囲 のマス目にも複数のマーカーが分布していた。マーカー 部位に関する回答(表5)によると、C3、C4、D3、D4 にマーカーを貼付した被験者の多くが “最も突出した部 位” に測定点を設定していた。良好な再現性を得るため

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図5 最上部のマーカーと最下部のマーカーの垂直方向の距離差 表4 25分割した各マス目のマーカー数 25分割した各マス目に含まれるマーカー数を示した。D3の マス目に最も多くのマーカーが認められた(10/33個。約 30%)。D3の周囲にも2~4個のマーカーが存在した。大転子 の上端部(A2、A3、A5)や下部(E3、E4、E5)、後部(C1) などにもマーカーが認められた。 表4 1 2 3 4 5 A 0 1 1 0 1 B 0 0 0 0 1 C 2 0 3 2 0 D 0 0 10 3 1 E 0 0 4 2 2 図5 約3.7 cm には “最も突出した部位” が大転子測定点として適切であ るとする理学療法士が多いことがうかがえる。ただし、 B5や C1のマス目にマーカーを貼付した被験者もマー カーを貼付した部位を “最も突出した部位” と回答してい ることから、理学療法士によって “最も突出した部位” の 認識が異なるといえる。これは、例えば「大転子の最も 突出した部位を測定点として転子果長を測定してくださ い」と指示しても、理学療法士によって異なった部位を 測定点に設定するということなので、注意が必要である。  E3、E4、E5の大転子の下部にあたるマス目には合わ せて8つのマーカーが存在していた。このマス目にマー カーを貼付した被験者は、“遠位から触診してぶつかる 部位、引っかかる部位” と回答しているものが多く、大 転子の測定点を設定する際に、遠位から触診してぶつか る部位を利用する理学療法士もある程度の割合で存在す るといえる。ほかにも A2、A3、A5の上端部付近を測定 点としているものや大転子前部の D5に測定点を設定し ているものもおり、全体として大転子の広範囲に測定点 が分布していた。  最も上部に位置したマーカーと最も下部に位置した マーカーの垂直方向の距離は約3.7cm であり、これは2 名の測定者が同じ患者の転子果長を測定した場合、 3.7cm 程度の差異が生じる可能性があることを示してい る(もちろん外果側の測定点の位置や、正確に計測でき るという技術的要因にも影響されるが)。一般的に転子 果長は1m に満たない値を示すことを考慮すると、この 3.7cm の差異は無視できないものであろう。転子果長測 定の検者間信頼性の向上のためには、大転子測定点の統 一が必要である。  今回、大転子測定点の分布に影響を与える要因を探索 する目的で、マーカー座標と臨床経験年数との相関およ び施設間のマーカー座標の差異について検証した。その 結果、マーカー座標と臨床経験年数との間に有意な相関 は認められず、また、施設間でマーカー座標に有意差は 認められなかった。つまり臨床経験年数や勤務施設の違 いは大転子測定点分布の重大な決定因子ではないと推察 される。今後、測定点の分布に影響する要因をさらに調 査していく必要があろう。  本研究結果から、転子果長を測定する際の大転子測定 点の分布が広範囲であるため、測定の検者間信頼性向上 のためには統一した測定点の必要性が示された。測定点

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大谷拓哉・雄賀多聡・三和真人

形態・機能 第15巻第2号

図6 マーカー中心座標と臨床経験年数との相関 (a)マーカー横軸座標と臨床経験年数との相関。 (b)マーカー縦軸座標と臨床経験年数との相関。  横軸座標、縦軸座標は、マーカーの中心が写真の左上の角(原点)から何番目のピクセルに存在するかを示している。本研究で は4896×3672の画素数で写真を撮影しているため、写真の左上の角のピクセルが座標(1, 1)、右下の角のピクセルが座標(3672, 4896)となる。距離に変換すると1pixel =0.02406mm であった。 学療法士が測定点として採用し、他の人体寸法計測法で も測定点として用いられている大転子の “最も突出した 部位” は、測定点の第1の候補として挙げられよう。た だし先述したように、“最も突出した部位” といっても測 定者によってその部位が異なるため、注意が必要である。 また、大転子の上端部も候補の一つとして挙げられる。 大転子の最上位の点は人体寸法の計測法で測定点の一つ として採用されており、転子果長の測定法を記載した理 学療法関連のテキストでも測定点として用いられてい る。本研究でも複数の理学療法士が大転子の上端付近を 測定点として採用している。以上より、大転子の上端部 (b) 0 500 1000 1500 2000 2500 0 5 10 15 20 25 縦 軸 座 標 臨床経験年数(年) 0 500 1000 1500 2000 0 5 10 15 20 25 横 軸 座 標 臨床経験年数(年) 図6 σ = 0.036 p = 0.844 σ = -0.334 p = 0.057 を統一するにあたりいくつかの測定点の候補について信 頼性を検証していく必要がある。本研究で最も多くの理 学療法士が D3のマス目にマーカーを貼付しており、D3 およびその周囲のマス目にマーカーを貼付した被験者の 多くが、“最も突出した部位” を測定点としていた。国内 でこれまでに報告されている人体寸法の計測法11-15) は、大転子の測定点として大転子の最も外側に突出した 点と大転子の最上位の点の2点が採用されている。D3 およびその周囲のマス目の “最も突出した部位” とされた 測定点は、この人体寸法の計測法における最も外側に突 出した点に当たると考えられる。このように、多くの理 (a) (b) 0 500 1000 1500 2000 2500 0 5 10 15 20 25 縦 軸 座 標 臨床経験年数(年) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 0 5 10 15 20 25 横 軸 座 標 臨床経験年数(年) 図6 σ = 0.036 p = 0.844 σ = -0.334 p = 0.057 (b) 0 500 1000 1500 2000 2500 0 5 10 15 20 25 縦 軸 座 標 臨床経験年数(年) 0 500 1000 1500 2000 2500 0 5 10 15 20 25 横 軸 座 標 臨床経験年数(年) 図6 σ = 0.036 p = 0.844 σ = -0.334 p = 0.057 表5 1 2 3 4 5 A ・近位から触診し、最初 にぶつかる部位 ・上端で体表から触りやすい中点 ・最上端 B ・最も突出した部位 C ・最も突出した部位 ・側方から手掌をあて、 頂点と感じる部位 ・最も突出した部位(2名) ・最も突出していて,内外旋させて最も動きの 分かる部位 ・最も突出した部位 ・一番触知しやすい部位 D ・最も突出した部位(4名) ・最も突出した中心部分 ・遠位から触診し、最も突出した部位(2名) ・遠位から触診し、ぶつかる部位 ・遠位から触診し、最初にぶつかる部位。太い 人であれば最も突出した部位 ・触診しやすい部位。内外旋して動くかどうかで 判断する ・側方に最も突出した部 位 ・側面から触診し、最も 突出した部位 ・遠位から触診し、最も 突出した部位 ・最も触診しやすい部位 E ・遠位から触診し、最も突出した部位 ・遠位から触診し、最初にぶつかる部位 ・遠位から触診し、引っ掛かりを感じた部位 ・遠位から触診し、引っ掛かりを感じたところか ら、さらに力を入れて引っ掛かった部位 ・遠位から触診し、最初 にぶつかる部位 ・最も突出したところか ら落ち込んだ部位 ・遠位から触診し、ぶつ かる部位(2名) 表5 マーカー貼付部位に関する回答 「マーカーを貼付した部位は、言葉で表現するとどのような部位か」という質問に対する回答をまとめた。A1~ E5の25個のマス目は 図4で画像に描いたマス目に対応している。各被験者がマーカーを貼付したマス目内にその被験者の回答を記載した。同様の回答が複 数認められた場合は括弧内に回答人数を示した。

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も測定点の候補といえよう。さらに、“遠位から触診し、 ぶつかる点、引っかかる点” を測定点とした理学療法士 もある程度の割合で存在することから、この点も候補の 一つとして挙げることができる。これら複数の候補点に ついて最も信頼性高く測定可能な測定点を探索していく 必要がある。  本研究の限界として以下の点が挙げられる。本研究で は生体を用いず骨模型を用いて実験を行っている。生体 の場合、骨を皮膚および皮下組織が覆っており、当然、 大転子を直接触診したり視認したりすることはできな い。そのため、生体の大転子で測定点を設定する際には 本研究で設定した測定点部位と異なってくる可能性があ る。この点を踏まえて本研究結果を解釈する必要があろ う。

謝 辞

 研究にご協力くださいました被験者の皆様、各施設理 学療法部門責任者の皆様、ならびに研究について貴重な ご助言をくださいました北海道医療大学吉田晋教授に深 く御礼申し上げます。

文 献

1) 大島秀明(2011):形態測定、理学療法評価法. 千住秀明(編)、pp.39-53.九州神陵文庫、福岡 2) 進藤伸一(2004):姿勢と形態、理学療法評価学. 内山靖(編)、pp.72-75.医学書院、東京 3) 森山英樹(2013):形態測定、理学療法テキスト  理学療法評価学Ⅰ.石川明(編)、pp.33-42.中山 書店、東京 4) 松澤正、江口勝彦(2011):形態測定、理学療法評 価学、pp.21-28.金原出版、東京 5) 山路雄彦(2014):形態測定、ビジュアルレクチャー 理学療法基礎評価学.臼田滋(編)、pp.45-59.医 歯薬出版、東京 6) 中山孝(2010):形態測定、理学療法評価学.柳澤 健(編)、pp.45-48.メジカルビュー、東京 7) 冨田和秀(2014):姿勢・形態測定、PT・OT ビジュ アルテキスト リハビリテーション基礎評価学. 潮見泰藏、下田信明(編)、pp.126-140.羊土社、 東京 8) 三好圭(2010):基本技術①形態測定、理学療法評 価学テキスト.星文彦 伊藤俊一、盆子原秀三(編)、 pp.35-48.南江堂、東京 9) 日本スリービー・サイエンティフィック:模型のも とになった標本について教えてください.http:// www.3bs.jp/faq/model_q/moto.html(2015年1月 25日引用) 10) Shrout PE、Fleiss JL (1979): Intraclass correlations: uses in assessing rater reliability.Psychol Bull 86: 420-428 11) 国立研究開発法人 産業技術操業研究所 人間情報 開発部門 デジタルヒューマン工学研究グループ: AIST/HQL 人 体 寸 法・ 形 状 デ ー タ ベ ー ス2003. https://www.dh.aist.go.jp/database/fbodyDB/index. html(2016年2月22日引用) 12) 日本工業標準調査会:JIS Z 8500: 2002 人間工学 -設計のための基本人体測定項目.http://www. jisc.go.jp/app/pager?id=89127(2016年 2 月26日 引用) 13) 工業技術院生命工学工業技術研究所(1994):設計 のための人体計測マニュアル.人間生活工学研究セ ンター、大阪 14) 日本人間工学会生体計測部会(1970):生体計測の 標準化に関する報告書:(I)測定点・測定項目につ いて.人間工学 6:25-41 15) 航空医学実験隊(1990):航空自衛隊員の身体計測 値:装備品等設計のための人間工学的資料、1988 年測定.航空医学実験隊、東京

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<Original Article>

Study of the locations of measurement points on the greater

trochanter for the measurement of trochanter-malleolar distance

by physical therapists.

Takuya Otani

1)

, Satoshi Ogata

1)

, Makoto Miwa

1)

1)

Division of Physical Therapy, Department of Rehabilitation, Faculty of Health Sciences,

Chiba Prefectural University of Health Sciences

Key words

trochanter-malleolar distance, greater trochanter, measurement point

Abstract

  The purpose of this study is to identify the detailed points of the greater trochanter where physical

therapists choose as a landmark to measure the trochanter-malleolar distance. The subjects were 33

physical therapists affiliated with 6 medical facilities. The therapists placed markers on the region of

the greater trochanter in the femur model where they set measurement points to determine

trochanter-malleolar distance. Photos of the markers were taken with a digital camera. The digital photos of the

markers were analyzed with ImageJ (National Institute of Health). Most markers were found around

the most externally prominent point of the greater trochanter. A few markers were found on the upper,

posterior, and inferior-anterior aspect of the greater trochanter. These results suggest that standardized

measurement points for the greater trochanter are necessary to improve inter-rater reliability in the

measurement of trochanter-malleolar distance.

参照

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